説明

マルチプロジェクションシステム及びプロジェクタユニット

【課題】各プロジェクタユニットによる走査領域の境界を見えにくくしたマルチプロジェクションシステム及びプロジェクタユニットを提供すること。
【解決手段】複数のプロジェクタユニット2A〜2Fそれぞれが、光源と、該光源から射出されたレーザ光をスクリーン3における走査領域5A〜5F内で走査する走査手段とを備え、複数の走査領域5A〜5Fそれぞれに、スクリーン3において隣り合う他の走査領域5A〜5Fと重なる領域6b〜6d,6f〜6h,6j,6l,6nが設けられており、領域6b〜6d,6f〜6h,6j,6l,6nに画像を表示する一のプロジェクタユニット2A〜2Fが領域6b〜6d,6f〜6h,6j,6l,6nに表示する画像の輝度を制御する輝度制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチプロジェクションシステム及びプロジェクタユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクタを水平方向及び垂直方向に複数配置し、各プロジェクタから投影画像をスクリーン上にタイリング投影することにより、1つの大画面画像を表示するマルチプロジェクションシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−242415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のプロジェクションシステムにおいても、以下の課題が残されている。すなわち、1つのプロジェクタから射出する光のスクリーンへの入射角度は、このプロジェクタによる投影領域の外縁部分に向かうにしたがって大きくなる。このため、隣り合う2つの投影領域の境界部分では、境界を挟む一方の投影領域の外縁部分に入射する光の入射角度と他方の投影領域の外縁部分に入射する光の入射角度とが大きく異なってしまう。そして、投影領域の外縁部分では、スクリーンに入射した光がスクリーンによって散乱するものの、スクリーンへの光の入射方向とほぼ同じ方向からプロジェクタによる投影画像を視認するときに観察者が視認する画像の輝度が最大になる。したがって、境界部分よりも一方側の投影領域と他方側の投影領域とにおいて観察者が視認する投影画像の輝度が大きく変化するため、投影領域の境界が見えやすくなるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、各プロジェクタユニットによる走査領域の境界を見えにくくしたマルチプロジェクションシステム及びプロジェクタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかるマルチプロジェクションシステムは、複数のプロジェクタユニットを有し、該複数のプロジェクタユニットそれぞれが分割された画像を被投射面に表示するマルチプロジェクションシステムであって、前記複数のプロジェクタユニットそれぞれが、光源と、該光源から射出されたビーム光を前記被投射面における走査領域内で走査する走査手段とを備え、前記複数の走査領域それぞれに、前記被投射面において隣り合う他の前記走査領域と重なる重畳領域が設けられており、該重畳領域に画像を表示する一の前記プロジェクタユニットが前記重畳領域に表示する画像の輝度を制御する輝度制御手段を有することを特徴とする。
【0006】
この発明では、一のプロジェクタユニットの走査領域の少なくとも一部を他のプロジェクタユニットの走査領域と重ねることで、各走査領域の境界が見えにくくなる。すなわち、例えば2つの走査領域が重なる重畳領域では、2つのプロジェクタユニットからビーム光が照射される。この重畳領域は、2方向からビーム光が入射するため、表示される画像の輝度が大きくなる視野角を2つ有することとなる。これにより、2つの走査領域で表示される画像を観察者が視認する際、重畳領域とこの重畳領域を挟む他の領域との間における画像の輝度の変化量が小さくなる。したがって、各走査領域の境界部分が他の領域と比較しても目立ちにくくなる。
