説明

マイクロ部品の製造方法

【課題】ノズルと基板との相対位置を移動させながらスラリーを射出してマイクロ鋳型を製造する際の、スラリーの積層高さの不均等を解消することである。
【解決手段】微小のセラミック粒子からなるスラリーを射出するノズルと、該射出されたスラリーを受ける基板と、を予め定めた方向に相対的に移動しながら該基板上に前記スラリーを射出し、予め定めたパターンの前記セラミック粒子層を前記基板上に形成してマイクロ鋳型を作製し、前記マイクロ鋳型によりマイクロ部品を鋳造するマイクロ部品の製造方法において、前記ノズルと前記基板との相対的な移動距離に応じて、前記スラリーの射出量を定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法によりマイクロ鋳型を作製し、鋳造によりマイクロ部品を製造するマイクロ部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たな産業の創出を目的に、一般にマイクロマシンと呼ばれる超小型機械の開発、製造がおこなわれ、さらにこのマイクロマシンの小型化、高性能化が進められ、マイクロマシンを構成するマイクロ部品としてもきわめて微小のものが要求されてきている。
【0003】
従来、マイクロマシンを構成するマイクロ部品は、切削加工などよって製造されていた(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、切削加工によりマイクロ部品の製造には、微小加工の切削機を必要とし、さらに微小の切削加工は煩雑のためコスト高となってしまう。
【0004】
別の方法として、たとえば特許文献2に記載のように鋳造の技術を用いてマイクロ部品を鋳型により鋳造することが知られている。この特許文献2には、精密な鋳造が可能なロストワックス法の利用が開示されている。このロストワックス法においては、微小の鋳型を作製するために、製品と同形状の微小なワックス模型(消失性模型)を作製しなければならず、抜け勾配を考慮したワックス模型用の金型を製作するか、もしくは光造型法よって模型を製作する必要があり、多大の工数と費用を必要とするという問題があった。
【0005】
また、鋳型を用いる別の方法として、従来、シェルモールド砂をレーザで焼結させるRP法(ラピッドプロトタイピング法)や、砂に粘結材を塗布する方法で鋳型を作製することも知られているが、たとえば10ミクロンの微小の砂を用いることはできず、微小のマイクロ部品の作製には適さない(たとえば、特許文献3参照)。
【0006】
これらの問題を解決すべく本願出願人は、微小のセラミック粒子からなるスラリーをインクジェット法によりノズルから基板に射出し、ノズルと基板との相対位置を移動することにより基板上に所望形状にスラリーを積層してマイクロ部品のマイクロ鋳型を作製する方法を発明し、これを特許文献4において開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−9144号公報
【特許文献2】特開2003−53481号公報
【特許文献3】特開2000−326052号公報
【特許文献4】特開2009−66646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献4では、上述のインクジェット法により基板にスラリーを射出し、これを積層してマイクロ部品のマイクロ鋳型を作製する方法において、円筒形状の鋳型を作製する方法を開示している。ところが、マイクロ部品のマイクロ鋳型は、円筒形状よりも複雑な形状に作製する要求があり、これに応じてノズルと基板との相対位置の移動も、様々な方向に様々な角度で、ノズルと基板との相対位置を移動させる必要が生じる。
【0009】
このとき、たとえば、ノズルと基板との相対位置の移動は、基板を載せたステージをX軸およびY軸の2軸方向に移動させて行うものであって、所定時間ごとに所定量のスラリーを射出する制御を行うとすると、スラリーの積層高さに問題が生じることがわかった。この点について図7を参照しながら説明する。
【0010】
図7は、従来の方法で製造した矩形の鋳型を撮影した写真を示すものであって、鋳型の斜視図である。
【0011】
図7を参照すると、たとえばX軸方向からY軸方向に直角に曲がるような角Jや角Kを有する鋳型の場合、この角Jや角Kでは、矩形の辺よりもスラリーの積層高さが高くなってしまうという不具合が生じていることが分かる。なお、この図7は、一定時間に一定量のスラリーを射出するようにしたものである。
【0012】
また、図7の点Pは、縦の線と横の線との交差点になっており、縦の線を積層する際のスラリー射出と、横の線を積層する際のスラリー射出とにより、二重の積層が行われ、矩形の辺よりもスラリーの積層高さが高くなってしまうという不具合が生じていることが分かる。
