説明

マルチチューブクリップ

【課題】チューブを適当に固定できるクリップを提供すること。
【解決手段】チューブクリップ(10)は、チューブを受け入れるようになった少なくとも1つのチャネル(18)を有するアイソレータ(16)と、少なくとも1つの平面でアイソレータを包み込むクリップ本体(14)を含む。アイソレータの少なくとも1つのチャネル(18)は、少なくとも2つの他のチャネルによって形成される平面の外にある。クリップ端(12)がクリップ本体(14)から延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的にはチューブ用クリップに関し、より詳細には車両の部品にチューブを取り付けるためのクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
特に自動車では、ブレーキ、HVAC(冷暖房空調設備)、その他の種類のチューブが、チューブクリップを用いて実装されるのが典型的である。油圧チューブは、チューブの振動を減らすため、チューブクリップによって離れた複数位置で固定される。このようにしないと、この振動が、疲れ破損、又はチューブが近くの部品にぶつかることで、チューブを損傷させ、採最終的に、これによってチューブを擦り切れさせることになる。したがって、チューブクリップが適切に実装されず又は壊れ、結果として取付ブラケット又は取付面から脱落すると、このブラケットの領域での拘束されない振動でチューブは危険に曝される。この拘束されない振動は、チューブを繰り返しブラケット自身にぶつけ、チューブの破損が生じさせる。
【0003】
チューブを効率的に車両に取り付けるために、複数のチューブがクリップで留められる。在来のマルチクリップ又は「三重クリップ」は、クリップ端とクリップ本体とを有する細長い部材である。クリップ本体は、一列に並んだ複数のチャネルを有し、クリップ端は、クリップ本体からほぼ直線的に延びている。クリップ端を車両に取り付けるとき、クリップは、クリップ本体を片持ち支持し、これによりクリップに捩じり力を生じさせる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
捩じり力によってクリップが壊れることがある。さらに、三重クリップは、端に配置されたチューブに力を加え過ぎ、取付孔の最も近くに配置されたチューブに十分な力を加えられない傾向がある。
【0005】
加えて、チューブは、固定面が少ないエンジン又はシャーシの過密領域を通ることが多くある。固定面があるときには、全体が細長いクリップを収容するのに十分な空間がないことが多い。適当な空間がないとき、チューブは、クリップを収容できる位置へ大きく迂回させられることがしばしばある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
チューブクリップは、チューブを受け入れるように構成された少なくとも1つのチャネルを有するアイソレータと、少なくとも1つの面でアイソレータを包み込むクリップ本体を含む。アイソレータの少なくとも1つのチャネルが、少なくとも2つの他のチャネルによって形成される平面外にある。クリップ端がクリップ本体から延びる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図2から図3を参照すると、マルチチューブ用チューブクリップが全体を参照番号10で示され、このチューブクリップは、ほぼ平らなクリップ端12と、ほぼ三角形のクリップ本体14を含んでいる。クリップボディ14は、アイソレータ16の周りに配置され、このアイソレータは、チューブ(図示せず)を受け入れるようにずらして配置された3つのチャネル18を有する。
【0008】
チューブクリップ10は、図1に示されるほぼ直線状のクリップ端112とほぼ直線状のクリップ本体114を有する従来技術の「三重クリップ」110より小さく、よりコンパクトな構成を有する。クリップ本体114は、一列に配置された複数のチャネル118を有し、クリップ端112が、クリップ本体からほぼ直線状に延びる。三重クリップ110とは対照的に、チューブクリップ10は、ほぼ積み重ね且つずらした配置でチューブを保持する。換言すれば、アイソレータ16の少なくとも一つのチャネル18は、少なくとも2つの他のチャネルによって形成される平面の面外にある。この構成により、クリップ本体14の長さを短くすること、及びさらにクリップ端12へのモーメントを減らすことが可能になる。
【0009】
クリップ本体12は、アイソレータ16の第1の面22と第2の面24の上をそれぞれ延びる第1の脚部26及び第2の脚部28を備えた角度付きヘッド20と、アイソレータの第3の面に沿って延びるベース30とを有する。クリップボディ12はシート状の鉄から打抜かれるのが有利であるが、他の材料も考えられる。
【0010】
ベース30の近接端とヘッドの遠位端とは、全体が参照番号38で示されるヒンジである。ベース30は、2つの爪42を有し、ヘッド20の雌ヒンジ44と係合する雄ヒンジ40を有し、雌ヒンジは、雄ヒンジの差込口46内に配置されるが、他のヒンジ38でもよい。ヒンジ38は、ベースに対するヘッド20の相対運動を可能にする。
