説明

マイクロ流量分配コントロール装置

【課題】 所望の比率の流量で流体を分配することができるマイクロ流量分配コントロール装置を実現することにある。
【解決手段】 本発明は、入力側流路を流れる流体を、複数のマイクロ流路に分配するマイクロ流量分配コントロール装置に改良を加えたものである。本装置は、マイクロ流路に設けられ、流量を測定する流量センサと、この流量センサの上流側または下流側のマイクロ流路に設けられるバルブと、流量センサの測定結果によってバルブの調整を行う調整手段とを設けたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1本の入力側流路が複数のマイクロ流路に分岐され、入力側流路を流れる流体を、入力側流路を流れる流体を、複数のマイクロ流路に分配するマイクロ流量分配コントロール装置に関するものであり、詳しくは、所望の比率の流量で流体を分配することができるマイクロ流量分配コントロール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流量分配コントロール装置は、マイクロプラント等において、例えば、チップ上に設けられたマイクロリアクタをナンバリングアップする場合、つまり、マイクロリアクタを積層して並列に設け、各マイクロリアクタに流体を分配する場合等に用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図3は、従来のマイクロ流量分配コントロール装置を示した構成図である(例えば、非特許文献1参照)。図3において、入力側流路Fiからの流体は、複数の流路F(1)〜F(4)に分配され、後段の図示しない各マイクロリアクタに供給される。
【0004】
そして、入力側流路Fiの断面積形状を、例えば、入力側から遠くなる(図3中、流路F(4)側)ほど断面積を小さくすることにより、各流路F(1)〜F(4)に分配される流体の流量をコントロールしている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−163022号公報
【特許文献2】特開2003−84001号公報
【非特許文献1】O.Tonomura, S.Hasebe,etc,”CFD-based optimal design of manifold in plate-fin microdevices”, Chemical Engineerig Journal,(2004), Vol. 101, pp.397-402
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように入力側流路Fiの分岐点の流路形状を工夫することにより、各流路F(1)〜F(4)への分配比率を等しくしている。具体的には、入力側流路Fiの断面積比率を変えることにより、各流路F(1)〜F(4)の圧力損失を等しくしている。
【0007】
しかしながら、入力側流路Fiの断面積比率を変えて分配比率を制御しているため、分配比率を変更することが困難であった。また、流体の粘性が変わると、分配比率も変わってしまう。さらに、流体の粘性は、温度依存性もあるので温度が変わっただけでも分配比率が変わってしまう。そして、温度を管理したとしても流体の種類が異なれば、分配比率が変わってしまうという問題があった。
【0008】
そのため、流体の種類、流体の粘性、分配比率ごとに入力側流路Fiの形状を設計して製作し、新たな装置の用意が必要になるという問題があった。
【0009】
さらに、断面積形状を複雑な形状とするため、分岐点で大きなデッドボリュームが発生するという問題もあった。
【0010】
そこで本発明の目的は、所望の比率の流量で流体を分配することができるマイクロ流量分配コントロール装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、
入力側流路を流れる流体を、複数のマイクロ流路に分配するマイクロ流量分配コントロール装置において、
前記マイクロ流路に設けられ、流量を測定する流量センサと、
この流量センサの上流側または下流側の前記マイクロ流路に設けられるバルブと、
前記流量センサの測定結果によって前記バルブの調整を行う調整手段と
を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記入力側流路および前記マイクロ流路となる溝が形成される第1の基板と、
前記溝が形成された側の前記第1の基板に貼り合わされて流路を形成する第2の基板と
を設け、前記第1または第2の基板の少なくとも一方が、透明部材であることを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、
透明部材は、ガラスまたはプラスチックであることを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、
流量センサは、
前記マイクロ流路に設けられる伝熱手段と、
前記マイクロ流路上であって前記伝熱手段から等間隔の位置に設けられた上流側および下流側の温度検出手段と
を設け、前記温度検出手段で検出された温度の温度差に基づいて流量を求める熱式流量センサであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下のような効果がある。
