説明

マット材、マット材の製造方法、消音器、及び、消音器の製造方法

【課題】自動車の消音器等の用途で高温条件下に設置された場合においても、風蝕及び熱劣化による破損を防止することができるとともに、取り扱い性に優れたマット材を提供すること。
【解決手段】主に無機繊維からなり、表面に形成されたニードル貫入痕から上記ニードル貫入痕が形成された表面と反対側の表面に形成されたニードル貫出痕まで進展するニードルパンチング処理によって形成された複数のニードル痕を有し、上記ニードル貫出痕では、複数の上記無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束が形成されるとともに、少なくとも一方の表面に上記無機繊維束が形成されていることを特徴とするマット材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット材、マット材の製造方法、消音器、及び、消音器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の内燃機関においては、内燃機関から発生した排ガスが排気経路を通じて外部に排出されることに伴って、騒音が発生することが知られている。
そこで、騒音を減衰させることを目的として、排気経路に設置される消音器が種々提案されている。
特に、高周波数領域の騒音を減衰させる目的には、無機繊維等からなるマット材と、マット材が巻付けられる複数の小孔を有するインナーパイプと、マット材及びインナーパイプが内部に配設されるアウターパイプとからなる消音器が用いられている。
【0003】
このような消音器では、一般に、内燃機関から排出された排ガスは、排気経路を通じてインナーパイプの入口側からインナーパイプ内に流入する。そして、インナーパイプ内を通過した排ガスは、インナーパイプの出口側から外部に排出される。この際、インナーパイプに形成された複数の小孔及びこれら小孔を取り囲むマット材によって、高周波数領域の騒音が吸音、拡散等される。消音器をこのような構造とすることにより、特に高周波数領域の騒音を減衰させることができる。
【0004】
このような消音器に用いられるマット材としては、結晶化率を制御した結晶質アルミナ繊維を用いたマット材が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−022817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のマット材は、騒音を減衰させる一定の効果があるものの、このようなマット材を消音器に用いた場合には、排ガスの流動に伴う応力によるマット材の表面付近の無機繊維の剥離、即ち、マット材の風蝕が発生し、最終的には、マット材が破損する。その結果、騒音を減衰させる効果が減少したり、断熱性が低下してアウターパイプの温度が上昇することによりアウターパイプの外観が損なわれたりするという問題が発生してしまう。これは、特許文献1に記載のマット材では、層間強度が充分高いとはいえないためであると考えられる。
【0007】
また、特許文献1のマット材を用いて消音器を製造する場合には、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに圧入することが困難であり、取り扱い性に劣るという問題もある。
【0008】
従って、自動車の消音器等に用いられた場合においても、風蝕による破損を防止することができるとともに、取り扱い性に優れたマット材が求められていた。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、例えば、自動車の消音器等に用いられた場合においても、風蝕による破損を防止することができるとともに、取り扱い性に優れたマット材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のマット材は、主に無機繊維からなり、表面に形成されたニードル貫入痕から上記ニードル貫入痕が形成された表面と反対側の表面に形成されたニードル貫出痕まで進展するニードルパンチング処理によって形成された複数のニードル痕を有し、
上記ニードル貫出痕では、複数の上記無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束が形成されるとともに、
少なくとも一方の表面に上記無機繊維束が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載のマット材によると、上記マット材は、表面に形成されたニードル貫入痕から上記ニードル貫入痕が形成された表面と反対側の表面に形成されたニードル貫出痕まで進展するニードルパンチング処理によって形成された複数のニードル痕を有している。
即ち、上記マット材では、マット材の厚さ方向の全体に渡ってニードル痕及びニードル痕近傍で無機繊維の交絡が発生しており、マット材全体の層間強度が高くなっている。そのため、このような構成を有する請求項1に記載のマット材を消音器に用いた場合には、排ガスの流動に伴う応力により無機繊維が剥離することが少なく、風蝕によるマット材全体の破損を防止することができる。
従って、騒音を減衰させる効果を長期間に渡って維持することができる。
また、マット材の断熱性が損なわれにくいので、アウターパイプの温度の上昇を防止することができる。ひいては、アウターパイプの熱による変色の発生を防止することができる。従って、アウターパイプの外観が損なわれにくいマット材とすることができる。
【0012】
なお、本明細書において、ニードルパンチング処理とは、焼成後にマット材となるシート状物の一方の表面から他方の表面に向かって複数のニードルを貫通させることにより、シート状物を構成し、焼成後に無機繊維となる無機繊維前駆体を互いに絡み合った状態とさせる処理、即ち、無機繊維前駆体を交絡させる処理のことをいう。
このようなニードルパンチング処理を行ったシート状物を焼成して、無機繊維前駆体に含まれる有機重合体を分解、焼失させることで無機繊維の交絡が発生したマット材が得られることとなる。
また、層間強度とは、引っ張りや引き裂き等の操作によってマット材に負荷がかけられた際にマット材が元の形状を維持しうる最大応力のことをいう。
この層間強度とマット材における無機繊維の交絡とは相関関係にあり、マット材における無機繊維の交絡の程度が大きいほど、また、無機繊維の交絡の数が多いほどマット材全体の層間強度が高くなることになる。
【0013】
請求項1に記載のマット材が上述した効果を発揮することができる理由について、図面を用いて以下に説明する。
図1(a)は、請求項1に記載のマット材の一例を厚さ方向に沿って切断したときに得られる断面を含むマット材を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
請求項1のマット材10は、主に無機繊維からなり、その外形は、平面視略矩形で所定の厚さを有する平板状である。請求項1のマット材10の外形に関しては、後述する第一実施形態の記載で説明することとして、以下、請求項1のマット材10の表面及び内部の詳細な構成について説明する。
【0014】
図1(a)に示すように、請求項1に記載のマット材10の表面13aにおいては、上述したニードルパンチング処理を行うことによりニードルが貫入した箇所に、ニードル貫入痕14が形成されている。また、ニードル貫入痕14が形成された表面13aと反対側の表面13bにおいては、ニードルが貫出した箇所(ニードル貫入痕14に対応する箇所)に、ニードル貫出痕15が形成されている。そして、マット材10の内部では、ニードル貫入痕14からニードル貫出痕15まで進展する複数のニードル痕16が形成されており、ニードル痕16及びニードル痕16の近傍17では、無機繊維の交絡が発生している。
【0015】
ニードル痕及びニードル痕近傍で無機繊維の交絡が発生するのは、次のような理由によると考えられる。
ここでは、ニードルパンチング処理に用いられるニードルとして、先端部分の側面の略全周に渡って、先端方向(貫入方向)に向かって突出した複数の刺状の突起部(バーブ)が形成されたニードルを用いた場合を例に説明する。
上述したニードルを用いて、無機繊維前駆体からなるシート状物に対してニードルパンチング処理を行った場合、まず、ニードルがシート状物の表面に貫入する。そして、バーブがニードル近傍の無機繊維前駆体をニードルの進行方向に巻き込むことによりニードル近傍の無機繊維前駆体に交絡を発生させながら、ニードルが無機繊維前駆体中を進行する。その後、ニードルが引き抜かれるが、バーブがニードルが引き抜かれる方向と反対の方向に形成されているので、無機繊維前駆体が再度バーブに巻き込まれることはない。そのため、ニードルが引き抜かれた後に形成されるニードル痕及びニードル痕近傍では、無機繊維前駆体の交絡が発生する。従って、このシート状物を焼成することによりニードル痕及びニードル痕近傍で無機繊維の交絡が発生したマット材が得られることになる。
【0016】
このように、請求項1に記載のマット材10では、マット材10の厚さ方向の全体に渡ってニードル痕16及びニードル痕16の近傍17で無機繊維が絡み合っているので、ニードルパンチング処理を行っていないマット材に比べてマット材10全体の層間強度が高くなっている。
従って、請求項1に記載のマット材を消音器に用いた場合には、排ガスの流動に伴う応力により無機繊維が剥離することが少なく、風蝕によるマット材の破損を防止することができる。
【0017】
また、図1(a)に示すように、請求項1に記載のマット材10の表面13bに形成された複数のニードル貫出痕15では、マット材10を構成する無機繊維が多数集まって束になることで無機繊維束18が形成されている。そして、この無機繊維束18の形状がループを形成するように、無機繊維束18を構成する各々の無機繊維の向きが一定の方向に揃っている(以下、無機繊維の向きが一定の方向に概ね揃うことを配向するともいう)。さらに、無機繊維束18の両端部がともにマット材と結合することにより、両端部が閉じたループ状(以下、閉ループ状ともいう)となっている。
【0018】
このように、請求項1に記載のマット材10においては、無機繊維束18を構成する各々の無機繊維が閉ループ状に配向しており、無機繊維の毛羽立ちが少ない。従って、例えば、請求項1に記載のマット材を用いて消音器を製造する場合には、無機繊維束18を構成する無機繊維が作業者の皮膚に刺さることが少ないので、作業者にとって安全性の高いマット材とすることができる。
【0019】
なお、無機繊維束18の形状としては、上述した閉ループ状であれば特に限定されず、その一例として、図1(b)に示す形状等が挙げられる。図1(b)は、図1(a)に示すマット材10の表面13bに形成された無機繊維束18を模式的に示した斜視図である。
図1(b)に示すように、無機繊維束18の形状としては、例えば、閉ループ状に配向した無機繊維束18がマット材10の表面に横たわった形状18a、閉ループ状に配向した無機繊維束18がねじれて交差した形状18b、閉ループ状に配向した無機繊維束18がマット材10の表面から突出した形状18c、閉ループ状に配向した無機繊維束18の一部が小ループを形成した形状18d、閉ループ状に配向した無機繊維束18がマット材10の表面からわずかに突出した形状18e等が挙げられる。
【0020】
請求項1に記載のマット材において、無機繊維束18が形成される理由は、次のようであると考えられる。
上述したニードルパンチング処理では、バーブに巻き込まれた複数の無機繊維前駆体がバーブに絡まった状態で、ニードルがシート状物の内部を進行する。この過程で、無機繊維前駆体が、ニードルの先端部分の側面の略全周に渡って形成されたバーブに沿ってループ状に配向することになる(以下、ループ状に配向した無機繊維前駆体を束状の無機繊維前駆体ともいう)。そして、シート状物のニードルが貫入した側と反対側の表面にニードルが貫出することにより、束状の無機繊維前駆体の大部分はニードル貫出痕から押し出される。その後、ニードルが引き抜かれことになるが、バーブはニードルが引き抜かれる方向と逆方向に向かって突出しているため、束状の無機繊維前駆体が再度バーブに巻き込まれてしまうことがない。従って、シート状物の表面のニードル貫出痕には、閉ループ状に配向してなる束状の無機繊維前駆体がとどまることになる。そのため、このシート状物を焼成することで、マット材の表面のニードル貫出痕に、無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束が形成されたマット材が得られることになる。
なお、無機繊維束は、全てのニードル貫出痕に形成されていてもよいし、一部のニードル貫出痕に形成されていてもよい。
【0021】
請求項1に記載のマット材10においては、マット材10の表面13bに形成された無機繊維束18によりマット材10の表面13bに微細な凹凸が形成されている。この微細な凹凸により、マット材10の表面13bが他の物体の表面と接触した場合の接触面積が小さくなるので、マット材10の表面13bの摩擦係数が、無機繊維束が形成されていないマット材の表面と比べて小さくなっている。
