説明

マイクロ電気機械式可変コンデンサ

【課題】 大きい静電容量変化及び同調範囲を示す多フィンガ相互嵌合3次元コーム駆動電極を用いるMEMS可変コンデンサを提供する。
【解決手段】 同時に同じ基板上に形成された反対の極性の可動コーム電極が個別に作動される、3次元マイクロ電気−機械(MEMS)可変コンデンサが説明される。これらの電極は、デバイスの静電容量を最大にするために相互嵌合するように形成される。電極は、共同して又は個々に作動される。別個の作動電極及び接地平面電極が、可動電極を作動させる。2つの電極間の電位が、デバイスの主要な作動モードを与える。相互嵌合フィンガ間の側壁重なり面積の変化が、デバイスの期待された静電容量同調を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、マイクロ−電気機械システム(MEMS)デバイスに関し、より詳細には、現在の半導体製造工程に組み込むことができる3次元コーム駆動電極を用いる可変コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
可変コンデンサ又はバラクターは、高周波数及び無線周波数(RF)回路において基本的な役割を果たす。この数年間、MEMS可変コンデンサには、それらの優れた電気的特性のために大きな関心が寄せられてきた。
【0003】
MEMS技術を用いる可変コンデンサは、航空宇宙産業、家庭用電化製品、及び通信システムの用途のための標準的な半導体デバイスに容易に実装可能であるが、研究者らは、平行板電極によって達成される最大静電容量同調範囲が制限されることから、MEMS可変コンデンサの同調範囲を改善することを試みてきた。これは、作動の際に生じる非線形的な静電気力によるものである。平行板電極は、ギャップ距離の1/3のところで典型的な「引き下げ挙動」を呈し、それは1.5の最大同調静電容量をもたらすものとなっている。ほとんどの以前の手法は結果として、処理の複雑さが増すか、可動部品の数が多くなるか、またはその両方が生じ、信頼性が著しく低下することになる。さらに、MEMSデバイスをパッケージし、それらをCMOS集積回路に集積することは、大きな困難をもたらす。
【0004】
非特許文献1において、A.Decらは、可動電極の上及び下の2つの平行電極を用いて可動電極を作動させることによるMEMS可変コンデンサの構成を説明している。可動上部と可動下部との間の個々の静電容量が直列である結果として、全静電容量同調範囲が著しく増強される。この手法を用いて達成可能な最大同調範囲は、比が2:1である。A.Decらは、1.9:1ほどの高い同調範囲を達成することを報告している。この手法を用いると同調範囲は大きく改善されるが、それらの産業用途における有用性を大きく低下させるレベルにまで工程の複雑さが増加する。
【0005】
特許文献1は、アクチュエータとしてコーム駆動電極を用いてマイクロ電気機械式バラクターを製造する方法を説明している。この手法は、同調範囲を増加させることを意図するものであるが、述べられているその構成は、デバイスを2つの別個の基板上に製造することに関係している。主要な作動モードは、デバイス内のフィン構造の間にある。さらに、デバイスは、3ポートバラクターであり、デバイスの同調範囲を増強させるための多数の作動モードを与えるものではない。
【0006】
上記の考察を受けて、当該産業においては、構成が平行板デバイスとは大きく異なり、かつ製造方法が前述の従来の方法とは異なる可変コンデンサに対する別個の必要性がある。特に、要求されるのは、静電容量を感知するための可動コーム駆動電極と、可動コーム駆動電極を作動させるための別個の作動電極である。好ましくは、静電容量は、1つ又はそれ以上の電極フィンガを作動させ、それによりコーム電極間の重なり面積が変化することによって変化される。こうしたデバイスの静電容量同調範囲は、こうしたデバイスにおいて可能ならば多数の作動モードを十分に活用することによって大きく増強されることが要求される。多ポート(すなわち、DCバイアスにおいては少なくとも2つのポート及びRF信号においては2つのポート)のコンデンサが要求されるので、信号の静電容量は、従来の3ポートバラクターの場合のように結合解除を必要とするものであってはならない。デバイスはさらに、標準的な半導体製造技術を用いて製造され、半導体回路に容易に集積できるものでなければならない。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,661,069号
【特許文献2】米国特許第6,635,506号
