マルチチップインクジェットヘッド
【課題】インクジェットヘッドを長尺化あるいは大型化する場合に、印字ばらつきを発生させる要因を少なくできて画像欠陥を発生させ難くでき、コンパクトで、配管やFPCの接続も簡素化できるマルチチップインクジェットヘッドを提供すること。
【解決手段】駆動電極が形成された駆動壁とチャネルとが交互に並設され、前面及び後面にチャネルの出口及び入口が配置され、後面に駆動電極と電気的に接続する接続電極が形成された複数のヘッドチップ1を、表面に各々の接続電極と対応する配線電極23が形成され、ヘッドチップ1に対応するインク導入用連通口が開口形成された1枚の配線基板2に、接続電極と配線電極23とが電気的に接続し、且つ、チャネルの入口がインク導入用連通口に臨むように位置決めして接着すると共に、全てのヘッドチップ1の前面に亘って、全てのチャネルに対応する位置に各々ノズル孔31が形成された1枚のノズルプレート3を貼着する。
【解決手段】駆動電極が形成された駆動壁とチャネルとが交互に並設され、前面及び後面にチャネルの出口及び入口が配置され、後面に駆動電極と電気的に接続する接続電極が形成された複数のヘッドチップ1を、表面に各々の接続電極と対応する配線電極23が形成され、ヘッドチップ1に対応するインク導入用連通口が開口形成された1枚の配線基板2に、接続電極と配線電極23とが電気的に接続し、且つ、チャネルの入口がインク導入用連通口に臨むように位置決めして接着すると共に、全てのヘッドチップ1の前面に亘って、全てのチャネルに対応する位置に各々ノズル孔31が形成された1枚のノズルプレート3を貼着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチチップインクジェットヘッドに関し、詳しくは、複数のヘッドチップを1枚の配線基板の表面に位置決めして配列してなるマルチチップインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、インクジェットヘッドをチャネルの配列方向に沿って長尺となるようにライン化する場合、所望のライン幅となる広幅の1つのヘッドチップ(アクチュエータ)を用いてインクジェットヘッドを構成しようとすると、幅方向に亘って均一な射出特性を有するヘッドチップを作成することが非常に困難であり、また、そのヘッドチップを幅方向に亘って均一に加工することも非常に困難であるという問題がある。更に、数千〜数万のノズルを1ヘッドに納める必要があるため、収率の面で不利があり、また、熱膨張の影響のために接着工程で非常に不利となる。このため、従来、狭幅のヘッドチップを用いて作成したヘッドユニットを複数ユニット使用して、所望のライン幅となるように1つの取付け部材に千鳥状等に配列することで、広幅の1つのインクジェットヘッドを作成するのが一般的である(特許文献1)。
【0003】
このヘッドユニットとは、それ単独でインク吐出による印字が可能なインクジェットヘッドである。
【0004】
しかし、このようなヘッドユニットを複数用いて作成されたインクジェットヘッドの場合、各ヘッドユニットの印字ばらつきを抑えることが困難であり、インクジェットヘッド全体でのインクの着弾位置精度を確保することが困難であるという問題がある。
【0005】
すなわち、複数のヘッドユニットを1つの取付け部材に配列するため、ヘッドユニット各々のアライメント精度はもちろん、ヘッドユニット毎に有しているノズルプレートのアライメントと、そのノズルプレートにノズルを作成する際の加工精度によるばらつき等を総合したノズルの位置精度の他に、各ヘッドユニットのアクチュエータの特性のばらつきが加わるため、インクジェットヘッド全体での印字ばらつきが大きくなってしまい、その結果、取付け位置精度や取付け角度精度、速度ムラによる画像欠陥が発生し易いという問題がある。
【0006】
また、ヘッドユニットを複数用いて長尺あるいは大型の1つのインクジェットヘッドを構成する場合、通常1つのヘッドユニットはヘッドチップの他にヘッドチップと接続する配線類や基板類、ヘッドチップにインク供給するためのマニホールド、これらを内部に収めるための外装部材を有するため、その外形形状はヘッドチップよりも更に大きくなっており、隣接するヘッドユニット同士の間隔をコンパクトにすることが難しい問題もある。このため、インクジェットヘッドが必要以上に大型化してしまう問題がある。
【0007】
更に、1つの長尺あるいは大型のインクジェットヘッドに対して複数設けられるヘッドユニットの各々に個別にインク供給するための供給管を配管しなくてはならず、配管構造が複雑化及び配管作業が煩雑化するという問題、ヘッドユニットの各々に駆動電圧を印加するためのFPCを接続する作業が煩雑であるという問題もある。
【特許文献1】特開2002−292872号公報
【特許文献2】特開2008−6792号公報
【特許文献3】特開2007−83705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、インクジェットヘッドを長尺化あるいは大型化する場合に、印字ばらつきを発生させる要因を少なくできて画像欠陥を発生させ難くすることができると共に、インクジェットヘッドをコンパクトにでき、インク供給のための配管や駆動電圧を印加するためのFPCの接続も簡素化できるマルチチップインクジェットヘッドを提供することを課題とする。
【0009】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0011】
請求項1記載の発明は、圧電素子からなる駆動壁とチャネルとが交互に並設され、前面及び後面にそれぞれチャネルの出口と入口とが配置され、前記駆動壁に駆動電極が形成され、前記後面に前記駆動電極と電気的に接続する接続電極が形成されたヘッドチップを複数有し、前記駆動電極に駆動電圧を印加することによって前記チャネル内のインクをノズルから吐出するマルチチップインクジェットヘッドであって、
複数の前記ヘッドチップを、表面に前記ヘッドチップの各々の前記接続電極と対応する配線電極が形成されると共に前記ヘッドチップに対応するインク導入用連通口が開口形成された1枚の配線基板に、前記接続電極と前記配線電極とが電気的に接続し、且つ、前記ヘッドチップの前記チャネルの入口が前記インク導入用連通口に臨むように位置決めして接着すると共に、
全ての前記ヘッドチップの前面に亘って、該全てのヘッドチップの前記チャネルに対応する位置に各々ノズル孔が形成された1枚のノズルプレートを貼着してなることを特徴とするマルチチップインクジェットヘッドである。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記配線電極は、前記ヘッドチップの前記接続電極に対応する前記インク導入用連通口から前記配線基板の外端部にかけて形成されており、該配線基板表面の外端部の前記配線電極に、駆動ICからの駆動電圧を伝達する配線が形成されたFPCが電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記配線基板の裏面側に、前記インク導入用連通口を通して全ての前記ヘッドチップに対して共通にインクを供給する1つのインクマニホールドが接合されることを特徴とする請求項1又は2記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0014】
請求項4記載の発明は、複数の前記ヘッドチップを、前記チャネルの並び方向に沿い、且つ、隣接する前記ヘッドチップで前記チャネルのピッチが等ピッチとなるように、前記配線基板の表面に配列することによりラインタイプのインクジェットヘッドを構成してなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0015】
請求項5記載の発明は、複数の前記ヘッドチップは、異なるウエハーから切り出されたヘッドチップ同士が隣接するように配列されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0016】
請求項6記載の発明は、複数の前記ヘッドチップ間に、前記配線基板の表面からの高さが前記ヘッドチップの前面の高さと同等となるスペーサー部材を設け、1枚の前記ノズルプレートを、全ての前記ヘッドチップの前面と前記スペーサー部材の表面とに亘って貼着してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0017】
請求項7記載の発明は、前記配線基板の表面の所定位置に、複数の前記ヘッドチップ毎に対応する位置決めマークが形成されており、複数の前記ヘッドチップの各々は前記位置決めマークによって位置決めされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0018】
請求項8記載の発明は、前記位置決めマークは、前記ヘッドチップの前記チャネルの配列方向と直交する方向に延び、且つ、両外側縁が平行な第1の直線パターンを有しており、
前記ヘッドチップの前記後面と接する側面に、前記第1の直線パターンと対応する位置に、前記ヘッドチップの前記前面と前記後面とに亘り、前記第1の直線パターンの幅と同一幅で、且つ、対向する内側壁面が平行な直線状の溝が加工されており、
前記配線基板の表面に接着された前記ヘッドチップの前記前面側から見て、前記溝内に、該溝内の対向する内側壁面と前記第1の直線パターンの両外側縁が一致して見えるように複数の前記ヘッドチップの各々が位置決めされていることを特徴とする請求項7記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0019】
請求項9記載の発明は、前記第1の直線パターンは、所定間隔をおいた2本の平行な直線パターンからなることを特徴とする請求項8記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0020】
請求項10記載の発明は、前記第1の直線パターンは、前記配線基板の表面の所定位置に、前記配線電極と同一の金属材料を用いてパターン形成されていることを特徴とする請求項8又は9記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0021】
請求項11記載の発明は、前記配線基板の表面の所定位置に、前記ヘッドチップの前記チャネルの配列方向と平行な側面を位置決めするためのパターンであって、前記第1の直線パターンと直交する直線部分を有する第2の直線パターンが形成されており、
前記配線基板の表面に接合された前記ヘッドチップの前記前面側から見て、前記ヘッドチップの前記後面の外縁が、前記第2の直線パターンの前記直線部分と一致して見えるように位置決めされていることを特徴とする請求項8、9又は10記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0022】
請求項12記載の発明は、前記第2の直線パターンは、前記配線基板の表面の所定位置に、前記配線電極と同一の金属材料を用いてパターン形成されていることを特徴とする請求項11記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、1枚の配線基板に、圧電素子からなる駆動壁とチャネルとが交互に並設され、前面及び後面にそれぞれチャネルの出口と入口とが配置され、駆動壁に駆動電極が形成され、後面に駆動電極と電気的に接続する接続電極が形成された複数のヘッドチップが位置決めされて配列され、その全てのヘッドチップの前面に亘って1枚のノズルプレートが貼着され、全てのヘッドチップでノズルプレートを共通とするので、各ヘッドチップはノズルプレートに形成されたノズル孔と各チャネルとが連通し得る程度のある範囲の精度で接着されていればよく、インクの着弾位置精度を確保するために各ヘッドチップの取付け位置に厳格な精度が要求されることはなくなる。このため、印字ばらつきを発生させる要因は、1枚のノズルプレートにノズル孔を形成する際の加工精度によるばらつきと、各ヘッドチップの特性ばらつきだけとなる。
【0024】
また、配線基板の表面に複数のヘッドチップだけを配列することで長尺化あるいは大型化できるため、ヘッドチップ相互の位置を近接させることができ、インクジェットヘッド全体のコンパクト化が可能となる。
【0025】
更に、配線基板に各ヘッドチップにインク供給するためのインク導入用連通口が形成され、この配線基板の裏面側から全てのヘッドチップに対するインク供給を行うことができるため、インク供給のための配管作業及び配管構造が簡素化できる。
【0026】
しかも、各ヘッドチップに対する駆動電圧の印加は、配線基板の同一表面に形成された配線電極に対してFPC接続すればよいため、FPCの接続作業も簡素化できる。
【0027】
従って、インクジェットヘッドを長尺化あるいは大型化する場合に、印字ばらつきを発生させる要因を少なくできて画像欠陥を発生させ難くすることができると共に、インクジェットヘッドをコンパクトにでき、インク供給のための配管や駆動電圧を印加するためのFPCの接続も簡素化できるマルチチップインクジェットヘッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0029】