また、重畳領域に画像を表示するプロジェクタユニットの数に基づいて、この重畳領域に画像を表示する複数のプロジェクタユニットそれぞれで表示する画像の輝度を調整することにより、複数の走査領域全体における画像の輝度を揃えることができる。ここで、プロジェクタユニットが走査型の画像表示装置であるため、例えば重畳領域を走査する際のビーム光の強度を下げることにより、液晶装置を空間変調装置として用いるプロジェクタユニットと比較して遮光する必要がなくなって光利用効率が向上すると共に、低消費電力化が図れる。
【0007】
また、本発明にかかるマルチプロジェクションシステムは、一の前記走査領域が、複数の前記重畳領域からなることが好ましい。
この発明では、一の走査領域の全域がこの走査領域と隣り合う他の複数の走査領域のいずれかと重なることにより、一の走査領域と隣り合う他の走査領域との境界部分がより目立ちにくくなる。また、この一の走査領域の全域でより均一な輝度の画像を表示できる。
【0008】
また、本発明にかかるマルチプロジェクションシステムは、前記複数の走査領域で構成される画像形成領域のうち端部に位置する前記走査領域の全域が、該走査領域と隣り合う他の走査領域と重なることが好ましい。
この発明では、複数の走査領域で形成される画像のうち端部の画像を表示する走査領域の全域を隣り合う他の走査領域と重ねることにより、端部の走査領域において均一な輝度の画像を表示できる。
【0009】
また、本発明にかかるマルチプロジェクションシステムは、前記画像形成領域のうち端部に位置する前記走査領域に前記ビーム光を照射する前記プロジェクタユニットが、前記光源の駆動の制御により前記走査領域の形状を調整して前記走査領域の全域を前記隣り合う他の走査領域と重ねる調整手段を備えることとしてもよい。
この発明では、調整手段が隣り合う他の走査領域と重ならない領域において光源を非駆動状態とすることで、走査領域の全域を隣り合う他の走査領域と重ねる。
【0010】
また、本発明にかかるマルチプロジェクションシステムは、前記輝度制御手段が、前記重畳領域に画像を表示する複数の前記プロジェクタユニットの数に基づいて、該複数のプロジェクタユニットにより前記重畳領域に向けて射出する前記ビーム光の強度を減少させることとしてもよい。
この発明では、重畳領域に向けて射出するビーム光の強度を減少させることにより、この重畳領域に画像を表示する複数のプロジェクタユニットにより形成される画像の輝度を他の領域において形成される画像の輝度に揃える。
【0011】
また、本発明にかかるマルチプロジェクションシステムは、前記輝度制御手段が、前記重畳領域の輝度に基づいて、該複数のプロジェクタユニットにより前記重畳領域に向けて射出する前記ビーム光の強度を減少させることとしてもよい。
この発明では、上述と同様に、重畳領域に向けて射出するビーム光の強度を減少させることにより、この重畳領域に画像を表示する複数のプロジェクタユニットにより形成される画像の輝度を他の領域において形成される画像の輝度に揃える。
【0012】
また、本発明にかかるプロジェクタユニットは、被投射面における走査領域内でビーム光を走査する複数のプロジェクタユニットそれぞれが、分割された画像を前記被投射面に表示するマルチプロジェクションシステム用プロジェクタユニットであって、前記走査領域に、前記被投射面において他のプロジェクタユニットの走査領域と重なる重畳領域が設けられ、該重畳領域に画像を表示する前記プロジェクタユニットの数に基づいて、前記重畳領域に向けて射出する前記ビーム光の強度を減少させる輝度制御手段を備えることを特徴とする。
この発明では、このような構成のプロジェクタユニットを複数用いてマルチプロジェクションシステムを構成したときに、上述と同様に、複数のプロジェクタユニットそれぞれの走査領域の境界が見えにくくなると共に、この重畳領域に形成される画像の輝度が他の領域において形成される画像の輝度に揃う。
【0013】
また、本発明にかかるプロジェクタユニットは、被投射面における走査領域内でビーム光を走査する複数のプロジェクタユニットそれぞれが、分割された画像を前記被投射面に表示するマルチプロジェクションシステム用プロジェクタユニットであって、前記走査領域に、前記被投射面において他のプロジェクタユニットの走査領域と重なる重畳領域が設けられ、該重畳領域の輝度に基づいて、該重畳領域に向けて射出する前記ビーム光の強度を減少させる輝度制御手段を備えることを特徴とする。