【非特許文献1】「RF micro−machined varactors with wide tuning range」、IEEE RF IC シンポジウムダイジェスト、1998年6月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、制御又は作動電極が、静電容量の変化につながる可動コーム駆動電極ビームの動きを個々に又は一斉に駆動する、感知用の多フィンガ相互嵌合(interdigitated)3次元コーム駆動電極を用いるMEMS可変コンデンサを提供することである。
【0009】
別の目的は、誘電体によってスイッチ接触部が分離されて、接地電極と作動電極との間に電気絶縁が与えられたMEMSバラクターを提供することである。
【0010】
さらに別の目的は、大きい静電容量比又は同調範囲を得るために感知用コーム駆動電極を備えたMEMS可変コンデンサを提供することである。
【0011】
さらに別の目的は、複数のMEMS可変コンデンサを種々の3次元形状で構成することである。
【0012】
さらに別の目的は、重なり面積の大きな変化をもたらすコーム駆動電極フィンガの制御された応力勾配を有するMEMSバラクターを提供することである。
【0013】
さらに別の目的は、駆動電圧が下がるように、可動コーム駆動フィンガの支持構造体の数及びタイプが変化されるMEMS可変コンデンサを提供することである。
【0014】
さらに別の目的は、MEMSデバイスを同時に製造し、パッケージできるようにし、加工コストを低下させつつ製造ステップの数を最小に減らすことができ、適用されるCMOS半導体デバイスと適合する製造技術を用いてMEMS可変コンデンサを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
MEMSベースの可変コンデンサは、従来の固体バラクターを上回る多くの利点を与える。これらのデバイスは、高いQ値で動作し、動作の際の損失が低くなる。ここでは2つのタイプのMEMSバラクター、すなわち平行板及びコーム駆動バラクターが説明される。
【0016】
最も広く研究されているMEMSバラクターは、可動電極及び固定電極を備えた平行板コンデンサである。これらのMEMSデバイスを用いるときの主な欠点は、これらのデバイスの作動によって得られる動作同調範囲が制限されることである。電気機械式コンデンサに固有の態様は、同調範囲の制限を含み、可動電極の急降下(snap down)につながる。これは、「引き下げ不安定性効果」と呼ばれることが多い。可動電極に働く静電気力は、本質的に非線形であり、この効果を引き起こす。一方、コーム駆動電極においては、可動電極に働く静電気力は、線形であり(すなわち、距離に正比例し)、それは同調範囲を大きく増強する。しかしながら、コーム駆動電極は加工が難しく、得られる静電容量の変化は非常に小さい(利用可能な面積が少ないため)。
【0017】
本発明の1つの態様においては、説明されるMEMS可変コンデンサは、平行板コンデンサとコーム駆動コンデンサとの両方の手法を含み、したがって、それらをさらに検討した。3次元多層電極をコーム駆動構成に製造することによって、同調の間により大きい面積が利用可能にされる。平行板手法からの非線形の静電気力は、コーム駆動電極に独立した又は同時の作動を与えるために用いられる。可動及び固定電極は、単一ウェハー上に順次に加工される。フィルムスタック、金属層及び金属相互接続部に固有の応力勾配が、制御された形状の湾曲ビームを形成するのに用いられる。作動用の別個のDCポートと感知用のRFポートを有するデバイスが、この構成を用いて形成され、RF(信号)電極は、コーム駆動電極によって形成され、可動電極の下に形成されたアクチュエータ電極は、可動ビームに作動を与える。接地平面電極は、レベル間ビアの欠如により感知用コーム駆動電極から電気的に分離される。
【0018】
加工が完了し、MEMS可変コンデンサがリリースされた後で、デバイスは、トレンチを有する第2基板、すなわち第2キャリアウェハーを用いてパッケージされ、誘電体の中に封入され、リリースされたMEMS構造を完全に覆うように正確に位置合わせされることが好ましい。キャリアウェハーのトレンチの高さは、可動コーム駆動電極先端部の最大撓みによって決まる。最終的に、デバイスは、動作中のMEMSデバイスの制御可能な環境を与えるために、ポリマー材料で封入される。第2基板は、半導体基板または無機材料基板からなる。
【0019】
本発明の第2の態様においては、可動コーム駆動電極の下にある作動電極が組み合わされて、同じ極性をもつ全ての電極に単一作動を与える。反対の極性をもつ電極が別に作動される。本発明の可変コンデンサは、4つの作動モードにおいて動作し、それにより4つのモードの各々における静電容量の変化がもたらされる。
【0020】
