説明

マルチホップワイヤレスメッシュネットワークにおいて容量を改善するための方法

マルチホップマルチフローネットワークにおけるワイヤレスアクセス効率は、全ネットワークに亘ってマルチフローを最適化することにより改善される。この方法は、個々のフローについても効果がある。これらのメカニズムは、中間ホップでのマルチフローに対してジョイントルーティング及びトラフィックシェーピング技法を適用する。このルーティング及びトラフィックシェーピング技法は複数のホップ及び複数のフローに亘って考えるとき、全てのフローについて相当の性能を達成することができる。システム性能は、マルチホップマルチフローワイヤレスネットワークにおける複数のフローのルーティングパスを制御し、系統的方法でトラフィックシェーピングを適用することにより達成される。マルチホップ環境において、発信アプリケーション及び着信アプリケーションの両方に対する透過性という付加的な効果も達成される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、Sean A. Ramprashad、Christine Pepin、Ulas C. Kozatにより、「METHOD FOR IMPROVING CAPACITY IN MULTI-HOP WIRELESS MESH NETWORKS」と題して、2005年9月16日に出願された米国仮出願第60/717,903号、及び2006年9月13日に出願された米国非仮特許出願第11/531,384号の優先権を主張し、これら両出願明細書は、ここに援用される。米国においてでは、本願は、前述の2006年9月13日に出願された米国非仮特許出願第11/531,384号の継続出願である。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、一般に、複数のワイヤレスステーション(「WS」)及びアクセスポイント(「AP」)を有するワイヤレスネットワークに係る。より詳細には、本発明は、音声アプリケーションを含む多数のデータ及びメディアアプリケーションを有する多重アクセスワイヤレスネットワークに係る。このようなネットワークにおけるトラフィックは、その行先へ向けて複数のワイヤレスリンクを通して送信される。
【関連技術の説明】
【0003】
802.11ネットワークの如き多重アクセスネットワークにおいては、より低いレイヤーにおけるチャネル(媒体)アクセス及びワイヤレストランスポートにおいて本来的に非効率性が存在している。このような非効率性は、しばしば、このようなネットワークのアドホック及び多重アクセス特性から生ずることがある。802.11ネットワークは、キャリア波感知多重アクセス(CSMA)スキームに基づく多重アクセスネットワークである。例えば、実時間トラフィックをサポートするに際して、このCSMAスキームは、媒体アクセス制御(MAC)及び物理(PHY)レイヤーの両者におけるメカニズムにおいて非効率性を有する。このような非効率性は、データパケットが小さなペイロードを有するとき、又はデータパケットがその実時間挙動においてある特定の統計学的特性を有するときに、特に重大となる。一例として、音声(例えば、インターネットプロトコル(「VoIP」)アプリケーションでの音声において)の二方向固定ビットレート送信がある。VoIPにおいては、音声トラフィックは、10ミリ秒と30ミリ秒との間の平均パケット間隔でもって、各方向に、一般に毎秒64kbより低いビットレートで送信される。典型的なVoIPアプリケーションでは、各データパケットのペイロードは、数バイトから約240バイトまで変化する。
【0004】
このような非効率性により、システムスループット又はサポートすることのできるユーザ又はコールの数が相当に減らされてしまう。以下の詳細な説明において、用語「システム容量」は、サポートされるユーザ又はコールの数及びシステムスループットの両方を指している。非効率性の1つの原因は、媒体へのアクセス毎に生ずるMAC-PHYオーバーヘッドである。所定のビットレートにおいて、パケットサイズが小さくなる程、ワイヤレス媒体へのアクセスがより頻繁となる。従って、最大パケット間隔(例えば、およそ30ミリ秒)でも、特に、分散競合スキーム(例えば、CSMAスキーム)が使用されているときには、11Mb/s物理レイヤー(PHY)を有する単一802.11アクセスポイントは、その容量限界に達してしまうことがあり、この容量限界では、13の二方向音声コールしかサポートできないのである。ITU-T Rec G.711の下での音声トラフィックの場合には、11Mb/sPHYレイヤーは、最大限容量11Mb/sPHYレイヤーの8.82%の実効容量利用割合に相当する0.97Mb/s(即ち、((280x8)/0.03)x13=0.97Mb/s)実効音声ペイロードデータ送信レート(この例では、IP、UDP及びRTPヘッダー(40バイト総計)の802.11ペイロードにおけるオーバーヘッドもある)しか達しない。
【0005】
単一ユーザ(又は単一コール)単一ホップシステムにおいて、MAC-PHYレイヤー効率を改善するには限界がある。図1は、単一ゲートウエイアクセスポイント(GAP)と直接通信する単一移動端末(MT)を示している。そのMTのMAC-PHYプロトコルレイヤー及びそのGAPのMAC-PHYプロトコルレイヤーは、幾つかのフロー制御メカニズム(例えば、単一フローをバッファリングしたりバースティングしたりすること又は異なる優先度を有する複数のフローに亘るクラス分けをすること)を含むが、このようなメカニズムにより達成される改善には限界がある。パーフロー(又はパークラスオブフロー)ベースにて適用できる技法により、限られたシステム容量の下で、短期間トラフィック変動を軽減することができ且つ高優先度フロー(低優先度フローに対しては性能が低くなる)を有利に扱うことができる。このような技法には、主として、フロー間又はフロー内でのサービス品質(QoS)のトレードオフの問題がある。これらのメカニズムは、一般的アプリケーションの十分に設計されたプロセスと違って、日和見的なものである。例えば、競合なし(バースト)MAC/PHYメカニズムを利用するためには、トラフィック到着とチャネルアクセス機会とを十分に整合させなければならない。もし、単一フローがバースト到着統計量をもたない場合には、このバーストMAC-PHYメカニズムは、なんら役に立たないか、又は、到着統計量が付加的遅延要素によって変更されるときのみ有効に作用する。
【0006】
音声データが、2つ以上のワイヤレスリンク(ホップ)を横断するような複数のAPを有するマルチユーザ(又はマルチフロー)マルチホップシステムにおいては、単一ユーザ単一フロー技法は、依然として、パーユーザ及びパーホップベースにて適用できる。このような簡単な(パーユーザ、パーホップ、パーフロー)方法は、システム設計及び複雑さにおいて幾つかの利点を有するとしても、それらのワイヤレスインターフェースを介して相互接続されたAPのネットワーク(メッシュ)においては性能が悪くなってしまうことがある。
【0007】
