説明

マスターデバイス

本発明は、記録媒体の製造プロセスにおいて使用可能なマスターデバイスであって、マスターデバイスの表面に実質的にスパイラル状または同心円状に延びる1つのメイントラック構造と、実質的にスパイラル状または同心円状に延びる少なくとも1つのサブトラック構造とが構成されており、またその際にはサブトラック構造がメイントラック構造の少なくとも片側に配置されており、さらにサブトラック構造が複数の不連続部を有しており、これらの不連続部により、記録媒体の表面に少なくとも1つの第1の補助情報が描写されるように、記録媒体の光学的に識別可能な表面性状に変化が与えられるようになっている、マスターデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式記録媒体の製造プロセスにおいて使用可能なマスターデバイス、このマスターデバイスの製造装置、このマスターデバイスの製造方法、光学式記録媒体、ならびに光学式記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光線に相当するある一定の波長を持つ電磁放射線を用いた光学式記録媒体の走査方法との関連で、本発明を説明する。もっとも、それよりも格段と短いまたは長い波長を持つ電磁放射線であっても、光学式記録媒体の走査には適しているといえる。このようなケースについては、提示される寸法が変更されるとよい。
【0003】
光学式記録媒体は、マスターデバイスを使用して、多段階のプロセスを経て製造される。マスターデバイスの表面には、様々な情報がメイントラック構造およびサブトラック構造の形態で記憶されるが、これらは、概してトラックと呼ばれる、メイントラックおよびサブトラックとして、記録媒体に転写されるようになっている。
【0004】
光学式記録媒体においては、予備成形されるトラックが、いわゆる「ランド」である周囲の面に対する1つの凹部または1つの隆起部のいずれかとして構成されている。凹部として構成されるトラックには、所定の強度および波長を持つ光、好ましくはレーザ光を入射することによって、可逆的または不可逆的に変更することができる反射特性および/または透過特性を持つ材料を、少なくとも部分的に充填できるようになっている。
【0005】
この予備成形されるトラックは、何よりもまず、何らかの情報記録装置を利用して、これにデータを記録できるようにするために利用されるものである。データの記録は、トラックのある1つの第1の特徴、例えば好ましくはトラックの特定の領域の反射挙動または透過挙動が、前もって定められたある一定の変化を経ることにより行われる。これらの変化は、この情報記録装置によっても、また好ましくは市販されるどの光学式記録装置および/または記録再生装置によっても、光学的に識別できるようになっており、またそれにより読み取ることができるようになっている。前もって定められたある一定の光学的変化が行われたトラックの領域は、メインデータピットと呼ばれる。
【0006】
そのような記憶媒体の可能な限り高い記憶容量を達成するためには、これらのメインデータピットおよびそれぞれのメインデータピットの間に位置する一般に「ランド」と呼ばれる面の寸法を最小限とすることが要求される。相応の情報記録装置および/または記録再生装置の機械コンポーネントに対する精度面での要求を実現可能な範囲にとどめるために、トラックは通常、光学的に識別可能な第2の特徴を識別することによって、この情報記録装置および/または記録再生装置の走査光線によるトラッキングのためにも利用されるようになっている。
【0007】
それにより、書き込まれるデータ構造の面密度が高い場合にも、書き込み光線および読み取り光線に要求される位置決め精度を達成できるようにしている。
【0008】
トラックには、好ましくはデータ構造への書き込みが行われる際の線形記録速度に関する情報を導出できるようになっている、光学的に識別可能な第3の特徴が備えられることも多い。例えばトラックは、トラック中央部の周りに、所定の波長を持つ正弦波形を描くことがある。ディスク状の記録媒体については、この波長を利用して、例えばこの記録媒体を回転させるモータの回転数を制御することができる。
【0009】
従来技術の特定の記憶媒体においては、トラックに光学的に識別可能な第4の特徴が備えられている。書き込みおよび読み取りヘッドを、特に何も書き込まれていない記憶媒体の上方で、位置決めするために、これらの記憶媒体においては、1つの連続したアドレスコードを含む補助情報がトラックに予め記録されるようになっている。
【0010】
欧州特許発明第0265695号および欧州特許発明第0325330号2には、補助情報に従属してトラックウォブル(track wobble)の波長が変更されるようになっている記録媒体が説明される。
【0011】
光学式情報記録装置および/または記録再生装置においては、多数の、増大の一途を辿る、種々の記録材料から成る多種多様な記録媒体を使えるようにすることが好ましいが、これらの記録媒体は、時として異なる記録方法および/または記録速度を要求する。したがって記録のためには、その時々の記録媒体について、相応に異なっている固有の書き込みパラメータが必要である。この理由から、公知である記録媒体の内、一定の形態を持つものについては、予め記憶されるトラックの補助情報が、何よりも特にそれぞれの記録媒体に固有の書き込みパラメータを含んでいるとよい、複数の制御コードをこれに追加することにより、拡張されるようになっている。
【0012】
例えば欧州特許発明第0397238号には、複数のアドレスコードおよび制御コードから成る補助情報が、予備成形されたトラックに、トラックウォブルまたはトラック幅の変更のいずれかによる半径方向の正弦波形の変調を含む、予備成形されるトラック変調を利用して記録されるようになっている、記録担体が請求されている。
【0013】
この欧州特許発明第0397238号にしたがった記録担体においては、記録されなければならないデータ構造の誤りのない識別可能性に与える影響を最小限化することが要求されることによって、そのような変調を利用してトラックに作り込むことができる補助情報のデータ密度にかなりの制約を生じている点が短所となっている。
【0014】
出願人の独国特許出願公開第102005027222号および独国特許出願公開第102005018089号から、その時々のトラックの向きに対して垂直な偏移を利用して、補助情報を描写する方法が知られている。
【0015】
この独国特許出願公開第102005027222号および独国特許出願公開第102005018089号にしたがった記録担体においては、補助情報がトラックに作り込まれることにより、記録されなければならないデータ構造に何らかの影響を来たしかねない点が短所となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許発明第0265695号
【特許文献2】欧州特許発明第0325330号
【特許文献3】欧州特許発明第0397238号
【特許文献4】独国特許出願公開第102005027222号