【0011】
ヘッド20とベース30の間に、アイソレータ16が配置される。アイソレータ16は、ほぼ三角形の断面形状を有し、第1の垂直面48と第2の垂直面50の間で延びている。第1の垂直面48と第2の垂直面50は、第1の面22と第2の面24と第3の面32に対し略垂直である。複数のチャネル18が、アイソレータ16の角で、第1の垂直面48から第2の垂直面50に延びる。チャネル18は、チャネルの長さ方向に沿った開口52を有し、この開口はアイソレータの角にあるのが有利であり、この開口は、2つのリップ54の間に形成されており、チューブをチャネル内に配置し、又は取り除くのを可能にする。チューブクリップ10は、等しい大きさの3つの円形チューブ用に構成されているが、他の数、形状、及び大きさのチューブ用にクリップを構成することも考えられる。
【0012】
アイソレータ16は、チューブの配置および取り外しのためにリップ54が離れることができるようにゴムのような弾性材料から造られている。さらに、弾性材料は、種々のチューブサイズに適合することができる。チューブがチャネル18に受け入れられると、リップは、実質的にチューブを包み込み、チューブをアイソレータの中に保持する。
【0013】
アイソレータ16を車両に取り付け且つチューブがアイソレータから出るのを防ぐために、クリップ本体14は、アイソレータの周りに延びている。クリップ本体14は、チャネル18の長手方向軸線とほぼ直交する面で、アイソレータ16を包み込む。クリップ本体14は、アイソレータ16を圧縮し、チャネルの開口52を閉じ、しっかりとしたパッケージにチューブを束ね、さらにチューブを隔離する。
【0014】
第1のクリップアーム56と第2のクリップアーム58は、略平坦であり、面一になるような配置で共に延びてクリップエンド12を形成する。第1のクリップアーム56とヘッド20が一体形成され、第2のクリップアーム58とベース30が一体形成されるのが有利であるが、他の構成も考えられる。各クリップアーム56,58は、クリップ10を車両に付けるための留め具(図示せず)を受け入れるように構成された取付孔60を有する。クリップ端12の長さは、クリップヘッド14の長さよりも短い。
【0015】
使用時には、第1のクリップアーム56とヘッド20が、ヒンジ38を中心に回転して開き、第1のクリップアーム56がボトムクリップアーム58に対して回転する。チャネル開口52が露出すると、ユーザが、チューブに、チャネル18の長手方向に直交する方向且つリップ54を押すように力を加え、これによりリップがチューブの周りで弾性的に開閉する。次いで、ヘッドと第1のクリッアーム56を、ヒンジ38の周りを回転させ、第1のクリップアームと第2のクリップアームを面一に係合させる。変形例として、第2のクリップアーム58、又は二つのアーム56,58をヒンジ38を中心に回転させてもよい。上方のクリップアーム56と下方のクリップアーム58が係合すると、アイソレータ16は、クリップ本体14のヘッド20とベース30の間で圧縮される。第1のクリップアーム56と第2のクリップアーム58に設けられた取付孔60を整合させ、留め具(図示せず)をこの孔さらに車両に差し込み、クリップを車両に取り付ける。
【0016】
チューブクリップ10は、チューブと取付孔60の間の距離を短くするので、加えられる捩じり力が減り、クリップの剛性が増す。さらに、弾性のあるアイソレータ16は、十分にチューブを所定位置で保持する。チューブのしっかりとしたパッケージ及び剛性の高い設計は、チューブクリップの構造的完全性を高め、これによりコストを低下させ、車両の全体的な組み立ての信頼を増す。
【0017】
本発明は、趣旨又は本質的な特性から逸脱することなく、他の具体的な形態で実施することができる。説明した実施形態は、あらゆる点において例示的であり、限定的ではないと考えられる。従って、発明の範囲は、前述の詳細な説明よりはむしろ、添付した特許請求の範囲に示される。特許請求の範囲と均等な意味及び範囲にある全ての変更は、発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の三重クリップの正面図である。
【図2】本発明による多重クリップの正面図である。
【図3】本発明による多重クリップの正面斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブを受け入れるように構成された複数のチャネルを有し、少なくとも1つのチャネルが少なくとも2つのチャネルによって形成される平面の外にあるアイソレータと、
少なくとも1つの平面で前記アイソレータを包み込むクリップ本体と、
前記クリップ本体から延びるクリップ端とを備えている、
ことを特徴とするチューブクリップ。
【請求項2】
前記アイソレータは、弾性且つ圧縮性の材料から形成されている、
請求項1に記載のチューブクリップ。
【請求項3】
前記アイソレータは、ほぼ三角形の断面形状を有し、前記少なくとも1つのチャネルが前記三角形の角に配置されている、