この発明では、このような構成のプロジェクタユニットを複数用いてマルチプロジェクションシステムを構成したときに、上述と同様に、複数のプロジェクタユニットそれぞれの走査領域の境界が見えにくくなると共に、この重畳領域に形成される画像の輝度が他の領域において形成される画像の輝度に揃う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施形態]
以下、本発明におけるマルチプロジェクションシステムの第1の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。ここで、図1はマルチプロジェクションシステムを示す概略構成図、図2はスクリーンにおける各プロジェクタユニットによる走査領域を示す説明図、図3はプロジェクタユニットを示す概略構成図である。
【0015】
本実施形態におけるマルチプロジェクションシステム1は、図1及び図2に示すように、上下方向及び左右方向の2方向に配置された複数(図1では6)のプロジェクタユニット2A〜2Fを備えており、各プロジェクタユニット2A〜2Fからスクリーン(被投射面)3に画像を表示する構成となっている。
【0016】
各プロジェクタユニット2A〜2Fそれぞれは、スクリーン3に向けてビーム光としてビーム状のレーザ光を射出し、射出したレーザ光をスクリーン3内で水平方向h及び垂直方向vの2方向で走査することにより画像を表示する構成となっている。
ここで、各プロジェクタユニット2A〜2Fそれぞれの走査領域5A〜5Fそれぞれは、ほぼ同一の矩形状となっている。また、走査領域5A〜5Fはスクリーン3における水平方向h及び垂直方向vの2方向で平面状に配置されている。そして、走査領域5A〜5Fのうち走査領域5A〜5Cは、水平方向hに沿ってこの順で配列されている。また、走査領域5D〜5Fは、水平方向hに沿ってこの順で配列されている。さらに、走査領域5A、5D、走査領域5B、5E及び走査領域5C、5Fは、それぞれ垂直方向vにおいて隣り合っている。
また、走査領域5A〜5Fのうち互いに隣り合う2つは、一部が重なり合っている。すなわち、走査領域5A、5B、走査領域5B、5C、走査領域5D、5E及び走査領域5E、5Fがそれぞれ水平方向hで互いに重なっている。また、走査領域5A、5D、走査領域5B、5E及び走査領域5C、5Fがそれぞれ垂直方向vで互いに重なっている。なお、走査領域5A〜5Fそれぞれにおいて、隣り合う他の走査領域5A〜5Fとの重なり量は、例えば走査領域5A〜5Fのほぼ1/3程度となっている。これら走査領域5A〜5Fが、画像形成領域を構成する。
【0017】
したがって、走査領域5Aは、プロジェクタユニット2Aから射出されるレーザ光のみが照射される領域6aと、走査領域5Bのみと重なる領域(重畳領域)6bと、走査領域5Dのみと重なる領域(重畳領域)6cと、走査領域5B、5D、5Eと重なる領域(重畳領域)6dとからなる。同様に、走査領域5Bは、プロジェクタユニット2Bから射出されるレーザ光のみが照射される領域6eと、領域6b、6dと、走査領域5Cのみと重なる領域(重畳領域)6fと、走査領域5Eのみと重なる領域(重畳領域)6gと、走査領域5C、5E、5Fと重なる領域(重畳領域)6hとからなる。また、走査領域5Cは、プロジェクタユニット2Cから射出されるレーザ光のみが照射される領域6iと、領域6f、6hと、走査領域5Fのみと重なる領域(重畳領域)6jとからなる。そして、走査領域5Dは、プロジェクタユニット2Dから射出されるレーザ光のみが照射される領域6kと、領域6c、6dと、走査領域5Eのみと重なる領域(重畳領域)6lとからなる。さらに、走査領域5Eは、プロジェクタユニット2Eから射出されるレーザ光のみが照射される領域6mと、領域6d、6g、6h、6lと、走査領域5Fとのみ重なる領域(重畳領域)6nとからなる。また、走査領域5Fは、プロジェクタユニット2Fから射出されるレーザ光のみが照射される領域6oと、領域6h、6j、6nとからなる。
【0018】
プロジェクタユニット2Aは、図3に示すように、光源11、クロスダイクロイックプリズム12、走査手段13及び輝度制御手段14を備えている。
光源11は、赤色のレーザ光(中心波長が例えば620nm)を射出する赤色光源11Rと、緑色のレーザ光(中心波長が例えば530nm)を射出する緑色光源11Gと、青色のレーザ光(中心波長が例えば460nm)を射出する青色光源11Bとを備えている。
