説明

マンガン系リチウムイオン二次電池の有価資源回収方法その装置

【課題】 二次電池特にマンガン系リチウムイオン二次電池を乾式法のみにより金属材料系資源とマンガン資源とに分別回収する方法及び装置を提供する。
【解決手段】 マンガン系リチウムイオン二次電池を600〜1000℃に10〜60min滞留させ、該滞留時間中に該マンガン系リチウムイオン二次電池を燃焼・分解させ、分解生成物を直ちに金属小片と酸化マンガン粗粉に篩分けし、金属小片及び酸化マンガン粗粉を別個に回収することからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の有価資源回収方法及びその装置に係り、特にマンガン系リチウムイオン二次電池の有価資源回収方法及びそれに好適に利用できるリチウムイオン二次電池の乾式分解用ロータリーキルンに関する。本発明にいう二次電池とは、携帯用電子機器等で使用済みの二次電池の他、二次電池の製造工程で発生する不良品を含むものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、ノートパソコン、携帯ゲーム機、電動工具、電動自転車、電気自動車等に広く用いられ、さらにその需要の増大が見込まれている。したがって、これら機器から発生する使用済み二次電池を回収し、それを資源として再利用することは環境の保持、及び地球資源の節減の観点から重要課題となっており、その資源化率が資源有効利用促進法のガイドラインにより30%以上と定められている(資源有効利用促進法のガイドライン参照)。
【0003】
このような要求は、コバルトやニッケルを正極材料として使用するニッケル系やコバルト系のリチウムイオン二次電池において顕著であり、これらの回収に関していわゆる乾式法のほか湿式法についても多くの提案がなされ、実用化されている。このうち、乾式法は、湿式法に比べて、設備、工程とも簡便であり、焙焼、分級の工程で比較的容易に有用資源を含むリサイクル物を得ることができるという特徴がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、使用済みリチウム二次電池を1次焙焼し、次に破砕し、更に破砕物を篩分けして得られた篩下を2次焙焼し、次に酸で処理し、更に該処理液に酸化性ガスを吹込みながら該処理液のpHを4〜5.5に調整して濾過した後、濾液にアルカリを添加し濾過して沈殿物を回収することからなる使用済みリチウム二次電池からの有価物の回収法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、電極材中にコバルトを含む二次電池の電池廃品を600℃以上の温度で焙焼する焙焼工程と、この焙焼工程で得られた焙焼電池を裁断する裁断工程と、この裁断工程で得られた焙焼電池の裁断物を篩分けて金属スクラップと焙焼アッシュとに分離する篩分け工程と、この篩分け工程で得られた焙焼アッシュ中から磁石を用いてコバルト含有物を磁気分離する磁選工程と、この磁選工程で選別されたコバルト含有物を酸に溶解する酸溶解工程と、この酸溶解工程で得られた酸溶解物からコバルトを回収する回収工程とを含むことを特徴とする二次電池廃品からのコバルト回収方法が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、リチウムイオン二次電池を、800℃以上に加熱した炉に投入し、電池を破裂させ、外装材から有価物粉末を分離することを特徴とするリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法が開示され、さらに、炉としてロータリーキルンを用いることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−207349号公報
【特許文献2】特開平10−46266号公報
【特許文献3】特開平10−330855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の手段は、最終的に湿式工程による有用金属資源の回収工程を含み、本発明の目的とするマンガン系リチウムイオン二次電池の有用資源回収にはコスト高に過ぎる。また、この手段のうち乾式の工程(焙焼、粉砕及び篩分け工程)で、正極活物質と銅ネット、アルミ箔等の金属資源を分別回収することが可能であるが、酸化マンガン系の活物質から生成する回収物をマンガン資源として利用できるレベルまで純度を向上させることができない。