そのため、例えば、このようなマット材10を用いて消音器を製造する場合には、マット材10の表面13bがアウターパイプ側(外側)に配置されるようにしてインナーパイプにマット材10を巻付けた後に、このインナーパイプをアウターパイプに圧入することにより、無機繊維束18が形成されたマット材10の表面13bとアウターパイプの内面との間の摩擦力を低減させることができる。
従って、請求項1に記載のマット材を用いて消音器を製造する場合には、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに容易に圧入することができるので、取り扱い性に優れたマット材とすることができる。
【0022】
以上詳述したように、請求項1に記載のマット材を消音器に用いた場合には、マット材全体の層間強度が高くなっているので、排ガスの流動に伴う応力により無機繊維が剥離することが少なく、風蝕によるマット材の破損を防止することができる。従って、騒音を減衰させる効果を長期間に渡って維持することができる。
さらに、請求項1に記載のマット材を用いて消音器を製造する場合には、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに容易に圧入することができるので、取り扱い性に優れたマット材とすることができる。
なお、本明細書案において、主に無機繊維からなるマット材とは、無機繊維を60重量%以上、好ましくは、80重量%以上含むマット材のことをいうこととする。なお、マット材には、無機繊維以外に、例えば、有機バインダ、無機バインダ、有機繊維、有機フィルム、金属繊維、バーミキュライト等がマット材に含まれていてもよい。無機繊維以外に上記有機バインダ等が含まれている場合には、後述する請求項7に記載のマット材の説明にあるように、マット材を構成する無機繊維同士を互いに接着することができる。そのため、無機繊維がマット材から脱落しにくくなる。
【0023】
請求項2に記載のマット材では、上記ニードル痕が上記マット材の第一の表面に形成された第一のニードル貫入痕から第二の表面に形成された第一のニードル貫出痕まで進展する第一のニードル痕と、
上記マット材の第二の表面に形成された第二のニードル貫入痕から第一の表面に形成された第二のニードル貫出痕まで進展する第二のニードル痕とからなる。
【0024】
請求項2に記載のマット材においては、上記第一のニードル痕と上記第二のニードル痕との進展方向が互いに対向している。即ち、上記第一のニードル痕近傍と上記第二のニードル痕近傍とでは、無機繊維の交絡の方向が互いに異なっており、マット材全体では無機繊維がより複雑に絡み合っている。
従って、請求項2に記載のマット材においては、マット材の厚さ方向の全体に渡って層間強度がより高くなっている。
従って、請求項2に記載のマット材を消音器に用いた場合には、請求項1に記載の効果を奏することができるとともに、排ガスの流動に伴う応力により無機繊維が剥離することがより少ないので、風蝕によるマット材の破損をより効率よく防止することができる。
【0025】
請求項3に記載のマット材では、上記第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度と、上記第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度とが異なる。
【0026】
ここで、マット材の表面における無機繊維束を含む部分の強度は、無機繊維束が形成されていない部分の強度に比べて低いと考えられる。そのため、マット材を消音器に用いた場合に、マット材の表面における無機繊維束を含む部分がインナーパイプの小孔から露出して排ガスの流動に伴う応力にさらされると、マット材の表面に風蝕が発生することがあると考えられる。従って、風蝕によるマット材の表面の破損を防止するためには、インナーパイプ側(内側)に配置されるマット材の表面に無機繊維束が形成されていないことが望ましい。
一方、風蝕によるマット材全体の破損の発生をより効率的に防止するためには、進展方向が互いに異なる上記第一のニードル痕と上記第二のニードル痕とを形成してマット材全体の層間強度をより高くすることが望ましい。このような状態では、マット材の第一及び第二の表面にともに無機繊維束が形成されていることになる。
【0027】
請求項3に記載のマット材は、無機繊維束の形成密度が互いに異なる第一の表面と第二の表面とを有することで、上述した相反する目的を達成している。
即ち、請求項3に記載のマット材を消音器に用いた場合においては、無機繊維束が多い表面をアウターパイプ側(外側)に配置し、無機繊維束が少ない表面をインナーパイプ側(内側)に配置することで、インナーパイプ側に配置されたマット材の表面においてマット材の表面の無機繊維が剥離することを最小限に抑えつつ、マット材全体の層間強度をさらに高くすることができる。従って、風蝕によるマット材全体の破損をさらに効率よく防止することができる。
【0028】
請求項4に記載のマット材では、上記無機繊維の平均繊維径が3〜10μmである。
ここで、上記無機繊維の平均繊維径が3〜10μmであると、無機繊維自体の強度を充分確保することができるため、マット材全体の層間強度を高くすることができる。
これに対して、上記無機繊維の平均繊維径が3μm未満であると、無機繊維自体の強度が低くなることがあり、マット材全体の層間強度が低くなる場合がある。
また、上記無機繊維の平均繊維径が10μmを超えると、上記無機繊維の表面積が小さくなり、マット材の吸音特性の低下を招くことがある。さらには、単位体積あたりのマット材を構成する無機繊維の数が少なくなるため、ニードル痕及びニードル痕近傍で互いに絡み合う無機繊維の数が少なくなり、マット材全体の層間強度が低くなることがある。
【0029】
請求項4に記載のマット材によると、上記無機繊維の平均繊維径が上記範囲となっているので、全体の層間強度がさらにより高いマット材とすることができる。
従って、請求項4に記載のマット材を消音器に用いた場合には、請求項1に記載の効果を奏することができるとともに、排ガスの流動に伴う応力により無機繊維が剥離することがさらにより少ないので、風蝕によるマット材の破損をさらにより効率よく防止することができる。
【0030】
請求項5に記載のマット材では、上記ニードル痕の形成密度が、7〜30個/cmである。
ニードル痕の形成密度が7〜30個/cmであると、単位面積あたりに形成されるニードル痕を充分確保することができるので、マット材全体の層間強度を高くすることができる。さらには、マット材の表面に形成される無機繊維束が充分確保されるので、無機繊維束が形成されたマット材の表面の摩擦係数が小さくなる。そのため、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに圧入する場合に、マット材の表面とアウターパイプの内面との間の摩擦力を低減させることができる。
また、ニードルパンチング処理において、無機繊維前駆体が細かく裁断されにくくなるので、無機繊維自体の強度を充分確保することができる。従って、マット材全体の層間強度を高くすることができる。
これに対して、ニードル痕の形成密度が7個/cm未満であると、単位面積あたりに形成されるニードル痕が少なくなることがあり、マット材全体の層間強度が低くなる場合がある。さらには、マット材の表面に形成される無機繊維束が少なくなることがあり、無機繊維束が形成されたマット材の表面の摩擦係数が大きくなる場合がある。
また、ニードル痕の形成密度が30個/cmを超えると、無機繊維前駆体が細かく裁断されてしまうことがあり、無機繊維自体の強度が低くなる場合がある。
【0031】
請求項5に記載のマット材によると、上記ニードル痕の形成密度が上記範囲となっているので、全体の層間強度が極めて高いマット材とすることができる。
従って、請求項5に記載のマット材を消音器に用いた場合には、請求項1に記載の効果を奏することができるとともに、排ガスの流動に伴う応力により無機繊維が剥離することが極めて少ないので、風蝕によるマット材の破損を極めて効率よく防止することができる。
また、請求項5に記載のマット材は、上記ニードル痕の形成密度が上記範囲となっているので、請求項5に記載のマット材を用いて消音器を製造する場合には、マット材の表面とアウターパイプの内面との間の摩擦力をより低減させることができる。従って、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプにより容易に圧入することができるので、取り扱い性により優れたマット材とすることができる。
【0032】
請求項6に記載のマット材では、上記無機繊維は、アルミナ及びシリカのうちの少なくとも一つを含む無機繊維である。
請求項6に記載のマット材によると、マット材を構成する無機繊維がアルミナ及びシリカのうちの少なくとも一つを含む無機繊維であり、耐熱性に優れている。
従って、請求項6に記載のマット材を用いた消音器を排気経路に設置した場合であっても、無機繊維が溶損しにくい。従って、例えば、二輪自動車等のように内燃機関と消音器との距離が短く、排ガスの温度が800〜850℃程度の高温になる場合であっても、騒音を減衰させる効果をより長期間に渡って維持することができる。
【0033】
請求項7に記載のマット材では、上記マット材が有機バインダを含んでいる。
請求項7に記載のマット材によると、マット材を構成する無機繊維同士が有機バインダによって互いに接着されているので、マット材を構成する無機繊維の脱落が発生しにくい。
従って、請求項7に記載のマット材を用いて消音器を製造する場合には、インナーパイプへのマット材の巻付け等の加工を行っても、無機繊維の脱落が発生することが少なく、脱落した無機繊維が作業者の皮膚に刺さったり、脱落して飛散した無機繊維を吸い込んだりすることが少ないので、作業者にとって安全性の高いマット材とすることができる。
【0034】
請求項8に記載のマット材の製造方法は、無機化合物と有機重合体とを少なくとも含む紡糸用混合物を紡糸して無機繊維前駆体を作製する紡糸工程と、
上記無機繊維前駆体を圧縮してシート状物を作製する圧縮工程と、
上記シート状物の少なくとも一方の表面にニードルパンチング処理を行うことにより、上記シート状物の少なくとも一方の表面に上記無機繊維前駆体が閉ループ状に配向してなる束状の無機繊維前駆体が形成されたニードルパンチング処理体を作製するニードルパンチング工程と、
上記ニードルパンチング処理体を焼成する焼成工程とを行うことにより、主に無機繊維からなり、上記束状の無機繊維前駆体が焼成されてなる無機繊維束を有するマット材を製造することを特徴とする。
請求項8に記載のマット材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項1に記載のマット材を好適に製造することができる。
【0035】
請求項9に記載のマット材の製造方法では、上記シート状物の両面に上記ニードルパンチング処理を行う。
請求項9に記載のマット材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項2に記載のマット材を好適に製造することができる。
【0036】
請求項10に記載のマット材の製造方法では、上記シート状物の一方の表面と他方の表面とで、上記シート状物に貫入させるニードルの数を変えて上記ニードルパンチング処理を行う。
請求項10に記載のマット材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項3に記載のマット材を好適に製造することができる。
【0037】
請求項11に記載のマット材の製造方法では、上記シート状物の一方の表面側と他方の表面側とで、上記シート状物にニードルを貫入させる回数を変えて上記ニードルパンチング処理を行う。
請求項11に記載のマット材の製造方法によっても、上述した工程を行うことにより、請求項3に記載のマット材を好適に製造することができる。
【0038】
請求項12に記載のマット材の製造方法では、上記マット材を構成する無機繊維の平均繊維径が3〜10μmである。
請求項12に記載のマット材の製造方法によると、上述した工程を行うことにより、請求項4に記載のマット材を好適に製造することができる。
【0039】
請求項13に記載のマット材の製造方法では、上記ニードルパンチング処理によって形成されたニードル痕の形成密度が7〜30個/cmである。
請求項13に記載のマット材の製造方法によると、上述した工程を行うことにより、請求項5に記載のマット材を好適に製造することができる。
【0040】
請求項14に記載のマット材の製造方法では、上記無機化合物に、焼成後にアルミナとなる無機化合物、及び、焼成後にシリカとなる無機化合物のうちの少なくとも一つが含まれている。
請求項14に記載のマット材の製造方法によると、上述した工程を行うことにより、請求項6に記載のマット材を好適に製造することができる。
【0041】
請求項15に記載のマット材の製造方法では、上記ニードルパンチング処理体を焼成する焼成工程を行った後、さらに、有機バインダ溶液を含浸させることにより含浸マット材を作製する含浸工程と、