【0013】
本発明は上記の点にかんがみてなされたもので、ノズルと基板との相対位置を移動させながらスラリーを射出してマイクロ鋳型を製造する際の、スラリーの積層高さの不均等を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記の目的を達成するために、微小のセラミック粒子からなるスラリーを射出するノズルと、該射出されたスラリーを受ける基板と、を予め定めた方向に相対的に移動しながら該基板上に前記スラリーを射出し、予め定めたパターンの前記セラミック粒子層を前記基板上に形成してマイクロ鋳型を作製し、前記マイクロ鋳型によりマイクロ部品を鋳造するマイクロ部品の製造方法において、前記ノズルと前記基板との相対的な移動距離に応じて、前記スラリーの射出量を定める、ことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、該交差点近傍においては、前記複数の線のうちの1つで1度通過した後には、他の線で通過する際に前記スラリーの射出を行わない、ことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、該交差点近傍以外では、前記ノズルと前記基板とが所定距離移動したときに所定射出量のスラリーを射出し、該交差点近傍では、前記所定距離移動したときに、前記所定射出量を該交差点で交差する線の数で除した量のスラリーを射出する、ことを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、該交差点近傍以外では、前記ノズルと前記基板とが所定距離移動したときに所定射出量のスラリーを射出し、該交差点近傍では、前記所定距離に該交差点で交差する線の数を乗じた距離移動したときに、前記所定射出量のスラリーを射出する、ことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、マイクロ鋳型製造装置において、マイクロ鋳型を作製する基板を載せるステージと、前記ステージ上の基板に、微小のセラミック粒子からなるスラリーを射出するノズルと、予め定めたパターンで前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させるように前記ステージを駆動するステージ駆動手段と、前記ステージ駆動手段によって移動した前記ステージの位置を検出するステージ位置検出手段と、前記ステージ位置検出手段による検出結果に基づいて得た前記ステージ駆動手段による前記ノズルと前記基板との相対的な移動距離に応じて、前記ノズルによる前記スラリーの射出量を定めながら、予め定めたパターンの前記セラミック粒子層を前記基板上に形成してマイクロ鋳型を作製するよう制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記制御手段が、前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、該交差点近傍においては、前記複数の線のうちの1つで1度通過した後には、他の線で通過する際に前記スラリーの射出を行わないよう制御する、ことを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記制御手段が、前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、該交差点近傍以外では、前記ノズルと前記基板とが所定距離移動したときに所定射出量のスラリーを射出し、該交差点近傍では、前記所定距離移動したときに、前記所定射出量を該交差点で交差する線の数で除した量のスラリーを射出するよう制御する、ことを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記制御手段が、前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、該交差点近傍以外では、前記ノズルと前記基板とが所定距離移動したときに所定射出量のスラリーを射出し、該交差点近傍では、前記所定距離に該交差点で交差する線の数を乗じた距離移動したときに、前記所定射出量のスラリーを射出するよう制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ノズルと基板との相対位置を移動させながらスラリーを射出してマイクロ鋳型を製造する際の、スラリーの積層高さの不均等を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるマイクロ鋳型の製造装置に係る構成の一実施の形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示したマイクロ鋳型の製造装置の制御に係る構成のブロック図である。
