説明

マルチコアファイバ

【課題】比較的容易に製造可能なクロストークを低減したマルチコアファイバを提供する。
【解決手段】本発明の一態様においては、第1の光学特性を有する複数の第1のコア11と、第1の光学特性と異なる第2の光学特性を有する複数の第2のコア12と、空孔13を形成され、複数の第1のコア11及び複数の第2のコア12を覆うクラッド14を含むマルチコアファイバ1が提供される。空孔13は、複数の第1のコア11及び複数の第2のコア12のうち、隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分上に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数本のコアを有する光ファイバであるマルチコアファイバを伝送用ファイバとして用いる技術が提案されている。マルチコアファイバを用いることにより、1本のコアを有する光ファイバを用いる場合よりも伝送容量を大きくすることができる。
【0003】
このようなマルチコアファイバとして、各コア周辺に空孔を設けたホールアシスト構造を有するものが知られている(例えば、特許文献1)。このマルチコアファイバによれば、各コア周辺の空孔によりコア間のクロストークを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−18013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のマルチコアファイバによると、空孔の数の多さ及び配置の複雑さのために、製造が困難であるという問題がある。
【0006】
したがって、本発明の目的の一つは、空孔の数を少なく抑えて比較的容易に製造可能なクロストークを低減したマルチコアファイバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様においては、第1の光学特性を有する複数の第1のコアと、前記第1の光学特性と異なる第2の光学特性を有する複数の第2のコアと、空孔を形成され、前記複数の第1のコア及び前記複数の第2のコアを覆うクラッドを含むマルチコアファイバが提供される。前記空孔は、前記複数の第1のコア及び前記複数の第2のコアのうち、同一の光学特性を有する隣り合うコアを結ぶ線分上に位置する。
【0008】
上記マルチコアファイバにおいては、全ての前記空孔は、隣り合う前記同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分上に位置することが好ましい。
【0009】
また、上記マルチコアファイバにおいては、一対の前記隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線上に一つの前記空孔が位置することが好ましい。
【0010】
また、前記空孔は、前記隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分の中点上に位置することが好ましい。
【0011】
また、上記マルチコアファイバにおいては、前記マルチコアファイバの一断面において、前記複数の第1のコア及び前記複数の第2のコアは、四角格子状に交互に配置され、前記空孔は、前記四角格子の単位格子の中心に位置することが好ましい。
【0012】
また、上記マルチコアファイバにおいては、例えば、前記第1のコアと前記第2のコアの屈折率と有効断面積の一方又は両方が異なるために前記第1の光学特性と前記第2の光学特性が異なる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的容易に製造可能なクロストークを低減したマルチコアファイバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係るマルチコアファイバの断面図である。
【図2】図2は、図1の線分II−IIに沿ったマルチコアファイバの断面図である。
【図3】図3(a)、(b)は、本発明の第2及び第3の実施の形態に係るマルチコアファイバの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るマルチコアファイバ1の断面図である。マルチコアファイバ1は、第1の光学特性を有する複数の第1のコア11(11a〜11e)、第2の光学特性を有する複数の第2のコア12(12a〜12d)、これらのコア11及び12を覆うクラッド14、及びクラッド14中に形成された複数の空孔13(13a〜13d)を含む。
【0016】
第1のコア11の第1の光学特性と第2のコア12の第2の光学特性は異なる。例えば、第1のコア11と第2のコア12の屈折率や有効断面積が異なる場合に、第1の光学特性と第2の光学特性が異なる。第1のコア11と第2のコア12は、屈折率と有効断面積の一方または両方が異なる。
【0017】
図1には、屈折率が異なるが、有効断面積の等しい第1のコア11と第2のコア12が示される。この場合、第1のコア11と第2のコア12の直径は、例えば、10μmである。また、第1のコア11の断面積と第2のコアの屈折率は同じであるが、有効断面積が異なる場合は、第1のコア11と第2のコア12の直径は、例えば、それぞれ5〜7μm、8〜16μmである。
