マルチキャスト通信のためのデータ速度適合の方法
適合型マルチキャストデータ速度送信選択を実装するための方法は、マルチキャストグループ中の最低信号強度ステーションを判定すること、データ速度を増大させるためのインジケータとして信号強度を用いること、および増大したデータ速度を用いてフレームまたはパケット損失を判定することによって、データ速度の増大がマルチキャスト送信用に実現可能かどうか判定することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、その全体が本明細書に組み込まれている、2008年11月7日に出願した、「A Method of Data Rate Adaptation For Multicast Communication」という名称のEP08305789.3の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、データ伝送技術に関し、詳細には、ケーブルマルチキャストシステムにおけるデータ伝送速度を調節する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
データオーバーケーブルシステムのための通信および運用支援インタフェース要件を定義する既存の仕様がある。こうした仕様の1つが、DOCSIS(data over cable service interface specification)であり、既存のケーブルテレビ(CATV)システムへの高速データ転送の追加を認め、多くのケーブルテレビオペレータによって、オペレータの既存のハイブリッドファイバ同軸(HFC)インフラストラクチャを介してインターネットアクセスを提供するのに利用される国際標準である。
【0004】
DOCSISなどのソリューションに基づくケーブルモデムは高価であり、ケーブルネットワークにおけるリアルタイムオーディオ通信およびビデオストリーミングサービスにとって重要なサービス品質(QoS)を提供するのに適さない。優れたサービス品質(QoS)を保証することができ、妥当なコストで既存の標準プロトコルを最大限活用するCATVケーブルアクセスネットワークを経由してデータを伝送するための新たなシステムを開発することが望ましい。既存のCATVシステム上で動作し、ローカルエリアネットワーク上の装置などのクライアント装置にインターネットスタイルのデータサービスを提供するユーザ端末装置またはモデムも、ケーブルデータシステムにおいて望まれている。このようなシステムにおいて、ユーザ端末へのマルチキャストは、同じデータを受信することになる非常に多数のユーザ端末にコンテンツを配るための効率的な方法になるはずである。マルチキャストでは、送信データ速度は通常、マルチキャストグループ中のメンバの最低受信速度によって固定される。しかし、最低速度のユーザ端末は、時間とともに変わり得る。マルチキャスト方式におけるデータ速度伝送のための、固定された最低データ速度ユーザ端末の指定という手法は、マルチキャストグループ中のユーザ端末の変化に適応することができない。別の要因は、アクセスポイントである。アクセスポイントがいくつかのステーションへの送信電力を増大させる場合、電力の増大により、選択されたステーションへのより高いデータ速度が可能になり得る。より効率的であり適合性のあるデータ速度判定機構が、ケーブルシステムにおける帯域幅確保には有益であろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様によると、マルチキャスト送信においてデータ速度を適合的に調節するための、アクセスポイントによって指揮される方法は、ステーションからなるマルチキャストグループに、アクセスポイントからマルチキャストメッセージフレームを第1のデータ速度で送信することを含む。アクセスポイントは次いで、第1のデータ速度を用いて、ステーションから、成功したフレーム受信の肯定応答を受信する。第1のデータ速度は次いで、暫定期間だけ、第2のデータ速度まで増大される。暫定期間の間、マルチキャストメッセージフレームがステーションに送信され、マルチキャスト送信に第2のデータ速度を用いている間のマルチキャストフレーム損失が評価される。評価は、フレーム損失を閾値と比較することを含む。フレーム損失が閾値に達した場合、フレーム損失は高過ぎるので、アクセスポイントは、第2のデータ速度を低下させて第1のデータ速度に戻す。ただし、フレーム損失が閾値未満の場合、第2のデータ速度は、マルチキャストメッセージ/データ/フレーム用の新たなデータ速度として使われる。
【0006】
本発明の態様として、適合型データ速度調節は、時分割多重化プロトコルにおけるIEEE802.11フレームを使用するケーブルシステムにおいて用いることができる。第1のデータ速度からより高い第2のデータ速度への速度の変更は、マルチキャストメッセージを受信するステーションからのフィードバックに基づく。データ速度の増大は、マルチキャストグループ中で最も低い信号強度をもつ基準ステーションの受信信号強度の増大の結果として生じ得る。データ速度を増大させるための別の方法は、連続するいくつかの肯定応答信号を基準ステーションから受信することである。増大したデータ速度は次いで、一定期間だけ試されて、高い方のデータ速度が、新たなマルチキャストデータ速度として採用されるべきかどうか判定される。
【0007】
本発明の別の態様では、ステーションは、マルチキャストグループ中の基準ステーションの最小信号強度値をもつビーコンフレームを最初に受信することによって、マルチキャストデータ速度調節に能動的に関与する。ステーションは、新たな受信信号強度値を測定し、新たな受信信号強度値が、ビーコンフレームにある最小信号強度値未満かどうか判定する。新たな受信信号強度値が最小信号強度値未満の場合、ステーションは、新たな受信信号強度値をアクセスポイントに送信する。ステーションは、それ自体が、ビーコンフレーム情報から獲得された最小信号強度値をもつ基準ステーションであるかどうか判定する。次いで、第1のステーションが基準ステーションであり、新たな受信信号強度値が最小信号強度値より大きい場合、ステーションは、新たな受信信号強度値をアクセスポイントに送信する。アクセスポイントは次いで、本発明の、アクセスポイントによる補足部分を実施することができる。
【0008】
本発明のそれ以外の特徴および利点は、添付の図面を参照して進められる、例示的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】簡略化した例示的なTDFアクセスネットワークアーキテクチャを示す図である。
【図2】OSI参照モデルにおける802.11MAC副層を示す図である。
【図3】OSI参照モデルにおけるTDF送信エンティティの実装を示す図である。
【図4】モード進入手順の例を示す図である。
【図5】TDFスーパーフレーム構造の例を示す図である。
【図6a】ステーション(STA)例を示す図である。
【図6b】アクセスポイント(AP)例を示す図である。
【図7】情報要素形式例を示す図である。
【図8】チャネル検知ビーコンフレーム例を示す図である。
【図9】ステーション(STA)用の方法例を示す図である。
【図10】アクセスポイント(AP)用の方法例を示す図である。
【図11】適合型データ速度調節の方法例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概説>
本明細書で使用する「/」は、同じまたは類似した構成要素または構造に対する代替名称を示す。つまり、「/」は、本明細書で使用する「または」を意味すると解釈してよい。ユニキャスト送信は、単一の送付側/送信機と単一の受信機との間のものである。ブロードキャスト送信は、単一の送付側/送信機と送信機の受信範囲内のすべての受信機との間のものである。マルチキャスト送信は、単一の送付側/送信機と送信機の受信範囲内の受信機のサブセットとの間のものであり、送信機の受信範囲内の受信機のサブセットは、セット全体でもよい。つまり、マルチキャストは、ブロードキャストを含んでよく、したがって、本明細書で使用するブロードキャストより広い用語である。データ/コンテンツは、パケットまたはフレームに入れて送信される。
【0011】
既存の同軸ケーブルTVシステム(CATV)を介してデータサービスを提供するために、少なくとも1つの実施例が、ケーブルアクセスネットワーク内で時分割機能(TDF)プロトコル準拠アクセスポイント(AP)およびステーション(STA)を展開する。APおよびSTAは、階層ツリー構造内で結合器を通して接続される。このようにして、家にいるユーザは、ケーブルアクセスネットワークにより遠隔インターネットプロトコル(IP)コアネットワークにアクセスすることができる。ユーザによるIPコアへのアクセスによって、インターネットアクセス、デジタル電話アクセス(たとえばボイスオーバーインターネットプロトコル)、およびケーブルテレビプログラミングなどだが、それに限定されないサービスが開かれる。ネットワークアーキテクチャ例100を、図1に示す。
【0012】
図1は、IPコアネットワーク105にアクセスするネットワークの一実施形態を示す。IPコアネットワークは、インターネットプロトコルまたは等価なデジタルデータ転送プロトコルを使うどのデジタルネットワークでもよい。図1の実施形態例では、時分割機能(TDF)プロトコル準拠アクセスポイント(AP)110は、IPコアネットワーク105と接続するワイヤードLANや光インタフェースなどのネットワークインタフェース116、およびケーブルアクセスネットワークと接続するケーブルインタフェース112をもつ。多くのこのようなアクセスポイントは、IPコアネットワークに接続され得る。AP110のケーブルアクセスインタフェース112は、光ファイバ、同軸、または他の物理接続通信媒体など、どの形のケーブルにもアクセスすることができる。その結果、ケーブルネットワークは、光ファイバ、同軸、または他の物理接続通信媒体など、どの形のケーブルも含み得る。ケーブルネットワークは、必要とされる場合は信号結合器115、および相互接続ケーブル117、119などの配布媒体を含み得る。ただ2つのこのような配布ケーブルを図1に示しているが、多数のこのような配布接続が可能であることが理解されよう。
【0013】
図1の例では、配布ケーブル117、119は、それぞれケーブルインタフェース122、142を介してTDFプロトコル準拠ステーション(STA)120、140に接続する。STAケーブルインタフェース122、142はまた、光ファイバ、同軸、または他の物理接続通信媒体など、どの形のケーブルにもアクセスすることができる。STA120、140は、TDF準拠であり、ユーザ/クライアント用の多数のインタフェースを用いてケーブルアクセスネットワークと接続し得るユーザ端末として作用する。こうしたインタフェースは、従来の物理ローカルエリアネットワーク(LAN)およびワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)上で動作するユーザ/クライアント装置を含むが、それに限定されない。LANの一例は、イーサネット(登録商標)準拠ネットワークである。ワイヤレスネットワークの一例は、IEEE802.11互換ワイヤレスネットワークである。
【0014】
図1は、ステーション1モデム120およびステーションNモデム140を、同様のインタフェースをもつものとして示す。ただし、この表現は例示に過ぎない。というのは、異なる能力のステーションがAP110に通信可能に準拠する場合、こうしたステーションが、ケーブルネットワークに取り付けられ得るからである。たとえば、ステーションモデムは、図1に示すユーザインタフェースすべて、または選択されたサブセットのみをもち得る。図1において、ステーション1は、スタブ130a、130b、130cをもつ物理ワイヤードLAN130へのLAN接続121を駆動するLANインタフェース124をサポートするように構成される。スタブは、テレビおよび他のサービス用セットトップボックス132、インターネットサービスなどのネットワークサービス用パーソナルコンピュータ(PC)134などのLAN準拠装置、およびビデオ、オーディオ、電話、およびデータなどのマルチメディアサービスを提供するどのタイプのデジタルサービスもサポートする装置を含み得る他のLAN準拠装置136をサポートする。このようなLAN準拠装置136は、ファックス、プリンタ、デジタル電話、サーバなどを含むが、それに限定されない。図1は、ステーション120を、アンテナ125を駆動するためのWLAN無線周波数(RF)ポート126を介してワイヤレスサービスを提供するものとしても示す。その結果生じるワイヤレス伝送123は、WLAN準拠装置138によって、マルチメディア音声、オーディオ、電話、およびデータのいずれかを含むサービスをユーザ/クライアントに提供するのに用いることができる。ただ1つのワイヤレス装置138を示してあるが、多数のこのようなワイヤレス装置が用いられ得る。同様に、ステーションNは、スタブ150a、150b、150cをもつ物理LAN150用のLAN接続141を駆動するためのLANインタフェース144も含む。このようなスタブは、セットトップボックス152、PC154、および他の装置156など、このようなLAN互換装置との通信をサポートする。WLAN RFポート146は、WLAN装置158との通信用のリンク143を提供するアンテナ145をサポートする。図1のネットワークインタフェース116、ケーブルインタフェース112、122、142、ワイヤードLANインタフェース124、144、およびWLAN RFインタフェース126、146それぞれに対して適切なインタフェースドライバが存在することが当業者には理解されよう。
【0015】
ネットワーク100の一実施形態では、TDF準拠APおよびSTAは両方とも、IEEE802.11シリーズ仕様に従って、論理的にリンクされた制御副層、MAC副層および物理層においてプロトコルスタックを別々に実装する。ただし、MAC副層では、TDF APおよびSTAは、IEEE802.11フレーム送信エンティティを、TDFフレーム/メッセージ/信号送信エンティティで置き換える。したがって、TDF APおよびSTA用のMAC副層は、IEEE802.11フレームカプセル化/脱カプセル化エンティティおよびTDFフレーム送信エンティティを含み、IEEE802.11準拠APおよびSTA用のMAC副層は、IEEE802.11準拠フレームカプセル化/脱カプセル化エンティティおよびIEEE802.11フレーム送信エンティティを含む。統合されたAPおよびSTAの場合、TDFフレーム送信エンティティおよびIEEE802.11フレーム送信エンティティは、IEEE802.11およびTDF機能性両方を提供するために同時に共存し得る。こうした2つのモードの間の切換えは、手動または動的構成どちらでも実現することができる。
【0016】
1つまたは複数のAP、ケーブルネットワーク、および1つまたは複数のSTAを含む、図1にあるようなシステム例は、ADoC(asymmetric data over coaxial cable)システムとも呼ばれ得る。1つまたは複数のプロトコル準拠ADoCアクセスポイント(AP)および1つまたは複数のステーション(STA)が、ADoCケーブルアクセスネットワーク内に展開される。したがって、ADoCシステムは、TDFシステムの特定の実装形態なので、本明細書で使用する「ADoCシステム」および「TDFシステム」という用語は、入替え可能と見なされ得る。ADoCシステムでは、図1にあるように、APおよびSTAは、たとえば、ケーブルネットワーク構成に特有であるケーブル、スプリッタ、増幅器、継電器、リピータ、スイッチ、コンバータなどの要素を含むケーブルネットワークの階層ツリー構造内で結合器を介して接続される。
【0017】
<TDFプロトコルの序説>
図1のAP110およびSTA120、140は、TDFプロトコルを使用して、ケーブル媒体上で通信を行う。TDFプロトコルの一実施形態では、IEEE802.11フレームは、無線経由ではなくケーブル媒体を介して送信される。IEEE802.11機構を使用する目的は、IEEE802.11プロトコルスタックの成熟したハードウェアおよびソフトウェア実装形態を使用することである。したがって、IEEE802.11フレームを使うTDFは、図1のケーブルネットワーク内で、APとそれに関連づけられたSTAとの間の通信標準として使われる。
【0018】
TDFの1つの特徴は、IEEE802.11データフレームを送信する、独特のメディアアクセス制御方法である。一実施形態において、TDFは、MSDU(MACサービスデータ単位)およびMMPDU(MAC管理プロトコルデータ単位)を含むMACフレームを交換するのに、従来のIEEE802.11DCF(分散協調機能)もPCF(ポイント協調機能)機構も使用しない。そうではなく、TDFは、時分割アクセス方法を用いて、MACフレーム/メッセージ/信号を送信する。したがって、TDFは、MAC副層内に配置されたフレーム送信エンティティの詳細な実装形態を定義するアクセス方法である。
【0019】
図2は、開放型システム相互接続(OSI)参照モデルにおける標準IEEE802.11MAC副層プロトコルを示す。対して、図3は、OSI参照モデルにおけるTDFプロトコル用のフレーム送信エンティティの詳細を示す。
【0020】
一実施形態では、STA120およびSTA140などのステーションは、2つの通信モードで動作する。1つのモードは標準IEEE802.11動作モードであり、ユーザ/クライアントインタフェースモードとしても知られ、IEEE802.11シリーズ標準において定義されるフレーム構造および送信機構に従う。もう1つのモードはTDF動作モードであり、ケーブルインタフェースモードとしても知られている。一実施形態では、STAが開始されたときにどちらの動作モードに入るべきかの判定が、図4に示されている。STAがAPから同期フレーム/メッセージ/信号を受信すると、STAは、TDFモードに入る。事前設定されたタイムアウト以内に受信された同期フレームがない場合、STAは、そのまま留まり、またはユーザ/クライアントインタフェースモードに移る。より多くの動作モード切換え基準を、本明細書に挙げる。
【0021】
<TDFプロトコル機能の記述>
<アクセス方法>
TDFステーション内の物理層は、性能および装置保守を向上させる目的で、実施例に動的速度切換えを実施させるための複数のデータ転送速度能力をもち得る。一実施形態では、ステーションは、多数のデータ速度をサポートすることができる。データ速度は、TDFステーションがTDF通信手順に入る前に静的に構成され、全通信プロセス中、同じままでよい。一方、TDFステーションは、サービス中に動的データ速度切換えをサポートすることもできる。データ速度切換えのための基準は、チャネル信号品質および他の要因に基づき得る。本発明は、マルチキャスト送信中の動的データ速度切換えに対処する。
【0022】
