説明

マニホールド型弁装置

【課題】 ポンプの外壁面に簡単に添設することができると共に、弁体等の部品交換や洗浄も簡単であること。また、ポンプの流路の穴あけ加工の簡略化を図ること。さらに、製造コストを安価にすること。
【解決手段】 ピストンを有するポンプの一側面に取り外し可能に固定的に添設される吸引用ブロック体Yに吸引口52から分岐する流路54を、一方、ポンプの他側面に取り外し可能に固定的に添設される吐出用ブロック体Y1に吐出口53に集合する流路55をそれぞれ形成し、これらの流路54,55にそれぞれ極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体を設けたことを特徴とするマニホールド型弁装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ用のマニホールド型弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献には、吸気マニホールド及び排気マニホールドに切り換え弁の機能を付与する考え方が記載され、或いは示唆されている。これらの特許文献1乃至3は、いずれも、マニホールドの取付け対象物のコンパクト化を目的とするものではあるが、弁体そのものは、通電制御が必要な複数個の電磁切り換え弁であることから、結局、構造的に複雑なものであるし、また、流体如何(たとえば流体が水素である場合)によっては、不向きな場合もある。
【0003】
ところで、昨今、水素を用いる燃料電池の開発が盛んであり、それに用いる逆止弁の必要性が増大している。また、出願人が開発しているピストン型ポンプ、特に脈動回避型のピストン型ポンプに於いて、簡単な構造の逆止弁を有するマニホールド型弁装置が要望されている。本発明は、このような背景技術の基で出現したものである。
【特許文献1】特開平5−306785号公報
【特許文献2】特開平6−241339号公報
【特許文献3】特開2004−3508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1目的は、流体が、例えば水素であっても支障がないポンプ用のマニホールド型弁装置を提案することである。本発明の第2目的は、弁装置を簡単にポンプの外壁面に添設することができる反面、部品の交換、洗浄、装置全体のコンパクト化等を簡単に実現することができることである。本発明の第3目的は、ポンプ本体の流路の穴あけ加工の簡略化を図ることである。換言すれば、少なくともポンプ本体に弁座用凹所や弁体用の収納部を形成しなくても良いことである。本発明の第4目的は、さらに、製造コストを安価にすることである。第5の目的は、ピストンを基準にして第1加圧室と第2加圧室に区分けすることができる流体用ポンプに於いて、特に脈動の回避を目的として流体を連続的に圧送するピストン型のポンプに適合することである。なお、ピストン型のポンプは、必ずしも、作動杆(ピストンロッド)が構成要件ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のマニホールド型弁装置は、ピストンを有するポンプの少なくとも一側面に取り外し可能に固定的に添設されるブロック体に、吸引口から分岐する又は吐出口に合流する流路を形成し、これらの流路とそれぞれ連通する開口部に逆止弁をそれぞれ設け、これらの逆止弁は、それぞれ極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体を有することを特徴とする。なお、本実施例の駆動手段は、回転式の駆動カム13であるが、駆動手段はこれに限定するものではない。
【0006】
上記構成に於いて、磁性弁体は球状磁石であることを特徴とする。また、磁性弁体又は磁性弁座には、弗素樹脂がコーティングされていることを特徴とする。さらに、磁性弁座は、凹所状の開口部内にそれぞれ固定され、かつ、磁性弁体の曲面に対する断面弧状の曲面を有するパッキンであることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のマニホールド型弁装置は、ピストンを有するポンプの一側面に取り外し可能に固定的に添設される吸引用ブロック体Yに吸引口52から分岐する流路54を、一方、ポンプの他側面に取り外し可能に固定的に添設される吐出用ブロック体Y1に吐出口53に集合する流路55をそれぞれ形成し、これらの流路54,55にそれぞれ極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体を設けたことを特徴とする。
【0008】