2005年3月7日の週の間にサンホセで開催された「Voice over Net(VON) Conference」においてローカストワールドによるプレゼンテーションで、802.11APのメッシュ内で使用される「スピーチサーバー」が開示されている。前述したように、音声は、ネットワークにとって都合のよいトラフィックであるとはされていない。音声トラフィック性能を改善するための1つの方法は、実質的無線リソースを提供することである。別の仕方として、ローカストワールドのプレゼンターによって開示されたように、スピーチが全ネットワークに亘って影響を及ぼしてしまうのを制限するため、特定のルートに沿ってスピーチトラフィックを集中させるためのスピーチスイッチとしてノードが作用するようにすることができる。このような方法は、そのメッシュ内にサブネットワークを重ね合わせ、その「スピーチサーバー」へ音声トラフィックを集中させるものであり、この方法に関連して、集合の形式であるトンネリングを使用することができる。しかしながら、これらの「スピーチサーバー」は、静的なものであり、即ち、ルーティングが適応せず、非スピーチサーバートラフィックを利用することもできない。スピーチサーバーは、MAC-PHY性能についての情報を利用することにより最適化もなされない。スピーチサーバーのためのトラフィック集合については、そこには全くふれられていない。
【0008】
パケット集合によれば、ISO標準の異なるレイヤーに関連する大きなヘッダーオーバーヘッドが軽減される。例えば、実時間プロトコル(RTP)多重化においては、複数のRTPストリームが単一RTPペイロードにカプセル化され、それから、それが2つのエンドポイント(例えば、IP電話ゲートウエイ)の間で送信される。インターネットエンジニアリングタスクフォース(IETF)のインターネットアーカイブからdraft-ietf-avt-tcrtp-08.txtとして入手できるインターネットドラフト提案「Tunneling multiplexed compressed RTP(TCRTP)」には、ネットワークパスを通して圧縮、多重化及びトンネリングプロトコルを組み合わせることにより、RTPストリームにおける帯域幅利用度を改善することが記載されている。圧縮により、単一RTPストリームのIP/UDP/RTPヘッダーオーバーヘッドが減じられる。トンネリングは、リンク毎に解凍及び再圧縮をしたりする必要なしに、マルチホップIPネットワークを通して圧縮ヘッダー及びペイロードを搬送する。多重化は、多くのRTPペイロードに亘って単一トンネルヘッダーを割り振ることによりトンネルヘッダーオーバーヘッドを減ずる。この方法を使用して、複数のRTPストリームは、所定のパケットサイズ(バイトの数又はペイロードの数において)に達するか、又はタイマーが切れるか、するまで、単一RTPパケットへと多重化される。パケットサイズの最適値又はタイマー持続時間は、そのネットワークにおける必要とされたデータレート及び許容遅延に依存している。同様のフロー集合技法は、ATMネットワーク(「VoATM」)を通してのVoIP及びMPLS(「VoMPLS」)ネットワークを通してのVoIPにおいて使用される。音声パケットは非常に小さく(例えば、数バイト)でき且つATMセルは最小サイズ(即ち、48バイト)を有するので、音声パケットを単一ATMセルへと多重化することにより、帯域幅利用度が改善される。しかしながら、今日までは、RTP多重化は、ワイヤドIPネットワーク内の単一行先ホストに限られていた。
【0009】
IEEETransactions on Vehicular Technology, Vol.54, No.1, Jan. 2005におけるW. Wang氏、S.C. Liew氏及びV.O.K. Li氏による「Solutions toperformance problems in VoIP over a 802.11 wireless LAN」と題する論文には、ワイヤレス802.11ネットワークにおける低容量についての検討がなされている。これら著者は、音声ゲートウエイでのダウンリンク音声ストリームを単一のより大きなパケットへと多重化し、それから単一送信において全ての受信者へマルチキャストすることを提案している。図2は、この提案された解決法を例示している。この提案された解決法においては、セキュリティーは、それら音声パケットを暗号化することによって達成される。マルチプレクサにより、各音声パケットのIP/UDP/RTPヘッダーは、パケット識別子(ID)でもってRTPセッションを識別する圧縮されたミニヘッダーに置き換えられる。各受信者は、そのパケットIDを使用して多重化されたパケットからその音声パケットを抽出し、そして、元のヘッダーを回復させる。
【0010】
マルチプレックス−マルチキャスト方法によれば、最後のホップにおけるアップリンク通信とダウンリンク通信との間の不調和の問題も解決される(即ち、APは、送信する音声パケットの数と少なくとも同じ回数だけチャネルについて競合する必要はない)。しかしながら、この解決法は、中間のホップでブロードキャストが行われないので、マルチホップワイヤレスネットワークには容易には適用できない。それら中間のホップは、しばしばボトルネックが生ずるところである。コールは、音声ゲートウエイに達する前に1つ又は幾つかのリレーノード(アクセスポイント又はワイヤレスルーター)を通して送られ、他のローカルコールは、その経路に沿ってのAPに接続しようとすることがある。複数のAPがそのゲートウエイに送信する場合には、混雑がすぐに生じてしまうことがある。マルチキャスト技法は、マルチホップネットワークには適用できないものであり、一般的には、端末リンクでのダウンリンクオンリーメカニズムである。
【0011】
ワイヤレス媒体のMAC/PHYレイヤーでのフレーム集合及び容量増大バースティングメカニズムに対する提案が、802.11標準のタスクグループN(TGn)で受領されている。ワールドワイドスペクトラムエフィシェンシー(WWiSE)からの1つの提案は、PLCPプロトコルデータユニット(PPDU)内の複数のMACプロトコルデータユニット(MPDU)を分離するため、信号フィールドを使用してPHYレイヤーでフレームを集合するというものである。WWiSEは、又、802.11標準内のバースティングメカニズムを使用することも推奨しており、そこでは、PPDUは、互いにRIFS(フレーム間スペース)内でワイヤレスチャネルにて連続して送られる。TGnシンクグループ(TGnSync)からの提案は、MACレイヤーで、又はMACレイヤーとPHYレイヤーとの間のインターフェースで、フレーム集合を行うというものである。この提案によれば、MPDUは、各MPDUの始点に配設されたMPDUデリミタを有する1つのPLCPサービスデータユニット(PSDU)へと集合される。又、この提案によれば、MACヘッダー及びCRCビットを共用できるようにするため、複数のMACSサービスデータユニット(MSDU)が1つのMSDUへと集合される。これらのWWiSE及びTGnSync提案によれば、MAC及びPHYレイヤー(即ち、レイヤー2)効率が改善される。
【0012】
MAC-PHYレイヤーには、幾つかの付加的なメカニズムが使用される。例えば、既存の802.11a/b/gシステムは、MAC-PHYレイヤー内でペイロードを集合しない。MACペイロード限界を越える大きなペイロードの場合には、セグリゲーション又はフラグメンテーションアルゴリズムにより、ペイロードの断片が小さなフレーム間スペース(SIFS)間隔にて分離されたバースト形式にてワイヤレスチャネルへと送信される。802.11e標準は、競合期間中に使用されるRIFS間隔でバースティングメカニズムを有する。しかしながら、このバースティングメカニズムは、同じMSDUの断片を送信することに限定されている。
