説明

マイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法

【課題】本発明は、マイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法に関する。
【解決手段】本発明は、血管内部にステントを植え込み、一定期間が経過した後、ステントが植え込まれた部分の血管の再狭窄の具合をマイクロCTを用いて定量的に分析し、3次元立体像を得ることにより、より正確な分析が可能なマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロCTを用いた前臨床動物モデルにおけるステント内再狭窄評価方法に関し、より詳細には、血管内部にステントを植え込み、一定期間が経過した後、ステントが植え込まれた部分の血管の再狭窄の具合をマイクロCTを用いて定量的に分析し、3次元立体像を得ることにより、より正確な分析が可能なマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、血栓または血管奇形などによって血管内部が塞がれていたり狭くなっている場合、バルーンカテーテルなどを血管内部に挿入して、塞がれていたり狭くなっている部位を広げた後、ステントを血管内腔に挿入することにより血管を広く保持する血管形成術を行う。
【0003】
この際、血栓形成及び血管損傷によってステント内の新生内膜過形成(neointimal hyperplasia)をもたらし、血管内径が減少する現象であるステント内再狭窄(in−stent restenosis;ISR)が発生する。
【0004】
しかし、一般的なCT(コンピュータ断層撮影:computed tomography)装置は、血管のように小さい部分を撮影するには解像度が低く、精密な3次元画像を得ることができず、ステント内再狭窄を正確に分析することが難しく、ISRを定量的に測定及び評価することができないという問題点がある。
【0005】
また、ステントに関する前臨床試験(動物実験)は、ブタモデルを利用することが一般的であるが、抗体を用いた分析、即ち、免疫組織化学法(immunohistochemistry;IHC)を用いて分析する場合、ブタモデルに対する適した抗体がないため、齧歯類のような小動物モデルを利用しなければならない。しかし、これもまた円滑なISR分析のために血管組織からステントを除去する過程中に、ステントの潰れ、ISRの血管組織からの分離等によりサンプルが損傷を受け、組織学的解析(histological analysis)が難しいという問題点がある。
【0006】
従って、組織学的解析により結果を導き出すことが難しいサンプルの場合、マイクロCTを用いた非破壊的、非侵透性分析方法により、ISRのような所望の結果を導き出すことができる。
【0007】
近年、ステント内再狭窄を評価するために、「64列MDCTによる冠状動脈ステント再狭窄の評価」という学術論文が発表されている。
【0008】
前記論文は、冠状動脈ステント再狭窄を診断するために、64列MDCTを用いてCT冠状動脈血管造影法によりステント再狭窄を比較、分析したものであり、冠状動脈にステントを挿入した患者のうち、64列MDCTを用いて姑息的な冠状動脈造影法を施した68人の患者の資料を分析したものである。
【0009】
ここで、50%以上の冠状動脈ステント再狭窄を診断する64列MDCTを用いた診断正確度は、患者別、ステント分節別に、分節内再狭窄(ステントの近位部と遠位部の5mmを含む)及びステント内再狭窄に対する感度、特異度、陽性的中率及び陰性的中率をそれぞれ求めて評価した。
【0010】
これは、高い特異度と陰性的中率を示す64列MDCTを用いて分節別に分析することで、ステント分節内再狭窄に対する診断正確度を高めるためである。
【0011】
しかし、これもまた3次元画像を得ることができず、ステント内再狭窄の正確な分析が難しく、ステント内再狭窄を定量的に測定及び評価することができないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献1】64列MDCTによる冠状動脈ステント再狭窄の評価,2009.
