説明

マスク、マスクの製造方法、電気光学装置の製造方法

【課題】被成膜基板に高精度に成膜することができるマスク、マスクの製造方法、電気光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】蒸着マスク20は、マスク基体22と、マスク基体22上に形成されたドライフィルム23とを有する。マスク基体22は、シリコン又はシリコン化合物からなる。蒸着マスク20の製造方法は、まず、マスク基体22をMEMS加工により形成する。次に、開口孔21aを有するマスク基体22上に、熱転写法を用いてドライフィルム23を転写する。マスク基体22がシリコンからなるので、熱転写によってマスク基体22に熱が加わったとしてもマスク基体22が伸縮(変形)することを抑えることができる。その結果、マスク基体22にドライフィルム23を安定した状態で転写させることが可能となり、開口孔21bの形状が変形したり開口孔21bの位置がずれたりすることを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に膜を形成する際に用いられるマスク、マスクの製造方法、電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した電気光学装置の一つに、例えば、有機EL(Electro Luminescence:エレクトロルミネッセンス)装置がある。有機EL装置は、発光層が画素電極と共通電極とに挟まれた構造となっており、供給された電流値に応じて発光層が発光するようになっている。
【0003】
上記した画素電極や共通電極、発光層などは、例えば、真空蒸着装置を用いた蒸着法によって形成することができる。真空蒸着装置は、例えば、真空チャンバの下側に膜の材料が貯留された蒸着源が配置され、真空チャンバの上側にメタルマスクと被成膜基板とが密着されて配置された構造となっている。そして、蒸着源から蒸発した膜材料粒子がメタルマスクに形成された開口孔を通過して被成膜基板に蒸着する。
【0004】
メタルマスクは、例えば、開口孔の周縁部にエッジ部や加工した際に発生したバリを有している場合がある。これにより、メタルマスクと密着している被成膜基板に傷がついたり、被成膜基板に予め形成されている膜が削られたりするという問題がある。そこで、例えば、特許文献1に記載のように、メタルマスクの表面に保護膜を形成し、メタルマスクと被成膜基板とが直接接触しないようにして、被成膜基板に悪影響を与えないようにしている。保護膜は、例えば、樹脂材料で構成されており、熱転写法によって形成することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−29586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、メタルマスクに熱転写した際、メタルマスクの熱膨張係数が高いことから、熱によってメタルマスクが変形し、更に、メタルマスクの温度が低下するとメタルマスクが収縮する。これにより、メタルマスクに転写された保護膜に応力がかかり、保護膜に形成した開口孔の形状が変形したり、開口孔の位置がずれたりする。その結果、被成膜基板に成膜した際、高いパターン精度が得られないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係るマスクは、シリコン又はシリコン化合物からなる開口孔を有するマスク基体と、前記マスク基体の少なくとも一つの面に形成された前記開口孔の領域に相当する領域に開口孔を有する樹脂層と、を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、マスク基体にエッジ部や加工した際に発生したバリ等があっても、樹脂層を介してマスク基体と被成膜基板とが密着するため、マスク基体と被成膜基板とが直接接触することを防ぐことが可能となる。よって、被成膜基板に傷がついたり、被成膜基板に予め形成されている膜を削ったりすることを防ぐことができる。更に、マスク基体がシリコン又はシリコン化合物からなり、例えば、メタルマスクと比べて熱膨張係数が小さいので、マスク基体に熱が加えられた場合でも、マスク基体が伸縮することが抑えられる。よって、樹脂層に応力が加わった場合に起こる、開口孔の形状が変形したり開口孔の位置がずれたりすることを抑えることができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係るマスクにおいて、前記樹脂層は、熱転写法によって形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、シリコン又はシリコン化合物が、例えば、メタルマスクと比較して熱膨張係数が小さいので、熱転写法を用いてマスク基体上に樹脂層を転写した際、樹脂層を介して伝えられた熱転写の熱によってマスク基体が変形することを抑えることができる。これにより、マスク基体の温度が低下した場合でも、マスク基体が収縮することが抑えられ、樹脂層の開口孔の形状が変形したり開口孔の位置がずれたりすることを抑えることができる。よって、高精度な開口孔を形成することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係るマスクにおいて、前記樹脂層は、ドライフィルムであることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、ドライフィルムを用いることにより、予めマスク基体に開口孔が形成されている場合でも、熱転写法によってマスク基体に貼り付けることができる。また、ドライフィルムを貼り付ける方法なので、比較的簡単に形成することができる。