【0013】
マルチプレックス−マルチキャスト方法の場合のように、これらのメカニズムは、パーホップ技法の範疇に入り、個々のリンクの効率を改善することによりマルチホップシナリオにおける性能を助長することができるが、これらは、マルチホップ環境において生ずることがある問題について十分に対応していないし、又、改善の可能性について十分に取り組んでいるものでもない。
【0014】
マルチホップシナリオにおける性能を改善するものもある。しかしながら、(AODV、DSR、DSDP、TORA)の如き初期のワイヤレスマルチホップルーティングプロトコルは、より低い(例えば、MAC/PHY)レイヤーとは独立してルーティング問題を取り扱っている。これらのプロトコルは、システム性能又はサービスの品質(QoS)を保証又は考慮せずに、ベストエフォート形式にてパス発見を行うものである。これらのプロトコルは、主として、接続されたパスを見つけ出すことが高い優先度を有しているような移動アドホックネットワーク(MANET)に使用される。しかしながら、現在のネットワークは、主として静的である(即ち、ワイヤレスリレーは固定しており、接続性は保証されている)。より重要なことは、802.11ネットワークは、高いオーバーヘッドを有しており、これらのオーバーヘッドに対応していないルーティングプロトコルは、システム性能を悪いものとしているということである。ある幾つかのネットワークは、より低いレイヤーにおける不十分なリソースを測定するためパスコストメトリックを組み入れており、そのメトリックに従ってルーティング決定をなしている。
【0015】
より最近においては、幾人かの研究者により、より低いレイヤーにおけるリソース割当てに関してワイヤレスネットワークにおいてルーティングを行うことが考えられている。その結果として、最適なネットワーク動作を提供するようなルーティング及びMAC/PHYレイヤーとの組合せメカニズムが考え出されている。又、より特定用途向けであって、更なる最適化がし易いようなワイヤレスセンサーネットワークにおいても同様の方法が使用されている。しかしながら、これらのルーティングアルゴリズムのうちの多くのものは、802.11プロトコルに適用できないような前提に頼っているものである。
【0016】
既存の解決法は、802.11ネットワークの動作容量を追求しているものではない。802.11のトランスポート容量は、各パケットが競合、送信及び確認オーバーヘッドを有しているため、非常に非効率的なものである。
【発明の概要】
【0017】
本発明の1つの実施形態によれば、全ネットワークを通してマルチフローを最適化することにより、マルチホップ、マルチフローネットワークにおける正味のワイヤレスアクセス効率が改善される。この方法は、個々のフローにおいても利点のあるものである。これらのメカニズムは、ジョイントルーティング及びトラフィックシェーピング技法を、中間のホップでの複数のフローに適用する。このルーティング及びトラフィックシェーピング技法は、ある幾つかのホップでのフローに悪影響を与えるとしても、複数のホップ(所定のフローについて)を通じて及び複数のフロー(所定のホップ又は所定数のホップについて)を通じて平均化されるときに、全てのフローに対して相当の性能を達成することができる。従って、本発明は、非効率性により対処したものであり、パーホップ技法よりもマルチホップパスをより利用するものである。
【0018】
本発明は、従来技術におけるように日和見的(即ち、ランダムに又は独立して最適化する)方法に頼るのでなく、系統的方法にて付加的なトラフィックシェーピングを行うように、複数のフローのルーティングパスを制御することによりシステム性能を改善する。マルチホップ環境では、本発明の方法は、発信アプリケーション(アプリケーションレイヤー)及び着信アプリケーション(アプリケーションレイヤー)の両者に対して透過性であるという付加的な効果をも有する。
【0019】
本発明の1つの実施形態によれば、トラフィックは、直交ルーティングプロトコルを使用してワイヤレスメッシュ内のプリコンフィギュレーションされたサーバーポイントにトラフィックを集中させることによるのでなく、複数のフローに亘って、ルーティング決定とトラフィックシェーピング技法の適用とを連携して行うことによって、選択されたルートに沿って集中させられる。ルーティングパス及びトラフィックシェーピング技法の両者は、ネットワーク変化の条件(トラフィックエンタリング)に対して適応させることができる。静的及び動的ルーティングパス及びトラフィックシェーピング技法の両者を適用することができる。
【0020】
本発明の適切なトラフィックシェーピング及びルーティングは、トラフィック統計量に対する下位MAC-PHY依存性に基づくものである。ワイヤドネットワーク又はワイヤド相当物を擬態しているワイヤレスネットワークとは違って、ワイヤレスCSMA環境においては、トラフィックを特定のルーターに集中させても、必ずしもボトルネックを生じさせるものとはならない。このような環境においては、異なるルートが同じ下位送信媒体を共用することができる。更に又、システム容量は、前段のリレーイングステージにおける容量制限が妨げられないならば、適切なトラフィックシェーピングにつれて増大化させることができる。
【0021】
本発明は、WS及びAPがワイヤレスMAC/PHYメカニズムを通して互いに接続されているような複数のフローを有するマルチユーザ環境に適用できる。多くのフローに亘るルーティング及びトラフィックシェーピングの組合せ(より高いレベルのレイヤーでの)は、ジョイントトラフィック統計量に影響を与え、システム性能(システム容量及びエンド・ツー・エンド遅延によって測定されるような)を改善又は変更することができる。本発明は、既存のMAC/PHY設計を変更せずに実施することができ、アプリケーションレイヤーに対して透過性である。
【0022】
本発明の1つの実施形態は、複数の802.11アクセスポイント(AP)及びワイヤレスルーター(WR)を含むネットワークに適用できる。アクセスポイントは、エンドポイント(例えば、移動端末(MT))に対してサービスするデバイスである。このネットワークにおいては、WRが異なるAP及びWRを相互接続する。(WRは、MTのためのアクセスポイントとして作動することもでき、以下の説明では、特に断らない限り、WRとAPとは区別されていないものとする)。又、必ずしも必要ではないが、ワイヤレスネットワークを1つ以上の外部(多分、ワイヤド)ネットワークへ接続するのに、1つ以上のゲートウエイアクセスポイント(GAP)を提供することもできる。(以下の詳細な説明では、GAPは、複数のフローに対する共通の行先ポイントを例示するのに使用されている)。1つの実施形態では、それらの最終行先への経路の2つ以上のホップ(即ち、ワイヤレスリンク)を通しての幾つかのフローがある。AP、WR及びGAPは、トラフィックの下位統計量(例えば、パケット間持続時間、媒体へのアクセスの数、トラフィックのバースト特性)に敏感に反応するワイヤレスリンクを通して通信する。MTと他のデバイスとの間の通信は、このようなワイヤレスリンクを使用することができる。