【非特許文献2】韓国内科学術雑誌76巻4号、開始ページ434p、全ページ数9p ISSN1226−329X KCI登載
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記の問題点を解決するために導き出されたものであり、本発明の目的は、前臨床動物モデルにおいて、血管内部にステントを挿入し、一定期間が経過した後、ステントが挿入された部分の血管の再狭窄の具合をマイクロCTとCTAN(computed tomography analyzer)ソフトウェアを用いて定量的に分析し、3次元立体像を得ることにより、より正確な分析が可能なマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記のような目的を果たすための本発明のマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法は、ステント100が植え込まれた血管内腔に造影剤を投与する段階(S10)と、マイクロCTを用いて前記ステント100が植え込まれた部分の血管を撮影し、CTANソフトウェアを用いた2次元断面像で前記血管内腔の全領域200、造影剤領域300及びステント領域400のCT値を分析する段階(S20)と、それぞれのCT値に該当する領域をROI(region of interest)と指定して、2次元断面での再狭窄領域500を算出する段階(S30)と、を含むことを特徴とする。
【0015】
この際、前記再狭窄領域500は、前記全領域200における造影剤領域300及びステント領域400以外の他の部分であることを特徴とする。
【0016】
また、2次元断面像で分析された前記ステント領域400及び再狭窄領域500をそれぞれ3次元画像600、700に生成し、前記それぞれの3次元画像600、700を併合して一つの3次元併合像800を生成する段階(S40)をさらに含むことを特徴とする。
【0017】
また、前記3次元併合像800の体積及び長さを測定し、前記3次元併合像から多数個の断面2次元画像を生成し、それぞれの断面に対する再狭窄の割合を分析することで再狭窄領域の体積を算出する段階(S50)をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法は、マイクロCTを利用することにより、マイクロ単位のピクセルを用いてより鮮明な映像を得ることができ、CTANソフトウェアを用いてステント内再狭窄を定量的に分析することができ、3次元立体像を得ることができるため、より正確かつ多様な分析が可能であるという長所がある。
【0019】
また、サンプルを非破壊的、非侵透性に分析することにより以降の実験を進めることができ、サンプルのX線(X−ray)吸収程度によってそれぞれ異なる映像を得ることにより、研究者の判断によって適した領域を指定して定量する方法、即ち、研究者同士または外部要因による変数の危険が大きい従来の方法に比べて分析正確度を高めることができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるステントが植え込まれた血管内腔及び前記血管内腔に造影剤を投与した状態を示す写真である。
【図2】本発明によるCTANソフトウェアを用いて測定されたそれぞれの領域に対するCT値を示すグラフである。
【図3】測定されたそれぞれのCT値に該当する領域がROI(region of interest)と指定された状態を示す写真である。
【図4】本発明によるステント領域と再狭窄領域の3次元画像及びこれを併合した3次元併合像を示す写真である。
【図5】本発明による3次元併合像を示す写真である。
【図6】図5の各断面別の2次元画像を示す写真である。
【図7】本発明のマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法により再狭窄領域の体積を定量的に比較したグラフである。
【図8】ステントの種類による全領域に対する再狭窄領域の面積を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、前記のような本発明のマイクロCTを用いたISR評価方法を図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
先ず、本発明では、ウサギの血管内腔にステントを植え込み、4週後にステントが植え込まれた部位を抽出して、ISRの具合をマイクロCT(micro−computed tomography)を用いて定量的に分析し、3次元立体像を得た。
【0023】
本発明のマイクロCTを用いたISR評価方法は、ステント100が植え込まれた血管内腔に造影剤を投与する段階(S10)と、マイクロCTを用いて前記ステント100が植え込まれた部分の血管を撮影し、CTANソフトウェアを用いた2次元断面像で前記血管内腔の全領域200、造影剤領域300及びステント領域400のCT値を分析する段階(S20)と、それぞれのCT値に該当する領域をROI(region of interest)と指定し、2次元断面での再狭窄領域500を算出する段階(S30)と、を含むことを特徴とする。
【0024】
図1は本発明によるステントが植え込まれた血管内腔及び前記血管内腔に造影剤を投与した状態を示す写真である。
【0025】
先ず、S10段階は、前記ステント100が植え込まれた血管内腔に造影剤を投与し、マイクロCTを用いてX線の吸収程度によって撮影できるようにする段階である。
【0026】
また、S20段階は、前記ステント100が植え込まれた部分の血管を撮影して2次元断面像を取得し、CTANソフトウェアを用いて2次元断面像で前記血管内腔の全領域200、造影剤領域300及びステント領域400のCT値を分析する段階である。
【0027】
ここで、前記CTANを用いた各領域のCT値は、X線の吸収程度が異なり、それぞれの領域別に互いに異なるCT値を示す。即ち、前記CT値はステントが植え込まれた血管部分にマイクロCTを用いてX線を透過した時に吸収される程度によって前記CTANソフトウェアを介して自動測定される値である。
【0028】
図2は本発明によるCTANソフトウェアを用いて測定されたそれぞれの領域に対するCT値を示すグラフである。
【0029】
この際、前記全領域200はX線非吸収領域以外の部分であり、前記各領域のCT値は以下のとおりである。
【0030】
{各領域のCT値:a)X線非吸収領域=0〜0.06、b)ステント領域=1.2、c)造影剤領域=0.12〜0.17}
【0031】
また、S30段階は、前記それぞれのCT値に該当する領域をROI(region of interest)と指定し、2次元断面での再狭窄領域500を算出する段階である。
【0032】
これは前記各領域に対するCT値が異なるため、これを用いて各領域に対する範囲を指定し、再狭窄領域500の面積を算出することができる。
【0033】
この際、前記再狭窄領域500は、前記全領域200における造影剤領域300及びステント領域400以外の部分でる。