【図3】図1に示したマイクロ鋳型の製造装置の制御に係るフローチャートを示す図である。
【図4】図3のステップF−05の処理の第1の例のフローチャートを示す図である。
【図5】図3のステップF−05の処理の第2の例のフローチャートを示す図である。
【図6】図3のステップF−05の処理の第3の例のフローチャートを示す図である。
【図7】従来の方法で製造した矩形の鋳型を撮影した写真を示すものであって、鋳型の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明によるマイクロ部品の製造方法の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明によるマイクロ鋳型の製造装置に係る構成の一実施の形態を示す概略斜視図である。
【0026】
本実施形態のマイクロ鋳型の製造装置は、ステージ16に載せた基板17に向けてインクジェットノズル14からスラリーを射出する構成を有する。インクジェットノズル14は、図示しないピエゾ素子を有する。インクジェットタンク15に貯留してあるスラリーはインクジェットノズル14先端にまで達しており、ピエゾ素子に電圧を加えてこれが変形すると、インクジェットノズル14先端からスラリー液滴が射出される。本実施形態ではインクジェットノズル14は位置固定されており、基板17を載せたステージ16を移動させることによってインクジェットノズル14と基板17との相対位置が移動し、基板17上の所望位置へスラリーの液滴を射出する。
【0027】
インクジェットノズル14先端のスラリー射出口の様子はデジタルカメラ22で撮影される。インクジェットノズル14を挿んで、デジタルカメラ22と対向する位置にはパルス光発生用LED21を設けている。パルス光発生用LED21は、スラリーの液滴を観察するための補助として、液滴射出のタイミングに合わせて赤色光を発光する。デジタルカメラ22では、パルス光発生用LED21の発光タイミングに合わせてインクジェットノズル14先端のスラリー射出口の様子を撮影し、液滴が正常に射出できているかの確認に用いる。
【0028】
マイコン11は、CAD/CAMソフト駆動用装置111、X軸用モータドライバ112、Y軸用モータドライバ113、およびロータリーエンコーダー−パルス変換装置114を含む。
【0029】
インクジェットコントローラ13は、インクジェットノズル14内のピエゾ素子に高電圧を印加して駆動する電源装置であり、ロータリーエンコーダー−パルス変換装置114からのトリガ信号を入力(信号線C)すると、所定の波形の駆動電圧をインクジェットノズル14内のピエゾ素子に対して出力(信号線A)する。また、コントローラ制御用パソコン12は、スラリー液滴射出の際にインクジェットノズル14内のピエゾ素子に対して出力する駆動電圧の所定の波形を、インクジェットコントローラ13に対して指示(信号線B)する。このコントローラ制御用パソコン12からインクジェットコントローラ13に対して指示された、駆動電圧の所定の波形は、インクジェットコントローラ13内で記憶しておく。
【0030】
CAD/CAMソフト駆動用パソコン10は、製造するマイクロ鋳型の3次元形状をあらかじめ登録しておき、この鋳型形状から、CAD/CAMソフト駆動用装置111で用いる、ステージ16をどのように移動させればその鋳型形状を作製することができるかを示す、ステージ16の位置情報を生成する。この位置情報はCAD/CAMソフト駆動用装置111に送信(信号線D)される。
【0031】
CAD/CAMソフト駆動用装置111は、CAD/CAMソフト駆動用パソコン10から入力(信号線D)された位置情報を、X軸用モータドライバ112やY軸用モータドライバ113を駆動する駆動信号に変換する。
【0032】
X軸用モータドライバ112は、CAD/CAMソフト駆動用装置111からの駆動信号を、正転、反転、駆動速度、駆動距離に変換してX軸用ステッピングモータ18aを実際に駆動する信号に変換し、これによってX軸用ステッピングモータ18aを駆動(信号線F)する。
【0033】
また、Y軸用モータドライバ113は、CAD/CAMソフト駆動用装置111からの駆動信号を、正転、反転、駆動速度、駆動距離に変換してY軸用ステッピングモータ18bを実際に駆動する信号に変換し、これによってY軸用ステッピングモータ18bを駆動(信号線F)する。
【0034】
X軸用ステッピングモータ18aおよびY軸用ステッピングモータ18bは5相ステッピングモータであり、精密、正確な駆動を可能にしている。