<マルチチップインクジェットヘッドの構造>
全体構造
図1は本発明に係るマルチチップインクジェットヘッドの一態様を示すフルラインタイプのインクジェットヘッドを示す分解斜視図、図2は1つのヘッドチップを後面側から見た部分斜視図、図3は図1中の(iii)−(iii)線に沿う断面図、図4は図1中の(iv)−(iv)線に沿う断面図である。
【0030】
インクジェットヘッドHは、多数のヘッドチップ1が配線基板2上に千鳥状に配列されて構成されている。配線基板2は図1中のX方向に沿って長尺状に形成され、その表面に6つのヘッドチップ1がY方向に2列となるように配列されているが、ヘッドチップ1の数は特に限定されない。ヘッドチップ1には、例えばPZT等の分極処理された圧電素子からなる駆動壁11と、インク室となるチャネル12とが交互に並設されたチャネル列が、図2中の上下方向に2列に並設されている。
【0031】
配線基板2の表面には、複数配列されたヘッドチップ1の間に、配線基板2の表面からの高さがヘッドチップ1の前面1aの高さと同等となるように形成されたスペーサー部材5が接着されている。
【0032】
全てのヘッドチップ1の前面1aとスペーサー部材5の表面とに亘って、1枚のノズルプレート3が貼着されている。ノズルプレート3には、各ヘッドチップ1の各チャネル12に対応する位置に、チャネル12内と連通する多数のノズル孔31が開設されている。
【0033】
配線基板2の裏面側(ヘッドチップ1の接着面と反対面側)には、全てのヘッドチップ1に対して共通にインクを供給するための1つのインクマニホールド6が接合されている。
【0034】
配線基板2は複数のヘッドチップ1及びスペーサー部材5の接着領域よりも側方に大きくはみ出す程度の大きさを有しており、その表面の外端部にFPC(フレキシブル配線基板)7A、7Bが接合される。各FPC7A、7Bは、不図示の駆動ICからの駆動電圧を各ヘッドチップ1の各チャネル12内に形成されている駆動電極13に伝達する。
【0035】
かかるインクジェットヘッドHは、FPC7A、7Bを介して印加された駆動ICからの駆動電圧によって、圧電素子からなる駆動壁11をくの字状に変形させてチャネル12内の容積を縮小させ、ノズル孔31から図1中のZ方向に向けてインクを吐出するようになっている。
【0036】
なお、XYZは互いに直交する方向である。また、本発明において、ヘッドチップ1において、インクが吐出される側の面を「前面1a」といい、その反対側の面を「後面1b」という。また、ヘッドチップ1において並設されるチャネル12を挟んで図示上下に位置する側面をそれぞれ「上面1c」及び「下面1d」という。前面1aと後面1bとは実質的に平行であり、上面1cと下面1dとは実質的に平行である。
【0037】
ヘッドチップ
複数設けられる各ヘッドチップ1は同一構造であり、前面1a、後面1b、これらに挟まれる側面である上面1c、下面1d及び2つの端面1eを有する直方体形状を呈している。
【0038】
ヘッドチップ1における各チャネル12の形状は、両側壁がヘッドチップ1の上面1c及び下面1dに対してほぼ垂直方向に延びており、そして互いに平行である。ヘッドチップ1の前面1a及び後面1bには、それぞれ各チャネル12の前面側の開口部121と後面側の開口部122とが対向している。各チャネル12は、その後面側の開口部122から前面側の開口部121に亘る長さ方向で大きさと形状がほぼ変わらないストレートタイプとなる所謂ハーモニカ型のヘッドチップ構造を形成している。
【0039】
本実施形態に示すヘッドチップ1は、駆動壁11を挟んで並設される複数のチャネル12によって構成されるチャネル列が2列となるものを例示しており、各チャネル列間では、チャネル12のピッチは半ピッチずれて形成されている。本発明は配線基板2の同一表面に、これら複数のヘッドチップ1だけを配列するため、隣接するヘッドチップ1との間に外装部材等の他の部材(スペーサー部材5を除く)を介在させる必要がなく、隣接するヘッドチップ1同士を密接させる等というように、互いの位置を可及的近接させることが可能である。このため、複数のヘッドチップ1を配列してもインクジェットヘッドHとしての大きさをコンパクトとすることができる。
【0040】
各チャネル12の内面全面には、それぞれNi、Co、Cu、Al等の金属材料によって駆動電極13が密着形成されている。ヘッドチップ1は、この駆動電極13に所定の駆動電圧を印加することによって、駆動壁11がくの字状に変形し、チャネル12内のインクをノズル孔31から吐出する。
【0041】
また、ヘッドチップ1の後面1bには、各チャネル12内の駆動電極13と電気的に接続する接続電極14が、該駆動電極13と同様の金属材料によって、各チャネル12内からそれぞれ近接する上面1c側の端縁又は下面1d側の端縁に向けて引き出し形成されている。
【0042】
ヘッドチップ1の上面1cには、最外端のチャネル12よりも外側となる各位置に、ヘッドチップ1の前面1aと後面1bとに亘る直線状の位置確認用溝15が形成されている。位置確認用溝15は、図2において示されていない反対側の最外端のチャネル12の外側にも同様に形成されている。
【0043】
図5に1つの位置確認用溝15の部分を拡大して示す。同図に示すように、位置確認用溝15内の対向する内側壁面151、151は互いに平行であり、且つ、ヘッドチップ1の上面1cに対して直角に交差している。
【0044】
この位置確認用溝15は、詳細については後述するが、配線基板2の表面に形成された位置決めマーク4の第1の直線パターンと対応させることによってヘッドチップ1の位置決めを行う際に利用されるものであり、1枚のウエハーから複数のヘッドチップ1を切り出し加工するに先立って、予めダイシングソーによって、溝全長に亘って一定深さとなるように研削加工される。
【0045】
その幅(内側壁面151、151間の距離)は、後述する第1の直線パターンの外側縁の幅と同一となるように形成されるが、位置決め時の画像認識を容易に行うことができるようにする観点から、また、加工時の効率を考え、ウエハー外形をカットする際に使用されるダイシングソーのブレード幅と等しくしておくことが好ましく、0.2〜1mmとすることが好ましい。深さは、前述の幅の1〜2倍程度とすることが好ましい。
【0046】
配線基板
配線基板2は、例えば非分極のPZTやAlN−BN、AlN等のセラミックス材料からなる板状の基板によって矩形状に形成されている。また、基板材料にはガラスやポリイミドLCP等を用いることもできる。ガラスとしては、圧電材料の熱膨張係数がほぼ同じ値であるパイレックス(登録商標)やテンパックス(登録商標)を好ましく使用することができる。配線基板2を構成する材料は1枚板に限らず、薄板状の基板材料を複数枚積層して所望の厚みとなるように形成してもよい。
【0047】
本実施形態に示す配線基板2は、少なくともヘッドチップ1をY方向に沿って2列に配列可能な幅以上の幅を有しており、チャネル列方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に延びて大きく張り出した外端部21A、21Bを有している。この外端部21A、21Bは、それぞれFPC7A、7Bとの電気的接続を行うための接続部とされている。
【0048】
図6はヘッドチップ1を接合する前の配線基板2の表面の一部を示している。同図に示すように、各ヘッドチップ1が千鳥状に配列されて接合される部位に対応する位置に、それぞれ各ヘッドチップ1のチャネル列方向に沿うように延びるインク導入用連通口22が、複数のヘッドチップ1の各々に対応するように個別に開口形成されている。
【0049】
このインク導入用連通口22は、配線基板2の裏面側に接合されるインクマニホールド6内のインクをヘッドチップ1の各チャネル12内に供給するための流路となるものである。各インク導入用連通口22は、対応する1つのヘッドチップ1の後面1bの面積よりも小さく、且つ、該後面1bに開口する全てのチャネル12を内部に収めることができる程度の開口面積を有している。
【0050】
インク導入用連通口22は、エンドミルによる機械加工や、レーザーによる加工、サンドブラストによる加工によって形成することができる。量産性や加工の容易さの観点からはサンドブラストによる加工が好ましい。サンドブラストによる加工によれば、このインク導入用連通口22の他、配線基板2の外形打ち抜き加工やインクマニホールド6の位置決め等に使用される不図示の穴や凹部を形成することが容易となる利点もある。
【0051】
インク導入用連通口22の加工は正確に行う必要があるため、サンドブラストによる加工の場合、配線基板2の両面から加工を行うことが好ましい。この場合、後述する配線電極23を形成していない裏面側から所望の穴径より大きな凹部を作成し、その後、配線電極23が形成された表面側から加工を行って貫通させることにより、精密な加工精度を得ることができる。
【0052】
配線電極23は、ヘッドチップ1の後面に形成された接続電極14に対応するように、各ヘッドチップ1の各接続電極14と同数且つ同ピッチで配線基板2の表面に形成されている。
【0053】
なお、図中では、1つのヘッドチップ1の一方のチャネル列に対応する複数本の配線電極をまとめて符号23で示している。
【0054】
配線電極23の各々は、駆動電極13や接続電極14と同様の金属材料を用い、めっき法、スパッタリング法、蒸着法等によってパターニングされる。コストやハンドリングの面からは金属材料としてAlを用いたスパッタリング法や蒸着法が好ましい。
【0055】
本実施形態では、ヘッドチップ1が2列のチャネル列を有するため、各チャネル列のチャネル12の接続電極14との電気的接続を行うため、1つのヘッドチップ1に対応する配線電極23は、配線基板2の両外端部21A、21Bにそれぞれ延びて形成されている。すなわち、1つのヘッドチップ1に対応する配線電極23は、対応するインク導入用連通口22の長辺側の2つの開口縁22a、22bもしくはその近傍位置から外端部21A、21Bにかけて形成されており、各ヘッドチップ1の後面1bが配線基板2の表面に適正に位置決めされて接合される際に、対応する接続電極14と1対1に電気的に接続される。各ヘッドチップ1から外端部21A、21Bに向けてはみ出した配線電極23は配線基板2の表面に露出し、この露出した部分がそれぞれFPC7A、7Bを接続するための接続部とされる。
【0056】
開口縁22aは配線基板2の一方の外端部21Aと同一側に位置し、開口縁22bは配線基板2の他方の外端部21Bと同一側に位置している。
【0057】
ノズルプレート
ノズルプレート3は、配線基板2の表面に接着される全てのヘッドチップ1と各ヘッドチップ1の間に設けられるスペーサー部材5の表面を覆うことができる程度の大きさを有する1枚のシート状の材料によって形成されている。この材料には、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン等の樹脂材料の他、PZTとの線膨張率が近いシリコン等を用いることができる。
【0058】
ノズルプレート3には、ヘッドチップ1及びスペーサー部材5に貼着する前に、予め全てのヘッドチップ1の各チャネル12に対応する位置に、ノズル孔31がレーザー加工によって高精度に位置決めされて形成されており、このノズル孔31を加工済みのノズルプレート3を、配線基板2の表面に全てのヘッドチップ1及びスペーサー部材5が接着された後の該ヘッドチップ1及びスペーサー部材5の表面に対して、各ノズル孔31と各チャネル12とを位置合わせして接着剤を用いて貼着される。
【0059】
インクジェットヘッドの印字ばらつきを発生させる要因の一つは、隣接するヘッドチップ1の間の取付け位置ずれにあり、従来のように複数のヘッドユニットを配列した場合は、通常、全てのヘッドユニットに亘ってノズルピッチが等しくなるよう、隣接するヘッドユニット相互の取付け位置に厳密な精度が要求されるが、本発明では複数配列されたヘッドチップ1に対してノズルプレート3を共通とし、全てのノズル孔31を予め1枚のノズルプレート3に形成されるため、全てのノズル孔31のピッチはノズル孔31の加工精度に依存して高精度に加工され、全てのヘッドチップ1に亘って等ピッチとなるように形成することができ、また、複数のヘッドチップ1の取付け位置精度は各チャネル12とノズル孔31とが対応し得る程度で足り、ヘッドチップ1の個々の厳密な取付け位置精度は要求されない。
【0060】
スペーサー部材
スペーサー部材5は、配線基板2上において隣接するヘッドチップ1の隙間を埋めるためのものであり、配線基板5の表面からヘッドチップ1の前面1aまでの高さと同一高さに形成されることによって、全てのヘッドチップ1の前面1aとスペーサー部材5の表面とが平面視で矩形状の同一平面となるように形成されている。
【0061】
スペーサー部材5は、図示するように全てのヘッドチップ1の間に亘って一体の一つのスペーサー部材5として形成されていてもよいが、複数に分割されていてもよい。
【0062】