請求項1に記載のチューブクリップ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのチャネルが、2つの弾性リップの間に形成された開口を有し、これらのリップは、前記アイソレータへのチューブの配置、及び前記アイソレータからのチューブの取り出しを可能にするように構成されている、
請求項1に記載のチューブクリップ。
【請求項5】
前記クリップ本体は、前記アイソレータを前記チューブの周りで圧縮するように構成されている、
請求項1に記載のチューブクリップ。
【請求項6】
前記クリップ本体は、さらに、近位端を備えたベースと、近位端を備えたヘッドとを備え、
前記ベースとヘッドは、各々の近位端のヒンジで連結され、該ヒンジは、前記ベースに対して前記ヘッドを回転させるように構成されている、
請求項1に記載のチューブクリップ。
【請求項7】
前記クリップ端は、さらに、互いにほぼ平行に前記クリップ本体から延びる、第1のクリップアームおよびボトムクリップアームとを備えている、
請求項6に記載のチューブクリップ。
【請求項8】
前記ヘッドは、第1の脚部と、該第1の脚部と所定角をなす第2の脚部を有する、
請求項6に記載のチューブクリップ。
【請求項9】
前記ベースは、前記第1のクリップアームに取り付けられ、又は第1のクリップアームと一体になっており、
さらに、前記ベースは、前記ボトムクリップアームに取り付けられ、又はボトムクリップアームと一体になっている、
請求項7に記載のチューブクリップ。
【請求項10】
前記クリップ端は、留め具を受け入れるように構成された孔を含む、
請求項1に記載のチューブクリップ。
【請求項11】
チューブクリップであって、
チューブを受け入れる少なくとも1つのチャネルを有する略三角形のアイソレータと、
該アイソレータの第1の面及び第2の面に接するように構成されたヘッドと、前記アイソレータの第3の面と接するように構成されたベースとを備え、前記ヘッドと前記ベースがヒンジによって連結されているクリップ本体とを備え、
前記ヘッドは、前記ベースに対して回動し、前記チューブを前記アイソレータ内に配置し且つ前記アイソレータから取り出すのを可能にするように構成されている、
ことを特徴とするチューブクリップ。
【請求項12】
前記クリップ本体のベースからほぼ平行に延びるクリップ端をさらに備えている、
請求項11に記載のチューブクリップ。
【請求項13】
前記ヘッドに取り付けられ又はヘッドと一体になった第1のクリップアームと、前記ベースに取り付けられ又はベースと一体になった第2のクリップアームを有するクリップ端をさらに備えている、
請求項11に記載のチューブクリップ。
【請求項14】
少なくとも1つのチャネルが前記アイソレータの角に配置されている、
請求項11に記載のチューブクリップ。
【請求項15】
前記少なくとも1つのチャネルは、前記アイソレータの2つの弾性リップの間に形成された開口を有し、前記リップは、前記チューブをアイソレータ内に配置し、又は前記チューブをアイソレータから取り出すのを可能にするように構成されている、
請求項11に記載のチューブクリップ。
【請求項16】
前記クリップ本体は、アイソレータを圧縮するように構成されている、
請求項11に記載のチューブクリップ。
【請求項17】
前記ヘッドは、第1の脚部と、第1の脚部と所定角をなす第2の脚部を有する、
請求項11に記載のチューブクリップ。
【請求項18】
前記クリップ端は、前記クリップ本体の長さよりも短い、
請求項11に記載のチューブクリップ。
【請求項19】
前記アイソレータは、互いに平行な3つのチャネルを有し、これらのチャネルは、クリップ本体の長さに沿ってずらされている、
請求項11に記載のチューブクリップ。
【請求項20】
ほぼ三角形の断面形状を有し、三角形の各々の角に配置されたチャネルを有するアイソレータと、
該アイソレータの第1の面及び第2の面ヘッドに接するように構成されたヘッドと、前記アイソレータの第3の面に接するように構成されたベースとを有するクリップ本体と、
前記ヘッドに取り付けられ又はヘッドと一体になった第1のクリップアームと、前記ベースに取り付けられ又はベースと一体になった第2のクリップアームとを有するクリップ端とを備え、
前記ヘッドとベースは、ヒンジで連結され、前記ヘッドがベースに向かって回転すると前記アイソレータを圧縮するように構成されている、
ことを特徴とするチューブクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−138939(P2009−138939A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308407(P2008−308407)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(501402947)インターナショナル エンジン インテレクチュアル プロパティー カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (69)
【Fターム(参考)】