【0014】
[適用例4]上記適用例に係るマスクにおいて、前記樹脂層に前記樹脂層の厚みを管理するスペーサが含まれていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、樹脂層の厚みを樹脂層全体で管理できるので、この樹脂層が形成されたマスクを用いて被成膜基板に成膜した際、高いパターン精度で形成することができる。
【0016】
[適用例5]本適用例に係るマスクの製造方法は、シリコン又はシリコン化合物からなるマスク基体の少なくとも一つの面に熱転写法を用いて樹脂層を形成する熱転写工程と、前記樹脂層に露光及びエッチングを施して前記マスク基体に形成された開口孔の領域に相当する領域に開口孔を形成する開口孔形成工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、マスク基体がシリコン又はシリコン化合物からなり、例えば、メタルマスクと比べて熱膨張係数が小さいので、熱転写法によってマスク基体に熱が加えられた場合でも、マスク基体が伸縮することが抑えられる。これにより、樹脂層に応力が加わった場合に起こる、開口孔の形状が変形したり開口孔の位置がずれたりすることを抑えることができる。その結果、樹脂層の開口孔を高精度に形成することができる。更に、マスク基体にエッジ部や加工した際に発生したバリ等があっても、樹脂層を介してマスク基体と被成膜基板とが密着するため、マスク基体と被成膜基板とが直接接触することを防ぐことが可能となる。よって、被成膜基板に傷がついたり、被成膜基板に予め形成されている膜を削ったりすることを防ぐことができる。
【0018】
[適用例6]上記適用例に係るマスクの製造方法において、前記樹脂層に前記樹脂層の厚みを管理するスペーサが含まれていることが好ましい。
【0019】
この方法によれば、樹脂層の厚みを樹脂層全体で管理できるので、この樹脂層が形成されたマスクを用いて成膜した際、被成膜基板に高いパターン精度で形成することができる。
【0020】
[適用例7]本適用例に係る電気光学装置の製造方法は、上記したマスクを用いて電気光学装置を製造することを特徴とする。
【0021】
この方法によれば、被成膜基板に高いパターン精度で成膜させることが可能となり、表示品質の高い電気光学装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1は、マスクを用いて成膜を行う真空蒸着装置の構造を示す模式図である。以下、真空蒸着装置の構造を、図1を参照しながら説明する。
【0023】
図1に示すように、真空蒸着装置10は、例えば、電気光学装置としての有機EL装置に用いられる被成膜基板としての透明基板11に電極などを形成するために用いられ、真空チャンバ12と、蒸着源13と、マスクとしての蒸着マスク20と、加圧板14と、を有する。透明基板11は、例えば、ガラス基板である。
【0024】
真空チャンバ12は、密閉された中空の空間を有し、内部を真空状態にするために、例えば、図示しない排気管を介して真空ポンプと接続されている。
【0025】
蒸着源13は、真空チャンバ12内の下側に配置されており、透明基板11に成膜するための膜材料が貯留されている。また、蒸着源13は、膜材料を蒸発(気化)させるための図示しない加熱部を有する。蒸着源13によって、膜材料を気化させることにより、真空チャンバ12の上側に向かって膜材料粒子15が移動する。
【0026】
蒸着マスク20は、透明基板11の所望の領域に材料(膜)を蒸着させるために用いられ、真空チャンバ12の上側に設けられたガイド部16に、外周部分が支持されるようになっている。蒸着マスク20には、透明基板11の材料を蒸着させたい領域に相当する領域に開口孔21が形成されている。
【0027】
加圧板14は、重力を用いて力学的に押圧する手段であり、成膜される透明基板11と蒸着マスク20とを密着固定させるために用いられる。詳述すると、透明基板11及び蒸着マスク20は、透明基板11上に載置した平板形状の加圧板14とガイド部16とによって挟持される。なお、加圧板14は、上記した平板形状に限定されず、例えば、複数個の平板や円板からなるものであってもよい。
【0028】
以上のような真空蒸着装置10において、蒸着マスク20上に透明基板11や加圧板14を配置した後、蒸着源13から膜材料を蒸発(気化)させて、膜材料粒子15が蒸着マスク20の開口孔21を通過することにより、透明基板11の所望の部分に膜材料粒子15が蒸着されるようになっている。