上記構成に於いて、ピストンが加圧室内を摺動することに起因して流体の圧力が磁性体の吸着力よりも増さると、ピストンを基準として区別される吸引側の逆止弁の磁性弁体と吐出側の逆止弁の磁性弁体は、それぞれ磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座から同時に離れて開弁状態となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
(1)流体が、例えば水素であっても支障がない。それは水素よる脆性破壊もなく、また、瞬間的な密閉性にも優れているからである。
(2)ポンプの外壁面に簡単に添設することができると共に、磁性弁体等の部品交換や洗浄も簡単である。
(3)シリンダー側に逆止弁を設ける必要がないから、ポンプの流路の穴あけ加工を簡略化することができる。
(4)付勢手段等を用いる必要がないから、耐久性に優れている。
(5)磁性弁体が球体である実施例の場合には、流体の流れが上下又は左右であっても、流れの方向に関係なく、球状の磁性弁体は磁性体の極性に対応して磁性弁座に着座する。
(6)実施例によっては、連続的に流体を圧送することができる流体用ポンプに適合する。特に、本発明は、圧送する流体の合成波形を一定(無動脈)にする目的を有するピストン型ポンプに適合する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図12は、本発明の一実施例である。この最良の実施形態により本発明を詳細に説明する。
【0011】
(1)実施の環境
ここでは、図1乃至図4を参照にして実施の環境を説明する。図1はピストン型ポンプXに適用した一例を示す全体の概念図である。図2はポンプXを中心とする駆動源、動力伝達部材、固定部材、可動部材(駆動カム)等を示す。図3はポンプXの実施化レベルの具体的構造を示す概略説明図、図4は、本発明の主要部を示す概略断面説明図である。
図2に於いて、まず、1はポンプ用台、2はポンプ用台1の上面に支持台を介して固定された駆動モータ、3は電源である。
【0012】
次に、4は駆動モータ2の駆動軸5により作動する減速歯車機構で、この減速歯車機構4は、例えば駆動モータ2の駆動軸5で回転する駆動歯車4a、この駆動歯車の噛合する伝動歯車4b、伝動歯車を有する出力軸6を備えている。
【0013】
駆動モータ2又は/及び減速歯車機構4は、駆動モータ用の高さ調節台7を介して適宜に設けられている。また、出力軸6の軸受け部材8.8は、ポンプ用台1又は調節台7に固定的に設けられる。
【0014】
次に、11はポンプ用台1の上面に固定された固定部材で、この固定部材11の内部空間12に、駆動モータ2の駆動力により低速回転するように設けられ、かつ、カム機能を有する回転部材(駆動カム)13と、この回転部材13に形成した内部(凹所内)14に、固定側のアーム状支持部材15を介して固定的に配設されたポンプXと、該ポンプXの両側壁にそれぞれ固定された左右のマニホールド型弁装置Y,Y1(本発明)とが一体的に配設されている。
【0015】
(2)本発明に適用されるポンプX
本発明に適用されるポンプXは、シリンダー内のピストン31が作動杆32,33の往復動により摺動するピストン型ポンプである。ポンプXの作動杆32,33は、例えば回転部材(駆動カム)13の駆動力により上下方向に往復動する。
【0016】
マニホールド型弁装置Y,Y1は、図3,図4などで示すようにポンプXの一側壁と他側壁に固定手段49を介してそれぞれ固定されている。ポンプXの一側壁に固定された弁装置Yは吸引(吸気)側のマニホールドであり、一方、ポンプXの他側壁に固定された弁装置Y1は吐出(排気)側のマニホールドである。
【0017】
(3)固定部材11
図2で示すように、ベース部10を有する固定部材11は、例えば一側面開口の筒状体に形成されている。固定部材11の外周壁の形態は問わない。固定部材11は、配管用の貫通孔、案内部等を有するが、細部的事項は割愛する。
【0018】
また支持部材15は、固定部材11に複数本固定的に設けられ、これらの支持部材15は、固定部材11の垂直壁部11aから回転部材13の内部14へと水平状態に延び、ポンプXを直接的ないし間接的に支持する。
【0019】
支持部材15は、この実施例では、前記垂直壁部11aの内壁面の適宜部位からアーム状に延設してポンプX及びその作動杆32,33の突出端部を支持している。
【0020】
また、固定部材11には突出壁部11bが連設し、この突出壁部11bは、垂直壁部11aの内壁面に対して直交する内周壁面を有する。この内周壁面は、前述した回転部材13用の内部空間12を形成する。
【0021】
(4)回転部材13