本発明の第3の態様においては、可動コーム駆動電極の下にある作動電極は、反対の極性をもつ電極のために個々に作動され、それにより、それらは多くの作動状態又はモードを与える。各モードにおいて、従来の等価なデバイスと比べると、デバイスの静電容量が変化する。デバイスのための作動を徐々に段階的に行わせることによって、デバイスの静電容量の同調が大きく増強される。
【0021】
本発明のこれらの及び他の目的、態様及び利点は、付属の図面とあわせたときに、本発明の詳細な好ましい実施形態からよく理解されることになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
好ましい実施形態が示されている図面を参照しながら、以下に本発明をより詳しく説明する。
【0023】
図1を参照すると、本発明に係る3次元マイクロ電気機械システム(MEMS)可変キャパシタの断面図が示されている。デバイスは基板11上に構築され、通常の半導体製造技術を用いて、基板上に、可動ビーム10及び20、並びに固定電極86が順次に製造される。電極10及び20は、コーム駆動電極構成に構築され、コーム駆動フィンガの一方の端部は取り付けられ、他方の端部は自由に動く。2つの電極10及び20は反対の極性をもち、コンデンサの2つの電極を形成する。2つの電極間の静電容量は、2つの電極間の側壁重なり面積と、電極間のフィンガ間隔によって決まる。電極10は、金属間ビア接続部によって接続された多層金属によって形成されることが好ましい。可動コーム駆動フィンガの下側電極85は、作動電極86のための接地平面電極として働く。電極85及び86は、空隙110によって分離された平行板電極として動作する。電極86及び85間に印加された電位は、コーム駆動電極10を基板の方に引くのに必要な静電気力を発生させる。これは次に、電極10及び20間の側壁重なり面積の変化をもたらし、2つのフィンガ構造間の静電容量の変化をもたらす。接地平面電極85及び作動電極86は、絶縁層56及び55によって電気的に分離される。この分離は、作動時の電極85及び86間の電気的短絡を回避するのに必要である。可動電極10及び20は、それぞれ金属ストラップパッド50及び60に取り付けられ、それらはデバイスの静電容量の感知を可能にする。作動電極86は、金属パッド52として金属相互接続を介して接続されて、同時又は個々の作動を与える。金属ストラップパッド50及び60は、RF感知パッドとして用いられ、作動金属パッド52及び62は、DC作動パッドとして用いられる。本発明のバラクターは、2段(すなわち層)のみのコンデンサとして図示されている。当業者であれば、多くの他の段を追加して、容量性デバイスによって生み出される静電容量の量を増加させることができることを直ちに認識するであろう。
【0024】
図2は、機能的なMEMS可変コンデンサの上面図である。デバイスは、互いに所与のスペースだけ離間されたコーム駆動電極によって形成される。電極10及び20は、コンデンサの幅を横切って延びる。デバイスの長さは、電極10及び20の重なり長さによって決まる。MEMS可変コンデンサの2つの電極10及び20を形成する電極は、反対の極性をもち、電気的に分離されている。2つの電極10及び20を離間するギャップと、2つの電極間の側壁重なり面積が、デバイスの静電容量を決める。電極10及び20は、コーム駆動構成に形成され、金属ビア接続部30及び40によりフィンガ長さに沿ってさらに接続される。これらの金属ビア接続部30及び40は、コーム電極の側壁面積が最大になるように、作動電極10及び20の長さに沿って一定の間隔をおいて配置される。金属ビア相互接続部70及び80は、それぞれ金属ストラップ60及び50の幅及び長さにわたって配置される。形状100によって定められる境界は、可動電極10及び20が形成される空隙110をもつキャビティ領域を示す。
【0025】
図3は、線A−A’(図2参照)によって定められた切断部に沿って見た、3次元MEMS可変コンデンサの断面図を示す。電極20は、ビア接続部40によって互いに接続された複数の多段金属(multi−level metallization)によって形成される。コンデンサの側壁面積は、金属化ライン及びビア相互接続部の数によって決まる。デバイスの静電容量及びその同調(tuning)は、電極の側壁面積によって決まる。可動電極20、ビア相互接続部40及び接地平面電極86は、同一平面上にあり、境界22によって定められた同じ誘電体21に物理的に組み込まれる。さらに、可動ビーム20と接地平面電極86は、離間され、かつ電気的に分離されており、金属ビア接続部を備えない。図2及び図3に示されるように、同じ極性をもつ可動電極20は全て、隣接する金属構造体50に接続される。簡単にするために、金属構造体50は、以下、金属ストラップと呼ぶ。金属ストラップ50はまた、金属ビア接続部80によって接続される。可動電極、接地平面電極及び金属ストラップは、一般にダマシン法と呼ばれる半導体製造法において典型的になされるように、誘電体21の内部に挿入される。電極構造は、一方の端部において取り付けられ、他方の端部においては領域110によって定められた空隙キャビティ内で自由に動く。キャビティ110の形成は、特許文献2に詳細に説明されているので参照されたい。