TDFプロトコルの原則的アクセス方法は、時分割多重アクセス(TDMA)であり、このアクセス方法により、複数のユーザが、同じチャネルを、異なる複数のタイムスロットに分割することによって共有できる。STAは、それぞれ、APによって割り当てられた、TDFスーパーフレーム内のSTA自体のタイムスロットを使って、素早く次々と、ダウンロードを受信し、アップロードを送信する。ダウンリンクトラフィックは、APからSTAへのデータの移送として定義される。ダウンリンクトラフィックの例は、ユーザ/クライアント装置によって要求されるオーディオやビデオなど、要求されたデジタルデータ/コンテンツを含む。ダウンリンクデータは、ユニキャスト、ブロードキャスト、またはマルチキャストのいずれでもよい。アップリンクトラフィックは、STAからAPへのデータの移送として定義される。アップリンクトラフィックの例は、デジタルデータ/コンテンツを求めるユーザ要求または何らかの機能を実施するためのAPへのコマンドを含む。アップリンクデータは、ユニキャストでもマルチキャストでもよい。
【0023】
図5は、TDFスーパーフレーム構造および「n」個のSTAがあるときの典型的なTDFスーパーフレーム用のタイムスロット割振りの例を示す。図5に示すように、TDFスーパーフレームごとに一定数のタイムスロットがあり、スーパーフレームは、APから1つまたは複数のSTAにクロック同期情報を送付するのに使われる1つの同期タイムスロットと、アップリンクタイムスロット割振りのための登録要求を送付するのに使われる1つの競合タイムスロットとを含む。STAに割り振られたアップリンクタイムスロットは、指示された登録STAによって、APにデータおよびいくつかの管理フレームを送付するのに使われる。ダウンリンクタイムスロットは、APによって、STAにデータおよび登録応答管理フレームを送信するのに使われる。同期タイムスロットを除いて、他のすべてのタイムスロットは、同じ持続期間でよい。図5のマルチキャスト期間は、1つまたは複数の所定のいくつかのタイムスロットを使って、マルチキャストデータの長さに適応する。通常のタイムスロット持続期間の値は、最高データ速度モードに対して1つの通常タイムスロット中に、少なくとも1つの最大IEEE802.11PLCP(物理層収束プロトコル)プロトコルデータ単位(PPDU)の送信を可能にするように定義される。同期タイムスロットの持続期間は、通常タイムスロットの持続期間より短くてよい。というのは、このタイムスロット中にAPからSTAに送信されるクロック同期フレームは、IEEE802.11データフレームより短くてよいからである。図5のTDFスーパーフレームは、スロットフィールドが同期スロット、競合スロット、マルチキャスト期間、ダウンリンクおよびアップリンクタイムスロットペアとして並べられる形式の例である。同期スロットがスーパーフレーム中で最初に起こるならば、他のスロットフィールド順序も可能である。たとえば、(i)同期スロット、ダウンリンクスロット、アップリンクスロット、競合スロット、(ii)同期スロット、アップリンクスロット、ダウンリンクスロット、競合スロット、および(iii)同期スロット、競合スロット、ダウンリンクスロット、アップリンクスロットという順序も可能である。他の編成も可能である。
【0024】
一実施例では、通常のタイムスロット持続期間は約300usであり、この長さは、54Mbpsモード用の1つの共通タイムスロット中に少なくとも1つの最大IEEE802.11PPDUをSTAが送信するのに十分である。合計では、TDFスーパーフレームごとに62個のタイムスロットがある。こうしたタイムスロット中には、アップリンクおよびダウンリンクタイムスロットのペアがある。20個のSTAがあるとき、各STAは、680kbpsのアップリンクデータ速度を利用できることが保証され得る。ダウンリンクデータ速度は、マルチキャストデータの出現およびダウンリンクデータ伝送用にAPに課される要件に依存する。最終的に、スーパーフレームの持続期間は、一実施形態では合計で、61個の通常タイムスロットおよび1つの同期タイムスロットからなる持続期間であるが、約18.6msであり、異なる使用法では異なる値に定義され得る。たとえば、ただ1つのSTAがある場合、STAは、約18Mbpsのアップリンクデータ速度および独自の18Mbps(4個の連続タイムスロット)のダウンリンクデータ速度を達成するように4個のタイムスロットをもつことが保証され得る。このようにして、スーパーフレーム持続期間の値は、約4msである。
【0025】
<フレーム/メッセージ/信号形式>
IEEE802.11仕様では、3つの主なフレームタイプが存在する。すなわち、データフレーム/メッセージ/信号、制御フレーム/メッセージ/信号、および管理フレーム/メッセージ/信号である。データフレームは、アクセスポイントからステーションに、およびその反対にデータを交換するのに使われる。ネットワークに依存して、異なるいくつかの種類のデータフレームが存在する。制御フレームは、データフレームとともに使われて、エリア消去操作、チャネル獲得およびキャリア検知保守機能、および受信データの肯定確認応答を実施する。制御およびデータフレームは、協働して、アクセスポイントとステーションとの間でデータを確実に配送する。より具体的には、フレーム交換における1つの重要特徴は、すべてのダウンリンクユニキャストフレームに対して肯定応答機構、したがって肯定応答(ACK)フレームがあることである。このフレームは、信頼できないワイヤレスチャネルによって引き起こされるデータ損失の可能性を減らすために存在する。管理フレームは、監視機能を実施する。管理フレームは、ワイヤレスネットワークに加入し、そこから退出し、アクセスポイントからアクセスポイントに関連づけを移すのに使われる。本明細書で使用する「フレーム」という用語は、すべてのケースにおいてメッセージまたは信号とも呼ばれ得る。等価には、「フレーム/メッセージ/信号」という用語は、等価物を示すのにも使われ得る。
【0026】
TDFシステムの一実施形態では、STAは、制御APを識別するために、APからの同期フレーム/メッセージ/信号を受動的に待つ。同期フレームは、図5の同期スロット(タイムスロット0)中に配置されたデータフレームである。STAは、APが同期フレームを送付するのを待つので、IEEE802.11標準のワイヤレス実装形態において見られる典型的なプローブ要求およびプローブ応答フレームは必要ない。しかし、肯定応答(ACK)フレーム/メッセージ/信号が、データフレーム配信の信頼性を確実にするのに使われる。
【0027】
TDFプロトコルでは、データ用の有用なIEEE802.11MSDUおよびMMPDUタイプの一部のみが、ケーブル媒体において使われる。たとえば、データフレームタイプのうち、データサブタイプが、上位層データをカプセル化し、アクセスポイントとステーションとの間でそのデータを伝送するのに使われる。新たな管理フレームが、TDFシステムにおけるクロック同期要件に適応するのに使われ得る。たとえば、付加情報は、あるAPから複数のSTAに送付される必要がある場合、同期フレームに含めることができる。
【0028】
TDFシステムの一実施形態では、TDFスーパーフレームは、図5に示すように、IEEE802.11ビーコンフレームを、同期スロット(タイムスロット0)の一部として定期的に送信して、STAを、関連づけられたAPと同期させる。典型的なビーコンフレームとは、ヘッダーおよびフレーム本体情報を含む管理フレームである。他のフレームと同様に、ヘッダーは、ソースおよび宛先MACアドレスならびに通信プロセスに関する他の情報を含む。宛先アドレスは、すべて1にセットすることができるが、これはブロードキャストメディアアクセス制御(MAC)アドレスである。これにより、適用可能チャネル上のすべてのSTAが、ビーコンフレームを受信し処理するよう命令される。
【0029】
<アクセスポイント(AP)探索およびクロック同期>
TDFプロトコルは、STAノードすべてに対するタイミング情報の配布を可能にする。STAは、図5のスーパーフレームの同期スロット中の同期フレーム/メッセージ/信号をリッスンして、利用可能なアクティブAPがあるかどうか決める。STAがTDF通信に入ると、STAは、同期フレームを使って、STAのローカルタイマを調節するが、このタイマに基づいて、STAは、STAがアップリンクフレームを送付する番であるかどうか決める。所与のどのときでも、同期手順ではAPはマスタであり、STAはスレーブである。STAが、予め定義された閾値期間の間、関連づけられたAPから同期フレームを受信していない場合、STAは、関連づけられたAPがSTAにサービスするのを停止しているかのように反応する。この事例において、STAは、サイレントAPとの通信を停止し、同期フレームを再度リッスンすることによってアクティブAPを探し始める。
【0030】
TDFシステムにおいて、同じAPに関連づけられたすべてのSTAは、共通クロックに同期する。APは、APクロック情報を含む同期フレームと呼ばれる特殊フレームを定期的に送信して、APのローカルネットワーク内のSTAを同期させる。一実施形態では、同期フレームは、TDFスーパーフレームタイムごとに一度だけAPによる送信用に生成され、TDFスーパーフレームの同期タイムスロット中に送付される。
【0031】
すべてのSTAは、ローカルタイミング同期機能(TSF)タイマを維持して、関連づけられたAPと確実に同期されるようにする。同期フレームを受信した後、STAは常に、フレーム中のタイミング情報を受諾する。STA TSFタイマが、APからの受信同期フレーム中のタイムスタンプとは異なる場合、受信側STAは、そのローカルタイマを、受信されたタイムスタンプ値に従ってセットする。さらに、STAは、トランシーバによるローカル処理を考慮に入れて、受信したタイミング値に小さいオフセットを追加してよい。
【0032】
<APへのSTA登録>
STAが、同期フレームからタイマ同期情報を獲得するとき、STAは、タイムスロット0がいつ起こるかを学習する。STAが、どのアクティブAPにも関連づけられていない場合、STAは、同期フレームを送付したAPに登録しようとする。STAは、図5のTDFスーパーフレーム中の第2のタイムスロットである競合タイムスロット中に登録要求フレームをAPに送付することによって、そのAPと関連づく。一実施形態では、競合タイムスロットの持続期間および登録要求フレーム/メッセージ/信号構造は、1つの競合タイムスロット中に複数の登録要求フレームを送付させるように設計される。この設計に基づいて、競合タイムスロットは、長さが等しい複数のサブタイムスロットに分割される。
【0033】
STAがアクティブな標的APを検出するとすぐに、STAは、競合タイムスロット中の1つのサブタイムスロットを選んで、APに登録要求フレームを送付する。このアクションの目的は、同時に開始するとともに同時に同じAPに登録しようとする多くのSTAが存在するときの衝突の機会を削減することである。登録要求は、以下の方法に従って起こり得る。
A.アップリンクタイムスロットが割り振られると、STAは、割り振られたアップリンクタイムスロット番号を格納する。割り振られたアップリンクタイムスロットは、アップリンクタイムスロットの全体プール中でのタイムスロットの場所を示す。
B.APは、STAがアップリンクタイムスロットを要求する度に同じSTAに同じアップリンクタイムスロットを割り振る。
C.登録要求フレームを送付するべきタイムスロットを選択するべきときであるときに、格納されている割り振られたタイムスロット値がある場合、STAは、サブタイムスロット番号を、割り振られた値にセットする。このような値がない場合、STAは、利用可能なタイムスロット中の1つのサブタイムスロットをランダムに選ぶ。STAは次いで、ランダムに選ばれたサブタイムスロット中に、APに登録要求フレームを送付する。
【0034】
STAは、その時点でSTAがサポートするすべてのデータ速度を列挙し、また、受信信号キャリア/ノイズ比など、何らかの情報を、登録要求フレームに入れて送付する。STAは、いくつかの順次登録要求フレームを、サポートされる様々なデータ速度で送付することができる。フレームを送出した後、STAは、APからの登録応答フレーム/メッセージ/信号をリッスンする。
【0035】
STAから登録要求フレームを受信した後、以下の方法に基づいて、APは、様々な種類の登録応答フレームを、ダウンリンクタイムスロット中にSTAに返送する。
A.既に割り振られているアップリンクタイムスロットが、スーパーフレーム中の利用可能ないくつかのタイムスロットを超える場合、APは、アップリンクタイムスロット使用不能インジケータをフレーム本体に入れる。
B.APが、登録要求管理フレーム中のサポートされるデータ速度セットに列挙されるどのデータ速度もサポートしない場合、APは、未サポートデータ速度インジケータをフレーム本体に入れる。
C.割振りに利用可能なアップリンクタイムスロットならびにAPおよびSTA両方がサポートする共通データ速度がある場合、APは、1つのアップリンクタイムスロットを割り振り、STAの登録要求フレーム中のキャリア/ノイズ比などの情報に従って、適切な共通データ速度を選び、次いで、STAに登録応答フレームを送付する。フレーム/メッセージ/信号本体は、割り振られたアップリンクタイムスロットおよび選ばれたデータ速度情報を含む。登録プロセスが成功した後、TDF STAおよびTDF APは、どのアップリンクタイムスロットおよびデータ速度を使うべきかについて合意に達する。
【0036】
<ダウンリンク送信>
上で述べたように、ダウンリンクは、APからSTAへの情報の転送として定義される。TDF通信手順全体において、ダウンリンクタイムスロットの総数は、関連づけられたSTAの数の変化により、動的に変わり得る。APは、関連づけられたSTAにフレームを送付する準備をするとき、残りのダウンリンクタイムスロット中の残された時間を、合意されたデータ速度を使ってこの特定のダウンリンクフレームを送信するのに必要とされる持続期間と比較する。次いで、この結果に基づいて、このTDFスーパーフレーム中でフレームがこの特定のデータ速度で送信されるべきかどうか決める。したがって、ダウンリンクフレームのフラグメント化は、多くの事例において回避することができる。
【0037】
<アップリンク送信>
上で述べたように、アップリンクは、STAからAPへの情報の転送として定義される。APから登録応答フレームを受信した後、STAは、フレーム本体を分析して、アップリンクタイムスロットを付与されているかどうか見る。付与されていない場合、一時停止し、後でアップリンクタイムスロットを申請する。付与されている場合、STAは、登録応答フレーム中で指示されたデータ速度を使って、割り当てられたタイムスロット中にアップリンクトラフィックを送信し始める。
【0038】
割り当てられたタイムスロット中のアップリンク送信の冒頭で、STAは、その発信キュー(バッファ)中に少なくとも1つの発信フレームがある場合、第1のフレームをそのキュー(バッファ)に入れてAPに送付する。その後、STAは、第2のアップリンクフレームの長さを調べ、割り当てられたタイムスロットにおける残りの持続期間中に第2/次のバッファ済みフレームを送付することが可能かどうか評価する。次のバッファ済みフレームを送付することが可能でない場合、STAは、アップリンク送信手順を停止し、次のTDFスーパーフレーム中の割り当てられたタイムスロット中に次のバッファ済みフレームを送付するのを待つ。割り当てられたタイムスロットにおける残りの持続期間中に次のバッファ済みフレームを送付することが可能である場合、STAは、次のバッファ済みフレームを直ちに宛先APに送付する。送付手順は、割り当てられたタイムスロットが終わるまで、または送信するべきアップリンクフレームがそれ以上なくなるまで、このように稼働し続ける。
【0039】
<STAおよびAP機器>
図1のネットワークアーキテクチャにおいて、モデムステーション(STA)例120、140は、ワイヤレス装置138、158をサポートするためのWLAN RFポートをもつものとして示されている。一実施形態では、STAは、エンドユーザ/クライアントインタフェースとして、WLAN RFインタフェースおよびLANインタフェースポートを含み得る。したがって、STAは、APとSTAとの間の通信をサポートするケーブルインタフェース、ならびにワイヤレスユーザ装置をサポートするための外部クライアントインタフェースポート両方またはユーザ装置へのLANもしくはWANインタフェースを有し得る。一実施形態では、ケーブルインタフェースおよびクライアント外部ポートをもつSTAは、デュアルモード装置とも呼ばれ得る。
【0040】
図6aは、デュアルモードSTA600の一実施形態を示す。STA600は、プロセッサ、ゲートアレイ、計算論理、マイクロプロセッサ、もしくはチップセット、またはケーブルインタフェース610および外部クライアントインタフェース620における通信トランザクションを制御する、当該分野において公知である他の制御機能などのSTA計算装置650または要素を含む。この観点において、STA600は、ケーブルインタフェース/ADoCシステムモードまたは外部インタフェース/クライアントモードのどちらかで動作する。STAは、成熟したWiFiチップセットを使って、STAプロセッサ/チップセット/計算装置650の機能を実現することができる。固体状態、回転磁気、または光ディスクなどのメモリ640を、STA計算装置活動をサポートするプログラムまたはデータ情報を格納するのに使うことができる。さらに、メモリ640は、ケーブルインタフェース610またはクライアントインタフェース620によって、データアクセス用に使われ得る。本発明を支援して、信号強度測定手段630が、STAによって、APによる送信の受信信号強度を評価するのに使われる。
【0041】
STA600は、ケーブルインタフェースと接続するように機能して、TDF原理を用いてケーブルネットワークにおける双方向データ通信をサポートし、外部クライアントインタフェースは、アンテナまたは外部ネットワーク接続と接続するように機能して、クライアント装置用の双方向データ通信をサポートする。STA600は、必要とされる場合、外部ネットワーク内の、たとえばPC、PDA、ルータ、スイッチ、プリンタ、スマート端末などのユーザ/クライアント装置と通信するために、ケーブルインタフェース610と外部クライアントインタフェース620との間でデータフレームを交換する。APへのケーブルインタフェースを介してインターネットやイントラネットなどのIPネットワークにアクセスするために、データフレームが交換される。外部クライアントインタフェースモードにある間、デュアルモード装置STA600は、ユーザ装置用のアクセスポイントとして動作する。STA600は、ケーブルインタフェース/ADoCモードにある間、ADoC周波数帯(約1GHz)においてRFエネルギーを伝達する。外部クライアントインタフェースモードでは、IEEE802.11周波数帯(約2.4GHz)などの標準ワイヤレス周波数帯が使われ得る。ADoCシステム/ケーブルインタフェースモードでは、STAは、時分割多重アクセス(TDMA)方法に基づく上述のTDFプロトコルを用いて、メディアアクセス制御(MAC)フレームを送信する。クライアントインタフェースモードでは、STA600は、IEEE802.11プロトコルやイーサネット(登録商標)プロトコルなど、どのワイヤレスアクセスまたはワイヤードネットワークプロトコルも用いる。
【0042】