【0029】
図2は、蒸着マスクの構成を示す模式図である。(a)は蒸着マスクの構成を示す模式平面図であり、(b)は(a)に示す蒸着マスクのA−A'線に沿う模式断面図である。以下、蒸着マスクの構成を、図2を参照しながら説明する。
【0030】
図2に示すように、蒸着マスク20は、マスク基体22と、樹脂層23とを有する。マスク基体22は、シリコン又はシリコン化合物からなり、例えば、厚みが100μmである。マスク基体22には、例えば、透明基板11の成膜領域に相当する領域に開口孔21が形成されている。開口孔21は、例えば、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により形成することができる。
【0031】
マスク基体22をシリコン又はシリコン化合物で構成することにより、例えば、アルミニウム等のメタルマスクと比較して熱膨張係数が小さいので、マスク基体22に熱が加わったとしても、マスク基体22が伸縮することを抑えることが可能となる。
【0032】
また、蒸着膜(膜材料)が金属であった場合、マスク基体22がシリコンからなり材質が異なるので、マスク基体22に蒸着した金属膜を除去する際にマスク基体22が劣化する(エッチングされる)ことを防ぐことができる。よって、洗浄(エッチング)することにより、マスク基体22を繰り返し使用することができる。また、マスク基体22の材質としては、微細で高精度な開口孔21aを必要とする場合は、単結晶シリコンを用いることがより好ましい。
【0033】
単結晶シリコンを用いることにより、結晶の面方位依存性を利用した異方性のエッチングを行うことが可能となる。よって、微細な開口孔21aを形成するのに、必要以上(例えば、耐久性が低下する程度)にマスク基体22の厚みを薄くしなくても対応することができる。また、薄くし過ぎることに起因して、取り扱いが難しくなることを防ぐことができる。なお、単結晶シリコンの面方位依存性を利用してエッチングした場合、例えば、樹脂層23側と反対側の開口孔21aの部分がテーパ状になっている。
【0034】
樹脂層23は、例えば、露光されない部分が残るポジ型の透明な感光性樹脂からなる。樹脂層23の厚みは、例えば、20μmである。樹脂層23としては、例えば、ドライフィルム等が挙げられる(以下、樹脂層23を「ドライフィルム23」と称する。)。また、ドライフィルム23には、マスク基体22に形成された開口孔21aの領域に相当する領域に開口孔21bが形成されている。
【0035】
マスク基体22における透明基板11側にドライフィルム23が貼り付けられているので、例えば、マスク基体22の開口孔21aの周縁にエッジ部や加工する際に発生したバリ25等がある場合でも、ドライフィルム23を介してマスク基体22と透明基板11とが密着するので、透明基板11に傷がついたり、透明基板11に予め形成されている膜を削ったりすることを防ぐことができる。
【0036】
加えて、蒸着マスク20と透明基板11との間にゴミ等の凸部が存在していた場合でも、ドライフィルム23によって凸部を吸収することが可能となるので、凸部によって透明基板11を傷つけることを防ぐことができる。また、マスク基体22が比較的応力に弱いシリコンから構成されていても、ドライフィルム23によって凸部を吸収することができるので、マスク基体22に亀裂が入ったり破壊したりすることを防ぐことができる。
【0037】
図3(a)〜(d)は、蒸着マスクの製造方法を工程順に示す模式断面図である。以下、蒸着マスクの製造方法を、図3を参照しながら説明する。
【0038】
図3(a)に示す工程では、マスク基体22を形成する。マスク基体22の材料としては、例えば、シリコンウエハが挙げられる。このシリコンウエハに、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いたエッチング加工により、開口孔21aを形成する。そして、研磨加工などを施してマスク基体22を完成させる。
【0039】
図3(b)に示す工程(熱転写工程)では、マスク基体22上にドライフィルム23を貼り付ける。ドライフィルム23は、例えば、感光性を有している。ドライフィルム23を貼り付ける方法としては、熱転写法を用いることにより形成することができる。詳述すると、マスク基体22に開口孔21aが形成されているので、ドライフィルム23を用いて熱転写法で転写させる方法が好ましい。より詳しくは、例えば、熱転写ヘッド31を用いて、透明なフィルム基材32の片面に貼り付けられたドライフィルム23の一部分を加熱させることにより、マスク基体22の全面にドライフィルム23を転写させる。
【0040】
マスク基体22がシリコンからなるので、熱転写によってドライフィルム23をマスク基体22に転写した際、マスク基体22に熱が加わったとしてもマスク基体22が膨張(変形)することを抑えることができる。よって、マスク基体22にドライフィルム23を貼り付けた後、マスク基体22の温度が低下しても、マスク基体22が収縮することを抑えることが可能となり、ドライフィルム23に応力が加わることを抑えることができる。その結果、マスク基体22にドライフィルム23を安定して転写させることができる。