【0026】
好ましい実施形態においては、金属接続部及び電極は、銅と、Ta、TaN、Ti、TiN、Wなどの適切なライナ及び障壁材料から形成されることが好ましい。電極20における金属導体の各々は、およそ5000Å〜8000Åの厚さである。導体85は、作動電極の例示的なものであり、電極85及び86を分離するギャップが、デバイスの作動電圧を決める。
【0027】
電極10の構造を描いた、区分B−B’(図2参照)に沿って見た断面図が、図4に示されている。この電極は、コンデンサの第2電極を形成する、他方の可動コーム駆動電極である。電極20と同様に、可動電極10の金属層は、金属ビア接続部30によって接続される。それらはまた、隣接する金属構造体60、すなわちこれらの電極の金属ストラップに取り付けられる。ストラップ60の金属段は、金属ビア接続部70を用いて電気的に接続される。ビア接続部30は、規則的に離間され、コーム電極10の側壁面積が最大になるように作動電極10の長さに沿って十分に配置される。他方のコーム駆動電極20と同様に、接地平面電極96及び金属層10は、電気的に分離されており、金属接続部をもたない。可動電極10及び接地平面電極96は、境界22によって定められるように、誘電体21の内部に形成される。電極96及び作動電極95は、それぞれ絶縁層56及び55によって電気的に分離される。
【0028】
図3及び図4を参照すると、コーム駆動フィン10及び20の重なり面積は、典型的には1000μmのオーダーで大きく変化する。可動ビーム10及び20(図2)の長さは、20μmから200μmを超える範囲まで変化する。作動電極95及び85(図3及び図4)は、他方のコーム駆動電極に対する垂直位置をそれらに維持させるのに必要な作動を与える。作動電極95及び96間の引力は、これらの金属表面の重なり面積と、2つの表面間のギャップ距離に依存する。これらの作動電極の動きは、平行板電極の力学的挙動に従うことが期待される。作動電極85及び86は、同様の動き及び作動電圧をもつことが期待される。金属ビア接続部30及び40には、0.5〜2μmの範囲の側壁面積が与えられる。各電極10及び20の全側壁面積は、0.5〜50μmの範囲であるが、その寸法は、電極10の面積を最大にするためにより深くするか又はより長くすることによって変えることができる。作動電極90及び91の作動に起因する電極10及び20間の側壁重なり面積の変化は、MEMSデバイスの静電容量の変化を決める。電極10及び20は、SiO及びSiNの誘電体フィルムの組み合わせからなる誘電体21の中に組み込まれる。絶縁フィルム56及び55は、典型的には、200Å〜700Åの範囲の厚さを有するSiN又はSiCNからなる。可動ビーム10及び20の最初の湾曲は、ビームの厚さに沿った固有の応力及び応力勾配によって決まる。それは、ビームの材料の蒸着条件及び厚さを変化させることによって制御することができる。ビーム材料は、銅から形成されることが好ましく、その蒸着条件、例えば電流密度、浴条件、及び温度といった条件を変化させることができる。さらに、関連するライナ材料の厚さを変化させて、ビームの最初の湾曲を制御することができる。
【0029】
図5−図8は、MEMS可変コンデンサの同じ極性をもつ全ての可動電極が同時に作動される4つの異なる作動モードを示す概略図である。図5は、デバイスの最初の作動モードを示し、ここでは電極10及び20は作動されない。これは、デバイスの最初の静電容量を与える。図6は、可動電極20が最大限度まで作動され、電極10はその最初の状態に維持される状態を示す。図7は、電極10が最大限度まで作動された状態を示し、最後に図8は、両方の電極10及び20が作動された状態を示す。最初の状態から各モードを通して段階的に作動させることにより、側壁重なり面積の変化が観測され、それがデバイスの静電容量の変化をもたらす。
【0030】