図2で示すように、回転部材13も、固定部材11と同様に、一側面開口の筒状体に形成されている。回転部材13は、駆動源側の出力軸6に支持されるように該出力軸6の先端部に一体的に連結された垂直の円形回転板16と、この円形回転板16の周縁部に突壁状態に周設された環状板17とから成る。
【0022】
前記円形回転板16の中心部に出力軸6が適宜に固定されている。また回転部材13の環状板17の外径寸法は、固定部材11の突出壁部11bの内径寸法を考慮して適宜に設定されている。さらに、環状板17の横向凹所14は、マニホールド型弁装置Y,Y1を備えたポンプXを十分に収納する大きさに設定されている。そして、環状板16の横向凹所14の内周壁面に等速カム輪郭18が形成されている。等速カム輪郭18は、図3で示すように心臓カムである。したがって、図3を基準にすると、ハート型のカム18は、弧状の突出部分18aと、この突出部分と対向する弧状の凹所部分18bとを有する。
【0023】
(5)ポンプXの基本的構成
図4を参照にしてポンプXの基本的構成を説明する。まず、21はシリンダーで、このシリンダー21の周胴部22の上下端部(両端部)には、その外壁面から第1加圧室23及び第2加圧室24にそれぞれ至る第1,第2吸気用流路25,26並びに第1,第2排気用流路27,28がそれぞれ形成されている。図4では、シリンダー21の右側に第1,第2吸気用流路25,26が、一方、シリンダー21の左側に第1,第2排気用流路27,28がそれぞれ形成されている。
【0024】
したがって、本実施例では、シリンダー21の右側に前記第1,第2吸気用流路25,26に吸引側の弁装置(吸引マニホールド)Yが固定され、一方、シリンダー21の左側に前記第1,第2排気用流路27,28に各開口部が連通するように吐出側の弁装置Y1(吐出マニホールド)が固定されている。なお、シリンダー21の具体的な構成は、本発明の特定要件ではない。
【0025】
次に、31はピストンで、このピストン31の両側壁には、上下のピストンロッド32,33の内端部がそれぞれ固定されている。そして、これらのピストンロッド32,33の外端部はシリンダー21の中心孔を有する上下のヘッド(上壁と下壁)34,34から突出している。なお、35は上下一対の環状パッキンである。
【0026】
(6)ポンプXの基本的作動
前述したように、図1は全体の概念図である。この図1で示すように、本実施例のピストン型ポンプXは、供給源41から供給側の配管42、吸引側の弁装置Y、ポンプXのシリンダー21、吐出側の弁装置Y1、排気側の配管43をそれぞれ介して容器、人体などの供給を受ける対象44へと液体、気体等の流体45を圧送する。その際、ポンプXは、圧送する流体の合成波形を一定(無動脈)にする目的を有している。そこで、シリンダー21の右側に第1,第2吸気用流路25,26が、一方、シリンダー21の左側に第1,第2排気用流路27,28がそれぞれ形成されている。したがって、前記ポンプXが二連式の場合には、当然のことながら、吸引側及び吐出側の弁装置Y,Y1の流路、開口部、弁体等が多数になる。
【0027】
さて、図3で示すように駆動源2の駆動力により回転部材13が回転すると、ポンプXの作動杆32.33は、突出端部に支承されたローラ、ボールなどの転動体36,36を介して上下動する。これらの転動体36,36は、ハート型カム面18の周溝37を転動することから、作動杆32.33は回転部材13が回転している限り上下方向に往復動する。
【0028】
(7)弁装置Y,Y1の共通事項
本発明のマニホールド型弁装置Y,Y1は、図4乃至図10で示すように摺動ピストン31を有するポンプXの外壁面(例えば左右の側壁、又はいずれか一方の側壁)に取り外し可能に固定的に添設されるブロック体51,51Aに、吸引口52から分岐する又は吐出口53に集合する単数又は複数本の流路54,55を形成し、これらの流路54,55とそれぞれ連通する添設面51a,51aの開口部56,57,58,59に逆止弁61,62,63,64をそれぞれ設け、これらの逆止弁61,62,63,64は、それぞれ極性に対応して磁性弁座65,65に着座する磁性弁体66,66を有する。
【0029】
しかして、図6及び図10で示すように、前記各磁性弁座65は、凹所状の各開口部56,57,58,59内に図示しない固定手段を介してそれぞれ固定され、かつ、磁性弁体の曲面に対する断面弧状の曲面を有するパッキンである。
【0030】
また、前記各磁性弁体66は、前記磁性弁座65又は/及び開口部の周縁部の材質極性に対応してそれぞれ吸着する球状磁石である。本実施例では、磁性弁座65及び球状磁性弁体66には、防錆性、緩衝性を考慮して弗素樹脂がコーティングされている。
【0031】
(8)吸引側の弁装置Y