上記含浸マット材を乾燥させる乾燥工程とを行う。
請求項15に記載のマット材の製造方法によると、上述した工程を行うことにより、請求項7に記載のマット材を好適に製造することができる。
【0042】
請求項16に記載の消音器は、複数の小孔が形成されたインナーパイプと、
上記インナーパイプの側面に巻付けられるマット材と、
上記マット材が側面に巻付けられたインナーパイプが内部に配設されるアウターパイプと、上記アウターパイプの両端部に配設される端部用部材とからなる内燃機関の排気経路に設置される消音器であって、
上記マット材は、請求項1〜7のいずれかに記載のマット材であることを特徴とする。
請求項16に記載の消音器は、自動車の消音器等の用途で高温条件下に設置された場合においても、風蝕による破損を防止することができるマット材がインナーパイプとアウターパイプとの間に配設されている。
従って、請求項16に記載の消音器は、騒音を減衰させる効果を長期間に渡って維持することができる。また、アウターパイプの外観が損なわれにくい。
【0043】
請求項17に記載の消音器は、複数の小孔が形成されたインナーパイプと、
上記インナーパイプの側面に巻付けられるマット材と、
上記マット材が側面に巻付けられたインナーパイプが内部に配設されるアウターパイプと、上記アウターパイプの両端部に配設される端部用部材とからなる内燃機関の排気経路に設置される消音器であって、
上記マット材は、請求項8〜15のいずれかに記載のマット材の製造方法で製造したマット材であることを特徴とする。
請求項17に記載の消音器は、自動車の消音器等の用途で高温条件下に設置された場合においても、風蝕による破損を防止することができるマット材がインナーパイプとアウターパイプとの間に配設されている。
従って、請求項17に記載の消音器は、騒音を減衰させる効果を長期間に渡って維持することができる。また、アウターパイプの外観が損なわれにくい。
【0044】
請求項18に記載の消音器の製造方法では、複数の小孔が形成されたインナーパイプの側面にマット材を巻付ける巻付け工程と、
上記マット材が側面に巻付けられたインナーパイプをアウターパイプの内部に圧入して圧入体を作製する圧入体作製工程と、
上記圧入体のアウターパイプの両端部に端部用部材を配設した後に、上記端部用部材と上記圧入体のアウターパイプとを固定する固定工程とを行う消音器の製造方法であって、
上記マット材は、請求項1〜7のいずれかに記載のマット材であり、上記マット材の上記無機繊維束が形成された表面がアウターパイプ側に配置されるようにしてマット材をインナーパイプに巻付けることを特徴とする。
請求項18に記載の消音器の製造方法によると、上述した工程を行うことにより、請求項16に記載の消音器を好適に製造することができる。
また、請求項18に記載の消音器の製造方法においては、上記マット材の表面のうち、上記無機繊維束が形成されており摩擦係数が小さい表面がアウターパイプ側に配置されるようにマット材をインナーパイプに巻付ける。
そのため、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに圧入しても、マット材の表面とアウターパイプの内面との間の摩擦力を低減させることができる。従って、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに容易に圧入することができる。
従って、請求項18に記載の消音器の製造方法では、請求項16に記載の消音器を効率よく製造することができる。
また、マット材として、請求項7に記載のマット材を用いた場合には、巻付け工程を行っても、無機繊維の脱落が発生することが少なく、脱落した無機繊維が作業者の皮膚に刺さったり、脱落して飛散した無機繊維を吸い込んだりすることが少ないので、作業者にとって高い安全性を確保することができる。
【0045】
請求項19に記載の消音器の製造方法では、複数の小孔が形成されたインナーパイプの側面にマット材を巻付ける巻付け工程と、
上記マット材が側面に巻付けられたインナーパイプをアウターパイプの内部に圧入して圧入体を作製する圧入体作製工程と、
上記圧入体のアウターパイプの両端部に端部用部材を配設した後に、上記端部用部材と上記圧入体のアウターパイプとを固定する固定工程とを行う消音器の製造方法であって、
上記マット材は、請求項8〜15のいずれかに記載のマット材の製造方法で製造したマット材であり、上記マット材の上記無機繊維束が形成された表面がアウターパイプ側に配置されるようにしてマット材をインナーパイプに巻付けることを特徴とする。
請求項19に記載の消音器の製造方法によると、上述した工程を行うことにより、請求項17に記載の消音器を好適に製造することができる。
また、請求項19に記載の消音器の製造方法においては、上記マット材の表面のうち、上記無機繊維束が形成されており摩擦係数が小さい表面がアウターパイプ側に配置されるようにマット材をインナーパイプに巻付ける。
そのため、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに圧入しても、マット材の表面とアウターパイプの内面との間の摩擦力を低減させることができる。従って、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに容易に圧入することができる。
従って、請求項19に記載の消音器の製造方法では、請求項17に記載の消音器を効率よく製造することができる。
また、マット材として、請求項15に記載のマット材の製造方法で製造したマット材を用いた場合には、巻付け工程を行っても、無機繊維の脱落が発生することが少なく、脱落した無機繊維が作業者の皮膚に刺さったり、脱落して飛散した無機繊維を吸い込んだりすることが少ないので、作業者にとって高い安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1(a)は、本発明のマット材の一例を厚さ方向に沿って切断したときに得られる断面を含むマット材を模式的に示す一部切り欠き斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すマット材の表面に形成された無機繊維束を模式的に示した斜視図である。
【図2】図2(a)は、本発明のマット材の一例について、一方の表面側から観察した状態を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示したマット材を他方の表面側から観察した状態を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明のマット材の表面のニードル貫出痕に形成された無機繊維束の光学顕微鏡写真である。
【図4】図4(a)は、本発明の消音器の一例を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示した消音器のA−A線断面図である。
【図5】図5(a)、図5(b)、図5(c)及び図5(d)は、それぞれ順に本発明の消音器を構成するマット材、インナーパイプ、アウターパイプ及び端部用部材の一例を模式的に示す斜視図である。
【図6】図6は、図5(a)〜(d)に示すインナーパイプ、マット材、アウターパイプ及び端部用部材を用いて消音器を製造する様子を模式的に示す斜視図である。
【図7】図7(a)は、層間強度測定装置の説明図であり、図7(b)は、層間強度測定用サンプルの形状を模式的に示す斜視図である。
【図8】摩擦係数測定装置の説明図である。
【図9】図9(a)は、本発明のマット材の一例について、一方の表面側から観察した状態を模式的に示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)に示したマット材を他方の表面側から観察した状態を模式的に示す斜視図である。図9(c)は、図9(a)に示したマット材を長さ方向に対して垂直な方向に切断して得られる断面について模式的に示すD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第一実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第一実施形態について、図2(a)及び図2(b)、図3、図4(a)及び図4(b)、並びに、図5(a)、図5(b)、図5(c)及び図5(d)を参照しながら説明する。
【0048】
図2(a)は、本実施形態のマット材の一例について、一方の表面側から観察した状態を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示したマット材を他方の表面側から観察した状態を模式的に示す斜視図である。
【0049】
まず、本実施形態のマット材の構成について説明する。
本実施形態のマット材10は、平均繊維径が3〜10μmであり、主にアルミナとシリカとを含む無機繊維から形成されたものである。そして、図2(a)及び図2(b)に示すように、その外形は、所定の長さ(図2(a)中、矢印Lで示す)、幅(図2(a)中、矢印Wで示す)及び厚さ(図2(a)中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の平板状である。
なお、以下の説明では、マット材10の表面13aをA表面と、A表面の反対側の表面13bをB表面ともいうこととする。そして、マット材10の長さ方向に平行な端面24a、24b(以下、長辺ともいう)のうち、一方の長辺24aには、凸部25が形成されており、他方の長辺24bには、マット材10を丸めて長辺24aと長辺24bとを当接させた際に凸部25と嵌合する形状の凹部26が形成されている。
【0050】
また、図2(a)に示すように、A表面13aには、ニードルパンチング処理でニードルがマット材10に貫入することによって形成されたニードル貫入痕14が形成されている。
【0051】
一方、図2(b)に示すように、A表面13aの反対側のB表面13bには、ニードルパンチング処理でニードルがマット材10を貫出することによって形成された複数のニードル貫出痕15が形成されている。そして、ニードル貫出痕15には、マット材10を構成する無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束18が形成されている。
【0052】
この無機繊維束18の形状について図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態のマット材の表面のニードル貫出痕に形成された無機繊維束の光学顕微鏡写真である。
無機繊維束18は、図3に示すように、直径0.1〜10.0mmの閉ループ状の形状をしており、B表面13b上でマット材10を構成する無機繊維が閉ループ状に配向することによって構成されている。
【0053】
このような本実施形態のマット材の内部の構成については、上述した図1(a)の説明で述べた構成と同様である。
即ち、本実施形態のマット材の内部では、ニードル貫入痕からニードル貫出痕まで進展する複数のニードル痕が形成されており、その形成密度は、7〜30個/cmとなっている。そして、ニードル痕及びニードル痕近傍では、無機繊維の交絡が発生している。
【0054】
また、本実施形態のマット材には、無機繊維同士を接着する有機バインダが含まれている。
なお、有機バインダの量は、無機繊維同士を接着するための必要最小量に抑えられている。そのため、本実施形態のマット材を消音器として用いた場合には、消音器から排出される有機成分の量が少なく、環境に負荷がかかりにくい。
【0055】
次に、本実施形態のマット材を用いた本実施形態の消音器の構成について図4(a)及び図4(b)を用いて説明する。
図4(a)は、本実施形態の消音器の一例を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示した消音器のA−A線断面図である。
図4(a)及び図4(b)に示すように、消音器70は、芯となる円筒状のインナーパイプ73と、内部にインナーパイプ73が配設されるとインナーパイプ73の両端を除いた部分を覆うことになる円筒状のアウターパイプ71と、アウターパイプ71の両端部に配設され、中心部分に貫通孔が形成されており該貫通孔をインナーパイプ73が貫通している端部用部材72とから構成されている。このアウターパイプ71の大きさは、長さがインナーパイプ73より短く、内径がインナーパイプ73の外径よりも大きくなっている。
そして、アウターパイプ71の内部においては、インナーパイプ73に複数の小孔74が形成されており、インナーパイプ73とアウターパイプ71との間にマット材10が配設されている。
【0056】
図4(b)に示すように、消音器70においては、インナーパイプ73の入口側73aから流入した排ガス(図4(b)中、矢印Gは、排ガスの流れを示す)は、マット材10とアウターパイプ71とで覆われたインナーパイプ73内を通過して、インナーパイプ73の出口側73bから外部に排出されることとなる。
この際、インナーパイプ73に形成された複数の小孔74及びマット材10によって、騒音のなかでも特に高周波数領域の騒音が吸音、拡散等されると考えられる。そのため、これらの騒音が減衰すると考えられる。