図9は、図2の断面CC’を通るMEMS可変コンデンサの断面図を示す。電極10及び20は、反対の極性をもち、互いに対向している。電極10のフィンガ長に沿った多くのビア接続部30の存在により、垂直平行板構成の電極が与えられる。電極10及び20を形成する金属は、それぞれビア30及び40によって接続される。さらに、これらのビアは、側壁重なり面積を最大にするように位置合わせされる。電極は、空隙キャビティ110内で一方の端部において支持構造体によって懸垂される。電極10の金属段及び接地平面電極95は、誘電体層21の中に組み込まれる。ビア接続部30及び40は、絶縁誘電体によって、又はわずかな変位で導電率の大きな変化を呈する変形可能なエラストマー材料によって接続することができる。こうした導電性エラストマー材料の存在は、構造の機械的信頼性を大きく増加させるだけでなく、全側壁面積も増加させる。
【0031】
図10−13は、電極が単独で作動されたときのデバイスの4つの異なる作動モードを示す。図10は、コーム駆動電極が作動されていない、デバイスの最初の状態を示す。図11は、可動電極10に対応する作動電極が作動されている状態を示す。図12は、可動電極20に対応する電極が作動されている状態を示す。図13は、両方の可動電極10及び20に対応する電極が同時に作動されている状態を示す。示された4つの作動モードは、コンデンサにおいて可能な作動の多くの異なる組み合わせのうちの幾つかのみを表すことに注意されたい。各作動状態においては、コーム駆動電極間の側壁面積は、最初の状態から変化する。一例として、デバイスが、図10に示された最初の状態から図11に示された状態に作動されたときに、静電容量の側壁面積の変化が観測される。さらに、1つ又はそれ以上の電極の順次的作動は、重なり面積、それにより静電容量の段階的増加又は減少をもたらす。
【0032】
図14は、全ての作動電極が相互接続部43及び42によってそれぞれ接続されている作動パッド52及び62を備えたMEMS可変コンデンサの上から見た配置図である。図15は、コーム駆動電極の各々の作動電極が連結されておらず、個々に作動されるようになっているデバイスの上から見た配置図を示す。
【0033】
図16は、電極の剛性を減少させるためにコーム駆動電極10及び20の支持構造37及び38が用いられているMEMS可変コンデンサの上から見た配置図を示す。支持構造領域の所与の酸化物の幅及び金属の厚さにおいては、電極の機械的剛性が減少し、作動電圧が低くなる。
【0034】
図17は、コーム駆動電極の両方の端部が誘電体層に取り付けられて、可動ビームが固定ビーム構成にされているデバイス構造の別の実施形態を示す。この形で製造された駆動電極の機械的剛性は、前述のような片持ち梁ビーム形式で製造された電極より大きいことが期待される。図18は、図17の区分AA’に沿って見た、固定コーム駆動電極の断面図である。
【0035】
図19は、固定コーム駆動電極10及び20の剛性を減少させるために支持構造37及び38が用いられている、MEMS可変コンデンサ構造の上面図である。図20は、線A−A’(図19)に沿って見た、デバイス構造の断面図を示す。そこでは、一方の電極10が作動されて、接地電極の引き下げ作用がもたらされ、反対の極性をもつ隣接する電極20は作動されない。
【0036】
図21は、ある極性をもつ電極10が固定構成に形成され、それと反対の極性をもつ電極20が一方の端部において取り付けられているデバイス構造の上面図を示す。最後に、区分A−A’(図21)に沿って見たデバイスの断面図が図22に示されている。一方の端部において取り付けられた電極20は作動状態であり、両方の端部において取り付けられた電極10は最初の状態のままである。
【0037】
本発明は、好ましい実施形態と併せて説明されたが、上記の詳細な説明に照らして、多くの変形、修正及び変更が、当業者には明らかとなることが理解される。したがって、本発明は、添付の請求項の精神及び範囲内に入るこうした変形、修正及び変更の全てを包含するように意図されている。ここに記載された又は付属の図面に示された全ての事象は、例示的なものであって制限する意味ではないと解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図2に示された線A−A’を通る切断部において見られる、2つのインターディジテイテッド電極、すなわち正電極と負電極を示す本発明のMEMS可変コンデンサの断面図である。
【図2】本発明に係る機能的MEMS可変コンデンサの上面図である。
【図3】図1に示された線A−A’を通る切断部において見られる、図1に示されたデバイスの断面図である。
【図4】図1に示された線B−B’を通る切断部において見られる、図1に示されたデバイスの断面図である。
【図5】図4に示されたデバイスがゼロ作動のとき(モード1)のデバイスの概略的な断面図である。
【図6】図4に示されたデバイスの正電極が作動するとき(モード2)のデバイスの断面図である。
【図7】図4に示されたデバイスの負電極が作動するとき(モード3)のデバイスの断面図である。