図4乃至図8を参照にして吸引側の弁装置Yの構成を説明する。まず、51は図4で示すようにシリンダー1の周胴部22の右側壁に複数個(例えば4本)の固着手段49を介して密着状態に固着された一つの四角いブロック体である。このブロック体51の内外の壁面は、シリンダー1の角形又は円形の周胴部22の側壁の面に対応する曲率を有して又は有さず多角形(例えば長方形)に形成されている。
【0032】
しかして、52はブロック体51の外壁面の中央部に形成された一つの円形吸気口で、この円形吸気口52には、テーパ状のメネジ部が形成されている。円形吸気口52には、図1で示したように供給側の配管42が継手を介して適宜に連結される。
【0033】
次に、54はブロック体51の内部に形成された流路で、この流路54は円形吸気口52から分岐している。なお、切削加工により流路54を形成した場合には、不要な穴は塞がれる。
【0034】
次に、56,57は分岐した前記流路54とそれぞれ連通する吸引用開口部である。添設面51aに離間して形成されたこれら開口部の56,57は、円形又は角形の凹所である。これらの開口部56,57に逆止弁61,62がそれぞれ組み込まれる。
【0035】
しかして、本実施例の逆止弁61,62は、前項で説明したように、各開口部56,57内にそれぞれ固定された一組の環状磁性弁座(パッキン)65と、これらの磁性弁座65に極性に対応してそれぞれ着座する球体の磁性弁体66,66とから成る。
【0036】
ところで、本発明の特定要件ではないが、吸引側の弁装置Yは、例えば図6で示すように、前面に環状溝72を有する螺合筒71が、前記開口部56,57の内周壁のメネジ部73にそれぞれ螺着している。そして、吸引側の弁装置Yをシリンダー21の右側壁に固着する際には、螺合筒71の周部に図示しないシールを巻付けると共に、前面環状溝72にパッキン74を嵌め込む。
【0037】
なお、前記球状磁性弁体66が螺合筒71の貫通状案内孔75及びシリンダー21の第1,第2吸気用流路25,26の入り口部25a,26aをそれぞれ塞がないように案内孔75等はやや大きめに設計されている(図4参照)。また、前記パッキン74用の環状溝72は、螺合筒71の前面に必ずしも形成する必要はなく、吐出側の弁装置Y1と同様にブロック体51の添設面51aの開口部56,57の周りにそれぞれ形成しても良い。さらに、ブロック体51の四隅には、固着手段49用の貫通取付け部76が形成されている。
【0038】
(9)吐出側の弁装置Y1
吐出側の弁装置Y1は吸引側のそれYと同一の構成なので、便宜上、同一の符号を付し、重複説明を省略する。図4,図9などに於いて、51Aはシリンダー1の周胴部22の左側壁に複数個の固着手段49を介して固着される吐出側ブロック体、53は外壁面に形成された吐出口、55は吐出口53に集合する内部の流路(見方によっては吐出口53から分岐する流路)、58,59は添設面51aに離間形成された凹所状の排気用開口部、63,64はこれらの排気用開口部58,59にそれぞれ組み込まれた逆止弁である。
【0039】
しかして、逆止弁63,64の構成は、図10で示すように吸引側の逆止弁61,62と同一である。すなわち、逆止弁63,64は、各開口部58,59内にそれぞれ固定された上下一組の環状磁性弁座(パッキン)65と、これらの磁性弁座65に極性に対応してそれぞれ着座する上下一組の球状磁性弁体66,66とから成る。
【0040】
ところで、吐出側の弁装置Y1には、吸引側の弁装置Yのように、螺合筒71が設けられていない。またパッキン74は、図4で示すように、添設面51aの開口部56,57の同心円状に形成された環状溝72に嵌め込まれている(図9参照)。
【0041】
(10)各磁性弁体の機能
図11及び図12を参照にして吸引側及び吐出側の弁装置Y,Y1を説明する。なお、本発明は、弁装置Y,Y1そのものに特徴があるから、ピストン型ポンプXの両側壁に弁装置Y,Y1をそれぞれ固定した実施例は一例に過ぎない。
【0042】
すなわち、図11及び図12に示す実施例は、ピストン31を有するポンプXの角形又は円形の両壁面にそれぞれ固定的に添設される吸引用ブロック体51及び吐出用ブロック体51Aに、吸引口52から分岐する及び吐出口53に合流する流路54,55をそれぞれ形成し、これらの流路54,55とそれぞれ連通する添設面51a,51aの開口部56,57,58,59内に逆止弁61,62,63,64をそれぞれ設け、これらの逆止弁61,62,63,64は、それぞれ極性に対応して磁性弁座65,65に着座する球状磁性弁体66,66を有している。
【0043】