【0009】
特許文献2に記載の手段は、焙焼アッシュから磁気分離の手段を用いて有用金属資源であるコバルトの回収を図っているが、酸化マンガンは非磁性であり、この手段によっては酸化マンガンの純度向上を図ることはできない。一方、特許文献3に記載の手段は、二次電池の加熱により外装材と有価物粉末を分離回収することを示すのみであって、該有価物粉末をマンガン資源として利用できるレベルまで純度を向上させる手段について示していない。
【0010】
本発明は、二次電池、特にマンガン系リチウムイオン二次電池を乾式法のみにより金属材料系資源とマンガン資源とに分別回収する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るマンガン系リチウムイオン二次電池の有価資源回収方法は、マンガン系リチウムイオン二次電池を600〜1000℃において燃焼・分解させながら生成物を金属小片と酸化マンガン粗粉に篩分けし、金属小片及び酸化マンガン粗粉を別個に回収するものである。
【0012】
上記発明は、耐火物製の本体と該本体内に該本体と離間して設けられた円筒状のスクリーンを有するロータリーキルンを用い、該ロータリーキルンの円筒状のスクリーン内にマンガン系リチウムイオン二次電池を投入し、該マンガン系リチウムイオン二次電池を前記ロータリーキルンの下流方向に搬送しながら600〜1000℃の温度で燃焼・分解させ、分解生成物を前記スクリーンによって金属小片と酸化マンガン粗粉に分離し、前記ロータリーキルンの尾部から酸化マンガン粗粉と金属小片とに分離・排出することによって実施することができる。この場合において、燃焼分解温度における滞留時間を10〜60minとすることが望ましい。
【0013】
上記各発明において、生成した酸化マンガン粗粉をマンガン原料として再利用することができ、さらに、この酸化マンガン粗粉を破砕した後、目開き:90〜250μmの篩によって篩い分けることにより、篩下を精製マンガン原料として再利用することが可能となる。
【0014】
上記発明において回収された金属小片を金属資源として再利用することが可能である。
【0015】
前記マンガン系リチウムイオン二次電池の有価資源回収方法を実施するに当たっては、回転駆動機構により回転駆動される耐火物製の本体と、該本体内にその内壁から離間して設けられ、前記本体と一体に回転する円筒状スクリーンとによって二重ロータリーキルンを構成し、
前記円筒状スクリーンの頭部には二次電池投入装置を臨ませるとともに、尾部には該円筒状スクリーンから排出される金属小片回収容器を設け、
前記本体の尾部には排出される酸化マンガン粗粉回収容器を設け、
前記円筒状スクリーン内に臨ませた加熱バーナにより装入された二次電池を燃焼・分解させるとともに、生じた分解生成物を前記円筒状スクリーンによって金属小片と酸化マンガン粗粉に篩い分け、該金属小片を前記円筒状スクリーンの尾部から前記金属小片回収容器内に排出し、前記酸化マンガン粗粉を本体の尾部から前記酸化マンガン粗粉回収容器内に排出するようになっているリチウムイオン二次電池の燃焼・分解用ロータリーキルンを利用することができる。
【0016】
上記発明において、前記二重ロータリーキルンの円筒状スクリーンの目開きは、1〜20mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、全工程を乾式法としながら、マンガン系リチウムイオン二次電池を分解し、有用資源を効率的に回収することができる。また、本発明のロータリーキルンを用いることにより、マンガン系リチウムイオン二次電池のみならず、正極材料にコバルトやニッケルを含有するリチウムイオン二次電池をも簡便・効率的に燃焼・分解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るリチウムイオン二次電池の分解用ロータリーキルンの模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の有価資源回収方法の対象とする二次電池は、マンガン系リチウムイオン二次電池である。この種の二次電池は、正極材料にスピネル系リチウムマンガン酸化物(LiMn,LiMn12)等を正極材料の主成分とするものであって、これらの熱分解生成物が酸化マンガンとなるものである。正極材料中にコバルトやニッケルを含有するものは、本発明の対象としないが、使用済み二次電池中にこれらの二次電池が僅か、例えば、数%含有されるのは支障がない。
