説明

マンギフェリンベルベリン塩およびその調製方法と用途

本発明はマンギフェリンベルベリン塩およびその調製方法を提供する。また、マンギフェリンベルベリン塩をAMPK活性剤としての用途を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンギフェリンベルベリン塩およびその調製方法とAMPKの活性剤としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
マンギフェリン(mangiferin)は、天然ポリフェノール化合物であり、その分子式はC19H18O11、分子量は422であり、その化学構造は下記の通りである。
【0003】
【化1】

【0004】
ベルベリン(berberine)は、イソキノリンアルカロイドであり、その分子式は[ C20H18NO4]+、分子量は336.37であり、その化学構造は下記の通りである。
【0005】
【化2】

【0006】
広西中医学院の李学堅課題グループにより開示された特許明細書(CN101066275A号、発明の名称:マンギフェリン・ベルベリン合成物)における発明の開示の第一段落では、「マンギフェリンは酸性、ベルベリン(又はその塩類)はアルカリ性を呈し、一定条件下で反応してマンギフェリン・ベルベリン合成物を生成することが出来るが、両者の結合がそれほど強固ではなく、ただ分子間のファン・デル・ワールス力による結果であるため、合成物と位置づけられている。このような合成物は、濃度が高く、または体内で消化される時、相互分離され独立して存在し、それぞれの薬理作用のために条件を創出している。」と論じている。第5段落では、「試験結果によると、濃度が2.5%以下のマンギフェリン・ベルベリン合成物溶液は非常に安定しており、5℃の環境に保存しても、結晶化はしない。2.5〜5%の溶液の場合は、調製次第使用可能であり、8時間内には結晶化せず、5〜10%の溶液の場合は、調製次第使用可能であり、3時間内に結晶化しない。」と論じている。
【0007】
上記の技術的解決案を分析すると、まず、記載の物理的基礎は「溶液状態での合成物」であり、次に、当該物理的基礎は溶液状態での合成物であるため、下記の欠陥が存在する。つまり、
【0008】
1、安定性が低い:上記の特許明細書に開示した内容によると、当該合成物の安定性は数時間となっているが、薬物特性に合う安定性は少なくとも1年以上の時間が必要であるため、当該技術的解決案に記載の合成物の安定性は低いと言える。
2、保存しにくい。
【0009】
3、固体の製剤は調製できない。上記の特許明細書に開示した内容は、当合成物を液体製剤または半固体製剤に調製する内容だけであり、固体製剤に関する内容は見あたらない。
すでに開示されたマンギフェリンとベルベリンの合成物(特開WO/2008/043246号、発明の名称:2型糖尿病およびその慢性合弁症に対する治療効果がある薬物合成物)は、マンギフェリンとベルベリンの二つの化合物を一定の割合で組み合わせただけの合成物であり、化合物間の反応または結合には言及していない。
【0010】
CN101066275Aに開示の特願において提供されたマンギフェリンベルベリン溶液状態の合成物の調製方法において、マンギフェリンは弱酸性、ベルベリン(又はその塩類)は弱アルカリ性を呈するが、開示された反応条件では、マンギフェリンベルベリン塩を得ることは出来ない。当明細書では、また、「マンギフェリンは酸性、ベルベリン(又はその塩類)はアルカリ性を呈し、一定条件下で反応してマンギフェリン・ベルベリン合成物を生成することができるが、両者の結合がそれほど強固ではなく、ただ分子間のファン・デル・ワールス力による結果であるため、合成物と位置づけられている。」と論じていた。
上記の開示文献は、マンギフェリンとベルベリンを反応させることによりマンギフェリンベルベリン塩を得ることができるという技術的啓発は記述していない。
【0011】