このスペーサー部材5の材質としては、未分極のPZT、ガラス、LCP(液晶ポリマー部材)、AlN(窒化アルミ)等を使用することが、ヘッドチップ1との線膨張係数が近く、高い精度を維持できるために好ましく、その中でも加工性の観点からPZTを用いることが好ましい。
【0063】
なお、本発明におけるスペーサー部材5は、複数のヘッドチップ1が配列された後に形成される隙間を必要により埋めるためのものであり、隣接するヘッドチップ1の取付け位置に対して何ら影響を与えることはない。また、ノズルプレート3を表面平滑となるように貼着するのに支障が生じなければ、スペーサー部材5は必ずしも設けなくてもよい。
【0064】
インクマニホールド
インクマニホールド6は、配線基板2に開口形成された全てのインク導入用連通口22を囲むことができる程度の開口61を有する箱型形状を呈しており、この開口62が配線基板2の裏面側に対向し、その開口62内に全てのインク導入用連通口22が収まるように位置決めされて接着剤を用いて接着されている。62はインクマニホールド6内にインクを導入する導入口である。
【0065】
このインクマニホールド6は、配線基板2に配列された全てのヘッドチップ1のチャネル12内にインク導入用連通口22を介して内部のインクを共通に供給する。このため、複数のヘッドチップ1が配列されたインクジェットヘッドHに対して、この1つのインクマニホールド6に対してのみインクを供給すればよく、導入口62に不図示のインク供給管を接続するだけでインク供給のための配管作業が完了する。従って、配管作業及び配管構造が極めて簡素化できる。
【0066】
FPC
FPC7A、7Bは、一面に、配線基板2の表面に形成されている各配線電極23と同数且つ同ピッチで配線71が予めパターニングされており、配線基板2の各外端部21A、21Bにおいて、各配線電極23と各配線71とが位置決めされ、互いに電気的接続されるように接合されている。
【0067】
なお、図中では、複数本の配線をまとめて符号71で示している。
【0068】
本発明では、1枚の配線基板2の表面に複数のヘッドチップ1が配列され、各ヘッドチップ1に対する駆動電圧印加のための配線電極23が、この配線基板2の同一表面上に全て配列されるため、配線電極23の各々に対するFPC7A、7Bの各配線71との電気的接続をこの配線基板2の表面上だけで行うことができる。このため、FPC7A、7Bの接続作業を表面側のみから行うことができるため極めて簡素化できる。
【0069】
本実施形態では、配線基板2の表面において、千鳥状に配列された複数のヘッドチップ1を挟んでその両側にそれぞれ配線電極23が振り分けられて引き出されており、それぞれ1枚ずつのFPC7AとFPC7Bが接続されている。すなわち、本発明では、FPCの接続を配線基板2の表面だけで行うことができるため、配線基板2の外端部21A又は21Bに配列される全てのヘッドチップ1の配線電極23に対して共通の1枚のFPCで接続することが可能である。
【0070】
また、本発明では、図示しないが、例えば配線基板2に配列される6のヘッドチップ1のうちの配線基板2の同一外端部21A又は21Bにおいて隣接する2つヘッドチップ1の配線電極23をまとめて1枚のFPCで接続するといったこともでき、柔軟性の高いFPC接続構成を採ることができる。
【0071】
もちろん、複数のヘッドチップ1の各々の配線電極23に対してヘッドチップ1毎の個別のFPCを用いて接続するようにしてもよい。この場合でも、上述したように、FPCとの接続作業は配線基板2の表面だけで行うことができるため、従来に比べて格段に作業性に優れる。
【0072】
位置決めマーク
図6に示すように、配線基板2の表面には、各インク導入用連通口22に対応し、該インク導入用連通口22の長さ方向(X方向)の端部外側に、それぞれヘッドチップ1を位置決めする際の位置決めマーク4が形成されている。各位置決めマーク4相互の位置は正確に規定されており、ヘッドチップ1をこの位置決めマーク4に従って位置決めすることで、各ヘッドチップ1相互の位置を正確に規定することができる。
【0073】
各位置決めマーク4は、配線電極23と同一の金属材料によって、該配線電極23の形成と同一工程で、スパッタリング法や蒸着法等によってパターン形成されている。従って、通常のパターニング技術を使用して、その各々の位置及び位置決めマーク4を構成する各々の直線の寸法を高精度にパターン形成することができる。
【0074】
この位置決めマーク4は、1つのインク導入用連通口22に対して、すなわち1つのヘッドチップ1に対応して、いずれか一方端部外側に1つあればよいが、両端部外側にそれぞれ形成すると、各ヘッドチップ1のチャネル列方向の直線性を保つことができ、本実施形態のようなフルラインタイプのインクジェットヘッドの場合には特に好ましい。
【0075】
図7は1つの位置決めマーク4の詳細を示している。
【0076】
位置決めマーク4は、互いに平行な所定幅の2本の平行枠線部41、42を有している。この平行枠線部41、42の内側縁41a、42a間の距離は、ヘッドチップ1の上面1cと下面1dとの間の距離と等しくなるように設定されており、この間にヘッドチップ1の後面1bの上面1cと接する外縁及び下面1dと接する外縁が平行に収まるように位置決めを行うためのものである。
【0077】
なお、図中下側の平行枠線部42は、2つの直線部分421、422に分割されているが、これら直線部分421、422は同一直線状に配列されており、1本の平行枠線部42とみなすことができる。
【0078】
位置決めマーク4においてインク導入用連通口22から遠い側の端部には、各平行枠線部41、42間に亘って、該平行枠線部41、42と直交する端部位置決め直線43を有している。この端部位置決め直線43は、ヘッドチップ1の後面1bがチャネル列方向の端面1e(図2)と接する外縁の位置決めを行うためのものであり、ここでは平行枠線部41、42と同幅の複数の矩形状部43a、43bが、平行枠線部41、42間に亘って千鳥状に配列されることにより、矩形状部43aの列と矩形状部43bの列の境界によって形成されている。この端部位置決め直線43は、矩形状部43aの列と矩形状部43bの列の境界間に所定の間隙を設けることによって、所定の幅を有する間隙として形成されていてもよい。
【0079】
一方の平行枠線部42には、該平行枠線部42の端部から決まった位置に、平行枠線部41、42と同幅に形成された2本の位置確認用直線部44、45を有している。各位置確認用直線部44、45は平行枠線部42と直交するように形成されている。従って、適正に接合されたヘッドチップ1に対して、そのチャネル12の配列方向と直交する方向(Y方向)に延びている。
【0080】
位置確認用直線部44、45間には所定幅の間隙が形成されており、平行枠線部42の直線部分421は一方の位置確認用直線部44と直角に接続し、直線部分422は他方の位置確認用直線部45と直角に接続している。
【0081】
位置確認用直線部44、45のそれぞれの外側縁44a、45aは直線状且つ互いに平行である。外側縁44a、45a間の距離は、ヘッドチップ1に形成されている位置確認用溝15の内側壁面151、151間の距離と等しく形成されている。これら外側縁44a、45aによって第1の直線パターンを構成しており、これら外側縁44a、45aと直角に接する平行枠線部42の内側縁部42aによって第2の直線パターンを構成している。
【0082】
第1の直線パターンは、互いに平行な2つの外側縁44a、45aを有していればよく、2本の位置確認用直線部44、45によって形成されるものに限らず、1本の直線部の両外側縁によって形成されるものであってもよいが、本実施形態のように2本の位置確認用直線部44、45によって形成されるものが好ましい。
【0083】
なお、46は接着剤保持用直線部であり、ヘッドチップ1の後面1bと配線基板2の表面との間に塗布された接着剤を保持して周囲への流出を防止するように機能する。
【0084】
<ヘッドチップの製造方法>
ここで、ヘッドチップ1の製造方法の一例を図8、図9を用いて説明する。
【0085】
まず、1枚の基板100上に、分極処理されたPZT等からなる圧電素子基板101をエポキシ系接着剤を用いて接合し、更に、その圧電素子基板101の表面にドライフィルム102を貼着する(図8(a))。
【0086】
次いで、そのドライフィルム102の側から、ダイシングブレード等を用いて複数の平行な溝103を研削する。各溝103は圧電素子基板101の一方の端から他方の端に亘り、且つ、基板100にほぼ至る程度の一定の深さで研削することで、長さ方向で大きさと形状がほぼ変わらないストレート状に形成する(図8(b))。
【0087】
次いで、溝103を研削した側から、Ni、Co、Cu、Al等の金属材料をスパッタリング法、蒸着法等によって適用し、削り残されたドライフィルム102の上面及び各溝103の内面に金属膜104を形成する(図8(c))。
【0088】
その後、ドライフィルム102をその表面に形成された金属膜104と共に除去することにより、各溝103の内面のみに金属膜104が形成された基板105を得る。そして、同様に形成された基板105を2枚用意し、各基板105の溝103同士が互いに合致するように位置合わせして、エポキシ系接着剤等を用いて接合する(図8(d))。接合された溝103同士によってチャネル12が形成され、該チャネル12間の隔壁が駆動壁13となる。
【0089】
この他にも、図示しないが、分極方向の異なる薄板と厚板の2枚の圧電素子基板を貼り合わせ、液体レジストをスピンコーターで塗布し、露光現像してチャネルとなる溝をダイシングした後、めっき等によって駆動電極を形成し、溝を覆うようにカバー基板を貼着することによっても上記と同様の基板を作成することができる。
【0090】
次いで、このようにして得られた同一の基板を2枚用意し、互いのチャネル12のピッチが半ピッチずれるように重ね合わせて接着して1枚のウエハー106を作成し、その上面から、ダイシングソーDSを用いて、チャネル12の長さ方向と平行となるように位置確認用溝15を直線状に研削加工する(図9(a))。
【0091】
ダイシングソーDSは回転によって溝研削を行うものであり、また、ダイシングソーDSとウエハー106とを機械的精度によって高精度に相対移動させることができるため、位置確認用溝15の対向する内側壁面151、151は高精度に平行となり、且つ、ヘッドチッブ1の上面1cに対して高精度に直交し、溝全長に亘って一定深さとなるように形成することができる。
【0092】
その後、ウエハー106をチャネル12の長さ方向と直交する方向に沿って切断することにより、2列のチャネル列を有する複数個のハーモニカ型のヘッドチップ1を一度に作成する。カットラインC、C…間の幅は、それによって作製されるヘッドチップ1、1…のチャネル12の駆動長(L長)を決定するものであり、この駆動長に応じて適宜決定される(図9(b))。
【0093】
次いで、ウエハー106から切り出されたヘッドチップ1の後面に、スパッタリング法、蒸着法等によって選択的に金属材料を適用して接続電極14を形成することで、図2に示すように、後面1bに接続電極14を有するヘッドチップ1を作成する。
【0094】
<ヘッドチップの位置決め方法>
次に、各ヘッドチップ1を配線基板2の表面に位置決めして接合し、フルラインタイプのインクジェットヘッドHを製造する方法について説明する。
【0095】
各ヘッドチップ1は、配線基板2の表面に位置決めされた後、加圧及び必要により加熱することで、その後面1bと配線基板2の表面との間に塗布されたエポキシ系接着剤によって接着される。各ヘッドチップ1は、上面1cに形成された位置確認用溝15内に、配線基板2の表面に形成された位置決めマーク4の位置確認用直線部44、45が見えるように配線基板2の表面に仮置きされる。この仮置き時、位置決めマーク4の2本の平行枠線部41、42と、端部位置決め用直線43とを確認することで、概ね位置確認用溝15内に位置確認用直線部44、45が見えるようにヘッドチップ1を置くことが容易となる。
【0096】
ヘッドチップ1の位置確認は、CCD等を用いた画像認識装置を用い、ヘッドチップ1の前面1a側から、位置確認用溝15内を拡大して見下ろすようにして行う。
【0097】
図10は、仮置き直後で、未だ適正な位置及び角度に位置決めされていないヘッドチップ1と位置決めマーク4との位置関係を、ヘッドチップ1の前面1a側から見た状態を示している。
【0098】
この状態では、ヘッドチップ1の位置確認用溝15の対向する内側壁面151、151と位置確認用直線部44、45の外側縁44a、45aとは互いに平行に一致しておらず、ヘッドチップ1には角度ずれが生じている。このとき、画像認識されるヘッドチップ1の上面1cと下面1dの位置も、それぞれ平行枠線部41、42の内側縁41a、42aと平行に一致しておらず、また、ヘッドチップ1の端面1eの位置も端部位置決め直線43と平行に一致していないことがわかる。
【0099】
そこで、画像認識装置を確認しながら、図11に示すように、位置確認用溝15内に、対向する内側壁面151、151と位置確認用直線部44、45の各外側縁44a、45aとが一致して見えるように、ヘッドチップ1の位置を調整する。同様にして全てのヘッドチップ1を1枚の配線基板2の所定の位置に調整する。
【0100】
