マルチセル無線通信システム及び通信方法
【課題】 耐マルチパス伝搬特性を有する変調方式を用いた無線通信システムにおいて、マルチセル環境でも同一チャネル間干渉を防止し、良好な通信を行うこと。
【解決手段】 複数のアクセスポイント32を設けた基地局30と、無線端末42とで構成されたマルチセル無線通信システムにおいて、基地局30に同一チャネルの変調信号を生成する変調装置36、変調信号を各アクセスポイントに向けて分配する分配回路38、各変調信号に対して、移動通信環境で発生するのと等価なマルチパス特性に相当する遅延信号・位相回転・振幅変動を擬似的に付加する疑似マルチパス回路40を設ける。これによって隣接セルの境界領域41における2波干渉を防止する。
【解決手段】 複数のアクセスポイント32を設けた基地局30と、無線端末42とで構成されたマルチセル無線通信システムにおいて、基地局30に同一チャネルの変調信号を生成する変調装置36、変調信号を各アクセスポイントに向けて分配する分配回路38、各変調信号に対して、移動通信環境で発生するのと等価なマルチパス特性に相当する遅延信号・位相回転・振幅変動を擬似的に付加する疑似マルチパス回路40を設ける。これによって隣接セルの境界領域41における2波干渉を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチセル無線通信システムに関し、特に耐マルチパス伝搬特性を有する変調方式を用いた時に、マルチセル環境でも同一チャネル間干渉を防止し、良好な通信を行う技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル地上波放送が開始されたが、ここではマルチパス伝搬による信号劣化に耐性を持つ、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式が採用されている。また、ベースバンド処理回路で用いる誤り訂正符号として、リードソロモン符号化を施した信号に、更に畳み込み符号化を行う連接符号を採用すると同時に、周波数インターリーブと時間インターリーブを併用することで強力な誤り訂正能力を実現している。
【0003】
このような誤り訂正効果を高める信号処理の工夫により、マルチパスなどによる劣悪な信号劣化が発生した場合でも、高品質な信号受信が可能なシステムとなっている。また、このような多くの工夫によって単一周波数ネットワークが実現している。単一周波数ネットワークは、複数の基地局が全く同一チャネルの信号を同一周波数で送信し、連続的にエリアをカバーしていく形態で放送サービスを行った場合でも、DU比の低い干渉領域においてさえ、良好なテレビ映像受信が出来るシステムである。
【0004】
基地局側に複雑なシステムを準備しやすい放送サービスでは大きな障害となりにくいが、このようにベースバンド処理回路における符号化やインターリーブに依存した方法では、通信装置の複雑化のみならず、信号の生成に大きな時間遅延を伴うため、高速通信への適用には不向きである。
【0005】
例えば、高速通信として近年ミリ波帯(30GHz帯以上の電波)を用いた超高速無線アクセスシステムが検討されている。このようなミリ波帯のシステムは、その波長の短さから伝搬による信号減衰が大きい。このため、セルラー型の通信形態を構築しようとした場合、1つのセルサイズを数mから数十mと非常に狭くしなければならない。
これを拡大するためには、連続的に基地局やアクセスポイントを設置してマルチセル化を行えばよい。しかしながら、セルのサイズが非常に狭いため、現在の携帯電話システムに見られる従来のセルラーシステムに従ったマルチセル化の手法では、移動時に頻繁にハンドオーバが必要となり、信号処理が煩雑となる問題がある。
【0006】
ミリ波帯に限らず、マイクロ波帯を用いた無線アクセスシステムであっても、例えばITS通信における路車間通信などでは、通常1つのセルサイズが比較的狭く限られたピコセルやストリートセルの形態になる。その上で、高速移動通信が要求されるため、上述したのと同様に移動時におけるハンドオーバのための信号処理問題が生じる。
【0007】
その他、現在普及の進む無線LANのような無線アクセスシステムの構築環境であっても、必ずしも高いキャパシティを求める場合だけでなく、より広範囲にわたる無線アクセスシステムを簡易に構築したい場合がある。このようなときにも、従来のマルチセル化の手法では信号処理の問題は同様である。
【0008】
以上説明したような問題から、ハンドオーバにおける信号処理をせず、極めて低いDU比環境下においてでも良好な同一チャネル配信・アクセスが可能なマルチセル無線通信システムの需要は高くなると予想される。
マルチセル化には、基地局から、もしくは基地局への信号を同軸線路や光ファイバにより分配・合成することによって、同一の無線周波数・無線チャネルを送受信することが可能なアクセスポイントを複数設置する。そして、基地局にアクセスする無線端末から見ると、これら複数のアクセスポイントがカバーするエリア全体が、実質的に1つの無線ゾーンと見なせるようなシステムが実現できる。
【0009】
このようなシステムで耐マルチパス伝搬特性を持たせるために、OFDM方式やそれに準じる方式、例えばCDMA方式、それらを組み合わせたマルチキャリアCDMA方式などが好適である。
ところが、従来のマルチセル無線通信システムでは、各アクセスポイントがカバーする隣接セルの境界領域では、同一チャネル間干渉が発生し、信号劣化を生じる問題があった。この同一チャネル間干渉の問題はマイクロ波帯を用いる移動通信環境においては、伝搬特性が時々刻々と変化することから劣化が平滑化され、これらの劣化は誤り訂正符号などによって改善されることから必ずしも問題にならないが、より高周波な例えばミリ波帯のような周波数を使用する場合には、伝搬特性は静的なものとなるため時に深刻な問題を生じる。
【0010】
本発明の属する技術分野において、公知の技術としては次の3点の文献がある。
まず特許文献1は、マルチパス伝搬環境における符号分割多元接続信号の受信方法及び符号分割多元接続システムにおける携帯電話機・ラップトップコンピュータ等の移動受信装置に関する。
該文献によると、多元接続干渉を最小化するために、端末装置が複数の基地局又は送信機からの信号を受信する際に、各基地局からの信号が基地局毎に固有の議事ランダム符号によって符号化する。そして、端末装置は複数のアンテナ素子とそれぞれ基地局に対応する複数のチャネル推定器が組み込まれた信号処理回路と、行列算出器とを備えている。
【0011】
【特許文献1】特開2003-218836号公報
【0012】
このような手法によれば、確かに干渉を抑制することはできるが、同一チャネル・アクセスを実現するものではなく、特に不特定の基地局と接続できないなど、本質的な解決にはならない。また、端末装置において基地局の切り換えが必要であり、上記ハンドオーバの信号処理問題と同様の問題を生じる。
【0013】
特許文献2では、送信側と受信側との間で所定長のシンボルと当該シンボル間に配置された所定長のガードタイムとを含む直行周波数分割多重信号を用いてデータを伝送する方法が開示されている。
また、特許文献3では、直交周波数分割多重デジタル変調方式を使用する階層化変調方式及び送受信装置に関する発明が開示されている。該文献では、伝送シンボル毎に各階層の送信データに対する電力及び変調方式を巡回的に切り換えてOFDM信号を生成する方法を用いている。
【0014】
【特許文献2】特開平8-321820号公報
【特許文献3】特開平7-321765号公報
【0015】
上記いずれの方法も、OFDM方式等の隣接セル境界領域における、DU比の低い同一チャネル2波干渉のような状況下で生じるフラットフェージングや、広信号帯域にわたる受信CN比の劣化を簡便なシステムで防ぐことのできる技術ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、耐マルチパス伝搬特性を有する変調方式を用いた無線通信システムにおいて、マルチセル環境でも同一チャネル間干渉を防止し、良好な通信を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のようなマルチセル無線通信システムの構成を提供する。
ここで、本発明のマルチセル無線通信システムは、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、複数の基地局と少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うものである。
請求項1に記載の発明は、該システムにおける全部又は一部の基地局が、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、該信号を送信する送信装置とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、上記の少なくとも2つ以上の基地局において、互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路を備えるものであり、隣接セル領域において双方の基地局から全く別のマルチパス信号が入力するようにしている。
なお、相関が十分に低いとは、マルチパス伝搬環境で発生する遅延時間τ・位相θ・振幅Aの変動量の統計的性質が独立か十分に異なっていることを意味する。これを振幅を例に数式で表現すると、E[(A1-mA1)(A2-mA2)]=0もしくは≦(所定の閾値)で表すことができる。ここでE[]はアンサンブル平均であり、A1、mA1は#1の振幅と振幅の平均値である。
【0019】
請求項3に記載の発明は、基地局及び無線端末間の通信に、ミリ波帯以下の短
波長の電波を用いたことを特徴とする。
【0020】
本発明は、請求項4に記載のマルチセル無線通信システムにおける通信方法を提供することもできる。
すなわち、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、複数の基地局と少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、全部又は一部の基地局が、送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成し、該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成し、該疑似マルチパス信号を送信することを特徴とする。
【0021】
また、請求項5に記載の発明では、少なくとも2つ以上の基地局において、互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似信号を付加することを特徴としたマルチセル無線通信システムにおける通信方法を提供することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、上記マルチセル無線通信システムにおける基地局を提供するものである。すなわち、上記マルチセル無線通信システムで用いる基地局が、送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、該疑似マルチパス信号を送信する送信装置とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の基地局は、疑似マルチパス回路が、他の基地局の疑似マルチパス回路のマルチパス伝搬特性と互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有することを特徴とする。
【0024】
さらに本発明に係るマルチセル無線通信システムは、基地局の構成を上記と異なる構成にした次のような態様でもよい。
すなわち、請求項8に記載の発明は、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムである。
【0025】
該システムにおいて、基地局が、送信信号から特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、該変調信号を各アクセスポイントに向けて分配する分配回路と、該分配回路通過後に、各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、基地局から各アクセスポイントに該疑似マルチパス信号を伝送する伝送線路と、アクセスポイントにおいて該疑似マルチパス信号を送信する送信装置とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0026】
あるいは無線端末から基地局に向けた上り方向の通信の場合には、請求項9の構成とすることもできる。すなわち、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムである。
【0027】
該システムにおいて、基地局が、該無線端末において生成された変調信号を、各アクセスポイントにおいて受信する受信装置と、各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送する伝送線路と、各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、各疑似マルチパス信号を合成する合成回路と、該合成された信号を復調する復調装置とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0028】