クロスダイクロイックプリズム12は、4つの直角プリズムを貼り合わせることによって構成されている。また、クロスダイクロイックプリズム12を構成する各直角プリズムの界面には、赤色光を反射する誘電体多層膜12aと青色光を反射する誘電体多層膜12bとがX字状となるように設けられている。そして、クロスダイクロイックプリズム12は、赤色光源11R、緑色光源11G及び青色光源11Bから射出された各色のレーザ光を合成してMEMSミラー15に向けて射出する構成となっている。
【0019】
走査手段13は、MEMSミラー15及びガルバノミラー16を備えている。
MEMSミラー15は、揺動軸O1の軸回りで反射面15aを揺動させることにより、スクリーン3における水平方向hにレーザ光を走査する水平走査用スキャナである。そして、MEMSミラー15は、クロスダイクロイックプリズム12から射出したレーザ光をガルバノミラー16に向けて射出する構成となっている。
ガルバノミラー16は、揺動軸O2の軸回りで反射面16aを揺動させることにより、スクリーン3における垂直方向vにレーザ光を走査する垂直走査用スキャナである。そして、ガルバノミラー16は、MEMSミラー15から射出したレーザ光をスクリーン3に向けて射出する構成となっている。
【0020】
輝度制御手段14は、走査領域5Aにおいて他の走査領域5B、5Dと重なる領域にレーザ光を照射する際のレーザ光の強度を制御する構成となっている。なお、輝度制御手段14によるレーザ光の強度の制御方法については後述する。
なお、プロジェクタユニット2B〜2Fそれぞれも、プロジェクタユニット2Aと同様の構成である。
【0021】
〔画像表示方法〕
次に、以上のような構成のマルチプロジェクションシステム1による画像表示方法について説明する。
プロジェクタユニット2A〜2Fそれぞれにおいて、赤色光源11R、緑色光源11G及び青色光源11Bから射出したレーザ光は、クロスダイクロイックプリズム12により合成された後、MEMSミラー15の反射面15aにおいてガルバノミラー16の反射面16aに向けて反射される。そして、MEMSミラー15から射出したレーザ光は、ガルバノミラー16の反射面16aにおいて反射されてスクリーン3に照射される。
ここで、MEMSミラー15の反射面15aを揺動軸O1の軸回りで揺動させることにより、スクリーン3に照射されたレーザ光を水平方向hに沿って走査する。また、ガルバノミラー16の反射面16aを揺動軸O2の軸回りで揺動させることにより、スクリーン3に照射されたレーザ光を垂直方向vに沿って走査する。
【0022】
図2(b)に示すように、プロジェクタユニット2A〜2Fそれぞれからスクリーン3に向けて射出されたレーザ光のスクリーン3に対する入射角は、上述したように、走査領域5A〜5Fそれぞれの外縁部に向かうにしたがって大きくなる。
例えば、領域6bでは、走査領域5A、5Bそれぞれの水平方向hにおける外縁部側に設けられているため、プロジェクタユニット2A、2Bそれぞれから射出されたレーザ光の入射角が大きくなっている。しかし、領域6bは、走査領域5A、5Bが重なっているため、プロジェクタユニット2A、2Bそれぞれから射出されたレーザ光が照射される。そのため、領域6bでは、プロジェクタユニット2A、2Bそれぞれから射出されたレーザ光の入射角方向において観察者が視認する画像の輝度が大きくなる。よって、領域6bは、観察者が視認する画像の輝度が大きくなる視野角を2つ有することになる。これにより、領域6bに表示された画像を視認する際、領域6bと、領域6bと水平方向hにおいて隣接する領域6a、6eとの間で、観察者が視認する領域6a、6b、6eに表示された画像の輝度の変化量が小さくなる。したがって、走査領域5A、5Bの境界が見えにくくなる。同様に、領域6c、6d、6f〜6h、6j、6l、6nそれぞれにおいても、これと隣接する他の領域6a〜6oとの間で観察者が視認する画像の輝度の変化量が小さくなる。したがって、走査領域5A〜5Fの境界が見えにくくなる。
【0023】
また、領域6b、6c、6f、6g、6j、6l、6nそれぞれでは、プロジェクタユニット2A〜2Fのうち2つから射出したレーザ光が照射される。同様に、領域6d、6hそれぞれでは、プロジェクタユニット2A〜2Fのうち4つから射出したレーザ光が照射される。