【0023】
ネットワークに亘る容量又は性能損失を最小とするため、ルーティング及びトラフィックシェーピングは、関連するMT、AP、WR又はGAP内の下位MAC-PHYメカニズムに基づいて適用される。1つの実施形態では、ジョイントメカニズムは、3つの下位技法クラス:(a)ルーティングメカニズム;(b)MAC-PHYレイヤーの上のトラフィックシェーピングメカニズム(送信トラフィックの統計量を変える);及び(c)ネットワークにあるMAC-PHYにおけるメカニズム又はケイパビリティ、に基づいている。
【0024】
本発明によれば、ワイヤレスネットワーク効率を上げるための方法は、(a)前記ワイヤレスネットワークに対して複数のアクセスポイントを用意すること、(b)移動端末のデータパケットのトラフィック統計量を含むネットワーク条件に従って前記アクセスポイントを通して前記ワイヤレスネットワークにアクセスするための複数の移動端末を指定すること、及び(c)媒体アクセス制御レイヤーの上のプロトコルレベルで前記移動端末からのトラフィックフローをシェーピングすること、を含む。ワイヤレスルーターを含む前記アクセスポイントは、利用できるワイヤレスルーターの数、各ワイヤレスルーターでの集合及び各ワイヤレスルーターに関連する移動端末の最大数に従って、階層型構成にて編成される。前記構成の目的は、前記移動端末とゲートウエイアクセスポイントとの間のトラフィックフローを方向付けることである。
【0025】
1つの実施形態では、ワイヤレスネットワークは、MTへのトラフィックフロー及びMTからのトラフィックフローを送受信するゲートウエイアクセスポイントを含む。この実施形態においては、トラフィックフローをゲートウエイアクセスネットワークへ直接送信するか(1つのホップで)又は1つ以上のワイヤレスルーターを通して送信するかの決定がなされる。ある決定は制約されることがある(例えば、MT及びワイヤレスルーターの間の接続性に基づいて)。しかしながら、しばしば、多くの異なる決定は、サービス品質の制約、存在するワイヤレスルーター及び1つ以上のワイヤレスルーターのトラフィックシェーピングケイパビリティを含む考慮事項に基づいてなすことができる。実際に、本方法は、又、このワイヤレスネットワークに加わることを要求する移動端末に応答して、ワイヤレスルーターをアクティベートするか、又はデアクティベートするかを決定することを含む。
【0026】
重要なことは、トラフィックフローをGAPへ直接送信できるときでも、2つ以上のリンクを通してトラフィックフローを送信するのでは、より効率が悪いと思えても、パーフロー又はパーホップでの解析では、一方のトラフィックフローが他方のフローに与えるジョイント効果又はその逆に他方のトラフィックフローが一方のフローに与えるジョイント効果を見逃してしまうかもしれないということである。実際に、このようなジョイント効果は、全ネットワーク挙動を変えることができるものであり、GAPへワンホップの効果が得られるようなトラフィックフローの場合でも、そのトラフィックフローをその経路の複数のホップ(即ち、ルーター)を通してそのGAPへルーティングするよりも性能が実際に悪くなってしまうことがある。極端な場合には、ワンホップ接続は、実際に、システムがサポートすることのできるトラフィック容量の限界を越えてしまい、全ての接続に悪影響を与えてしまうことがあるのに対して、ツー(又はそれより多い)ホップ接続によれば、システムがその容量限界内に留まるようなトラフィックシェーピングをなすことが可能となるのである。
【0027】
本発明によるトラフィックシェーピングは、媒体制御レイヤーでのデータ到着のタイミング特性をシェーピングするホールドアンドリリースメカニズムに関連してバッファリングすることを含むことができる。このホールドアンドリリースメカニズムは、バッファリングされるデータパケットの入力トラフィック統計量及び望まれる出力トラフィック統計量に従って媒体アクセス制御レイヤーへデータパケットを解放する。望まれるトラフィック統計量は、全ネットワーク条件に適応でき、(i)バッファリングされるパケットを有するフロー;(ii)バッファリングされるデータパケットを有する各フローのタイプ又はクラス;(iii)バッファの占拠率;及び(iv)各データパケットの到着時間のうちの1つに関連させることができる。
【0028】
データパケットは、MAC/PHYがより効率的に挙動できるようにするトラフィック特性となるようにする各ワイヤレスルーターでの媒体制御レイヤー又は物理レイヤーへリリースされる。例えば、パケットがグループにてリリースされる場合には、データを通信媒体へより効率的に送信するため、MAC/PHYバースティングスキーム(もし、サポートされているならば)を使用することができる。トラフィックシェーピングは、又、受信されたデータを、フローに基づいて又はパケットレベルで、より少ないパケット又はフローへと集合することを含むことができ、この集合としては、フロー内の集合又は複数のフローに亘る集合を含むことができる。
【0029】
これらの動作を行う能力及びネットワークにおけるパーホップ及びマルチホップ効率への影響については、ワイヤレスルーターへルーティングされるフローのタイプに依存しているものである。特に、出力トラフィックフロー特性は、入力トラフィックフロー特性に依存している。同様に、全ネットワーク効率に対するジョイント効果は、どのトラフィックフロー及びどんなトラフィックシェーピング技法がそのワイヤレスルーターにおいて実施されるのかに依存している。
【0030】
従って、ルーティング及びトラフィックシェーピングに関する決定は、このようなジョイント依存性を考慮してなされるものであり、このジョイント依存性は、実際のネットワーク又は模擬ネットワークについて種々検討することにより分かるものである。
【0031】
本発明は、図面に関してなされる以下の詳細な説明を参照することにより、より良く理解されよう。
【0032】
図の間の相互参照を容易とするため、それら図における同様の要素には、同様の参照符号を割り当てている。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0033】
本発明は、全ネットワークを通してマルチフローを最適化することにより、マルチホップ、マルチフローネットワークにおける正味のワイヤレスアクセス効率を改善する。本発明は、全てのトラフィック及び全てのパスを考慮して、効率を改善するようにトラフィックをルーティングしシェーピングする。図7は、複数の移動端末MT1−MT6がゲートウエイアクセスポイント(GAP)から直接サービスを得るようなネットワーク700を示している。このような構成は、この詳細な説明では、「単一ホップ複数フローネットワーク」と称する。図7において、GAPは、サービス品質が相当に低下してしまうと、MT1−MT6にサービスを与えることができなくなってしまう。
【0034】