ここで、請求項10の発明は、請求項8においては分配回路を通過後に設けられている、請求項9においては合成回路の前に設けられている、それぞれ複数の疑似マルチパス回路が互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路であってもよい。
さらに、請求項11に記載の発明は、基地局及び無線端末間の通信に、ミリ波帯以下の短波長の電波を用いるマルチセル無線通信システムを提供するものである。
【0029】
請求項12に記載の発明は、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法である。
【0030】
本発明は上記の通信方法において、送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成し、該変調信号を各アクセスポイントに向けて分配した後に、基地局において、又は伝送線路を介して伝送したアクセスポイントにおいて、各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成し、伝送線路で基地局と接続された各アクセスポイントから該疑似マルチパス信号を送信することを特徴とする。
【0031】
請求項13に記載した発明は、上記のマルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、該無線端末において生成された、送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を各アクセスポイントにおいて受信し、各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送し、各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成した後に、各疑似マルチパス信号を合成し、該合成された信号を復調するものである。
【0032】
本通信方法でも、請求項14に記載の通り、前記複数の疑似マルチパス回路が、互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路としてもよい。
【0033】
請求項15に記載の発明は、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムで用いる基地局を提供する。
すなわち、該基地局は、送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、該変調信号を各アクセスポイントに分配する分配回路と、該分配回路通過後に、各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、該疑似マルチパス信号を送信する送信装置とを少なくとも備える。
【0034】
請求項16に記載の発明は、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムで用いる基地局を提供する。
そして、該基地局が、該無線端末において生成された変調信号を各アクセスポイントにおいて受信する受信装置と、各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送する伝送線路と、各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、各疑似マルチパス信号を合成する合成回路と、該合成された信号を復調する復調装置とを少なくとも備える。
【0035】
上記請求項15又は16の構成においても、前記複数の疑似マルチパス回路が、互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路とすることができる。
【0036】
請求項18に記載の発明は、上記の請求項1ないし3、8ないし11のいずれかに記載したマルチセル無線通信システムにおいて、送信側の基地局又は無線端末における送信装置が、局部発振信号を用いて送信信号を中間周波数帯から無線周波数帯に変換し、該局部発振信号と該無線周波数帯変調信号とを同時に無線送信する一方、受信側の基地局又は無線端末における受信装置が、該両信号の乗積成分を生成することで中間周波数帯に変換する自己ヘテロダイン方式の無線通信を行う構成を提供するものである。
【0037】
請求項19に記載の発明は、上記の請求項4、5、12ないし14のいずれかに記載したマルチセル無線通信システムにおける通信方法において、送信側の基地局又は無線端末における送信装置が、局部発振信号を用いて送信信号を中間周波数帯から無線周波数帯に変換し、該局部発振信号と該無線周波数帯変調信号とを同時に無線送信する一方、受信側の基地局又は無線端末における受信装置が、該両信号の乗積成分を生成することで中間周波数帯に変換する自己ヘテロダイン方式の無線通信を行う構成を提供するものである。
【0038】
請求項20に記載の発明は、請求項8に記載したマルチセル無線通信システムの構成において、送信側の基地局に、中間周波数帯信号を発生する前記変調装置と共に、異なる波長からなる第1および第2のレーザ光源を備えて、該中間周波数帯信号で該第1の光信号をキャリア非抑圧型の単側波帯(SSB)光変調信号、もしくは両側波帯(DSB)光変調信号に変調する変調器と、該光変調信号に対して所望の無線周波数帯だけ周波数の離れた無変調光源である該第2の光信号と該光変調信号とを混合して光送信する光混合器とを備える。
さらに、前記伝送線路が、基地局から送信された光信号を伝送する光ファイバ伝送路であって、前記アクセスポイントには、該光ファイバ伝送路より伝送された光信号を光電気変換して無変調キャリアと無線変調信号を生成し、アンテナより放射する送信装置を備えると共に、前記無線端末において、該アクセスポイントより送信した無変調キャリアと無線変調信号とを受信し、これら2信号の乗積成分を生成することで、中間周波数帯変換信号を取り出して信号を復調する構成を提供する。
【0039】
請求項21に記載の発明は、請求項12に記載したマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、基地局とアクセスポイントとを接続する前記伝送線路に光ファイバ伝送路を用いる。そして、基地局では、第1および第2のレーザ光源によって、異なる波長からなる第1および第2の光信号を発生し、前記疑似マルチパス信号で該第1の光信号をキャリア非抑圧型の単側波帯(SSB)光変調信号、もしくは両側波帯(DSB)光変調信号に変調し、該光変調信号に対して所望の無線周波数帯だけ周波数の離れた無変調光源である前記第2の光信号と前記光変調信号とを混合した光信号を基地局から光ファイバ伝送路により伝送する。なお、前記第2の光信号は第1のレーザ光源出力を光周波数シフタを通過させて所望の無線周波数帯だけ周波数シフタさせて得ることももちろん可能である。
また、該光ファイバ伝送路より伝送された光信号をアクセスポイントで受信した後、光電気変換して無変調キャリアと無線変調信号を生成し、アクセスポイントのアンテナより放射し、リモートアンテナ局より送信された無変調キャリアと無線変調信号を無線端末により受信し、これら2信号の乗積成分を生成することで、中間周波数帯変換信号を取り出して信号を復調することを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、マルチセル無線通信システムにおいてハンドオーバの信号処理問題を生じない同一チャネルの変調信号を用いる。そして、耐マルチパス伝搬性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用いながら、隣接セル境界領域における、DU比の低い同一チャネル2波干渉のような状況下で生じるフラットフェージングや、広信号帯域にわたる受信CN比の劣化を防ぐことができる。
【0041】
そして、本発明は疑似マルチパス回路を基地局・アクセスポイントに設けるという簡便な手段により、上記の効果を奏することができる。
すなわち、実際には2つの基地局・アクセスポイントからの信号のみが干渉している領域でも、より多波のマルチパス環境で通信を行っているのと等価である環境を創出し、静的なフェージングもしくはフラットフェージングに対するOFDM変調方式等の弱点を補いながら、その特長である多波マルチパス環境に強い特性を活かした良好な通信を実現する。
これにより、連接符号など強力な誤り訂正符号化などを用いる必要がなく、信号処理回路への負担や処理遅延を発生させることがない。
【0042】
また、請求項18及び19に開示したように、本件出願人が、特許文献4〜8に開示した自己ヘテロダイン方式の通信方式と本願技術を組み合わせることにより、通常極めて高い周波数安定性が求められるOFDM変調方式等の信号を、非常に低コストかつ簡便な構成で取り扱うことができる。特に、ミリ波帯以上の高周波数において、本構成は重要な構成である。
【0043】
さらに本発明のようなマルチセル環境でOFDM変調方式等をベースにした同一チャネル通信を行おうとした場合、遠隔にある全ての基地局やアクセスポイントが厳密に同一周波数の信号を送信しなければならない。ところが、ミリ波帯等の高周波数帯でこれを実現することは周波数の安定性の観点から極めて困難であったり、通信システム自体が非常に高価になる問題がある。
【0044】
これに対して、自己ヘテロダイン方式を本発明のシステムに適用することにより、装置構成が容易なマイクロ波等の段階で同一の周波数を得ることさえできれば、ミリ波帯等においても周波数の安定性、精度を確保することができる。従って、自己ヘテロダイン方式を本願マルチセル無線通信システムに適用することは相乗的な効果を有するのである。
さらに自己ヘテロダイン方式を採用することで、超高速移動通信が容易になる特長がある。すなわち、このような構成において自己ヘテロダイン方式を採用することは、その原理上、ドップラー効果が大きく低減することができ、安定した通信が実現できる。
【0045】
【特許文献4】特開2001−53640号公報
【特許文献5】特開2002−9655号公報
【特許文献6】特開2003−179516号公報
【特許文献7】特開2003−264470号公報
【特許文献8】特開2003−298442号公報
【0046】
請求項20及び21に開示したように、本件出願人が、特許文献9で開示した光ファイバリンクと融合された自己ヘテロダイン型のアクセスポイントを用いる構成も好適である。
すなわち、各アクセスポイントにおける下りリンク信号生成の原理に特許文献9の技術を用いることで、自己ヘテロダイン方式の特長であるアクセスポイントの低コスト化、通信の安定化を図ることができると共に、信号発生に光のビートを利用するため、ミリ波帯等の高い周波数域の信号を容易に生成することができる。
【0047】
【特許文献9】特開2004−80409号公報
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。本発明では、基地局及びアクセスポイントに疑似マルチパス回路を設けることを大きな特徴とするが、基地局毎に固有の疑似マルチパス回路を設ける第1の実施形態と共に、1つの基地局から信号を伝送して複数のアクセスポイントで通信する第2の実施形態を提供する。さらに、自己ヘテロダイン方式を第1の実施形態又は第2の実施形態に採用する第3の実施形態、光・電気融合システムを第2の実施形態に採用した第4の実施形態を順次説述する。
【0049】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムの全体構成図である。本発明ではミリ波帯等の高周波数帯域を用いた無線通信システムにおいて、複数の基地局(10)を隣接して配置したマルチセル環境を提供する。特に基地局間のハンドオーバが不要な同一チャネル通信を行う。
【0050】
変調方式としては、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式を用いる。本方式は、近年実用化されている単方向通信システム(SFNなどと呼ばれる放送システムなど)において、マルチパス伝搬環境に耐性を有する方式として特に利用が進んでいる。
OFDM変調方式は、高速なデータ信号を低速で狭帯域なデータ信号に変換し周波数軸上で並列に伝送するFDM方式に加えて、直交する搬送波を交互に並べて使うことで、干渉をなくしている。複数の搬送波を一部重なりあいながらも互いに干渉することなく密に並べることができることから、狭い周波数の範囲を効率的に利用した広帯域伝送を実現し、周波数の利用効率が高まる。
【0051】
そして、各基地局(10)からは同一チャネル信号が送信されるが、このとき移動可能なデジタル放送受信端末(11)は図示のように2つの基地局の隣接領域(12)に位置することがある。
基地局(10)から送信されるOFDM信号スペクトルは図3のように非常に多数のサブキャリアが周波数軸上に密に直交周波数多重されたものであるが、隣接領域(12)では2つの基地局(10)から送信された信号が干渉する。マルチパス伝搬環境に強いOFDM変調方式等でも、このような同遅延時刻で到達する2波干渉、とりわけ時間的伝搬特性の変動を伴わないものには耐性がなく、フラットフェージングと呼ばれる信号強度の低下や、受信CN比の劣化が生じる。
例えば、図4に示すスペクトルのように、広い周波数領域に渡って大きな受信CN比の落ち込みが常に生じることになる。
【0052】
一方、OFDM変調方式では、図5のような通常の移動通信環境で想定されているような多波マルチパス伝搬環境での干渉には耐性があり、良好な通信を行える特長がある。そこで本発明は、基地局において疑似的なマルチパス伝搬環境と等価な信号を予め送信し、受信端末(11)において、実際には2波干渉であっても、多波干渉と同視できる受信信号となるような構成を創出した。