請求項1〜4によれば、流量センサが、分配後の流量を測定し、調整手段が、流量センサの測定結果にしたがって、バルブの開閉状態を調整して圧力損失を調整するので、各マイクロ流路に流入する流体の流量を制御することができる。これにより、オンラインで所望の比率の流量で流体を分配することができる。従って、流体の種類、流体の粘性、性状等が変化しても、設定した比率で流体を分配することができる。
【0014】
また、調整手段が、流量センサの測定結果にしたがって、バルブの開閉状態を調整して圧力損失を調整するので、入力側流路からマイクロ流路に分岐する部分の形状を簡素化することができる。これにより、大きなデッドボリュームが発生しない。
【0015】
請求項2、3によれば、第1、第2の基板の少なくとも一方を透明部材にするので、入力側流路、マイクロ流路内部を観察することができる。これにより、入力側流路、マイクロ流路が詰まったとしても、外観から容易に観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施例を示した構成図であり、図1(a)は平面図であり、図1(b)はA−A’の断面図である。図1において、ガラスチップ10は、ガラス基板10a、10bが貼り合わされ、流体の流入口11、入力側流路12、分岐部13、マイクロ流路14(1)〜14(5)、流出口15(1)〜15(5)を有する。
【0017】
ガラス基板10aは、第1の基板であり、入力側流路12、分岐部13、マイクロ流路14(1)〜14(5)となる溝が形成される。ガラス基板10bは、第2の基板であり、溝が形成された側のガラス基板10aに貼り合わされて、入力側流路12、分岐部13、マイクロ流路14(1)〜14(5)を形成する。もちろん、ガラス基板10a、10bは、透明部材なので、入力側流路12、分岐部13、マイクロ流路14(1)〜14(5)を直接観察することができる。また、マイクロ流路14(1)〜14(5)は、図1に示すように接液部分が全てガラスで構成されている。
【0018】
流入口11は、流体が供給される。入力側流路12は、流入口11からの流体が流れる。分岐部13は、1本の入力側流路12を分岐し、マイクロ流路14(1)〜14(5)に流体を流す。流出口15(1)〜15(5)は、マイクロ流路14(1)〜14(5)それぞれに設けられ、分岐された流体を外部に吐出する。なお、入力側流路12、マイクロ流路14(1)〜14(5)の大きさは、数[μm]〜1[mm]程度である。
【0019】
バルブ16(1)〜16(5)は、マイクロ流路14(1)〜14(5)それぞれに設けられる。流量センサ17(1)〜17(5)は、マイクロ流路14(1)〜14(5)それぞれに設けられ、流量を測定する。なお、バルブ16(1)〜16(5)は、流量センサ17(1)〜17(5)の上流側の近傍に設けられる。
【0020】
調整手段20は、流量センサ17(1)〜17(5)の測定結果によって、バルブ16(1)〜16(5)の開閉を調整する。
【0021】
このような装置の動作を説明する。
まず流体が流れる動作から説明する。
流体(液体、気体)が流入口11から供給され、入力側流路12を流れて分岐部13で各マイクロ流路14(1)〜14(5)に流体が分配される。このさい、各マイクロ流路14(1)〜14(5)に流入する流量の分配比率が、マイクロ流路14(1)〜14(5)に設けられたバルブ16(1)〜16(5)で調整された圧力損失に依存する。そして、マイクロ流路14(1)〜14(5)を流れてきた流体が、流出口15(1)〜15(5)から吐出され、後段の図示しないマイクロリアクタ等に供給される。
【0022】
次に流量を調整する動作を説明する。
流量センサ17(1)〜17(5)のそれぞれが、マイクロ流路14(1)〜14(5)を流れる流体の流量を測定する。そして、調整手段20が、図示しないメモリからマイクロ流路14(1)〜14(5)の流量比率の設定を読み出す。さらに、流量センサ17(1)〜17(5)からの測定結果より、設定された流量比率となるように、バルブ16(1)〜16(5)の開閉状態を調整し、圧力損失を調整する。この圧力損失の比率により、マイクロ流路14(1)〜14(5)の流量比率を設定された値にする。
【0023】
マイクロ流路14(1)〜14(5)の流量比率を変更する場合は、図示しないメモリの設定を変更して調整手段20に再度読み込ませ、バルブ16(1)〜16(5)を調整させる。
【0024】
ここで、図2は、流量センサ17(1)〜17(5)の一例(熱式流量センサ)を示した構成図であリ、図1と同一のものには同一符号を付し、説明を省略する。また、流量センサ17(1)〜17(5)は同じものなので、流量センサ17(1)のみを図示して説明する。そして、図2(a)は平面図であり、図2(b)はB−B’の断面図である。
【0025】
図2において、伝熱手段17aは、ヒータ等であり、マイクロ流路14(1)に接しない側のガラス基板10b上であって、マイクロ流路14(1)上に位置する部分に蒸着等によって形成される。
【0026】
温度検出手段17b、17cは、サーミスタや白金等測温抵抗体等であり、マイクロ流路14(1)に接しない側のガラス基板10b上であって、マイクロ流路17(1)上に位置する部分に蒸着等によって形成される。また、温度検出手段17b、17cは、伝熱手段17aから等間隔の位置に設けられる。従って、伝熱手段17a、温度検出手段17b、17cは、非接液の状態にある。
【0027】
演算制御手段17dは、温度検出手段17b、17cの出力が入力され、温度制御のための制御信号を伝熱手段17aに出力し、温度検出手段17b、17cで検出された温度の温度差に基づいて流量を求め、求めた流量を調整手段20に出力する。