アデノシンリン酸(AMP)により活性化されたプロテインキナーゼ(AMP-activated protein kinase,AMPK)は、細胞内でエネルギー代謝を調節するプロテインキナーゼである。AMPKに対する研究が進むにつれて、AMPKは代謝性疾患、心血管疾患、神経系疾患、炎症性疾患、腫瘍、筋疾患などにおいて非常に重要な役割を果たし、疾患治療の新たな標的になっているが、現在市販されているAMPK活性剤がないため、AMPK活性剤の研究・開発は重要な臨床的意義を持っている「李忌.AMPK:糖尿病と心血管疾患の治療における新たな標的。中国医学論壇報(China Medical Tribune)、2009、(1149);任俊芳.AMPKと心血管の再構成。国際病理学と臨床医学雑誌、2008、28(1):33-36;Ricardo Lage, Carlos Dieguez, Antonio Vidal-Puig. et al. AMPK: a metabolic gauge regulating whole-body energy homeostasis. Trends Mol Med, 2008, 14(12): 539-49;符慶瑛、高▲ユ▼▲チ▼。プロテインキナーゼAMPKの研究進展。生命科学、17(2):147−152;陳奇、梁後傑、鄒風等。アデノシンリン酸活性化プロテインキナーゼのシクロオキシゲナーゼ-2発現と5-フルオロウラシルの結腸癌の治療における感受性との関係。実用病院臨床雑誌、2008,5(3):56-58など」。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、大量の研究を通じて創出的にマンギフェリンベルベリン塩を獲得した。当該マンギフェリンベルベリン塩の物理的基礎は、マンギフェリンとベルベリンがイオン結合した化合物であり、CN101066275Aに開示のマンギフェリン・ベルベリン合成物と比べ、以下の特徴を有する。
1、安定性が良い。
2、固体、液体などの各種製剤の製造可能。
3、保存しやすい。
また、当該マンギフェリンベルベリン塩は、さらに、下記の意外な技術的効果をもってている。
【0013】
本発明によれば、当マンギフェリンベルベリン塩は、強酸性の溶液に溶解し、pH値が小さければ小さいほど十分に溶解される。pH値が1〜3の酸性溶液で、マンギフェリンベルベリン塩の濃度が2mg/ml以下の時、12時間内に僅かな量が沈殿し、マンギフェリンベルベリン塩の濃度が4mg/ml以上になった場合、溶解した後すぐ沈殿する。人体の胃液のpH値は1〜3であるので、マンギフェリンベルベリン塩の上記特性はマンギフェリンベルベリン塩が十分に胃液に溶解され、薬物の体内での吸収に非常に有利である。しかし、マンギフェリンベルベリン塩の如何なる割合の合成物は、酸性水において溶解度を増やすことができない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、マンギフェリンベルベリン塩を提供し、その特徴として、
1、所謂マンギフェリンベルベリン塩は、下記式の構造を有している。
【0015】
【化3】


2、上記マンギフェリンベルベリン塩の融点は176℃〜178℃であることを特徴とする。
【0016】
本発明に記載のマンギフェリンベルベリン塩、つまり上記のマンギフェリンベルベリン塩の炭素スペクトルデータは、ベルベリンC6、C13a、C8a、C12aなどの炭素原子の化学シフトが遮蔽効果により顕著な変化を引き起こすという性質を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に記載されているマンギフェリンベルベリン塩、つまり、上記のマンギフェリンベルベリン塩の炭素スペクトルデータは、マンギフェリンC3、C7の炭素原子の化学シフトが反遮へい効果により顕著な変化を引き起こすという性質を有することを特徴とする。
【0018】
本発明は上記マンギフェリンベルベリン塩の調製方法を提供し、その特徴は、
1、マンギフェリンとアルカリ性のナトリウム(カリウム)塩を反応させてマンギフェリンモノナトリウム(カリウム)塩を調製すること、
2、マンギフェリンモノナトリウム(カリウム)塩とベルベリンを反応させてマンギフェリンベルベリン塩を生成させることを特徴とする。
本発明に記載のマンギフェリンベルベリン塩の採用可能な調製方法は以下の通りである。