基地局の構成を図2に示す。
【0053】
すなわち、基地局としてデジタル放送送信設備(13)を設ける。該設備(13)は基本的に従来から用いられている公知の要素を備えるので、詳細は省略するが、大きくはOFDM変調信号発生器(14)と増幅回路(16)、信号を創出するアンテナ(17)から構成される。
これに加えて、本発明ではOFDM変調信号発生器(14)の後段に、疑似マルチパス回路(15)を配設する。
【0054】
図6には疑似マルチパス回路の構成を示す。疑似マルチパス回路(15)は、主要な構成として分配回路と、遅延線路と、振幅制御回路と、合成回路とを有する。
そして、入力した信号を分配回路(20)で例えば3線路に分配し、各線路毎に遅延線路(21a〜c)を設けて信号を遅延させる。さらに、可変アッテネータ(22)により振幅制御を行い、それらを合成回路(23)で再び合成して出力する。
【0055】
このような疑似マルチパス回路(15)によると、図6の入力側に示した入力信号から、複数の遅延線路及び振幅制御回路により、出力側に示すようなマルチパス伝搬環境に類似した疑似マルチパス信号を生成することができる。
ここで、分配回路でより多くの分配を行い、それぞれに異なる遅延パスを与えることで効果を高めることが期待できるが、構成が複雑になるため、好ましくは3分岐以上で適宜設定することができる。
振幅制御に関しても、固定値のアッテネータでも良いが、上記のように可変式のものが好ましく、例えば電圧制御型の振幅変調器として制御信号にレイリー分布で時間変動するような信号を用いることで、さらにマルチパス伝搬環境と近似した信号波を生成することもできる。
【0056】
各基地局(10)で用いる疑似マルチパス回路(15)による疑似マルチパス伝搬特性は、互いに全く相関がないか、十分に相関が低いことが望ましい。これは、擬似的にマルチパス化された信号であっても、相関の高いこれら2波の干渉では図4と同様の深いシグナルフェージングを伴う干渉が発生し、信号劣化の問題が同様に生じるからである。
従って、特に隣接した基地局間では、相関のない疑似マルチパス伝搬特性を付与することが望まれる。そのためには、上記疑似マルチパス回路(15)における遅延線路及び振幅制御回路の特性値を変更すれば良く、いずれか又は双方の値を固有のものとすれば良い。近接した基地局でなければ2波干渉の問題は生じないので、いくつかのパターンにより疑似マルチパス回路を構成し、それらを分散させて配置してもよい。
【0057】
なお付言すると、上記のように疑似マルチパス伝搬環境を構成すると、1波毎の受信レベルが低下してBER(ビット誤り率)が悪化するが、これは通常のマルチパス伝搬環境と同様であり、本発明で用いるOFDM変調方式等ではこのような障害には強い耐性を示すため、通信上の支障とはならない。むしろ、2波干渉によるフラットフェージングなどの深刻な問題を回避できることから、本発明は有効に作用するのである。
【0058】
以上、第1の実施形態ではデジタル放送システムとして説述したが、必ずしも基地局から無線端末までの下り単方向通信に限らず、上り方向の通信が可能な双方向無線通信システムで用いてもよい。例えば、無線LANシステムに用いることもできる。
【0059】
(第2実施例)
本発明の第2の実施形態に係る構成図を図7に示す。本無線通信システムでは、基地局(30)と、伝送線路(31)で接続された複数のアクセスポイント(32)から構成される。伝送線路(31)は同軸線路又は光ファイバ回線で構成する。図7の構成では伝送線路(31)にそれぞれ上り回線(33)と下り回線(34)を設けて、双方向な送受信が可能となっているが、本発明の実施にはこのいずれかだけでもよい。
【0060】
基地局(30)と複数のアクセスポイント(32)でマルチセル環境を構成する無線通信システムは公知であり、基地局(30)の構成も周知であるから、一般的な構成については簡略化して説明する。基地局(30)には送受信の信号制御を行うアクセス制御装置(35)と、送信用のOFDM信号変調装置(36)を、受信用にはOFDM信号復調装置(37)を備えている。通常、下りは該変調装置(36)から分配回路(38)で分配して伝送線路でアクセスポイントに、上りはアクセスポイントから伝送線路で基地局に接続されて合成回路(39)で合成されて復調装置(37)に入力する。
【0061】
本発明ではまず下り回線では、変調装置(36)から分配回路(38)を経た後、新設した複数の疑似マルチパス回路(40)を通過して疑似マルチパス信号となる。これを各アクセスポイント(32)に伝送して送信する。疑似マルチパス回路(40)は図6に示す構成と同様である。
これにより、上記第1の実施形態と同様にアクセスポイント間の境界領域(41)に移動端末(42)が位置する場合でも、良好な通信を行うことができる。
【0062】
ここで、上り回線についても下りと同様の問題が生じる。すなわち、境界領域(41)の移動端末(42)から隣接する2つのアクセスポイントで信号を受信し、合成回路で合成すると、2波干渉が生じる。
そこで、本発明では、上り回線にも疑似マルチパス回路(43)を設けて、各アクセスポイントからの入力信号からマルチパス伝搬環境と等価なマルチパス信号を生成し、それを合成回路(39)で合成する。
これにより、合成後の信号は多波干渉と同視される信号となり、OFDM信号復調装置(37)により良好な復調が行える。
【0063】
本実施形態でも、隣接するアクセスポイントの疑似マルチパス回路の与える特性間で相関がある場合には効果が期待できず、互いに無相関もしくは十分に相関の低いマルチパス伝搬環境の特性を与えることが望ましい。
また、図7では各疑似マルチパス回路(40)(43)は基地局(30)内に設けたが、これらはアクセスポイント(32)内に配設してもよい。さらに上り回線(33)と下り回線(34)で共用できる疑似マルチパス回路を設けてもよい。
【0064】
(第3実施例)
本発明の第3の実施形態は、上記第1又は第2の実施形態における基地局あるいはアクセスポイントの無線周波数送受信装置に、本件出願人が提案している自己ヘテロダイン方式を用いるものである。
自己ヘテロダイン方式の説明図を図8に示す。例えば図7のアクセスポイントに設ける場合、伝送線路(31)から入力した疑似マルチパス信号(IF帯変調信号)は、局部発振器(51)より得た局部発振信号が入力されているミキサ(52)に入力される。
【0065】
ミキサ(52)において、該IF帯変調信号と局部発振信号を乗積し、その出力から、帯域濾波器(53)によって不要波成分を除去する。これにより無線周波数(RF)帯変調信号を得るが、これに該周波数変換で使用した局部発振信号の電力の一部が足し合わされた後、増幅器(54)によって信号が増幅されて送信アンテナ(55)から送信される。
本構成により、図中のスペクトルのようにRF帯変調信号(56)に、これとコヒーレントな位相雑音特性を持つ局部発振信号成分(57)が合わさった信号が送信される。
【0066】
一方、無線端末では、受信アンテナ(58)、増幅器(59)、帯域濾波器(60)、ミキサ(61)が設けられており、RF帯変調信号(56)と重畳された局部発振信号成分(無変調キャリア)(57)の乗積成分を生成することで、所望のIF帯変調信号にダウンコンバートすることができる。
【0067】
以上の構成によると、アクセスポイントにおいて、自己ヘテロダイン方式で例えばミリ波帯等に周波数変換し、無線端末に向けて送信することができる。また図8の送信側・受信側を入れ替えることにより、上りについても自己ヘテロダイン方式の通信システムが構築できる。これらについては、上記特許文献4〜8に詳述している。
【0068】
ここで、自己ヘテロダイン方式を用いた場合に、無変調キャリア成分について上記境界領域での信号干渉が生じるため、局部発振信号(57)については隣接アクセスポイント間で異なる周波数の発振器を用いることが好ましい。あるいは、周波数がホッピングしている、もしくは位相変調などによって周波数拡散された発振器を用いることもできる。
【0069】
特許文献10には、出願人により自己ヘテロダイン方式を用いたマルチセル化技術が開示されている。自己ヘテロダイン方式によると、該特許文献でも説述している通り全ての基地局が厳密な同一周波数を送信する必要がないため、ミリ波帯等の高周波数帯における通信に好適である。
しかし、依然として中間周波数帯等における同一チャネル干渉が生じることから、本願による疑似マルチパス回路を用いる構成は極めて高い効果を有する。
【0070】
【特許文献10】国際特許公開番号WO 2004/077697
【0071】
(第4実施例)
上記第2実施例に、本件出願人が特許文献9で開示した技術内容を適用する第4の実施形態を示す。図9は本システムの構成図である。本発明では基地局(60)及びアクセスポイント(61)を以下に説述するように構成し、伝送路(62)には光ファイバ線路を用いる。
基地局(60)の構成は実施例2と同様の構成部品については同一の符号で図示し、機能の説明は省略する。
【0072】
まず、特許文献9に開示された構成と同一の要素について説述する。下り方向について、基地局(60)の疑似マルチパス回路(40)の直後段に第1及び第2のレーザ光源(63)(64)を配設し、各アクセスポイント毎に設けられる光外部変調器(65)により信号光に変調する。
すなわち、発振周波数f01で単一モード発振するレーザ光源(63)と、前記レーザ光源(63)の発振周波数f01と所望の間隔となる無線周波数fRFに対応している発振周波数f02を発振するレーザ光源(64)と、光外部変調器(65)、光カプラ(66)から構成される。
【0073】
そして、レーザ光源(63)の出力は、キャリア非抑圧型の光単側波帯(光SSB)変調器(65)に入力される。また、当該変調器(65)には、疑似マルチパス回路(40)からの疑似マルチパス信号が変調信号として入力される。この結果、図11(a)に示すような、光周波数軸上で光キャリアがSSB変調された信号光(f01+fIF)を得る。
【0074】
なお、本実施例では、キャリア非抑圧型の光単側帯波(光SSB)変調器(65)に中間周波数帯信号を入力することで、キャリア残留型光SSB信号を得ているが、光変調器(65)としてキャリア非抑圧型の光両側帯波(光DSB)変調器を用いて、キャリア残留型光DSB信号を得ても、同様の効果が得られる。また、キャリア残留型光DSB信号を得る方法としても図9のように光源の外部に変調器を設けるのではなく、直接中間周波数帯信号で光源を変調させることも可能である。
【0075】
信号光(f01+fIF)と、発振周波数f01とは異なる発振周波数f02で、単一モード発振するレーザ光源(64)の出力光が光カプラ(66)に入力されて混合される。
光混合器(66)の出力は、光ファイバ伝送線路(62)によってアクセスポイント(61)まで伝送される。この時のアクセスポイント(61)で受信された光信号スペクトラムは、図11(b)に示されているように、発振周波数f01と発振周波数f02との間隔は、所望のRF周波数fRFに対応している。なお、発振周波数f02で単一モード発振するレーザ光源は、発振周波数f01で単一モード発振するレーザ光源(63)の出力を分岐して、これを光周波数シフタに通過させることで所望のRF周波数fRFだけ周波数シフトした光源を得て、代用することももちろん可能である。
【0076】
図10に示すようにアクセスポイント(61)では、光電気変換素子(70)で受信信号光を検波し、無変調キャリアと無線変調信号を生成した後、増幅器によって増幅し、アンテナ(71)によって空間に放射する。
【0077】
ところで、本発明の構成では、レーザ光源(63)を搬送波残留型の光SSB変調器もしくはDSB変調器(65)に入力する前に、制御回路(66)で制御される光位相外部変調器もしくは光周波数シフタ(67)を配設して、無線周波数を拡散もしくは周波数シフトする構成としている。
これは、無線周波数帯域における干渉を避けるための構成であり、本願構成で新たに開発した。なお、制御回路(66)により隣接アクセスポイント間で十分に干渉が抑圧できる拡散符号を与える、もしくは完全に周波数分割されるように制御している。
【0078】
アクセスポイント(61)のアンテナ(71)から放射された信号は、無線端末のアンテナによって受信される。自己ヘテロダイン方式により、無線端末によって受信された無変調キャリアと無線変調信号成分は、増幅器で増幅された後、帯域濾波器によって不要成分が除去される。その後、無変調キャリアと無線変調信号成分は、二乗検波器で検波され、これら2成分の乗積成分が生成されることで、IF帯信号が再生される。
【0079】
上りについては、無線端末は上述した自己ヘテロダイン方式に従ってRF帯信号を送出し、これを図10のアクセスポイント(61)の受信アンテナ(72)にて受信し、レシーバ(73)でIF帯に周波数変換する。さらに電気光変換素子(74)が光変換を行って、上り光ファイバ線路(62)で送出する。
基地局(60)の上り側には光電気変換素子(75)が各疑似マルチパス回路(43)直前に配設されて、電気信号に復元した後、実施例2で説述した疑似マルチパス回路に至る。
【0080】
本実施例において、上り・下りに別々の光ファイバ線路を示しているが、例えば波長多重技術を適用することにより、同一光ファイバ線路でネットワークを構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明第1実施例の構成図である。