【特許文献5】独国特許出願公開第102005018089号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって本発明の課題は、既存の記録媒体との互換性を最大限確保しながらも上述の短所が回避される記録媒体をもたらすことを可能とするマスターデバイスを提示することにある。ほかにも本発明は、マスターデバイスの製造装置を提供することも課題とする。本発明のさらにもう1つの課題は、本発明にしたがった記録媒体の製造装置を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の課題は、請求項1、請求項19、および請求項29の対象によりそれぞれ解決される。
【0019】
本発明にしたがった記録媒体、ならびにマスターデバイスおよび記録媒体の製造装置は、請求項18、19ならびに29の対象となっている。
【0020】
好ましい実施形態および展開構成例ならびに方法の補足事項は、従属請求項の対象となっている。
【0021】
本発明にしたがったマスターデバイスは、実質的にスパイラル状または同心円状に延びる1つのメイントラック構造と、実質的にスパイラル状または同心円状に延びる少なくとも1つのサブトラック構造とを有している。
【0022】
メイントラック構造とは、本発明の主意においては、本発明にしたがって製造される光学式記録媒体の表面に1つのメイントラックを構成するために利用される、トラック構造のことである。このメイントラックは、情報記録装置および/または記録再生装置の少なくとも1つのビームを利用してトラッキングを行うために利用されるものである。このメイントラックに沿って、少なくとも区画ごとに、多数のメインデータピットを構成できるようになっている領域が配置されている。このメイントラックの、所定の光学的な変更が行われているこれらの領域は、本発明の枠内ではメインデータピットと呼ばれる。
【0023】
サブトラック構造は、本発明の主意においては、本発明にしたがって製造される光学式記録媒体の表面に1つのサブトラックを構成するために利用されるトラック構造を表わしている。その際に、このサブトラックからメイントラックの中央部までの距離は、実質的に不変となっている。特にサブトラックの幾何学的中心からメイントラックの幾何学的中心までの距離は実質的に不変となっている。
【0024】
本発明の好ましい実施形態の一例においては、TPを隣接するメイントラック構造間のトラックピッチ、Nを好ましくは8/3から12/3までの間の数としたときに、サブトラック構造の幾何学的中心線は、メイントラック構造の幾何学的中心線からの一定の半径方向距離TP/Nを有している。
【0025】
別の好ましい実施形態においては、サブトラック構造の幅が、メイントラック構造の幅よりも狭くなっている。
【0026】
さらに別の好ましい実施形態においては、サブトラック構造の深さが、メイントラック構造の深さよりも浅くなっている。
【0027】
別の好ましい実施形態においては、第1の補助情報に、アプリケーションデータ、および/またはコントロールデータ、および/またはセキュリティデータが含まれている。
【0028】
もう1つの好ましい実施形態においては、第2の補助情報に、アプリケーションデータ、および/またはコントロールデータ、および/またはセキュリティデータが含まれている。
【0029】
サブトラック構造は、本発明にしたがって、メイントラック構造の少なくとも片側に配置されるが、これは、記録媒体の表面に少なくとも1つの第1の補助情報が表示されるように、記録媒体の光学的に識別可能な表面性状に変化を与えるようになっている複数の不連続部を有しているとよい。このような配置方式により、一方ではサブトラック構造によりメイントラック構造に与えられる影響を低減することが可能となり、他方ではトラック構造の所要スペースが低減されるが、これによってもまた記録密度の増大がもたらされることになる。
【0030】
光学的に識別可能な表面性状とは、本発明の主意においては、所定の強度の光、好ましくはレーザ光を入射することによって、可逆的または不可逆的に変更することができる光学式記録媒体の反射特性および/または透過特性のことである。
【0031】
光学式記録媒体とは、本発明の主意においては、直径が110〜130mm、好ましくは115〜125mm、さらに好ましくは120mmのディスクのことである。もっとも直径は、例えば80mmとそれよりも小さくてもかまわない。ほかにもこの光学式記録媒体は、片面および/または両面に、予め定められた表面準位を有しているが、これは、同じ面の面全体にわたり実質的に同一となっている。
【0032】
サブトラック構造により、記録媒体の表面に、補助情報が保存される、複数のパイロットマーキングを有するパイロットマーキング領域が作られるようにするとよい。
【0033】
パイロットマーキングとは、本発明の主意においては、補助情報として利用することができる所定の光学的変化/光学的に識別可能な変化が行われているサブトラックの領域のことである。
【0034】
例えば、パイロットマーキングが含まれているこれらのサブトラック構造は、読み取り方向にメイントラック構造の両側に配置されたものであっても、メイントラック構造の片側だけに配置されたものであってもかまわない。フォトダイオードの従来の配置方式の例では、それぞれのフォトダイオードが、トラックが延びる向きに沿って、中心線に対して対称に位置するように配置されている。中央の四つのダイオードは、メイントラック構造の検出用となっている。さらにその両外側には、それぞれが二つの、以下ではサブトラックダイオードと呼ぶ、サブトラック構造の検出に利用されるフォトダイオードから成る二組のフォトダイオードが配置されている。これらのサブトラックダイオードの信号は、ディテクタの制御部により、片側だけにサブトラック構造が存在する場合にもパイロットマーキングの有意な検出が行われるように、論理結合されている。
【0035】
マスターデバイスのさらにもう1つの好ましい実施形態においては、サブトラック構造がメイントラック構造の片側だけに構成されている。
【0036】
マスターデバイスの別の好ましい実施形態においては、記録媒体において光学的に識別可能な特性が、実質的にトラックの向きに沿って配置される、二つの不連続部の間に設けられた1つの凹所となっている。
【0037】
マスターデバイスのさらに別の好ましい実施形態においては、記録媒体において光学的に識別することができる、実質的にトラックの向きに沿って配置される、二つの不連続部の間に設けられた1つの凹所が、様々な深さおよび/または幅を有しており、それによりこの凹所の深さおよび/または幅は、凹所の全長にわたり不定となっている。
【0038】
マスターデバイスのまた別の好ましい実施形態においては、記録媒体において光学的に識別することができる、実質的にトラックの向きに沿って配置される、二つの不連続部の間に設けられた1つの凹所が、境界を明確に限定されておらず、むしろ実質的に流れるように少なくとも1つの(凹んではいない)不連続部に移行するようになっている。
【0039】
ここで流れるようにとは、本発明の主意においては、サブトラック構造の断面輪郭形状が実質的に連続した曲線を描くことを意味するものである。本発明にしたがったマスターデバイスのさらに別の好ましい実施形態においては、反射されたサブビームの光強度により、それぞれのサブビームフォトダイオードの内部に、トラッキングに利用される、好ましくは正弦波形である電圧特性が発生されるように、サブトラック構造の高さおよび/または深さの変化が構成されている。
【0040】
本発明にしたがったマスターデバイスのさらにもう1つの実施形態においては、サブトラックのトラック幅の変化により(サブトラックの高さおよび/または深さの変化と同様に)、好ましくは正弦波形である電圧特性がそれぞれのサブビームフォトダイオードの内部に発生されるようになっている。