【0041】
図3(c)に示す工程(開口孔形成工程)では、転写して貼り付けたドライフィルム23に露光処理を行う。詳しくは、マスク基体22をマスクとして開口孔21aからドライフィルム23に露光(矢印)する。これにより、ドライフィルム23における開口孔21aに相当する領域33が露光される。
【0042】
図3(d)に示す工程(開口孔形成工程)では、ドライフィルム23に開口孔21bを形成して蒸着マスク20を完成させる。まず、露光したドライフィルム23の露光部分(領域33)にエッチング処理をすることにより、ドライフィルム23がパターンニングされる。以上により、開口孔21aに相当する領域に開口孔21bが形成されたドライフィルム23が完成すると共に、蒸着マスク20が完成する。なお、感光性を有さないドライフィルム23を用いた場合には、例えば、マスク基体22をマスクとして、ドライエッチング法を用いることにより、ドライフィルム23に開口孔21bを形成することができる。
【0043】
図4(a)〜(d)は、上記した蒸着マスクを用いて有機EL装置を製造する製造方法を工程順に示す模式断面図である。以下、有機EL装置の製造方法を、図4を参照しながら説明する。
【0044】
図4(a)に示す工程では、まず、透明基板11上に画素電極41(陽極)を形成する。透明基板11は、支持体であると同時に光を取り出す面として機能する。まず、透明基板11上に、例えば、TFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング素子や配線など(いずれも図示せず)を形成する。次に、透明基板11上のスイッチング素子や配線上に、画素電極41を形成する。画素電極41は、例えば、上記した蒸着マスク20及び真空蒸着装置10を用いた蒸着法により形成することができる。なお、画素電極41としては、ITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明電極が好ましい。
【0045】
次に、透明基板11上に、各画素領域を隔てるバンク(隔壁)42を形成する。バンク42は、例えば、感光性ポリイミドである。バンク42は、例えば、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いることにより形成することができる。
【0046】
次に、画素電極41上の開口部に、正孔注入/輸送層43を蒸着法により形成する。詳しくは、上記した蒸着マスク20及び真空蒸着装置10を用いて形成する。正孔注入/輸送層43の材料としては、低分子有機材料を用いることができる。
【0047】
次に、図4(b)に示す工程では、正孔注入/輸送層43上に、赤色発光層44R、緑色発光層44G、青色発光層44Bを形成する。形成方法としては、上記した蒸着マスク20及び真空蒸着装置10を用いた蒸着法を用いることができる。赤色発光層44R、緑色発光層44G、青色発光層44Bの材料としては、低分子有機EL材料を使用することができる。
【0048】
次に、図4(c)に示す工程では、各色発光層44R,44G,44B及びバンク42上に共通電極(陰極)45を形成する。共通電極45としては、例えば、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)等の金属薄膜電極が好ましい。共通電極45は、例えば、蒸着法により形成することができる。なお、共通電極45上に保護膜を形成するようにしてもよい。以上により、有機EL装置40が完成する。
【0049】
上記したように、蒸着法を用いて透明基板11上に各種膜を成膜するのに、ドライフィルム23が貼り付けられた蒸着マスク20を用いる。よって、例えば、マスク基体22の開口孔21aの周縁にエッジ部やバリ25等があっても、ドライフィルム23を介してマスク基体22と透明基板11とが密着するので、透明基板11に傷がついたり、透明基板11に予め形成されている膜を削ったりすることを防ぐことができる。更に、ドライフィルム23が劣化したり汚れたりした場合は、ドライフィルム23を除去した後、再度マスク基体22上に新しいドライフィルム23を形成することで簡単に修整できる。
【0050】
また、マスク基体22がシリコン又はシリコン化合物からなるので、図4(c)に示す工程のように金属薄膜電極を形成した場合、蒸着マスク20に蒸着した金属薄膜を洗浄(エッチング)したときに金属薄膜のみを除去することができる。よって、メタルマスクのように、金属薄膜と共にマスク基体がエッチングされることと比較して、開口孔21aの形状を劣化させることなく繰り返し使用することができる。
【0051】
また、マスク基体22にドライフィルム23が貼り付けられているので、開口孔21aの周縁部に生じたバリ25等の大きさに合わせて、ドライフィルム23の厚みを随時変更させることができる。一方、透明基板11側で対応しようとした場合、透明基板11上にこれらを吸収させる厚い膜を形成しようとしたり、随時膜厚を変更したりすることは難しい。