【図2】本発明第1実施例の基地局の構成図である。
【図3】OFDM変調方式の信号スペクトルの説明図である。
【図4】2波干渉時の信号スペクトルの説明図である。
【図5】多波干渉時の信号スペクトルの説明図である。
【図6】本発明による疑似マルチパス回路の構成図である。
【図7】本発明第2実施例の構成図である。
【図8】本発明第3実施例に係る自己ヘテロダイン方式の説明図である。
【図9】本発明第4実施例の構成図である。
【図10】本発明第4実施例のアクセスポイントの構成図である。
【図11】本発明第4実施例の周波数変換を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0082】
30 基地局
31 伝送線路
32 アクセスポイント
33 上り回線
34 下り回線
35 アクセス制御装置
36 OFDM信号変調装置
37 OFDM信号復調装置
38 分配回路
39 合成回路
40 疑似マルチパス回路
41 境界領域
42 無線端末
43 疑似マルチパス回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチセル無線通信システムに関し、特に耐マルチパス伝搬特性を有する変調方式を用いた時に、マルチセル環境でも同一チャネル間干渉を防止し、良好な通信を行う技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル地上波放送が開始されたが、ここではマルチパス伝搬による信号劣化に耐性を持つ、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式が採用されている。また、ベースバンド処理回路で用いる誤り訂正符号として、リードソロモン符号化を施した信号に、更に畳み込み符号化を行う連接符号を採用すると同時に、周波数インターリーブと時間インターリーブを併用することで強力な誤り訂正能力を実現している。
【0003】
このような誤り訂正効果を高める信号処理の工夫により、マルチパスなどによる劣悪な信号劣化が発生した場合でも、高品質な信号受信が可能なシステムとなっている。また、このような多くの工夫によって単一周波数ネットワークが実現している。単一周波数ネットワークは、複数の基地局が全く同一チャネルの信号を同一周波数で送信し、連続的にエリアをカバーしていく形態で放送サービスを行った場合でも、DU比の低い干渉領域においてさえ、良好なテレビ映像受信が出来るシステムである。
【0004】
基地局側に複雑なシステムを準備しやすい放送サービスでは大きな障害となりにくいが、このようにベースバンド処理回路における符号化やインターリーブに依存した方法では、通信装置の複雑化のみならず、信号の生成に大きな時間遅延を伴うため、高速通信への適用には不向きである。
【0005】
例えば、高速通信として近年ミリ波帯(30GHz帯以上の電波)を用いた超高速無線アクセスシステムが検討されている。このようなミリ波帯のシステムは、その波長の短さから伝搬による信号減衰が大きい。このため、セルラー型の通信形態を構築しようとした場合、1つのセルサイズを数mから数十mと非常に狭くしなければならない。
これを拡大するためには、連続的に基地局やアクセスポイントを設置してマルチセル化を行えばよい。しかしながら、セルのサイズが非常に狭いため、現在の携帯電話システムに見られる従来のセルラーシステムに従ったマルチセル化の手法では、移動時に頻繁にハンドオーバが必要となり、信号処理が煩雑となる問題がある。
【0006】
ミリ波帯に限らず、マイクロ波帯を用いた無線アクセスシステムであっても、例えばITS通信における路車間通信などでは、通常1つのセルサイズが比較的狭く限られたピコセルやストリートセルの形態になる。その上で、高速移動通信が要求されるため、上述したのと同様に移動時におけるハンドオーバのための信号処理問題が生じる。
【0007】
その他、現在普及の進む無線LANのような無線アクセスシステムの構築環境であっても、必ずしも高いキャパシティを求める場合だけでなく、より広範囲にわたる無線アクセスシステムを簡易に構築したい場合がある。このようなときにも、従来のマルチセル化の手法では信号処理の問題は同様である。
【0008】
以上説明したような問題から、ハンドオーバにおける信号処理をせず、極めて低いDU比環境下においてでも良好な同一チャネル配信・アクセスが可能なマルチセル無線通信システムの需要は高くなると予想される。
マルチセル化には、基地局から、もしくは基地局への信号を同軸線路や光ファイバにより分配・合成することによって、同一の無線周波数・無線チャネルを送受信することが可能なアクセスポイントを複数設置する。そして、基地局にアクセスする無線端末から見ると、これら複数のアクセスポイントがカバーするエリア全体が、実質的に1つの無線ゾーンと見なせるようなシステムが実現できる。
【0009】
このようなシステムで耐マルチパス伝搬特性を持たせるために、OFDM方式やそれに準じる方式、例えばCDMA方式、それらを組み合わせたマルチキャリアCDMA方式などが好適である。
ところが、従来のマルチセル無線通信システムでは、各アクセスポイントがカバーする隣接セルの境界領域では、同一チャネル間干渉が発生し、信号劣化を生じる問題があった。この同一チャネル間干渉の問題はマイクロ波帯を用いる移動通信環境においては、伝搬特性が時々刻々と変化することから劣化が平滑化され、これらの劣化は誤り訂正符号などによって改善されることから必ずしも問題にならないが、より高周波な例えばミリ波帯のような周波数を使用する場合には、伝搬特性は静的なものとなるため時に深刻な問題を生じる。
【0010】
本発明の属する技術分野において、公知の技術としては次の3点の文献がある。
まず特許文献1は、マルチパス伝搬環境における符号分割多元接続信号の受信方法及び符号分割多元接続システムにおける携帯電話機・ラップトップコンピュータ等の移動受信装置に関する。
該文献によると、多元接続干渉を最小化するために、端末装置が複数の基地局又は送信機からの信号を受信する際に、各基地局からの信号が基地局毎に固有の議事ランダム符号によって符号化する。そして、端末装置は複数のアンテナ素子とそれぞれ基地局に対応する複数のチャネル推定器が組み込まれた信号処理回路と、行列算出器とを備えている。
【0011】
【特許文献1】特開2003-218836号公報
【0012】
このような手法によれば、確かに干渉を抑制することはできるが、同一チャネル・アクセスを実現するものではなく、特に不特定の基地局と接続できないなど、本質的な解決にはならない。また、端末装置において基地局の切り換えが必要であり、上記ハンドオーバの信号処理問題と同様の問題を生じる。
【0013】
特許文献2では、送信側と受信側との間で所定長のシンボルと当該シンボル間に配置された所定長のガードタイムとを含む直行周波数分割多重信号を用いてデータを伝送する方法が開示されている。
また、特許文献3では、直交周波数分割多重デジタル変調方式を使用する階層化変調方式及び送受信装置に関する発明が開示されている。該文献では、伝送シンボル毎に各階層の送信データに対する電力及び変調方式を巡回的に切り換えてOFDM信号を生成する方法を用いている。
【0014】
【特許文献2】特開平8-321820号公報
【特許文献3】特開平7-321765号公報
【0015】
上記いずれの方法も、OFDM方式等の隣接セル境界領域における、DU比の低い同一チャネル2波干渉のような状況下で生じるフラットフェージングや、広信号帯域にわたる受信CN比の劣化を簡便なシステムで防ぐことのできる技術ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、耐マルチパス伝搬特性を有する変調方式を用いた無線通信システムにおいて、マルチセル環境でも同一チャネル間干渉を防止し、良好な通信を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のようなマルチセル無線通信システムの構成を提供する。
ここで、本発明のマルチセル無線通信システムは、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、複数の基地局と少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うものである。
請求項1に記載の発明は、該システムにおける全部又は一部の基地局が、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、該信号を送信する送信装置とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、上記の少なくとも2つ以上の基地局において、互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路を備えるものであり、隣接セル領域において双方の基地局から全く別のマルチパス信号が入力するようにしている。
なお、相関が十分に低いとは、マルチパス伝搬環境で発生する遅延時間τ・位相θ・振幅Aの変動量の統計的性質が独立か十分に異なっていることを意味する。これを振幅を例に数式で表現すると、E[(A1-mA1)(A2-mA2)]=0もしくは≦(所定の閾値)で表すことができる。ここでE[]はアンサンブル平均であり、A1、mA1は#1の振幅と振幅の平均値である。
【0019】
請求項3に記載の発明は、基地局及び無線端末間の通信に、ミリ波帯以下の短
波長の電波を用いたことを特徴とする。
【0020】
本発明は、請求項4に記載のマルチセル無線通信システムにおける通信方法を提供することもできる。
すなわち、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、複数の基地局と少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、全部又は一部の基地局が、送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成し、該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成し、該疑似マルチパス信号を送信することを特徴とする。
【0021】
また、請求項5に記載の発明では、少なくとも2つ以上の基地局において、互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似信号を付加することを特徴としたマルチセル無線通信システムにおける通信方法を提供することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、上記マルチセル無線通信システムにおける基地局を提供するものである。すなわち、上記マルチセル無線通信システムで用いる基地局が、送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、該疑似マルチパス信号を送信する送信装置とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の基地局は、疑似マルチパス回路が、他の基地局の疑似マルチパス回路のマルチパス伝搬特性と互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有することを特徴とする。
【0024】
さらに本発明に係るマルチセル無線通信システムは、基地局の構成を上記と異なる構成にした次のような態様でもよい。
すなわち、請求項8に記載の発明は、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムである。
【0025】
該システムにおいて、基地局が、送信信号から特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、該変調信号を各アクセスポイントに向けて分配する分配回路と、該分配回路通過後に、各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、基地局から各アクセスポイントに該疑似マルチパス信号を伝送する伝送線路と、アクセスポイントにおいて該疑似マルチパス信号を送信する送信装置とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0026】
あるいは無線端末から基地局に向けた上り方向の通信の場合には、請求項9の構成とすることもできる。すなわち、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムである。
【0027】
該システムにおいて、基地局が、該無線端末において生成された変調信号を、各アクセスポイントにおいて受信する受信装置と、各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送する伝送線路と、各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、各疑似マルチパス信号を合成する合成回路と、該合成された信号を復調する復調装置とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0028】
ここで、請求項10の発明は、請求項8においては分配回路を通過後に設けられている、請求項9においては合成回路の前に設けられている、それぞれ複数の疑似マルチパス回路が互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路であってもよい。
