説明

マニピュレータ及びマニピュレータの制御方法

【課題】本発明は、小型な駆動部を有するマニピュレータを、または複数の構造物が存在する狭隘部へマニピュレータを挿入にできるマニピュレータの制御方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、上記目的を達成するために、少なくとも一つの駆動部と、前記駆動部に接続する少なくとも一つのリンクとを備えるマニピュレータの前記駆動部の姿勢角を検出し、前記姿勢角から前記マニピュレータの手先の位置および姿勢を算出するマニピュレータまたはマニピュレータの制御方法において、前記姿勢角の検出は前記リンクの駆動軸またはその延長線が前記姿勢検出器の検出軸とが一致するように設けられた前記姿勢検出器によって行なうことを第1の特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータ及びマニピュレータの制御方法に係り、特に、複数の構造物が存在する狭隘部へ挿入できるマニピュレータ及びそのマニピュレータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動部の姿勢を検知する機構として、磁気変化を利用して、姿勢角を検出するものがある。これに関する公知例として、例えば、駆動部の回転体を磁化球とし、周囲に配置した複数のホール素子を用いて磁場変化を検出することで、駆動部の姿勢角を算出する機構が、特開2003−70272号公報「球面超音波モータ、及び、それに適した磁化球」で開示されている。また、発光部の光のパターンを受光部で検出し、回転体の回転角度を算出する機構が、特開2007−132707号公報「球体の角度検出装置」で開示されている。さらに、回転体に接触させたローラの回転角を2つのエンコーダを用いて検出し、回転体の回転角度を算出する機構が、特開2007−135270号公報「球面超音波モータ」に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−70272号公報
【特許文献2】特開2007−132707号公報
【特許文献3】特開2007−135270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から特許文献3で開示された従来技術では、駆動部を構成する部品に姿勢角を検知する機構が直接取り付けられている。そのため、駆動部が大型となり、複数の構造物が存在する狭隘部へマニピュレータを挿入する場合、周囲の構造物等と接触してしまうため、適用できない。
【0005】
本発明の第1の目的は、上記の問題を解決し、小型な駆動部を有するマニピュレータを提供することである。
また、本発明の第2の目的は、複数の構造物が存在する狭隘部へマニピュレータを挿入にできるマニピュレータの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、少なくとも一つの駆動部と、前記駆動部に接続する少なくとも一つのリンクとを備えるマニピュレータの前記駆動部の姿勢角を検出し、前記姿勢角から前記マニピュレータの手先の位置および姿勢を算出するマニピュレータまたはマニピュレータの制御方法において、前記姿勢角の検出は前記リンクの駆動軸またはその延長線が前記姿勢検出器の検出軸とが一致するように設けられた前記姿勢検出器によって行なうことを第1の特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記姿勢検出器は、前記駆動部で駆動される前記リンク部に内蔵されていることを特徴とする第2の特徴とする。
さらに、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記駆動部は前記リンクの少なくとも1軸(自由度)の動作を駆動する駆動源を有することを第3の特徴のとする。
【0008】
また、本発明は、上記第1の目的を達成するために、第3の特徴に加え、前記駆動部は前記リンクの3軸(自由度)の動作を駆動する駆動源を有し、前記3軸(自由度)の前記姿勢角を検出する前記姿勢検出器として3軸傾斜計、または1軸ジャイロセンサと2軸加速度センサを有することを第4の特徴とする。