図6bは、AP660の一実施形態を示す。APは、インタフェース662を使って外部インターネットプロトコルソースとインタフェースをとる。AP計算装置670の制御下で、APは、IPソースならびに時分割化通信機能を提供するケーブルインタフェース668からコンテンツにアクセスして、STA600など、1つまたは複数のSTAと対話することができる。メモリ664は、AP計算装置670によってアクセス可能であり、メモリ640のように、IPソースインタフェース662およびケーブルインタフェース668上でのSTAの対話を正しく協調させるためのデータ、プログラム、および制御情報を格納するのに使われ得る。メモリ664は、ケーブルインタフェース668またはIPソースインタフェース662によって、データアクセス用に使うこともできる。メモリは、固体状態、回転磁気、または光ディスクなど、どの形のメモリでもよい。AP計算装置は、1つもしくは複数のプロセッサ、またはプログラム可能論理素子、ゲートアレイ、計算論理、マイクロプロセッサ、もしくはチップセットなどの計算要素または当該分野において公知である他の制御機能をもつ分離または統合計算装置を含み得るどの形の計算装置でもよい。AP計算装置は、AP660のインタフェースを制御するように、かつフレーム損失計算、信号強度測定値計算、またはユニキャスト、マルチキャスト、およびブロードキャストモードにおけるSTAの制御に関連する他のあらゆる計算など、APに求められるどの判定または測定も実施し、または制御するように機能する。
【0043】
<マルチキャスト通信の検討>
マルチキャスト送信は、同一のデータを複数のユーザに転送する効率的技法である。同じデータが複数の受信機に送信されるとき、マルチキャストは、個々のユーザへのユニキャストとは反対に、ネットワーク資源を節約するので、マルチキャストは、特にビデオ共有のためには、ネットワークにおける重要なサービスプリミティブである。それにもかかわらず、IEEE802.11標準は、マルチキャスト通信に直接は対処しない。この標準は、フィードバックなしでブロードキャストを活用することによって、マルチキャスト送信を間接的にサポートする。しかし、フィードバックがないと、マルチキャスト通信の信頼性が問題になる。
【0044】
ワイヤレス環境において、マルチキャスト送信は、同じチャネルへのアクセスを試みるときにユニキャスト送信と衝突し得る。ただし、本明細書で記載したTDFシステムなど、IEEE802.11フレームを使う時分割多重化システムでは、送信用のタイムスロット割振り機構は概して、このような衝突を回避する。
【0045】
IEEE802.11ワイヤレスネットワークでは、2つの要因が、パケット損失を引き起こし得る。1つはチャネルエラーであり、もう1つは送信衝突である。ADoCシステムにおいて、TDF MACプロトコルは、パケット衝突要因を排除する。したがって、パケット損失の主な誘因は、チャネルエラーであり、主にノイズおよび干渉によって引き起こされる。ケーブルシステムでは、チャネルエラーは、適切な送信電力、変調レベル、および符号方式を選択することによって、求められる閾値よりも低下され得る。
【0046】
IEEE802.11によって提供されるデータ速度適応は、標準化されていない。802.11構成要素の各製造元は、独自のデータ速度適合機構を自由に選ぶ。マルチキャストにおいてMAC層ACKフレームまたはRTS−CTSメッセージフレームなどのフィードバック信号がないことにより、ユニキャストトラフィック用に使われる速度適合機構は、マルチキャストに適さない。したがって、概して、マルチキャスト送信は、ブロードキャスト送信でのように、最も低い変調レベルおよび符号化方式を使い続ける。本発明は、この方式を改善する。
【0047】
本発明の態様として、新規チャネル品質フィードバック機構およびデータ速度適合技法が、ケーブル環境におけるマルチキャスト送信用に構築される。この技法を用いると、データチャネルをはるかにうまく使用することができ、マルチキャスト送信の性能が大幅に向上され得る。このようなチャネルデータ速度適合技法は、マルチキャストにより送信されるマルチメディアコンテンツの適度な品質を維持し、また、マルチキャスト送信において最小チャネル資源を割り振ることによって、ユニキャスト送信のためのスループット利得を達成するのにも役立つ。
【0048】
TDF ADoCシステムなどのケーブルシステムでは、APからSTAへのダウンリンクトラフィックは、システムが認める最強電力で送信してよい。しかし、STAからAPへのアップリンク送信は、異なるSTAから異なるAPへの信号が互いと確実に干渉しないようにするために、注意深い電力制御を求める傾向にある。したがって、ダウンリンクマルチキャストトラフィックに対して、電力制御機構は、ワイヤレス環境でのように必要とされないが、チャネルデータ速度制御適合は、ワイヤレスネットワークと比較して、伝送速度効率を高め、ケーブルネットワークに存在する改善されたチャネル条件を使用することが望ましい。
【0049】
マルチキャストチャネル適合プロトコルのための基本ステップは、(a)チャネル検知を定期的に実施して、信号強度が最も弱いSTAをマルチキャストグループリーダーとして選択すること、(b)マルチキャストグループリーダーが、マルチキャストフレームの正しい受信を受領確認するだけである、APへのフィードバック機構を使用すること、および(c)条件が認める速度低下機構または速度増大機構を使ってマルチキャストデータ伝送速度を調節することを含む。
【0050】
<マルチキャストグループリーダー選択>
本発明の態様として、APは、信号強度(SS)を、マルチキャストグループリーダーを選択する基準として使う。リーダーは、マルチキャスト送信においてAPからの品質が最も悪い受信信号を経験する、目標マルチキャストグループ中のSTAである。ワイヤレス環境では、APとSTAとの間のチャネルは対称的と見なされるので、APは、データ、RTS−CTS、ACKおよび他のフレームを含む、STAからのアップリンクフレームの信号強度を測定することによって、AP自体とあらゆるステーションとの間の通信品質を判定し得る。ただし、ケーブルシステムにおけるアップリンクおよびダウンリンクチャネルは、対称的であることが保証されない。ケーブルシステムの非対称性は、信号結合器またはスプリッタ、図1のこのような結合器115の非対称特徴により生じる。APが正しいマルチキャストグループリーダーを選択するのを可能にするために、APからSTAへのマルチキャストフレームの信号強度は、各STAによって測定され、APに折返し報告されなければならない。
【0051】
本発明の態様として、STAは、信号強度を定期的に測定し、信号強度測定値をAPにフォワードする。最初に、マルチキャストグループ中のSTAはすべて、STA自体の受信信号強度の測定値を送付することによって、マルチキャストメッセージに応答する。APは、最も低い受信信号強度(SS)をもつSTAを検出し、このSTAを、マルチキャストグループ(mgroup)リーダーとなるように指定する。その後、ビーコンフレーム中の新たな情報要素を利用することによって、より効率的な報告およびデータ速度更新方式が用いられ得る。
【0052】
本発明の態様として、チャネル検知情報要素と呼ばれる新たな管理フレーム情報要素が追加される。情報要素は、管理フレームからなる可変長の構成要素である。一般的な情報要素は、図7(a)に示すように、ID番号、長さおよび可変長データフィールドをもつ。図7(b)のチャネル検知情報要素用に、元の予約された要素チャネル検知IDが使われる。図7(b)の実施形態において、長さは、13の値をもつ。可変長データフィールドは、マルチキャストグループ(mgroup)アドレスフィールド(6バイト)、最小信号強度(SS)値フィールド(1バイト)、およびmgroupリーダーフィールド(6バイト)という3つのフィールドを含む。mgroupアドレスフィールドは、より上位レベルの規約によって、論理的に関連したステーションのグループに関連づけられたアドレスである。一実施形態では、mgroupアドレスフィールドは、01:00:5EおよびクラスDマルチキャストIPの最後の23ビットからなるMACアドレス連結である。最小SS値フィールドは、マルチキャストリーダーの信号強度値であり、過去の(初期の)チャネル検知プロセスにより確かめられる。
【0053】
図7(b)のチャネル検知要素形式は、ビーコンフレームの使用により、マルチキャストグループ中のすべてのSTAにとって利用可能である。TDFシステムにおいて、ビーコンフレームは、図5のように、スーパーフレームの冒頭にある、同期フレームの一部として送付される。したがって、ブロードキャストビーコンフレーム中で、すべてのSTAは、ある特定のマルチキャストグループが、最小信号強度値をもつ1つのmgroupリーダーをもつことを知らされる。
【0054】
本発明の態様として、STAは、ビーコンフレーム中のチャネル検知要素を読み取る。最小信号強度値が0xFFに等しいとき、STAは、初期チャネル検知を実施する。この初期チャネル検知は、APが、ある特定のマルチキャストグループ中のSTAのチャネル条件を事前に知らないときに起こる。この値は、マルチキャストアプリケーションが初期化され、マルチキャストグループが形成されるとき、すべてのSTAが読み取るべきビーコンフレーム中で提示することができる。初期読取りの後、APは、mgroupリーダーおよび対応する信号強度値を選択する。この新たな値は次いで、ブロードキャストビーコンフレーム中ですべてのSTAに対して利用可能にされる。最小SS値が0x00と0xFEとの間のとき、信号強度値は、過去のチャネル検知プロセスにより測定された値である。
【0055】
図8は、フレーム本体フィールドをもつ標準802.11管理フレームを示す。本発明の態様として、このフレーム本体フィールドは、チャネル検知フィールドをもつビーコンフレーム本体として投入される。チャネル検知フィールドには、図7(b)のチャネル送付要素が投入される。したがって、スーパーフレームの冒頭にあるブロードキャストビーコンフレームを受信するすべてのSTAが、ある特定のマルチキャストグループ向けのマルチキャストグループリーダーおよび最小信号強度値を判定することができる。
【0056】
マルチキャスト初期化フェーズ中、マルチキャストデータストリームが、APによってマルチキャストSTAに送付される。APは、初期チャネル検知ビーコンを送付するが、このビーコン中では、最小信号強度値フィールドが0xFFで埋められる。チャネル検知ビーコンが受信されると、対応するマルチキャストグループ中のすべてのSTAが、ビーコンの受信信号強度値を測定する。次いで、STAは、APにフィードバックフレームを送付して、受信信号強度を報告する。フィードバックフレームのペイロードは、測定された信号強度値である。フィードバックフレームを受信した後、APは、最小信号強度値を記録し、最小信号強度値をもつSTAをマルチキャストグループリーダーとして選択する。APは、基準としてのmgroupリーダーの識別、基準mgroupリーダーの受信信号強度、およびmgroupアドレスを、図8のビーコンフレームにロードする。
【0057】
初期チャネル検知の後、APは、検出された最小信号強度値で埋められたチャネル検知ビーコンを定期的に送付して、定期的チャネル測定を行うようSTAに依頼する。チャネル検知ビーコンの期間は、変化するステーション条件への適合を高めるように選択される。この期間は、過度のデータ速度変更または激変(churning)を回避するようにも選択される。動作の際、最小信号強度値が0xFFと等しくないチャネル検知ビーコンをSTAが受信した場合、STAは最初に、mgroupアドレスフィールドを読み取ることによって、STAが特定のマルチキャストグループに属すかどうか判定する。その後、STAは、STAの現在の測定信号強度値を、ビーコン中の最小信号強度値と比較する。現在の測定SS値が最小SS値より小さい場合、STAは、STA自体を、受信信号強度に関してより劣ったステーションと見なし、測定されたSS値をAPに与える。
【0058】
STAが、特殊マルチキャストグループに属し、STA自体の信号強度(SS)が最小SS値より優れていると分かった場合、STAは、STA自体のMACアドレスがmgroupリーダーのものと同じかどうか判定する。2つのアドレスが同じ場合、STAは、STAのMACアドレスとともに新たなSS値を含むフィードバックをAPに与える。APは、最小SS値フィールドの値を修正し、STAからの受信フィードバックに従って、新たなmgroupリーダーを選択するべきかどうか決める。図9は、このプロセスの例を表す。
【0059】
<STA動作例>
図9は、STAにおいて実施されるチャネル検知プロセスの方法例900を示す。ステップ910で、ビーコンフレームがSTAによって受信される。受信されたブロードキャストビーコンフレームの信号強度が、ステップ920で測定される。ステップ930で、最小信号強度値フィールドが、ビーコンフレームから読み取られる。ステップ940で、このマルチキャストグループに対する初期チャネル検知であるかどうか判定が行われる。この判定は、ビーコンフレームのチャネル検知要素の最小信号強度値フィールドを、上述した値と比較することによって行われる。初期マルチキャストチャネル検知である場合、方法900はステップ940から980に移り、測定された信号強度値は、APにフィードバックとして送付される。この事例において、初期信号強度値測定値は、APに送付され、そうすることによってAPは、最も低いSS値および対応する初期mgroupリーダーの判定を行うことができる。
【0060】
このマルチキャストグループに対する初期チャネル検知ではない場合、ステップ940からステップ950に入る。ステップ950で、信号強度の測定値が、mgroupリーダーに関して予め記録された最小信号強度未満かどうか判定が行われる。測定値がmgroupリーダーの最小SS値未満の場合、方法900はステップ980に移り、ここで、測定STA受信信号強度が、フィードバックとしてAPに返送される。APへのフィードバックは、測定されたSS値だけでなく、応答STAの識別も含む。この事例において、ステップ950で、応答STAは、APが予め選択した、mgroupリーダー未満である、測定された受信信号強度をもっている。その結果、APは、応答STAが、新たなmgroupリーダーになるべきであり、新たなSS測定値が、ビーコンフレームに関する新たな最小SS値になるべきであると判定してよい。
【0061】
ステップ950での判定が否定の場合、STAへの送信の測定信号強度は、最小SSレベルを上回る。測定信号強度が最小SSレベルに等しい場合、mgroupリーダーも他のステーションも、APにフィードバックを与えない(図9には示さず)。ステップ960で、STAがmgroupリーダーであるかどうかに関して判定が行われる。STAがmgroupリーダーである場合、方法はステップ980に移り、新たに測定された受信信号強度測定値が、STA MACアドレスとともにAPに折返し報告される。この事例において、測定信号強度の新たな、より高い値がAPにフィードバックされ、その結果APは、このmgroupリーダー向けの最小SS値を更新することができる。ステップ960で、STAがmgroupリーダーではない事例では、方法はステップ970に移り、STAからビーコンへの応答は与えられない。この事例において、測定されたSSは、mgroupリーダーではない(すなわち、受信信号強度が最も弱いSTAではない)STAによって測定された最小SS値より大きい。したがって、APへのフィードバックは必要とされない。
【0062】
<マルチキャストトラフィック用フィードバック機構>
APは、対応するマルチキャストグループ中のSTAメンバにデータフレームをマルチキャストする。STAがマルチキャストグループ(mgroup)リーダーであり、マルチキャストフレームをエラーなしで受信した場合、mgroupリーダーSTAのみが、ACK信号/メッセージを返送する。APは次いで、グループリーダーがマルチキャストメッセージを受信したことを知る。APは次いで、否定応答(NACK)信号/メッセージがmgroup中の他のSTAから受信されない場合、mgroup中の他のすべてのSTAが、マルチキャストメッセージをエラーなしで受信したとも仮定する。mgroupリーダーSTAが、マルチキャストフレームをエラーありで受信した場合、mgroupリーダーSTAは何もしない。APは、マルチキャストメッセージが正しく受信された場合にのみ、mgroupリーダーSTAがそのメッセージに応答することを期待する。mgroupリーダーSTAが応答しない場合、APは、mgroupリーダーSTAがメッセージを正しく受信しなかったことを知る。
【0063】
STAがmgroupリーダーではなく、マルチキャストフレームをエラーなしで受信した場合、STAは何もしない。マルチキャストメッセージが、非mgroupリーダーSTAによって誤って受信された場合、非グループリーダーSTAが、NACK信号/メッセージを返送する。
【0064】
要するに、マルチキャストフレームが送付された後は、多くの種類の可能フィードバックがある。第1に、マルチキャストグループ中のすべてのSTAが、マルチキャストフレームをエラーなしで受信した場合、APへのフィードバックは、マルチキャストグループリーダーからのACK信号/メッセージのみである。第2に、mgroupリーダーが、フレームをエラーなしで受信したが、他のSTAの少なくとも1つがフレームをエラーありで受信した場合、mgroupリーダーからのACK信号/メッセージと、受信エラーのある他のSTAからのNACK信号/メッセージとの間で衝突が起こる。第3に、mgroupリーダーおよび他のSTAの1つまたはいくつかが、マルチキャストメッセージをエラーありで受信した場合、フィードバックは、NACK信号/メッセージまたは誤ってマルチキャストメッセージを受信したSTAからのいくつかのNACK信号/メッセージの衝突となる。最後に、APによるマルチキャストメッセージ送信後にAPへのフィードバックがない場合、APは、マルチキャストメッセージ/フレームが損失されたと結論づける。概して、STA mgroupリーダーからの明白なACKフィードバック信号を除いて、APは、他のすべてのフィードバックをNACK衝突と見なす。NACK衝突の結果、APは、マルチキャストメッセージを、正しく受信されるまで再送し、またはデータ速度を低下させ、マルチキャストメッセージを、正しく受信されるまで再送すればよい。
【0065】
<フィードバックに基づくマルチキャスト速度選択>
APは最初に、マルチキャストトラフィックを送付するためのある一定のマルチキャストデータ速度を選択する。
【0066】
【数1】
【0067】
個の順次ACKフィードバックがAPによって受信されると、マルチキャスト伝送速度は、すぐ上のレベルまで高まる。一実施形態では、
【0068】
【数2】
【0069】
は、データ速度適合プロセスにおいて適合的に調節されるカウンタである。マルチキャスト速度が増大されると、APは、暫定高速期間(THRP:temporary higher rate period)を開始するが、この期間中、APは、より高いマルチキャストデータ速度を使うことができるかどうかの決定を行うことができる。この決定は、ある特定のウィンドウWdrop中で1つのフレーム損失が起こるかどうかに関して判定される。ウィンドウWdropは、マルチキャストメッセージ/送信/トラフィック/データ用のデータ速度を増大させた後に送信されるマルチキャストフレームの数として提示される。ウィンドウ値は、フレーム損失比閾値Pflr_thから判定される。損失比閾値Pflr_thは、確率閾値である。速度がより高いマルチキャストトラフィックのフレーム損失率がPflr_thより大きい場合、より高い速度でのメッセージ転送成功は、元の低い方の速度でのメッセージ転送成功率より悪い。したがって、新たな高い方の速度は使われるべきでなく、APは、そのマルチキャスト速度を元の速度に落とすべきである。Pflr_thは、