【0041】
実質的に正弦波形を描く電圧特性により、矩形波形または台形波形を描く電圧特性とは対照的に、トラッキング信号から可能な限り高調波信号が取り除かれるという長所がもたらされることになる。それにより、フォーリエ変換によって裏付けられるように、トラッキング信号の必要な帯域幅が減少される。
【0042】
マスターデバイスとは、本発明の主意においては、好ましくはガラス製の、表面にメイントラック構造およびサブトラック構造が構成される記録媒体用のマスターのことである。このマスターデバイスを使用して、後工程において光学式記録媒体が製造されるようになっている。
【0043】
マスターデバイスのさらに別の好ましい実施形態においては、記録媒体において光学的に識別可能な特性が、実質的にトラックの向きに沿って配置される、二つの不連続部の間に設けられた実質的にスポット状の表面性状となっている。
【0044】
スポット状とは、本発明の主意においては、トラックの向きで測った広がりが1〜20μm、好ましくは3〜15μm、さらに好ましくは5〜10μmであることを意味するものである。
【0045】
ここでトラックの向きとは、本発明の主意においては、光学式記録媒体への書き込みまたは読み出しが行われる向きを意味するものである。
【0046】
不連続部とは、本発明の主意においては、表面性状がトラックの向きに沿って変化することである。
【0047】
マスターデバイスの別の好ましい実施形態においては、メイントラック構造が少なくとも区画ごとに、しかし特に完全に、トラックの向きに沿って均質な表面性状として構成されている。
【0048】
本発明の主意において均質と呼ばれるのは、トラックの向きに沿った表面性状の変化が皆無である領域である。
【0049】
マスターデバイスのさらに別の好ましい実施形態においては、メイントラック構造が、少なくとも区画ごとに、トラックの向きに沿って実質的にスポット状である表面性状として構成されている。
【0050】
マスターデバイスの別の好ましい実施形態においては、サブトラック構造が、少なくとも区画ごとに、トラックの向きに沿って均質な表面性状として構成されている。
【0051】
マスターデバイスのさらに別の好ましい実施形態においては、サブトラック構造が、少なくとも区画ごとに、トラックの向きに沿って実質的にスポット状である表面性状として構成されている。
【0052】
マスターデバイスのまた別の好ましい実施形態においては、サブトラック構造が、記録媒体の表面に第2の補助情報が描写されるように、記録媒体の1つのサブトラック構造の光学的に識別可能な表面性状に変化を与えるようになっている、ある一定の表面性状を有している。
【0053】
これらの光学的に識別可能な特性は、ある1つのラインコード、例えば2位相マークコード(biphase mark code)のそれぞれのビットに対して割り当てられたものであるとよい。その場合は、例えば上述の検出可能な特性の内の1つがラインコードの論理「1」を、1つの不連続部が論理「0」を表わすことになる。またその際には、この補助情報を表わすデジタルコードの論理「0」が、2位相マークコードの「00」または「11」のいずれかに対して、さらにこの補助情報を表わすデジタルコードの論理「1」が、2位相マークコードの「01」または「10」のいずれかに対して、2位相マークコードに三つ以上連続する0または1が出現しないように割り当てられるようになっている。
【0054】
マスターデバイスの別の好ましい実施形態においては、メイントラック構造が、トラック変調なしで構成されている。
【0055】
トラック変調とは、本発明の主意においては、トラックの向きに対して垂直なトラック幅の変化である、および/または、トラック中心の、ある1つの幾何学的平均値の分の変化であると解釈されるものである。そこではトラック幅が、ある1つの固定値および/またはある1つの可変値の分、変化されるようにするとよい。
【0056】
マスターデバイスのさらにもう1つの実施形態においては、メイントラック構造が、トラック変調を有して構成されている。
【0057】
上述の請求項の内の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイスは、このトラック変調が、半径方向の、実質的に正弦波形を描くトラック変調であることを特徴としている。
【0058】
マスターデバイスのさらにもう1つの好ましい実施形態においては、このトラック変調が、単一周波数トラック変調となっている。
【0059】
マスターデバイスのさらに別の好ましい実施形態においては、このトラック変調が、トラック幅変調となっている。
【0060】
マスターデバイスのまた別の好ましい実施形態においては、このトラック変調が、さらにもう1つの補助情報を具現するようになっている。
【0061】
マスターデバイスのさらにもう1つの好ましい実施形態においては、サブトラック構造が、メイントラック構造の幾何学的中心までの半径方向の距離を実質的に不変として配置されている。
【0062】
本発明にしたがったマスターデバイスの製造装置は、1つの第1の光ビームを利用して、1つの支持基板の表面に1つのメイントラック構造を記録するための、少なくとも1つの第1の光学装置、第1の光ビームが通過する1つの電気光学式ビームデフレクタ、および/または、1つの第2の光ビームを利用して、支持基板の表面に1つのサブトラック構造を記録するための、1つの第2の光学装置とを有している。この第2の光ビームは、本発明にしたがって、1つの第2の電気光学式ビームデフレクタを通過するが、この第2の電気光学式ビームデフレクタは、送られてくる1つの制御信号を利用して、メイントラック構造およびサブトラック構造の半径方向の中心間距離を実質的にある1つの等距離に調整するようになっており、さらに1つのサブトラック構造生成器が、少なくともこの第2の光ビームの動作制御を、1つの第1および/または第2の補助情報に従属して行うようになっている。マスターデバイスの万一の凹凸を補償するために、これらの光ビームはいずれも、支持基板の表面上に1つの同一形状の光点を達成するために、これらの光ビームを収束する調整ユニットを通過するようになっている。
【0063】
さらにもう1つの本発明にしたがったマスターデバイスの製造装置においては、メイントラック構造を記録するために、1つの第1の光ビームが、支持基板にビームを向けるための装置を不要として偏向されるようになっている。この第1の光ビームは、支持基板に当たる前に、上述の、場合により凹凸を補償するための、光ビームを収束する調整ユニットを通過するようになっている。第2の光ビームは、上記で説明したように、1つの電気光学式ビームデフレクタを通過した後、光ビームを収束する調整ユニットの手前側で、後続のビーム偏向装置を使用して、この第1の光ビームと合一されるようになっている。それにより、この第1の光ビーム用の、1つの電気光学式ビームデフレクタおよび1つのビーム偏向装置を廃止することができる。
【0064】
装置のさらにもう1つの好ましい実施形態においては、電気光学式ビームデフレクタを利用して、第1の光ビームのトラックのトラック広さ変調が行われるようになっている。
【0065】