さらに、本発明は、上記第2の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記姿勢検出器を内蔵する姿勢検出器内蔵部に設けられていることを第5の特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記算出結果から前記駆動部の制御量を算出し、前記マニピュレータの目標とする手先位置および姿勢の指令値を入力し、前記姿勢角から前記駆動部の角度を算出し、前記駆動部の角度から前記マニピュレータの手先の位置および姿勢を算出し、前記マニピュレータの手先の位置および姿勢と前記指令値とから前記駆動部の駆動量を算出することを第6の特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、上記第2の目的を達成するために、第6の特徴に加え、前記指令値の入力は構造物の設計データに基づいて構成された前記マニピュレータの操作画面イメージに基づいて行なわれることを第7の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型な駆動部を有するマニピュレータを提供できる。
また、本発明によれば、複数の構造物が存在する狭隘部へマニピュレータを挿入にできるマニピュレータの制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例である原子炉内検査作業中における、目視検査装置の機器配置を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例における、マニピュレータ(水中検査装置)の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施例における、マニピュレータ(水中検査装置)に搭載する駆動部の第1の実施形態の概略図である。
【図4】本発明の第1の実施例における、マニピュレータ(水中検査装置)に搭載するリンクの姿勢検出器内蔵部の概略図である。
【図5A】本発明の第1の実施例における、マニピュレータ(水中検査装置)に搭載する駆動部の第2の実施形態の概略図である。
【図5B】本発明の第1の実施例における、マニピュレータ(水中検査装置)に搭載する駆動部の第3の実施形態の概略図である。
【図6】本発明の第1の実施例における、制御装置内の機能ブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施例における、処理全体の流れ図である。
【図8】本発明の第1の実施例における、操作画面イメージを示す図である。
【図9】本発明の第2の実施例における、水中検査装置(マニピュレータ)に搭載するリンクの姿勢検出器内蔵部の概略図である。
【図10】本発明の第2の実施例における、処理全体の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)
本発明の好適な第1の実施例である、原子炉内目視検査装置について、図1から図7を用いて説明する。本実施例は、原子炉内の目視検査装置にマニピュレータを適用したものである。なお、本実施例では、適用対象を原子炉内の目視検査装置としているが、その他の部位や装置にも同様の装置構成で対応可能である。
【0014】
図1を用いて、本実施例の検査実施形態を説明する。原子炉1内には、シュラウド2、上部格子板3、炉心支持板4、シュラウドサポート5等の構造物があり、PLR配管6をはじめとする配管が接続されている。また、原子炉1の上部には、作業スペースであるオペレーションフロア7があり、同じく上方には燃料交換装置8がある。原子炉内の目視検査を行う場合、水中検査装置9を投入し、検査員14は、燃料交換装置8上から表示装置12で水中検査装置9に搭載したカメラ(図2の16)で撮影した映像を確認しながら、コントローラ13により操作を行う。ここで、表示装置12およびコントローラ13は、制御装置11と接続され、マニピュレータである水中検査装置9(以下の説明ではマニピュレータという)は、ケーブル10を介して、制御装置11と接続されている。
【0015】
図2を用いて、本実施例におけるマニピュレータ9の詳細構成を説明する。マニピュレータ9には、複数個のモータを内蔵した駆動部15a〜15cがあり、その先端部には目視検査用カメラ16を搭載している。また、ケーブル10と駆動部15a間、駆動部15aと駆動部15b間、駆動部15bと駆動部15c間、駆動部15cと目視検査用カメラ16間は、軽量の円筒形剛体棒であるリンク17で接続する。そして、目視検査用カメラ16と駆動部15a〜15cの電源および制御信号は、ケーブル10を介して制御装置11から供給され、逆に映像信号および駆動部15a〜15cの状態信号は、制御装置11へ伝送される。なお、マニピュレータ9全体は、図中に示すように外側を弾性カバー19で覆い、水中での利用も可能としている。また、ケーブル10側には固定部18を設けており、構造物等に固定して検査作業を実施する。