さらに、請求項11に記載の発明は、基地局及び無線端末間の通信に、ミリ波帯以下の短波長の電波を用いるマルチセル無線通信システムを提供するものである。
【0029】
請求項12に記載の発明は、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法である。
【0030】
本発明は上記の通信方法において、送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成し、該変調信号を各アクセスポイントに向けて分配した後に、基地局において、又は伝送線路を介して伝送したアクセスポイントにおいて、各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成し、伝送線路で基地局と接続された各アクセスポイントから該疑似マルチパス信号を送信することを特徴とする。
【0031】
請求項13に記載した発明は、上記のマルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、該無線端末において生成された、送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を各アクセスポイントにおいて受信し、各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送し、各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成した後に、各疑似マルチパス信号を合成し、該合成された信号を復調するものである。
【0032】
本通信方法でも、請求項14に記載の通り、前記複数の疑似マルチパス回路が、互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路としてもよい。
【0033】
請求項15に記載の発明は、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムで用いる基地局を提供する。
すなわち、該基地局は、送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、該変調信号を各アクセスポイントに分配する分配回路と、該分配回路通過後に、各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、該疑似マルチパス信号を送信する送信装置とを少なくとも備える。
【0034】
請求項16に記載の発明は、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムで用いる基地局を提供する。
そして、該基地局が、該無線端末において生成された変調信号を各アクセスポイントにおいて受信する受信装置と、各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送する伝送線路と、各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、各疑似マルチパス信号を合成する合成回路と、該合成された信号を復調する復調装置とを少なくとも備える。
【0035】
上記請求項15又は16の構成においても、前記複数の疑似マルチパス回路が、互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路とすることができる。
【0036】
請求項18に記載の発明は、上記の請求項1ないし3、8ないし11のいずれかに記載したマルチセル無線通信システムにおいて、送信側の基地局又は無線端末における送信装置が、局部発振信号を用いて送信信号を中間周波数帯から無線周波数帯に変換し、該局部発振信号と該無線周波数帯変調信号とを同時に無線送信する一方、受信側の基地局又は無線端末における受信装置が、該両信号の乗積成分を生成することで中間周波数帯に変換する自己ヘテロダイン方式の無線通信を行う構成を提供するものである。
【0037】
請求項19に記載の発明は、上記の請求項4、5、12ないし14のいずれかに記載したマルチセル無線通信システムにおける通信方法において、送信側の基地局又は無線端末における送信装置が、局部発振信号を用いて送信信号を中間周波数帯から無線周波数帯に変換し、該局部発振信号と該無線周波数帯変調信号とを同時に無線送信する一方、受信側の基地局又は無線端末における受信装置が、該両信号の乗積成分を生成することで中間周波数帯に変換する自己ヘテロダイン方式の無線通信を行う構成を提供するものである。
【0038】
請求項20に記載の発明は、請求項8に記載したマルチセル無線通信システムの構成において、送信側の基地局に、中間周波数帯信号を発生する前記変調装置と共に、異なる波長からなる第1および第2のレーザ光源を備えて、該中間周波数帯信号で該第1の光信号をキャリア非抑圧型の単側波帯(SSB)光変調信号、もしくは両側波帯(DSB)光変調信号に変調する変調器と、該光変調信号に対して所望の無線周波数帯だけ周波数の離れた無変調光源である該第2の光信号と該光変調信号とを混合して光送信する光混合器とを備える。
さらに、前記伝送線路が、基地局から送信された光信号を伝送する光ファイバ伝送路であって、前記アクセスポイントには、該光ファイバ伝送路より伝送された光信号を光電気変換して無変調キャリアと無線変調信号を生成し、アンテナより放射する送信装置を備えると共に、前記無線端末において、該アクセスポイントより送信した無変調キャリアと無線変調信号とを受信し、これら2信号の乗積成分を生成することで、中間周波数帯変換信号を取り出して信号を復調する構成を提供する。
【0039】
請求項21に記載の発明は、請求項12に記載したマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、基地局とアクセスポイントとを接続する前記伝送線路に光ファイバ伝送路を用いる。そして、基地局では、第1および第2のレーザ光源によって、異なる波長からなる第1および第2の光信号を発生し、前記疑似マルチパス信号で該第1の光信号をキャリア非抑圧型の単側波帯(SSB)光変調信号、もしくは両側波帯(DSB)光変調信号に変調し、該光変調信号に対して所望の無線周波数帯だけ周波数の離れた無変調光源である前記第2の光信号と前記光変調信号とを混合した光信号を基地局から光ファイバ伝送路により伝送する。なお、前記第2の光信号は第1のレーザ光源出力を光周波数シフタを通過させて所望の無線周波数帯だけ周波数シフタさせて得ることももちろん可能である。
また、該光ファイバ伝送路より伝送された光信号をアクセスポイントで受信した後、光電気変換して無変調キャリアと無線変調信号を生成し、アクセスポイントのアンテナより放射し、リモートアンテナ局より送信された無変調キャリアと無線変調信号を無線端末により受信し、これら2信号の乗積成分を生成することで、中間周波数帯変換信号を取り出して信号を復調することを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、マルチセル無線通信システムにおいてハンドオーバの信号処理問題を生じない同一チャネルの変調信号を用いる。そして、耐マルチパス伝搬性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用いながら、隣接セル境界領域における、DU比の低い同一チャネル2波干渉のような状況下で生じるフラットフェージングや、広信号帯域にわたる受信CN比の劣化を防ぐことができる。
【0041】
そして、本発明は疑似マルチパス回路を基地局・アクセスポイントに設けるという簡便な手段により、上記の効果を奏することができる。
すなわち、実際には2つの基地局・アクセスポイントからの信号のみが干渉している領域でも、より多波のマルチパス環境で通信を行っているのと等価である環境を創出し、静的なフェージングもしくはフラットフェージングに対するOFDM変調方式等の弱点を補いながら、その特長である多波マルチパス環境に強い特性を活かした良好な通信を実現する。
これにより、連接符号など強力な誤り訂正符号化などを用いる必要がなく、信号処理回路への負担や処理遅延を発生させることがない。
【0042】
また、請求項18及び19に開示したように、本件出願人が、特許文献4〜8に開示した自己ヘテロダイン方式の通信方式と本願技術を組み合わせることにより、通常極めて高い周波数安定性が求められるOFDM変調方式等の信号を、非常に低コストかつ簡便な構成で取り扱うことができる。特に、ミリ波帯以上の高周波数において、本構成は重要な構成である。
【0043】
さらに本発明のようなマルチセル環境でOFDM変調方式等をベースにした同一チャネル通信を行おうとした場合、遠隔にある全ての基地局やアクセスポイントが厳密に同一周波数の信号を送信しなければならない。ところが、ミリ波帯等の高周波数帯でこれを実現することは周波数の安定性の観点から極めて困難であったり、通信システム自体が非常に高価になる問題がある。
【0044】
これに対して、自己ヘテロダイン方式を本発明のシステムに適用することにより、装置構成が容易なマイクロ波等の段階で同一の周波数を得ることさえできれば、ミリ波帯等においても周波数の安定性、精度を確保することができる。従って、自己ヘテロダイン方式を本願マルチセル無線通信システムに適用することは相乗的な効果を有するのである。
さらに自己ヘテロダイン方式を採用することで、超高速移動通信が容易になる特長がある。すなわち、このような構成において自己ヘテロダイン方式を採用することは、その原理上、ドップラー効果が大きく低減することができ、安定した通信が実現できる。
【0045】
【特許文献4】特開2001−53640号公報
【特許文献5】特開2002−9655号公報
【特許文献6】特開2003−179516号公報
【特許文献7】特開2003−264470号公報
【特許文献8】特開2003−298442号公報
【0046】
請求項20及び21に開示したように、本件出願人が、特許文献9で開示した光ファイバリンクと融合された自己ヘテロダイン型のアクセスポイントを用いる構成も好適である。
すなわち、各アクセスポイントにおける下りリンク信号生成の原理に特許文献9の技術を用いることで、自己ヘテロダイン方式の特長であるアクセスポイントの低コスト化、通信の安定化を図ることができると共に、信号発生に光のビートを利用するため、ミリ波帯等の高い周波数域の信号を容易に生成することができる。
【0047】
【特許文献9】特開2004−80409号公報
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。本発明では、基地局及びアクセスポイントに疑似マルチパス回路を設けることを大きな特徴とするが、基地局毎に固有の疑似マルチパス回路を設ける第1の実施形態と共に、1つの基地局から信号を伝送して複数のアクセスポイントで通信する第2の実施形態を提供する。さらに、自己ヘテロダイン方式を第1の実施形態又は第2の実施形態に採用する第3の実施形態、光・電気融合システムを第2の実施形態に採用した第4の実施形態を順次説述する。
【0049】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムの全体構成図である。本発明ではミリ波帯等の高周波数帯域を用いた無線通信システムにおいて、複数の基地局(10)を隣接して配置したマルチセル環境を提供する。特に基地局間のハンドオーバが不要な同一チャネル通信を行う。
【0050】
変調方式としては、マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式を用いる。本方式は、近年実用化されている単方向通信システム(SFNなどと呼ばれる放送システムなど)において、マルチパス伝搬環境に耐性を有する方式として特に利用が進んでいる。
OFDM変調方式は、高速なデータ信号を低速で狭帯域なデータ信号に変換し周波数軸上で並列に伝送するFDM方式に加えて、直交する搬送波を交互に並べて使うことで、干渉をなくしている。複数の搬送波を一部重なりあいながらも互いに干渉することなく密に並べることができることから、狭い周波数の範囲を効率的に利用した広帯域伝送を実現し、周波数の利用効率が高まる。
【0051】
そして、各基地局(10)からは同一チャネル信号が送信されるが、このとき移動可能なデジタル放送受信端末(11)は図示のように2つの基地局の隣接領域(12)に位置することがある。
基地局(10)から送信されるOFDM信号スペクトルは図3のように非常に多数のサブキャリアが周波数軸上に密に直交周波数多重されたものであるが、隣接領域(12)では2つの基地局(10)から送信された信号が干渉する。マルチパス伝搬環境に強いOFDM変調方式等でも、このような同遅延時刻で到達する2波干渉、とりわけ時間的伝搬特性の変動を伴わないものには耐性がなく、フラットフェージングと呼ばれる信号強度の低下や、受信CN比の劣化が生じる。
例えば、図4に示すスペクトルのように、広い周波数領域に渡って大きな受信CN比の落ち込みが常に生じることになる。
【0052】
一方、OFDM変調方式では、図5のような通常の移動通信環境で想定されているような多波マルチパス伝搬環境での干渉には耐性があり、良好な通信を行える特長がある。そこで本発明は、基地局において疑似的なマルチパス伝搬環境と等価な信号を予め送信し、受信端末(11)において、実際には2波干渉であっても、多波干渉と同視できる受信信号となるような構成を創出した。