装置のさらに別の好ましい実施形態においては、サブトラックのために必要な構造を作り出すために光ビームのエネルギが変化されるようになっており、それにより構造の高さおよび/または深さおよび/または幅の変化が達成されるようにしている。光ビームのエネルギの変化は、例えばある1つの定常出力にオーバーレイされる1つの適切な交流信号を用いて光ビームを運用することで達成される。
【0066】
装置のさらにもう1つの好ましい実施形態においては、1つの画像処理ユニットを利用して、マスター表面上のレーザ焦点の位置が計算され、この位置情報が少なくとも1つの光学式デフレクタに送られるようになっている。
【0067】
装置のさらに別の好ましい実施形態においては、マスター表面上に調整された両ビームのレーザ焦点が、1つの第1の測定カメラに投影されるようになっている。そこから導出される画像情報は、少なくとも1つの制御計算機、および/または少なくとも1つの画像処理ユニットに送られる。それによりマスター表面上のレーザ焦点の位置を、計算および/または調整および/または較正することができる。それにより実質的にサブビームからメインビームまでの距離を表わす1つの尺度が算出されることになるが、これは、1つの光学式デフレクタおよび/または1つの制御計算機の動作制御のために使用されるようになっている。算出された距離の実際値は、1つの基準値と比較されて、必要な場合にはインラインで正確な再調整が行われる。
【0068】
装置のさらにもう1つの好ましい実施形態においては、マスター表面上に調整される両ビームのレーザ焦点が投影される測定カメラが二台、使用されるようになっている。それにより制御計算機および画像処理ユニットのために必要な画像情報が、互いから切り離して算出されて、少なくとも1つの制御計算機ならびに少なくとも1つの画像処理ユニットに別々に送られることになる。
【0069】
装置のさらにもう1つの好ましい実施形態においては、第1の光ビームの動作制御が、1つのメイントラック生成器を利用して行われるようになっている。
【0070】
装置のまた別の好ましい実施形態においては、このメイントラック生成器が、第1の光ビームの動作制御を行うために、1つの直流信号と1つの交流信号とを出力するようになっている。
【0071】
装置のさらに別の好ましい実施形態においては、このメイントラック生成器が、電気光学式ビームデフレクタの動作制御を行うために、1つのアナログ信号を出力するようになっている。
【0072】
装置のさらにもう1つの好ましい実施形態においては、第2の光ビームの動作制御が、1つのサブトラック生成器を利用して行われるようになっている。
【0073】
装置のまた別の好ましい実施形態においては、このサブトラック生成器が、第2の光ビームの動作制御を行うために、1つの直流信号および1つの交流信号を出力するようになっている。
【0074】
装置のさらに別の好ましい実施形態においては、このサブトラック生成器が、第2の電気光学式ビームデフレクタの動作制御を行うために、1つの直流電圧信号および/または交流電圧信号を出力するようになっている。
【0075】
装置のさらにもう1つの好ましい実施形態においては、第2のビームデフレクタに送られる制御信号が、直流成分を有する1つの電圧信号となっている。
【0076】
装置のさらに別の好ましい実施形態においては、電気光学式ビームデフレクタの動作制御を行うためにメイントラック生成器から出力されるアナログ信号が、電気光学式ビームデフレクタに送られるようになっている。
【0077】
本発明にしたがった記録媒体は、上記で説明したいずれか1つのマスターデバイスを使用した記録媒体の製造方法ないしは製造装置により、得られるようになっている。
【0078】
本発明にしたがったマスターデバイスの製造方法は、次の各工程、すなわち、1つの第1の光ビームを曝射して、1つの支持基板に1つのメイントラック構造を感光により形成する工程、またその際には、この支持基板の表面にフォトレジストが施されていること、1つの第2の光ビームを曝射して、この支持基板にサブトラック構造を感光により形成する工程、感光されたフォトレジストを現像する工程、感光された、または感光されなかったフォトレジストを支持基板から除去する工程、1つの第1の金属皮膜を支持基板の表面に施す工程、および/または1つの第2の金属皮膜を支持基板の表面に施す工程の内、少なくともいずれか1つから成っている。
【0079】
本発明のその他の長所および実施形態については、添付図面から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】マスターデバイスの表面へのメイントラック構造およびサブトラック構造の二通りの配置例を示す図である。
【図2】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらにもう二通りの配置例を示す図である。
【図3】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図4】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図5】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図6】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図7】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図8】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図9】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図10】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図11】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図12】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図13】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図14】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図15】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図16】メイントラック構造およびサブトラック構造のさらに別の配置例を示す図である。
【図17】メイントラック構造の四通りの構成例を示す図である。
【図18】メイントラック構造およびサブトラック構造の配置方式を示す概略図、および、トラック構造の断面輪郭形状を示す図である。
【図19】サブトラック構造の断面輪郭形状の考えられる例を示す図である。
【図20】マスターデバイスの製造装置の概略図である。
【図21】図20に示される装置の低コストバージョンである、マスターデバイスのさらにもう1つの製造装置を、直線式にガイドされる第1の光ビームとともに示す概略図である。
【図22】従来型のレーザ装置/ディテクタの中央フォトダイオードA、B、C、DならびにサブビームのフォトダイオードE、FならびにG、Hの配置方式を示す図である。
【図23】マスターデバイスの表面にメイントラック構造1およびサブトラック構造2を作成するための、さらにもう1つの本発明にしたがった装置を示す図である。