【0016】
図3を用いて、図2に示した駆動部15a〜15cの詳細構成を説明する。図3は、駆動部の三面図である。3つのモータ20a、20b、20cにより、3自由度の動作が可能である。モータ20a、20b、20c本体は、それぞれ固定部品22、21、リンク取付け部品23に固定されており、モータ20a、20b、20cの駆動軸は、それぞれ固定部品21、リンク取付け部品23、駆動部同士を接続するためのリンク17に固定され、それぞれ固定されている部品を駆動する。その結果、リンク17は前記3駆動軸によって3自由度の動作を行なう。また、リンク17の内部には、各駆動部の姿勢角を検出するために用いる姿勢検出器内蔵部を設けている。なお、モータ20aの固定部品22は根元側のリンク17に固定されており、駆動部15a〜15cの駆動部のベースとなる。
【0017】
図4を用いて、図3に示した姿勢検出器内蔵部25の詳細構成を説明する。姿勢検出器内蔵部25の各姿勢検出器は、前述の3駆同軸によって3自由度の動作を行なうリンク17の駆動軸17cと一致する検出軸25cを有する。
姿勢検出器内蔵部25は、前述の3自由度の動作を検出する慣性センサとして、駆動軸17C周りの旋回角を検出するための1軸ジャイロ26と、駆動軸の2軸傾斜角を検出するための2軸加速度センサ27を内蔵している。1軸ジャイロセンサ26および2軸加速度センサ27は、図4に示すように、リンク17の駆動軸17cとセンサの検出軸が一致するように配置する。この結果、リンク17の3軸の姿勢を検出することができる。
【0018】
本実施例によれば、リンク内部に姿勢検出器を配置することで、姿勢検出器による駆動部の大型化を防ぎ、マニピューレーの小型化を実現できる。
【0019】
上記実施例では姿勢検出器をリンク17の内部に設けたが、図5Aに示すように、駆動部15の内部にあって、リンク17と同一動作する姿勢検出器内蔵体28の駆動軸17cの延長線上に姿勢検出器を設けても、リンクの3駆動軸の角度を検出できる。
また、姿勢検出器は図5Bに示すように、リンク17内の駆動軸17c上であればどこでもよい。
さらに、上記実施形態では駆動軸17cを旋回軸としてリンク17を旋回させるモータ20cをリンク取付け部品23に固定したが、図5Bに示すように、リンク先端側に駆動部の固定部品24に固定し、リンク17を旋回させてもよい。
【0020】
以上説明した第1の実施例によれば、リンク内部の駆動軸上、またはその駆動軸の延長線上であってリンクと同一の軸動作を行なう位置に位置姿勢検出器を配置することで、姿勢検出器による駆動部の大型化を防ぎ、マニピューレーの小型化を実現できる。
その結果、第1の実施例同様に複数の構造物が存在する狭隘な領域へ挿入することができる
また、上記実施例では3自由度の動作駆動部について説明したが、1自由度あるいは2自由度の動作駆動部においても、それらの姿勢検出器の検出軸をリンクの駆動軸または駆駆動軸の延長線上と一致するように配置すれば、上記実施例と同様な効果を奏することができる。
【0021】
次に、図6を用いて、制御装置11内の機能構成を説明する。図2に示す駆動部15a〜15cの1軸ジャイロ26a〜26c及び2軸加速度センサ27a〜27cの出力信号は、駆動部角度算出手段28において、角度データへ変換する。次に、位置姿勢算出手段29において、駆動部角度算出手段28で算出した各駆動部の角度データから、順運動学を解くことにより、マニピュレータ9の先端部の位置および姿勢を算出する。一方、操作員が操作したコントローラ13の出力信号から、目標位置姿勢算出手段30において、マニピュレータ9の先端部の目標位置・姿勢を算出する。そして、駆動量算出手段31において、位置姿勢算出手段29と目標位置姿勢算出手段30で算出したデータを用いて、駆動部15a〜15cのモータ制御量を算出する。最後に、指令電圧算出手段32において、モータ制御量を各モータへ供給する指令電圧へと変換し、駆動部15a〜15cの各モータへ供給する。なお、目視検査用カメラ16の映像信号は、画像取得手段33で電子データへ変換し、表示装置12へ供給する。
【0022】