このようにして、各ヘッドチップ1の位置確認用溝15の各内側壁面151、151と、配線基板2の位置決めマーク4の位置確認用直線部44、45の各外側縁44a、45aとが互いに平行となるように一致させることにより、配線基板2上の全てのヘッドチップ1相互の平行度が確保されると共に、チャネル列方向に沿う方向(X方向)の位置が正確に規定され、隣接するヘッドチップ1間の適正な離間距離が確保される。
【0101】
このような位置決めは、ヘッドチップ1の1側面に形成された位置確認用溝15の対向する内側壁面151、151の2壁面を確認して行うため、少ない視野範囲で2面での平行度の確認を同時に行うことができ、それだけ容易且つ正確な位置決め確認ができる。しかも、この位置確認用溝15の内側壁面151、151は、ヘッドチップ1の外端面の切り出し加工に比べて、ダイシングソーDSによって高精度に加工できるため、より高精度な位置決めを行うことができる。
【0102】
これにより、ヘッドチップ1の後面1bに形成された各接続電極14と配線基板2の表面に形成された各配線電極23とを1対1に正確に位置合わせることができ、また、インクジェットヘッドH全体でのノズルのピッチを均一とすることができ、ピッチむらに起因する画像むらを生じさせるおそれはなくなる。
【0103】
また、ヘッドチップ1の位置調整時、位置確認用溝15の周辺を拡大して認識しているため、同時に画像認識される位置決めマーク4の平行枠線部42の内側縁42aを利用して、この内側縁42aがヘッドチップ1の上面1cの位置と一致して見えるようにヘッドチップ1の位置を調整することで、各ヘッドチップ1のチャネル列方向と直交する方向(Y方向)の位置決めを行うことができる。
【0104】
以上のようにして各ヘッドチップ1を位置決めしたら、配線基板2に対して加圧及び必要により加熱して接着剤を硬化させ、その後、各ヘッドチップ1の間に別途形成しておいたスペーサー部材5を接着剤を用いて接合する。このスペーサー部材5の接合により、各ヘッドチップ1の前面1aはスペーサー部材5の表面と同一平面で繋がり、広い面一状となる矩形状のノズルプレート貼着面が形成される。
【0105】
ノズルプレート3は、このスペーサー部材5を接合することによって形成されるノズルプレート貼着面に相当する大きさに形成されており、予め各ヘッドチップ1のチャネル12に対応するように、レーザー加工によってノズル孔31が形成されている。ノズル孔31が形成されたノズルプレート3は、接着剤を用いてノズルプレート貼着面に貼着されることで、各ヘッドチップ1の前面1aを覆い、且つ、各ノズル孔31が各チャネル12内と連通することで、該チャネル12内のインクをノズル孔31から吐出可能とする。
【0106】
その後、配線基板2の裏面側にインクマニホールド6を位置決めして接合し、更に、配線基板2の表面の各外端部21A、21BにそれぞれFPC7A、7Bを位置決めして接合する。
【0107】
<ヘッドチップのその他の配列態様>
図9に示したように1枚のウエハー106から切り出されることによってヘッドチップ1が作成される場合、1枚の配線基板2の表面にそのヘッドチップ1を複数配列する際、インクジェットヘッドHの長さ方向に沿って隣接するヘッドチップ1、1は、それぞれ異なるウエハー106から切り出されたヘッドチップ1、1同士であるようにすることが好ましい。
【0108】
同じウエハー106から切り出されたヘッドチップ1の特性は似たような傾向を示すことが知られている。このため、同じウエハー106から切り出されたヘッドチップ1を同じ配線基板2の表面に隣接させて配列することにより形成されたインクジェットヘッドでは、人の目に認識され易い低い空間周波数の画像のスジむらが発生してしまい、画像品質を落としてしまう。
【0109】
図12は、同一ウエハーから切り出されたヘッドチップA1、A2、A3を隣接させて構成した768ノズルのラインタイプのインクジェットヘッドの各ノズルから吐出されるインク滴の速度分布を示している。横軸はノズル数、縦軸はインク滴の吐出速度(m/s)を示している。
【0110】
このように、同一ウエハーから切り出されたヘッドチップA1、A2、A3を隣接させると、例えば図中に示すノズル領域aのように、各ヘッドチップA1、A2、A3のほぼ同一ノズルにおいて、同じような速度分布となる領域が現れる。このようなノズル領域aを有するインクジェットヘッドによって画像を記録すると、人の目に認識され易い低い空間周波数の画像のスジむらとなり、画像品質を大きく落とす原因となる。このような画像のスジむらは、インクジェットヘッドを主走査方向に沿ってスキャンすることにより画像を記録する場合では、間引き射ち等の方法によって異なるノズルで補完することで画像品質の低下を防ぐことが可能であるが、プリンタに固定状に設けられるラインタイプのインクジェットヘッドHの場合はこのような方法を採ることができず、画像のスジむらが顕著に現れてしまう。
【0111】
一方、図13は、それぞれ異なるウエハーから切り出されたのヘッドチップB1、B2、B3を隣接させて上記同様に構成した768ノズルのインクジェットヘッドの各ノズルから吐出されるインク滴の速度分布を示している。
【0112】
このように、それぞれ異なるウエハーから切り出されたヘッドチップB1、B2、B3を隣接させた場合、図12のような同じような速度分布となるノズル領域aは現れず、速度が適度にばらついていることがわかる。これにより、出力画像に現れる人の目に認識され易い低い空間周波数の画像のスジむらを軽減することができ、上述のようにインクジェットヘッドH全体のノズルピッチが均一となるように各ヘッドチップ1を適正位置に位置決めできることと相俟って、更に高品質な出力画像を得ることができる。
【0113】
なお、複数のヘッドチップ1は、配線基板2の表面に千鳥状に配列するものに限らず、様々な配列態様とすることができる。
【0114】
また、本発明はラインヘッドを構成する場合に限らず、複数のヘッドチップ1を用いて多ノズルのインクジェットヘッドを構成する場合に同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明に係るマルチチップインクジェットヘッドの一例を示す斜視図
【図2】1つのヘッドチップを後面側から見た部分斜視図
【図3】図1中の(iii)−(iii)線に沿う断面図
【図4】図1中の(iv)−(iv)線に沿う断面図
【図5】位置確認用溝の部分拡大図
【図6】ヘッドチップを接合する前の配線基板の表面の部分平面図
【図7】1つの位置決めマークの詳細を示す拡大図
【図8】(a)〜(d)はヘッドチップの製造方法の一例を説明する図
【図9】(a)は1枚のウエハーに位置確認用溝を形成する様子を示す斜視図、(b)は1枚のウエハーから複数のヘッドチップを切り出し加工する様子を示す斜視図
【図10】仮置き直後で、未だ適正な位置及び角度に位置決めされていないヘッドチップと位置決めマークとの位置関係をヘッドチップの前面側から見た図
【図11】ヘッドチップから適正な位置及び角度に位置決めされたときのヘッドチップと位置決めマークとの位置関係をヘッドチップの前面側から見た図
【図12】同一ウエハーから切り出されたヘッドチップを隣接させて構成したインクジェットヘッドの各ノズルから吐出されるインク滴の速度分布を示すグラフ
【図13】それぞれ異なるウエハーから切り出されたヘッドチップを隣接させて構成したインクジェットヘッドの各ノズルから吐出されるインク滴の速度分布を示すグラフ
【符号の説明】
【0116】
1:ヘッドチップ
1a:前面
1b:後面
1c:上面
1d:下面
1e:端面
11:駆動壁
12:インクチャネル
121:前面側の開口部
122:後面側の開口部
13:駆動電極
14:接続電極
15位置確認用溝
151:内側壁面
2:配線基板
21A、21B:外端部
22:インク導入用連通口
23:配線電極
3:ノズルプレート
31:ノズル
4:位置決めマーク
41、42:平行枠線部
41a:内側縁部
42a:内側縁部(第2の直線パターン)
421、422:直線部分
43:端部位置決め用直線
43a、43b:矩形状部
44、45:位置確認用直線部
44a、45a:外側縁部(第1の直線パターン)
46:接着剤保持用直線部
5:スペーサー部材
6:インクマニホールド
61:開口
62:導入口
7A、7B:FPC
71:配線
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチチップインクジェットヘッドに関し、詳しくは、複数のヘッドチップを1枚の配線基板の表面に位置決めして配列してなるマルチチップインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、インクジェットヘッドをチャネルの配列方向に沿って長尺となるようにライン化する場合、所望のライン幅となる広幅の1つのヘッドチップ(アクチュエータ)を用いてインクジェットヘッドを構成しようとすると、幅方向に亘って均一な射出特性を有するヘッドチップを作成することが非常に困難であり、また、そのヘッドチップを幅方向に亘って均一に加工することも非常に困難であるという問題がある。更に、数千〜数万のノズルを1ヘッドに納める必要があるため、収率の面で不利があり、また、熱膨張の影響のために接着工程で非常に不利となる。このため、従来、狭幅のヘッドチップを用いて作成したヘッドユニットを複数ユニット使用して、所望のライン幅となるように1つの取付け部材に千鳥状等に配列することで、広幅の1つのインクジェットヘッドを作成するのが一般的である(特許文献1)。
【0003】
このヘッドユニットとは、それ単独でインク吐出による印字が可能なインクジェットヘッドである。
【0004】
しかし、このようなヘッドユニットを複数用いて作成されたインクジェットヘッドの場合、各ヘッドユニットの印字ばらつきを抑えることが困難であり、インクジェットヘッド全体でのインクの着弾位置精度を確保することが困難であるという問題がある。
【0005】
すなわち、複数のヘッドユニットを1つの取付け部材に配列するため、ヘッドユニット各々のアライメント精度はもちろん、ヘッドユニット毎に有しているノズルプレートのアライメントと、そのノズルプレートにノズルを作成する際の加工精度によるばらつき等を総合したノズルの位置精度の他に、各ヘッドユニットのアクチュエータの特性のばらつきが加わるため、インクジェットヘッド全体での印字ばらつきが大きくなってしまい、その結果、取付け位置精度や取付け角度精度、速度ムラによる画像欠陥が発生し易いという問題がある。
【0006】
また、ヘッドユニットを複数用いて長尺あるいは大型の1つのインクジェットヘッドを構成する場合、通常1つのヘッドユニットはヘッドチップの他にヘッドチップと接続する配線類や基板類、ヘッドチップにインク供給するためのマニホールド、これらを内部に収めるための外装部材を有するため、その外形形状はヘッドチップよりも更に大きくなっており、隣接するヘッドユニット同士の間隔をコンパクトにすることが難しい問題もある。このため、インクジェットヘッドが必要以上に大型化してしまう問題がある。
【0007】
更に、1つの長尺あるいは大型のインクジェットヘッドに対して複数設けられるヘッドユニットの各々に個別にインク供給するための供給管を配管しなくてはならず、配管構造が複雑化及び配管作業が煩雑化するという問題、ヘッドユニットの各々に駆動電圧を印加するためのFPCを接続する作業が煩雑であるという問題もある。
【特許文献1】特開2002−292872号公報
【特許文献2】特開2008−6792号公報
【特許文献3】特開2007−83705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、インクジェットヘッドを長尺化あるいは大型化する場合に、印字ばらつきを発生させる要因を少なくできて画像欠陥を発生させ難くすることができると共に、インクジェットヘッドをコンパクトにでき、インク供給のための配管や駆動電圧を印加するためのFPCの接続も簡素化できるマルチチップインクジェットヘッドを提供することを課題とする。
【0009】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0011】
請求項1記載の発明は、圧電素子からなる駆動壁とチャネルとが交互に並設され、前面及び後面にそれぞれチャネルの出口と入口とが配置され、前記駆動壁に駆動電極が形成され、前記後面に前記駆動電極と電気的に接続する接続電極が形成されたヘッドチップを複数有し、前記駆動電極に駆動電圧を印加することによって前記チャネル内のインクをノズルから吐出するマルチチップインクジェットヘッドであって、
複数の前記ヘッドチップを、表面に前記ヘッドチップの各々の前記接続電極と対応する配線電極が形成されると共に前記ヘッドチップに対応するインク導入用連通口が開口形成された1枚の配線基板に、前記接続電極と前記配線電極とが電気的に接続し、且つ、前記ヘッドチップの前記チャネルの入口が前記インク導入用連通口に臨むように位置決めして接着すると共に、