【0070】
【数3】
【0071】
として判定される。上式で、Virtual_transmission_timeは、PHYプリアンブル、SIFS、DIFS、ACKまたはNACKおよびペイロード(MSDU)など、すべてのPHYおよびMACオーバーヘッドを含むマルチキャストフレームの送信に必要とされる合計送信回数を意味し、Rhighは新たなより高いデータ速度であり、Rlowは初期のより低いデータ速度である。Pflr_thを使って、Wdropは(
【0072】
【数4】
【0073】
は、x以上の整数を表す)、
【0074】
【数5】
【0075】
として判定され得る。したがって、Wdropによって判定されるTHRP中、どの損失マルチキャストフレーム(否定応答「NACK」信号/メッセージイベントなど)も、APに、APのマルチキャスト速度を元の低い方の速度まで落とさせる。AP向けの上記判定は、図6bのAP計算装置または他の論理によって行うことができる。フレーム損失は、フレーム単位、ブロック単位、または両方で示すことができる。
【0076】
【数6】
【0077】
は、マルチキャスト速度適合プロセスにおいて適合的に調節される。新たなマルチキャストアプリケーションが初期化されると、またはAPがマルチキャストトラフィック用に新たなデータ速度を使い始めると、
【0078】
【数7】
【0079】
は、セットされ、またはリセットされる。一実施形態では、リセット値は10である。毎回、APは、そのマルチキャスト速度を増大しようとするが、速度は、THRP時間枠の間、元の低い方の速度に再度落ちる。
【0080】
【数8】
は、バイナリバックオフ方法
【0081】
【数9】
【0082】
により増大される。上式で、Tは、APによって経験されるデータ速度後退イベントの数である。検出されたマルチキャストグループの信号強度の増大は、
【0083】
【数10】
【0084】
をリセットして10に戻すよう、APをトリガする。
【0085】
APが、そのマルチキャスト速度を、THRP時間枠中に元の低い方の速度に落とさない場合、APは、以降のマルチキャストデータ伝送用に高い方の速度を使う。送信中(THRP期間外)、2つのフレームが、Wdrop個の連続するマルチキャストフレームの中でNACKイベントを取得すると、マルチキャスト伝送速度は、すぐ下のレベルに落ちる。
【0086】
<AP動作例>
APにおけるチャネル検知動作を、図10の方法例に示す。図11は、AP速度調節のための方法例を示す。図10を検討すると、チャネル検知動作を実施する方法例は、ステップ1010で始まり、ここでmgroupアドレスがIPマルチキャストアドレスから判定される。修正ビーコンフレームが次いで、ステップ1015ですべてのSTAに送付される。これは初期セットアップであり、最小SS値フィールドが0xFFなので、すべてのステーションが、ステップ1020で、定められたTDMタイムスロット中に、その測定信号強度のフィードバックを与えることによって応答する。ステップ1025で、APは、対象となるマルチキャストグループ中のステーション向けのノードエントリをすべて更新する。APは次いで、マルチキャストグループリーダーを、最も低い信号強度指示をもつ、mgroup中のSTAであると判定する。このmgroupリーダーSTAによって適応されるデータ速度は、mgroupへのマルチキャストメッセージ用にAPが最初に使われるデータ速度である。ステップ1010から1030は、本発明の態様によるチャネル検知のセットアップのための初期期間に含まれる。繰り返され、定期的なAP動作が、ステップ1035で始まる。
【0087】
ステップ1035で、mgroupリーダーおよびそれに対応する、mgroup用信号強度をもつビーコンフレームが、すべてのSTAに送付される。マルチキャストメッセージが次いで、マルチキャストグループ(mgroup)に送付される。ステップ1040で、マルチキャストメッセージの結果、APは、受信したフィードバックがmgroup中のSTAからのものであるかどうか判定する。フィードバックが受信されない場合、方法1000はステップ1035に戻る。ここで、ビーコンメッセージは、STAからの新たな受信信号強度測定値などのフィードバックが受信されるまで、定期的に繰り返してよい。新たな受信信号強度指示などのフィードバックが受信された場合、受信信号強度(SS)値が、mgroupリーダーに対する記録されたSS値未満であるかどうかに関して判定がステップ1050で行われる。受信された値の方が低い場合、最小SS値はステップ1055で記録される。mgroupリーダーが変更される場合、新たなmgroupリーダーがステップ1055で記録される。方法1000は次いで、ステップ1035に戻る。
【0088】
ステップ1050で、STAからの、新たに測定されたSS値が、mgroupリーダー最小SS値以上の場合、ステップ1060に入る。ステップ1060で、APは、フィードバックがmgroupリーダーから来たかどうか判定する。フィードバックがmgroupリーダーからのものではない場合、ステップ1060はステップ1035に移る。フィードバックがmgroupリーダーからのものである場合、方法1000はステップ1060からステップ1065に移り、ここでmgroupリーダーに対する受信信号強度の増大され更新された値が、ビーコンフレーム中で記録され更新される。ステップ1065で、以前の最小信号強度値より大きい新たな最小信号強度値が入れられるので、マルチキャストデータ速度は暫定的に増大してよく、図11の方法を、方法1000と並列して実行して、増大したデータ速度でフレーム損失を検査することができる。新たなデータ速度が採用される場合、新たなより高いデータ速度は、mgroupリーダーに対する新たな最小信号強度値に関連づけられる。ステップ1065は次いで、ステップ1035に戻り、ビーコンフレームデータが更新され、定期的に送信される。
【0089】
図11は、AP内で起こる、マルチキャストメッセージの動的速度調節のための方法例1100を示す。この方法は、ステップ1110で始まり、ここで、マルチキャスト情報フレームを送付する初期マルチキャスト速度が選択される。概して、初期データ速度は、ビーコンフレーム中でAPによって与えられた、mgroupリーダーの最も低い(最小)受信信号強度値と関連づくデータ速度である。ステップ1115で、カウンタパラメータ
【0090】
【数11】
【0091】
が判定され、基準として設定される。一実施形態では、
【0092】
【数12】
【0093】
に対する初期値は10である。ステップ1120で、APが、通常TDM動作の途中で、
【0094】
【数13】
【0095】
個の順次ACK信号/メッセージをSTAから受信しているかどうか判定が行われる。ここで、通常TDM動作は、検討されるマルチキャストグループへのどのマルチキャストメッセージも含み得る。成功した順次ACK信号/メッセージが、APによる、STAのマルチキャストグループへの成功したマルチキャスト送信の結果として獲得される。
【0096】
【数14】
【0097】
個の順次ACK信号/メッセージが受信されない場合、方法1100は現在のデータ速度では成功せず、方法はステップ1145に移って、データ速度を低くする。
【0098】
【数15】
【0099】
個の成功したACK信号/メッセージが届いた場合、方法はステップ1125に移り、ここで送信データ速度が暫定的時間長の間、増大される。暫定的時間長は、暫定高速度期間(THRP)と呼ばれる。ステップ1130で、フレーム損失が、上述したアルゴリズムに従ってWdrop期間だけ記録される。ステップ1135で、暫定高速度期間(THRP)が満了しているかどうか判定が行われる。THRPが満了していない場合、プロセス1100は、ステップ1130を通ってループする。THRPが満了している場合、方法はステップ1140に移る。
【0100】
ステップ1140で、フレーム損失閾値が閾値Pflr_thより大きいかどうかに関して判定が行われる。フレーム損失率が閾値より大きい場合、新たなより高い速度はうまく働いていないので、方法はステップ1145に移り、ここで、速度は、以前の低い方の値まで低下される。プロセスは次いで、ステップ1115でリスタートしてよく、ここで
【0101】
【数16】
【0102】
の新たな値が判定され設定される。フレーム損失閾値が閾値を超えない場合、新たなより高い速度はうまく働いているので、方法1100はステップ1150に移り、ここで、暫定的なより高いデータ速度が、特定のmgroup用にAPによって使われるべきマルチキャストデータ速度として採用される。プロセスは次いで、ステップ1115でリスタートしてよい。このように、図11は、マルチキャストメッセージ用の、APの伝送データ速度を動的に調節するための技法を表す。上記方法は、ステーションならびにアクセスポイントにおける変化に適合可能である。この方法は、フレーム損失に依拠して、新たに選択されたより高いデータ速度が、マルチキャストグループ用に受諾可能かどうか判定する。
【0103】
記載した実施例の特徴および態様は、様々な適用例に適用することができる。適用例は、たとえば、上述したように、ケーブル経由イーサネット(登録商標)通信フレームワークを使ってインターネットで通信するのに、自分の家でホスト装置を使う個人を含む。ただし、本明細書に記載した特徴および態様は、他の適用分野に適合することができ、したがって、他のアプリケーションが可能であり想像される。たとえば、ユーザは、たとえば公共の場や職場など、自分の家の外にいる場合がある。さらに、イーサネット(登録商標)およびIEEE802.11以外のプロトコルおよび通信媒体が使われ得る。たとえば、データは、光ファイバケーブル、USB(ユニバーサルシリアルバス)ケーブル、SCSI(小型計算機システムインタフェース)ケーブル、電話線、デジタル加入者線/ループ(DSL)ライン、衛星接続、見通し内接続、およびセルラー接続を介して(かつ、これらに関連づけられたプロトコルを使って)送受信することができる。
【0104】
本明細書で記載した実施例は、たとえば、方法もしくはプロセス、機器、またはソフトウェアプログラムで実装することができる。単一の形の実施例というコンテキストにおいてのみ論じた(たとえば、方法としてのみ論じた)が、論じた特徴の実施例は、他の形(たとえば、機器やプログラム)で実装することもできる。機器は、たとえば、適切なハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアで実装することができる。方法は、概して、たとえば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、集積回路、またはプログラム可能論理素子を含む処理または計算装置を指す、たとえばプロセッサなどの機器で、たとえば実装することができる。処理装置は、たとえば、コンピュータ、セル電話、可搬型/携帯情報端末(「PDA」)、およびエンドユーザの間での情報の通信を容易にする他の装置などの通信装置も含む。
【0105】
本明細書で記載した様々なプロセスおよび特徴の実施例は、異なる様々な機器またはアプリケーション、特に、たとえば、データ送受信に関連づけられた機器やアプリケーションで実施することができる。機器の例は、ビデオコーダ、ビデオデコーダ、ビデオコーデック、ウェブサーバ、セットトップボックス、ラップトップ、パーソナルコンピュータ、および他の通信装置を含む。機器は、移動体でよく、移動車両に設置してもよいことが明らかであろう。
【0106】
さらに、本方法は、プロセッサまたは他の形の計算装置によって実施される命令によって実装することができ、このような命令は、たとえば、集積回路、ソフトウェアキャリア、あるいはたとえばハードディスク、コンパクトディスケット、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、読出し専用メモリ(「ROM」)または他の任意の磁気、光学、もしくは固体状態媒体など、他の記憶装置などのコンピュータ可読媒体上に格納することができる。命令は、上で列挙した媒体の任意のものなど、コンピュータ可読媒体上で有形に実施されるアプリケーションプログラムを形成し得る。プロセッサまたは他の形の計算装置は、プロセッサユニットの一部として、たとえば、プロセスを実施する命令をもつプロセッサ可読媒体を含み得ることが明らかであろう。
【0107】
バッファおよび記憶装置に関して、記載した実施例全体における様々な装置は一般に、1つまたは複数の記憶装置またはバッファを含むことに留意されたい。記憶装置は、たとえば、電子、磁気、または光学でよい。
【0108】
上記開示内容から明白なように、実施例は、たとえば、格納し、または送信することができる情報を搬送するようにフォーマットされた信号も生じ得る。情報は、たとえば、方法を実施する命令、または記載した実施例の1つによって生じられたデータを含み得る。このような信号は、たとえば、電磁波として(たとえば、スペクトルの無線周波数部分を使って)またはベースバンド信号としてフォーマットすることができる。フォーマット化は、たとえば、データストリームをエンコードすること、エンコードされたストリームを、様々なフレーム構造のいずれかに従ってパケット化すること、およびパケット化されたストリームでキャリアを変調することを含み得る。信号が搬送する情報は、たとえば、アナログまたはデジタル情報でよい。信号は、公知のように、異なる様々なワイヤードまたはワイヤレスリンクを介して送信することができる。
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、その全体が本明細書に組み込まれている、2008年11月7日に出願した、「A Method of Data Rate Adaptation For Multicast Communication」という名称のEP08305789.3の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、データ伝送技術に関し、詳細には、ケーブルマルチキャストシステムにおけるデータ伝送速度を調節する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
データオーバーケーブルシステムのための通信および運用支援インタフェース要件を定義する既存の仕様がある。こうした仕様の1つが、DOCSIS(data over cable service interface specification)であり、既存のケーブルテレビ(CATV)システムへの高速データ転送の追加を認め、多くのケーブルテレビオペレータによって、オペレータの既存のハイブリッドファイバ同軸(HFC)インフラストラクチャを介してインターネットアクセスを提供するのに利用される国際標準である。
【0004】
DOCSISなどのソリューションに基づくケーブルモデムは高価であり、ケーブルネットワークにおけるリアルタイムオーディオ通信およびビデオストリーミングサービスにとって重要なサービス品質(QoS)を提供するのに適さない。優れたサービス品質(QoS)を保証することができ、妥当なコストで既存の標準プロトコルを最大限活用するCATVケーブルアクセスネットワークを経由してデータを伝送するための新たなシステムを開発することが望ましい。既存のCATVシステム上で動作し、ローカルエリアネットワーク上の装置などのクライアント装置にインターネットスタイルのデータサービスを提供するユーザ端末装置またはモデムも、ケーブルデータシステムにおいて望まれている。このようなシステムにおいて、ユーザ端末へのマルチキャストは、同じデータを受信することになる非常に多数のユーザ端末にコンテンツを配るための効率的な方法になるはずである。マルチキャストでは、送信データ速度は通常、マルチキャストグループ中のメンバの最低受信速度によって固定される。しかし、最低速度のユーザ端末は、時間とともに変わり得る。マルチキャスト方式におけるデータ速度伝送のための、固定された最低データ速度ユーザ端末の指定という手法は、マルチキャストグループ中のユーザ端末の変化に適応することができない。別の要因は、アクセスポイントである。アクセスポイントがいくつかのステーションへの送信電力を増大させる場合、電力の増大により、選択されたステーションへのより高いデータ速度が可能になり得る。より効率的であり適合性のあるデータ速度判定機構が、ケーブルシステムにおける帯域幅確保には有益であろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様によると、マルチキャスト送信においてデータ速度を適合的に調節するための、アクセスポイントによって指揮される方法は、ステーションからなるマルチキャストグループに、アクセスポイントからマルチキャストメッセージフレームを第1のデータ速度で送信することを含む。アクセスポイントは次いで、第1のデータ速度を用いて、ステーションから、成功したフレーム受信の肯定応答を受信する。第1のデータ速度は次いで、暫定期間だけ、第2のデータ速度まで増大される。暫定期間の間、マルチキャストメッセージフレームがステーションに送信され、マルチキャスト送信に第2のデータ速度を用いている間のマルチキャストフレーム損失が評価される。評価は、フレーム損失を閾値と比較することを含む。フレーム損失が閾値に達した場合、フレーム損失は高過ぎるので、アクセスポイントは、第2のデータ速度を低下させて第1のデータ速度に戻す。ただし、フレーム損失が閾値未満の場合、第2のデータ速度は、マルチキャストメッセージ/データ/フレーム用の新たなデータ速度として使われる。
【0006】
本発明の態様として、適合型データ速度調節は、時分割多重化プロトコルにおけるIEEE802.11フレームを使用するケーブルシステムにおいて用いることができる。第1のデータ速度からより高い第2のデータ速度への速度の変更は、マルチキャストメッセージを受信するステーションからのフィードバックに基づく。データ速度の増大は、マルチキャストグループ中で最も低い信号強度をもつ基準ステーションの受信信号強度の増大の結果として生じ得る。データ速度を増大させるための別の方法は、連続するいくつかの肯定応答信号を基準ステーションから受信することである。増大したデータ速度は次いで、一定期間だけ試されて、高い方のデータ速度が、新たなマルチキャストデータ速度として採用されるべきかどうか判定される。
【0007】
本発明の別の態様では、ステーションは、マルチキャストグループ中の基準ステーションの最小信号強度値をもつビーコンフレームを最初に受信することによって、マルチキャストデータ速度調節に能動的に関与する。ステーションは、新たな受信信号強度値を測定し、新たな受信信号強度値が、ビーコンフレームにある最小信号強度値未満かどうか判定する。新たな受信信号強度値が最小信号強度値未満の場合、ステーションは、新たな受信信号強度値をアクセスポイントに送信する。ステーションは、それ自体が、ビーコンフレーム情報から獲得された最小信号強度値をもつ基準ステーションであるかどうか判定する。次いで、第1のステーションが基準ステーションであり、新たな受信信号強度値が最小信号強度値より大きい場合、ステーションは、新たな受信信号強度値をアクセスポイントに送信する。アクセスポイントは次いで、本発明の、アクセスポイントによる補足部分を実施することができる。