【0057】
以下、消音器70を構成する各部材について図5(a)、図5(b)、図5(c)及び図5(d)を用いて説明する。
図5(a)、図5(b)、図5(c)及び図5(d)は、それぞれ順に本実施形態の消音器を構成するマット材、インナーパイプ、アウターパイプ及び端部用部材の一例を模式的に示す斜視図である。
なお、図5(a)に示す消音器70に用いられる本実施形態のマット材10の構成については、既に述べているので説明を省略する。
また、図5(b)に示すインナーパイプ73は、主にステンレス等の金属から構成されている。インナーパイプ73の構成については、既に述べているので説明を省略する。
【0058】
まず、アウターパイプ71について説明する。図5(c)に示すように、アウターパイプ71は、主にステンレス等の金属からなる円筒状の構造体である。そして、アウターパイプ71の内径は、インナーパイプ73の側面に巻付けられた状態のマット材10の外径よりわずかに小さくなっている。また、アウターパイプ71の長さは、インナーパイプ73より短くなっている。
【0059】
続いて、端部用部材72について説明する。図5(d)に示すように、端部用部材72は、主にステンレス等の金属からなる円盤状の構造体である。また、端部用部材72の直径は、アウターパイプ71の外径と略同一である。さらに、端部用部材72の中心付近には、インナーパイプ73の外径と略同一の直径を有する貫通孔75が形成されている。
【0060】
以下、本実施形態のマット材及び消音器を製造する方法について説明する。
まず、マット材の製造方法について説明する。
【0061】
(1)紡糸工程
Al含有量、及び、AlとClとの原子比が所定の値となるように調製された塩基性塩化アルミニウム水溶液に、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=60:40〜80:20(重量比)となるようにシリカゾルを添加する。さらに、成形性向上を目的として有機重合体を適量添加して混合液を調製する。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して3〜10μmの平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製する。
なお、本明細書においてブローイング法とは、エアーノズルから吹き出す高速のガス流(空気流)の中に、紡糸用混合物供給用ノズルから押し出される紡糸用混合物を供給することによって無機繊維前駆体の紡糸を行う方法のことをいう。
【0062】
(2)圧縮工程
次に、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製する。
【0063】
(3)ニードルパンチング工程
上記シート状物の一方の表面の上方に、ニードルが7〜30個/cmの密度で取り付けられたニードルボードを配設する。そして、ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って一回上下させることによりニードルパンチング処理を行い、ニードルパンチング処理体を作製する。この場合に、ニードルの先端部分に形成されたバーブがシート状物の反対側の表面に完全に貫出するまでニードルを貫通させる。
上記ニードルパンチング処理によって得られるニードルパンチング処理体の表面のニードルが貫入した箇所には、ニードル貫入痕が形成され、また、ニードルパンチング処理体の表面のニードルが貫出した箇所には、ニードル貫出痕が形成されることとなる。そして、ニードル貫出痕においては、無機繊維前駆体が閉ループ状に配向してなる束状の無機繊維前駆体が形成されることとなる。
【0064】
(4)焼成工程
続いて、上記ニードルパンチング処理体を、最高温度約1000〜約1600℃で連続焼成して焼成シート状物を作製する。
【0065】
(5)第一切断工程
次に、上記焼成シート状物を切断して、所定の大きさの切断シート状物を作製する。
【0066】
(6)含浸工程
上記切断シート状物に有機バインダ溶液をフローコートすることにより切断シート状物に有機バインダを含浸させ、含浸シート状物を作製する。
【0067】
(7)乾燥工程
上記含浸シート状物から過剰な有機バインダ溶液を吸引除去した後に、加圧乾燥させて有機バインダを含む乾燥シート状物を作製する。
【0068】
(8)第二切断工程
上記乾燥シート状物を成形切断して、所定の大きさであり、一方の長辺に凹部が形成されており、他方の長辺に凹部と嵌合する形状の凸部が形成された主に無機繊維からなるマット材を製造する。
以上の工程により、本実施形態のマット材を製造する。
なお、このようにして製造する本実施形態のマット材は、A表面に形成されたニードル貫入痕からB表面に形成されたニードル貫出痕まで進展する複数のニードル痕を有するマット材となる。また、B表面に、ニードル貫出痕において複数の無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束が形成されたマット材となる。さらには、有機バインダが含まれたマット材となる。
【0069】
以下、本実施形態のマット材を用いた消音器の製造方法について、図6を用いて説明する。
図6は、図5(a)〜(d)に示すインナーパイプ、マット材、アウターパイプ及び端部用部材を用いて消音器を製造する様子を模式的に示す斜視図である。
(1)巻付け工程
複数の小孔74が形成された円筒状のインナーパイプ73を準備し、本実施形態のマット材10をB表面がアウターパイプ71側(外側)、A表面がインナーパイプ73側(内側)になるようにしてインナーパイプ73の側面に巻付ける。
【0070】
(2)圧入体作製工程
マット材10が巻付けられたインナーパイプ73を円筒状のアウターパイプ71内部に圧入して圧入体を作製する。
【0071】
(3)固定工程
まず、端部用部材72を二つ用意する。そして、圧入体のインナーパイプ73がそれぞれの端部用部材72の貫通孔75を貫通するようにアウターパイプ71の両端部に端部用部材72を配設する。次に、溶接等の固定手段によってアウターパイプ71と端部用部材72とを固定し、さらに、インナーパイプ73とそれぞれの端部用部材72の貫通孔75近傍とを溶接等の固定手段によって固定する。
以上の工程により、圧入体がアウターパイプ内部に配設された消音器を製造する。
【0072】
以下、第一実施形態のマット材、マット材の製造方法、消音器及び消音器の製造方法についての作用効果を列挙する。
【0073】
(1)本実施形態のマット材は、表面に形成されたニードル貫入痕からニードル貫入痕が形成された表面と反対側の表面に形成されたニードル貫出痕まで進展するニードルパンチング処理によって形成された複数のニードル痕を有している。
このような構成を有する本実施形態のマット材を消音器に用いた場合には、マット材全体の層間強度が高くなっているので、風蝕によるマット材の破損を防止することができる。従って、騒音を減衰させる効果を長期間に渡って維持することができる。また、マット材の断熱性が損なわれにくいので、アウターパイプの外観が損なわれにくい。
【0074】
(2)本実施形態のマット材におけるニードル貫出痕では、複数の無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束が形成されるとともに、少なくとも一方の表面に無機繊維束が形成されている。
このような構成を有する本実施形態のマット材を用いて消音器を製造する場合には、無機繊維束が形成された表面をアウターパイプ側にしてマット材をインナーパイプに巻付けることで、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに容易に圧入することができる。従って、取り扱い性に優れたマット材とすることができる。
【0075】
(3)また、このような構成を有する本実施形態のマット材を用いて消音器を製造する場合には、無機繊維束を構成する無機繊維の毛羽立ちが少ないので、無機繊維が作業者の皮膚に刺さることが少ない。従って、作業者にとって安全性の高いマット材とすることができる。
【0076】
(4)本実施形態のマット材は、マット材を構成する無機繊維の平均繊維径が3〜10μmとなっている。また、ニードル痕の形成密度が、7〜30個/cmとなっている。そのため、全体の層間強度がより高いマット材とすることができる。
従って、本実施形態のマット材を消音器に用いた場合には、騒音を減衰させる効果をより長期間に渡って維持することができる。
【0077】
(5)また、上述したように、本実施形態のマット材は、ニードル痕の形成密度が、7〜30個/cmとなっている。そのため、マット材の表面とアウターパイプの内面との間の摩擦力をより低減させることができる。
従って、本実施形態のマット材を用いて消音器を製造する場合には、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプにより容易に圧入することができるとともに、取り扱い性により優れたマット材とすることができる。
【0078】
(6)本実施形態のマット材は、アルミナとシリカとを含む無機繊維からなり、耐熱性に優れている。そのため、本実施形態のマット材を用いた消音器を排気経路に設置し、高温の排ガスが通過した場合であっても、無機繊維が溶損しにくい。
従って、排ガスの温度が高温になる場合であっても、騒音を減衰させる効果をより長期間に渡って維持することができる。
【0079】
(7)本実施形態のマット材は、マット材を構成する無機繊維同士が有機バインダによって互いに接着されているので、マット材を構成する無機繊維の脱落が発生しにくい。
従って、本実施形態のマット材を用いて消音器を製造する場合には、インナーパイプへのマット材の巻付け等の加工を行っても、無機繊維の脱落が発生することが少なく、作業者にとって安全性の高いマット材とすることができる。
【0080】
(8)本実施形態のマット材の製造方法では、上述した工程を経ることにより本実施形態のマット材を好適に製造することができる。
【0081】
(9)本実施形態の消音器では、上述した(1)〜(7)の作用効果を発揮することができる本実施形態のマット材がインナーパイプとアウターパイプとの間に配設されている。
特に、本実施形態のマット材の有する(1)、(4)及び(6)の作用効果により、本実施形態の消音器は、騒音を減衰させる効果を長期間に渡って維持することができる。また、本実施形態の消音器では、アウターパイプの外観が損なわれにくい。
【0082】
(10)本実施形態の消音器の製造方法では、上述した(2)及び(5)の作用効果を発揮することができる本実施形態のマット材を用いて本実施形態の消音器を製造する。
即ち、本実施形態の消音器の製造方法では、本実施形態のマット材の表面のうち、無機繊維束が形成されており摩擦係数が小さい表面がアウターパイプ側に配置されるようにインナーパイプにマット材を巻付ける。そして、このマット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに圧入して本実施形態の消音器を製造する。そのため、マット材の表面とアウターパイプの内面との間の摩擦力を低減させることができる。従って、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに容易に圧入することができる。
従って、本実施形態の消音器の製造方法では、本実施形態の消音器を効率よく製造することができる。
【0083】
(11)本実施形態の消音器の製造方法では、上述した(3)の作用効果を発揮することができる本実施形態のマット材を用いて本実施形態の消音器を製造する。
即ち、本実施形態の消音器の製造方法では、無機繊維束を構成する各々の無機繊維が閉ループ状に配向しており、無機繊維の毛羽立ちが少ない本実施形態のマット材を用いて消音器を製造する。
また、本実施形態の消音器の製造方法では、上述した(7)の作用効果を発揮することができる本実施形態のマット材を用いて本実施形態の消音器を製造する。
即ち、本実施形態の消音器の製造方法では、無機繊維同士が有機バインダによって互いに接着されていることにより、無機繊維の脱落が発生しにくい本実施形態のマット材を用いて消音器を製造する。
従って、本実施形態の消音器の製造方法では、作業者にとって高い安全性を確保することができる。
【0084】
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示すが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0085】
(実施例1)
1.マット材の製造
以下の手順によりマット材を製造した。
(1−1)紡糸工程
Al含有量が70g/lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して平均繊維径が5.1μmである無機繊維前駆体を作製した。
【0086】
(1−2)圧縮工程
上記工程(1−1)で得られた無機繊維前駆体を圧縮して、連続したシート状物を作製した。
【0087】