【0035】
X軸用ステッピングモータ18aの回転運動はX軸方向の直線運動に変換され、またY軸用ステッピングモータ18bの回転運動はY軸方向の直線運動に変換され、このX軸およびY軸方向の直線運動によってステージ16をX軸およびY軸方向に移動させる。
【0036】
X軸用ステッピングモータ18aの回転位置(すなわちステージ16のX軸方向位置)は、ユニバーサルジョイント19aを介して接続されたロータリーエンコーダー20aによって検出され、検出結果のパルス情報はロータリーエンコーダー−パルス変換装置114に送信(信号線E)される。ユニバーサルジョイント19aは、X軸用ステッピングモータ18aの回転軸とロータリーエンコーダー20aとの機械的摺動ロスを減らすための遊びと、軸の径を合わせるために設けている。
【0037】
また、Y軸用ステッピングモータ18bの回転位置(すなわちステージ16のY軸方向位置)は、ユニバーサルジョイント19bを介して接続されたロータリーエンコーダー20bによって検出され、検出結果のパルス情報はロータリーエンコーダー−パルス変換装置114に送信(信号線E)される。ユニバーサルジョイント19bは、Y軸用ステッピングモータ18bの回転軸とロータリーエンコーダー20bとの機械的摺動ロスを減らすための遊びと、軸の径を合わせるために設けている。
【0038】
ロータリーエンコーダー−パルス変換装置114は、ロータリーエンコーダー20aやロータリーエンコーダー20bから入力されたパルス情報をカウントし、ステージ16の位置を認識し、それに応じてスラリーの液滴を射出する場合には、インクジェットコントローラ13にトリガ信号を出力(信号線C)する。
【0039】
ここで、各構成を接続する信号線についてさらに説明する。
【0040】
信号線Aは、インクジェットコントローラ13とインクジェットノズル14とを接続するものであり、インクジェットノズル14内のピエゾ素子を駆動するため、インクジェットコントローラ13からインクジェットノズル14に対して、ノズル駆動パルスとして、高電圧(たとえば200V)、20μs程度の方形波を出力する。
【0041】
信号線Bは、コントローラ制御用パソコン12とインクジェットコントローラ13とを接続するものであり、インクジェットコントローラ13のノズル駆動パルスの波形長さや電圧、タイミングを設定するため、コントローラ制御用パソコン12からインクジェットコントローラ13に対してシリアル接続(RS232C)で通信する。
【0042】
信号線Cは、ロータリーエンコーダー−パルス変換装置114とインクジェットコントローラ13とを接続するものであり、ノズル駆動パルスをインクジェットノズル14に出力するタイミングをとるため、ロータリーエンコーダー−パルス変換装置114からインクジェットコントローラ13に対して、トリガ信号として、12Vの立ち上がり時間の短い方形波を出力する。
【0043】
信号線Dは、CAD/CAMソフト駆動用パソコン10とCAD/CAMソフト駆動用装置111とをパラレル接続(セントロニクス準拠)するものであり、CAD/CAMソフト駆動用パソコン10からCAD/CAMソフト駆動用装置111に対して、鋳型の3次元CAM情報からステージ16の位置情報を随時送信する。
【0044】
信号線Eは、X軸用およびY軸用を有し、ロータリーエンコーダー20a、20bとロータリーエンコーダー−パルス変換装置114とを接続するものであり、X軸用ステッピングモータ18a、Y軸用ステッピングモータ18bの駆動距離を正確に測定し、ロータリーエンコーダー20a、20bからロータリーエンコーダー−パルス変換装置114に対して、X軸用ステッピングモータ18a、Y軸用ステッピングモータ18bの駆動距離に応じた数の5Vパルス電圧を出力する。
【0045】
信号線Fは、X軸用およびY軸用を有し、X軸用モータドライバ112、Y軸用モータドライバ113とX軸用ステッピングモータ18a、Y軸用ステッピングモータ18bとを接続するものであり、X軸用モータドライバ112、Y軸用モータドライバ113からX軸用ステッピングモータ18a、Y軸用ステッピングモータ18bに対して、ステージ16を駆動するための実質的なモータ駆動信号として、5相ステッピングモータの5相のそれぞれに向けた5本ケーブルにて、位相差を持った24V5相モータ駆動信号を出力する。
【0046】
次に、本実施形態のマイクロ鋳型の製造装置の制御に基づく動作の基本的な流れの一例について説明する。図2は、図1に示したマイクロ鋳型の製造装置の制御に係る構成のブロック図である。
<CADからステージの駆動までの流れ>
CAD/CAMソフト駆動用パソコン10(図2の制御手段100)