図7を用いて、本実施例の処理の詳細を説明する。原子炉内検査を開始後、ステップ34に進み、図1に示すマニピュレータ9の操作に入る。操作開始後、まず、ステップ35において、コントローラ13で入力された、マニピュレータ9の先端部の位置姿勢指令値を取り込む。
そして、ステップ36の位置姿勢算出処理において、ステップ37からステップ40の処理を実行し、マニピュレータ9の手先の位置姿勢を算出する。ここで、ステップ37からステップ40の処理について詳述する。ステップ37において、各駆動部の1軸ジャイロ26a〜26c、2軸加速度センサ27a〜27cの出力信号を取り込む。そして、ステップ38の駆動部角度算出手段において、1軸ジャイロ26a〜26cの電圧信号を、センサ固有のスペックとして示されている一定値の角速度変換係数を乗じることで、角速度ωzへと変換し、2軸加速度センサ27a〜27cの電圧信号を、センサ固有のスペックとして示されている一定値の加速度変換係数を乗じることで、加速度ax、ayへと変換する。姿勢角
θx、θy、θzは、変換した角速度ωzと加速度ax、ayを用いて、以下の式で表される。
【0023】
【数1】

なお、Δtは、1軸ジャイロ26a〜26cのデータサンプリング時間である。
【0024】
次に、ステップ39の手先位置・姿勢算出処理において、一般的なロボットの動作解析で用いられ、駆動部角度から手先の位置・姿勢を算出する際に利用する順運動学を用いて、マニピュレータ9の先端部の位置・姿勢を算出する。最後に、ステップ40において、駆動部15a〜15cの駆動部角度と手先位置姿勢データを保存し、ステップ36の位置姿勢算出処理を終了する。
【0025】
次に、ステップ41の駆動量算出処理において、ステップ42からステップ46の処理を実行し、駆動部15a〜15cの駆動量を算出する。ここで、ステップ42からステップ46の処理について詳述する。ステップ42において、コントローラ13からの手先位置姿勢指令値、ステップ36において算出した駆動部角度および手先位置姿勢を読込む。そして、ステップ43の目標駆動部角度算出処理において、手先位置姿勢指令値を逆運動学を解くことにより、目標駆動部角度へと変換する。なお、逆運動学の詳細は省略する。次に、ステップ44の制御量算出処理において、ステップ43で算出した目標駆動部角度θref(θref_x, θref_y, θref_z)と、ステップ42で読込んだ駆動部角度θcur(θx, θy, θz)を用いて、以下の式で制御量θcomを算出する。
【0026】
【数2】

ここで、Kp、Ki、Kdは、それぞれ比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインであり、動作前に制御する軸ごとに予め設定する値である。
【0027】
さらに、ステップ45の指令電圧算出処理において、ステップ44で算出した駆動部角度の制御量
θcom(θcom_x, θcom_y, θcom_z)へ変換係数を乗じて、駆動部15a〜15cの各モータの指令電圧Vcom(Vcom_x, Vcom_y, Vcom_z)へと変換する。最後に、ステップ46で指令電圧を保存し、処理を終了する。
以上、ステップ35からステップ46の処理を、マニピュレータ9の操作中に繰り返し実行する。
【0028】
図8を用いて、本実施例の操作画面イメージの詳細を説明する。画面上には、手先位置姿勢表示部47と、マニピュレータ9の動作状態表示部48がある。動作状態表示部48の機能を説明する。検査個所に存在する構造物の設計データ49を予め読込むことで、作業環境を把握することができる。また、駆動部15a〜15cの駆動部角度を取り込み、仮想マニピュレータ50を実際のマニピュレータ9とリンクして動作をさせることができる。これにより、周囲の構造物との干渉等をチェックしながら操作を行うことができる。
【0029】
以上説明した第1の実施例による原子炉内の検査処理によれば、姿勢検出器の検出軸をリンクの駆動軸または駆動軸の延長線上と一致するように配置することで、複数の構造物が存在する狭隘な領域へ挿入し、内部の様子を検査できる。特に、設計データ等に基づく操作画面を参照することで、確実に複数の構造物が存在する狭隘な領域へ挿入できる。
また、以上説明した第1の実施例による原子炉内の検査処理によれば、各駆動部の姿勢角を検出することで、マニピュレータの形状や先端部の位置および姿勢を把握することができる。
【0030】