(1−3)ニードルパンチング工程
上記工程(1−2)で得られたシート状物に対して、以下に示す条件を用いて連続的にニードルパンチング処理を行ってニードルパンチング処理体を作製した。
まず、ニードルが21個/cmの密度で取り付けられたニードルボードを準備した。次に、このニードルボードをシート状物の一方の表面の上方に配設し、ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って一回上下させることによりニードルパンチング処理を行い、ニードルパンチング処理体を作製した。この際、ニードルの先端部分に形成されたバーブがシート状物の反対側の表面に完全に貫出するまでニードルを貫通させた。
【0088】
(1−4)焼成工程
上記工程(1−3)で得られたニードルパンチング処理体を最高温度1250℃で連続して焼成し、アルミナとシリカとを含む無機繊維からなる焼成シート状物を製造した。ニードル貫出痕においては、無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束が形成されているのが確認された。無機繊維束の形成密度は、21個/cmであった。
また、無機繊維の平均繊維径は、5.1μmであり、無機繊維径の最小値は、3.2μmであった。
【0089】
(1−5)第一切断工程
上記工程(1−4)で得られた焼成シート状物を切断して、切断シート状物を作製した。
【0090】
(1−6)含浸工程
上記工程(1−5)で得られた切断シート状物に、有機バインダとしてアクリル系樹脂を含む有機バインダ溶液(アクリル系ラテックス)をフローコートして、切断シート状物に有機バインダを含浸させることにより、含浸シート状物を作製した。
【0091】
(1−7)乾燥工程
上記工程(1−6)で得られた含浸シート状物から過剰な有機バインダ溶液を吸引除去した後に、加圧乾燥させて有機バインダを含む乾燥シート状物を作製した。なお、作製された乾燥シート状物に含まれる有機バインダの量は、1重量%であった。
【0092】
(1−8)第二切断工程
上記工程(1−7)で得られた乾燥シート状物を成形切断して、幅239mm×長さ500mm×厚さ7.4mmの大きさであり、ニードル痕の形成密度が21個/cm、目付量(単位面積あたりの重量)1240g/m、密度0.16g/cmであって、一方の長辺の一部に幅(乾燥シート状物の幅方向に平行な部分の大きさ)50mm×長さ(乾燥シート状物の長さ方向に平行な部分の大きさ)150mmの大きさに渡って突出した凸部(図2(a)中、25)が形成されており、他方の長辺の一部に凸部と嵌合する形状の凹部(図2(a)中、26)が形成されたマット材を製造した。
このようにして製造したマット材の一方の表面のニードルが貫入した箇所には、ニードル貫入痕が形成されていた。また、マット材の他方の表面のニードルが貫出した箇所には、ニードル貫出痕が形成されていた。そして、ニードル貫入痕からニードル貫出痕までニードル痕が進展していた(ニードル痕の形成密度21個/cm)。
さらには、略全てのニードル貫出痕において、無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束が形成されているのが確認された。
なお、ニードル痕の形成密度については、マット材をその厚さ方向に対して略二等分に切断し、断面の単位面積あたりで目視によって確認することのできるニードル痕の数から算出した。また、ニードル貫入痕、ニードル貫出痕及び無機繊維束の有無については、マット材のそれぞれの表面を目視で観察することにより行った。
【0093】
2.消音器の製造
(2−1)巻付け工程
まず、外径70mm(内径67mm)×長さ600mmの大きさの円筒状であり、側面に複数の小孔が形成されたインナーパイプを準備した。
次に、上記工程(1−8)で得られたマット材を、ニードル貫出痕(無機繊維束)が形成された表面(B表面)が外側、ニードル貫入痕が形成された表面(A表面)が内側になるようにインナーパイプの側面に巻付けた。
【0094】
(2−2)圧入体作製工程
上記工程(2−1)で得られたマット材が巻付けられたインナーパイプを、外径82mm(内径79mm×長さ500mmの大きさの円筒状のアウターパイプ内部に圧入することにより圧入体を作製した。
【0095】
(2−3)固定工程
まず、端部用部材を二つ用意した。そして、それぞれの端部用部材の貫通孔に上記工程(2−2)で得られた圧入体のインナーパイプを通して、アウターパイプの両端部に端部用部材を配設した。次に、溶接によってアウターパイプと端部用部材とを固定した。さらに、インナーパイプとそれぞれの端部用部材の貫通孔近傍とを溶接によって固定した。
以上の工程により、マット材が側面に巻付けられたインナーパイプがアウターパイプ内部に配設された消音器を製造した。
【0096】
(層間強度測定試験)
層間強度測定試験は、図7(a)に示したような層間強度測定装置80を用いて行った。
図7(a)は、層間強度測定装置の説明図であり、図7(b)は、層間強度測定用サンプル2の形状を模式的に示す斜視図である。
この層間強度測定装置80は、インストロン型万能材料試験機(インストロン社製、5567)を用いたものであり、図示しない試験機本体に固定された下チャック81aと鉛直方向に移動する上チャック81bとからなる。下チャック81a及び上チャック81bは、それぞれサンプル2の剥離部3a及び3bを把持する把持部82a及び82bを有している。
【0097】
この層間強度測定装置80を用いた試験方法は、次の通りである。
まず、図7(b)に示すように、実施例1で製造したマット材を幅50mm×長さ200mmに切り出し、サンプル2とした。なお、サンプル2としては、有機バインダの影響を排除するため、上記工程(1−6)及び上記工程(1−7)を行わないで製造した有機バインダを含まないマット材を用いた。
【0098】
次に、サンプル2の幅方向における一の端面に、サンプル2が厚さ方向に対して略二等分されるようにカッターで切り込み3を入れた。次に、この切り込み3に沿ってサンプル2を長さ方向に約100mm剥離させることにより、サンプル2の幅方向における一の端面に剥離部3a及び3bを形成した。
そして、剥離部3a及び3bのうち、一方の剥離部3aを下チャック81aの把持部82aで把持し、他方の剥離部3bを上チャック81bの把持部82bで把持した。
この状態で、引張速度が10mm/minとなるように上チャック81bを鉛直方向上方(図7(a)中、矢印Bで示した方向)に移動させていき、サンプルが完全に二つに剥離する際の最大荷重(N)を測定した。この測定を三回実施し、その平均値をマット材全体の層間強度とした。
その結果、実施例1で製造したマット材全体の層間強度は、3.6Nであった。
【0099】
(摩擦係数測定試験)
摩擦係数測定試験は、図8に示したような摩擦係数測定装置を用いて行った。
図8は、摩擦係数測定装置の説明図である。
この摩擦係数測定装置90は、上下方向から摩擦係数測定用サンプル4を挟み込むステンレス製の下板部材94a、上板部材94b及び上板部材94bの上面に設置されるおもり95と、図示しないインストロン型万能材料試験機の鉛直方向に移動するロードセルと接続されたワイヤー96とからなる。そして、下板部材94aは、移動しないように図示しない土台に固定されており、上板部材94bには、ワイヤー96が結合している。このワイヤー96は、滑車97を介して上板部材94bとロードセルとを接続している。そのため、ロードセルが鉛直方向上方に移動した場合には、上板部材94bが水平方向(図8中、矢印Cで示した方向)に移動することなる。
【0100】
この摩擦係数測定装置90を用いた試験方法は、次の通りである。
まず、実施例1で製造したマット材を幅30mm×長さ50mmに切り出し、摩擦係数測定用サンプル4とした。
次に、固定された下板部材94a上にサンプル4の一方の表面をサンプル4の長さ方向が上板部材94bの移動方向と平行になるように固定し、サンプル4の他方の表面上に上板部材94bを設置することにより、下板部材94aと上板部材94bとで上下方向からサンプル4を挟み込んだ。そして、上板部材94bの上面には、5kgのおもり95を設置した。
この状態で、引張速度が10mm/minとなるようにロードセルを鉛直方向上方に移動させることで、上板部材94bを水平方向に移動速度10mm/minで移動させた。そして、上板部材94bを移動させてから120秒後における応力を測定し、サンプル4の他方の表面と上板部材94bとの間の摩擦係数を算出した。得られた摩擦係数をマット材の表面の摩擦係数とした。
なお、この測定は、マット材の両表面について行った。
その結果、実施例1で製造したマット材の表面の摩擦係数は、それぞれA表面で、0.25、B表面で、0.22であった。
【0101】
(実施例2、3及び参考例1、2)
実施例1の工程(1−1)で、マット材を構成する無機繊維の平均繊維径が表1に示した値となるように、ブローイング法による紡糸用混合物を紡糸する条件を変更して、表1に示した値と略同一の平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製したこと以外は、実施例1と同様にしてマット材及び消音器を製造した。
【0102】
(実施例4、5及び参考例3、4)
実施例1の工程(1−3)で、マット材におけるニードル痕の形成密度が表1に示した値となるように、表1に示した値と略同一の密度でニードルが取り付けられたニードルボードを用いてニードルパンチング処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてマット材及び消音器を製造した。
【0103】
(比較例1)
実施例1の工程(1−3)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてマット材及び消音器を製造した。
【0104】
(比較例2)
実施例1の工程(1−3)において、ニードルパンチング処理におけるニードルの貫入深さを変更することにより、ニードルをシート状物の反対側の表面に貫出させなかったこと以外は、実施例1と同様にしてマット材及び消音器を製造した。
これら比較例1、2で製造したマット材では、いずれもマット材の表面に無機繊維束が形成されていなかった。
【0105】
実施例2〜5、参考例1〜4及び比較例1、2で製造したマット材について、実施例1と同様にして層間強度測定試験及び摩擦係数測定試験を行い、マット材全体の層間強度及びマット材の表面の摩擦係数について評価した。各実施例、各参考例及び各比較例における結果については、実施例1の結果と合わせて表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
その結果、実施例1〜5、及び、参考例1〜4で製造したマット材では、いずれもマット材全体の層間強度を各比較例で製造したマット材より高くすることができた。そのため、このような構成を有する実施例1〜5、及び、参考例1〜4で製造したマット材を用いた消音器では、排ガスの流動に伴う応力により無機繊維が剥離することが各比較例で製造したマット材より少ないと考えられる。従って、風蝕によるマット材の破損をより効率よく防止することができると考えられる。
【0108】
また、実施例1〜5、及び、参考例1〜4で製造したマット材では、無機繊維束が形成された表面の摩擦係数を各比較例で製造したマット材より低くすることができた。そのため、取り扱い性により優れたマット材とすることができた。
【0109】
一方、比較例1、2で製造したマット材では、無機繊維の交絡が発生していなかったため又はマット材の厚さ方向の全体に渡って無機繊維の交絡が発生していなかったため、層間強度がともに低かった。また、無機繊維束が形成されていなかったため、マット材の両表面とも摩擦係数が高かった。
【0110】
なお、参考例1で製造したマット材は、各実施例で製造したマット材と同様にマット材全体の層間強度が各比較例で製造したマット材より大幅に高くなっていたものの、無機繊維の平均繊維径が3μm未満であり無機繊維自体の強度が低下していたためか、実施例1で製造したマット材よりはマット材全体の層間強度が若干低くなっていた。
参考例2で製造したマット材では、各実施例で製造したマット材と同様にマット材全体の層間強度が各比較例で製造したマット材より大幅に高くなっていたものの、無機繊維の平均繊維径が10μmを超えており、単位体積あたりのマット材を構成する無機繊維の数が少なく、無機繊維の交絡が少なかったためか、マット材全体の層間強度が実施例1〜3で製造したマット材よりは若干低くなっていた。
参考例3で製造したマット材では、各実施例で製造したマット材と同様にマット材全体の層間強度が各比較例で製造したマット材より大幅に高くなっていたものの、ニードル痕の形成密度が7個/cm未満であり単位面積あたりに形成されるニードル痕が少なかったためか、実施例1で製造したマット材よりもマット材全体の層間強度が若干低くなっていた。さらには、各実施例で製造したマット材よりも無機繊維束が形成された表面の摩擦係数が若干高くなっていた。