【0008】
本発明のそれ以外の特徴および利点は、添付の図面を参照して進められる、例示的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】簡略化した例示的なTDFアクセスネットワークアーキテクチャを示す図である。
【図2】OSI参照モデルにおける802.11MAC副層を示す図である。
【図3】OSI参照モデルにおけるTDF送信エンティティの実装を示す図である。
【図4】モード進入手順の例を示す図である。
【図5】TDFスーパーフレーム構造の例を示す図である。
【図6a】ステーション(STA)例を示す図である。
【図6b】アクセスポイント(AP)例を示す図である。
【図7】情報要素形式例を示す図である。
【図8】チャネル検知ビーコンフレーム例を示す図である。
【図9】ステーション(STA)用の方法例を示す図である。
【図10】アクセスポイント(AP)用の方法例を示す図である。
【図11】適合型データ速度調節の方法例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概説>
本明細書で使用する「/」は、同じまたは類似した構成要素または構造に対する代替名称を示す。つまり、「/」は、本明細書で使用する「または」を意味すると解釈してよい。ユニキャスト送信は、単一の送付側/送信機と単一の受信機との間のものである。ブロードキャスト送信は、単一の送付側/送信機と送信機の受信範囲内のすべての受信機との間のものである。マルチキャスト送信は、単一の送付側/送信機と送信機の受信範囲内の受信機のサブセットとの間のものであり、送信機の受信範囲内の受信機のサブセットは、セット全体でもよい。つまり、マルチキャストは、ブロードキャストを含んでよく、したがって、本明細書で使用するブロードキャストより広い用語である。データ/コンテンツは、パケットまたはフレームに入れて送信される。
【0011】
既存の同軸ケーブルTVシステム(CATV)を介してデータサービスを提供するために、少なくとも1つの実施例が、ケーブルアクセスネットワーク内で時分割機能(TDF)プロトコル準拠アクセスポイント(AP)およびステーション(STA)を展開する。APおよびSTAは、階層ツリー構造内で結合器を通して接続される。このようにして、家にいるユーザは、ケーブルアクセスネットワークにより遠隔インターネットプロトコル(IP)コアネットワークにアクセスすることができる。ユーザによるIPコアへのアクセスによって、インターネットアクセス、デジタル電話アクセス(たとえばボイスオーバーインターネットプロトコル)、およびケーブルテレビプログラミングなどだが、それに限定されないサービスが開かれる。ネットワークアーキテクチャ例100を、図1に示す。
【0012】
図1は、IPコアネットワーク105にアクセスするネットワークの一実施形態を示す。IPコアネットワークは、インターネットプロトコルまたは等価なデジタルデータ転送プロトコルを使うどのデジタルネットワークでもよい。図1の実施形態例では、時分割機能(TDF)プロトコル準拠アクセスポイント(AP)110は、IPコアネットワーク105と接続するワイヤードLANや光インタフェースなどのネットワークインタフェース116、およびケーブルアクセスネットワークと接続するケーブルインタフェース112をもつ。多くのこのようなアクセスポイントは、IPコアネットワークに接続され得る。AP110のケーブルアクセスインタフェース112は、光ファイバ、同軸、または他の物理接続通信媒体など、どの形のケーブルにもアクセスすることができる。その結果、ケーブルネットワークは、光ファイバ、同軸、または他の物理接続通信媒体など、どの形のケーブルも含み得る。ケーブルネットワークは、必要とされる場合は信号結合器115、および相互接続ケーブル117、119などの配布媒体を含み得る。ただ2つのこのような配布ケーブルを図1に示しているが、多数のこのような配布接続が可能であることが理解されよう。
【0013】
図1の例では、配布ケーブル117、119は、それぞれケーブルインタフェース122、142を介してTDFプロトコル準拠ステーション(STA)120、140に接続する。STAケーブルインタフェース122、142はまた、光ファイバ、同軸、または他の物理接続通信媒体など、どの形のケーブルにもアクセスすることができる。STA120、140は、TDF準拠であり、ユーザ/クライアント用の多数のインタフェースを用いてケーブルアクセスネットワークと接続し得るユーザ端末として作用する。こうしたインタフェースは、従来の物理ローカルエリアネットワーク(LAN)およびワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)上で動作するユーザ/クライアント装置を含むが、それに限定されない。LANの一例は、イーサネット(登録商標)準拠ネットワークである。ワイヤレスネットワークの一例は、IEEE802.11互換ワイヤレスネットワークである。
【0014】
図1は、ステーション1モデム120およびステーションNモデム140を、同様のインタフェースをもつものとして示す。ただし、この表現は例示に過ぎない。というのは、異なる能力のステーションがAP110に通信可能に準拠する場合、こうしたステーションが、ケーブルネットワークに取り付けられ得るからである。たとえば、ステーションモデムは、図1に示すユーザインタフェースすべて、または選択されたサブセットのみをもち得る。図1において、ステーション1は、スタブ130a、130b、130cをもつ物理ワイヤードLAN130へのLAN接続121を駆動するLANインタフェース124をサポートするように構成される。スタブは、テレビおよび他のサービス用セットトップボックス132、インターネットサービスなどのネットワークサービス用パーソナルコンピュータ(PC)134などのLAN準拠装置、およびビデオ、オーディオ、電話、およびデータなどのマルチメディアサービスを提供するどのタイプのデジタルサービスもサポートする装置を含み得る他のLAN準拠装置136をサポートする。このようなLAN準拠装置136は、ファックス、プリンタ、デジタル電話、サーバなどを含むが、それに限定されない。図1は、ステーション120を、アンテナ125を駆動するためのWLAN無線周波数(RF)ポート126を介してワイヤレスサービスを提供するものとしても示す。その結果生じるワイヤレス伝送123は、WLAN準拠装置138によって、マルチメディア音声、オーディオ、電話、およびデータのいずれかを含むサービスをユーザ/クライアントに提供するのに用いることができる。ただ1つのワイヤレス装置138を示してあるが、多数のこのようなワイヤレス装置が用いられ得る。同様に、ステーションNは、スタブ150a、150b、150cをもつ物理LAN150用のLAN接続141を駆動するためのLANインタフェース144も含む。このようなスタブは、セットトップボックス152、PC154、および他の装置156など、このようなLAN互換装置との通信をサポートする。WLAN RFポート146は、WLAN装置158との通信用のリンク143を提供するアンテナ145をサポートする。図1のネットワークインタフェース116、ケーブルインタフェース112、122、142、ワイヤードLANインタフェース124、144、およびWLAN RFインタフェース126、146それぞれに対して適切なインタフェースドライバが存在することが当業者には理解されよう。
【0015】
ネットワーク100の一実施形態では、TDF準拠APおよびSTAは両方とも、IEEE802.11シリーズ仕様に従って、論理的にリンクされた制御副層、MAC副層および物理層においてプロトコルスタックを別々に実装する。ただし、MAC副層では、TDF APおよびSTAは、IEEE802.11フレーム送信エンティティを、TDFフレーム/メッセージ/信号送信エンティティで置き換える。したがって、TDF APおよびSTA用のMAC副層は、IEEE802.11フレームカプセル化/脱カプセル化エンティティおよびTDFフレーム送信エンティティを含み、IEEE802.11準拠APおよびSTA用のMAC副層は、IEEE802.11準拠フレームカプセル化/脱カプセル化エンティティおよびIEEE802.11フレーム送信エンティティを含む。統合されたAPおよびSTAの場合、TDFフレーム送信エンティティおよびIEEE802.11フレーム送信エンティティは、IEEE802.11およびTDF機能性両方を提供するために同時に共存し得る。こうした2つのモードの間の切換えは、手動または動的構成どちらでも実現することができる。
【0016】
1つまたは複数のAP、ケーブルネットワーク、および1つまたは複数のSTAを含む、図1にあるようなシステム例は、ADoC(asymmetric data over coaxial cable)システムとも呼ばれ得る。1つまたは複数のプロトコル準拠ADoCアクセスポイント(AP)および1つまたは複数のステーション(STA)が、ADoCケーブルアクセスネットワーク内に展開される。したがって、ADoCシステムは、TDFシステムの特定の実装形態なので、本明細書で使用する「ADoCシステム」および「TDFシステム」という用語は、入替え可能と見なされ得る。ADoCシステムでは、図1にあるように、APおよびSTAは、たとえば、ケーブルネットワーク構成に特有であるケーブル、スプリッタ、増幅器、継電器、リピータ、スイッチ、コンバータなどの要素を含むケーブルネットワークの階層ツリー構造内で結合器を介して接続される。
【0017】
<TDFプロトコルの序説>
図1のAP110およびSTA120、140は、TDFプロトコルを使用して、ケーブル媒体上で通信を行う。TDFプロトコルの一実施形態では、IEEE802.11フレームは、無線経由ではなくケーブル媒体を介して送信される。IEEE802.11機構を使用する目的は、IEEE802.11プロトコルスタックの成熟したハードウェアおよびソフトウェア実装形態を使用することである。したがって、IEEE802.11フレームを使うTDFは、図1のケーブルネットワーク内で、APとそれに関連づけられたSTAとの間の通信標準として使われる。
【0018】
TDFの1つの特徴は、IEEE802.11データフレームを送信する、独特のメディアアクセス制御方法である。一実施形態において、TDFは、MSDU(MACサービスデータ単位)およびMMPDU(MAC管理プロトコルデータ単位)を含むMACフレームを交換するのに、従来のIEEE802.11DCF(分散協調機能)もPCF(ポイント協調機能)機構も使用しない。そうではなく、TDFは、時分割アクセス方法を用いて、MACフレーム/メッセージ/信号を送信する。したがって、TDFは、MAC副層内に配置されたフレーム送信エンティティの詳細な実装形態を定義するアクセス方法である。
【0019】
図2は、開放型システム相互接続(OSI)参照モデルにおける標準IEEE802.11MAC副層プロトコルを示す。対して、図3は、OSI参照モデルにおけるTDFプロトコル用のフレーム送信エンティティの詳細を示す。
【0020】
一実施形態では、STA120およびSTA140などのステーションは、2つの通信モードで動作する。1つのモードは標準IEEE802.11動作モードであり、ユーザ/クライアントインタフェースモードとしても知られ、IEEE802.11シリーズ標準において定義されるフレーム構造および送信機構に従う。もう1つのモードはTDF動作モードであり、ケーブルインタフェースモードとしても知られている。一実施形態では、STAが開始されたときにどちらの動作モードに入るべきかの判定が、図4に示されている。STAがAPから同期フレーム/メッセージ/信号を受信すると、STAは、TDFモードに入る。事前設定されたタイムアウト以内に受信された同期フレームがない場合、STAは、そのまま留まり、またはユーザ/クライアントインタフェースモードに移る。より多くの動作モード切換え基準を、本明細書に挙げる。
【0021】
<TDFプロトコル機能の記述>
<アクセス方法>
TDFステーション内の物理層は、性能および装置保守を向上させる目的で、実施例に動的速度切換えを実施させるための複数のデータ転送速度能力をもち得る。一実施形態では、ステーションは、多数のデータ速度をサポートすることができる。データ速度は、TDFステーションがTDF通信手順に入る前に静的に構成され、全通信プロセス中、同じままでよい。一方、TDFステーションは、サービス中に動的データ速度切換えをサポートすることもできる。データ速度切換えのための基準は、チャネル信号品質および他の要因に基づき得る。本発明は、マルチキャスト送信中の動的データ速度切換えに対処する。
【0022】
TDFプロトコルの原則的アクセス方法は、時分割多重アクセス(TDMA)であり、このアクセス方法により、複数のユーザが、同じチャネルを、異なる複数のタイムスロットに分割することによって共有できる。STAは、それぞれ、APによって割り当てられた、TDFスーパーフレーム内のSTA自体のタイムスロットを使って、素早く次々と、ダウンロードを受信し、アップロードを送信する。ダウンリンクトラフィックは、APからSTAへのデータの移送として定義される。ダウンリンクトラフィックの例は、ユーザ/クライアント装置によって要求されるオーディオやビデオなど、要求されたデジタルデータ/コンテンツを含む。ダウンリンクデータは、ユニキャスト、ブロードキャスト、またはマルチキャストのいずれでもよい。アップリンクトラフィックは、STAからAPへのデータの移送として定義される。アップリンクトラフィックの例は、デジタルデータ/コンテンツを求めるユーザ要求または何らかの機能を実施するためのAPへのコマンドを含む。アップリンクデータは、ユニキャストでもマルチキャストでもよい。
【0023】
図5は、TDFスーパーフレーム構造および「n」個のSTAがあるときの典型的なTDFスーパーフレーム用のタイムスロット割振りの例を示す。図5に示すように、TDFスーパーフレームごとに一定数のタイムスロットがあり、スーパーフレームは、APから1つまたは複数のSTAにクロック同期情報を送付するのに使われる1つの同期タイムスロットと、アップリンクタイムスロット割振りのための登録要求を送付するのに使われる1つの競合タイムスロットとを含む。STAに割り振られたアップリンクタイムスロットは、指示された登録STAによって、APにデータおよびいくつかの管理フレームを送付するのに使われる。ダウンリンクタイムスロットは、APによって、STAにデータおよび登録応答管理フレームを送信するのに使われる。同期タイムスロットを除いて、他のすべてのタイムスロットは、同じ持続期間でよい。図5のマルチキャスト期間は、1つまたは複数の所定のいくつかのタイムスロットを使って、マルチキャストデータの長さに適応する。通常のタイムスロット持続期間の値は、最高データ速度モードに対して1つの通常タイムスロット中に、少なくとも1つの最大IEEE802.11PLCP(物理層収束プロトコル)プロトコルデータ単位(PPDU)の送信を可能にするように定義される。同期タイムスロットの持続期間は、通常タイムスロットの持続期間より短くてよい。というのは、このタイムスロット中にAPからSTAに送信されるクロック同期フレームは、IEEE802.11データフレームより短くてよいからである。図5のTDFスーパーフレームは、スロットフィールドが同期スロット、競合スロット、マルチキャスト期間、ダウンリンクおよびアップリンクタイムスロットペアとして並べられる形式の例である。同期スロットがスーパーフレーム中で最初に起こるならば、他のスロットフィールド順序も可能である。たとえば、(i)同期スロット、ダウンリンクスロット、アップリンクスロット、競合スロット、(ii)同期スロット、アップリンクスロット、ダウンリンクスロット、競合スロット、および(iii)同期スロット、競合スロット、ダウンリンクスロット、アップリンクスロットという順序も可能である。他の編成も可能である。
【0024】
一実施例では、通常のタイムスロット持続期間は約300usであり、この長さは、54Mbpsモード用の1つの共通タイムスロット中に少なくとも1つの最大IEEE802.11PPDUをSTAが送信するのに十分である。合計では、TDFスーパーフレームごとに62個のタイムスロットがある。こうしたタイムスロット中には、アップリンクおよびダウンリンクタイムスロットのペアがある。20個のSTAがあるとき、各STAは、680kbpsのアップリンクデータ速度を利用できることが保証され得る。ダウンリンクデータ速度は、マルチキャストデータの出現およびダウンリンクデータ伝送用にAPに課される要件に依存する。最終的に、スーパーフレームの持続期間は、一実施形態では合計で、61個の通常タイムスロットおよび1つの同期タイムスロットからなる持続期間であるが、約18.6msであり、異なる使用法では異なる値に定義され得る。たとえば、ただ1つのSTAがある場合、STAは、約18Mbpsのアップリンクデータ速度および独自の18Mbps(4個の連続タイムスロット)のダウンリンクデータ速度を達成するように4個のタイムスロットをもつことが保証され得る。このようにして、スーパーフレーム持続期間の値は、約4msである。
【0025】
<フレーム/メッセージ/信号形式>
IEEE802.11仕様では、3つの主なフレームタイプが存在する。すなわち、データフレーム/メッセージ/信号、制御フレーム/メッセージ/信号、および管理フレーム/メッセージ/信号である。データフレームは、アクセスポイントからステーションに、およびその反対にデータを交換するのに使われる。ネットワークに依存して、異なるいくつかの種類のデータフレームが存在する。制御フレームは、データフレームとともに使われて、エリア消去操作、チャネル獲得およびキャリア検知保守機能、および受信データの肯定確認応答を実施する。制御およびデータフレームは、協働して、アクセスポイントとステーションとの間でデータを確実に配送する。より具体的には、フレーム交換における1つの重要特徴は、すべてのダウンリンクユニキャストフレームに対して肯定応答機構、したがって肯定応答(ACK)フレームがあることである。このフレームは、信頼できないワイヤレスチャネルによって引き起こされるデータ損失の可能性を減らすために存在する。管理フレームは、監視機能を実施する。管理フレームは、ワイヤレスネットワークに加入し、そこから退出し、アクセスポイントからアクセスポイントに関連づけを移すのに使われる。本明細書で使用する「フレーム」という用語は、すべてのケースにおいてメッセージまたは信号とも呼ばれ得る。等価には、「フレーム/メッセージ/信号」という用語は、等価物を示すのにも使われ得る。
【0026】
TDFシステムの一実施形態では、STAは、制御APを識別するために、APからの同期フレーム/メッセージ/信号を受動的に待つ。同期フレームは、図5の同期スロット(タイムスロット0)中に配置されたデータフレームである。STAは、APが同期フレームを送付するのを待つので、IEEE802.11標準のワイヤレス実装形態において見られる典型的なプローブ要求およびプローブ応答フレームは必要ない。しかし、肯定応答(ACK)フレーム/メッセージ/信号が、データフレーム配信の信頼性を確実にするのに使われる。
【0027】