【0020】
これらマンガン系リチウムイオン二次電池は、まず、加熱・燃焼工程に付される。この工程は600〜1000℃、好ましくは800〜1000℃の温度に滞留させることからなる。この温度に曝されることによって二次電池の外装材、結着剤などは、燃焼・分解し、正極材等は熱分解して酸化マンガンを主成分とする酸化マンガン粗粉となり、一方、電極部材や導電部材は機械的に分断されあるいは酸化されて金属小片となる。
【0021】
上記加熱・燃焼工程における加熱温度の下限を600℃とするのは、二次電池の外装材(パッケージ)や正極剤の結着剤などの燃焼・分解を確実するためであり、一方、上限を1000℃とするのは、加熱・燃焼工程において電池の構成部材である銅箔等二次電池を構成する金属材料が過度に酸化され、あるいは強度が低下して微粉状態になり、後に説明する篩分け時に酸化マンガン粗粉中に移行してその銅含有比を上昇させ、マンガン原料として好ましくないものとするからである。
【0022】
本発明においては、上記加熱・燃焼工程における滞留時間が長時間とならないように配慮するのがよい。一般に、被処理物である二次電池の加熱・燃焼工程における滞留時間が短過ぎると電池を十分燃焼・分解させることができない場合が生じ、一方、長過ぎると加熱・燃焼温度にもよるが、電池の分解によって生じた金属小片が過度に酸化され、あるいは機械的に劣化して粉末化され、金属分(酸化物を含む)が酸化マンガン粗粉中に移行してその銅含有比を上昇させるなど、マンガン原料として好ましくないものとする結果を招く。
【0023】
したがって、被処理物の性状や燃焼・分解温度に応じて滞留時間を適宜調節する必要があり、10〜60minとするのが好ましい。なお、滞留時間とは処理される電池が炉中に投入されてから処理回収物として炉外に排出されるまでの時間をいう。なお、上記滞留時間は、ロータリーキルンを用いる場合には、ロータリーキルンに装入された被処理物が炉尻から排出されるまでの平均時間をいう。これは、例えば、加熱・燃焼工程の開始時に装入した二次電池が分解生成物として炉尻から排出されるまでの時間として決定することができる。
【0024】
本発明においては、加熱・燃焼工程と同時並行的に篩分け操作が行われる。すなわち、加熱・燃焼工程によって生成した分解生成物に対して別途の工程を設けて篩分け操作を行うのではなく、加熱・燃焼工程で生じた分解生成物、すなわち、金属小片と酸化マンガン粗粉とに対し、直ちに篩分け操作が加えられるようにしている。具体的には、後に示すように、内部に円筒状のスクリーンを有するロータリーキルンによって分解生成物の生成直後に篩分け作用を受けるようにしている。
【0025】
上記のメカニズムにより二次電池の加熱・燃焼による二次電池の分解と同時並行的に篩分け操作が進行する。これにより、分解生成物のうち銅箔やアルミニウムなどの金属小片は早期に酸化マンガン粗粉とに分離され、ロータリーキルン中で酸化マンガン粗粉により叩かれて微粉化することが避けられる。このようにして、銅箔などの金属小片の酸化マンガン粗粉中への移行が阻止され、酸化マンガン粗粉中の銅やアルミニウム濃度を低く保つことができる。このことは後に示す実施例を通してより明確に示される。
【0026】
上記篩分け操作によって分離された酸化マンガン粗粉は後に実施例で示すように、質量比でMn:30〜40%、Cu:2〜9%、Al:12〜16%程度の組成を有しており、他のマンガン原料と混じて電気炉等へのマンガン原料として使用することが可能である。
【0027】