|信号線D(図面に応じたステージの位置情報)

CAD/CAMソフト駆動用装置111(図2の制御手段100)にて位置情報をモータの駆動速度、距離と回転方向に変換する。

|(X、Y軸の回転方向、モータ駆動速度)

モータドライバ112、113(図2の制御手段100)にて5相ステッピングモータに合った駆動信号に変換する。

|信号線F(5相ステッピングモータ用の実際の駆動信号)

X、Y軸モータ18a、18b(図2のステージ駆動手段101)にて実際に駆動する。


ステージ16(図2のステージ102)の移動


ロータリーエンコーダー20a、20b(図2のステージ位置検出手段103)の駆動

|信号線E(18a、18bモータの駆動距離に応じたパルス)

ロータリーエンコーダー−パルス変換装置114(図2のステージ位置検出手段103)にて任意の駆動距離でトリガを出力する。

|信号線C(距離に応じたタイミングでのトリガ信号)

インクジェットコントローラ13(図2の制御手段100)

|信号線A(ノズル内のピエゾ素子駆動信号)

インクジェットノズル14(図2の液滴射出手段104)にて実際の液滴の射出を行う。
【0047】
また、インクジェットノズル14(図2の液滴射出手段104)による液滴の射出は、デジタルカメラ22(液滴射出観察手段105)によって、撮影され、観察される。
【0048】
次に、本実施形態のマイクロ鋳型の製造装置の制御における特徴的構成である液滴の射出のタイミングについて、制御のフローチャートを参照しながら説明する。図3は、図1に示したマイクロ鋳型の製造装置の制御に係るフローチャートを示す図である。
【0049】
まず、CAD/CAMソフト駆動用パソコン10に、製造するマイクロ鋳型の3次元形状を登録することによって鋳型パターンを決定する(ステップF−01)。また、CAD/CAMソフト駆動用パソコン10では、この鋳型形状から、CAD/CAMソフト駆動用装置111で用いる、ステージ16をどのように移動させればその鋳型形状を作製することができるかを示す、ステージ16の位置情報を生成する。この位置情報はCAD/CAMソフト駆動用装置111に送信(信号線D)される。
【0050】
さらに、CAD/CAMソフト駆動用パソコン10では、ステージ16をどのように移動させればその鋳型形状を作製することができるかを示す、ステージ16の位置情報を解析し、図7の点Pのような複数の線が交差する交差点が存在するか、また、その交差点の位置がどこであるか、さらにその交差点が何本の線が交差する交差点であるかといった交差点情報を生成し、この交差点情報をロータリーエンコーダー−パルス変換装置114に送信(信号線D)する(ステップF−02)。
【0051】
CAD/CAMソフト駆動用装置111は、CAD/CAMソフト駆動用パソコン10から入力(信号線D)された位置情報を、X軸用モータドライバ112やY軸用モータドライバ113を駆動する駆動信号に変換する。
【0052】
X軸用モータドライバ112は、CAD/CAMソフト駆動用装置111からの駆動信号を、正転、反転、駆動速度、駆動距離に変換してX軸用ステッピングモータ18aを実際に駆動する信号に変換し、これによってX軸用ステッピングモータ18aを駆動(信号線F)する。また、Y軸用モータドライバ113は、CAD/CAMソフト駆動用装置111からの駆動信号を、正転、反転、駆動速度、駆動距離に変換してY軸用ステッピングモータ18bを実際に駆動する信号に変換し、これによってY軸用ステッピングモータ18bを駆動(信号線F)する。
【0053】
X軸用ステッピングモータ18aの回転運動はX軸方向の直線運動に変換され、またY軸用ステッピングモータ18bの回転運動はY軸方向の直線運動に変換され、このX軸およびY軸方向の直線運動によってステージ16をX軸およびY軸方向に移動させる(ステップF−03)。
【0054】
X軸用ステッピングモータ18aの回転位置(すなわちステージ16のX軸方向位置)は、ユニバーサルジョイント19aを介して接続されたロータリーエンコーダー20aによって検出され、検出結果のパルス情報はロータリーエンコーダー−パルス変換装置114に送信(信号線E)される。また、Y軸用ステッピングモータ18bの回転位置(すなわちステージ16のY軸方向位置)は、ユニバーサルジョイント19bを介して接続されたロータリーエンコーダー20bによって検出され、検出結果のパルス情報はロータリーエンコーダー−パルス変換装置114に送信(信号線E)される(ステップF−04)。