TDFプロトコルでは、データ用の有用なIEEE802.11MSDUおよびMMPDUタイプの一部のみが、ケーブル媒体において使われる。たとえば、データフレームタイプのうち、データサブタイプが、上位層データをカプセル化し、アクセスポイントとステーションとの間でそのデータを伝送するのに使われる。新たな管理フレームが、TDFシステムにおけるクロック同期要件に適応するのに使われ得る。たとえば、付加情報は、あるAPから複数のSTAに送付される必要がある場合、同期フレームに含めることができる。
【0028】
TDFシステムの一実施形態では、TDFスーパーフレームは、図5に示すように、IEEE802.11ビーコンフレームを、同期スロット(タイムスロット0)の一部として定期的に送信して、STAを、関連づけられたAPと同期させる。典型的なビーコンフレームとは、ヘッダーおよびフレーム本体情報を含む管理フレームである。他のフレームと同様に、ヘッダーは、ソースおよび宛先MACアドレスならびに通信プロセスに関する他の情報を含む。宛先アドレスは、すべて1にセットすることができるが、これはブロードキャストメディアアクセス制御(MAC)アドレスである。これにより、適用可能チャネル上のすべてのSTAが、ビーコンフレームを受信し処理するよう命令される。
【0029】
<アクセスポイント(AP)探索およびクロック同期>
TDFプロトコルは、STAノードすべてに対するタイミング情報の配布を可能にする。STAは、図5のスーパーフレームの同期スロット中の同期フレーム/メッセージ/信号をリッスンして、利用可能なアクティブAPがあるかどうか決める。STAがTDF通信に入ると、STAは、同期フレームを使って、STAのローカルタイマを調節するが、このタイマに基づいて、STAは、STAがアップリンクフレームを送付する番であるかどうか決める。所与のどのときでも、同期手順ではAPはマスタであり、STAはスレーブである。STAが、予め定義された閾値期間の間、関連づけられたAPから同期フレームを受信していない場合、STAは、関連づけられたAPがSTAにサービスするのを停止しているかのように反応する。この事例において、STAは、サイレントAPとの通信を停止し、同期フレームを再度リッスンすることによってアクティブAPを探し始める。
【0030】
TDFシステムにおいて、同じAPに関連づけられたすべてのSTAは、共通クロックに同期する。APは、APクロック情報を含む同期フレームと呼ばれる特殊フレームを定期的に送信して、APのローカルネットワーク内のSTAを同期させる。一実施形態では、同期フレームは、TDFスーパーフレームタイムごとに一度だけAPによる送信用に生成され、TDFスーパーフレームの同期タイムスロット中に送付される。
【0031】
すべてのSTAは、ローカルタイミング同期機能(TSF)タイマを維持して、関連づけられたAPと確実に同期されるようにする。同期フレームを受信した後、STAは常に、フレーム中のタイミング情報を受諾する。STA TSFタイマが、APからの受信同期フレーム中のタイムスタンプとは異なる場合、受信側STAは、そのローカルタイマを、受信されたタイムスタンプ値に従ってセットする。さらに、STAは、トランシーバによるローカル処理を考慮に入れて、受信したタイミング値に小さいオフセットを追加してよい。
【0032】
<APへのSTA登録>
STAが、同期フレームからタイマ同期情報を獲得するとき、STAは、タイムスロット0がいつ起こるかを学習する。STAが、どのアクティブAPにも関連づけられていない場合、STAは、同期フレームを送付したAPに登録しようとする。STAは、図5のTDFスーパーフレーム中の第2のタイムスロットである競合タイムスロット中に登録要求フレームをAPに送付することによって、そのAPと関連づく。一実施形態では、競合タイムスロットの持続期間および登録要求フレーム/メッセージ/信号構造は、1つの競合タイムスロット中に複数の登録要求フレームを送付させるように設計される。この設計に基づいて、競合タイムスロットは、長さが等しい複数のサブタイムスロットに分割される。
【0033】
STAがアクティブな標的APを検出するとすぐに、STAは、競合タイムスロット中の1つのサブタイムスロットを選んで、APに登録要求フレームを送付する。このアクションの目的は、同時に開始するとともに同時に同じAPに登録しようとする多くのSTAが存在するときの衝突の機会を削減することである。登録要求は、以下の方法に従って起こり得る。
A.アップリンクタイムスロットが割り振られると、STAは、割り振られたアップリンクタイムスロット番号を格納する。割り振られたアップリンクタイムスロットは、アップリンクタイムスロットの全体プール中でのタイムスロットの場所を示す。
B.APは、STAがアップリンクタイムスロットを要求する度に同じSTAに同じアップリンクタイムスロットを割り振る。
C.登録要求フレームを送付するべきタイムスロットを選択するべきときであるときに、格納されている割り振られたタイムスロット値がある場合、STAは、サブタイムスロット番号を、割り振られた値にセットする。このような値がない場合、STAは、利用可能なタイムスロット中の1つのサブタイムスロットをランダムに選ぶ。STAは次いで、ランダムに選ばれたサブタイムスロット中に、APに登録要求フレームを送付する。
【0034】
STAは、その時点でSTAがサポートするすべてのデータ速度を列挙し、また、受信信号キャリア/ノイズ比など、何らかの情報を、登録要求フレームに入れて送付する。STAは、いくつかの順次登録要求フレームを、サポートされる様々なデータ速度で送付することができる。フレームを送出した後、STAは、APからの登録応答フレーム/メッセージ/信号をリッスンする。
【0035】
STAから登録要求フレームを受信した後、以下の方法に基づいて、APは、様々な種類の登録応答フレームを、ダウンリンクタイムスロット中にSTAに返送する。
A.既に割り振られているアップリンクタイムスロットが、スーパーフレーム中の利用可能ないくつかのタイムスロットを超える場合、APは、アップリンクタイムスロット使用不能インジケータをフレーム本体に入れる。
B.APが、登録要求管理フレーム中のサポートされるデータ速度セットに列挙されるどのデータ速度もサポートしない場合、APは、未サポートデータ速度インジケータをフレーム本体に入れる。
C.割振りに利用可能なアップリンクタイムスロットならびにAPおよびSTA両方がサポートする共通データ速度がある場合、APは、1つのアップリンクタイムスロットを割り振り、STAの登録要求フレーム中のキャリア/ノイズ比などの情報に従って、適切な共通データ速度を選び、次いで、STAに登録応答フレームを送付する。フレーム/メッセージ/信号本体は、割り振られたアップリンクタイムスロットおよび選ばれたデータ速度情報を含む。登録プロセスが成功した後、TDF STAおよびTDF APは、どのアップリンクタイムスロットおよびデータ速度を使うべきかについて合意に達する。
【0036】
<ダウンリンク送信>
上で述べたように、ダウンリンクは、APからSTAへの情報の転送として定義される。TDF通信手順全体において、ダウンリンクタイムスロットの総数は、関連づけられたSTAの数の変化により、動的に変わり得る。APは、関連づけられたSTAにフレームを送付する準備をするとき、残りのダウンリンクタイムスロット中の残された時間を、合意されたデータ速度を使ってこの特定のダウンリンクフレームを送信するのに必要とされる持続期間と比較する。次いで、この結果に基づいて、このTDFスーパーフレーム中でフレームがこの特定のデータ速度で送信されるべきかどうか決める。したがって、ダウンリンクフレームのフラグメント化は、多くの事例において回避することができる。
【0037】
<アップリンク送信>
上で述べたように、アップリンクは、STAからAPへの情報の転送として定義される。APから登録応答フレームを受信した後、STAは、フレーム本体を分析して、アップリンクタイムスロットを付与されているかどうか見る。付与されていない場合、一時停止し、後でアップリンクタイムスロットを申請する。付与されている場合、STAは、登録応答フレーム中で指示されたデータ速度を使って、割り当てられたタイムスロット中にアップリンクトラフィックを送信し始める。
【0038】
割り当てられたタイムスロット中のアップリンク送信の冒頭で、STAは、その発信キュー(バッファ)中に少なくとも1つの発信フレームがある場合、第1のフレームをそのキュー(バッファ)に入れてAPに送付する。その後、STAは、第2のアップリンクフレームの長さを調べ、割り当てられたタイムスロットにおける残りの持続期間中に第2/次のバッファ済みフレームを送付することが可能かどうか評価する。次のバッファ済みフレームを送付することが可能でない場合、STAは、アップリンク送信手順を停止し、次のTDFスーパーフレーム中の割り当てられたタイムスロット中に次のバッファ済みフレームを送付するのを待つ。割り当てられたタイムスロットにおける残りの持続期間中に次のバッファ済みフレームを送付することが可能である場合、STAは、次のバッファ済みフレームを直ちに宛先APに送付する。送付手順は、割り当てられたタイムスロットが終わるまで、または送信するべきアップリンクフレームがそれ以上なくなるまで、このように稼働し続ける。
【0039】
<STAおよびAP機器>
図1のネットワークアーキテクチャにおいて、モデムステーション(STA)例120、140は、ワイヤレス装置138、158をサポートするためのWLAN RFポートをもつものとして示されている。一実施形態では、STAは、エンドユーザ/クライアントインタフェースとして、WLAN RFインタフェースおよびLANインタフェースポートを含み得る。したがって、STAは、APとSTAとの間の通信をサポートするケーブルインタフェース、ならびにワイヤレスユーザ装置をサポートするための外部クライアントインタフェースポート両方またはユーザ装置へのLANもしくはWANインタフェースを有し得る。一実施形態では、ケーブルインタフェースおよびクライアント外部ポートをもつSTAは、デュアルモード装置とも呼ばれ得る。
【0040】
図6aは、デュアルモードSTA600の一実施形態を示す。STA600は、プロセッサ、ゲートアレイ、計算論理、マイクロプロセッサ、もしくはチップセット、またはケーブルインタフェース610および外部クライアントインタフェース620における通信トランザクションを制御する、当該分野において公知である他の制御機能などのSTA計算装置650または要素を含む。この観点において、STA600は、ケーブルインタフェース/ADoCシステムモードまたは外部インタフェース/クライアントモードのどちらかで動作する。STAは、成熟したWiFiチップセットを使って、STAプロセッサ/チップセット/計算装置650の機能を実現することができる。固体状態、回転磁気、または光ディスクなどのメモリ640を、STA計算装置活動をサポートするプログラムまたはデータ情報を格納するのに使うことができる。さらに、メモリ640は、ケーブルインタフェース610またはクライアントインタフェース620によって、データアクセス用に使われ得る。本発明を支援して、信号強度測定手段630が、STAによって、APによる送信の受信信号強度を評価するのに使われる。
【0041】
STA600は、ケーブルインタフェースと接続するように機能して、TDF原理を用いてケーブルネットワークにおける双方向データ通信をサポートし、外部クライアントインタフェースは、アンテナまたは外部ネットワーク接続と接続するように機能して、クライアント装置用の双方向データ通信をサポートする。STA600は、必要とされる場合、外部ネットワーク内の、たとえばPC、PDA、ルータ、スイッチ、プリンタ、スマート端末などのユーザ/クライアント装置と通信するために、ケーブルインタフェース610と外部クライアントインタフェース620との間でデータフレームを交換する。APへのケーブルインタフェースを介してインターネットやイントラネットなどのIPネットワークにアクセスするために、データフレームが交換される。外部クライアントインタフェースモードにある間、デュアルモード装置STA600は、ユーザ装置用のアクセスポイントとして動作する。STA600は、ケーブルインタフェース/ADoCモードにある間、ADoC周波数帯(約1GHz)においてRFエネルギーを伝達する。外部クライアントインタフェースモードでは、IEEE802.11周波数帯(約2.4GHz)などの標準ワイヤレス周波数帯が使われ得る。ADoCシステム/ケーブルインタフェースモードでは、STAは、時分割多重アクセス(TDMA)方法に基づく上述のTDFプロトコルを用いて、メディアアクセス制御(MAC)フレームを送信する。クライアントインタフェースモードでは、STA600は、IEEE802.11プロトコルやイーサネット(登録商標)プロトコルなど、どのワイヤレスアクセスまたはワイヤードネットワークプロトコルも用いる。
【0042】
図6bは、AP660の一実施形態を示す。APは、インタフェース662を使って外部インターネットプロトコルソースとインタフェースをとる。AP計算装置670の制御下で、APは、IPソースならびに時分割化通信機能を提供するケーブルインタフェース668からコンテンツにアクセスして、STA600など、1つまたは複数のSTAと対話することができる。メモリ664は、AP計算装置670によってアクセス可能であり、メモリ640のように、IPソースインタフェース662およびケーブルインタフェース668上でのSTAの対話を正しく協調させるためのデータ、プログラム、および制御情報を格納するのに使われ得る。メモリ664は、ケーブルインタフェース668またはIPソースインタフェース662によって、データアクセス用に使うこともできる。メモリは、固体状態、回転磁気、または光ディスクなど、どの形のメモリでもよい。AP計算装置は、1つもしくは複数のプロセッサ、またはプログラム可能論理素子、ゲートアレイ、計算論理、マイクロプロセッサ、もしくはチップセットなどの計算要素または当該分野において公知である他の制御機能をもつ分離または統合計算装置を含み得るどの形の計算装置でもよい。AP計算装置は、AP660のインタフェースを制御するように、かつフレーム損失計算、信号強度測定値計算、またはユニキャスト、マルチキャスト、およびブロードキャストモードにおけるSTAの制御に関連する他のあらゆる計算など、APに求められるどの判定または測定も実施し、または制御するように機能する。
【0043】
<マルチキャスト通信の検討>
マルチキャスト送信は、同一のデータを複数のユーザに転送する効率的技法である。同じデータが複数の受信機に送信されるとき、マルチキャストは、個々のユーザへのユニキャストとは反対に、ネットワーク資源を節約するので、マルチキャストは、特にビデオ共有のためには、ネットワークにおける重要なサービスプリミティブである。それにもかかわらず、IEEE802.11標準は、マルチキャスト通信に直接は対処しない。この標準は、フィードバックなしでブロードキャストを活用することによって、マルチキャスト送信を間接的にサポートする。しかし、フィードバックがないと、マルチキャスト通信の信頼性が問題になる。
【0044】
ワイヤレス環境において、マルチキャスト送信は、同じチャネルへのアクセスを試みるときにユニキャスト送信と衝突し得る。ただし、本明細書で記載したTDFシステムなど、IEEE802.11フレームを使う時分割多重化システムでは、送信用のタイムスロット割振り機構は概して、このような衝突を回避する。
【0045】
IEEE802.11ワイヤレスネットワークでは、2つの要因が、パケット損失を引き起こし得る。1つはチャネルエラーであり、もう1つは送信衝突である。ADoCシステムにおいて、TDF MACプロトコルは、パケット衝突要因を排除する。したがって、パケット損失の主な誘因は、チャネルエラーであり、主にノイズおよび干渉によって引き起こされる。ケーブルシステムでは、チャネルエラーは、適切な送信電力、変調レベル、および符号方式を選択することによって、求められる閾値よりも低下され得る。
【0046】
IEEE802.11によって提供されるデータ速度適応は、標準化されていない。802.11構成要素の各製造元は、独自のデータ速度適合機構を自由に選ぶ。マルチキャストにおいてMAC層ACKフレームまたはRTS−CTSメッセージフレームなどのフィードバック信号がないことにより、ユニキャストトラフィック用に使われる速度適合機構は、マルチキャストに適さない。したがって、概して、マルチキャスト送信は、ブロードキャスト送信でのように、最も低い変調レベルおよび符号化方式を使い続ける。本発明は、この方式を改善する。
【0047】
本発明の態様として、新規チャネル品質フィードバック機構およびデータ速度適合技法が、ケーブル環境におけるマルチキャスト送信用に構築される。この技法を用いると、データチャネルをはるかにうまく使用することができ、マルチキャスト送信の性能が大幅に向上され得る。このようなチャネルデータ速度適合技法は、マルチキャストにより送信されるマルチメディアコンテンツの適度な品質を維持し、また、マルチキャスト送信において最小チャネル資源を割り振ることによって、ユニキャスト送信のためのスループット利得を達成するのにも役立つ。
【0048】
TDF ADoCシステムなどのケーブルシステムでは、APからSTAへのダウンリンクトラフィックは、システムが認める最強電力で送信してよい。しかし、STAからAPへのアップリンク送信は、異なるSTAから異なるAPへの信号が互いと確実に干渉しないようにするために、注意深い電力制御を求める傾向にある。したがって、ダウンリンクマルチキャストトラフィックに対して、電力制御機構は、ワイヤレス環境でのように必要とされないが、チャネルデータ速度制御適合は、ワイヤレスネットワークと比較して、伝送速度効率を高め、ケーブルネットワークに存在する改善されたチャネル条件を使用することが望ましい。
【0049】
マルチキャストチャネル適合プロトコルのための基本ステップは、(a)チャネル検知を定期的に実施して、信号強度が最も弱いSTAをマルチキャストグループリーダーとして選択すること、(b)マルチキャストグループリーダーが、マルチキャストフレームの正しい受信を受領確認するだけである、APへのフィードバック機構を使用すること、および(c)条件が認める速度低下機構または速度増大機構を使ってマルチキャストデータ伝送速度を調節することを含む。
【0050】
<マルチキャストグループリーダー選択>
本発明の態様として、APは、信号強度(SS)を、マルチキャストグループリーダーを選択する基準として使う。リーダーは、マルチキャスト送信においてAPからの品質が最も悪い受信信号を経験する、目標マルチキャストグループ中のSTAである。ワイヤレス環境では、APとSTAとの間のチャネルは対称的と見なされるので、APは、データ、RTS−CTS、ACKおよび他のフレームを含む、STAからのアップリンクフレームの信号強度を測定することによって、AP自体とあらゆるステーションとの間の通信品質を判定し得る。ただし、ケーブルシステムにおけるアップリンクおよびダウンリンクチャネルは、対称的であることが保証されない。ケーブルシステムの非対称性は、信号結合器またはスプリッタ、図1のこのような結合器115の非対称特徴により生じる。APが正しいマルチキャストグループリーダーを選択するのを可能にするために、APからSTAへのマルチキャストフレームの信号強度は、各STAによって測定され、APに折返し報告されなければならない。
【0051】