【0019】
1、反応器へ反応溶媒とマンギフェリンの懸濁液を入れた後、アルカリ性ナトリウム(カリウム)塩水溶液を懸濁液に入れ、清澄されるまで反応させ、ろ過して溶液Aを得る。
2、ベルベリンを水に溶解し、ろ過して溶液Bを得る。
【0020】
3、溶液Aを混合状態の溶液Bに滴下し、滴下完了後に続けて混合、十分に反応させ、大量の沈殿を産生し、ろ過、固体物乾燥を行い、マンギフェリンベルベリン塩を得る。
【0021】
本発明に記載されているマンギフェリンベルベリン塩の調製方法は、上記のマンギフェリンとアルカリ性ナトリウム(カリウム)塩のモル比が1:0.5〜1であることを特徴とする。
【0022】
本発明に記載されているマンギフェリンベルベリン塩の調製方法は、上記のマンギフェリンモノナトリウム(カリウム)塩とベルベリンのモル比が1:1であることを特徴とする。
【0023】
本発明に記載のマンギフェリンベルベリン塩の調製方法で、上記のアルカリ性ナトリウム(カリウム)塩は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムの一種または二種類以上の混合物から選択が可能であることを特徴とする。
【0024】
上記調製方法に記載されている反応溶媒は水とエタノール、メタノール、アセトンなどの水と混合可能な有機溶剤の一種または二種類以上の混合物であり、そのうち、水量比は10〜90%(v/v)である。
【0025】
本発明に記載しているマンギフェリンベルベリン塩の調製方法で、上記のベルベリンは、塩酸ベルベリン、硫酸ベルベリン、タンニン酸ベルベリンまたはベルベリンその他の医学的に受け入れることが可能な塩であってもよい。ベルベリン、塩酸ベルベリン、硫酸ベルベリンを優先とすることを特徴とする。
マンギフェリンベルベリン塩の物理化学的特性:
【0026】
マンギフェリンベルベリン塩は、オレンジ色の粉末状物質であり、融点は176〜178℃、殆ど水に溶解せず、熱湯に若干溶解する。化学構造式は以下の通りである。
【0027】
【化4】

【0028】
マンギフェリンベルベリン塩の構造確認:
マンギフェリンベルベリン塩とマンギフェリン、ベルベリン13CNMR(400MHz)のデータは以下の表の通りである:
【0029】
【表1】

【0030】
マンギフェリンベルベリン塩とマンギフェリン、ベルベリン1HNMR(400MHz)のデータは以下の表の通りである:
【0031】
【表2】

【0032】
上記のデータに基づいて下記のように分析できる。
マンギフェリンベルベリン塩の炭素核磁気データとマンギフェリン、ベルベリンの炭素核磁気データを比較すると、ベルベリン基のC6、C13a、C8a、C12aなどの炭素原子の化学シフトは遮蔽効果により著しく変化するし、その他の炭素原子の化学シフトもある程度変化する。マンギフェリン基のC3、C7の炭素原子の化学シフトは反遮へい効果により著しく変化するし、その他の炭素原子の化学シフトはいずれも遮蔽効果によりある程度変化する。
【0033】
マンギフェリンベルベリン塩の水素核磁気データとマンギフェリン、ベルベリンの水素核磁気データを比較すると、ベルベリン基のH5、H12、H13などの水素原子の化学シフトは遮蔽効果により著しく変化するし、その他の水素原子の化学シフトもある程度変化する。マンギフェリン基のアノマープロトンH 1'と三つの芳香族プロトンH4、H5、H8などの水素原子の化学シフトは遮蔽効果により著しく変化する。
【0034】
上記核磁気データの化学変位の変化は、マンギフェリン基とベルベリン基における各原子の化学的環境の変化、つまりベルベリン基とマンギフェリン基が結合してマンギフェリンベルベリン塩を形成することを説明する。
【0035】
本発明のもう一つの目的は一つの薬物を提供することである。その薬物は上記のマンギフェリンベルベリン塩と薬理学的に認められている薬用添加物により構成され、相応する製薬方法に基づいて、臨床に適用する如何なる種類の経口製剤、外用剤または注射液、例えば、錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、粒剤、丸薬、シロップ剤、経口液剤、経口懸濁液、ゲル剤、凍結乾燥注射剤などの臨床的に受け入れられる剤形を製造することができる薬物を提供することにある。