【0055】
ロータリーエンコーダー−パルス変換装置114は、ロータリーエンコーダー20aやロータリーエンコーダー20bから入力されたパルス情報をカウントし、ステージ16の位置を認識し、それに応じてスラリーの液滴を射出する場合には、インクジェットコントローラ13にトリガ信号を出力(信号線C)する(ステップF−05)。なお、ステップF−05の詳細については後述する。
【0056】
続いて、CAD/CAMソフト駆動用装置111では、CAD/CAMソフト駆動用パソコン10から受信したステージ16の位置情報のすべてに対して、ステージ16を移動させ、鋳型形成のスラリー射出が完了したかを判断し、完了したならば処理を終了し、まだならばステップF−03に戻り処理を継続する(ステップF−06)。
【0057】
以下に、図3のステップF−05の処理について詳細に説明する。
【0058】
図4は、図3のステップF−05の処理の第1の例のフローチャートを示す図である。
【0059】
まず、ロータリーエンコーダー−パルス変換装置114では、ロータリーエンコーダー20aやロータリーエンコーダー20bから得たパルス情報をカウントし、ステージ16の位置を認識する。このステージ16の位置と、図3のステップF−02で生成した交差点情報とを照らし合わせ、ステージ16の現在位置が交差点近傍であるかを判定する(ステップF−5−11)。
【0060】
ステップF−5−11において、ステージ16の現在位置が交差点近傍でなければ、ステージ16を移動させた距離(ノズル14とステージ16との相対位置の変動量)に応じ、たとえば、ステージ16を所定距離(たとえば1mm)移動させる間に所定滴数(たとえば50滴)のスラリーを射出する(ステップF−5−12)。その後、図3の処理へと戻り、ステップF−06へと進む。
【0061】
一方、ステップF−5−11において、ステージ16の現在位置が交差点近傍であれば、この交差点をすでに1度通過したか否かをステップF−5−13で設定するフラグを参照することによって判断し(ステップF−5−13)、1度通過済みでなければ、この交差点の通過済みフラグを通過済みに設定し(ステップF−5−14)、ステップF−5−12へと進み、ステージ16を移動させた距離(ノズル14とステージ16との相対位置の変動量)に応じ、たとえば、ステージ16を所定距離(たとえば1mm)移動させる間に所定滴数(たとえば50滴)のスラリーを射出する(ステップF−5−12)。その後、図3の処理へと戻り、ステップF−06へと進む。
【0062】
ステップF−5−13において、1度通過済みの場合には、スラリーの射出をせずに、その後、図3の処理へと戻り、ステップF−06へと進む。
【0063】
複数の線が交差する交差点近傍において、その複数の線が通過するたびに他の個所と同じ量の液滴射出を行っていたのではスラリーの積層高さが不要に高くなってしまう。この図4の例によれば、1度通過済みの交差点を、2度目以降に通過する場合には、スラリーの射出をしないので、交差点だけ多重にスラリーが積層されてしまうことを防ぐことができる。
【0064】
また、この図4の例によれば、所定距離(たとえば1mm)移動させる間に所定滴数(たとえば50滴)のスラリーを射出するので、角のような場所で移動速度が遅くなったとしても他よりも高くスラリーを積層してしまうことがない。
【0065】
図5は、図3のステップF−05の処理の第2の例のフローチャートを示す図である。
【0066】
まず、ロータリーエンコーダー−パルス変換装置114では、ロータリーエンコーダー20aやロータリーエンコーダー20bから得たパルス情報をカウントし、ステージ16の位置を認識する。このステージ16の位置と、図3のステップF−02で生成した交差点情報とを照らし合わせ、ステージ16の現在位置が交差点近傍であるかを判定する(ステップF−5−21)。
【0067】
ステップF−5−21において、ステージ16の現在位置が交差点近傍でなければ、ステージ16を移動させた距離(ノズル14とステージ16との相対位置の変動量)に応じ、たとえば、ステージ16を所定距離(たとえば1mm)移動させる間に所定滴数(たとえば50滴)のスラリーを射出する(ステップF−5−22)。その後、図3の処理へと戻り、ステップF−06へと進む。
【0068】