全ての前記ヘッドチップの前面に亘って、該全てのヘッドチップの前記チャネルに対応する位置に各々ノズル孔が形成された1枚のノズルプレートを貼着してなることを特徴とするマルチチップインクジェットヘッドである。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記配線電極は、前記ヘッドチップの前記接続電極に対応する前記インク導入用連通口から前記配線基板の外端部にかけて形成されており、該配線基板表面の外端部の前記配線電極に、駆動ICからの駆動電圧を伝達する配線が形成されたFPCが電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記配線基板の裏面側に、前記インク導入用連通口を通して全ての前記ヘッドチップに対して共通にインクを供給する1つのインクマニホールドが接合されることを特徴とする請求項1又は2記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0014】
請求項4記載の発明は、複数の前記ヘッドチップを、前記チャネルの並び方向に沿い、且つ、隣接する前記ヘッドチップで前記チャネルのピッチが等ピッチとなるように、前記配線基板の表面に配列することによりラインタイプのインクジェットヘッドを構成してなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0015】
請求項5記載の発明は、複数の前記ヘッドチップは、異なるウエハーから切り出されたヘッドチップ同士が隣接するように配列されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0016】
請求項6記載の発明は、複数の前記ヘッドチップ間に、前記配線基板の表面からの高さが前記ヘッドチップの前面の高さと同等となるスペーサー部材を設け、1枚の前記ノズルプレートを、全ての前記ヘッドチップの前面と前記スペーサー部材の表面とに亘って貼着してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0017】
請求項7記載の発明は、前記配線基板の表面の所定位置に、複数の前記ヘッドチップ毎に対応する位置決めマークが形成されており、複数の前記ヘッドチップの各々は前記位置決めマークによって位置決めされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0018】
請求項8記載の発明は、前記位置決めマークは、前記ヘッドチップの前記チャネルの配列方向と直交する方向に延び、且つ、両外側縁が平行な第1の直線パターンを有しており、
前記ヘッドチップの前記後面と接する側面に、前記第1の直線パターンと対応する位置に、前記ヘッドチップの前記前面と前記後面とに亘り、前記第1の直線パターンの幅と同一幅で、且つ、対向する内側壁面が平行な直線状の溝が加工されており、
前記配線基板の表面に接着された前記ヘッドチップの前記前面側から見て、前記溝内に、該溝内の対向する内側壁面と前記第1の直線パターンの両外側縁が一致して見えるように複数の前記ヘッドチップの各々が位置決めされていることを特徴とする請求項7記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0019】
請求項9記載の発明は、前記第1の直線パターンは、所定間隔をおいた2本の平行な直線パターンからなることを特徴とする請求項8記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0020】
請求項10記載の発明は、前記第1の直線パターンは、前記配線基板の表面の所定位置に、前記配線電極と同一の金属材料を用いてパターン形成されていることを特徴とする請求項8又は9記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0021】
請求項11記載の発明は、前記配線基板の表面の所定位置に、前記ヘッドチップの前記チャネルの配列方向と平行な側面を位置決めするためのパターンであって、前記第1の直線パターンと直交する直線部分を有する第2の直線パターンが形成されており、
前記配線基板の表面に接合された前記ヘッドチップの前記前面側から見て、前記ヘッドチップの前記後面の外縁が、前記第2の直線パターンの前記直線部分と一致して見えるように位置決めされていることを特徴とする請求項8、9又は10記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【0022】
請求項12記載の発明は、前記第2の直線パターンは、前記配線基板の表面の所定位置に、前記配線電極と同一の金属材料を用いてパターン形成されていることを特徴とする請求項11記載のマルチチップインクジェットヘッドである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、1枚の配線基板に、圧電素子からなる駆動壁とチャネルとが交互に並設され、前面及び後面にそれぞれチャネルの出口と入口とが配置され、駆動壁に駆動電極が形成され、後面に駆動電極と電気的に接続する接続電極が形成された複数のヘッドチップが位置決めされて配列され、その全てのヘッドチップの前面に亘って1枚のノズルプレートが貼着され、全てのヘッドチップでノズルプレートを共通とするので、各ヘッドチップはノズルプレートに形成されたノズル孔と各チャネルとが連通し得る程度のある範囲の精度で接着されていればよく、インクの着弾位置精度を確保するために各ヘッドチップの取付け位置に厳格な精度が要求されることはなくなる。このため、印字ばらつきを発生させる要因は、1枚のノズルプレートにノズル孔を形成する際の加工精度によるばらつきと、各ヘッドチップの特性ばらつきだけとなる。
【0024】
また、配線基板の表面に複数のヘッドチップだけを配列することで長尺化あるいは大型化できるため、ヘッドチップ相互の位置を近接させることができ、インクジェットヘッド全体のコンパクト化が可能となる。
【0025】
更に、配線基板に各ヘッドチップにインク供給するためのインク導入用連通口が形成され、この配線基板の裏面側から全てのヘッドチップに対するインク供給を行うことができるため、インク供給のための配管作業及び配管構造が簡素化できる。
【0026】
しかも、各ヘッドチップに対する駆動電圧の印加は、配線基板の同一表面に形成された配線電極に対してFPC接続すればよいため、FPCの接続作業も簡素化できる。
【0027】
従って、インクジェットヘッドを長尺化あるいは大型化する場合に、印字ばらつきを発生させる要因を少なくできて画像欠陥を発生させ難くすることができると共に、インクジェットヘッドをコンパクトにでき、インク供給のための配管や駆動電圧を印加するためのFPCの接続も簡素化できるマルチチップインクジェットヘッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0029】
<マルチチップインクジェットヘッドの構造>
全体構造
図1は本発明に係るマルチチップインクジェットヘッドの一態様を示すフルラインタイプのインクジェットヘッドを示す分解斜視図、図2は1つのヘッドチップを後面側から見た部分斜視図、図3は図1中の(iii)−(iii)線に沿う断面図、図4は図1中の(iv)−(iv)線に沿う断面図である。
【0030】
インクジェットヘッドHは、多数のヘッドチップ1が配線基板2上に千鳥状に配列されて構成されている。配線基板2は図1中のX方向に沿って長尺状に形成され、その表面に6つのヘッドチップ1がY方向に2列となるように配列されているが、ヘッドチップ1の数は特に限定されない。ヘッドチップ1には、例えばPZT等の分極処理された圧電素子からなる駆動壁11と、インク室となるチャネル12とが交互に並設されたチャネル列が、図2中の上下方向に2列に並設されている。
【0031】
配線基板2の表面には、複数配列されたヘッドチップ1の間に、配線基板2の表面からの高さがヘッドチップ1の前面1aの高さと同等となるように形成されたスペーサー部材5が接着されている。
【0032】
全てのヘッドチップ1の前面1aとスペーサー部材5の表面とに亘って、1枚のノズルプレート3が貼着されている。ノズルプレート3には、各ヘッドチップ1の各チャネル12に対応する位置に、チャネル12内と連通する多数のノズル孔31が開設されている。
【0033】
配線基板2の裏面側(ヘッドチップ1の接着面と反対面側)には、全てのヘッドチップ1に対して共通にインクを供給するための1つのインクマニホールド6が接合されている。
【0034】
配線基板2は複数のヘッドチップ1及びスペーサー部材5の接着領域よりも側方に大きくはみ出す程度の大きさを有しており、その表面の外端部にFPC(フレキシブル配線基板)7A、7Bが接合される。各FPC7A、7Bは、不図示の駆動ICからの駆動電圧を各ヘッドチップ1の各チャネル12内に形成されている駆動電極13に伝達する。
【0035】
かかるインクジェットヘッドHは、FPC7A、7Bを介して印加された駆動ICからの駆動電圧によって、圧電素子からなる駆動壁11をくの字状に変形させてチャネル12内の容積を縮小させ、ノズル孔31から図1中のZ方向に向けてインクを吐出するようになっている。
【0036】
なお、XYZは互いに直交する方向である。また、本発明において、ヘッドチップ1において、インクが吐出される側の面を「前面1a」といい、その反対側の面を「後面1b」という。また、ヘッドチップ1において並設されるチャネル12を挟んで図示上下に位置する側面をそれぞれ「上面1c」及び「下面1d」という。前面1aと後面1bとは実質的に平行であり、上面1cと下面1dとは実質的に平行である。
【0037】
ヘッドチップ
複数設けられる各ヘッドチップ1は同一構造であり、前面1a、後面1b、これらに挟まれる側面である上面1c、下面1d及び2つの端面1eを有する直方体形状を呈している。
【0038】
ヘッドチップ1における各チャネル12の形状は、両側壁がヘッドチップ1の上面1c及び下面1dに対してほぼ垂直方向に延びており、そして互いに平行である。ヘッドチップ1の前面1a及び後面1bには、それぞれ各チャネル12の前面側の開口部121と後面側の開口部122とが対向している。各チャネル12は、その後面側の開口部122から前面側の開口部121に亘る長さ方向で大きさと形状がほぼ変わらないストレートタイプとなる所謂ハーモニカ型のヘッドチップ構造を形成している。
【0039】
本実施形態に示すヘッドチップ1は、駆動壁11を挟んで並設される複数のチャネル12によって構成されるチャネル列が2列となるものを例示しており、各チャネル列間では、チャネル12のピッチは半ピッチずれて形成されている。本発明は配線基板2の同一表面に、これら複数のヘッドチップ1だけを配列するため、隣接するヘッドチップ1との間に外装部材等の他の部材(スペーサー部材5を除く)を介在させる必要がなく、隣接するヘッドチップ1同士を密接させる等というように、互いの位置を可及的近接させることが可能である。このため、複数のヘッドチップ1を配列してもインクジェットヘッドHとしての大きさをコンパクトとすることができる。
【0040】
各チャネル12の内面全面には、それぞれNi、Co、Cu、Al等の金属材料によって駆動電極13が密着形成されている。ヘッドチップ1は、この駆動電極13に所定の駆動電圧を印加することによって、駆動壁11がくの字状に変形し、チャネル12内のインクをノズル孔31から吐出する。
【0041】
また、ヘッドチップ1の後面1bには、各チャネル12内の駆動電極13と電気的に接続する接続電極14が、該駆動電極13と同様の金属材料によって、各チャネル12内からそれぞれ近接する上面1c側の端縁又は下面1d側の端縁に向けて引き出し形成されている。
【0042】
ヘッドチップ1の上面1cには、最外端のチャネル12よりも外側となる各位置に、ヘッドチップ1の前面1aと後面1bとに亘る直線状の位置確認用溝15が形成されている。位置確認用溝15は、図2において示されていない反対側の最外端のチャネル12の外側にも同様に形成されている。
【0043】
図5に1つの位置確認用溝15の部分を拡大して示す。同図に示すように、位置確認用溝15内の対向する内側壁面151、151は互いに平行であり、且つ、ヘッドチップ1の上面1cに対して直角に交差している。
【0044】
この位置確認用溝15は、詳細については後述するが、配線基板2の表面に形成された位置決めマーク4の第1の直線パターンと対応させることによってヘッドチップ1の位置決めを行う際に利用されるものであり、1枚のウエハーから複数のヘッドチップ1を切り出し加工するに先立って、予めダイシングソーによって、溝全長に亘って一定深さとなるように研削加工される。
【0045】
その幅(内側壁面151、151間の距離)は、後述する第1の直線パターンの外側縁の幅と同一となるように形成されるが、位置決め時の画像認識を容易に行うことができるようにする観点から、また、加工時の効率を考え、ウエハー外形をカットする際に使用されるダイシングソーのブレード幅と等しくしておくことが好ましく、0.2〜1mmとすることが好ましい。深さは、前述の幅の1〜2倍程度とすることが好ましい。
【0046】
配線基板