しかしながら、上記酸化マンガン粗粉は、銅分及びアルミニウム分が高いため、そのまま電気炉用マンガン原料として大量に使用することは困難である。この問題を解決するため、本発明では、上記工程で得られた酸化マンガン粗粉に対し、該酸化マンガン粗粉中に含まれる銅箔や金属アルミニウム分等の金属分に対して延展作用を生じさせた後、目開き:90〜250μmの篩によって篩い分け、篩下を精製マンガン原料とする工程をとる。なお、銅分は、二次電池を構成する銅箔に由来するものであり、金属アルミニウム分は正極を構成するアルミニウム箔やセルを包むアルミラミネートの溶融生成物(一部アルミニウム片)に由来するものである。
【0028】
これは、上記酸化マンガン粗粉中に存在する銅分等が、大部分金属状態にあり、適当な破砕工程を採用すれば、これら金属分が延展され、一方、酸化マンガン分は微粉となって、篩分けによって分別可能となることを利用したものである。かかる効果を得るために、本発明では粉砕条件を銅分等金属分に対して延展作用が作用するが、粉砕作用が生じない程度に設定する。例えば、ボールミルを用いるのに際し、ボール直径を小さくするとともに原料に対するボールの質量比を小さくとり、さらに、粉砕時間を短くするなど、作業条件を変更すればよい。これらの条件は、予備実験を行うことにより適正な値に設定できる。
【0029】
なお、上記粉砕後の篩分けは目開き:90〜250μmの篩を使用するのが好適であり、これにより、延展された銅分等の金属分を酸化マンガン粗粉から分離できる。
【0030】
上記の操作により、先に示した酸化マンガン粗粉を処理すると、篩下分として、質量比でMn:40〜50%、Cu:0.2〜2.0%、Al:3〜6%程度の組成を有しており、そのまま、例えば電気炉用のマンガン原料として使用可能になる。
【0031】
本発明において得られる金属小片は、例えば、銅資源として再利用であり、その方法については、公知の手段を利用すればよい。
【0032】
図1は本発明に係るロータリーキルンの正面側模式説明図である。図1に示すように、本発明に係るリチウムイオン二次電池の分解用ロータリーキルンは、回転駆動機構11により回転駆動される耐火物製のロータリーキルン本体10と、該本体内にその内壁から離間して設けられ、前記本体と一体に回転する円筒状スクリーン20とによって二重ロータリーキルンを構成している。
【0033】
この二重ロータリーキルンは、頭部に燃焼用バーナ30、二次電池投入装置50を備え、その尾部(炉尻)には金属小片回収容器31及び酸化マンガン粗粉回収容器32を備えている。また、その本体10の外周部には本体10を回転駆動するためのモータ及びギヤからなる回転駆動機構11及び支承機構12、13が設けられており、これらの大部分が煙道61に連なっている密閉フード60で覆われている。
【0034】
また、上記円筒状スクリーン20の先端部及び後端部にはステンレス鋼製の円筒状部材21、22が取り付けられており、これらの部材を介してロータリーキルン本体10との一体化が図られている。すなわち、ロータリーキルン本体10の先端部に前鍔14を取り付け、これを円筒状スクリーン20の先端部に取り付けた円筒状部材21に固定し、また、ロータリーキルン本体10の後端部にスポーク15を取り付け、これを円筒状スクリーン20の後端部に取り付けた円筒状部材22に固定している。これにより、ロータリーキルン本体10と円筒状スクリーン20とは、両者の間に一定のギャップが置かれた二重ロータリーキルンとなり、一体に回転するようになっている。
【0035】
上記円筒状スクリーン20の先端部に取り付けられた円筒状部材21の頭部には、二次電池投入装置50の振動フィーダー52の排出端が臨んでおり、ホッパー51に装入されている二次電池が投入装置50によって切出されて円筒状部材21を経て円筒状スクリーン20内に供給されるようになっている。
【0036】
一方、円筒状スクリーン20の後端部に取り付けられた円筒状部材22は、開放端となっており、ここから金属小片が金属小片回収容器31内に落とし込まれるようになっている。また、ロータリーキルン本体10の後端部も開放端となっており、ここから円筒状スクリーン20を通ってきた酸化マンガン粗粉が排出され、酸化マンガン粗粉回収容器32内に落とし込まれるようになっている。
【0037】