次に、本発明の好適な第2の実施例である、原子炉内検査装置について、図9と図10を用いて説明する。本実施例は、第1の実施例と比較し、リンクに設ける姿勢検出器内蔵部の構成と制御装置内での駆動部角度算出処理の構成が異なるが、それ以外の構成は同一である。以下、異なる点のみ説明する。
【0031】
図9を用いて、姿勢検出器内蔵部51の詳細構成を説明する。姿勢検出器内蔵部51は、リンク17の3軸の姿勢を検出することができるセンサとして、3軸傾斜角を検出するための3軸傾斜計52を内蔵しており、3軸傾斜計の検出軸がリンク17の駆動軸17cと一致するように設置する。なお、姿勢検出器内蔵部51に内蔵する3軸傾斜計のセンサは、ジャイロ、加速度センサ、傾斜計等の角度を検出できるセンサを組み合わせて使用してもよい。
【0032】
以上説明した第2の実施例によれば、第1の実施例同様にリンク内部の駆動軸上、またはリンクの駆動軸の延長線上であってリンクと同一の軸動作を行なう位置に位置姿勢検出器を配置することで、姿勢検出器による駆動部の大型化を防ぎ、マニピューレーの小型化を実現できる。その結果、第1の実施例同様に複数の構造物が存在する狭隘な領域へ挿入することができる。
また、上記第2の実施例においても3自由度の動作駆動部について説明したが、第1の実施例同様に、1自由度あるいは2自由度の動作駆動部においても適用可能である
図10を用いて、第2の実施例のマニピュレータの先端に取り付けられたカメラによる原子炉内の検査処理の詳細を説明する。原子炉内検査を開始後、ステップ53に進み、図1に示すマニピュレータ9の操作に入る。
操作開始後、まず、ステップ54において、操作員によるコントローラ13を介して入力されたマニピュレータ9の先端部の位置姿勢指令値を取り込む。そして、ステップ55の位置姿勢算出処理において、ステップ56からステップ59の処理を実行し、マニピュレータ9の手先の位置姿勢を算出する。ここで、ステップ56からステップ59の処理について詳述する。ステップ56において、3軸傾斜計52a〜52cの出力信号を取り込む。そして、ステップ57の駆動部角度算出手段において、3軸傾斜計52a〜52cの電圧信号を、センサ固有のスペックとして示されている一定値の傾斜角変換係数を乗じることで、姿勢角θx、θy、θzへと変換する。
【0033】
次に、ステップ58の手先位置・姿勢算出処理において、一般的なロボットの動作解析で用いられ、駆動部角度から手先の位置・姿勢を算出する際に利用する順運動学を用いて、マニピュレータ9の先端部の位置・姿勢を算出する。最後に、ステップ59において、駆動部15a〜15cの駆動部角度と手先位置姿勢データを保存し、ステップ55の位置姿勢算出処理を終了する。
【0034】
次に、ステップ60の駆動量算出処理において、ステップ61からステップ65の処理を実行し、駆動部15a〜15cの駆動量を算出する。ステップ61からステップ65の処理は、第1の実施例のステップ42からステップ46の処理と同様なので詳細は省略する。以上、ステップ54からステップ65の処理を、マニピュレータ9の操作中に繰り返し実行する。
【0035】
以上説明した第2の実施例による原子炉内の検査処理によれば、姿勢検出器の検出軸をリンクの駆動軸またはその駆動軸の延長線上と一致するように配置することで、複数の構造物が存在する狭隘な領域へ挿入し、内部の様子を検査できる。
さらに、以上説明した第2の実施例による原子炉内の検査処理によれば、第1の実施例同様に、各駆動部の姿勢角を検出することで、マニピュレータの形状や先端部の位置および姿勢を把握することができる。
【0036】
また、上記説明した第1から第2の実施例に記載した構成は、炉内目視検査を対象としたものであるが、先端部に搭載する装置を変更することで、その他、炉内構造物に発生する欠陥の長さおよび深さを測定するための渦電流センサや超音波センサによる探傷検査装置、炉内構造物の研磨、切断、溶接等を行う作業装置にも適用可能である。
【0037】
さらに、本発明は、原子炉内の補修・検査等に用いる装置のみでなく、水中および気中で使用する各種作業装置に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0038】
1:原子炉 2:シュラウド 3:上部格子板
4:炉心支持板 5:シュラウドサポート 6:PLR配管
7:オペレーションフロア 8:燃料交換装置
9:マニピュレータ(水中検査装置)
10:ケーブル 11:制御装置 12:表示装置
13:コントローラ 14:検査員 15a〜15c:駆動部
16:目視検査用カメラ 17:リンク 18:固定部