一方、ステップF−5−21において、ステージ16の現在位置が交差点近傍であれば、その交差点への総射出量が他の部分への射出量と同じになるように、ステージ16を所定距離(たとえば1mm)移動させる間に所定滴数(たとえば50滴)をこの交差点で交差する交差線数(図7の点Pであれば2)で除した値の滴数(たとえば25滴)のスラリーを射出する(ステップF−5−23)。その後、図3の処理へと戻り、ステップF−06へと進む。
【0069】
複数の線が交差する交差点近傍において、その複数の線が通過するたびに他の個所と同じ量の液滴射出を行っていたのではスラリーの積層高さが不要に高くなってしまう。この図5の例によれば、線が通過する数で液滴の射出量を除しているので、1回の通過の射出量は少なく、通過のたびにこれらが積算され、結果として、総射出量は他の個所の射出量と同等にすることができ、交差点だけ多重にスラリーが積層されてしまうことを防ぐことができる。
【0070】
また、この図5の例によれば、所定距離(たとえば1mm)移動させる間に所定滴数(たとえば50滴)のスラリーを射出するので、角のような場所で移動速度が遅くなったとしても他よりも高くスラリーを積層してしまうことがない。
【0071】
図6は、図3のステップF−05の処理の第3の例のフローチャートを示す図である。
【0072】
まず、ロータリーエンコーダー−パルス変換装置114では、ロータリーエンコーダー20aやロータリーエンコーダー20bから得たパルス情報をカウントし、ステージ16の位置を認識する。このステージ16の位置と、図3のステップF−02で生成した交差点情報とを照らし合わせ、ステージ16の現在位置が交差点近傍であるかを判定する(ステップF−5−31)。
【0073】
ステップF−5−31において、ステージ16の現在位置が交差点近傍でなければ、ステージ16を移動させた距離(ノズル14とステージ16との相対位置の変動量)に応じ、たとえば、ステージ16を所定距離(たとえば1mm)移動させる間に所定滴数(たとえば50滴)のスラリーを射出する(ステップF−5−22)。その後、図3の処理へと戻り、ステップF−06へと進む。
【0074】
一方、ステップF−5−31において、ステージ16の現在位置が交差点近傍であれば、その交差点への総射出量が他の部分への射出量と同じになるように、ステージ16を所定距離(たとえば1mm)にこの交差点で交差する交差線数(図7の点Pであれば2)を乗じた距離(たとえば2mm)移動させる間に所定滴数(たとえば50滴)のスラリーを射出する(ステップF−5−33)。その後、図3の処理へと戻り、ステップF−06へと進む。
【0075】
複数の線が交差する交差点近傍において、その複数の線が通過するたびに他の個所と同じ量の液滴射出を行っていたのではスラリーの積層高さが不要に高くなってしまう。この図6の例によれば、線が通過する数を、所定滴数を射出するための所定距離に乗じているので、1回の通過の射出量は少なく、通過のたびにこれらが積算され、結果として、総射出量は他の個所の射出量と同等にすることができ、交差点だけ多重にスラリーが積層されてしまうことを防ぐことができる。
【0076】
また、この図6の例によれば、所定距離(たとえば1mm)移動させる間に所定滴数(たとえば50滴)のスラリーを射出するので、角のような場所で移動速度が遅くなったとしても他よりも高くスラリーを積層してしまうことがない。
【符号の説明】
【0077】
10 CAD/CAMソフト駆動用パソコン
11 マイコン
111 CAD/CAMソフト駆動用装置
112 X軸用モータドライバ
113 Y軸用モータドライバ
114 ロータリーエンコーダー−パルス変換装置
12 コントローラ制御用パソコン
13 インクジェットコントローラ
14 インクジェットノズル
15 インクジェットタンク
16 ステージ
17 基板
18a X軸用ステッピングモータ
18b Y軸用ステッピングモータ
19a、19b ユニバーサルジョイント
20a、20b ロータリーエンコーダー
21 パルス光発生用LED
22 デジタルカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小のセラミック粒子からなるスラリーを射出するノズルと、該射出されたスラリーを受ける基板と、を予め定めた方向に相対的に移動しながら該基板上に前記スラリーを射出し、予め定めたパターンの前記セラミック粒子層を前記基板上に形成してマイクロ鋳型を作製し、前記マイクロ鋳型によりマイクロ部品を鋳造するマイクロ部品の製造方法において、