本発明は、リレーイング及びトラフィックシェーピングの両者を使用することにより可能とされる容量増大化を利用している。図8は、複数の移動端末MT1−MT6が各々ワイヤレスリンクを通してゲートウエイアクセスポイント(GAP)にアクセスするワイヤレスルーターWR1−WR3(「中継ノード」)からサービスを得るようなネットワーク800を示している。図8においては、同じ量のトラフィックがそのGAPにアクセスするのに同じチャネルに対して競合するとしても、WR1−WR3を通してMT1−MT6へのトラフィック及びMT1−MT6からのトラフィックをルーティングし、そのトラフィックを中間のWRで集合することにより、全システム容量が増大化される。図7のネットワーク700と違って、図8のMT1−MT6は、全てより良いサービスを受けることができる。何故ならば、集合されたパケットのペイロードがより長くなるためにパケット送信時間がより長くなるとしても、それらは、WRとGAPとの間の送信のためのプロトコルオーバーヘッド及びチャネルアクセス競合が減じられることにより、十分に補償されているからである。パケット長さとGAPアクセス競合との間の適当なトレードオフは、オフラインシミュレーション又はオンライン実験的測定によって得ることができる。特定のフロー又はトラフィックタイプに対して優先度を割り当てることもできる。
【0035】
図9は、3つの異なるリレー戦略について行われた集合の関数として全システム容量(即ち、ユーザフローの最大数)のオフライン測定値を示している。図9は、全てのコールが一定ビットレート(CBR)パターン(例えば、64Kbpsデータレート)に従うような均質なVoIPトラフィックに対して得られる。各MTでのパケット間持続時間は、30ミリ秒である。64Kbpsでは、この持続時間は、送信時間の240バイトに相当する。各パケットは、IPヘッダー(20バイト)、UDPヘッダー(8バイト)及びRTPヘッダー(12バイト)のオーバーヘッドを担持している。異質のトラフィック及び他のパラメータ(例えば、データレート、オーバーヘッド又はIPネットワーク)の変化においても、同様のプロットを得ることができる。
【0036】
図9のプロットのx軸は、WRによってより大きなパケットサイズを使用する単一フローへ集合される音声コールの数Lを示している。集合されたパケットは、例えば、(a)所定の時間期間中に受信された全てのパケットが集合されるとき;(b)所定数のパケットがWRに関連した各MTから受信され集合されるとき;又は(c)パケットがWRに関連した所定数のMTから受信され集合されるとき、に完全である。勿論、(a)、(b)及び(c)のいかなる変形又は組合せも、本発明の範囲内に入るものである。
【0037】
例示のため、所定のWRによってサポートされる各コールからの1つのパケットが集合されると仮定する。各WRで「L」のアグリゲーションの場合(即ち、各WRがL個のコールを集合する)には、数n(L)は、GAPによって支援できるWRの数を示している。ツーホップネットワーク(例えば、図8のネットワーク800)の下では、全システム容量U(L)は、次の式によって与えられる。
U(L)=n(L)×L
【0038】
システム容量は、集合につれて増すことに注意されたい。即ち、L>1の場合、U(1)≦U(L)である。換言すれば、中間WRを使用することにより、GAPによってサポートできるユーザ(MT)の数を増すことができる。逆に、システムにおけるユーザの数が知られているときには、図9により、リレーイング戦略の各々について所定のターゲットUに対する可能な集合オペレーティングポイントを決定することができる。このような容量を達成し又はこのような容量を越えることさえできるような集合レベル又はWRの数の多くの組合せがある。例えば、異なるWRで異なる集合レベルとすることにより、図9に示した容量値を越えるようにすることができる。このとき、使用する戦略の選択について、エンド・ツー・エンド遅延、電力、地理的接近性、チャネル品質及びユーザプロファイルの如き付加的な基準を使用することにより評価することができる。オペレーティングポイントは、(a)使用するWRの数;(b)そのネットワークに入るMTがWRを通してサービスを得るべきか又はGAPを通して直接にサービスを得るべきか;及び(c)各WRでの集合及び各WRに関連する最大ユーザ及びGAPに直接の最大ユーザ、を決定するのに使用できる。
【0039】
更に又、図9は、容量の限界を示しており、又、本来的に、多くのその他の動作ポイントに関する情報を与えていることに注意されたい。特に、ネットワークは、常に、そのような容量より低いところで動作することができ、このことは、実際に、新しいトラフィックのためのヘッド余地を維持し及び/又はサービスの品質を維持するのに望ましいことである。例えば、ある容量が、「m」個のWRの各々で集合レベル「L」を使用して達成されているとするならば、レベルLより低いレベル「L1」の集合でm個より少ない「m1」個のWRを作動させるように「m」個のWRを使用することも可能である。同様に、各々が「L」以下の集合レベル(潜在的に異なる)で動作するようにして、m個より少ない「m1」個のWRを使用することも可能である。
【0040】
図9によって例証されていないような他の動作特性、例えば、幾つかのルーターが集合レベル「L」より高いレベルを使用するような場合についても、ネットワークロードを取り扱い及び/又は望むサービス品質を達成することができるようにするため検討することができる。
【0041】
階層度がより高い(例えば、2ホップより高い)ネットワークの場合には、図8のネットワーク800におけるGAPは、WRとして見ることができる。このような第2レベルのWRの多くを相互接続し又は別のGAPに接続することができる。図9の測定値は、マルチGAPネットワークへ拡張することができる。
【0042】
本発明は、混合階層型のネットワーク、即ち、ある幾つかの移動端末がGAPに直接に接続されるような、ネットワーク800の如きネットワークにも適用できる。ネットワーク800のような構成におけるように、このような構成は、この詳細な説明においては、「マルチホップマルチフローネットワーク」と称される。WR、MT、AP及びGAPは、例えば、802.11標準のいずれかの下でのアドホック又はインフラストラクチャモードにおいて通信することができる。干渉を避け且つフルデュプレックス動作とするため、各WRは、異なる周波数スペクトラム(例えば、802.11a及び802.11b)を占有する異なるチャネル又は異なる標準で動作する複数の802.11インターフェースを担持することができる。これらインターフェースは、MT及びGAPと通信する。
【0043】
主としてワイヤドIPネットワーク内の単一行先ホストに対して働くRTP多重化と違って、本発明は、ありうる異なるユーザ及び異なる行先からの複数のフローを集合し、より一般的には、トラフィックシェーピングすることにより、ワイヤレスマルチホップIPネットワークのシステムスループットを改善する。又、パーリンクベースで有利な従来技術のトンネリングと違って、本発明の方法は、全ネットワークに対してより高い帯域幅利用度を達成するように、集合サービスを行う複数のルーター(ルーティング決定により)を使用する。本発明は、又、MAC及びPHYレイヤーをより効率的にしようとしている従来の提案とは異なる。本発明の方法は、既存のMAC及びPHYレイヤーにトラフィックシェーピング及びルーティングメカニズムを適用して、レイヤー2メカニズム以上にて動作するものである。