【図8】図4に示されたデバイスの正及び負電極の両方が作動するとき(モード4)のデバイスの断面図である。
【図9】図2に示された線C−C’を通る切断部において見られる、多数のインターディジテイテッド電極、すなわち正電極と負電極を示すMEMS可変コンデンサの断面図である。
【図10】図2に示された線C−C’を通る切断部において見られる、全ての又は幾つかの正電極及び負電極が作動するときのMEMS可変コンデンサの断面図である。
【図11】図2に示された線C−C’を通る切断部において見られる、全ての又は幾つかの正電極及び負電極が作動するときのMEMS可変コンデンサの断面図である。
【図12】図2に示された線C−C’を通る切断部において見られる、全ての又は幾つかの正電極及び負電極が作動するときのMEMS可変コンデンサの断面図である。
【図13】図2に示された線C−C’を通る切断部において見られる、全ての又は幾つかの正電極及び負電極が作動するときのMEMS可変コンデンサの断面図である。
【図14】作動電極が単一のパッドに取り付けられたデバイスの上面図である。
【図15】作動電極が別個の作動パッドに取り付けられたデバイスの上面図である。
【図16】デバイスの作動電圧を低下させるために可動電極に支持構造が設けられたデバイスの上面図である。
【図17】可動ビームが固定構成になるように可動電極が両方の端部において取り付けられているデバイスの上面図である。
【図18】固定された固定ビーム電極を有するMEMS可変コンデンサの断面図である。
【図19】デバイスの作動電圧を低下させるために固定された固定可動電極が達成されるように支持構造が設けられたデバイスの上面図である。
【図20】作動状態の一方の電極を示すMEMS可変コンデンサの断面図である。
【図21】一方の電極は両方の端部が絶縁体に取り付けられ、他方の電極は一方の端部においてのみ取り付けられた状態で製造された、MEMS可変コンデンサの上面図である。
【図22】一方の端部において取り付けられた作動状態の電極と、非通電状態の固定電極とを備えた、MEMS可変コンデンサの断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10、20:可動ビーム
11:基板
50、60:RF感知パッド
52、62:DC作動パッド
55、56:絶縁層
85:可動コーム駆動フィンガの下側電極
86:固定電極
110:空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電気機械システム(MEMS)の可変コンデンサであって、
基板上に形成された固定電極と、
互いに対向する2つの可動ビームと、
を備え、前記可動ビームの各々は、それぞれその少なくとも一方の端部において前記基板に固定されており、前記可動ビームは、複数の導電性ビアによって相互に接続された同一平面上の金属ラインによって形成され、前記導電性ビア及び前記金属ラインは、絶縁材料の中に組み込まれており、前記可動ビームはさらに、前記絶縁材料の底面上に形成され前記固定電極に対向する下側電極を備え、静電容量が、互いに回転する前記2つの可動ビームの側壁重なり面積の関数として変化する、MEMS可変コンデンサ。
【請求項2】
前記固定電極が、前記可動ビームを引き下げるための作動電極である、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項3】
前記絶縁材料が、SiO、SiN、Si、SiCOH、及びSiCNからなる群から選択される、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項4】
前記電極は、ライナによって囲まれた銅からなり、前記ライナは、Ta、TaN、Ti、TiN及びWからなる群から選択される材料からなる、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項5】
前記可動ビームが多層金属構造を形成する、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項6】
前記可動ビームの1つにおける前記ビア相互接続部が、側壁面積及び機械的安定性の増加のために他方の前記可動ビームの前記ビア相互接続部に対向する、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項7】
前記下側電極が前記同一平面上の金属ラインから電気的に絶縁され、前記固定電極と前記下側電極との間に印加された電圧が引力を発生させて、前記可動ビームを移動させる、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項8】