本発明の態様として、STAは、信号強度を定期的に測定し、信号強度測定値をAPにフォワードする。最初に、マルチキャストグループ中のSTAはすべて、STA自体の受信信号強度の測定値を送付することによって、マルチキャストメッセージに応答する。APは、最も低い受信信号強度(SS)をもつSTAを検出し、このSTAを、マルチキャストグループ(mgroup)リーダーとなるように指定する。その後、ビーコンフレーム中の新たな情報要素を利用することによって、より効率的な報告およびデータ速度更新方式が用いられ得る。
【0052】
本発明の態様として、チャネル検知情報要素と呼ばれる新たな管理フレーム情報要素が追加される。情報要素は、管理フレームからなる可変長の構成要素である。一般的な情報要素は、図7(a)に示すように、ID番号、長さおよび可変長データフィールドをもつ。図7(b)のチャネル検知情報要素用に、元の予約された要素チャネル検知IDが使われる。図7(b)の実施形態において、長さは、13の値をもつ。可変長データフィールドは、マルチキャストグループ(mgroup)アドレスフィールド(6バイト)、最小信号強度(SS)値フィールド(1バイト)、およびmgroupリーダーフィールド(6バイト)という3つのフィールドを含む。mgroupアドレスフィールドは、より上位レベルの規約によって、論理的に関連したステーションのグループに関連づけられたアドレスである。一実施形態では、mgroupアドレスフィールドは、01:00:5EおよびクラスDマルチキャストIPの最後の23ビットからなるMACアドレス連結である。最小SS値フィールドは、マルチキャストリーダーの信号強度値であり、過去の(初期の)チャネル検知プロセスにより確かめられる。
【0053】
図7(b)のチャネル検知要素形式は、ビーコンフレームの使用により、マルチキャストグループ中のすべてのSTAにとって利用可能である。TDFシステムにおいて、ビーコンフレームは、図5のように、スーパーフレームの冒頭にある、同期フレームの一部として送付される。したがって、ブロードキャストビーコンフレーム中で、すべてのSTAは、ある特定のマルチキャストグループが、最小信号強度値をもつ1つのmgroupリーダーをもつことを知らされる。
【0054】
本発明の態様として、STAは、ビーコンフレーム中のチャネル検知要素を読み取る。最小信号強度値が0xFFに等しいとき、STAは、初期チャネル検知を実施する。この初期チャネル検知は、APが、ある特定のマルチキャストグループ中のSTAのチャネル条件を事前に知らないときに起こる。この値は、マルチキャストアプリケーションが初期化され、マルチキャストグループが形成されるとき、すべてのSTAが読み取るべきビーコンフレーム中で提示することができる。初期読取りの後、APは、mgroupリーダーおよび対応する信号強度値を選択する。この新たな値は次いで、ブロードキャストビーコンフレーム中ですべてのSTAに対して利用可能にされる。最小SS値が0x00と0xFEとの間のとき、信号強度値は、過去のチャネル検知プロセスにより測定された値である。
【0055】
図8は、フレーム本体フィールドをもつ標準802.11管理フレームを示す。本発明の態様として、このフレーム本体フィールドは、チャネル検知フィールドをもつビーコンフレーム本体として投入される。チャネル検知フィールドには、図7(b)のチャネル送付要素が投入される。したがって、スーパーフレームの冒頭にあるブロードキャストビーコンフレームを受信するすべてのSTAが、ある特定のマルチキャストグループ向けのマルチキャストグループリーダーおよび最小信号強度値を判定することができる。
【0056】
マルチキャスト初期化フェーズ中、マルチキャストデータストリームが、APによってマルチキャストSTAに送付される。APは、初期チャネル検知ビーコンを送付するが、このビーコン中では、最小信号強度値フィールドが0xFFで埋められる。チャネル検知ビーコンが受信されると、対応するマルチキャストグループ中のすべてのSTAが、ビーコンの受信信号強度値を測定する。次いで、STAは、APにフィードバックフレームを送付して、受信信号強度を報告する。フィードバックフレームのペイロードは、測定された信号強度値である。フィードバックフレームを受信した後、APは、最小信号強度値を記録し、最小信号強度値をもつSTAをマルチキャストグループリーダーとして選択する。APは、基準としてのmgroupリーダーの識別、基準mgroupリーダーの受信信号強度、およびmgroupアドレスを、図8のビーコンフレームにロードする。
【0057】
初期チャネル検知の後、APは、検出された最小信号強度値で埋められたチャネル検知ビーコンを定期的に送付して、定期的チャネル測定を行うようSTAに依頼する。チャネル検知ビーコンの期間は、変化するステーション条件への適合を高めるように選択される。この期間は、過度のデータ速度変更または激変(churning)を回避するようにも選択される。動作の際、最小信号強度値が0xFFと等しくないチャネル検知ビーコンをSTAが受信した場合、STAは最初に、mgroupアドレスフィールドを読み取ることによって、STAが特定のマルチキャストグループに属すかどうか判定する。その後、STAは、STAの現在の測定信号強度値を、ビーコン中の最小信号強度値と比較する。現在の測定SS値が最小SS値より小さい場合、STAは、STA自体を、受信信号強度に関してより劣ったステーションと見なし、測定されたSS値をAPに与える。
【0058】
STAが、特殊マルチキャストグループに属し、STA自体の信号強度(SS)が最小SS値より優れていると分かった場合、STAは、STA自体のMACアドレスがmgroupリーダーのものと同じかどうか判定する。2つのアドレスが同じ場合、STAは、STAのMACアドレスとともに新たなSS値を含むフィードバックをAPに与える。APは、最小SS値フィールドの値を修正し、STAからの受信フィードバックに従って、新たなmgroupリーダーを選択するべきかどうか決める。図9は、このプロセスの例を表す。
【0059】
<STA動作例>
図9は、STAにおいて実施されるチャネル検知プロセスの方法例900を示す。ステップ910で、ビーコンフレームがSTAによって受信される。受信されたブロードキャストビーコンフレームの信号強度が、ステップ920で測定される。ステップ930で、最小信号強度値フィールドが、ビーコンフレームから読み取られる。ステップ940で、このマルチキャストグループに対する初期チャネル検知であるかどうか判定が行われる。この判定は、ビーコンフレームのチャネル検知要素の最小信号強度値フィールドを、上述した値と比較することによって行われる。初期マルチキャストチャネル検知である場合、方法900はステップ940から980に移り、測定された信号強度値は、APにフィードバックとして送付される。この事例において、初期信号強度値測定値は、APに送付され、そうすることによってAPは、最も低いSS値および対応する初期mgroupリーダーの判定を行うことができる。
【0060】
このマルチキャストグループに対する初期チャネル検知ではない場合、ステップ940からステップ950に入る。ステップ950で、信号強度の測定値が、mgroupリーダーに関して予め記録された最小信号強度未満かどうか判定が行われる。測定値がmgroupリーダーの最小SS値未満の場合、方法900はステップ980に移り、ここで、測定STA受信信号強度が、フィードバックとしてAPに返送される。APへのフィードバックは、測定されたSS値だけでなく、応答STAの識別も含む。この事例において、ステップ950で、応答STAは、APが予め選択した、mgroupリーダー未満である、測定された受信信号強度をもっている。その結果、APは、応答STAが、新たなmgroupリーダーになるべきであり、新たなSS測定値が、ビーコンフレームに関する新たな最小SS値になるべきであると判定してよい。
【0061】
ステップ950での判定が否定の場合、STAへの送信の測定信号強度は、最小SSレベルを上回る。測定信号強度が最小SSレベルに等しい場合、mgroupリーダーも他のステーションも、APにフィードバックを与えない(図9には示さず)。ステップ960で、STAがmgroupリーダーであるかどうかに関して判定が行われる。STAがmgroupリーダーである場合、方法はステップ980に移り、新たに測定された受信信号強度測定値が、STA MACアドレスとともにAPに折返し報告される。この事例において、測定信号強度の新たな、より高い値がAPにフィードバックされ、その結果APは、このmgroupリーダー向けの最小SS値を更新することができる。ステップ960で、STAがmgroupリーダーではない事例では、方法はステップ970に移り、STAからビーコンへの応答は与えられない。この事例において、測定されたSSは、mgroupリーダーではない(すなわち、受信信号強度が最も弱いSTAではない)STAによって測定された最小SS値より大きい。したがって、APへのフィードバックは必要とされない。
【0062】
<マルチキャストトラフィック用フィードバック機構>
APは、対応するマルチキャストグループ中のSTAメンバにデータフレームをマルチキャストする。STAがマルチキャストグループ(mgroup)リーダーであり、マルチキャストフレームをエラーなしで受信した場合、mgroupリーダーSTAのみが、ACK信号/メッセージを返送する。APは次いで、グループリーダーがマルチキャストメッセージを受信したことを知る。APは次いで、否定応答(NACK)信号/メッセージがmgroup中の他のSTAから受信されない場合、mgroup中の他のすべてのSTAが、マルチキャストメッセージをエラーなしで受信したとも仮定する。mgroupリーダーSTAが、マルチキャストフレームをエラーありで受信した場合、mgroupリーダーSTAは何もしない。APは、マルチキャストメッセージが正しく受信された場合にのみ、mgroupリーダーSTAがそのメッセージに応答することを期待する。mgroupリーダーSTAが応答しない場合、APは、mgroupリーダーSTAがメッセージを正しく受信しなかったことを知る。
【0063】
STAがmgroupリーダーではなく、マルチキャストフレームをエラーなしで受信した場合、STAは何もしない。マルチキャストメッセージが、非mgroupリーダーSTAによって誤って受信された場合、非グループリーダーSTAが、NACK信号/メッセージを返送する。
【0064】
要するに、マルチキャストフレームが送付された後は、多くの種類の可能フィードバックがある。第1に、マルチキャストグループ中のすべてのSTAが、マルチキャストフレームをエラーなしで受信した場合、APへのフィードバックは、マルチキャストグループリーダーからのACK信号/メッセージのみである。第2に、mgroupリーダーが、フレームをエラーなしで受信したが、他のSTAの少なくとも1つがフレームをエラーありで受信した場合、mgroupリーダーからのACK信号/メッセージと、受信エラーのある他のSTAからのNACK信号/メッセージとの間で衝突が起こる。第3に、mgroupリーダーおよび他のSTAの1つまたはいくつかが、マルチキャストメッセージをエラーありで受信した場合、フィードバックは、NACK信号/メッセージまたは誤ってマルチキャストメッセージを受信したSTAからのいくつかのNACK信号/メッセージの衝突となる。最後に、APによるマルチキャストメッセージ送信後にAPへのフィードバックがない場合、APは、マルチキャストメッセージ/フレームが損失されたと結論づける。概して、STA mgroupリーダーからの明白なACKフィードバック信号を除いて、APは、他のすべてのフィードバックをNACK衝突と見なす。NACK衝突の結果、APは、マルチキャストメッセージを、正しく受信されるまで再送し、またはデータ速度を低下させ、マルチキャストメッセージを、正しく受信されるまで再送すればよい。
【0065】
<フィードバックに基づくマルチキャスト速度選択>
APは最初に、マルチキャストトラフィックを送付するためのある一定のマルチキャストデータ速度を選択する。
【0066】
【数1】
【0067】
個の順次ACKフィードバックがAPによって受信されると、マルチキャスト伝送速度は、すぐ上のレベルまで高まる。一実施形態では、
【0068】
【数2】
【0069】
は、データ速度適合プロセスにおいて適合的に調節されるカウンタである。マルチキャスト速度が増大されると、APは、暫定高速期間(THRP:temporary higher rate period)を開始するが、この期間中、APは、より高いマルチキャストデータ速度を使うことができるかどうかの決定を行うことができる。この決定は、ある特定のウィンドウWdrop中で1つのフレーム損失が起こるかどうかに関して判定される。ウィンドウWdropは、マルチキャストメッセージ/送信/トラフィック/データ用のデータ速度を増大させた後に送信されるマルチキャストフレームの数として提示される。ウィンドウ値は、フレーム損失比閾値Pflr_thから判定される。損失比閾値Pflr_thは、確率閾値である。速度がより高いマルチキャストトラフィックのフレーム損失率がPflr_thより大きい場合、より高い速度でのメッセージ転送成功は、元の低い方の速度でのメッセージ転送成功率より悪い。したがって、新たな高い方の速度は使われるべきでなく、APは、そのマルチキャスト速度を元の速度に落とすべきである。Pflr_thは、
【0070】
【数3】
【0071】
として判定される。上式で、Virtual_transmission_timeは、PHYプリアンブル、SIFS、DIFS、ACKまたはNACKおよびペイロード(MSDU)など、すべてのPHYおよびMACオーバーヘッドを含むマルチキャストフレームの送信に必要とされる合計送信回数を意味し、Rhighは新たなより高いデータ速度であり、Rlowは初期のより低いデータ速度である。Pflr_thを使って、Wdropは(
【0072】
【数4】
【0073】
は、x以上の整数を表す)、
【0074】
【数5】
【0075】
として判定され得る。したがって、Wdropによって判定されるTHRP中、どの損失マルチキャストフレーム(否定応答「NACK」信号/メッセージイベントなど)も、APに、APのマルチキャスト速度を元の低い方の速度まで落とさせる。AP向けの上記判定は、図6bのAP計算装置または他の論理によって行うことができる。フレーム損失は、フレーム単位、ブロック単位、または両方で示すことができる。
【0076】
【数6】
【0077】
は、マルチキャスト速度適合プロセスにおいて適合的に調節される。新たなマルチキャストアプリケーションが初期化されると、またはAPがマルチキャストトラフィック用に新たなデータ速度を使い始めると、
【0078】
【数7】
【0079】
は、セットされ、またはリセットされる。一実施形態では、リセット値は10である。毎回、APは、そのマルチキャスト速度を増大しようとするが、速度は、THRP時間枠の間、元の低い方の速度に再度落ちる。
【0080】
【数8】
は、バイナリバックオフ方法
【0081】
【数9】
【0082】
により増大される。上式で、Tは、APによって経験されるデータ速度後退イベントの数である。検出されたマルチキャストグループの信号強度の増大は、
【0083】
【数10】
【0084】
をリセットして10に戻すよう、APをトリガする。
【0085】
APが、そのマルチキャスト速度を、THRP時間枠中に元の低い方の速度に落とさない場合、APは、以降のマルチキャストデータ伝送用に高い方の速度を使う。送信中(THRP期間外)、2つのフレームが、Wdrop個の連続するマルチキャストフレームの中でNACKイベントを取得すると、マルチキャスト伝送速度は、すぐ下のレベルに落ちる。
【0086】
<AP動作例>
APにおけるチャネル検知動作を、図10の方法例に示す。図11は、AP速度調節のための方法例を示す。図10を検討すると、チャネル検知動作を実施する方法例は、ステップ1010で始まり、ここでmgroupアドレスがIPマルチキャストアドレスから判定される。修正ビーコンフレームが次いで、ステップ1015ですべてのSTAに送付される。これは初期セットアップであり、最小SS値フィールドが0xFFなので、すべてのステーションが、ステップ1020で、定められたTDMタイムスロット中に、その測定信号強度のフィードバックを与えることによって応答する。ステップ1025で、APは、対象となるマルチキャストグループ中のステーション向けのノードエントリをすべて更新する。APは次いで、マルチキャストグループリーダーを、最も低い信号強度指示をもつ、mgroup中のSTAであると判定する。このmgroupリーダーSTAによって適応されるデータ速度は、mgroupへのマルチキャストメッセージ用にAPが最初に使われるデータ速度である。ステップ1010から1030は、本発明の態様によるチャネル検知のセットアップのための初期期間に含まれる。繰り返され、定期的なAP動作が、ステップ1035で始まる。
【0087】
ステップ1035で、mgroupリーダーおよびそれに対応する、mgroup用信号強度をもつビーコンフレームが、すべてのSTAに送付される。マルチキャストメッセージが次いで、マルチキャストグループ(mgroup)に送付される。ステップ1040で、マルチキャストメッセージの結果、APは、受信したフィードバックがmgroup中のSTAからのものであるかどうか判定する。フィードバックが受信されない場合、方法1000はステップ1035に戻る。ここで、ビーコンメッセージは、STAからの新たな受信信号強度測定値などのフィードバックが受信されるまで、定期的に繰り返してよい。新たな受信信号強度指示などのフィードバックが受信された場合、受信信号強度(SS)値が、mgroupリーダーに対する記録されたSS値未満であるかどうかに関して判定がステップ1050で行われる。受信された値の方が低い場合、最小SS値はステップ1055で記録される。mgroupリーダーが変更される場合、新たなmgroupリーダーがステップ1055で記録される。方法1000は次いで、ステップ1035に戻る。
【0088】
ステップ1050で、STAからの、新たに測定されたSS値が、mgroupリーダー最小SS値以上の場合、ステップ1060に入る。ステップ1060で、APは、フィードバックがmgroupリーダーから来たかどうか判定する。フィードバックがmgroupリーダーからのものではない場合、ステップ1060はステップ1035に移る。フィードバックがmgroupリーダーからのものである場合、方法1000はステップ1060からステップ1065に移り、ここでmgroupリーダーに対する受信信号強度の増大され更新された値が、ビーコンフレーム中で記録され更新される。ステップ1065で、以前の最小信号強度値より大きい新たな最小信号強度値が入れられるので、マルチキャストデータ速度は暫定的に増大してよく、図11の方法を、方法1000と並列して実行して、増大したデータ速度でフレーム損失を検査することができる。新たなデータ速度が採用される場合、新たなより高いデータ速度は、mgroupリーダーに対する新たな最小信号強度値に関連づけられる。ステップ1065は次いで、ステップ1035に戻り、ビーコンフレームデータが更新され、定期的に送信される。
【0089】