上記のように構成されている二重ロータリーキルンを用い、燃焼用バーナ30を点火・燃焼状態において、その内部を加熱し、所定の温度に到達した後、装入装置50を利用して二次電池を連続的に装入すると、二次電池が加熱され、結着剤や可燃性の外装材は燃焼・分解してガス化し、電極などの金属小片と正極材料の分解物である酸化マンガン粗粉に分解される。なお、加熱温度は温度計16によって測定され、燃焼用バーナ30の燃焼状態を制御することによって調整される。
【0038】
本発明に係る二重ロータリーキルンでは、ロータリーキルン本体10と円筒状スクリーン20の間には、すでに説明したように一定のギャップが設けられているから、二次電池が円筒状スクリーン20上で加熱・燃焼状態に付されると、生成した分解生成物は直ちに円筒状スクリーン20で篩い分けされ、酸化マンガン粗粉がロータリーキルン本体10の内壁側にふるい落とされ、内壁に沿って移動し、その後端部の開放端から酸化マンガン粗粉回収容器32内に移行することになる。一方、電極などの金属小片は円筒状スクリーン20上に残留した状態でその内壁に沿って移動し、その後端部の開放端から金属小片回収容器31内に移行することになる。
【0039】
このように、円筒状スクリーン20は、ロータリーキルンで加熱・分解されることによって生成した分解生成物を分解生成後直ちに篩い分ける機能を有し、銅箔など金属小片が酸化マンガンなどによって叩かれないようになっている。したがって、円筒状スクリーン20は、耐熱性を有するとともに適当な目開きをもっていなければならない。目開きは、分解される二次電池、特に、電極、銅線のサイズ等によって応じて選択されるが、一般に1〜20mm程度とするのがよい。その材質は耐熱性のステンレス鋼とするのが好ましく、例えば、パンチングメタル等で作成することができる。
【0040】
なお、本発明のロータリーキルンは、図1に示すように、ほぼロータリーキルン本体10全体を煙道61につながる密閉フード60で覆われている。このフード60は、ロータリーキルン本体10の他、その前端部から延びる円筒状スクリーン20の先端部に取り付けられた円筒状部材21を覆っている。これにより、燃焼排ガスは、実質的にその全量が回収されることになる。
【実施例】
【0041】
図1に示す構成を有し、本体が内径:450mm、長さ:1800mmであり、内部に内径220mm,目開き10mmの円筒状スクリーンを有する二重ロータリーキルンを用い、使用済みマンガン系リチウムイオン二次電池を連続的に投入し、加熱・燃焼温度を850℃、1050℃の2段階、炉内滞留時間を15min、30minの2段階にとって操業した。投入された二次電池は、いずれも投入後数分後に燃焼・分解し、円筒状スクリーンによって金属小片と酸化マンガン粗粉に分離され、金属小片及び酸化マンガン粗粉として回収された。回収された酸化マンガン粗粉をボールミル(内容積20L)に投入し、5分間粉砕後取り出し、目開き150μmの振動篩で分級し、精製マンガン原料とした。
【0042】
得られた酸化マンガン粗粉及びマンガン精製原料の組成は、表1に示すとおりであった。
【0043】
【表1】

【0044】
なお、比較例2は、通常のロータリーキルン(円筒状スクリーンを有さないもの)を用いて加熱・燃焼後、トロンメルンで分級し、得られた分級粉を発明例と同様の方法で粉砕・分級したものである。
【0045】
表1に示すように、発明例1、2の場合とも、酸化マンガン粗粉では銅及びアルミニウムの含有量が高いが、精製後、これらの含有量が十分に低下していることが分かる。なお、発明例1と2を対比すると、発明例2においては滞留時間が長いため、銅箔、アルミニウム箔の酸化が進んだため、粉砕・分級時にこれらが微粉となり篩下に混入し、精製後においてもアルミニウム等の含有量が大きくなったが、実用上問題のない範囲内であった。
【0046】
これに対し、比較例1の場合は、加熱・燃焼温度が1050℃と高いため、銅箔等の酸化により銅が大幅に増加した。さらに、アルミニウム箔の大半が酸化され微粉になっていたので、精製後の組成においても銅、アルミニウム含有量を低減させることができなかった。
【0047】
また、比較例2の場合には、トロンメルでの分級過程において銅箔が酸化マンガン粗粉によって叩かれて小片化が進み、そのため酸化マンガン粗粉中の銅の含有量が増加した。