基地局の構成を図2に示す。
【0053】
すなわち、基地局としてデジタル放送送信設備(13)を設ける。該設備(13)は基本的に従来から用いられている公知の要素を備えるので、詳細は省略するが、大きくはOFDM変調信号発生器(14)と増幅回路(16)、信号を創出するアンテナ(17)から構成される。
これに加えて、本発明ではOFDM変調信号発生器(14)の後段に、疑似マルチパス回路(15)を配設する。
【0054】
図6には疑似マルチパス回路の構成を示す。疑似マルチパス回路(15)は、主要な構成として分配回路と、遅延線路と、振幅制御回路と、合成回路とを有する。
そして、入力した信号を分配回路(20)で例えば3線路に分配し、各線路毎に遅延線路(21a〜c)を設けて信号を遅延させる。さらに、可変アッテネータ(22)により振幅制御を行い、それらを合成回路(23)で再び合成して出力する。
【0055】
このような疑似マルチパス回路(15)によると、図6の入力側に示した入力信号から、複数の遅延線路及び振幅制御回路により、出力側に示すようなマルチパス伝搬環境に類似した疑似マルチパス信号を生成することができる。
ここで、分配回路でより多くの分配を行い、それぞれに異なる遅延パスを与えることで効果を高めることが期待できるが、構成が複雑になるため、好ましくは3分岐以上で適宜設定することができる。
振幅制御に関しても、固定値のアッテネータでも良いが、上記のように可変式のものが好ましく、例えば電圧制御型の振幅変調器として制御信号にレイリー分布で時間変動するような信号を用いることで、さらにマルチパス伝搬環境と近似した信号波を生成することもできる。
【0056】
各基地局(10)で用いる疑似マルチパス回路(15)による疑似マルチパス伝搬特性は、互いに全く相関がないか、十分に相関が低いことが望ましい。これは、擬似的にマルチパス化された信号であっても、相関の高いこれら2波の干渉では図4と同様の深いシグナルフェージングを伴う干渉が発生し、信号劣化の問題が同様に生じるからである。
従って、特に隣接した基地局間では、相関のない疑似マルチパス伝搬特性を付与することが望まれる。そのためには、上記疑似マルチパス回路(15)における遅延線路及び振幅制御回路の特性値を変更すれば良く、いずれか又は双方の値を固有のものとすれば良い。近接した基地局でなければ2波干渉の問題は生じないので、いくつかのパターンにより疑似マルチパス回路を構成し、それらを分散させて配置してもよい。
【0057】
なお付言すると、上記のように疑似マルチパス伝搬環境を構成すると、1波毎の受信レベルが低下してBER(ビット誤り率)が悪化するが、これは通常のマルチパス伝搬環境と同様であり、本発明で用いるOFDM変調方式等ではこのような障害には強い耐性を示すため、通信上の支障とはならない。むしろ、2波干渉によるフラットフェージングなどの深刻な問題を回避できることから、本発明は有効に作用するのである。
【0058】
以上、第1の実施形態ではデジタル放送システムとして説述したが、必ずしも基地局から無線端末までの下り単方向通信に限らず、上り方向の通信が可能な双方向無線通信システムで用いてもよい。例えば、無線LANシステムに用いることもできる。
【0059】
(第2実施例)
本発明の第2の実施形態に係る構成図を図7に示す。本無線通信システムでは、基地局(30)と、伝送線路(31)で接続された複数のアクセスポイント(32)から構成される。伝送線路(31)は同軸線路又は光ファイバ回線で構成する。図7の構成では伝送線路(31)にそれぞれ上り回線(33)と下り回線(34)を設けて、双方向な送受信が可能となっているが、本発明の実施にはこのいずれかだけでもよい。
【0060】
基地局(30)と複数のアクセスポイント(32)でマルチセル環境を構成する無線通信システムは公知であり、基地局(30)の構成も周知であるから、一般的な構成については簡略化して説明する。基地局(30)には送受信の信号制御を行うアクセス制御装置(35)と、送信用のOFDM信号変調装置(36)を、受信用にはOFDM信号復調装置(37)を備えている。通常、下りは該変調装置(36)から分配回路(38)で分配して伝送線路でアクセスポイントに、上りはアクセスポイントから伝送線路で基地局に接続されて合成回路(39)で合成されて復調装置(37)に入力する。
【0061】
本発明ではまず下り回線では、変調装置(36)から分配回路(38)を経た後、新設した複数の疑似マルチパス回路(40)を通過して疑似マルチパス信号となる。これを各アクセスポイント(32)に伝送して送信する。疑似マルチパス回路(40)は図6に示す構成と同様である。
これにより、上記第1の実施形態と同様にアクセスポイント間の境界領域(41)に移動端末(42)が位置する場合でも、良好な通信を行うことができる。
【0062】
ここで、上り回線についても下りと同様の問題が生じる。すなわち、境界領域(41)の移動端末(42)から隣接する2つのアクセスポイントで信号を受信し、合成回路で合成すると、2波干渉が生じる。
そこで、本発明では、上り回線にも疑似マルチパス回路(43)を設けて、各アクセスポイントからの入力信号からマルチパス伝搬環境と等価なマルチパス信号を生成し、それを合成回路(39)で合成する。
これにより、合成後の信号は多波干渉と同視される信号となり、OFDM信号復調装置(37)により良好な復調が行える。
【0063】
本実施形態でも、隣接するアクセスポイントの疑似マルチパス回路の与える特性間で相関がある場合には効果が期待できず、互いに無相関もしくは十分に相関の低いマルチパス伝搬環境の特性を与えることが望ましい。
また、図7では各疑似マルチパス回路(40)(43)は基地局(30)内に設けたが、これらはアクセスポイント(32)内に配設してもよい。さらに上り回線(33)と下り回線(34)で共用できる疑似マルチパス回路を設けてもよい。
【0064】
(第3実施例)
本発明の第3の実施形態は、上記第1又は第2の実施形態における基地局あるいはアクセスポイントの無線周波数送受信装置に、本件出願人が提案している自己ヘテロダイン方式を用いるものである。
自己ヘテロダイン方式の説明図を図8に示す。例えば図7のアクセスポイントに設ける場合、伝送線路(31)から入力した疑似マルチパス信号(IF帯変調信号)は、局部発振器(51)より得た局部発振信号が入力されているミキサ(52)に入力される。
【0065】
ミキサ(52)において、該IF帯変調信号と局部発振信号を乗積し、その出力から、帯域濾波器(53)によって不要波成分を除去する。これにより無線周波数(RF)帯変調信号を得るが、これに該周波数変換で使用した局部発振信号の電力の一部が足し合わされた後、増幅器(54)によって信号が増幅されて送信アンテナ(55)から送信される。
本構成により、図中のスペクトルのようにRF帯変調信号(56)に、これとコヒーレントな位相雑音特性を持つ局部発振信号成分(57)が合わさった信号が送信される。
【0066】
一方、無線端末では、受信アンテナ(58)、増幅器(59)、帯域濾波器(60)、ミキサ(61)が設けられており、RF帯変調信号(56)と重畳された局部発振信号成分(無変調キャリア)(57)の乗積成分を生成することで、所望のIF帯変調信号にダウンコンバートすることができる。
【0067】
以上の構成によると、アクセスポイントにおいて、自己ヘテロダイン方式で例えばミリ波帯等に周波数変換し、無線端末に向けて送信することができる。また図8の送信側・受信側を入れ替えることにより、上りについても自己ヘテロダイン方式の通信システムが構築できる。これらについては、上記特許文献4〜8に詳述している。
【0068】
ここで、自己ヘテロダイン方式を用いた場合に、無変調キャリア成分について上記境界領域での信号干渉が生じるため、局部発振信号(57)については隣接アクセスポイント間で異なる周波数の発振器を用いることが好ましい。あるいは、周波数がホッピングしている、もしくは位相変調などによって周波数拡散された発振器を用いることもできる。
【0069】
特許文献10には、出願人により自己ヘテロダイン方式を用いたマルチセル化技術が開示されている。自己ヘテロダイン方式によると、該特許文献でも説述している通り全ての基地局が厳密な同一周波数を送信する必要がないため、ミリ波帯等の高周波数帯における通信に好適である。
しかし、依然として中間周波数帯等における同一チャネル干渉が生じることから、本願による疑似マルチパス回路を用いる構成は極めて高い効果を有する。
【0070】
【特許文献10】国際特許公開番号WO 2004/077697
【0071】
(第4実施例)
上記第2実施例に、本件出願人が特許文献9で開示した技術内容を適用する第4の実施形態を示す。図9は本システムの構成図である。本発明では基地局(60)及びアクセスポイント(61)を以下に説述するように構成し、伝送路(62)には光ファイバ線路を用いる。
基地局(60)の構成は実施例2と同様の構成部品については同一の符号で図示し、機能の説明は省略する。
【0072】
まず、特許文献9に開示された構成と同一の要素について説述する。下り方向について、基地局(60)の疑似マルチパス回路(40)の直後段に第1及び第2のレーザ光源(63)(64)を配設し、各アクセスポイント毎に設けられる光外部変調器(65)により信号光に変調する。
すなわち、発振周波数f01で単一モード発振するレーザ光源(63)と、前記レーザ光源(63)の発振周波数f01と所望の間隔となる無線周波数fRFに対応している発振周波数f02を発振するレーザ光源(64)と、光外部変調器(65)、光カプラ(66)から構成される。
【0073】
そして、レーザ光源(63)の出力は、キャリア非抑圧型の光単側波帯(光SSB)変調器(65)に入力される。また、当該変調器(65)には、疑似マルチパス回路(40)からの疑似マルチパス信号が変調信号として入力される。この結果、図11(a)に示すような、光周波数軸上で光キャリアがSSB変調された信号光(f01+fIF)を得る。
【0074】
なお、本実施例では、キャリア非抑圧型の光単側帯波(光SSB)変調器(65)に中間周波数帯信号を入力することで、キャリア残留型光SSB信号を得ているが、光変調器(65)としてキャリア非抑圧型の光両側帯波(光DSB)変調器を用いて、キャリア残留型光DSB信号を得ても、同様の効果が得られる。また、キャリア残留型光DSB信号を得る方法としても図9のように光源の外部に変調器を設けるのではなく、直接中間周波数帯信号で光源を変調させることも可能である。
【0075】
信号光(f01+fIF)と、発振周波数f01とは異なる発振周波数f02で、単一モード発振するレーザ光源(64)の出力光が光カプラ(66)に入力されて混合される。
光混合器(66)の出力は、光ファイバ伝送線路(62)によってアクセスポイント(61)まで伝送される。この時のアクセスポイント(61)で受信された光信号スペクトラムは、図11(b)に示されているように、発振周波数f01と発振周波数f02との間隔は、所望のRF周波数fRFに対応している。なお、発振周波数f02で単一モード発振するレーザ光源は、発振周波数f01で単一モード発振するレーザ光源(63)の出力を分岐して、これを光周波数シフタに通過させることで所望のRF周波数fRFだけ周波数シフトした光源を得て、代用することももちろん可能である。
【0076】
図10に示すようにアクセスポイント(61)では、光電気変換素子(70)で受信信号光を検波し、無変調キャリアと無線変調信号を生成した後、増幅器によって増幅し、アンテナ(71)によって空間に放射する。
【0077】
ところで、本発明の構成では、レーザ光源(63)を搬送波残留型の光SSB変調器もしくはDSB変調器(65)に入力する前に、制御回路(66)で制御される光位相外部変調器もしくは光周波数シフタ(67)を配設して、無線周波数を拡散もしくは周波数シフトする構成としている。
これは、無線周波数帯域における干渉を避けるための構成であり、本願構成で新たに開発した。なお、制御回路(66)により隣接アクセスポイント間で十分に干渉が抑圧できる拡散符号を与える、もしくは完全に周波数分割されるように制御している。
【0078】
アクセスポイント(61)のアンテナ(71)から放射された信号は、無線端末のアンテナによって受信される。自己ヘテロダイン方式により、無線端末によって受信された無変調キャリアと無線変調信号成分は、増幅器で増幅された後、帯域濾波器によって不要成分が除去される。その後、無変調キャリアと無線変調信号成分は、二乗検波器で検波され、これら2成分の乗積成分が生成されることで、IF帯信号が再生される。
【0079】
上りについては、無線端末は上述した自己ヘテロダイン方式に従ってRF帯信号を送出し、これを図10のアクセスポイント(61)の受信アンテナ(72)にて受信し、レシーバ(73)でIF帯に周波数変換する。さらに電気光変換素子(74)が光変換を行って、上り光ファイバ線路(62)で送出する。
基地局(60)の上り側には光電気変換素子(75)が各疑似マルチパス回路(43)直前に配設されて、電気信号に復元した後、実施例2で説述した疑似マルチパス回路に至る。
【0080】
本実施例において、上り・下りに別々の光ファイバ線路を示しているが、例えば波長多重技術を適用することにより、同一光ファイバ線路でネットワークを構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明第1実施例の構成図である。
【図2】本発明第1実施例の基地局の構成図である。
【図3】OFDM変調方式の信号スペクトルの説明図である。