したがって、図11で示すように、ピストン31が加圧室23,24内を矢印A方向へ摺動することに起因して流体45の圧力が磁性体の吸着力よりも増さると、ピストン31を基準として区別される上方の吸引側逆止弁61の球状磁性弁体66と下方の吐出側逆止弁64の球状磁性弁体66は、それぞれ磁気吸着作用の吸着力に抗して対応するパッキン型の磁性弁座65,65から同時に離れて開弁状態となる。
【0044】
この時、ピストン31を基準として区別される上方の吐出側逆止弁63の球状磁性弁体66と下方の吸引側逆止弁62の球状磁性弁体66は、磁気吸着作用の吸着力や流体の圧力により、対応するパッキン型の磁性弁座65,65にそれぞれ着座している。
【0045】
一方、図12はピストン31が加圧室23,24内を矢印B方向へ摺動した場合における上下の各逆止弁61,62,63,64の開閉状態を示したものである。この図12と図11とを比較すると明らかなように、吸引側及び吐出側の弁装置Y,Y1は、ピストン31の往復動に対応してシリンダー21の右側の第1,第2吸気用流路25,26に対する逆止弁61,62が交互に切り替わると共に、左側の第1,第2排気用流路27,28に対する逆止弁63,64も交互に切り替わる。したがって、このような実施例の場合には、圧送する流体の合成波形を一定(無動脈)にする目的を有するピストン型ポンプに適合する。
【実施例】
【0046】
次に、この実施例の欄に於いて、本発明の第2実施例を説明する。なお、第1実施例と同一の部分には、同一の符号又は同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0047】
図13及び図14に示す第2実施例が第1実施例と主に異なる点は、極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体を開口部ではなく、流路54,55内に設けたことである。すなわち、ピストン31を有するポンプXの一側面に取り外し可能に固定的に添設される吸引用ブロック体Yに吸引口52から分岐する流路54を、一方、ポンプの他側面に取り外し可能に固定的に添設される吐出用ブロック体Y1に吐出口53に集合する流路55をそれぞれ形成し、これらの流路54,55内にそれぞれ極性に対応して磁性弁座65に着座する磁性弁体66を設けたことである。また、この第2実施例の吸引用ブロック体Yと吐出用ブロック体Y1は、同一構造である。したがって、吸引用ブロック体Yは、第1実施例のそれとは相違し、螺合筒71が不要である,パッキン74が吐出用ブロック体Y1のそれと同様に添設面51a,51aの形成した環状凹所にそれぞれ嵌め込まれている。このように構成すると、製作コストが安価であるという利点がある。
【0048】
ところで、本発明の磁性弁体66は、本実施例では、球状磁石(マグネットボール)が使用されている。この球状磁石66の表面には、防錆ないし衝撃防止の観点から弗素樹脂がコーティングされている。防錆剤の一例は、ポリテトラフルオロチレンである。一方、磁性弁座65は、本実施例では、磁性パッキン(マグネットシート)が使用されている。もちろん、磁性弁座65は設計変更可能である。例えば開口部の内壁面にすり鉢形状の磁性弁座を直接形成しても良い。この場合には、磁性弁座を球状磁性弁体66が吸着可能な材質(ステンレススチール)で形成し、望ましくは前述した防錆剤ないし衝撃防止剤をコーティングする。
【0049】
このように磁性弁体66と磁性弁座65との吸着関係は、両方が「異磁極による吸着力」を発揮すれば良いから、例えば両方を磁石にし、又は一方を磁石にする反面、他方を磁性体材質にすることができる。なお、球状磁性弁体66を、例えばニードル弁形状に設計変更した場合には、発明の作用・効果が相違しない限り、本発明と実質的同一事項である。また、球状磁性弁体66を収納する開口部は、設計如何により、添設面よりも内部に形成しても良い。
【0050】
さらに、本発明のピストン型ポンプXは、多用途である。供給源(タンク、容器など)41に収納される流体45を列挙すると、液体水素、気体水素、電解溶液、高圧ガス、メタンガス、アンモニア、塩素ガス、都市ガス、LPガス、天然ガスなどである。
【0051】
もちろん、流体45はこれらの気体や液体に限定されるものではない。例えば供給を受ける対象44が人体であれば、人体に適合する溶液や血液となり、また供給を受ける対象44が包装容器であれば、該包装容器に適合する材料、食料等が流体45となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、主にポンプ業界及び関連業界で製造、販売される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1乃至図12は本発明の最良の実施例を示す各説明図、図13及び図14は本発明の第2実施例である。
【図1】本発明をポンプに適用したシステム全体の概念図。