19:弾性カバー 20a、20b、20c:モータ
21:モータ20bの固定部品 22:モータ20aの固定部品
23:リンク取付け部品(モータ20aの固定部品)
24:駆動部固定板 25:姿勢検出器内蔵部 26:1軸ジャイロ
27:2軸加速度センサ 28:姿勢検出器内蔵体 47:手先位置姿勢表示部
48:動作状態表示部 49:構造物設計データ 50:仮想マニピュレータ
51:姿勢検出器内蔵部 52:3軸傾斜計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの駆動部と、前記駆動部に接続する少なくとも一つのリンクと、前記駆動部の姿勢角を検出する姿勢検出器と、前記姿勢角からマニピュレータの手先の位置および姿勢を算出する手先位置姿勢算出手段とを備えた制御装置とを有するマニピュレータにおいて、
前記リンクの駆動軸またはその延長線と前記姿勢検出器の検出軸が一致するように前記姿勢検出器を設けることを特徴とするマニピュレータ。
【請求項2】
前記姿勢検出器は、前記駆動部で駆動される前記リンク部に内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項3】
前記駆動部は前記リンクの少なくとも1軸(自由度)の動作を駆動する駆動源を有することを特徴のとする請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項4】
前記駆動部は前記リンクの3軸(自由度)の動作を駆動する駆動源を有し、前記3軸(自由度)の前記姿勢角を検出する前記姿勢検出器として3軸傾斜計を有することを特徴とする請求項3に記載のマニピュレータ。
【請求項5】
前記駆動部は前記リンクの3軸(自由度)の動作を駆動する駆動源を有し、前記3軸(自由度)の前記姿勢角を検出する前記姿勢検出器として1軸ジャイロセンサと2軸加速度センサを有することを特徴とする請求項3に記載のマニピュレータ。
【請求項6】
前記姿勢検出器は、前記姿勢検出器を内蔵する姿勢検出器内蔵部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項7】
前記制御装置は前記位置及び姿勢の算出結果から前記駆動部の制御量を算出する制御量算出手段を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のマニピュレータ。
【請求項8】
前記制御装置は、前記マニピュレータの目標とする手先位置および姿勢の指令値を入力する指令値入力手段と、前記姿勢角から前記駆動部の角度を算出する駆動部角度算出手段と、算出した前記駆動部角度から前記マニピュレータの手先の位置および姿勢を算出する前記手先位置姿勢算出手段と、前記手先位置姿勢算出手段の結果と前記指令値から、前記駆動部の制御量を算出する前記制御量算出手段を備えたことを特徴とする請求項7に記載のマニピュレータ。
【請求項9】
少なくとも一つの駆動部と、前記駆動部に接続する少なくとも一つのリンクとを備えるマニピュレータの前記駆動部の姿勢角を検出し、前記姿勢角から前記マニピュレータの手先の位置および姿勢を算出するマニピュレータの制御方法において、
前記姿勢角の検出は前記リンクの駆動軸またはその延長線が前記姿勢検出器の検出軸とが一致するように設けられた前記姿勢検出器によって行ない、前記算出結果から前記駆動部の制御量を算出することを特徴とするマニピュレータの制御方法。
【請求項10】
前記マニピュレータの目標とする手先位置および姿勢の指令値を入力し、前記姿勢角から前記駆動部の角度を算出し、前記駆動部の角度から前記マニピュレータの手先の位置および姿勢を算出し、前記マニピュレータの手先の位置および姿勢と前記指令値とから前記駆動部の駆動量を算出することを特徴とする請求項9に記載のマニピュレータの制御方法。
【請求項11】
前記指令値の入力は構造物の設計データに基づいて構成された前記マニピュレータの操作画面イメージに基づいて行なわれることを特徴とする請求項10に記載のマニピュレータの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−6098(P2012−6098A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142523(P2010−142523)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】