【図24】マスターデバイスの表面にメイントラック構造1およびサブトラック構造2を作成するための、さらにもう1つの本発明にしたがった装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1には、マスターデバイスの表面へのメイントラック構造1およびサブトラック構造2の二通りの配置例が示されている。図1a)においては、メイントラック構造1が実質的にトラックの向きに沿って均質な表面性状として構成されている。サブトラック構造2も同様に、トラックの向きに沿って実質的に均質な表面性状として構成され、メイントラック構造1の片側に配置されているが、そこではこのサブトラック構造2が複数の不連続部を有している。サブトラック構造2は、メイントラック構造1のこれとは反対側に配置されてもかまわない。
【0082】
図1b)に示されるサブトラック構造2は、実質的に図1a)のサブトラック構造2に当該しているが、そこではサブトラック構造2のトラックの向きに沿ったそれぞれの不連続部が、図1a)のサブトラック構造2のトラックの向きに沿って実質的に均質な表面性状の場合よりも一段と大きくなっている。
【0083】
メイントラック構造1は、ある1つの光学式記録媒体の表面に設けられたメイントラックと符合し、サブトラック構造2は、ある1つの光学式記録媒体の表面に設けられたサブトラックないしはパイロットトラックと符合する。ある1つの光学式記録媒体の上方での書き込みおよび読み取りヘッドの位置決めを簡単に行えるようにするために、それぞれのメイントラック構造1間の距離は、実質的に定常であるように選定されることが好ましい。
【0084】
ほかにもサブトラック構造2は、メイントラック構造1の中央部に対して実質的に等距離で配置されている。結果としてもたらされる記録媒体の表面の情報密度を最大限化するために、それぞれのメイントラック構造1間の距離ならびにメイントラック構造1とサブトラック構造2間の距離が最小限に選定されると非常に好適である。
【0085】
図2a)および2b)は、実質的に図1a)および1b)に準じた図であるが、そこではサブトラック構造2がメイントラック構造1の両側に対称に配置されている。ほかにも図2a)においては、サブトラック構造2が区画ごとに交互にメイントラック構造1のそれぞれ反対側に配置されている。
【0086】
サブトラック構造2のこのメイントラック構造1の反対側への交互配置は、特にメイントラック構造1の両側に実質的に同数のサブトラック構造2が配分される場合は、記録媒体表面上のサブトラックの光学的な識別結果から、直流のないトラックフォローイング信号を獲得できるという意味で、有利である。
【0087】
図3においては、サブトラック構造3が、実質的にトラックの向きに沿って配置される、実質的にスポット状である表面性状として構成され、メイントラック構造1の片側に配置されている。
【0088】
図4には、メイントラック構造1の両側に対称に配置されるサブトラック構造3が示されている。
【0089】
図5〜8においては、メイントラック構造4が、複数の不連続部を有するトラックの向きに沿って実質的に均質な表面性状として構成されている。そこではサブトラック構造2、3が、トラックの向きに沿って実質的に均質な表面性状(図5および6)として、または実質的にスポット状である表面性状(図7および8)として、構成されるとよい。図5および7においては、サブトラック構造2、3がメイントラック構造4の片側に配置されている。図6および8においては、サブトラック構造2、3がメイントラック構造4の両側に対称に配置されている。
【0090】
メイントラック構造4のそれぞれの不連続部は、規則的なものであっても不規則なものであっても、あるいは周期的なパターンを有するものであってもかまわない。メイントラック構造4のこれらの不連続部により、可能性のある様々な補助情報をメイントラック構造に組み込むことが可能となり、またそれにより記録媒体の表面の情報密度をさらに増大することが可能となる。
【0091】
図9および10は、実質的に図1および2に準じた図であるが、そこではメイントラック構造5が、単一周波数変調された、トラックの向きに沿って実質的に均質な表面性状として構成されている。
【0092】
図11および12は、実質的に図9および10に準じた図であって、そこではメイントラック構造6が、単一周波数変調された、トラックの向きに沿って実質的に均質な表面性状として構成されているが、そこではメイントラック構造6が複数の不連続部を有している。
【0093】
図13〜16は、実質的に図9〜12に準じた図であるが、サブトラック構造3が、実質的にトラックの向きに沿って配置される、実質的にスポット状である表面性状として構成される点で相違している。
【0094】
図17には再度、メイントラック構造の四通りの考えられる実施例1、4、5および7が示されている。
【0095】
図18は、マスターデバイスのメイントラック構造およびサブトラック構造の配置方式を、平面図(図18a))ならびにトラック構造の断面図(図18b))で示したものである。
【0096】
メイントラック構造1の幅Wは、好ましくは200〜800nm、さらに好ましくは400〜600nm、それよりもさらに好ましくは550nmである。メイントラック構造の有効深さTHは、好ましくは80nmから130nmまでの間、さらに好ましくは90nmから120nmまでの間、それよりもさらに好ましくは105nmである。隣接するメイントラック構造1間のトラックピッチTPは、好ましくは1,000〜2,000nm、さらに好ましくは1,600nmである。ほかにもメイントラック構造1の、マスターデバイスの実質的に平坦な表面に対する法線と、メイントラック構造1の側面とが成すフランク角は、好ましくは30〜50°、さらに好ましくは40°である。
【0097】
サブトラック構造2の幅Wnは、好ましくは100〜400nm、さらに好ましくは200〜300nm、それよりもさらに好ましくは250nmである。サブトラック構造の有効深さTNは、好ましくは25nmから75nmまでの間、さらに好ましくは40nmから60nmまでの間、それよりもさらに好ましくは50nmである。メイントラック構造1とサブトラック構造2間の距離Sは、好ましくは350〜600nm、さらに好ましくは450〜550nm、それよりもさらに好ましくは500nmである。
【0098】
ほかにもサブトラック構造2のトラックの向きで測った長さLは、好ましくは10μmから60μmまでの間となっている。
【0099】
メイントラック構造1およびサブトラック構造2の半径方向の距離S(好ましくは約400〜600nm)は、トラック同士の重大なオーバーラップも、また隣接するトラックによるクロストークも生じないように選定されることが好ましい。パイロットマーキング、すなわちサブトラック構造の内部に作り込まれるそれぞれの凹所の長さは不定であり、22.05kHz程度の通常のトラックウォブル周波数に帰属する波長の二分の一と概ね等しくなっている。記録媒体に対する走査装置の直線速度が約1.2m/s程度である場合、パイロットマーキングの好ましい平均長さは54.4/2μm=27μmである。変調されたトラックウォブル周波数の通常の±1kHzの周波数偏差は、パイロットマーキングの長さを適切に変化させる(±ΔL=1.22μm)ことにより実現される。
【0100】
ほかにもサブトラック構造2の、マスターデバイスの実質的に平坦な表面に対する法線と、サブトラック構造のトラックの向きに対して実質的に平行に延びる側面とが成すフランク角は、好ましくは10〜40°、さらに好ましくは25°である。