そこで、例えばプロジェクタユニット2Aの輝度制御手段14は、走査領域5Aを構成する領域6aを走査する際のレーザ光の強度を基準として、走査領域5Bと重なる領域6bや走査領域5Dと重なる領域6cを走査する際のレーザ光の強度を半分に、走査領域5B、5D、5Eと重なる領域6dを走査する際のレーザ光の強度を1/4にする。なお、プロジェクタユニット2B〜2Fそれぞれの輝度制御手段14においてもプロジェクタユニット2Aの輝度制御手段14と同様にレーザ光の強度を制御する。これにより、各領域6a〜6oで表示される画像の輝度が揃う。
【0024】
以上のように、本実施形態におけるマルチプロジェクションシステム1によれば、走査領域5A〜5Fそれぞれの一部を他の走査領域5A〜5Fと重ねることで、領域6b〜6d、6f〜6h、6j、6l、6nそれぞれにおいて観察者が視認する画像の輝度の変化量が小さくなり、各走査領域5A〜5Fそれぞれの境界部分が見えにくくなる。
領域6b〜6d、6f〜6h、6j、6l、6nそれぞれを走査する際に各プロジェクタユニット2A〜2Fから射出するレーザ光の強度を減少させて各領域6a〜6oで表示される画像の輝度を揃えることで、液晶装置を空間変調装置として用いることと比較して光利用効率が向上すると共に、低消費電力化が図れる。
【0025】
[第2の実施形態]
続いて、本発明におけるマルチプロジェクションシステムの第2の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、第1の実施形態と走査領域の重なり方が異なるため、この点を中心に説明すると共に、上記実施形態で説明した構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。ここで、ここで、図4はマルチプロジェクションシステムを示す概略構成図、図5はスクリーンにおける各プロジェクタユニットによる走査領域を示す説明図である。
【0026】
本実施形態におけるマルチプロジェクションシステム50では、図4及び図5に示すように、各プロジェクタユニット51A〜51Fによる走査領域52A〜52Fそれぞれにおいて、隣り合う他の走査領域52A〜52Fとの重なり量が例えば走査領域52A〜52Fの半分となっている。すなわち、走査領域52Bは、水平方向hの半分が走査領域52Aと重なっており、水平方向hの他の半分が走査領域52Cと重なっている。同様に、走査領域52Eは、水平方向hの半分が走査領域52Dと重なっており、水平方向hの他の半分が走査領域52Fと重なっている。
【0027】
したがって、走査領域52Aは、図5に示すように、プロジェクタユニット2Aから射出されるレーザ光のみが照射される領域53aと、走査領域52Bのみと重なる領域53bと、走査領域52Dのみと重なる領域53cと、走査領域52B、52D、52Eと重なる領域53dとからなる。同様に、走査領域52Bは、領域53b、53dと、走査領域52Cのみと重なる領域53eと、走査領域52C、52E、52Fと重なる領域53fとからなる。また、走査領域52Cは、領域53e、53fと、プロジェクタユニット2Cから射出されるレーザ光のみが照射される領域53gと、走査領域52Fとのみ重なる領域53hとからなる。そして、走査領域52Dは、領域53c、53dと、プロジェクタユニット2Dから射出されるレーザ光のみが照射される領域53iと、走査領域52Eのみと重なる領域53jとからなる。さらに、走査領域52Eは、領域53d、53f、53jと、走査領域52Fのみと重なる領域53kとからなる。また、走査領域52Fは、領域53f、53h、53kと、プロジェクタユニット51Fから射出されるレーザ光のみが照射される領域53lとからなる。
【0028】
このマルチプロジェクションシステムでは、図4に示すように、領域53b〜53f、53h、53j、53lが、観察者が視認する画像の輝度が最大になる視野角を複数有する。これにより、走査領域52A〜52Fの境界が見えにくくなる。
ここで、走査領域52Bの全域が走査領域52A、52Cと重なっているため、走査領域52Bの全域において観察者が視認する画像の輝度が最大になる視野角を複数有することになる。同様に走査領域52Eの全域が走査領域52D、52Fと重なっているため、走査領域52Eの全域において観察者が視認する画像の輝度が最大になる視野角を複数有することになる。これにより、走査領域52B、52Fにおいてより均一な輝度の画像が表示される。
【0029】