参考例4で製造したマット材では、各実施例で製造したマット材と同様にマット材全体の層間強度が各比較例で製造したマット材より大幅に高くなっていたものの、ニードル痕の形成密度が30個/cmを超えており無機繊維(無機繊維前駆体)が一部細かく裁断されたためか、実施例1で製造したマット材よりもマット材全体の層間強度が若干低くなっていた。
このように、参考例1〜4で製造したマット材においても本実施形態の効果を充分に奏することができるものの、マット材を構成する無機繊維の平均繊維径が3〜10μmであるか、又は、ニードル痕の形成密度が7〜30個/cmであることが好ましいことが分かった。
さらには、マット材を構成する無機繊維の平均繊維径が3〜10μmであり、かつ、ニードル痕の形成密度が7〜30個/cmであるとより好ましいことが分かった。
【0111】
(第二実施形態)
次に、本発明の一実施形態である第二実施形態について、図9(a)、図9(b)及び図9(c)を参照しながら説明する。
図9(a)は、本実施形態のマット材の一例について、一方の表面側から観察した状態を模式的に示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)に示したマット材を他方の表面側から観察した状態を模式的に示す斜視図である。図9(c)は、図9(a)に示したマット材を長さ方向に対して垂直な方向に切断して得られる断面について模式的に示すD−D線断面図である。
【0112】
本実施形態のマット材は、アルミナとシリカとを含む無機繊維から形成されたものであり、図9(a)、図9(b)及び図9(c)に示すように、その外形は、第一実施形態のマット材と同様、上面視略矩形で所定の厚さを有する平板状である。
本実施形態のマット材の外形に関するその他の構成については、第一実施形態と同様であるので説明を省略することとする。
【0113】
図9(a)、図9(b)及び図9(c)に示すように、本実施形態のマット材100の表面113a(以下、第一の表面ともいう)には、ニードルがマット材100の第一の表面113aに貫入することによって形成された第一のニードル貫入痕114aが形成されている。
【0114】
また、マット材100の表面のうち、第一の表面113aと反対側の表面113b(以下、第二の表面ともいう)には、ニードルがマット材100の第二の表面113bに貫入することによって形成された第二のニードル貫入痕114bが形成されている。
【0115】
さらに、マット材100の第一の表面113aには、第二の表面113bに形成されたニードル貫入痕114bに対応する位置に、ニードルがマット材100の第一の表面113aから貫出することによって形成された複数の第二のニードル貫出痕115bが形成されている。そして、第二のニードル貫出痕115bには、マット材100を構成する無機繊維が閉ループ状に配向してなる第二の無機繊維束118bが形成されている。
【0116】
また、マット材100の第二の表面113bには、第一の表面113aに形成されたニードル貫入痕114aに対応する位置に、ニードルがマット材100の第二の表面113bから貫出することによって形成された複数の第一のニードル貫出痕115aが形成されている。そして、第一のニードル貫出痕115aには、マット材100を構成する無機繊維が閉ループ状に配向してなる第一の無機繊維束118aが形成されている。
【0117】
図9(c)に示すように、本実施形態のマット材100の内部の構成については、上述した第一実施形態の構成と同様、第一のニードル貫入痕114aから第一のニードル貫出痕115aまで進展する複数の第一のニードル痕116aが形成されており、第一のニードル痕116a及び第一のニードル痕116aの近傍117aでは、無機繊維の交絡が発生している。また、第一のニードル痕116aに隣接して、第二のニードル貫入痕114bから第二のニードル貫出痕115bまで進展する複数の第二のニードル痕116bが形成されており、第二のニードル痕116b及び第二のニードル痕116bの近傍117bにおいても、無機繊維の交絡が発生している。
このように、本実施形態のマット材100では、第一のニードル痕116aと第二のニードル痕116bとではニードル痕の進展方向が互いに対向した関係になっている。そのため、第一のニードル痕116a及び第一のニードル痕近傍117aと、第二のニードル痕116b及び第二のニードル痕近傍117bとでは、無機繊維の交絡の方向が互いに異なっており、マット材100全体で無機繊維がより複雑に絡み合っている。
【0118】
本実施形態のマット材100のその他の構成については、第一のニードル痕116aと第二のニードル痕116bとを含む合計のニードル痕の形成密度が7〜30個/cmとなっていること以外は、第一実施形態のマット材と同様の構成を有している。なお、第一のニードル痕116aの形成密度と第二のニードル痕116bの形成密度とは、ともに同じであるか、または、互いに異なっている。
また、第一の表面113aに形成された第二の無機繊維束118bの形成密度と、第二の表面113bに形成された第一の無機繊維束118aの形成密度とは、互いに異なっている。
【0119】
本実施形態の消音器については、本実施形態のマット材を用いたものであること以外は、第一実施形態の消音器と同様の構成を有している。
【0120】
以下、本実施形態のマット材及び消音器の製造方法について説明する。
まず、マット材の製造方法について説明する。
はじめに、第一実施形態と同様に紡糸工程及び圧縮工程を経ることによりシート状物を作製する。
【0121】
次に、互いに異なる密度でニードルが取り付けられたニードルボードを二つ準備し、一方のニードルボードをシート状物の第二の表面から離間して配設する。そして、該ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って上下させることにより一回目のニードルパンチング処理を行う。次に、他方のニードルボードをシート状物の第一の表面から離間して配設し、該ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って上下させることにより二回目のニードルパンチング処理を行い、ニードルパンチング処理体を作製する。この場合に、シート状物の両面についてニードルの先端部分に形成されたバーブがシート状物の反対側の表面に完全に貫出するまでニードルを貫通させる。
また、ニードル形成密度によっては、ニードルボードとして、互いに同じ密度でニードルが取り付けられた二つのニードルボードを用いてもよい。このようなニードルボードを用いることによっても、上述した工程を行うことにより、第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度と、第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度とが互いに異なるニードルパンチング処理体を作製することができる。
これは、一旦、束状の無機繊維前駆体が形成された第一の表面に二回目のニードルパンチング処理を行うことで、第一の表面に形成された束状の無機繊維前駆体の一部がニードルにより再度ニードルパンチング処理体内に巻き込まれ、第一の表面に形成された束状の無機繊維前駆体の一部が失われるためであると考えられる。このため、第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度と、第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度とが互いに異なるニードルパンチング処理体を作製するためには、ニードル形成密度がある程度高いニードルボードを用いることが望ましい。ニードル形成密度が低すぎると、二回目のニードルパンチング処理で、第一の表面に形成された束状の無機繊維前駆体から離れた位置にニードルが貫入することになる。そのため、束状の無機繊維前駆体がニードルによりニードルパンチング処理体内に巻き込まれにくくなるからである。
このように、第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度と、第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度とが互いに異なるニードルパンチング処理体を作製するためには、互いに異なる密度でニードルが取り付けられた二つのニードルボードを用いてもよいし、ニードル形成密度によっては、互いに同じ密度でニードルが取り付けられた二つのニードルボードを用いてもよい。
【0122】
得られたニードルパンチング処理体に対して、第一実施形態と同様に、焼成工程、第一切断工程、含浸工程、乾燥工程及び第二切断工程を行うことにより、本実施形態のマット材を製造する。
【0123】
本実施形態の消音器の製造方法では、本実施形態のマット材の第一及び第二の表面のうち、無機繊維束が多い表面をアウターパイプ側(外側)に配置し、また、それとは反対側の無機繊維束が少ない表面をインナーパイプ側(内側)に配置して消音器を製造すること以外は、第一実施形態の消音器の製造方法と同様にして本実施形態の消音器を製造する。
【0124】
上述した第二実施形態においても、第一実施形態で説明した作用効果(1)〜(11)を発揮することができる。
また、以下の作用効果を発揮することができる。
【0125】
(12)本実施形態のマット材においては、ニードル痕の進展方向が互いに対向している第一のニードル痕と第二のニードル痕とが形成されている。
そのため、全体の層間強度がより高いマット材とすることができる。
従って、本実施形態のマット材を消音器に用いた場合には、騒音を減衰させる効果をより長期間に渡って維持することができる。
【0126】
(13)本実施形態の消音器では、上述した(12)の作用効果を発揮することができる本実施形態のマット材がインナーパイプとアウターパイプとの間に配設されている。
従って、本実施形態の消音器は、騒音を減衰させる効果をより長期間に渡って維持することができる。また、アウターパイプの外観がより損なわれにくい。
【0127】
(14)本実施形態のマット材においては、第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度と第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度とが異なっている。そのため、本実施形態のマット材を用いて消音器を製造する場合には、本実施形態のマット材の表面のうち、無機繊維束が多い表面をアウターパイプ側(外側)に配置し、また、それとは反対側の無機繊維束が少ない表面をインナーパイプ側(内側)に配置することができる。ゆえに、インナーパイプ側に配置されたマット材の表面で排ガスの流動に伴う応力によりマット材の表面の無機繊維が剥離することを最小限に抑えつつ、マット材全体の層間強度をより高くすることができる。また、マット材が巻付けられたインナーパイプをアウターパイプに容易に圧入することができる。
従って、本実施形態のマット材を消音器に用いた場合には、騒音を減衰させる効果をさらに長期間に渡って維持することができる。また、消音器を製造する場合に、取り扱い性に優れたマット材とすることができる。
【0128】
(15)本実施形態の消音器では、上述した(14)の作用効果を発揮することができる本実施形態のマット材がインナーパイプとアウターパイプとの間に配設されているので、騒音を減衰させる効果をさらに長期間に渡って維持することができる。また、アウターパイプの外観がさらに損なわれにくい。
【0129】
以下、本発明の第二実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、第二実施形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0130】
(実施例6)
実施例1の工程(1−3)で、シート状物に対してニードルパンチング処理を以下の条件で行ってニードルパンチング処理体を作製したこと以外は、実施例1と同様にしてマット材及び消音器を製造した。
まず、ニードルが10個/cmの密度で取り付けられたニードルボードを二つ準備した。次に、一方のニードルボードをシート状物の第二の表面から離間して配設した。そして、該ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って一回上下させることにより一回目のニードルパンチング処理を行った。次に、他方のニードルボードをシート状物の第一の表面から離間して配設し、該ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って上下させることにより二回目のニードルパンチング処理を行い、ニードルパンチング処理体を作製した。この場合に、ニードルの先端部分に形成されたバーブがシート状物の反対側の表面に完全に貫出するまでニードルを貫通させた。
【0131】
上述したニードルパンチング処理体を用いて製造したマット材の第一の表面のニードルが貫入した箇所には、第一のニードル貫入痕が形成されていた。また、マット材の第二の表面のニードルが貫出した箇所には、第一のニードル貫出痕が形成されていた。そして、第一のニードル貫出痕においては、無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束が形成されているのが確認された。