【0036】
本発明は、上記マンギフェリンベルベリン塩のAMPK活性剤の調製における用途を提供する。
本発明は、マンギフェリンベルベリン塩を活性成分として調製された薬物のAMPK活性剤の調製における用途を提供する。
【0037】
現代医学がAMPKの疾患の発生と進行において果たす重要な作用に対する開示に踏まえて、本発明は、マンギフェリンベルベリン塩のAMPK活性剤の調製における応用を提供する。上記のAMPK活性剤は、糖尿病、糖尿病の各種慢性合併症(冠動脈性心疾患、冠状動脈アテローム性硬化症、脳血管疾患などの大血管疾患;糖尿病性腎疾患、糖尿病性網膜症などの細小血管障害;神経障害、糖尿病性足壊疽、黄斑症、白内障、緑内障、屈折率変化、虹彩毛様体障害など眼部のその他の障害を含む)、肥満、脂質異常症、インスリン抵抗性、高インスリン血症、X症候組、心筋肥大、不整脈、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、心不全、高血圧、上気道感染、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、肺繊維症、肝炎、脂肪肝、アルコール性肝炎、肝繊維症、肝硬変、前立腺炎、膵炎、腎臓炎、腎炎症候組、慢性腎不全、関節リウマチ、骨関節炎、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、記憶障害、認知症、パーキンソン病、腫瘍(腫瘍に対する放射線治療・化学治療の非反応性、腫瘍の放射線治療・化学治療による毒性反応を含む)、筋萎縮症、筋無力症のいずれか又はいくつかにおける予防または治療に用いられることを特徴とする。
本発明は、マンギフェリンベルベリン塩のAMPK活性剤の調製における応用を提供し、AMPK活性剤は運動代替に用いられることを特徴とする。
【0038】
本発明において提供されるマンギフェリンベルベリン塩は、AMPK活性剤としての有効量範囲は0.1〜30mg/kg/日/人である。上記の用量は、生体外試験および動物実験結果により推測したものであり、動物と人体の差異、各種疾患の差異、体内外の差異などの原因で、実際臨床応用における用量に対する調整を許容する。使用方法は、疾患によって選択可能であるが、内服を優先とする。
下記、具体的な実施方法によって、本発明に対し一歩進んで説明するが、但しその限りとしない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1はマンギフェリンベルベリン塩に対する示差走査熱量分析(DSC)曲線図である。
【図2】図2はマンギフェリンベルベリン塩の腫瘍細胞毒性に対する影響を示し、縦軸は細胞の死亡率(%)を示す(注:単独投与組と比べた結果、*P<0.05、**P<0.01)。
【図3】図3はマンギフェリンベルベリン塩のKK-ayマウスインスリン感性指数と血中脂質などに対する影響(注:モデル組と比べた結果、*P<0.05 ,**P<0.01、***P<0.001である)を示す。
【図4】図4はマンギフェリンベルベリン塩のKK-ayマウス肝酵素に対する影響(注:モデル組と比べた結果、*P<0.05、**P<0.01である)を示す。
【図5】図5はマンギフェリンベルベリン塩の痴呆ラットの学習記憶力に対する影響を示し、縦軸は潜伏期(EL)である(注:モデル組と比べて結果、*P<0.05、**P<0.01である)。
【図6】図6はマンギフェリンベルベリン塩の関節リウマチのモデルマウスに対する影響を示す(注:モデル組と比べた結果、*P<0.05、**P<0.01である)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明に記載のマンギフェリンは、市販のもの(広西百色天星科学技術開発有限公司製、該当の抽出設備を保有しているメーカーなら生産可能)を使用している。塩酸ベルベリン、ベルベリンなどは全て市販のもの(西安小草植物科学技術有限公司製)であり、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウムなどの試薬も全て市販のものを使用している。