前記2つの可動ビームが、コンデンサの2つの極板を形成する、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項9】
前記電極が作動されないときに、前記下側電極から前記固定電極を分離するスペースは空気である、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項10】
前記固定電極及び前記下側電極には、これら電極が作動されたときに互いに電気的に絶縁するための絶縁層が設けられている、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項11】
前記可動電極は、前記コンデンサの側壁面積を増加させるために、前記ビア相互接続部によって高密度に配置される、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項12】
前記同一平面上の金属ラインの数は、前記可変コンデンサの全静電容量を増加させるために最大にされる、請求項1に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項13】
マイクロ電気機械システム(MEMS)可変コンデンサであって、
基板上に互いに平行に形成された複数の固定電極と、
互いに対向し、かつ前記固定電極の一つに対向する可動ビームと
を備え、前記可動ビームの各々は、それぞれその少なくとも一方の端部において前記基板に固定されており、前記可動ビームは、複数の導電性ビアによって相互に接続された同一平面上の金属ラインによって形成され、前記導電性ビア及び前記金属ラインは、絶縁材料の中に組み込まれており、前記可動ビームはさらに、前記絶縁材料の底面上に形成され前記固定電極に対向する可動電極を備え、静電容量が、前記可動ビームの全側壁重なり面積の関数として変化する、MEMS可変コンデンサ。
【請求項14】
一方の極性の交互配置された可動電極が第1金属ストラップに取り付けられ、残りの反対極性の可動電極が第2金属ストラップに取り付けられた、請求項13に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項15】
複数の可動電極をさらに備え、前記可動電極の少なくとも1つは、前記少なくとも1つの可動電極とそれに対応する可動ビームとの間に信号路を与え、多ポートMEMS可変コンデンサを形成する、請求項13に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項16】
前記可動電極は、前記基板に複数取り付けられる、請求項13に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項17】
前記基板に取り付けられた前記可動電極は、同じ極性をもつ前記可動電極を同時に作動させるために作動パッドに接続される、請求項16に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項18】
前記基板に取り付けられた前記可動電極は、反対の極性をもつ可動電極が独立に作動させられるように別個の作動パッドに接続された、請求項16に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項19】
前記可動電極は、前記金属ライン及び前記関連する絶縁材料における残留応力の緩和によって上方に又は下方に曲がる、請求項13に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項20】
前記可動電極は、一方の端部において取り付けられて、片持ち梁式ビームを形成する、請求項13に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項21】
前記可動電極は、両方の端部において取り付けられて固定ビームを形成する、請求項13に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項22】
第2基板が、前記可変コンデンサを誘電体中に封入する、請求項13に記載のMEMS可変コンデンサ。
【請求項23】
前記第2基板が無機材料又は半導体材料からなる、請求項22に記載のMEMS可変コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−19737(P2006−19737A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189588(P2005−189588)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】