以上のような構成のマルチプロジェクションシステム50においても、上述と同様の作用、効果を奏するが、走査領域52B、52Eの全域がそれぞれ走査領域52A、52Cや走査領域52D、52Fと重なっているため、走査領域52B、52Eにおいて表示される画像の輝度がより均一になる。
【0030】
[第3の実施形態]
続いて、本発明におけるマルチプロジェクションシステムの第3の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、第2の実施形態と走査領域の形状が異なるため、この点を中心に説明すると共に、上記実施形態で説明した構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。ここで、図6はマルチプロジェクションシステムを示す概略構成図、図7はスクリーンにおける各プロジェクタユニットによる走査領域を示す説明図である。
【0031】
本実施形態におけるマルチプロジェクションシステム60では、図6及び図7に示すように、各プロジェクタユニット61A〜61Fによる走査領域62A〜62Fのうち走査領域62A、62Cそれぞれの全域が走査領域62Bと重なっていると共に、走査領域62D、62Fそれぞれの全域が走査領域62Eと重なっている。すなわち、走査領域62A〜62Fからなる画像表示領域の端部に位置する走査領域62A、62C、62D、62Fそれぞれは、水平方向hの幅が走査領域62B、62Eの半分となっている。また、走査領域62A、62Cそれぞれの全域は、走査領域62Bと重なっている。同様に、走査領域62D、62Fそれぞれの全域は、走査領域62Eと重なっている。
【0032】
したがって、図7に示すように、走査領域62Aは、走査領域62Bのみと重なる領域63aと、走査領域62B、62Eと重なる領域63bとからなる。同様に、走査領域62Bは、領域63a、63bと、走査領域62Cのみと重なる領域63cと、走査領域62C、62Fと重なる領域63dとからなる。また、走査領域62Cは、領域63c、63dからなる。そして、走査領域62Dは、領域63bと、走査領域62Eのみと重なる領域63eとからなる。さらに、走査領域62Eは、領域63b、63d、63eと、走査領域62Fのみと重なる領域63fとからなる。また、走査領域62Fは、領域63d、63fからなる。
【0033】
プロジェクタユニット61Aは、図6及び図7に示すように、水平方向hの走査幅がプロジェクタユニット61Bにおける水平方向hの走査幅の半分となっている。すなわち、プロジェクタユニット61Aを構成するMEMSミラーは、その揺動幅が上述した実施形態の半分となっている。ここで、MEMSミラーは、電圧を供給しない停止位置を中心にして揺動するため、停止位置においてスクリーン3に向けて照射されるレーザ光の光軸をスクリーン3の法線から傾けることにより、走査領域62Aの全域が走査領域62Bのうち水平方向hの半分の領域と重なるようにしている。
なお、走査領域62C、62D、62Fにおいてレーザ光を走査させる他のプロジェクタユニット61C、61D、61Fを構成するMEMSミラーそれぞれにおいても、その揺動幅が上述した実施形態の半分となっている。
【0034】
このマルチプロジェクションシステムでは、走査領域62A〜62Fすべてにおいて観察者が視認する画像の輝度が最大になる視野角を複数有することになる。これにより、走査領域62A〜62Fすべておいてより均一な輝度の画像が表示される。
【0035】
以上のような構成のマルチプロジェクションシステムにおいても、上述と同様の作用、効果を奏するが、走査領域62A〜62Fそれぞれ全域が他の走査領域62A〜62Fと重なっているため、走査領域62A〜62Fすべておいて表示される画像の輝度がより均一になる。