前記ノズルと前記基板との相対的な移動距離に応じて、前記スラリーの射出量を定める、
ことを特徴とするマイクロ部品の製造方法。
【請求項2】
前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、該交差点近傍においては、前記複数の線のうちの1つで1度通過した後には、他の線で通過する際に前記スラリーの射出を行わない、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ部品の製造方法。
【請求項3】
前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、
該交差点近傍以外では、前記ノズルと前記基板とが所定距離移動したときに所定射出量のスラリーを射出し、
該交差点近傍では、前記所定距離移動したときに、前記所定射出量を該交差点で交差する線の数で除した量のスラリーを射出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ部品の製造方法。
【請求項4】
前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、
該交差点近傍以外では、前記ノズルと前記基板とが所定距離移動したときに所定射出量のスラリーを射出し、
該交差点近傍では、前記所定距離に該交差点で交差する線の数を乗じた距離移動したときに、前記所定射出量のスラリーを射出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ部品の製造方法。
【請求項5】
マイクロ鋳型を作製する基板を載せるステージと、
前記ステージ上の基板に、微小のセラミック粒子からなるスラリーを射出するノズルと、
予め定めたパターンで前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させるように前記ステージを駆動するステージ駆動手段と、
前記ステージ駆動手段によって移動した前記ステージの位置を検出するステージ位置検出手段と、
前記ステージ位置検出手段による検出結果に基づいて得た前記ステージ駆動手段による前記ノズルと前記基板との相対的な移動距離に応じて、前記ノズルによる前記スラリーの射出量を定めながら、予め定めたパターンの前記セラミック粒子層を前記基板上に形成してマイクロ鋳型を作製するよう制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするマイクロ鋳型製造装置。
【請求項6】
前記制御手段が、前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、該交差点近傍においては、前記複数の線のうちの1つで1度通過した後には、他の線で通過する際に前記スラリーの射出を行わないよう制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載のマイクロ鋳型製造装置。
【請求項7】
前記制御手段が、前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、該交差点近傍以外では、前記ノズルと前記基板とが所定距離移動したときに所定射出量のスラリーを射出し、該交差点近傍では、前記所定距離移動したときに、前記所定射出量を該交差点で交差する線の数で除した量のスラリーを射出するよう制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載のマイクロ鋳型製造装置。
【請求項8】
前記制御手段が、前記パターン中に複数の線が交差する交差点がある場合、該交差点近傍以外では、前記ノズルと前記基板とが所定距離移動したときに所定射出量のスラリーを射出し、該交差点近傍では、前記所定距離に該交差点で交差する線の数を乗じた距離移動したときに、前記所定射出量のスラリーを射出するよう制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載のマイクロ鋳型製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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