配線基板2は、例えば非分極のPZTやAlN−BN、AlN等のセラミックス材料からなる板状の基板によって矩形状に形成されている。また、基板材料にはガラスやポリイミドLCP等を用いることもできる。ガラスとしては、圧電材料の熱膨張係数がほぼ同じ値であるパイレックス(登録商標)やテンパックス(登録商標)を好ましく使用することができる。配線基板2を構成する材料は1枚板に限らず、薄板状の基板材料を複数枚積層して所望の厚みとなるように形成してもよい。
【0047】
本実施形態に示す配線基板2は、少なくともヘッドチップ1をY方向に沿って2列に配列可能な幅以上の幅を有しており、チャネル列方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に延びて大きく張り出した外端部21A、21Bを有している。この外端部21A、21Bは、それぞれFPC7A、7Bとの電気的接続を行うための接続部とされている。
【0048】
図6はヘッドチップ1を接合する前の配線基板2の表面の一部を示している。同図に示すように、各ヘッドチップ1が千鳥状に配列されて接合される部位に対応する位置に、それぞれ各ヘッドチップ1のチャネル列方向に沿うように延びるインク導入用連通口22が、複数のヘッドチップ1の各々に対応するように個別に開口形成されている。
【0049】
このインク導入用連通口22は、配線基板2の裏面側に接合されるインクマニホールド6内のインクをヘッドチップ1の各チャネル12内に供給するための流路となるものである。各インク導入用連通口22は、対応する1つのヘッドチップ1の後面1bの面積よりも小さく、且つ、該後面1bに開口する全てのチャネル12を内部に収めることができる程度の開口面積を有している。
【0050】
インク導入用連通口22は、エンドミルによる機械加工や、レーザーによる加工、サンドブラストによる加工によって形成することができる。量産性や加工の容易さの観点からはサンドブラストによる加工が好ましい。サンドブラストによる加工によれば、このインク導入用連通口22の他、配線基板2の外形打ち抜き加工やインクマニホールド6の位置決め等に使用される不図示の穴や凹部を形成することが容易となる利点もある。
【0051】
インク導入用連通口22の加工は正確に行う必要があるため、サンドブラストによる加工の場合、配線基板2の両面から加工を行うことが好ましい。この場合、後述する配線電極23を形成していない裏面側から所望の穴径より大きな凹部を作成し、その後、配線電極23が形成された表面側から加工を行って貫通させることにより、精密な加工精度を得ることができる。
【0052】
配線電極23は、ヘッドチップ1の後面に形成された接続電極14に対応するように、各ヘッドチップ1の各接続電極14と同数且つ同ピッチで配線基板2の表面に形成されている。
【0053】
なお、図中では、1つのヘッドチップ1の一方のチャネル列に対応する複数本の配線電極をまとめて符号23で示している。
【0054】
配線電極23の各々は、駆動電極13や接続電極14と同様の金属材料を用い、めっき法、スパッタリング法、蒸着法等によってパターニングされる。コストやハンドリングの面からは金属材料としてAlを用いたスパッタリング法や蒸着法が好ましい。
【0055】
本実施形態では、ヘッドチップ1が2列のチャネル列を有するため、各チャネル列のチャネル12の接続電極14との電気的接続を行うため、1つのヘッドチップ1に対応する配線電極23は、配線基板2の両外端部21A、21Bにそれぞれ延びて形成されている。すなわち、1つのヘッドチップ1に対応する配線電極23は、対応するインク導入用連通口22の長辺側の2つの開口縁22a、22bもしくはその近傍位置から外端部21A、21Bにかけて形成されており、各ヘッドチップ1の後面1bが配線基板2の表面に適正に位置決めされて接合される際に、対応する接続電極14と1対1に電気的に接続される。各ヘッドチップ1から外端部21A、21Bに向けてはみ出した配線電極23は配線基板2の表面に露出し、この露出した部分がそれぞれFPC7A、7Bを接続するための接続部とされる。
【0056】
開口縁22aは配線基板2の一方の外端部21Aと同一側に位置し、開口縁22bは配線基板2の他方の外端部21Bと同一側に位置している。
【0057】
ノズルプレート
ノズルプレート3は、配線基板2の表面に接着される全てのヘッドチップ1と各ヘッドチップ1の間に設けられるスペーサー部材5の表面を覆うことができる程度の大きさを有する1枚のシート状の材料によって形成されている。この材料には、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン等の樹脂材料の他、PZTとの線膨張率が近いシリコン等を用いることができる。
【0058】
ノズルプレート3には、ヘッドチップ1及びスペーサー部材5に貼着する前に、予め全てのヘッドチップ1の各チャネル12に対応する位置に、ノズル孔31がレーザー加工によって高精度に位置決めされて形成されており、このノズル孔31を加工済みのノズルプレート3を、配線基板2の表面に全てのヘッドチップ1及びスペーサー部材5が接着された後の該ヘッドチップ1及びスペーサー部材5の表面に対して、各ノズル孔31と各チャネル12とを位置合わせして接着剤を用いて貼着される。
【0059】
インクジェットヘッドの印字ばらつきを発生させる要因の一つは、隣接するヘッドチップ1の間の取付け位置ずれにあり、従来のように複数のヘッドユニットを配列した場合は、通常、全てのヘッドユニットに亘ってノズルピッチが等しくなるよう、隣接するヘッドユニット相互の取付け位置に厳密な精度が要求されるが、本発明では複数配列されたヘッドチップ1に対してノズルプレート3を共通とし、全てのノズル孔31を予め1枚のノズルプレート3に形成されるため、全てのノズル孔31のピッチはノズル孔31の加工精度に依存して高精度に加工され、全てのヘッドチップ1に亘って等ピッチとなるように形成することができ、また、複数のヘッドチップ1の取付け位置精度は各チャネル12とノズル孔31とが対応し得る程度で足り、ヘッドチップ1の個々の厳密な取付け位置精度は要求されない。
【0060】
スペーサー部材
スペーサー部材5は、配線基板2上において隣接するヘッドチップ1の隙間を埋めるためのものであり、配線基板5の表面からヘッドチップ1の前面1aまでの高さと同一高さに形成されることによって、全てのヘッドチップ1の前面1aとスペーサー部材5の表面とが平面視で矩形状の同一平面となるように形成されている。
【0061】
スペーサー部材5は、図示するように全てのヘッドチップ1の間に亘って一体の一つのスペーサー部材5として形成されていてもよいが、複数に分割されていてもよい。
【0062】
このスペーサー部材5の材質としては、未分極のPZT、ガラス、LCP(液晶ポリマー部材)、AlN(窒化アルミ)等を使用することが、ヘッドチップ1との線膨張係数が近く、高い精度を維持できるために好ましく、その中でも加工性の観点からPZTを用いることが好ましい。
【0063】
なお、本発明におけるスペーサー部材5は、複数のヘッドチップ1が配列された後に形成される隙間を必要により埋めるためのものであり、隣接するヘッドチップ1の取付け位置に対して何ら影響を与えることはない。また、ノズルプレート3を表面平滑となるように貼着するのに支障が生じなければ、スペーサー部材5は必ずしも設けなくてもよい。
【0064】
インクマニホールド
インクマニホールド6は、配線基板2に開口形成された全てのインク導入用連通口22を囲むことができる程度の開口61を有する箱型形状を呈しており、この開口62が配線基板2の裏面側に対向し、その開口62内に全てのインク導入用連通口22が収まるように位置決めされて接着剤を用いて接着されている。62はインクマニホールド6内にインクを導入する導入口である。
【0065】
このインクマニホールド6は、配線基板2に配列された全てのヘッドチップ1のチャネル12内にインク導入用連通口22を介して内部のインクを共通に供給する。このため、複数のヘッドチップ1が配列されたインクジェットヘッドHに対して、この1つのインクマニホールド6に対してのみインクを供給すればよく、導入口62に不図示のインク供給管を接続するだけでインク供給のための配管作業が完了する。従って、配管作業及び配管構造が極めて簡素化できる。
【0066】
FPC
FPC7A、7Bは、一面に、配線基板2の表面に形成されている各配線電極23と同数且つ同ピッチで配線71が予めパターニングされており、配線基板2の各外端部21A、21Bにおいて、各配線電極23と各配線71とが位置決めされ、互いに電気的接続されるように接合されている。
【0067】
なお、図中では、複数本の配線をまとめて符号71で示している。
【0068】
本発明では、1枚の配線基板2の表面に複数のヘッドチップ1が配列され、各ヘッドチップ1に対する駆動電圧印加のための配線電極23が、この配線基板2の同一表面上に全て配列されるため、配線電極23の各々に対するFPC7A、7Bの各配線71との電気的接続をこの配線基板2の表面上だけで行うことができる。このため、FPC7A、7Bの接続作業を表面側のみから行うことができるため極めて簡素化できる。
【0069】
本実施形態では、配線基板2の表面において、千鳥状に配列された複数のヘッドチップ1を挟んでその両側にそれぞれ配線電極23が振り分けられて引き出されており、それぞれ1枚ずつのFPC7AとFPC7Bが接続されている。すなわち、本発明では、FPCの接続を配線基板2の表面だけで行うことができるため、配線基板2の外端部21A又は21Bに配列される全てのヘッドチップ1の配線電極23に対して共通の1枚のFPCで接続することが可能である。
【0070】
また、本発明では、図示しないが、例えば配線基板2に配列される6のヘッドチップ1のうちの配線基板2の同一外端部21A又は21Bにおいて隣接する2つヘッドチップ1の配線電極23をまとめて1枚のFPCで接続するといったこともでき、柔軟性の高いFPC接続構成を採ることができる。
【0071】
もちろん、複数のヘッドチップ1の各々の配線電極23に対してヘッドチップ1毎の個別のFPCを用いて接続するようにしてもよい。この場合でも、上述したように、FPCとの接続作業は配線基板2の表面だけで行うことができるため、従来に比べて格段に作業性に優れる。
【0072】
位置決めマーク
図6に示すように、配線基板2の表面には、各インク導入用連通口22に対応し、該インク導入用連通口22の長さ方向(X方向)の端部外側に、それぞれヘッドチップ1を位置決めする際の位置決めマーク4が形成されている。各位置決めマーク4相互の位置は正確に規定されており、ヘッドチップ1をこの位置決めマーク4に従って位置決めすることで、各ヘッドチップ1相互の位置を正確に規定することができる。
【0073】
各位置決めマーク4は、配線電極23と同一の金属材料によって、該配線電極23の形成と同一工程で、スパッタリング法や蒸着法等によってパターン形成されている。従って、通常のパターニング技術を使用して、その各々の位置及び位置決めマーク4を構成する各々の直線の寸法を高精度にパターン形成することができる。
【0074】
この位置決めマーク4は、1つのインク導入用連通口22に対して、すなわち1つのヘッドチップ1に対応して、いずれか一方端部外側に1つあればよいが、両端部外側にそれぞれ形成すると、各ヘッドチップ1のチャネル列方向の直線性を保つことができ、本実施形態のようなフルラインタイプのインクジェットヘッドの場合には特に好ましい。
【0075】
図7は1つの位置決めマーク4の詳細を示している。
【0076】
位置決めマーク4は、互いに平行な所定幅の2本の平行枠線部41、42を有している。この平行枠線部41、42の内側縁41a、42a間の距離は、ヘッドチップ1の上面1cと下面1dとの間の距離と等しくなるように設定されており、この間にヘッドチップ1の後面1bの上面1cと接する外縁及び下面1dと接する外縁が平行に収まるように位置決めを行うためのものである。
【0077】
なお、図中下側の平行枠線部42は、2つの直線部分421、422に分割されているが、これら直線部分421、422は同一直線状に配列されており、1本の平行枠線部42とみなすことができる。
【0078】
位置決めマーク4においてインク導入用連通口22から遠い側の端部には、各平行枠線部41、42間に亘って、該平行枠線部41、42と直交する端部位置決め直線43を有している。この端部位置決め直線43は、ヘッドチップ1の後面1bがチャネル列方向の端面1e(図2)と接する外縁の位置決めを行うためのものであり、ここでは平行枠線部41、42と同幅の複数の矩形状部43a、43bが、平行枠線部41、42間に亘って千鳥状に配列されることにより、矩形状部43aの列と矩形状部43bの列の境界によって形成されている。この端部位置決め直線43は、矩形状部43aの列と矩形状部43bの列の境界間に所定の間隙を設けることによって、所定の幅を有する間隙として形成されていてもよい。
【0079】
一方の平行枠線部42には、該平行枠線部42の端部から決まった位置に、平行枠線部41、42と同幅に形成された2本の位置確認用直線部44、45を有している。各位置確認用直線部44、45は平行枠線部42と直交するように形成されている。従って、適正に接合されたヘッドチップ1に対して、そのチャネル12の配列方向と直交する方向(Y方向)に延びている。