【0018】
また、空孔13の内径は、例えば、10μmである。空孔13の断面形状は、円に限られない。空孔13は、第1のコア11及び第2のコア12に接触しない。そのため、隣り合う第1のコア11の中心線の間隔をL1、間隔L1の方向の第1のコア11の断面の直径をA1とすると、間隔L1の方向の空孔13の直径D1は、D1<L1−A1の関係を満たす。また、隣り合う第2のコア12の中心線の間隔をL2、間隔L2の方向の第2のコア12の断面の直径をA2とすると、間隔L2の方向の空孔13の直径D2は、D2<L2−A2の関係を満たす。
【0019】
図1に示されるように、マルチコアファイバ1の一断面において、第1のコア11及び第2のコア12は、四角格子(正方形格子または長方形格子)の格子点上に配置される。また、第1のコア11と第2のコア12は、同一の光学特性を有するコアがなるべく離れるように、交互に配置されることが好ましい。
【0020】
また、隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分上に空孔13が位置する。具体的には、第1のコア11aと11cとを結ぶ線分上に空孔13aが位置し、第1のコア11bと11cとを結ぶ線分上に空孔13bが位置し、第1のコア11cと11dとを結ぶ線分上に空孔13cが位置し、第1のコア11cと11eとを結ぶ線分上に空孔13dが位置する。
【0021】
また、第2のコア12aと12bとを結ぶ線分上に空孔13aが位置し、第2のコア12aと12cとを結ぶ線分上に空孔13bが位置し、第2のコア12bと12dとを結ぶ線分上に空孔13cが位置し、第2のコア12cと12dとを結ぶ線分上に空孔13dが位置する。
【0022】
一般に、マルチコアファイバにおいて、同じ光学特性を有するコアが隣り合う場合、それらのコアの間にクロストークが発生する。また、異なる光学特性を有するコアが隣り合う場合、それらのコアの間におけるクロストークは小さい。
【0023】
本実施の形態に係るマルチコアファイバ1においては、異なる光学特性を有するコアが用いられるため、これらの間におけるクロストークが抑えられる。さらに、隣り合う同じ光学特性を有するコアを結ぶ線分上に空孔13が形成されるため、コア間の屈折率が大きく変化し、コア間に発生する電磁波が低減され、隣り合う同じ光学特性を有するコア間のクロストークも低減される。
【0024】
なお、全ての空孔13は、隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分上に位置する、すなわち隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分上に位置しない空孔13は存在しないことが好ましい。また、一対の隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線上にただ一つの空孔13が位置することが好ましい。さらに、空孔13は、隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分の中点上に位置することが好ましい。すなわち、図1に示されるように、第1のコア11及び第2のコア12が四角格子の格子点上に配置される場合には、空孔13がその四角格子の単位格子の中心に位置することが好ましい。
【0025】
これらの構造により、少ない数の空孔13により効果的にクロストークを低減することができる。空孔13の数が少なければ、マルチコアファイバ1の製造が容易になる。
【0026】
第1のコア11の屈折率及び第2のコア12の屈折率は、クラッド14の屈折率よりも高い。例えば、第1のコア11及び第2のコア12はゲルマニウム(Ge)等の不純物を添加した石英ガラスからなり、クラッド14は純粋な石英ガラスからなる。また、例えば、第1のコア11及び第2のコア12はシングルモード光ファイバ(SMF)からなる。
【0027】
また、マルチコアファイバ1におけるクラッド14の外周面と各コアの外周面との最短距離が、25μm以上、例えば25〜60μmの範囲内であることが好ましい。これにより、マルチコアファイバ1の曲げに対する耐性を高め、マイクロベンディング損失を抑えることができる。
【0028】
図2は、図1の線分II−IIに沿ったマルチコアファイバ1の断面図である。図2に示されるように、空孔13は、マルチコアファイバ1の長さ方向に沿って形成される。空孔13は、マルチコアファイバ1の長さ方向に沿って連続的に形成されることが好ましいが、完全に連続していなくてもよい。
【0029】
なお、第1のコア11と第2のコア12の本数および配置は図1に示したものに限られない。
【0030】
図3(a)、(b)は、第2及び第3の実施の形態のマルチコアファイバの断面図であり、各々、第1のコア11と第2のコア12が千鳥格子状に配置される。
【0031】
図3(a)に示されるマルチコアファイバ1は、第1のコア11(11f〜11h)、第2のコア12(12e〜12h)、これらのコアを覆うクラッド14、及びクラッド14中に形成された空孔13(13e〜13h)を含む。