【0044】
本発明の1つの実施形態によれば、どのアクセスポイントも、統計量を変更するように中間ホップを使用するルーティング戦略(トンネリングとは別の)を有する「スピーチサーバー」と見ることができる。しかしながら、トラフィックをスピーチサーバーに沿って流すだけの従来のルーティング戦略では、マルチホップ集合による効果を得ることができないし、又、中間ホップノードをアクティベートすることによる効果を得ることはできない。本発明は、競合を軽減し且つマルチホップ802.11ネットワークを通しての音声容量を増大させるため、特定のワイヤレスルーターでアップリンク音声ストリーム及びダウンリンク音声ストリームの両方を集合するのである。ヘッダー圧縮及び多重化を含む集合により、帯域幅効率が増大化される。ワイヤレスルートは、WLANのワイヤレスエンドホストとワイヤドアクセスポイントとの間の可能なフローパスである。トラフィック集合及びパケットリフォーマティング(即ち、パケットヘッダーを変更する)と関連してルーティングを行うことにより、非効率性を相当に減少させることができる。
【0045】
図3及び図4は、それぞれアップリンクトラフィック及びダウンリンクトラフィックに対する移動端末MT1及びMT2とゲートウエイアクセスポイントGAPとの間の中間ホップでのネットワークレイヤーとMAC/PHYレイヤーとの間でメカニズム300によって行われるルーティング及びトラフィックシェーピングを示している。図5は、図3及び図4のメカニズム300をより詳細に示している。図5に示されるように、メカニズム300は、トラフィック監視(TM)モジュール501、ジョイントルーティング及びトラフィックシェーピング決定(JRTD)モジュール502、トラフィックシェーピング(TS)モジュール503−1、503−2、……503−n及びトラフィックシェーピング反転(TSI)モジュール504−1、504−2、……504−nを含む。
【0046】
全てのMT、AP/WR及びGPAに共通のTMM501は、ネットワーク状態(例えば、チャネル状態及びリンク品質)及びデータトラフィックの両方を監視する。JRTDモジュール502は、TMM501からの入力を受信してTSIモジュールによって行われるべき動作及びネットワークに亘るフローのルーティングを決定する。JRTDモジュール502は、又、MT-AP関連を決定し、且つ、付加的なWRをアクティベートするべきか否かを決定する。ネットワークに亘るルーティング及びトラフィックシェーピングの両者に関するジョイント決定は、フローのジョイント統計量に対する下位MAC-PHYメカニズムの性能依存性を考慮して行われる。JRTDモジュール502は、ネットワークにおけるマルチプルホップ及び複数のフローを考慮して且つより高いレベルのレイヤー(例えば、アプリケーショレイヤー)に対して透過性であるようにして、個々のMAC/PHYレイヤー性能を最適化する。
【0047】
TSモジュール503−1、503−2、……503−nの各々は、選択されたAP、WR又はGAPにあって、集合及びパケットバッファリングを行うことができる。1つの実施形態では、各TSモジュールは、複数のフローに亘るパケットを単一パケットへと集合して、中間ホップ(リンク)におけるチャネルアクセスの数を減少させ、それにより、そのリンクの容量を増大化させ、そのネットワークにおける遅延を減少させることができる。各TSモジュールは、パケットをバッファリングし、それから、対応するMAC-PHYレイヤーでの処理の所定の統計的時間プロファイルに従ってそれらパケットをリリースすることができる。バッファリングにより幾つかのパケットが遅延させられることがあるが、全てのパケットに亘っての平均遅延は、減じられる。何故ならば、MAC-PHYレイヤーは、競合なしバースティングメカニズム(即ち、単一アクセス許可に基づいて複数のパケットを送信する)を利用することができるからである。TSモジュールは、又、パケット到着のタイミングを変更する他の技法を適用することができる。例えば、RTP-UDPヘッダーは、個々のフローの生ビットレート(Kbpsでの)を減少させるため圧縮することができる。TSモジュールは、データペイロードの可逆圧縮(例えば、レンペルジフアルゴリズムを使用して)を適用して)することができる。音声データの場合には、TSモジュールは、ある特定のフローに対して非可逆圧縮でも適用できる。バースティングにより、ネットワーク競合オーバーヘッド(従って、パケット当たりの平均チャネルアクセス競合オーバーヘッドも)を減じることができ、ネットワークのネットワーク容量を増大化することができる。TSIモジュール504−1、504−2、……504−nは、各々、データパケットの集合を反転させるため(必要なときに)、選択されたAP、WR又はGAPに設けることができる。
【0048】
図6は、本発明の1つの実施形態によるジョイントルーティング及びトラフィックシェーピングメカニズム300を使用する単一フローマルチホップネットワークを示している。図6に示されるように、第2のホップでのチャネルアクセス統計量は、トラフィックシェーピングを使用して変更される。この場合におけるトラフィックシェーピングは、又、多くのネットワークエンティティによって共用されているワイヤレス媒体のスループットに影響を及ぼす。しかしながら、図1におけるように、より高いレイヤーでの透過性を維持しながらの統計学的シェーピングには限界がある(例えば、着信アプリケーションレイヤーのQoS要件)。図3及び図4の各々を参照するに、複数のホップ及び複数のユーザ又はフローを有するネットワークは、着信エンドポイントMTによって必要とされるいずれのフローのQoS制約に影響を及ぼしたりそのQoS制約を犯したりせずに、MAC-PHYデバイス(例えば、図3及び図4の各々における「トラフィックシェーピング1」モジュール)に対する2つ以上のフローを集合することを可能とする。(例えば、図4に示されるようなTSIモジュールは、集合されたパケットの分割を行う)。トラフィックシェーピングは、複数のユーザによってアクセスされる第1のホップ(図4)でのようにそのフローの初期において生ずることがある。
【0049】
本発明は、複数のフローに亘ってルーティング決定をトラフィックシェーピングにリンクする。JRTD502は個々のMAC-PHYレイヤーより上で動作するので、これは、それらのトラフィック統計量によって表されるようなMAC-PHYレイヤーの挙動を考慮して決定をなす。トラフィックシェーピングは、MAC-PHYレイヤーの効率に直接に影響し、ルーティングは、適用するトラフィックシェーピングのタイプ及び両に影響を及ぼす。パケット及びフロー集合は、ネットワークに亘るコールを1つ以上の共通のポイントへルーティングすることによって行うことができる。多くのフローに亘るJRTDモジュール502におけるジョイント統計学的処理は、全ネットワーク及び個々のMAC-PHYメカニズムの性能に影響を及ぼす。例えば、フロー内のバースティング挙動及びこの挙動に対する変化は、チャネルアクセスパターン及びそのフローに含まれるMAC-PHYメカニズムの挙動に影響する重要なパラメータである。マルチホップマルチフローネットワークにおいて、ジョイントフローは、MAC-PHYメカニズムによって知られる。集合の他に、ジョイントトラフィック統計量をシェーピングするのに、適応遅延要素(例えば、適応バッファ)を使用することができる。パケットサイズ及びチャネルアクセスパターンを含む着信パラメータも、MAC-PHYメカニズムに影響を及ぼすことがある。