【0080】
位置確認用直線部44、45間には所定幅の間隙が形成されており、平行枠線部42の直線部分421は一方の位置確認用直線部44と直角に接続し、直線部分422は他方の位置確認用直線部45と直角に接続している。
【0081】
位置確認用直線部44、45のそれぞれの外側縁44a、45aは直線状且つ互いに平行である。外側縁44a、45a間の距離は、ヘッドチップ1に形成されている位置確認用溝15の内側壁面151、151間の距離と等しく形成されている。これら外側縁44a、45aによって第1の直線パターンを構成しており、これら外側縁44a、45aと直角に接する平行枠線部42の内側縁部42aによって第2の直線パターンを構成している。
【0082】
第1の直線パターンは、互いに平行な2つの外側縁44a、45aを有していればよく、2本の位置確認用直線部44、45によって形成されるものに限らず、1本の直線部の両外側縁によって形成されるものであってもよいが、本実施形態のように2本の位置確認用直線部44、45によって形成されるものが好ましい。
【0083】
なお、46は接着剤保持用直線部であり、ヘッドチップ1の後面1bと配線基板2の表面との間に塗布された接着剤を保持して周囲への流出を防止するように機能する。
【0084】
<ヘッドチップの製造方法>
ここで、ヘッドチップ1の製造方法の一例を図8、図9を用いて説明する。
【0085】
まず、1枚の基板100上に、分極処理されたPZT等からなる圧電素子基板101をエポキシ系接着剤を用いて接合し、更に、その圧電素子基板101の表面にドライフィルム102を貼着する(図8(a))。
【0086】
次いで、そのドライフィルム102の側から、ダイシングブレード等を用いて複数の平行な溝103を研削する。各溝103は圧電素子基板101の一方の端から他方の端に亘り、且つ、基板100にほぼ至る程度の一定の深さで研削することで、長さ方向で大きさと形状がほぼ変わらないストレート状に形成する(図8(b))。
【0087】
次いで、溝103を研削した側から、Ni、Co、Cu、Al等の金属材料をスパッタリング法、蒸着法等によって適用し、削り残されたドライフィルム102の上面及び各溝103の内面に金属膜104を形成する(図8(c))。
【0088】
その後、ドライフィルム102をその表面に形成された金属膜104と共に除去することにより、各溝103の内面のみに金属膜104が形成された基板105を得る。そして、同様に形成された基板105を2枚用意し、各基板105の溝103同士が互いに合致するように位置合わせして、エポキシ系接着剤等を用いて接合する(図8(d))。接合された溝103同士によってチャネル12が形成され、該チャネル12間の隔壁が駆動壁13となる。
【0089】
この他にも、図示しないが、分極方向の異なる薄板と厚板の2枚の圧電素子基板を貼り合わせ、液体レジストをスピンコーターで塗布し、露光現像してチャネルとなる溝をダイシングした後、めっき等によって駆動電極を形成し、溝を覆うようにカバー基板を貼着することによっても上記と同様の基板を作成することができる。
【0090】
次いで、このようにして得られた同一の基板を2枚用意し、互いのチャネル12のピッチが半ピッチずれるように重ね合わせて接着して1枚のウエハー106を作成し、その上面から、ダイシングソーDSを用いて、チャネル12の長さ方向と平行となるように位置確認用溝15を直線状に研削加工する(図9(a))。
【0091】
ダイシングソーDSは回転によって溝研削を行うものであり、また、ダイシングソーDSとウエハー106とを機械的精度によって高精度に相対移動させることができるため、位置確認用溝15の対向する内側壁面151、151は高精度に平行となり、且つ、ヘッドチッブ1の上面1cに対して高精度に直交し、溝全長に亘って一定深さとなるように形成することができる。
【0092】
その後、ウエハー106をチャネル12の長さ方向と直交する方向に沿って切断することにより、2列のチャネル列を有する複数個のハーモニカ型のヘッドチップ1を一度に作成する。カットラインC、C…間の幅は、それによって作製されるヘッドチップ1、1…のチャネル12の駆動長(L長)を決定するものであり、この駆動長に応じて適宜決定される(図9(b))。
【0093】
次いで、ウエハー106から切り出されたヘッドチップ1の後面に、スパッタリング法、蒸着法等によって選択的に金属材料を適用して接続電極14を形成することで、図2に示すように、後面1bに接続電極14を有するヘッドチップ1を作成する。
【0094】
<ヘッドチップの位置決め方法>
次に、各ヘッドチップ1を配線基板2の表面に位置決めして接合し、フルラインタイプのインクジェットヘッドHを製造する方法について説明する。
【0095】
各ヘッドチップ1は、配線基板2の表面に位置決めされた後、加圧及び必要により加熱することで、その後面1bと配線基板2の表面との間に塗布されたエポキシ系接着剤によって接着される。各ヘッドチップ1は、上面1cに形成された位置確認用溝15内に、配線基板2の表面に形成された位置決めマーク4の位置確認用直線部44、45が見えるように配線基板2の表面に仮置きされる。この仮置き時、位置決めマーク4の2本の平行枠線部41、42と、端部位置決め用直線43とを確認することで、概ね位置確認用溝15内に位置確認用直線部44、45が見えるようにヘッドチップ1を置くことが容易となる。
【0096】
ヘッドチップ1の位置確認は、CCD等を用いた画像認識装置を用い、ヘッドチップ1の前面1a側から、位置確認用溝15内を拡大して見下ろすようにして行う。
【0097】
図10は、仮置き直後で、未だ適正な位置及び角度に位置決めされていないヘッドチップ1と位置決めマーク4との位置関係を、ヘッドチップ1の前面1a側から見た状態を示している。
【0098】
この状態では、ヘッドチップ1の位置確認用溝15の対向する内側壁面151、151と位置確認用直線部44、45の外側縁44a、45aとは互いに平行に一致しておらず、ヘッドチップ1には角度ずれが生じている。このとき、画像認識されるヘッドチップ1の上面1cと下面1dの位置も、それぞれ平行枠線部41、42の内側縁41a、42aと平行に一致しておらず、また、ヘッドチップ1の端面1eの位置も端部位置決め直線43と平行に一致していないことがわかる。
【0099】
そこで、画像認識装置を確認しながら、図11に示すように、位置確認用溝15内に、対向する内側壁面151、151と位置確認用直線部44、45の各外側縁44a、45aとが一致して見えるように、ヘッドチップ1の位置を調整する。同様にして全てのヘッドチップ1を1枚の配線基板2の所定の位置に調整する。
【0100】
このようにして、各ヘッドチップ1の位置確認用溝15の各内側壁面151、151と、配線基板2の位置決めマーク4の位置確認用直線部44、45の各外側縁44a、45aとが互いに平行となるように一致させることにより、配線基板2上の全てのヘッドチップ1相互の平行度が確保されると共に、チャネル列方向に沿う方向(X方向)の位置が正確に規定され、隣接するヘッドチップ1間の適正な離間距離が確保される。
【0101】
このような位置決めは、ヘッドチップ1の1側面に形成された位置確認用溝15の対向する内側壁面151、151の2壁面を確認して行うため、少ない視野範囲で2面での平行度の確認を同時に行うことができ、それだけ容易且つ正確な位置決め確認ができる。しかも、この位置確認用溝15の内側壁面151、151は、ヘッドチップ1の外端面の切り出し加工に比べて、ダイシングソーDSによって高精度に加工できるため、より高精度な位置決めを行うことができる。
【0102】
これにより、ヘッドチップ1の後面1bに形成された各接続電極14と配線基板2の表面に形成された各配線電極23とを1対1に正確に位置合わせることができ、また、インクジェットヘッドH全体でのノズルのピッチを均一とすることができ、ピッチむらに起因する画像むらを生じさせるおそれはなくなる。
【0103】
また、ヘッドチップ1の位置調整時、位置確認用溝15の周辺を拡大して認識しているため、同時に画像認識される位置決めマーク4の平行枠線部42の内側縁42aを利用して、この内側縁42aがヘッドチップ1の上面1cの位置と一致して見えるようにヘッドチップ1の位置を調整することで、各ヘッドチップ1のチャネル列方向と直交する方向(Y方向)の位置決めを行うことができる。
【0104】
以上のようにして各ヘッドチップ1を位置決めしたら、配線基板2に対して加圧及び必要により加熱して接着剤を硬化させ、その後、各ヘッドチップ1の間に別途形成しておいたスペーサー部材5を接着剤を用いて接合する。このスペーサー部材5の接合により、各ヘッドチップ1の前面1aはスペーサー部材5の表面と同一平面で繋がり、広い面一状となる矩形状のノズルプレート貼着面が形成される。
【0105】
ノズルプレート3は、このスペーサー部材5を接合することによって形成されるノズルプレート貼着面に相当する大きさに形成されており、予め各ヘッドチップ1のチャネル12に対応するように、レーザー加工によってノズル孔31が形成されている。ノズル孔31が形成されたノズルプレート3は、接着剤を用いてノズルプレート貼着面に貼着されることで、各ヘッドチップ1の前面1aを覆い、且つ、各ノズル孔31が各チャネル12内と連通することで、該チャネル12内のインクをノズル孔31から吐出可能とする。
【0106】
その後、配線基板2の裏面側にインクマニホールド6を位置決めして接合し、更に、配線基板2の表面の各外端部21A、21BにそれぞれFPC7A、7Bを位置決めして接合する。
【0107】
<ヘッドチップのその他の配列態様>
図9に示したように1枚のウエハー106から切り出されることによってヘッドチップ1が作成される場合、1枚の配線基板2の表面にそのヘッドチップ1を複数配列する際、インクジェットヘッドHの長さ方向に沿って隣接するヘッドチップ1、1は、それぞれ異なるウエハー106から切り出されたヘッドチップ1、1同士であるようにすることが好ましい。
【0108】
同じウエハー106から切り出されたヘッドチップ1の特性は似たような傾向を示すことが知られている。このため、同じウエハー106から切り出されたヘッドチップ1を同じ配線基板2の表面に隣接させて配列することにより形成されたインクジェットヘッドでは、人の目に認識され易い低い空間周波数の画像のスジむらが発生してしまい、画像品質を落としてしまう。
【0109】
図12は、同一ウエハーから切り出されたヘッドチップA1、A2、A3を隣接させて構成した768ノズルのラインタイプのインクジェットヘッドの各ノズルから吐出されるインク滴の速度分布を示している。横軸はノズル数、縦軸はインク滴の吐出速度(m/s)を示している。
【0110】
このように、同一ウエハーから切り出されたヘッドチップA1、A2、A3を隣接させると、例えば図中に示すノズル領域aのように、各ヘッドチップA1、A2、A3のほぼ同一ノズルにおいて、同じような速度分布となる領域が現れる。このようなノズル領域aを有するインクジェットヘッドによって画像を記録すると、人の目に認識され易い低い空間周波数の画像のスジむらとなり、画像品質を大きく落とす原因となる。このような画像のスジむらは、インクジェットヘッドを主走査方向に沿ってスキャンすることにより画像を記録する場合では、間引き射ち等の方法によって異なるノズルで補完することで画像品質の低下を防ぐことが可能であるが、プリンタに固定状に設けられるラインタイプのインクジェットヘッドHの場合はこのような方法を採ることができず、画像のスジむらが顕著に現れてしまう。
【0111】
一方、図13は、それぞれ異なるウエハーから切り出されたのヘッドチップB1、B2、B3を隣接させて上記同様に構成した768ノズルのインクジェットヘッドの各ノズルから吐出されるインク滴の速度分布を示している。
【0112】
このように、それぞれ異なるウエハーから切り出されたヘッドチップB1、B2、B3を隣接させた場合、図12のような同じような速度分布となるノズル領域aは現れず、速度が適度にばらついていることがわかる。これにより、出力画像に現れる人の目に認識され易い低い空間周波数の画像のスジむらを軽減することができ、上述のようにインクジェットヘッドH全体のノズルピッチが均一となるように各ヘッドチップ1を適正位置に位置決めできることと相俟って、更に高品質な出力画像を得ることができる。
【0113】
なお、複数のヘッドチップ1は、配線基板2の表面に千鳥状に配列するものに限らず、様々な配列態様とすることができる。
【0114】
また、本発明はラインヘッドを構成する場合に限らず、複数のヘッドチップ1を用いて多ノズルのインクジェットヘッドを構成する場合に同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明に係るマルチチップインクジェットヘッドの一例を示す斜視図
【図2】1つのヘッドチップを後面側から見た部分斜視図
【図3】図1中の(iii)−(iii)線に沿う断面図
【図4】図1中の(iv)−(iv)線に沿う断面図
【図5】位置確認用溝の部分拡大図