【0101】
図18に示されるように、サブトラック構造は、メイントラック構造の片側だけに配置されるものであってもかまわない。
【0102】
図19には、サブトラック構造2の概略図が平面図(図19a))として示されるほか、マスターデバイスのトラック構造の四通りの例が縦断面図(構造の断面輪郭形状、図19b)、19c)、19d)、19e))で示されている。
【0103】
図19b)には、サブトラック構造2の断面輪郭形状の1つの切片が示されるが、そこには三つのパイロットマーキング、すなわち凹所が作り込まれている。凹所をトラックの向きに実質的に限定している側面8は、マスターデバイスの実質的に平坦な表面に対して直立姿勢をとっている。サブトラックの走査の際に、これらのパイロットマーキングにより反射される光ビームによって、サブトラックフォトダイオードE、FならびにG、Hの内部には、実質的に矩形波形である出力電圧が発生されるが、この電圧は、例えばトラッキングのためにさらに演算処理されるようになっている。実質的に矩形波形である信号の場合は、正弦波形である信号と比較して、高調波の数が増大し、それにより信号の(周波数に依存した)帯域幅が増大する点が短所となっている。
【0104】
図19c)には、サブトラック構造の断面輪郭形状の1つの切片が示されるが、そこには三つのパイロットマーキング、すなわち凹所が作り込まれている。凹所をトラックの向きに実質的に限定している直線状に延びる側面8が、マスターデバイスの実質的に平坦な表面に対する法線と、好ましくは10°〜40°の間、さらに好ましくは20°〜30°の間のフランク角を成して交わっている。検出の際には、傾斜した側面により、サブトラックフォトダイオードE、FならびにG、Hの出力信号が描く波形の斜面もまた、よりフラットなものとなり、それにより(信号波形の斜面が急傾斜である矩形波形の出力信号と比較して)発生する高調波が僅かとなり、その結果、信号の帯域幅も減少するという長所がもたらされる。
【0105】
図19d)には、サブトラック構造の断面輪郭形状の1つの切片が示されるが、そこには三つのパイロットマーキング、すなわち凹所が作り込まれている。凹所をトラックの向きに実質的に限定している側面8は、そこでは直線状にではなく、むしろ図示されるように凹状に延びている。しかし代替構成例として、側面は凸状に構成されてもよい。
【0106】
図19e)には、サブトラック構造の断面輪郭形状の1つの切片が示されるが、そこには三つのパイロットマーキング、すなわち凹所が作り込まれている。凹所をトラックの向きに実質的に限定している側面8は、マスターデバイスの第1の表面要素5と第2の表面要素6とを連続的につないでいる。側面が適切に構成された場合は、サブトラックフォトダイオードE、FならびにG、Hの内部に実質的に正弦波形である出力信号が発生され、これが、可能な限り高調波をなくしたトラッキング信号に転換される。それにより、信号に必要な帯域幅が十二分に最小限化されることになる。
【0107】
図20には、メイントラック構造1およびサブトラック構造2をマスターデバイス16の表面に作り出すための、本発明にしたがった装置の実施例が示されている。例えば1つのレーザを有する第1の単色光ピックアップ11は、メイントラック構造1の幅と概ね等しい第1の波長を持つ第1の光ビームを発生する。マスターデバイス16の表面に施されたフォトレジストが、メイントラック構造1の所定のジオメトリを生成するために適切に感光されるように、この第1の光ビームの強度は、1つのメイントラック生成器18を利用して調整されるようになっている。
【0108】
このメイントラック生成器18は、レーザを直接デジタル制御することによっても、ピット構造、すなわち実質的にスポット状である表面変化を作り出せるようになっており、さらに、電気光学式ビームデフレクタ13によりトラックウォブルを発生させるための、1つのアナログ信号を送出できるようになっている。
【0109】
フォトレジストの膜厚は、作成されることになるメイントラック構造1の深さと等しいことが好ましい。第1の光ビームのマスターデバイス16表面上の光点の幅が、メイントラック構造1の幅に対して概ね適合化されるように、1つのビーム形成器13と、1つの可動式対物レンズとを利用して、必要なビームジオメトリが発生されるようにしている。
【0110】
感光工程の間、フォトレジスト上の光点が、所望されるスパイラル状または同心円状に延びるメイントラック構造1を描写するように、マスターデバイスは、第1の光ビームの焦点面に対して平行に、適宜移動されるようになっている。マスターデバイス16の万一の凹凸に配慮するために、焦点制御ユニットを利用して、可動式対物レンズ15の再調整を連続的に行うことで、1つの同一形状の光点が達成されるようにしている。
【0111】
同様に1つのレーザを有しているとよい第2の単色光ピックアップ12は、サブトラック構造2の幅と概ね等しい第2の波長を持つ第2の光ビームを発生する。マスターデバイス16の表面に施されたフォトレジストが、サブトラック構造2の所定のジオメトリを生成するために適切に感光されるように、この第2の光ビーム12の強度は、1つのサブトラック構造フォーマッタ19を利用して変更されるようになっている。このサブトラック構造フォーマッタ19により、1つの交流信号を用いてレーザのスイッチをオンオフすることによって、様々な補助情報がサブトラック構造2に作り込まれるようになっている。
【0112】
その際には、第2の光ビーム12の光強度を第1の光ビーム11の光強度よりも小さく選定することによって、サブトラック構造2の深さが、メイントラック構造1の深さよりも浅くなるようにするとよい。
【0113】
サブトラックの深さおよび/または幅は、例えば図19e)に示されるような断面輪郭形状が描かれるように、連続的に変化するようにしてもよい。そのためには、サブトラック構造フォーマッタ19により、1つの定常出力にオーバーレイされる1つの適切な交流信号を用いて、レーザの動作制御が行われるようにするとよい。
【0114】
第2の光ビーム12の光点は、ビームデフレクタ14および投影光学系15を利用して、マスターデバイス16の表面上に発生されるが、その直径は、サブトラック構造2の幅と概ね等しくなっている。さらにそれに追加して、1つの交流信号を用いてビームデフレクタ14の動作制御も行われる場合は、二つのサブトラック構造2を、メイントラック構造1に対して対称に書き込むことができる。
【0115】
1つのミラーユニットを利用することで、光ビーム11および12を、心出しして重ね合わせることが可能となる。マスターデバイス表面上の第2の光ビーム12の光点から第1の光ビーム11の光点までの半径方向の距離は、サブトラック構造2の対称線からメイントラック構造1の対称線までの半径方向の距離と等しくなっている。この距離は、電気光学式ビームデフレクタ14にある1つの直流電圧オフセットをセットすることにより、調整できるようになっている。
【0116】
マスターデバイス16の表面にメイントラック構造1およびサブトラック構造2を作成するための装置はほかにも、メイントラック構造フォーマッタ18、サブトラック構造フォーマッタ19、および、マスターデバイス16が載置される少なくとも1つのターンテーブル17の動作制御を行うようになっている、さらにもう1つの制御計算機20を有している。
【0117】