【0032】
マルチコアファイバ1の一断面において、第1のコア11fと11gとを結ぶ線分上に空孔13eが位置し、第1のコア11gと11hとを結ぶ線分上に空孔13hが位置する。
【0033】
また、第2のコア12eと12fとを結ぶ線分上に空孔13eが位置し、第2のコア12eと12gとを結ぶ線分上に空孔13fが位置し、第2のコア12fと12hとを結ぶ線分上に空孔13gが位置し、第2のコア12gと12hとを結ぶ線分上に空孔13hが位置する。
【0034】
図3(b)に示されるマルチコアファイバ1は、第1のコア11(11i〜11l)、第2のコア12(12i〜12k)、これらのコアを覆うクラッド14、及びクラッド14中に形成された空孔13(13i〜13k)を含む。
【0035】
第1のコア11iと11jとを結ぶ線分上に空孔13iが位置し、第1のコア11jと11kとを結ぶ線分上に空孔13jが位置し、第1のコア11jと11lとを結ぶ線分上に空孔13kが位置する。
【0036】
また、第2のコア12iと12jとを結ぶ線分上に空孔13iが位置し、第2のコア12iと12kとを結ぶ線分上に空孔13jが位置し、第2のコア12jと12kとを結ぶ線分上に空孔13kが位置する。
【0037】
なお、第1のコア11iと11k、第1のコア11iと11l、第1のコア11kと11lの間の間隔は比較的大きいため、これらの間には空孔を形成していないが、クロストークをより低減するために形成してもよい。
【0038】
(実施の形態の効果)
本発明の第1〜第3の実施の形態によれば、異なる光学特性を有する第1のコア11及び第2のコア12が用いられるため、第1のコア11及び第2のコア12が隣り合う場合にこれらの間におけるクロストークが抑えられる。
【0039】
また、隣り合う同じ光学特性を有するコア(隣り合う2本の第1のコア11、又は隣り合う2本の第2のコア12)を結ぶ線分上に空孔13が形成されるため、これらのコア間に発生する電磁波が低減され、隣り合う同じ光学特性を有するコア間のクロストークも低減される。
【0040】
従来のマルチコアファイバよりも効果的にクロストークを低減することができるため、従来よりもコアの本数を増やすことができる。
【0041】
また、少ない数の空孔13によりクロストークを低減することができるため、マルチコアファイバ1の製造が容易になり、歩留まりを向上させることができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0043】
1 マルチコアファイバ
11a〜11l 第1のコア
12a〜12k 第2のコア
13a〜13k 空孔
14 クラッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光学特性を有する複数の第1のコアと、
前記第1の光学特性と異なる第2の光学特性を有する複数の第2のコアと、
空孔を形成され、前記複数の第1のコア及び前記複数の第2のコアを覆うクラッドを含み、
前記空孔は、前記複数の第1のコア及び前記複数の第2のコアのうち、隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分上に位置する、
マルチコアファイバ。
【請求項2】
前記空孔は、その全てが前記隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分上に位置する、
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項3】
一対の前記隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分上に一つの前記空孔が位置する、
請求項1又は2に記載のマルチコアファイバ。
【請求項4】
前記空孔は、前記隣り合う同一の光学特性を有するコアを結ぶ線分の中点上に位置する、
請求項1から3のいずれか1つに記載のマルチコアファイバ。
【請求項5】
前記マルチコアファイバの一断面において、前記複数の第1のコア及び前記複数の第2のコアは、四角格子状に交互に配置され、前記空孔は、前記四角格子の単位格子の中心に位置する、
請求項1から4のいずれか1つに記載のマルチコアファイバ。
【請求項6】
前記第1のコアと前記第2のコアの屈折率と有効断面積の一方又は両方が異なるために前記第1の光学特性と前記第2の光学特性が異なる、
請求項1から5のいずれか1つに記載のマルチコアファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−215695(P2012−215695A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80890(P2011−80890)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバ技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】