【図6】ヘッドチップを接合する前の配線基板の表面の部分平面図
【図7】1つの位置決めマークの詳細を示す拡大図
【図8】(a)〜(d)はヘッドチップの製造方法の一例を説明する図
【図9】(a)は1枚のウエハーに位置確認用溝を形成する様子を示す斜視図、(b)は1枚のウエハーから複数のヘッドチップを切り出し加工する様子を示す斜視図
【図10】仮置き直後で、未だ適正な位置及び角度に位置決めされていないヘッドチップと位置決めマークとの位置関係をヘッドチップの前面側から見た図
【図11】ヘッドチップから適正な位置及び角度に位置決めされたときのヘッドチップと位置決めマークとの位置関係をヘッドチップの前面側から見た図
【図12】同一ウエハーから切り出されたヘッドチップを隣接させて構成したインクジェットヘッドの各ノズルから吐出されるインク滴の速度分布を示すグラフ
【図13】それぞれ異なるウエハーから切り出されたヘッドチップを隣接させて構成したインクジェットヘッドの各ノズルから吐出されるインク滴の速度分布を示すグラフ
【符号の説明】
【0116】
1:ヘッドチップ
1a:前面
1b:後面
1c:上面
1d:下面
1e:端面
11:駆動壁
12:インクチャネル
121:前面側の開口部
122:後面側の開口部
13:駆動電極
14:接続電極
15位置確認用溝
151:内側壁面
2:配線基板
21A、21B:外端部
22:インク導入用連通口
23:配線電極
3:ノズルプレート
31:ノズル
4:位置決めマーク
41、42:平行枠線部
41a:内側縁部
42a:内側縁部(第2の直線パターン)
421、422:直線部分
43:端部位置決め用直線
43a、43b:矩形状部
44、45:位置確認用直線部
44a、45a:外側縁部(第1の直線パターン)
46:接着剤保持用直線部
5:スペーサー部材
6:インクマニホールド
61:開口
62:導入口
7A、7B:FPC
71:配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子からなる駆動壁とチャネルとが交互に並設され、前面及び後面にそれぞれチャネルの出口と入口とが配置され、前記駆動壁に駆動電極が形成され、前記後面に前記駆動電極と電気的に接続する接続電極が形成されたヘッドチップを複数有し、前記駆動電極に駆動電圧を印加することによって前記チャネル内のインクをノズルから吐出するマルチチップインクジェットヘッドであって、
複数の前記ヘッドチップを、表面に前記ヘッドチップの各々の前記接続電極と対応する配線電極が形成されると共に前記ヘッドチップに対応するインク導入用連通口が開口形成された1枚の配線基板に、前記接続電極と前記配線電極とが電気的に接続し、且つ、前記ヘッドチップの前記チャネルの入口が前記インク導入用連通口に臨むように位置決めして接着すると共に、
全ての前記ヘッドチップの前面に亘って、該全てのヘッドチップの前記チャネルに対応する位置に各々ノズル孔が形成された1枚のノズルプレートを貼着してなることを特徴とするマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記配線電極は、前記ヘッドチップの前記接続電極に対応する前記インク導入用連通口から前記配線基板の外端部にかけて形成されており、該配線基板表面の外端部の前記配線電極に、駆動ICからの駆動電圧を伝達する配線が形成されたFPCが電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記配線基板の裏面側に、前記インク導入用連通口を通して全ての前記ヘッドチップに対して共通にインクを供給する1つのインクマニホールドが接合されることを特徴とする請求項1又は2記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項4】
複数の前記ヘッドチップを、前記チャネルの並び方向に沿い、且つ、隣接する前記ヘッドチップで前記チャネルのピッチが等ピッチとなるように、前記配線基板の表面に配列することによりラインタイプのインクジェットヘッドを構成してなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項5】
複数の前記ヘッドチップは、異なるウエハーから切り出されたヘッドチップ同士が隣接するように配列されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項6】
複数の前記ヘッドチップ間に、前記配線基板の表面からの高さが前記ヘッドチップの前面の高さと同等となるスペーサー部材を設け、1枚の前記ノズルプレートを、全ての前記ヘッドチップの前面と前記スペーサー部材の表面とに亘って貼着してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記配線基板の表面の所定位置に、複数の前記ヘッドチップ毎に対応する位置決めマークが形成されており、複数の前記ヘッドチップの各々は前記位置決めマークによって位置決めされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記位置決めマークは、前記ヘッドチップの前記チャネルの配列方向と直交する方向に延び、且つ、両外側縁が平行な第1の直線パターンを有しており、
前記ヘッドチップの前記後面と接する側面に、前記第1の直線パターンと対応する位置に、前記ヘッドチップの前記前面と前記後面とに亘り、前記第1の直線パターンの幅と同一幅で、且つ、対向する内側壁面が平行な直線状の溝が加工されており、
前記配線基板の表面に接着された前記ヘッドチップの前記前面側から見て、前記溝内に、該溝内の対向する内側壁面と前記第1の直線パターンの両外側縁が一致して見えるように複数の前記ヘッドチップの各々が位置決めされていることを特徴とする請求項7記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記第1の直線パターンは、所定間隔をおいた2本の平行な直線パターンからなることを特徴とする請求項8記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記第1の直線パターンは、前記配線基板の表面の所定位置に、前記配線電極と同一の金属材料を用いてパターン形成されていることを特徴とする請求項8又は9記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項11】
前記配線基板の表面の所定位置に、前記ヘッドチップの前記チャネルの配列方向と平行な側面を位置決めするためのパターンであって、前記第1の直線パターンと直交する直線部分を有する第2の直線パターンが形成されており、
前記配線基板の表面に接合された前記ヘッドチップの前記前面側から見て、前記ヘッドチップの前記後面の外縁が、前記第2の直線パターンの前記直線部分と一致して見えるように位置決めされていることを特徴とする請求項8、9又は10記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項12】
前記第2の直線パターンは、前記配線基板の表面の所定位置に、前記配線電極と同一の金属材料を用いてパターン形成されていることを特徴とする請求項11記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項1】
圧電素子からなる駆動壁とチャネルとが交互に並設され、前面及び後面にそれぞれチャネルの出口と入口とが配置され、前記駆動壁に駆動電極が形成され、前記後面に前記駆動電極と電気的に接続する接続電極が形成されたヘッドチップを複数有し、前記駆動電極に駆動電圧を印加することによって前記チャネル内のインクをノズルから吐出するマルチチップインクジェットヘッドであって、
複数の前記ヘッドチップを、表面に前記ヘッドチップの各々の前記接続電極と対応する配線電極が形成されると共に前記ヘッドチップに対応するインク導入用連通口が開口形成された1枚の配線基板に、前記接続電極と前記配線電極とが電気的に接続し、且つ、前記ヘッドチップの前記チャネルの入口が前記インク導入用連通口に臨むように位置決めして接着すると共に、
全ての前記ヘッドチップの前面に亘って、該全てのヘッドチップの前記チャネルに対応する位置に各々ノズル孔が形成された1枚のノズルプレートを貼着してなることを特徴とするマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記配線電極は、前記ヘッドチップの前記接続電極に対応する前記インク導入用連通口から前記配線基板の外端部にかけて形成されており、該配線基板表面の外端部の前記配線電極に、駆動ICからの駆動電圧を伝達する配線が形成されたFPCが電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記配線基板の裏面側に、前記インク導入用連通口を通して全ての前記ヘッドチップに対して共通にインクを供給する1つのインクマニホールドが接合されることを特徴とする請求項1又は2記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項4】
複数の前記ヘッドチップを、前記チャネルの並び方向に沿い、且つ、隣接する前記ヘッドチップで前記チャネルのピッチが等ピッチとなるように、前記配線基板の表面に配列することによりラインタイプのインクジェットヘッドを構成してなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項5】
複数の前記ヘッドチップは、異なるウエハーから切り出されたヘッドチップ同士が隣接するように配列されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項6】
複数の前記ヘッドチップ間に、前記配線基板の表面からの高さが前記ヘッドチップの前面の高さと同等となるスペーサー部材を設け、1枚の前記ノズルプレートを、全ての前記ヘッドチップの前面と前記スペーサー部材の表面とに亘って貼着してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記配線基板の表面の所定位置に、複数の前記ヘッドチップ毎に対応する位置決めマークが形成されており、複数の前記ヘッドチップの各々は前記位置決めマークによって位置決めされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記位置決めマークは、前記ヘッドチップの前記チャネルの配列方向と直交する方向に延び、且つ、両外側縁が平行な第1の直線パターンを有しており、
前記ヘッドチップの前記後面と接する側面に、前記第1の直線パターンと対応する位置に、前記ヘッドチップの前記前面と前記後面とに亘り、前記第1の直線パターンの幅と同一幅で、且つ、対向する内側壁面が平行な直線状の溝が加工されており、
前記配線基板の表面に接着された前記ヘッドチップの前記前面側から見て、前記溝内に、該溝内の対向する内側壁面と前記第1の直線パターンの両外側縁が一致して見えるように複数の前記ヘッドチップの各々が位置決めされていることを特徴とする請求項7記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記第1の直線パターンは、所定間隔をおいた2本の平行な直線パターンからなることを特徴とする請求項8記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記第1の直線パターンは、前記配線基板の表面の所定位置に、前記配線電極と同一の金属材料を用いてパターン形成されていることを特徴とする請求項8又は9記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項11】
前記配線基板の表面の所定位置に、前記ヘッドチップの前記チャネルの配列方向と平行な側面を位置決めするためのパターンであって、前記第1の直線パターンと直交する直線部分を有する第2の直線パターンが形成されており、
前記配線基板の表面に接合された前記ヘッドチップの前記前面側から見て、前記ヘッドチップの前記後面の外縁が、前記第2の直線パターンの前記直線部分と一致して見えるように位置決めされていることを特徴とする請求項8、9又は10記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【請求項12】
前記第2の直線パターンは、前記配線基板の表面の所定位置に、前記配線電極と同一の金属材料を用いてパターン形成されていることを特徴とする請求項11記載のマルチチップインクジェットヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−105255(P2010−105255A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278999(P2008−278999)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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