【符号の説明】
【0048】
10:ロータリーキルン本体
11:回転駆動機構
12,13:支承機構
14;前鍔
15:スポーク
16:温度計
20:円筒状スクリーン
21,22:円筒状部材
30:燃焼用バーナ
31:金属小片回収容器
32:酸化マンガン粗粉回収容器
50:二次電池投入装置
51:ホッパー
52:振動フィーダー
60:フード
61:煙道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガン系リチウムイオン二次電池を600〜1000℃において燃焼・分解させながら生成物を金属小片と酸化マンガン粗粉に篩分けし、金属小片及び酸化マンガン粗粉を別個に回収することを特徴とするマンガン系リチウムイオン二次電池の有価資源回収方法。
【請求項2】
耐火物製の本体と該本体内に該本体と離間して設けられた円筒状のスクリーンを有するロータリーキルンを用い、該ロータリーキルンのスクリーン内にマンガン系リチウムイオン二次電池を投入し、該マンガン系リチウムイオン二次電池を前記ロータリーキルンの下流方向に搬送しながら600〜1000℃の温度で燃焼・分解させ、生成物を前記スクリーンによって金属小片と酸化マンガン粗粉に分離し、前記ロータリーキルンの尾部から酸化マンガン粗粉と金属小片とに分離・排出することを特徴とするマンガン系リチウムイオン二次電池の有価資源回収方法。
【請求項3】
燃焼分解温度における滞留時間が10〜60minであることを特徴とする請求項1又は2記載のマンガン系リチウムイオン二次電池の有価資源回収方法。
【請求項4】
前記酸化マンガン粗粉をマンガン原料として再利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマンガン系リチウムイオン二次電池の有価資源回収方法。
【請求項5】
前記酸化マンガン粗粉に対し粉砕工程に付し、該酸化マンガン粗粉中の含有金属分に対して延展作用を生じさせた後、目開き:90〜250μmの篩によって篩い分け、篩下を精製マンガン原料として再利用することを特徴とする請求項4記載のマンガン系リチウムイオン二次電池の有価資源回収方法。
【請求項6】
前記金属小片を金属資源として再利用することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のマンガン系リチウムイオン二次電池の有価資源回収方法。
【請求項7】
回転駆動機構により回転駆動される耐火物製の本体と、該本体内にその内壁から離間して設けられ、前記本体と一体に回転する円筒状スクリーンとによって二重ロータリーキルンを構成し、
前記円筒状スクリーンの頭部には二次電池投入装置を臨ませるとともに、尾部には該円筒状スクリーンから排出される金属小片回収容器を設け、
前記本体の尾部には排出される酸化マンガン粗粉回収容器を設け、
前記円筒状スクリーン内に臨ませた加熱バーナにより装入された二次電池を燃焼・分解させるとともに、生じた分解生成物を前記円筒状スクリーンによって金属小片と酸化マンガン粗粉に篩い分け、該金属小片を前記円筒状スクリーンの尾部から前記金属小片回収容器内に排出し、前記酸化マンガン粗粉を本体の尾部から前記酸化マンガン粗粉回収容器内に排出するようになっていることを特徴とするリチウムイオン二次電池の燃焼分解用ロータリーキルン。
【請求項8】
前記二重ロータリーキルンの円筒状スクリーンの目開きは、1〜20mmであることを特徴とする請求項7記載のリチウムイオン二次電池の分解用ロータリーキルン。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−231925(P2010−231925A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75863(P2009−75863)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(391021765)日本電工株式会社 (21)
【出願人】(304031221)有限責任中間法人JBRC (1)
【出願人】(502092419)社団法人電池工業会 (1)
【Fターム(参考)】