【0028】
図2に示す熱式流量センサの動作を説明する。
演算制御手段17dが、予め測定された流体の温度に対して、流体が数度程度高い一定温度になるように伝熱手段17aを制御する。
【0029】
そして、このような状態では、上流側の温度検出手段17bおよび下流側の温度検出手段17cで検出される温度の温度差は流体の流量に依存した信号となるので、演算制御手段17dが、このような温度差に基づいてマイクロ流路14(1)を流れる流体の流量を求める。
【0030】
このように、流量センサ17(1)〜17(5)が、分配後の流量を測定し、調整手段20が、流量センサ17(1)〜17(5)の測定結果にしたがって、バルブ16(1)〜16(5)の開閉状態を調整して圧力損失を調整するので、各マイクロ流路14(1)〜14(5)に流入する流体の流量を制御することができる。これにより、オンラインで所望の比率の流量で流体を分配することができる。従って、流体の種類、流体の粘性、性状等が変化しても、設定した比率で流体を分配することができる。
【0031】
また、調整手段20が、流量センサ17(1)〜17(5)の測定結果にしたがって、バルブ16(1)〜16(5)の開閉状態を調整して圧力損失を調整するので、分岐部13の形状を、図3に示すように複雑な形状とせずに簡素化することができる。これにより、大きなデッドボリュームが発生しない。
【0032】
そして、従来、流路12、14(1)〜14(5)は、金属等で作成されることが多いが、基板10a、10bに透明なガラスを用いるので、流路12、14(1)〜14(5)内部を観察することができる。これにより、流路12、14(1)〜14(5)が詰まったとしても、外観から容易に観察することができる。
【0033】
なお、本発明はこれに限定されるものではなく、以下に示すようなものでもよい。
入力側流路12を5本のマイクロ流路14(1)〜14(5)に分岐する構成を示したが、何本に分岐してもよい。
【0034】
バルブ16(1)〜16(5)を、流量センサ17(1)〜17(5)の上流側に設ける構成を示したが、下流側に設けてもよい。
【0035】
バルブ16(1)〜16(5)、流量センサ17(1)〜17(5)をマイクロ流路14(1)〜14(5)それぞれに設ける構成を示したが、流量の制御が必要な流路のみに設けてもよい。例えば、マイクロ流路14(1)〜14(3)だけに設ける構成にしてもよい。
【0036】
基板として、ガラス基板10a、10bを設ける構成を示したが、プラスチックでもよく、要は、透明部材であればよい。また、第1、第2の基板のいずれか一方を透明部材としてもよい。
【0037】
流量センサ17(1)〜17(5)の一例として、熱式流量センサを用いる構成を示したが、マイクロ流路14(1)〜14(5)のような微細管を流れる流体の流量を測定できるものであれば、どのようなものでよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施例を示した構成図である。
【図2】図1に示す流量センサの一例を示した構成図である。
【図3】従来のマイクロ流量分配コントロール装置の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0039】
10a、10b ガラス基板
12 入力側流路
14(1)〜14(5) マイクロ流路
16(1)〜16(5) バルブ
17(1)〜17(5) 流量センサ
17a 伝熱手段
17b、17c 温度検出手段
17d 演算制御手段
20 調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側流路を流れる流体を、複数のマイクロ流路に分配するマイクロ流量分配コントロール装置において、
前記マイクロ流路に設けられ、流量を測定する流量センサと、
この流量センサの上流側または下流側の前記マイクロ流路に設けられるバルブと、
前記流量センサの測定結果によって前記バルブの調整を行う調整手段と
を設けたことを特徴とするマイクロ流量分配コントロール装置。
【請求項2】
前記入力側流路および前記マイクロ流路となる溝が形成される第1の基板と、
前記溝が形成された側の前記第1の基板に貼り合わされて流路を形成する第2の基板と
を設け、前記第1または第2の基板の少なくとも一方が、透明部材であることを特徴とする請求項1記載のマイクロ流量分配コントロール装置。
【請求項3】
透明部材は、ガラスまたはプラスチックであることを特徴とする請求項2記載のマイクロ流量分配コントロール装置。
【請求項4】
流量センサは、
前記マイクロ流路に設けられる伝熱手段と、
前記マイクロ流路上であって前記伝熱手段から等間隔の位置に設けられた上流側および下流側の温度検出手段と
を設け、前記温度検出手段で検出された温度の温度差に基づいて流量を求める熱式流量センサであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロ流量分配コントロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−227853(P2006−227853A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40011(P2005−40011)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】