本実施形態では、プロジェクタユニット61AにおけるMEMSミラーの揺動幅を半分にすることで走査領域62Aの全域を走査領域62Bと重ねているが、他の方法により走査領域62Aの全域を走査領域62Bと重ねていてもよい。例えば、プロジェクタユニット61Aが、MEMSミラー及びガルバノミラーにより走査可能な領域のうち走査領域62Bと重ならない領域に光源11からレーザ光を照射させないことにより走査領域62Aの形状を調整する調整手段(図示略)を有する構成としてもよい。このようにすることで、MEMSミラーの揺動幅を変更することなく、走査領域62Aの全域を走査領域62Bと重ねることが可能となる。なお、走査領域62C、62D、62Fにおいてレーザ光を走査させる他のプロジェクタユニット61C、61D、61Fにおいても、このような構成としてもよい。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、輝度制御手段は、複数の走査領域が重なる領域を走査する際のレーザ光の強度を減少させているが、複数の走査領域全体で表示される画像の輝度が揃えられれば、例えば後述するような他の方法を用いてもよい。すなわち、例えば第1の実施形態において、図8に示すように、2つプロジェクタユニット2A、2Bそれぞれの走査領域5A、5Bが重なる領域6bにおいて、水平方向hの1ライン71aに一方のプロジェクタユニット2Aから射出するレーザ光のみを照射させ、この1ラインと垂直方向vにおいて隣接する他の1ライン71bに他方のプロジェクタユニット2Bから射出するレーザ光のみを照射させる。これを繰り返し、領域6bの全域において、垂直方向vに沿って配列される水平方向hの1ラインごとにプロジェクタユニット2A、2Bから交互にレーザ光を照射させる。このようにしても、光利用効率を向上させると共に低消費電力化させ、領域6bで表示される画像の輝度が他の領域と揃えることができる。なお、1つの重畳領域に画像を表示させるプロジェクタユニットが3以上であっても、同様に水平方向hの1ラインごとにレーザ光を射出するプロジェクタユニットを交互に変更すればよい。
【0037】
また、マルチプロジェクションシステムが6のプロジェクタユニットを備えているが、それぞれの走査領域の少なくとも一部が他の走査領域と重なる少なくとも2以上のプロジェクタユニットを備えていればよい。
そして、隣り合う他の走査領域との重なり量は、重畳領域において表示される画像と他の領域において表示される画像との間で輝度の変化を抑制できれば、適宜変更してもよい。
さらに、マルチプロジェクションユニットは、プロジェクタユニットそれぞれに輝度制御手段を設けているが、1つの輝度制御手段によって重畳領域それぞれにおける複数のプロジェクタユニットそれぞれの画像の輝度を制御する構成としてもよい。
また、マルチプロジェクションシステムは、スクリーンに形成された画像を撮像装置で撮像し、この結果から各プロジェクタユニットそれぞれの走査領域における画像の輝度を輝度制御手段により制御することで領域の画像の輝度を揃える構成としてもよい。
【0038】
また、走査手段は、スクリーンの走査領域内でレーザ光を走査させることができれば、他の構成であってもよい。例えば、MEMSミラーによりスクリーンにおける水平方向の走査を行っているが、ガルバノミラーやポリゴンミラーなどの他の反射型の光学素子や、例えばカー効果(等方性材料に電場をかけると複屈折性が生じる現象であり、印加電圧により発生した電界の強さの二乗に比例する)を利用した結晶であるタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN:KTa1−xNb)結晶やニオブ酸リチウム(LiNbO)などの電気光学素子、音響光学素子など、他の素子を用いて水平方向の走査を行ってもよい。同様に、ガルバノミラーによりスクリーンにおける垂直方向の走査を行っているが、MEMSミラーやポリゴンミラーなどの他の反射型の光学素子や、例えばKTNやニオブ酸リチウムなどの電気光学素子、音響光学素子など、他の素子を用いて垂直方向の走査を行ってもよい。さらに、走査手段がMEMSミラーとガルバノミラーとにより構成されているが、二次元で走査可能なMEMSミラーのような1つの部材のみにより構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施形態のマルチプロジェクションシステムの概略構成図である。
【図2】各プロジェクタユニットの走査領域を示す説明図である。
【図3】プロジェクタユニットを示す概略構成図である。
【図4】第2の実施形態のマルチプロジェクションシステムの概略構成図である。
【図5】各プロジェクタユニットの走査領域を示す説明図である。
【図6】第3の実施形態のマルチプロジェクションシステムの概略構成図である。
【図7】各プロジェクタユニットの走査領域を示す説明図である。