【0034】
図3は測定されたそれぞれのCT値に該当する領域がROI(region of interest)と指定された状態を示す写真である。
【0035】
即ち、各領域に対するCT値に該当する部分が指定された後、前記再狭窄領域500の面積は、図3(a)に示す全領域200の面積における図3(b)に示す造影剤領域300及び図3(c)に示すステント領域400以外の部分が前記再狭窄領域500の面積となる。
【0036】
従って、前記のようにそれぞれのCTANソフトウェアを用いてCT値に該当する各領域のROIを指定し、前記再狭窄領域500の面積を算出することによりステント内再狭窄の定量的な分析が可能である。
【0037】
また、2次元断面像で分析された前記ステント領域400及び再狭窄領域500をそれぞれ3次元画像600、700に生成し、前記それぞれの3次元画像600、700を併合して一つの3次元併合像800を生成する段階(S40)をさらに含むことができる。
【0038】
これは3次元画像に生成しようとするステントが植え込まれた血管内腔を多数個の2次元断面像で前記のようにステント領域400及び再狭窄領域500の面積を算出し、これをCTANソフトウェアを用いて3次元画像に生成する。
【0039】
この際、図4のように、ステント領域の3次元画像600及び再狭窄領域の3次元画像700を生成してこれを併合すると一つの3次元併合像800を形成することができ、前記3次元併合像800により再狭窄された部分を立体的に確認することができる。
【0040】
ここで、図4は、対照群及びA、B、Cの実験群に対してそれぞれROIと指定された3次元画像を示し、図4に図示されたように、再狭窄された部分が3次元画像により確認されることが分かる。
【0041】
この際、前記実験群は、ステント100の形状及び特性が相違したり、再狭窄を防止するために前記ステント100に多様な物質でコーティング層を形成したものであっても良い。
【0042】
また、前記3次元併合像800の体積及び長さを測定し、前記3次元併合像から多数個の断面2次元画像を生成して、それぞれの断面に対する再狭窄の割合を分析することで、再狭窄領域の体積を算出する段階(S50)をさらに含むことができる。
【0043】
これは、図5のように、前記3次元併合像800をCTANソフトウェアを用いて体積及び長さを測定し、図6のように、ステント100が植え込まれた血管内腔を多数個の断面に分節して2次元画像を生成した後、それぞれの再狭窄の割合を計算することで、図7のグラフのように、全領域200に対する再狭窄領域500の体積を相対的に計算して示すことができる。
【0044】
また、図8のように、全領域200に対する再狭窄領域500の面積を比較して再狭窄の具合を評価することができる。
【0045】
前記のように、本発明のマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法は、マイクロCTを利用することにより、マイクロ単位のピクセルを用いてより鮮明な映像を得ることができ、CTANソフトウェアを用いてISRを定量的に分析することができ、3次元立体像を得ることができるため、より正確な分析が可能であるという長所がある。
【0046】
また、サンプルを非破壊的、非浸透性に分析することにより以降の実験を進めることができ、サンプルのX線吸収程度によってそれぞれ異なる映像を得ることができ、定量の正確度が高いという長所がある。
【0047】
また、断片化(slicing)、埋込み(embedding)、脱灰(decalcification)、撮影(photographing)、配列(aligning)などが伴われる従来の方法に比べて前処理過程がなく、ステントの除去が難しいウサギの組織を利用する場合、ステントを除去する過程なしに分析することができるという長所がある。
【0048】
本発明は、前記実施例に限定されず、適用範囲が多様であることは言うまでもなく、請求範囲で請求する本発明の要旨から外れることなく本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、誰でも多様な変形実施が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
100 ステント
200 全領域
300 造影剤領域
400 ステント領域
500 再狭窄領域
600 ステント領域の3次元画像
700 再狭窄領域の3次元画像
800 3次元併合像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間以外の哺乳動物のステント100が植え込まれた血管内腔に造影剤を投与する段階(S10)と、
マイクロCTを用いて前記ステント100が植え込まれた部分の血管を撮影し、CTANソフトウェアを用いた2次元断面像でX線の吸収程度によって前記CTANソフトウェアにより自動測定されるCT値を用いて前記血管内腔の全領域200、造影剤領域300及びステント領域400のCT値を分析する段階(S20)と、
それぞれのCT値に該当する領域をROI(region of interest)と指定して2次元断面での再狭窄領域500を算出する段階(S30)と、
を含むことを特徴とするマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法
【請求項2】
前記再狭窄領域500は、前記全領域200における造影剤領域300及びステント領域400以外の部分であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法。
【請求項3】
2次元断面像で分析された前記ステント領域400及び再狭窄領域500をそれぞれ3次元画像600、700に生成し、前記それぞれの3次元画像600、700を併合して一つの3次元併合像800を生成する段階(S40)をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法。
【請求項4】
前記3次元併合像800の体積及び長さを測定し、前記3次元併合像から多数個の断面2次元画像を生成して、それぞれの断面に対する再狭窄の割合を分析することで再狭窄領域の体積を算出する段階(S50)をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のマイクロCTを用いたステント内再狭窄評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−43088(P2013−43088A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181117(P2012−181117)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【出願人】(512214591)チョンナム ナショナル ユニバーシティ ホスピタル (1)
【Fターム(参考)】