【図4】2波干渉時の信号スペクトルの説明図である。
【図5】多波干渉時の信号スペクトルの説明図である。
【図6】本発明による疑似マルチパス回路の構成図である。
【図7】本発明第2実施例の構成図である。
【図8】本発明第3実施例に係る自己ヘテロダイン方式の説明図である。
【図9】本発明第4実施例の構成図である。
【図10】本発明第4実施例のアクセスポイントの構成図である。
【図11】本発明第4実施例の周波数変換を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0082】
30 基地局
31 伝送線路
32 アクセスポイント
33 上り回線
34 下り回線
35 アクセス制御装置
36 OFDM信号変調装置
37 OFDM信号復調装置
38 分配回路
39 合成回路
40 疑似マルチパス回路
41 境界領域
42 無線端末
43 疑似マルチパス回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、複数の基地局と少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおいて、
全部又は一部の基地局が、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、
該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
該信号を送信する送信装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システム。
【請求項2】
前記少なくとも2つ以上の基地局において、
互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項3】
前記基地局及び無線端末間の通信に、ミリ波帯以下の短波長の電波を用いる
請求項1又は2に記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項4】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、複数の基地局と少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、
全部又は一部の基地局が、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成し、
該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成し、該疑似マルチパス信号を送信する
ことを特徴とするマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つ以上の基地局において、
互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似信号を付加する
ことを特徴とする請求項4に記載のマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項6】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、複数の基地局と少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムで用いる基地局であって、該基地局が、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、
該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
該疑似マルチパス信号を送信する送信装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システムの基地局。
【請求項7】
前記疑似マルチパス回路が、
他の基地局の疑似マルチパス回路のマルチパス伝搬特性と相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する
ことを特徴とする請求項6に記載のマルチセル無線通信システムの基地局。
【請求項8】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおいて、該基地局が、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、
該変調信号を各アクセスポイントに向けて分配する分配回路と、
該分配回路通過後に、各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
基地局から各アクセスポイントに該疑似マルチパス信号を伝送する伝送線路と、
アクセスポイントにおいて該疑似マルチパス信号を送信する送信装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システム。
【請求項9】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおいて、該基地局が、
該無線端末において生成された変調信号を各アクセスポイントにおいて受信する受信装置と、
各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送する伝送線路と、
各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
各疑似マルチパス信号を合成する合成回路と、
該合成された信号を復調する復調装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システム。
【請求項10】
前記複数の疑似マルチパス回路が、
互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路である
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項11】
前記基地局及び無線端末間の通信に、ミリ波帯以下の短波長の電波を用いる
請求項8ないし10のいずれかに記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項12】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成し、
該変調信号を各アクセスポイントに向けて分配した後に、
基地局において、又は伝送線路を介して伝送したアクセスポイントにおいて、
各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成し、
伝送線路で基地局と接続された各アクセスポイントから該疑似マルチパス信号を送信する
ことを特徴とするマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項13】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、
該無線端末において生成された変調信号を各アクセスポイントにおいて受信し、
各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送し、
各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成した後に、
各疑似マルチパス信号を合成し、
該合成された信号を復調する
ことを特徴とするマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項14】
前記複数の疑似マルチパス回路が、
互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路である
ことを特徴とする請求項12又は13に記載のマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項15】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムで用いる基地局であって、該基地局が、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、
該変調信号を各アクセスポイントに分配する分配回路と、
該分配回路通過後に、各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
該疑似マルチパス信号を送信する送信装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システムの基地局。
【請求項16】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムで用いる基地局であって、該基地局が、
該無線端末において生成された変調信号を各アクセスポイントにおいて受信する受信装置と、
各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送する伝送線路と、
各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
各疑似マルチパス信号を合成する合成回路と、
該合成された信号を復調する復調装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システムの基地局。
【請求項17】
前記複数の疑似マルチパス回路が、
互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路である
ことを特徴とする請求項15又は16に記載のマルチセル無線通信システムの基地局。
【請求項18】
前記マルチセル無線通信システムにおいて、
送信側の基地局又は無線端末における送信装置が、局部発振信号を用いて送信信号を中間周波数帯から無線周波数帯に変換し、該局部発振信号と該無線周波数帯変調信号とを同時に無線送信する一方、
受信側の基地局又は無線端末における受信装置が、該両信号の乗積成分を生成することで中間周波数帯に変換する
自己ヘテロダイン方式の無線通信を行う請求項1ないし3、8ないし11のいずれかに記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項19】
前記マルチセル無線通信システムにおける通信方法において、
送信側の基地局又は無線端末における送信装置が、局部発振信号を用いて送信信号を中間周波数帯から無線周波数帯に変換し、該局部発振信号と該無線周波数帯変調信号とを同時に無線送信する一方、
受信側の基地局又は無線端末における受信装置が、該両信号の乗積成分を生成することで中間周波数帯に変換する
自己ヘテロダイン方式の無線通信を行う請求項4又は5、12ないし14のいずれかに記載のマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項20】
前記マルチセル無線通信システムにおいて、
送信側の基地局に、
中間周波数帯信号を発生する前記変調装置と共に、異なる波長からなる第1および第2のレーザ光源を備えて、該中間周波数帯信号で該第1の光信号をキャリア非抑圧型の単側波帯(SSB)光変調信号、もしくは両側波帯(DSB)光変調信号に変調する変調器と、
該光変調信号に対して所望の無線周波数帯だけ周波数の離れた無変調光源である該第2の光信号と該光変調信号とを混合して光送信する光混合器と
を備える一方、
前記伝送線路が、基地局から送信された光信号を伝送する光ファイバ伝送路であって、
前記アクセスポイントには、該光ファイバ伝送路より伝送された光信号を光電気変換して無変調キャリアと無線変調信号を生成し、アンテナより放射する送信装置を備えると共に、
前記無線端末において、該アクセスポイントより送信した無変調キャリアと無線変調信号とを受信し、これら2信号の乗積成分を生成することで、中間周波数帯変換信号を取り出して信号を復調する
ことを特徴とする請求項8に記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項21】
前記マルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、
基地局とアクセスポイントとを接続する前記伝送線路に光ファイバ伝送路を用い、
基地局では、
第1および第2のレーザ光源によって、異なる波長からなる第1および第2の光信号を発生し、
前記疑似マルチパス信号で該第1の光信号をキャリア非抑圧型の単側波帯(SSB)光変調信号、もしくは両側波帯(DSB)光変調信号に変調し、
該光変調信号に対して所望の無線周波数帯だけ周波数の離れた無変調光源である前記第2の光信号と前記光変調信号とを混合した光信号を基地局から光ファイバ伝送路により伝送し、
該光ファイバ伝送路より伝送された光信号をアクセスポイントで受信した後、光電気変換して無変調キャリアと無線変調信号を生成し、アクセスポイントのアンテナより放射し、
リモートアンテナ局より送信された無変調キャリアと無線変調信号を無線端末により受信し、これら2信号の乗積成分を生成することで、中間周波数帯変換信号を取り出して信号を復調する
ことを特徴とする請求項12に記載のマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項1】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、複数の基地局と少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおいて、