【0052】
以上詳述したように、第1実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
【0053】
(1)第1実施形態によれば、マスク基体22がシリコン又はシリコン化合物からなるので、例えば、アルミニウム等のメタルマスクと比較して熱膨張係数が小さい。よって、熱転写法によってマスク基体22に熱が加えられた場合でも、マスク基体22が伸縮することを抑えることができる。これにより、ドライフィルム23に応力が加わった場合に起こる、開口孔21bの形状が変形したり開口孔21bの位置がずれたりすることを抑えることができ、安定してドライフィルム23を貼り付けることができる。その結果、高精度に開口孔21bを形成することができ、透明基板11上に精度よく膜を蒸着させることができる。
【0054】
(2)第1実施形態によれば、マスク基体22にエッジ部やバリ25等があった場合でも、ドライフィルム23を介してマスク基体22と透明基板11とを密着させるため、マスク基体22と透明基板11とが直接接触することを防ぐことが可能となる。よって、透明基板11に傷がついたり、透明基板11に予め形成されている膜を削ったりすることを防ぐことができる。また、蒸着マスク20と透明基板11との間にゴミ等の凸部が存在していた場合でも、ドライフィルム23によって凸部を吸収することが可能となり、凸部に起因して透明基板11に傷が付く等の悪影響を防ぐことができる。加えて、マスク基体22が比較的応力に弱いシリコンから構成されていても、ドライフィルム23によって凸部を吸収することができるので、マスク基体22に亀裂が入ったり破壊したりすることを防ぐことができる。
【0055】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の蒸着マスクの構成を示す模式図である。(a)は蒸着マスクの構成を示す模式平面図であり、(b)は(a)に示す蒸着マスクのB−B'線に沿う模式断面図である。なお、第2実施形態の蒸着マスクは、ドライフィルムにスペーサが含まれている部分が、第1実施形態と異なっている。以下、第2実施形態の蒸着マスクの構成を、図5を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付し、ここではそれらの説明を省略又は簡略化する。
【0056】
図5に示すように、第2実施形態の蒸着マスク50は、マスク基体22と、ドライフィルム51とを有する。マスク基体22の構成は、上記した第1実施形態と同様である。
【0057】
ドライフィルム51には、開口孔21bを除く領域にスペーサ52が散布されている。スペーサ52は、図示するような球状のビーズスペーサに限定されず、例えば、柱状(円筒を含む)のカラムスペーサ等であってもよい。なお、所望の位置にスペーサ52を配置することができ、力学的強度を高くできることから、カラムスペーサを用いることが好ましい。また、スペーサ52の材料としては、感光性の合成樹脂、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
【0058】
ドライフィルム51の中にスペーサ52が散布されていることにより、ドライフィルム51の厚みをドライフィルム51の全体に亘って管理することが可能となり、透明基板11と蒸着マスク50との間のギャップを均一にすることができる。その結果、透明基板11上に、膜の厚みや形状のばらつきが抑えられた膜を形成することができる。
【0059】
なお、蒸着マスク50の製造方法としては、上記した第1実施形態の蒸着マスク20の製造方法と同様にして形成することができる。
【0060】
以上詳述したように、第2実施形態によれば、上記した第1実施形態の(1)、(2)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0061】
(3)第2実施形態によれば、ドライフィルム51にスペーサ52が含まれているので、ドライフィルム51の全体(面内全体)に亘って厚みを均一にすることが可能となる。そして、このドライフィルム51がマスク基体22に貼り付けられているので、透明基板11と蒸着マスク50との厚み方向の寸法を管理することができる。よって、この蒸着マスク50を用いて透明基板11に成膜した際、膜の形状や厚みを高精度に成膜することができると共に、透明基板11の面内で均一に成膜することができる。
【0062】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0063】
(変形例1)