【0050】
GAP及びMTは、異なるトラフィックタイプ及び特性(例えば、パケット長さ及び到着間分布)を生成する。マルチホップ環境においては、GAPは、各ホップが異なるトラフィック容量(例えば、リンク品質、MAC及びPHYメカニズム)を有した状態で、複数のAP及びWRを通してMTに接続することができる。マルチフローマルチホップネットワークでは、MTとWR又はAPとの間のリンク、MTとGAPとの間のリンク、WRとAPとの間のリンク及びWR、AP及びGAPの間のリンクがある。ワイヤレスリンクは、トラフィック統計量に敏感に反応する下位MAC-PHYメカニズムを有する。AP、WR及びGAPは、フロー及び従って送信イベントの統計量を変化させる技法を支援することができる。
【0051】
1つのジョイントルーティング(リレーイングを含む)及び統計学的トラフィックシェーピング決定は、(a)GAPへ直接送信するフロー;(i)各フローのQoS制約(例えば、遅延、ジッタ及び帯域幅)、(ii)MT、WR及びGAPの間の接続性及び(iii)各ワイヤレスルーターのトラフィックシェーピングケイパビリティ、及び(iv)各リンクの品質が与えられている選択リレーノードを通して送信するフロー;及び(c)WRのアクティべーション及びデアクティべーションを考慮して行うことができる。
【0052】
1つのリレーイング決定は、(1)フローがGAPへ直接送信されること及び(2)フローが、各フローの所定の(1)QoS制約(例えば、遅延、ジッタ及び帯域幅)及び各ワイヤレスルーターの所定の(2)トラフィックシェーピングケイパビリティの下で、ツーホップ形式にてリレーノードを通して送信されること、を考慮して行うことができる。これらの決定は、例えば、システム容量最大化、サポートされる音声コールの数、ネットワークにおける正味のデータスループット及び平均遅延最小化を示すメトリックを使用して評価することができる。ワイヤレスルーターによって中継されるIPパケットは、同じ又は異なるMTから発する異なるトラフィックフロー又は同じ又は異なるMTに終端する異なるトラフィックフローに属することができる。WRは、IPパケットをバッファリングし、同じ行先(例えば、MT又はGAP)に対する異なるフローのパケット又は同じフローにおけるパケットを集合することによりトラフィックシェーピングを行うことができる。WRが媒体アクセスを得るとき、IPパケットは、1つ以上のバーストにおいて、それらバースト間でチャネルアクセスをリリースせずに、MACレイヤーによって送信される。
【0053】
図10は、本発明の1つの実施形態によるトラフィックシェーピングを行うのに使用されるバッファリング及びホールドアンドリリース決定メカニズム1000を概略的に示している。これは、相対的タイミング及び技法変化(例えば、アグリゲーション)の両方を考慮して行う。図10に示されるように、複数の入来パケットは、バッファ1001へ受け入れられる。フィルタリング回路(図示していない)が、バッファ1001におけるパケットの統計量を収集し、それら統計量をホールドアンドリリース決定モジュール1002へ与える。同時に、タイマー1003が、最後のリリース以後の経過時間を追跡する。1つの実施形態では、パケットをホールドするかの決定又はパケットをリリースするかの決定は、収集された統計量及びタイムリミットの完了の両方に依存している。バッファ1001のパケットは、リリースされるときは、基礎MACレイヤーへと送られる。このリリースのタイミングは、受入MACレイヤーの要件によって制約される。典型的には、MACレイヤーによるタイミング制約が相当なものとならないようにするため、MACレイヤーにはバッファがある。このホールド又はリリース決定は、(a)時間及び(b)バッファ占拠率に関する統計量に依存しており、(i)バッファ1001にパケットを有するフロー;(ii)各フローのタイプ又はクラス;(iii)バッファ1001におけるパケットの数;及び(iv)各パケットの到着時間、を考慮してなされる。時間的展望からは、その決定は、個々のパケットがバッファに存在していた持続時間又は最後のリリース又はホールド以後の経過時間を考慮してなされる。
【0054】
メカニズム1000は、MACレイヤーによって知られるような時間における望む到着統計量を生成する。この望む統計量は、JRTDモジュール502によって選択され指示されてもよいし、又は、各トラフィックシェーピングワイヤレスルーター503−1、……503−nは、単に、半独立的に動作して、JRTDモジュール502及び所定のMAC-PHYレイヤーからの制約の下で局部最適化をなすことができる。例えば、ホールドアンドリリースメカニズムは、MACレイヤーがスピーチクラスバッファにおいて複数の「スピーチ」クラスパケットを有するようにして、そのバッファに対するチャネルアクセスの競合が起こらないようにするようなポリシーを維持することができる。JRTDモジュール502は、フローの数、従って、最良のリリース基準を設定することができる。付加的な考慮事項としては、a)バッファ1001における許容最大遅延、又はb)バッファ1001に保持できるパケットの最大数、がある。別の仕方として、フローの異なるサブセットに対して働く1つ以上のバッファを設けることができる。(例えば、トラフィッククラス依存バッファ)。
【0055】
ホールドアンドリリースバッファメカニズムは、所定のフロークラス(特定のメディアフローにおける)に対するチャネルアクセス競合を、そのクラスにおける複数の送信待ちパケットに亘って競合オーバーヘッドを分担させることにより、減少させる。競合なしバースティング(CFB)メカニズムを使用するMAC-PHYレイヤーは、更に、下位ワイヤレス媒体における効率を増す。ホールドアンドリリースバッファメカニズムは個々のパケットの遅延を増すのであるが、チャネルアクセス競合が低減されるため、その平均遅延は低減されるのである。チャネルアクセス競合が低減されることにより、CSMAに使用される競合回避バックオフカウンターの平均遅延を減少させることができる。
【0056】
図11は、本発明の1つの実施形態による複数のフローのための集合メカニズム1100を概略的に示している。複数のフロー1101は、収集回路1102に入り、そこで、それらフローは、収集されグループ分けされる。それから、集合回路1103−1及び1103−2は、フローの選択されたグループ1104−1及び1104−2を集合する。集合されるべきでないフロー1103は、変更又は遅延なしに送られる。
【0057】
図12は、本発明の1つの実施形態によるパケットレベルで集合を行う集合メカニズム1200を概略的に示している。図12に示されるように、フロー1201−1、……、1201−nからの入来パケットは、バッファ1202−1、……、1202−nで別々にバッファリングされる。必要ならば、後のステージでのTSIモジュール(例えば、TSIモジュール504−1、……、504−n)が集合されたパケットから元のパケットを再構成できるようにするため、付加的なヘッダーを負荷することができる。さもなければ、既存のヘッダーを変更するか、又は、単に、既存のペイロードと共に集合されたパケットのペイロード内へ既存のヘッダーを置くことができる。バッファ1202−1、……、1202−nにおけるパケットは、集合スキームに従って集合され、集合パケット1203にてMAC/PHYレイヤーへ送信される。