【0132】
また、得られたマット材の第二の表面のニードルが貫入した箇所には、第二のニードル貫入痕が形成されていた。また、マット材の第一の表面のニードルが貫出した箇所には、第二のニードル貫出痕が形成されていた。そして、第二のニードル貫出痕においては、無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束が形成されているのが確認された。
【0133】
第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度は、2個/cmであり、第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度は、7個/cmであった。また、第一のニードル痕と第二のニードル痕とを含む合計のニードル痕の形成密度は、20個/cmであった。
なお、第一の無機繊維束の形成密度と第二の無機繊維束の形成密度とについては、マット材の各表面の単位面積あたりに存在する無機繊維束の数を目視で観察することによって行った。
製造したマット材においては、ニードル痕の形成密度に対して、無機繊維束の形成密度が若干少なくなっていた。この理由としては、上述したように、一旦、束状の無機繊維前駆体が形成された第一の表面側から再度ニードルパンチング処理を行うことで、第一の表面に形成された束状の無機繊維前駆体の一部が再度ニードルパンチング処理体内に巻き込まれたこと等が考えられる。
【0134】
(実施例7、8)
マット材を構成する無機繊維の平均繊維径が表2に示した値となるように、ブローイング法による紡糸用混合物を紡糸する条件を変更して、表2に示した値と略同一の平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製したこと以外は、実施例6と同様にしてマット材及び消音器を製造した。第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度、第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度、及び、第一のニードル痕と第二のニードル痕とを含む合計のニードル痕の形成密度は、実施例6と同様であった。
【0135】
(実施例9、10)
ニードルが7個/cmの密度で取り付けられたニードルボード(実施例9)又はニードルが14個/cmの密度で取り付けられたニードルボード(実施例10)を二つ用いてニードルパンチング処理を行ったこと以外は、実施例6と同様にしてマット材及び消音器を製造した。
実施例9では、第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度は、1個/cmであり、第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度は、5個/cmであった。また、第一のニードル痕と第二のニードル痕とを含む合計のニードル痕の形成密度は、14個/cmであった。
実施例10では、第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度は、2.5個/cmであり、第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度は、10個/cmであった。また、第一のニードル痕と第二のニードル痕とを含む合計のニードル痕の形成密度は、28個/cmであった。
【0136】
実施例6〜10で製造したマット材について、実施例1と同様にして層間強度測定試験及び摩擦係数測定試験を行い、マット材全体の層間強度及びマット材の表面の摩擦係数について評価した。各実施例における結果については、表2に示す。また、表2には、参考として、比較例1、2の結果についても示す。
【0137】
【表2】

【0138】
その結果、実施例6〜10で製造したマット材では、マット材全体の層間強度を比較例1、2で製造したマット材より高くすることができた。そのため、このような構成を有する実施例6〜10で製造したマット材を用いた消音器では、排ガスの流動に伴う応力により無機繊維が剥離することが少ないと考えられる。従って、風蝕によるマット材の破損を効率よく防止することができると考えられる。
【0139】
また、実施例6〜10で製造したマット材では、マット材の表面のうち、特に、第二の表面の摩擦係数を比較例1、2で製造したマット材より低くすることができた。そのため、取り扱い性により優れたマット材とすることができた。
【0140】
さらには、実施例6〜10で製造したマット材では、第一の表面と第二の表面とで無機繊維束の形成密度が互いに異なるマット材とすることができた。
このような実施例6〜10のマット材を用いて消音器を製造する場合には、無機繊維束が多い第二の表面をアウターパイプ側(外側)に配置し、また、無機繊維束が少ない第一の表面をインナーパイプ側(内側)に配置することができる。
従って、実施例6〜10のマット材を用いて製造された消音器では、排ガスの流動に伴う応力により無機繊維が剥離することを最小限に抑えつつ、風蝕によるマット材の破損をより効率よく防止することができると考えられる。
【0141】
(その他の実施形態)
本発明のマット材は、第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度と、第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度とが互いに同じであってもよい。このようなマット材では、上述した本発明のマット材の作用効果のうち、(1)〜(13)を発揮することができる。
【0142】
本発明のマット材の大きさは、本発明の消音器に用いられるインナーパイプ及びアウターパイプの大きさにより決定されるので特に限定されないが、消音器に用いられた場合に、インナーパイプの側面とアウターパイプとの間に隙間が形成されない程度の大きさを有していることが望ましい。インナーパイプの側面とアウターパイプとの間に隙間が形成された状態では、アウターパイプの温度が上昇し、熱による変色が発生してアウターパイプの外観が損なわれてしまうためである。
【0143】
本発明のマット材を構成する無機繊維としては、上述したアルミナとシリカとを含む無機繊維に限られず、その他の無機化合物を含む無機繊維であってもよい。
また、アルミナ及びシリカのうち、アルミナのみを含む無機繊維であってもよいし、シリカのみを含む無機繊維であってもよい。
アルミナとシリカとを含む無機繊維の組成比としては、重量比で、Al:SiO=60:40〜80:20であることが望ましく、Al:SiO=70:30〜74:26であることがより望ましい。
アルミナ及びシリカのうち、アルミナのみを含む無機繊維には、アルミナ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
アルミナ及びシリカのうち、シリカのみを含む無機繊維には、シリカ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
【0144】
本発明のマット材を構成する無機繊維の平均繊維長は、250μm以上であることが望ましく、500μm以上であることがより望ましい。平均繊維長が250μm未満では、マット材を構成する無機繊維の維繊長が短すぎるため、マット材全体の層間強度が低下するからである。
なお、無機繊維の平均繊維長の上限は、紡糸された無機繊維前駆体が連続した状態で得られるので、特に限定されない。
【0145】
本発明のマット材の長辺に形成された凹部及び凸部の形状は、凹部と凸部とが嵌合することができる形状であれば特に限定されないが、一組の凹部及び凸部からなる場合には、一方の長辺の一部に幅10mm×長さ10mm〜幅80mm×長さ200mmの大きさに渡って突出した凸部が形成されており、他方の長辺の一部にそれに嵌合する形状の凹部が形成されていることが望ましい。このような凹部及び凸部の形状を有するマット材を用いて消音器を製造する場合には、マット材をインナーパイプに確実に巻付けることができるので、取り扱い性に優れることとなる。
また、上記マット材の長辺には、互いに嵌合する複数の凹部及び凸部が形成されていてもよいし、凹部及び凸部が形成されていなくてもよい。
【0146】
本発明のマット材において、ニードル貫出痕に形成された無機繊維束の大きさは、ニードルの形状によって決定されるので、特に限定されないが、直径0.5〜10.0mmであることが望ましい。無機繊維束の大きさが上記範囲であると、本発明のマット材を用いて消音器を製造する場合において、マット材の表面とアウターパイプの内面との間の摩擦力をより低減させることができるからである。
【0147】
本発明のマット材に含まれる有機バインダの量は、0.5〜12.0重量%であることが望ましく、0.5〜5.0重量%であることがより望ましく、0.5〜1.0重量%であることがさらに望ましい。有機バインダの量が0.5重量%未満であると、無機繊維同士が接着されにくくなるので、マット材を構成する無機繊維の脱落が発生しやすくなる。一方、有機バインダの量が12.0重量%を超えると消音器として用いた場合に、消音器から排出される有機成分の量が増加することになるので、環境に負荷がかかることになる。
【0148】
本発明のマット材の目付量は、特に限定されないが、900〜3000g/mであることが望ましく、1500〜2800g/mであることがより望ましい。
【0149】
本発明のマット材の厚さは、特に限定されないが、6〜31mmであることが望ましく、9〜20mmであることがより望ましい。
【0150】
本発明のマット材の製造方法において、無機繊維の交絡及び無機繊維束を形成するために用いるバーブの形状については、無機繊維の交絡及び無機繊維束を形成することができるものであれば、上述したようにニードルの先端方向に向かって突出した形状に限られず、例えば、ニードルの根元方向に向かって突出した形状等であってもよい。
この場合、ニードルをシート状物に貫入させる過程で無機繊維前駆体がバーブに巻き込まれないので、ニードル貫出痕には、束状の無機繊維前駆体が形成されない。それとは反対に、ニードルを引き抜く過程でバーブに無機繊維前駆体が巻き込まれるので、ニードル貫入痕に束状の無機繊維前駆体が形成されることとなる。従って、このようなシート状物を焼成すると、ニードル貫入痕が形成された表面に無機繊維束が形成され、ニードル貫出痕が形成された表面に無機繊維束が形成されていないマット材を得ることができる。
【0151】
本発明のマット材の製造方法において、無機繊維前駆体(焼成後にアルミナのみ(アルミナ及びシリカ)を含む無機繊維となる無機繊維前駆体)を作製するための混合液(紡糸用混合物)に含まれる無機化合物としては、上述した塩基性塩化アルミニウムに限られず、焼成後にアルミナとなる無機化合物であればよい。焼成後にアルミナとなる無機化合物としては、例えば、塩基性酢酸アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム等が挙げられる。
また、シリカのみ(アルミナ及びシリカ)を含む無機繊維を作製する場合には、焼成後にシリカとなる無機化合物が用いられるが、該無機化合物としては、例えば、シリカゾル、テトラエチルシリケート、水溶性シロキサン誘導体等が挙げられる。
【0152】
アルミナとシリカとを含む無機繊維を作製する場合には、例えば、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=60:40〜80:20(重量比)となるように、塩基性塩化アルミニウム水溶液にシリカゾルを配合することが望ましい。特に、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=70:30〜74:26となるように、塩基性塩化アルミニウム水溶液にシリカゾルを配合することがより望ましい。
【0153】
上記混合液(紡糸用混合物)に添加される有機重合体としては、特に限定されないが、上述したポリビニルアルコールの他に、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性有機重合体が挙げられる。
【0154】
本発明のマット材の製造方法において、ブローイング法により紡糸用混合物供給用ノズルから押し出される紡糸用混合物の液量は、3〜50ml/h程度であることが好ましい。このような条件では、紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液がスプレー状(霧状)になることなく十分に延伸され、無機繊維前駆体同士が互いに溶着しにくいので、繊維径分布の狭い均一な無機繊維前駆体(無機繊維)を得ることができる。
【0155】