全部又は一部の基地局が、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、
該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
該信号を送信する送信装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システム。
【請求項2】
前記少なくとも2つ以上の基地局において、
互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項3】
前記基地局及び無線端末間の通信に、ミリ波帯以下の短波長の電波を用いる
請求項1又は2に記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項4】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、複数の基地局と少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、
全部又は一部の基地局が、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成し、
該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成し、該疑似マルチパス信号を送信する
ことを特徴とするマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つ以上の基地局において、
互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似信号を付加する
ことを特徴とする請求項4に記載のマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項6】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、複数の基地局と少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムで用いる基地局であって、該基地局が、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、
該変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
該疑似マルチパス信号を送信する送信装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システムの基地局。
【請求項7】
前記疑似マルチパス回路が、
他の基地局の疑似マルチパス回路のマルチパス伝搬特性と相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する
ことを特徴とする請求項6に記載のマルチセル無線通信システムの基地局。
【請求項8】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおいて、該基地局が、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、
該変調信号を各アクセスポイントに向けて分配する分配回路と、
該分配回路通過後に、各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
基地局から各アクセスポイントに該疑似マルチパス信号を伝送する伝送線路と、
アクセスポイントにおいて該疑似マルチパス信号を送信する送信装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システム。
【請求項9】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおいて、該基地局が、
該無線端末において生成された変調信号を各アクセスポイントにおいて受信する受信装置と、
各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送する伝送線路と、
各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
各疑似マルチパス信号を合成する合成回路と、
該合成された信号を復調する復調装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システム。
【請求項10】
前記複数の疑似マルチパス回路が、
互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路である
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項11】
前記基地局及び無線端末間の通信に、ミリ波帯以下の短波長の電波を用いる
請求項8ないし10のいずれかに記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項12】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成し、
該変調信号を各アクセスポイントに向けて分配した後に、
基地局において、又は伝送線路を介して伝送したアクセスポイントにおいて、
各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成し、
伝送線路で基地局と接続された各アクセスポイントから該疑似マルチパス信号を送信する
ことを特徴とするマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項13】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、
該無線端末において生成された変調信号を各アクセスポイントにおいて受信し、
各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送し、
各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成した後に、
各疑似マルチパス信号を合成し、
該合成された信号を復調する
ことを特徴とするマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項14】
前記複数の疑似マルチパス回路が、
互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路である
ことを特徴とする請求項12又は13に記載のマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項15】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は基地局から無線端末に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムで用いる基地局であって、該基地局が、
送信信号から、特定もしくは全ての対象とする無線端末宛の同一チャネルの変調信号を生成する変調装置と、
該変調信号を各アクセスポイントに分配する分配回路と、
該分配回路通過後に、各変調信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
該疑似マルチパス信号を送信する送信装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システムの基地局。
【請求項16】
マルチパス伝搬による信号劣化に耐性を有するOFDM変調方式に準じた変調方式を用い、信号の送受信を司る複数のアクセスポイントを配設した少なくとも1個の基地局と、少なくとも1個の無線端末とで構成され、該基地局と該無線端末との間で双方向に、又は無線端末から基地局に向けて単方向に通信を行うマルチセル無線通信システムで用いる基地局であって、該基地局が、
該無線端末において生成された変調信号を各アクセスポイントにおいて受信する受信装置と、
各アクセスポイントから基地局に受信信号を伝送する伝送線路と、
各受信信号に対して、マルチパス伝搬環境で発生するのと等価な遅延信号・位相回転・振幅変動の少なくともいずれかを擬似的に付加して疑似マルチパス信号を生成する疑似マルチパス回路と、
各疑似マルチパス信号を合成する合成回路と、
該合成された信号を復調する復調装置と
を少なくとも備えたことを特徴とするマルチセル無線通信システムの基地局。
【請求項17】
前記複数の疑似マルチパス回路が、
互いに相関がない、又は相関の十分に低いマルチパス伝搬特性を有する疑似マルチパス回路である
ことを特徴とする請求項15又は16に記載のマルチセル無線通信システムの基地局。
【請求項18】
前記マルチセル無線通信システムにおいて、
送信側の基地局又は無線端末における送信装置が、局部発振信号を用いて送信信号を中間周波数帯から無線周波数帯に変換し、該局部発振信号と該無線周波数帯変調信号とを同時に無線送信する一方、
受信側の基地局又は無線端末における受信装置が、該両信号の乗積成分を生成することで中間周波数帯に変換する
自己ヘテロダイン方式の無線通信を行う請求項1ないし3、8ないし11のいずれかに記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項19】
前記マルチセル無線通信システムにおける通信方法において、
送信側の基地局又は無線端末における送信装置が、局部発振信号を用いて送信信号を中間周波数帯から無線周波数帯に変換し、該局部発振信号と該無線周波数帯変調信号とを同時に無線送信する一方、
受信側の基地局又は無線端末における受信装置が、該両信号の乗積成分を生成することで中間周波数帯に変換する
自己ヘテロダイン方式の無線通信を行う請求項4又は5、12ないし14のいずれかに記載のマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【請求項20】
前記マルチセル無線通信システムにおいて、
送信側の基地局に、
中間周波数帯信号を発生する前記変調装置と共に、異なる波長からなる第1および第2のレーザ光源を備えて、該中間周波数帯信号で該第1の光信号をキャリア非抑圧型の単側波帯(SSB)光変調信号、もしくは両側波帯(DSB)光変調信号に変調する変調器と、
該光変調信号に対して所望の無線周波数帯だけ周波数の離れた無変調光源である該第2の光信号と該光変調信号とを混合して光送信する光混合器と
を備える一方、
前記伝送線路が、基地局から送信された光信号を伝送する光ファイバ伝送路であって、
前記アクセスポイントには、該光ファイバ伝送路より伝送された光信号を光電気変換して無変調キャリアと無線変調信号を生成し、アンテナより放射する送信装置を備えると共に、
前記無線端末において、該アクセスポイントより送信した無変調キャリアと無線変調信号とを受信し、これら2信号の乗積成分を生成することで、中間周波数帯変換信号を取り出して信号を復調する
ことを特徴とする請求項8に記載のマルチセル無線通信システム。
【請求項21】
前記マルチセル無線通信システムにおける通信方法であって、
基地局とアクセスポイントとを接続する前記伝送線路に光ファイバ伝送路を用い、
基地局では、
第1および第2のレーザ光源によって、異なる波長からなる第1および第2の光信号を発生し、
前記疑似マルチパス信号で該第1の光信号をキャリア非抑圧型の単側波帯(SSB)光変調信号、もしくは両側波帯(DSB)光変調信号に変調し、
該光変調信号に対して所望の無線周波数帯だけ周波数の離れた無変調光源である前記第2の光信号と前記光変調信号とを混合した光信号を基地局から光ファイバ伝送路により伝送し、
該光ファイバ伝送路より伝送された光信号をアクセスポイントで受信した後、光電気変換して無変調キャリアと無線変調信号を生成し、アクセスポイントのアンテナより放射し、
リモートアンテナ局より送信された無変調キャリアと無線変調信号を無線端末により受信し、これら2信号の乗積成分を生成することで、中間周波数帯変換信号を取り出して信号を復調する
ことを特徴とする請求項12に記載のマルチセル無線通信システムにおける通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−166371(P2006−166371A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358710(P2004−358710)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年10月20日から21日 マイクロ波・ミリ波フォトニクス時限研究専門委員会、テラヘルツ応用システム時限研究専門委員会主催の「MWP・THz 応用システム共催研究会」において文書をもって発表
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年10月20日から21日 マイクロ波・ミリ波フォトニクス時限研究専門委員会、テラヘルツ応用システム時限研究専門委員会主催の「MWP・THz 応用システム共催研究会」において文書をもって発表
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
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