【0058】
ホールドアンドリリース決定スキームでのバッファリングを使用するトラフィックシェーピングは、フロー又はパケット集合と組み合わせることができる。図13は、ホールドアンドリリース決定が集合されたフローに適用される実施形態を示している。図14は、ホールドアンドリリース決定が集合前に入来フローに適用される実施形態を示している。個々のフローの特性(例えば、パケットの数及び到着の頻度)に依存して、本発明の範囲内においてこれらのように変更することにより、システム容量及びサービス品質パラメータに種々異なる影響を与えることができよう。これらの影響は、実験的に又はシミュレーションにより確認することができる。勿論、本発明によれば、集合の前又は後に複数のバッファ(即ち、複数のホールドアンドリリース決定)を置き、集合の複数のストリームとするが如き他の変形も可能であると考えられる。
【0059】
ホールドアンドリリース決定メカニズムと同様に、特にパケットレベルでの集合は、チャネルアクセスイベントの数を減少させることにより、チャネルアクセス競合を減少させる。更に又、集合は、オーバーヘッド送信(例えば、MAC-PHYヘッダー、ワイヤレス送信におけるプリアンブル及び確認(ACK)パケット)によって占められる送信容量の部分を減少することにより、MAC-PHY送信オーバーヘッドを減少させる。下位ワイヤレス媒体においてより大きな効率が達成される。従って、ルーティング、バッファリング及び集合メカニズムを組み合わせることにより、MAC-PHYレイヤーの効率が改善される。
【0060】
前述の詳細な説明は、本発明の特定の実施形態を例示するために与えられたものであり、本発明をこれに限定しようとしているものでない。本発明の範囲内で種々な変形及び変更が可能である。本発明は、特許請求の範囲の記載により限定される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】単一ゲートウエイアクセスポイント(GAP)と直接通信する単一移動端末(MT)を示している。
【図2】複数の移動ステーションからの音声データがマルチキャストパケットへと多重化されて、それから、そのマルチキャストパケットが同時に全ての受信者へ送信されるような従来技術による1つの解決法を例示している。
【図3】本発明の1つの実施形態によるアップリンクトラフィックのための移動端末MT1及びMT2とゲートウエイアクセスポイントGAPとの間の中間ホップでのネットワークレイヤーとMAC/PHYレイヤーとの間でメカニズム300によって行われるルーティング及びトラフィックシェーピングを示している。
【図4】本発明の1つの実施形態によるダウンリンクトラフィックのための移動端末MT1及びMT2とゲートウエイアクセスポイントGAPとの間の中間ホップでのネットワークレイヤーとMAC/PHYレイヤーとの間でメカニズム300によって行われるルーティング及びトラフィックシェーピングを示している。
【図5】図3及び図4のメカニズム300をより詳細に示している。
【図6】本発明の1つの実施形態によるジョイントルーティング及びトラフィックシェーピングメカニズム300を使用する単一フローマルチホップネットワークを示している。
【図7】複数の移動端末MT1−MT6がゲートウエイアクセスポイント(GAP)から直接サービスを得るようなネットワーク700を示している。
【図8】複数の移動端末MT1−MT6が各々ワイヤレスリンクを通してゲートウエイアクセスポイント(GAP)にアクセスするワイヤレスルーターWR1−WR3からサービスを得るようなネットワーク800を示している。
【図9】3つの異なるリレー戦略について集合の関数として全システム容量(ユーザフローの数での)のオフライン測定値を示している。
【図10】本発明の1つの実施形態によるトラフィックシェーピングを行うのに使用することのできるバッファリング及びホールドアンドリリース決定メカニズム1000を概略的に示している。
【図11】本発明の1つの実施形態による複数のフローのための集合メカニズム1100を概略的に示している。
【図12】本発明の1つの実施形態によるパケットレベルで集合を行う集合メカニズム1200を概略的に示している。
【図13】ホールドアンドリリース決定が集合されたフローに適用される実施形態を示している。
【図14】ホールドアンドリリースが集合前に入来フローに適用される実施形態を示している。
【符号の説明】
【0062】
MT、MT1−MT6・・・移動端末、GAP・・・ゲートウエイアクセスポイント、WR1−WR3・・・ワイヤレスルーター、300・・・ジョイントルーティング及びトラフィックシェーピングメカニズム、501・・・トラフィック監視モジュール、502・・・ジョイントルーティング及びトラフィックシェーピング決定モジュール、503−1〜503−n・・・トラフィックシェーピングモジュール、504−1〜504−n・・・トラフィックシェーピング反転モジュール、700・・・ネットワーク、800・・・ネットワーク、1000・・・バッファリング及びホールドアンドリリース決定メカニズム、1001・・・バッファ、1002・・・ホールドアンドリリース決定モジュール、1003・・・タイマー、1004・・・オープン(リリース)又はクローズ(ホールド)、1100・・・集合メカニズム、1101・・・フロー、1102・・・収集回路、1003・・・集合されるべきでないフロー(変化されないフロー)、1104−1〜1104−n・・・集合回路、1105・・・集合されたフロー、1200・・・アグリゲーションメカニズム、1201−1〜1201−n・・・フロー、1202−1〜1202−n・・・バッファ、1203・・・集合されたパケット(集合されたフロー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスネットワーク効率を上げるための方法において、
前記ワイヤレスネットワークへの複数のアクセスポイントを用意するステップと、
移動端末のデータパケットのトラフィック統計量に従って前記アクセスポイントを通して前記ワイヤレスネットワークにアクセスする複数の移動端末を指定するステップと、
媒体アクセス制御レイヤーより上のプロトコルレベルで前記移動端末からのトラフィックフローをシェーピングするステップと、
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−509414(P2009−509414A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531347(P2008−531347)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/035969
【国際公開番号】WO2007/035462
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】