本発明のマット材の製造方法において、第一の表面に形成された第二の無機繊維束と第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度とが異なるマット材を製造する場合には、上述した互いにニードルが異なる密度で取り付けられた二つのニードルボードを用いる方法の他に、ニードルの形成密度が互いに同じである二つのニードルボードを用いて、上記2表面でのニードルパンチング処理の回数を変更することにより行ってもよい。
【0156】
また、本発明のマット材の製造方法において、第一の表面に形成された第二の無機繊維束と第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度とが同じであるマット材を製造する場合には、次のようにして行ってもよい。
まず、互いに同じ密度でニードルが取り付けられたニードルボードを二つ準備し、それぞれのニードルボードをシート状物の第一の表面又は第二の表面から離間して配設する。このとき、ニードルパンチング処理で、それぞれのニードルボードに形成されたニードル同士が衝突せず、交互に組み合わさるようにニードルボードを配設する。
次に、それぞれのニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って同時に上下させることによりニードルパンチング処理を行い、ニードルパンチング処理体を作製する。この場合に、シート状物の両面についてニードルの先端部分に形成されたバーブがシート状物の反対側の表面に完全に貫出するまでニードルを貫通させる。
得られたニードルパンチング処理体に対して、第一実施形態と同様にして各工程を行うことで、一の表面に形成された第二の無機繊維束と第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度とが同じであるマット材を製造することができる。
【0157】
本発明のマット材の製造方法において、切断シート状物に含浸させる有機バインダ溶液に含まれる有機バインダとしては、上述したアクリル系樹脂に限られず、例えば、アクリルゴム等のゴム、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等であってもよい。これらの中では、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが特に好ましい。
【0158】
上記有機バインダ溶液には、上述した有機バインダが複数種類含まれていてもよい。
また、上記有機バインダ溶液としては、上述した有機バインダを水に分散させたラテックスの他に、上述した有機バインダを水又は有機溶媒に溶解させた溶液等であってもよい。
【0159】
本発明のマット材の製造方法において、含浸シート状物を加圧乾燥する場合には、95〜155℃の温度で乾燥を行うことが望ましい。上記温度が95℃未満では、乾燥時間が長くなり、生産効率が低下する。また、上記温度が155℃を超えると、有機バインダが分解し、マット材を構成する無機繊維同士を接着することができなくなり、無機繊維の脱落が発生する。
【0160】
また、本発明のマット材の製造方法において、平均繊維径の異なる無機繊維を作製する方法としては、例えば、エアーノズルから吹き出すガス流の流速を変更する等、ブローイング法において紡糸用混合物を紡糸する条件を変更することで、上記範囲と略同一の平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製する方法等が挙げられる。
エアーノズルから吹き出すガス流の流速を変更して平均繊維径の異なる無機繊維を作製する場合には、エアーノズルから吹き出すガス流速が40〜200m/sであることが望ましい。また、紡糸用混合物供給用ノズルの直径は、0.1〜0.5mmであることが望ましく、また、紡糸用混合物供給用ノズルから押し出される紡糸用混合物の液量は、1〜120ml/hであることが望ましい。
【0161】
本発明の消音器においては、インナーパイプの側面に複数のマット材が多層状に巻付けられていてもよく、この場合には、それぞれのマット材の長さは、アウターパイプ側に位置するマット材ほど長くすればよい。また、このような構成を有する消音器を製造する場合には、マット材をインナーパイプの側面に巻付けた後に、さらに、該マット材の上から別のマット材を巻付ける工程を繰り返し行うことで、側面に複数のマット材が多層状に巻付けられたインナーパイプを作製し、このインナーパイプを用いて第一実施形態と同様にして消音器を製造すればよい。
また、上記複数のマット材のうち、消音器のインナーパイプ側に配設されるマット材は、耐熱性の高い材料からなることが好ましい。高温の排ガスが流入することでインナーパイプの温度が高温になるため、インナーパイプ側に配設されるマット材には、高い耐熱性が要求されるからである。具体的には、主にアルミナ、シリカ等を含む無機繊維からなることが望ましい。
一方、インナーパイプに比べて温度が低くなるアウターパイプ側に配設されるマット材には、インナーパイプ側に配設されるマット材に比べて高い耐熱性が要求されない。そのため、アウターパイプ側に配設されるマット材は、上述した無機繊維よりも耐熱性の低い材料から形成されていてもよい。具体的には、主にガラス繊維等からなることが望ましい。
【0162】
また、上記消音器においては、インナーパイプの側面にスパイラル状に一つのマット材が巻付けられていてもよく、この場合には、マット材の形状を、幅がインナーパイプの長さよりも充分に小さく、長さがマット材を巻付けた回数分のインナーパイプの外周の長さと略同じである平面視略矩形の細長い平板状とすればよい。
また、このような消音器を製造する場合には、上述した形状のマット材をインナーパイプの側面にマット材同士が重ならないようにスパイラル状に巻付け、このインナーパイプを用いて第一実施形態と同様にして消音器を製造すればよい。
【0163】
本発明の消音器においては、インナーパイプの長さが、アウターパイプの長さとアウターパイプの両端部に配設された2つの端部用部材の厚さとを合わせた大きさと略同じであってもよい。この場合には、図4(a)及び図4(b)に示した第一実施形態の消音器70で、インナーパイプ73の両端部が、端部用部材72の端面から突出していない形状となる。
【符号の説明】
【0164】
10、100 マット材
13a、13b 表面
14 ニードル貫入痕
15 ニードル貫出痕
16 ニードル痕
18、18a、18b、18c、18d、18e 無機繊維束
70 消音器
71 アウターパイプ
72 端部用部材
73 インナーパイプ
74 小孔
113a 第一の表面
113b 第二の表面
114a 第一のニードル貫入痕
115a 第一のニードル貫出痕
116a 第一のニードル痕
118a 第一の無機繊維束
114b 第二のニードル貫入痕
115b 第二のニードル貫出痕
116b 第二のニードル痕
118b 第二の無機繊維束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に無機繊維からなり、表面に形成されたニードル貫入痕から前記ニードル貫入痕が形成された表面と反対側の表面に形成されたニードル貫出痕まで進展するニードルパンチング処理によって形成された複数のニードル痕を有し、
前記ニードル貫出痕では、複数の前記無機繊維が閉ループ状に配向してなる無機繊維束が形成されるとともに、
少なくとも一方の表面に前記無機繊維束が形成されていることを特徴とするマット材。
【請求項2】
前記ニードル痕は、前記マット材の第一の表面に形成された第一のニードル貫入痕から第二の表面に形成された第一のニードル貫出痕まで進展する第一のニードル痕と、
前記マット材の第二の表面に形成された第二のニードル貫入痕から第一の表面に形成された第二のニードル貫出痕まで進展する第二のニードル痕とからなる請求項1に記載のマット材。
【請求項3】
前記第一の表面に形成された第二の無機繊維束の形成密度と、前記第二の表面に形成された第一の無機繊維束の形成密度とが異なる請求項2に記載のマット材。
【請求項4】
前記無機繊維の平均繊維径が、3〜10μmである請求項1〜3のいずれかに記載のマット材。
【請求項5】
前記ニードル痕の形成密度が、7〜30個/cmである請求項1〜4のいずれかに記載のマット材。
【請求項6】
前記無機繊維は、アルミナ及びシリカのうちの少なくとも一つを含む無機繊維である請求項1〜5のいずれかに記載のマット材。
【請求項7】
有機バインダを含む請求項1〜6のいずれかに記載のマット材。
【請求項8】
無機化合物と有機重合体とを少なくとも含む紡糸用混合物を紡糸して無機繊維前駆体を作製する紡糸工程と、
前記無機繊維前駆体を圧縮してシート状物を作製する圧縮工程と、
前記シート状物の少なくとも一方の表面にニードルパンチング処理を行うことにより、前記シート状物の少なくとも一方の表面に前記無機繊維前駆体が閉ループ状に配向してなる束状の無機繊維前駆体が形成されたニードルパンチング処理体を作製するニードルパンチング工程と、
前記ニードルパンチング処理体を焼成する焼成工程とを行うことにより、主に無機繊維からなり、前記束状の無機繊維前駆体が焼成されてなる無機繊維束を有するマット材を製造することを特徴とするマット材の製造方法。
【請求項9】
前記シート状物の両面に前記ニードルパンチング処理を行う請求項8に記載のマット材の製造方法。
【請求項10】
前記シート状物の一方の表面と他方の表面とで、前記シート状物に貫入させるニードルの数を変えて前記ニードルパンチング処理を行う請求項9に記載のマット材の製造方法。
【請求項11】
前記シート状物の一方の表面側と他方の表面側とで、前記シート状物にニードルを貫入させる回数を変えて前記ニードルパンチング処理を行う請求項9又は10に記載のマット材の製造方法。
【請求項12】
前記マット材を構成する無機繊維の平均繊維径が、3〜10μmである請求項8〜11のいずれかに記載のマット材の製造方法。
【請求項13】
前記ニードルパンチング処理によって形成されたニードル痕の形成密度が、7〜30個/cmである請求項8〜12のいずれかに記載のマット材の製造方法。
【請求項14】
前記無機化合物には、焼成後にアルミナとなる無機化合物、及び、焼成後にシリカとなる無機化合物のうちの少なくとも一つが含まれている請求項8〜13のいずれかに記載のマット材の製造方法。
【請求項15】
前記ニードルパンチング処理体を焼成する焼成工程を行った後、さらに、有機バインダ溶液を含浸させることにより含浸マット材を作製する含浸工程と、
前記含浸マット材を乾燥させる乾燥工程とを行う請求項8〜14のいずれかに記載のマット材の製造方法。
【請求項16】
複数の小孔が形成されたインナーパイプと、
前記インナーパイプの側面に巻付けられるマット材と、
前記マット材が側面に巻付けられたインナーパイプが内部に配設されるアウターパイプと、前記アウターパイプの両端部に配設される端部用部材とからなる内燃機関の排気経路に設置される消音器であって、
前記マット材は、請求項1〜7のいずれかに記載のマット材であることを特徴とする消音器。
【請求項17】
複数の小孔が形成されたインナーパイプと、
前記インナーパイプの側面に巻付けられるマット材と、
前記マット材が側面に巻付けられたインナーパイプが内部に配設されるアウターパイプと、前記アウターパイプの両端部に配設される端部用部材とからなる内燃機関の排気経路に設置される消音器であって、
前記マット材は、請求項8〜15のいずれかに記載のマット材の製造方法で製造したマット材であることを特徴とする消音器。
【請求項18】
複数の小孔が形成されたインナーパイプの側面にマット材を巻付ける巻付け工程と、
前記マット材が側面に巻付けられたインナーパイプをアウターパイプの内部に圧入して圧入体を作製する圧入体作製工程と、
前記圧入体のアウターパイプの両端部に端部用部材を配設した後に、前記端部用部材と前記圧入体のアウターパイプとを固定する固定工程とを行う消音器の製造方法であって、
前記マット材は、請求項1〜7のいずれかに記載のマット材であり、前記マット材の前記無機繊維束が形成された表面がアウターパイプ側に配置されるようにしてマット材をインナーパイプに巻付けることを特徴とする消音器の製造方法。
【請求項19】
複数の小孔が形成されたインナーパイプの側面にマット材を巻付ける巻付け工程と、
前記マット材が側面に巻付けられたインナーパイプをアウターパイプの内部に圧入して圧入体を作製する圧入体作製工程と、
前記圧入体のアウターパイプの両端部に端部用部材を配設した後に、前記端部用部材と前記圧入体のアウターパイプとを固定する固定工程とを行う消音器の製造方法であって、
前記マット材は、請求項8〜15のいずれかに記載のマット材の製造方法で製造したマット材であり、前記マット材の前記無機繊維束が形成された表面がアウターパイプ側に配置されるようにしてマット材をインナーパイプに巻付けることを特徴とする消音器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−96171(P2010−96171A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22732(P2009−22732)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】