図11は、AP内で起こる、マルチキャストメッセージの動的速度調節のための方法例1100を示す。この方法は、ステップ1110で始まり、ここで、マルチキャスト情報フレームを送付する初期マルチキャスト速度が選択される。概して、初期データ速度は、ビーコンフレーム中でAPによって与えられた、mgroupリーダーの最も低い(最小)受信信号強度値と関連づくデータ速度である。ステップ1115で、カウンタパラメータ
【0090】
【数11】
【0091】
が判定され、基準として設定される。一実施形態では、
【0092】
【数12】
【0093】
に対する初期値は10である。ステップ1120で、APが、通常TDM動作の途中で、
【0094】
【数13】
【0095】
個の順次ACK信号/メッセージをSTAから受信しているかどうか判定が行われる。ここで、通常TDM動作は、検討されるマルチキャストグループへのどのマルチキャストメッセージも含み得る。成功した順次ACK信号/メッセージが、APによる、STAのマルチキャストグループへの成功したマルチキャスト送信の結果として獲得される。
【0096】
【数14】
【0097】
個の順次ACK信号/メッセージが受信されない場合、方法1100は現在のデータ速度では成功せず、方法はステップ1145に移って、データ速度を低くする。
【0098】
【数15】
【0099】
個の成功したACK信号/メッセージが届いた場合、方法はステップ1125に移り、ここで送信データ速度が暫定的時間長の間、増大される。暫定的時間長は、暫定高速度期間(THRP)と呼ばれる。ステップ1130で、フレーム損失が、上述したアルゴリズムに従ってWdrop期間だけ記録される。ステップ1135で、暫定高速度期間(THRP)が満了しているかどうか判定が行われる。THRPが満了していない場合、プロセス1100は、ステップ1130を通ってループする。THRPが満了している場合、方法はステップ1140に移る。
【0100】
ステップ1140で、フレーム損失閾値が閾値Pflr_thより大きいかどうかに関して判定が行われる。フレーム損失率が閾値より大きい場合、新たなより高い速度はうまく働いていないので、方法はステップ1145に移り、ここで、速度は、以前の低い方の値まで低下される。プロセスは次いで、ステップ1115でリスタートしてよく、ここで
【0101】
【数16】
【0102】
の新たな値が判定され設定される。フレーム損失閾値が閾値を超えない場合、新たなより高い速度はうまく働いているので、方法1100はステップ1150に移り、ここで、暫定的なより高いデータ速度が、特定のmgroup用にAPによって使われるべきマルチキャストデータ速度として採用される。プロセスは次いで、ステップ1115でリスタートしてよい。このように、図11は、マルチキャストメッセージ用の、APの伝送データ速度を動的に調節するための技法を表す。上記方法は、ステーションならびにアクセスポイントにおける変化に適合可能である。この方法は、フレーム損失に依拠して、新たに選択されたより高いデータ速度が、マルチキャストグループ用に受諾可能かどうか判定する。
【0103】
記載した実施例の特徴および態様は、様々な適用例に適用することができる。適用例は、たとえば、上述したように、ケーブル経由イーサネット(登録商標)通信フレームワークを使ってインターネットで通信するのに、自分の家でホスト装置を使う個人を含む。ただし、本明細書に記載した特徴および態様は、他の適用分野に適合することができ、したがって、他のアプリケーションが可能であり想像される。たとえば、ユーザは、たとえば公共の場や職場など、自分の家の外にいる場合がある。さらに、イーサネット(登録商標)およびIEEE802.11以外のプロトコルおよび通信媒体が使われ得る。たとえば、データは、光ファイバケーブル、USB(ユニバーサルシリアルバス)ケーブル、SCSI(小型計算機システムインタフェース)ケーブル、電話線、デジタル加入者線/ループ(DSL)ライン、衛星接続、見通し内接続、およびセルラー接続を介して(かつ、これらに関連づけられたプロトコルを使って)送受信することができる。
【0104】
本明細書で記載した実施例は、たとえば、方法もしくはプロセス、機器、またはソフトウェアプログラムで実装することができる。単一の形の実施例というコンテキストにおいてのみ論じた(たとえば、方法としてのみ論じた)が、論じた特徴の実施例は、他の形(たとえば、機器やプログラム)で実装することもできる。機器は、たとえば、適切なハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアで実装することができる。方法は、概して、たとえば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、集積回路、またはプログラム可能論理素子を含む処理または計算装置を指す、たとえばプロセッサなどの機器で、たとえば実装することができる。処理装置は、たとえば、コンピュータ、セル電話、可搬型/携帯情報端末(「PDA」)、およびエンドユーザの間での情報の通信を容易にする他の装置などの通信装置も含む。
【0105】
本明細書で記載した様々なプロセスおよび特徴の実施例は、異なる様々な機器またはアプリケーション、特に、たとえば、データ送受信に関連づけられた機器やアプリケーションで実施することができる。機器の例は、ビデオコーダ、ビデオデコーダ、ビデオコーデック、ウェブサーバ、セットトップボックス、ラップトップ、パーソナルコンピュータ、および他の通信装置を含む。機器は、移動体でよく、移動車両に設置してもよいことが明らかであろう。
【0106】
さらに、本方法は、プロセッサまたは他の形の計算装置によって実施される命令によって実装することができ、このような命令は、たとえば、集積回路、ソフトウェアキャリア、あるいはたとえばハードディスク、コンパクトディスケット、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、読出し専用メモリ(「ROM」)または他の任意の磁気、光学、もしくは固体状態媒体など、他の記憶装置などのコンピュータ可読媒体上に格納することができる。命令は、上で列挙した媒体の任意のものなど、コンピュータ可読媒体上で有形に実施されるアプリケーションプログラムを形成し得る。プロセッサまたは他の形の計算装置は、プロセッサユニットの一部として、たとえば、プロセスを実施する命令をもつプロセッサ可読媒体を含み得ることが明らかであろう。
【0107】
バッファおよび記憶装置に関して、記載した実施例全体における様々な装置は一般に、1つまたは複数の記憶装置またはバッファを含むことに留意されたい。記憶装置は、たとえば、電子、磁気、または光学でよい。
【0108】
上記開示内容から明白なように、実施例は、たとえば、格納し、または送信することができる情報を搬送するようにフォーマットされた信号も生じ得る。情報は、たとえば、方法を実施する命令、または記載した実施例の1つによって生じられたデータを含み得る。このような信号は、たとえば、電磁波として(たとえば、スペクトルの無線周波数部分を使って)またはベースバンド信号としてフォーマットすることができる。フォーマット化は、たとえば、データストリームをエンコードすること、エンコードされたストリームを、様々なフレーム構造のいずれかに従ってパケット化すること、およびパケット化されたストリームでキャリアを変調することを含み得る。信号が搬送する情報は、たとえば、アナログまたはデジタル情報でよい。信号は、公知のように、異なる様々なワイヤードまたはワイヤレスリンクを介して送信することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
マルチキャストデータフレームを第1のデータ速度で送信するステップと、
成功したフレーム受信の複数の肯定応答を、前記第1のデータ速度を用いて受信するステップと、
前記複数の肯定応答に応じて一定期間だけ、前記第1のデータ速度を第2のデータ速度まで増大させるステップと、
マルチキャストデータフレームを前記第2のデータ速度で送信するステップと、
前記期間中のフレーム損失を判定するステップと、
前記マルチキャストフレーム損失に応じて、第3のマルチキャストデータ速度を判定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
マルチキャストデータフレームを送信するステップは、ケーブル通信システム内でマルチキャストデータフレームを送信するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のデータ速度は、アクセスポイントによって選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のデータ速度を第2のデータ速度まで増大させる前記ステップは、マルチキャストグループからのフィードバックに応答して、前記第1のデータ速度を前記第2のデータ速度まで増大させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マルチキャストグループからのフィードバックは、基準ステーションの、増大した受信信号強度の指示を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記増大した受信信号強度の指示は、ビーコンフレームを使って前記マルチキャストグループ中のすべてのステーションに送信されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基準ステーションは、前記マルチキャストグループ中で最も低い受信信号強度値をもつものとして特徴づけられることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記マルチキャストグループからのフィードバックは、連続する複数の肯定応答メッセージの受信を含み、各肯定応答メッセージは、前記マルチキャストグループへのマルチキャストデータフレームの送信後に受信されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
連続する肯定応答メッセージの数は、閾値を超えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記閾値は、適合的に調節されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
マルチキャストデータフレームの受信が成功すると、前記マルチキャストグループ中の基準ステーションのみが応答メッセージを送付することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記マルチキャストグループ中の前記基準ステーション以外のステーションは、マルチキャストデータフレームを誤って受信すると、否定応答メッセージを送信することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マルチキャストフレーム損失に応答して、第3のマルチキャストデータ速度を判定する前記ステップは、前記フレーム損失が閾値に達した場合、前記第2のデータ速度を低下させて、前記第1のデータ速度に戻すステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記マルチキャストフレーム損失に応じて、第3のマルチキャストデータ速度を判定する前記ステップは、前記フレーム損失が閾値未満の場合、前記第2のデータ速度を新たなマルチキャストデータ速度として用いるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記閾値は、前記第2のデータ速度および前記第1のデータ速度の送信回数の比に基づく確率閾値であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
方法であって、
マルチキャストグループ中の基準ステーションの最小信号強度値をもつフレームを受信するステップと、
ステーションでの受信信号強度値を測定するステップと、
前記測定された受信信号強度値が前記最小信号強度値未満の場合、前記測定された受信信号強度値を送信するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記ステーションが前記基準ステーションであり、前記測定された受信信号強度値が前記最小信号強度値より大きい場合、前記測定された受信信号強度値を送信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステーションが前記基準ステーションではなく、前記測定された受信信号強度値が前記最小信号強度値より大きい場合、ビーコンフレームに応答しないステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
フレームを受信するステップは、前記最小信号強度値、マルチキャストグループアドレス、および前記基準ステーションの識別を含むビーコンフレームを受信するステップを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項1】
方法であって、
マルチキャストデータフレームを第1のデータ速度で送信するステップと、
成功したフレーム受信の複数の肯定応答を、前記第1のデータ速度を用いて受信するステップと、
前記複数の肯定応答に応じて一定期間だけ、前記第1のデータ速度を第2のデータ速度まで増大させるステップと、
マルチキャストデータフレームを前記第2のデータ速度で送信するステップと、
前記期間中のフレーム損失を判定するステップと、
前記マルチキャストフレーム損失に応じて、第3のマルチキャストデータ速度を判定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
マルチキャストデータフレームを送信するステップは、ケーブル通信システム内でマルチキャストデータフレームを送信するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のデータ速度は、アクセスポイントによって選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のデータ速度を第2のデータ速度まで増大させる前記ステップは、マルチキャストグループからのフィードバックに応答して、前記第1のデータ速度を前記第2のデータ速度まで増大させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マルチキャストグループからのフィードバックは、基準ステーションの、増大した受信信号強度の指示を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記増大した受信信号強度の指示は、ビーコンフレームを使って前記マルチキャストグループ中のすべてのステーションに送信されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基準ステーションは、前記マルチキャストグループ中で最も低い受信信号強度値をもつものとして特徴づけられることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記マルチキャストグループからのフィードバックは、連続する複数の肯定応答メッセージの受信を含み、各肯定応答メッセージは、前記マルチキャストグループへのマルチキャストデータフレームの送信後に受信されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
連続する肯定応答メッセージの数は、閾値を超えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記閾値は、適合的に調節されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
マルチキャストデータフレームの受信が成功すると、前記マルチキャストグループ中の基準ステーションのみが応答メッセージを送付することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記マルチキャストグループ中の前記基準ステーション以外のステーションは、マルチキャストデータフレームを誤って受信すると、否定応答メッセージを送信することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マルチキャストフレーム損失に応答して、第3のマルチキャストデータ速度を判定する前記ステップは、前記フレーム損失が閾値に達した場合、前記第2のデータ速度を低下させて、前記第1のデータ速度に戻すステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記マルチキャストフレーム損失に応じて、第3のマルチキャストデータ速度を判定する前記ステップは、前記フレーム損失が閾値未満の場合、前記第2のデータ速度を新たなマルチキャストデータ速度として用いるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記閾値は、前記第2のデータ速度および前記第1のデータ速度の送信回数の比に基づく確率閾値であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
方法であって、
マルチキャストグループ中の基準ステーションの最小信号強度値をもつフレームを受信するステップと、
ステーションでの受信信号強度値を測定するステップと、
前記測定された受信信号強度値が前記最小信号強度値未満の場合、前記測定された受信信号強度値を送信するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記ステーションが前記基準ステーションであり、前記測定された受信信号強度値が前記最小信号強度値より大きい場合、前記測定された受信信号強度値を送信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステーションが前記基準ステーションではなく、前記測定された受信信号強度値が前記最小信号強度値より大きい場合、ビーコンフレームに応答しないステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
フレームを受信するステップは、前記最小信号強度値、マルチキャストグループアドレス、および前記基準ステーションの識別を含むビーコンフレームを受信するステップを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−508496(P2012−508496A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535175(P2011−535175)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007342
【国際公開番号】WO2010/052553
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007342
【国際公開番号】WO2010/052553
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】
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