【図2】駆動源を含む駆動部材とポンプの位置付けを示す概略説明図。
【図3】本発明の位置付けを示す吸引・吐出装置の概略断面説明図。
【図4】図3における主要部の概略断面説明図。
【図5】吸引側弁装置の要部(逆止弁)を示す拡大説明図。
【図6】吸引側弁装置(螺合筒も含む)の分解斜視図。
【図7】吸引側弁装置の螺合筒の斜視図。
【図8】吸引側弁装置の螺合筒の正面視からの説明図。
【図9】吐出側弁装置の要部(逆止弁)を示す拡大説明図。
【図10】吐出側の弁装置(磁性弁座も含む)の斜視図。
【図11】ピストンが矢印A方向へ摺動した場合の逆止弁の開閉状態を示す概略説明図。
【図12】ピストンが矢印B方向へ摺動した場合の逆止弁の開閉状態を示す概略説明図。
【図13】図4と同様な主要部の概略断面説明図。
【図14】シリンダーから主要部Y,Y1を分離した状態での概略説明図。
【符号の説明】
【0054】
X…ポンプ、1…ポンプ台、2…駆動モータ、3…電源、5…駆動軸、6…出力軸、11…固定部材、12…内部空間、13…回転部材(駆動カム)、14…内部、15…支持部材、18…等速カム輪郭、21…シリンダー、22…周胴部、23…第1加圧室、24…第2加圧室、25…第1吸気用流路、26…第2吸気用流路、25a,26a…入り口部、27…第1排気用流路、28…第2排気用流路、Y…吸引側の弁装置(吸引側のマニホールド)、Y1…吐出側の弁装置(吐出側のマニホールド)、31…ピストン、32,33…ピストンロッド、34…上下のヘッド(上壁と下壁)、35…パッキン、41…供給源、42…供給側の配管、43…排気側の配管、44…供給を受ける対象、45…流体、36…転動体、37…カム面18の周溝、49…固着手段、51,51A…ブロック体、52…吸引口、53…吐出口、54,55…複数本の流路、51a…添設面、56,57,58,59…添設面の開口部、61,62,63,64…逆止弁、65…磁性弁座、66…磁性弁体、71…螺合筒、72…環状溝、73…メネジ部、74…パッキン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを有するポンプの少なくとも一側面に取り外し可能に固定的に添設されるブロック体に、吸引口から分岐する又は吐出口に合流する流路を形成し、これらの流路とそれぞれ連通する開口部に逆止弁をそれぞれ設け、これらの逆止弁は、それぞれ極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体を有することを特徴とするマニホールド型弁装置。
【請求項2】
請求項1に於いて、磁性弁体は球状磁石であることを特徴とするマニホールド型弁装置。
【請求項3】
請求項1に於いて、磁性弁体又は磁性弁座には、弗素樹脂がコーティングされていることを特徴とするポンプ用マニホールド型弁装置。
【請求項4】
請求項1に於いて、磁性弁座は、凹所状の開口部内にそれぞれ固定され、かつ、磁性弁体の曲面に対する断面弧状の曲面を有するパッキンであることを特徴とするマニホールド型弁装置。
【請求項5】
ピストンを有するポンプの一側面に取り外し可能に固定的に添設される吸引用ブロック体Yに吸引口52から分岐する流路54を、一方、ポンプの他側面に取り外し可能に固定的に添設される吐出用ブロック体Y1に吐出口53に集合する流路55をそれぞれ形成し、これらの流路54,55にそれぞれ極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体を設けたことを特徴とするマニホールド型弁装置。
【請求項6】
請求項5に於いて、吸引用ブロック体Yと吐出用ブロック体Y1は、同一構造であることを特徴とするマニホールド型弁装置。
【請求項7】
請求項5に於いて、ピストンが加圧室内を摺動することに起因して流体の圧力が磁性体の吸着力よりも増さると、ピストンを基準として区別される吸引側の逆止弁の磁性弁体と吐出側の逆止弁の磁性弁体は、それぞれ磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座から同時に離れて開弁状態となることを特徴とするマニホールド型弁装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−132556(P2006−132556A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318736(P2004−318736)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(503428817)株式会社ベイシティサービス (17)
【Fターム(参考)】