上記したように、蒸着マスク20(又は、蒸着マスク50)一枚を用いて透明基板11に成膜することに限定されず、例えば、図6に示すように、ガラスからなるガラスフレーム61に蒸着マスク20を複数枚並べ、大きなサイズの透明基板11に対して蒸着するようにしてもよい。図6(a)は、複数の蒸着マスク20で構成されたマスク構成体を上方から見た模式平面図である。図6(b)は、(a)に示すマスク構成体のC−C'線に沿う模式断面図である。なお、蒸着マスク20に形成されている開口孔21の図示は省略している。ガラスフレーム61は、蒸着マスク20が貼り付けられる部分に開口孔62が形成されている。そして、蒸着マスク20は、ガラスフレーム61の開口孔62を覆うように接合されている。なお、ガラスフレーム61に対して蒸着マスク20を着脱可能な構成としてもよい。
【0064】
(変形例2)
上記したように、マスク基体22の一面にドライフィルム23(又は、ドライフィルム51)を貼り付けていることに限定されず、例えば、対向する面に貼り付けるようにしてもよいし、マスク基体22の全面を覆うように形成してもよい。これによれば、シリコン又はシリコン化合物からなるマスク基体22の強度を補強する、つまり、マスク基体22が割れることを防ぐことができる。
【0065】
(変形例3)
上記したように、蒸着マスク20(又は、蒸着マスク50)と透明基板11とを密着させる方法として加圧板14を用いることに限定されず、その他の方法で密着(固定)させるようにしてもよい。
【0066】
(変形例4)
上記したように、蒸着マスク20(又は、蒸着マスク50)を用いて有機EL装置40を製造することに限定されず、例えば、液晶装置やその他の電気光学装置を製造する際に用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1実施形態に係る真空蒸着装置の構造を示す模式図。
【図2】蒸着マスクの構成を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図3】蒸着マスクの製造方法を工程順に示す模式断面図。
【図4】有機EL装置の製造方法を工程順に示す模式断面図。
【図5】第2実施形態に係る蒸着マスクの構成を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図6】蒸着マスクの構成の変形例を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【符号の説明】
【0068】
10…真空蒸着装置、11…被成膜基板としての透明基板、12…真空チャンバ、13…蒸着源、14…加圧板、15…膜材料粒子、16…ガイド部、20,50…マスクとしての蒸着マスク、21,21a,21b…開口孔、22…マスク基体、23,51…ドライフィルム(樹脂層)、25…バリ、31…熱転写ヘッド、32…フィルム基材、33…領域、40…電気光学装置としての有機EL装置、41…画素電極、42…バンク、43…正孔注入/輸送層、44R…赤色発光層、44G…緑色発光層、44B…青色発光層、45…共通電極、52…スペーサ、61…ガラスフレーム、62…開口孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン又はシリコン化合物からなる開口孔を有するマスク基体と、
前記マスク基体の少なくとも一つの面に形成された前記開口孔の領域に相当する領域に開口孔を有する樹脂層と、
を有することを特徴とするマスク。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクであって、
前記樹脂層は、熱転写法によって形成されていることを特徴とするマスク。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマスクであって、
前記樹脂層は、ドライフィルムであることを特徴とするマスク。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のマスクであって、
前記樹脂層に前記樹脂層の厚みを管理するスペーサが含まれていることを特徴とするマスク。
【請求項5】
シリコン又はシリコン化合物からなるマスク基体の少なくとも一つの面に熱転写法を用いて樹脂層を形成する熱転写工程と、
前記樹脂層に露光及びエッチングを施して前記マスク基体に形成された開口孔の領域に相当する領域に開口孔を形成する開口孔形成工程と、
を有することを特徴とするマスクの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のマスクの製造方法であって、
前記樹脂層に前記樹脂層の厚みを管理するスペーサが含まれていることを特徴とするマスクの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のマスクを用いて電気光学装置を製造することを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−62565(P2009−62565A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229813(P2007−229813)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】