図21には、マスターデバイス16の表面にメイントラック構造1およびサブトラック構造2を作成するための、さらにもう1つの本発明にしたがった装置が示されている。二つの単色光ピックアップ11および12は、それぞれ1つの光ビームを発生するが、これらは、例えば1つのミラーと1つのビーム集光装置とを有する1つのビームガイド装置を使用して、1つの光学系15を通り、マスターデバイスの表面に向けて偏向されるようになっている。
【0118】
図22には、市販のレーザ装置において見出すことができるような、中央のフォトダイオードA、B、C、Dならびにサブトラック用のフォトダイオードE、FならびにG、Hから成る配列が示されている。これらのフォトダイオードは、中心線mに対して対称に配置されている。図中の矢印は、トラックが延びる向きを示す。ディテクタまたは焼き付け装置の制御を通じて、それぞれのサブトラックダイオードを数学的に論理結合することによって、メイントラック構造の片側だけにサブトラック構造を構成することも可能となる。
【0119】
図23には、マスターデバイスの表面にメイントラック構造1およびサブトラック構造2を作成するための、さらにもう1つの本発明にしたがった装置が示されている。図20に示される、その他の点では同一である装置の補足事項として、マスター表面上に調整される両方の光ビームのレーザ焦点が、既存のビームパスから光ビームを取り出すことによって、1つの第1の測定カメラおよび1つの第2の測定カメラに投影されるようにしている。そこから導出される第2カメラの画像情報は制御計算機20に送られ、第1カメラの画像情報は画像処理ユニット30に送られる。画像処理ユニット30では、マスター表面上のレーザ焦点の位置が計算される。それにより距離を表わす1つの尺度が算出され、これが電気光学式デフレクタ14の動作制御に使用されるようになっている。それにより、サブトラックからメイントラックまでの距離をインラインで管理して、必要時には連続的に再調整することが可能となる。
【0120】
図24には、マスターデバイスの表面にメイントラック構造1およびサブトラック構造2を作成するための、さらにもう1つの本発明にしたがった装置が示されている。図23に示される装置に対して、使用される測定カメラは一台だけであり、その画像情報は、さらに演算処理を行うために、制御計算機20にも、また画像処理ユニット30にも送られるようになっている。
【符号の説明】
【0121】
1 メイントラック構造
2 サブトラック構造
3 サブトラック構造
4 メイントラック構造
5 メイントラック構造/マスターデバイスの第1表面要素
6 メイントラック構造/マスターデバイスの第2表面要素
7 メイントラック構造
8 側面
11 第1光ピックアップ/第1光ビーム
12 第2光ピックアップ/第2光ビーム
13 ビームデフレクタ/ビーム形成器
14 ビームデフレクタ
15 対物レンズ
16 マスターデバイス
17 ターンテーブル
18 メイントラック生成器/フォーマッタ
19 サブトラック生成器/フォーマッタ
20 制御計算機
30 画像処理ユニット
A フォトダイオード
B フォトダイオード
C フォトダイオード
D フォトダイオード
E フォトダイオード
F フォトダイオード
G フォトダイオード
H フォトダイオード
L 長さ
M 中心線
S 距離
TH メイントラック深さ
Tn サブトラック深さ
TP トラックピッチ
W メイントラック幅
Wn サブトラック幅
【図1a)】

【図1b)】

【図2a)】

【図2b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の製造プロセスにおいて使用可能なマスターデバイスであって、前記マスターデバイスの表面に実質的にスパイラル状または同心円状に延びる1つのメイントラック構造と、実質的にスパイラル状または同心円状に延びる少なくとも1つのサブトラック構造とが構成されており、またその際には前記サブトラック構造が前記メイントラック構造の少なくとも片側に配置されており、さらに、
前記サブトラック構造が複数の不連続部を有しており、これらの不連続部により、前記記録媒体の表面に少なくとも1つの第1の補助情報が描写されるように、前記記録媒体の光学的に識別可能な表面性状に変化が与えられるようになっている、マスターデバイス。
【請求項2】
前記記録媒体が予め定められたある一定の表面準位を有しており、前記光学的に識別可能な特性が、実質的にトラックの向きに沿って配置される二つの不連続部の間に設けられた、前記表面準位からのある一定の偏差であることを特徴とする、請求項1に記載のマスターデバイス。
【請求項3】
前記記録媒体において光学的に識別可能な特性が、実質的にトラックの向きに沿って配置された二つの不連続部の間に設けられた、前記表面準位からのある一定の実質的にスポット状の偏差であることを特徴とする、請求項1または2に記載のマスターデバイス。
【請求項4】
前記表面準位からの前記偏差が、1つの凹所であることを特徴とする、請求項1から3の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項5】
前記表面準位からの前記偏差が、1つの隆起部であることを特徴とする、請求項1から4の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項6】
前記メイントラック構造が、トラックの向きに沿って少なくとも区画ごとに、しかし特に連続的に、実質的に均質な表面性状として構成されることを特徴とする、請求項1から5の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項7】
前記メイントラック構造が、複数の不連続部を有することを特徴とする、請求項1から6の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項8】
前記記録媒体の表面に1つの第2の補助情報が描写されるように、前記記録媒体の1つのサブトラック構造の光学的に識別可能な表面性状に変化を与えるようになっている、ある一定の表面性状を有することを特徴とする、請求項1から7の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項9】
前記マスターデバイスが、トラック変調なしで構成されることを特徴とする、請求項1から8の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項10】
前記メイントラック構造が、トラック変調を有して構成されることを特徴とする、請求項1から9の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項11】
前記トラック変調が、半径方向の、実質的に正弦波形を描くトラック変調であることを特徴とする、請求項1から10の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項12】
前記トラック変調が、単一周波数トラック変調であることを特徴とする、請求項1から11の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項13】
前記トラック変調が、トラック幅変調であることを特徴とする、請求項1から12の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項14】