【図8】他の輝度制御手段による重畳領域へのレーザ光の照射方法の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1,50,60 マルチプロジェクションシステム、2A〜2F,51A〜51F,61A〜61F プロジェクタユニット、3 スクリーン(被投射面)、5A〜5F,52A〜52F,62A〜62F 走査領域、6b〜6d,6f〜6h,6j,6l,6n,53b〜53f,53h,53j,53k,63a〜63f 領域(重畳領域)、11 光源、13 走査手段、14 輝度制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロジェクタユニットを有し、該複数のプロジェクタユニットそれぞれが分割された画像を被投射面に表示するマルチプロジェクションシステムであって、
前記複数のプロジェクタユニットそれぞれが、光源と、該光源から射出されたビーム光を前記被投射面における走査領域内で走査する走査手段とを備え、
前記複数の走査領域それぞれに、前記被投射面において隣り合う他の前記走査領域と重なる重畳領域が設けられており、
該重畳領域に画像を表示する一の前記プロジェクタユニットが前記重畳領域に表示する画像の輝度を制御する輝度制御手段を有することを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【請求項2】
一の前記走査領域が、複数の前記重畳領域からなることを特徴とする請求項1に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項3】
前記複数の走査領域で構成される画像形成領域のうち端部に位置する前記走査領域の全域が、該走査領域と隣り合う他の走査領域と重なることを特徴とする請求項1または2に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項4】
前記画像形成領域のうち端部に位置する前記走査領域に前記ビーム光を照射する前記プロジェクタユニットが、前記光源の駆動の制御により前記走査領域の形状を調整して前記走査領域の全域を前記隣り合う他の走査領域と重ねる調整手段を備えることを特徴とする請求項3に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項5】
前記輝度制御手段が、前記重畳領域に画像を表示する複数の前記プロジェクタユニットの数に基づいて、該複数のプロジェクタユニットにより前記重畳領域に向けて射出する前記ビーム光の強度を減少させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項6】
前記輝度制御手段が、前記重畳領域の輝度に基づいて、該複数のプロジェクタユニットにより前記重畳領域に向けて射出する前記ビーム光の強度を減少させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項7】
被投射面における走査領域内でビーム光を走査する複数のプロジェクタユニットそれぞれが、分割された画像を前記被投射面に表示するマルチプロジェクションシステム用プロジェクタユニットであって、
前記走査領域に、前記被投射面において他のプロジェクタユニットの走査領域と重なる重畳領域が設けられ、
該重畳領域に画像を表示する前記プロジェクタユニットの数に基づいて、前記重畳領域に向けて射出する前記ビーム光の強度を減少させる輝度制御手段を備えることを特徴とするプロジェクタユニット。
【請求項8】
被投射面における走査領域内でビーム光を走査する複数のプロジェクタユニットそれぞれが、分割された画像を前記被投射面に表示するマルチプロジェクションシステム用プロジェクタユニットであって、
前記走査領域に、前記被投射面において他のプロジェクタユニットの走査領域と重なる重畳領域が設けられ、
該重畳領域の輝度に基づいて、該重畳領域に向けて射出する前記ビーム光の強度を減少させる輝度制御手段を備えることを特徴とするプロジェクタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−15125(P2009−15125A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178298(P2007−178298)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】