前記トラック変調が、さらにもう1つの補助情報を具現することを特徴とする、請求項1から13の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項15】
前記サブトラック構造が、前記メイントラック構造の幾何学的中心までの半径方向の距離を実質的に不変として配置されることを特徴とする、請求項1から14の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項16】
前記サブトラック構造が、前記メイントラック構造の片側だけに配置されることを特徴とする、請求項1から15の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項17】
前記サブトラック構造の高さおよび/または深さが不定であることを特徴とする、請求項1から16の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイス。
【請求項18】
請求項1から16の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイスを使用した製造方法により得られる記録媒体。
【請求項19】
マスターデバイスを製造するための装置であって、
-1つの第1の光ビームを利用して、1つの支持基板の表面に1つのメイントラック構造を記録するための、1つの第1の光学装置と、
-前記第1の光ビーム(11)が通過する、1つの電気光学式ビームデフレクタ(13)と、
-1つの第2の光ビーム(12)を利用して、前記支持基板の表面に1つのサブトラック構造を記録するための、1つの第2の光学装置とを有しており、またその際には、
-前記第2の光ビーム(12)が、送られてくる1つの制御信号を利用して、前記メイントラック構造および前記サブトラック構造の半径方向の中心間距離を実質的にある1つの等距離に調整するようになっている1つの第2の電気光学式ビームデフレクタ(14)を通過するようになっており、ほかにもさらに、
-少なくとも1つの第1および/または第2の補助情報に従属して、前記第2の光ビーム(12)の動作制御を行う、1つのサブトラック構造生成器(19)と、
-両方の単色光ビームのマスター表面上に調整されたレーザ焦点が投影される、少なくとも1つの測定カメラと、
-実質的に少なくとも1つの測定カメラの画像情報から、前記マスター表面上の前記メインビームおよびサブビームのレーザ焦点の位置を計算する、少なくとも1つの画像処理ユニットと
を有する、特に請求項1から16の少なくともいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記電気光学式ビームデフレクタ(13)を利用して、前記第1の光ビーム(11)のトラック広さ変調が行われることを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記第1の光ビーム(11)の動作制御が、1つのメイントラック生成器(18)を利用して行われることを特徴とする、請求項19または20に記載の装置。
【請求項22】
前記メイントラック生成器(18)が、前記第1の光ビーム(11)の動作制御のために、1つの直流信号と1つの交流信号とを出力することを特徴とする、請求項19から21の少なくともいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記メイントラック生成器(18)が、前記電気光学式ビームデフレクタ(13)の動作制御のために、1つのアナログ信号を出力することを特徴とする、請求項19から22の少なくともいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記第2の光ビーム(12)の動作制御が、1つのサブトラック生成器(19)を利用して行われることを特徴とする、請求項19から23の少なくともいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記サブトラック生成器(19)が、前記第2の光ビーム(12)の動作制御のために、1つの直流信号と1つの交流信号とを出力することを特徴とする、請求項19から24の少なくともいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記サブトラック生成器(19)が、前記第2の電気光学式ビームデフレクタ(14)の動作制御のために、1つの直流電圧信号および/または交流電圧信号を出力することを特徴とする、請求項19から25の少なくともいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記第2のビームデフレクタ(14)に送られる前記制御信号が、直流成分を持つ1つの電圧信号であることを特徴とする、請求項19から26の少なくともいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記メイントラック生成器(18)により、前記電気光学式ビームデフレクタ(13)の動作制御のために出力される前記アナログ信号が、前記電気光学式ビームデフレクタ(14)に送られることを特徴とする、請求項19から27の少なくともいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
請求項1から16の少なくともいずれか一項に記載のマスターデバイスを使用した、記録媒体の製造装置。
【請求項30】
マスターデバイスの製造方法であって、
1つの第1の光ビーム(11)を曝射して、1つの支持基板に1つのメイントラック構造を感光により形成する工程、またその際には、前記支持基板の表面に1つのフォトレジストが施されていること、
1つの第2の光ビーム(12)を曝射して、前記支持基板に1つのサブトラック構造を感光により形成する工程、
感光されたフォトレジストを現像する工程、
感光されなかったフォトレジストを前記支持基板から除去する工程、
1つの第1の金属皮膜を前記支持基板の表面に施す工程、および、
1つの第2の金属皮膜を支持基板の表面に施す工程
から成る、請求項1から16の少なくともいずれか一項に記載の方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17a)】
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【図17b)】
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【図17c)】
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【図17d)】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2010−529584(P2010−529584A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510695(P2010−510695)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004536
【国際公開番号】WO2008/148567
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509335306)
【Fターム(参考)】