<実施例1>
マンギフェリンベルベリン塩の調製
【0041】
反応器へマンギフェリン42.2g(0.1mol)、水1800ml、エタノール600mlを入れ十分に懸濁し、重炭酸ナトリウム8.4g(0.1mol)に水を入れ0.5%(w/v)の溶液を作る。徐々に混合状態の懸濁液へ入れ、清澄されるまで反応させた後、ろ過して反応液Aを抽出し、ベルベリン33.6g(0.1mol)を取り熱湯1500mlで溶解し、ろ過して溶液Bを抽出する。反応液Aをゆっくり溶液Bへ入れた後、十分に混合し、12時間静止すると、沈殿物が生じる。ろ過した後、純水で沈殿物を十分に洗い流し、固体物を60℃以下の真空状態で乾燥させ、茶色の固体マンギフェリンベルベリン塩53.4gを得ることができる。その収量は70.5%である。HPLCで測定すると試薬純度は98.6%である。
<実施例2>
マンギフェリンベルベリン塩の調製
【0042】
反応器へマンギフェリン42.2g(0.1mol)、水2000ml、エタノール800mlを入れ十分に懸濁し、炭酸ナトリウム5.3g(0.05mol)に水を入れ1%(w/v)の溶液を作る。ゆっくり混合状態の懸濁液へ入れ、清澄されるまで反応させ、ろ過して反応液Aを抽出する。塩酸ベルベリン37.3g(0.1mol)を取り熱湯2500mlで溶解し、ろ過して溶液Bを抽出する。反応液Aをゆっくり溶液Bへ入れた後、十分に混合し、12時間静止すると、沈殿物が生じる。ろ過した後、純水で沈殿物を十分に洗い流し、固体物を60℃以下の真空状態で乾燥させ、茶色の固体マンギフェリンベルベリン塩53.3gを得ることができるる。その収量は67.4%である。HPLCで測定すると試薬純度は98.5%である。
<実施例3>
マンギフェリンベルベリン塩の調製
【0043】
反応器へマンギフェリン42.2g(0.1mol)、水1600ml、メタノール800mlを入れ十分に懸濁し、炭酸カリウム6.9g(0.05mol)に水を入れ0.2%(w/v)の溶液を作る。ゆっくり混合状態の懸濁液へ入れ、清澄されるまで反応させ、ろ過して反応液Aを抽出する。硫酸ベルベリン43.2g(0.1mol)を取り水2500mlで溶解し、ろ過して溶液Bを抽出する。反応液Aをゆっくり溶液Bへ入れた後、十分に混合し、12時間静止すると、沈殿物が生じる。ろ過した後、純水で沈殿物を十分に洗い流し、固体物を60℃以下の真空状態で乾燥させると、茶色の固体マンギフェリンベルベリン塩51.8gを得ることができる。その収量は60.6%である。HPLCで測定すると試薬純度は98.6%である。
<実施例4>
マンギフェリンベルベリン塩の調製
【0044】
反応器へマンギフェリン42.2g(0.1mol)、水1000ml、メタノール1000mlを入れ十分に懸濁し、重炭酸カリウム10.0g(0.1mol)に水を入れ2%(w/v)の溶液を作る。ゆっくり混合状態の懸濁液へ入れ、清澄になるまで反応させ、ろ過して反応液Aを抽出する。ベルベリン33.6g(0.1mol)を取り熱湯2500mlで溶解し、ろ過して溶液Bを抽出する。反応液Aをゆっくり溶液Bへ入れた後、十分に混合し、12時間静止すると、沈殿物が生じる。ろ過した後、純水で沈殿物を十分に洗い流し、固体物を60℃以下の真空状態で乾燥させ、茶色の固体マンギフェリンベルベリン塩49.5gを得ることができる。その収量は65.3%である。HPLCで測定すると試薬純度は98.5%である。
<実施例5>
マンギフェリンベルベリン塩の調製
【0045】
反応器へマンギフェリン42.2g(0.1mol)、水3000ml、アセトン300mlを入れ十分に懸濁し、炭酸ナトリウム5.30g(0.05mol)に水を入れ5%(w/v)の溶液を作る。ゆっくり混合状態の懸濁液へ入れ、清澄されるまで反応させ、ろ過して反応液Aを抽出し、ベルベリン33.6g(0.1mol)を取り熱湯2500mlで溶解し、ろ過して溶液Bを抽出する。反応液Aをゆっくり溶液Bへ入れた後、十分に混合し、12時間静止すると、沈殿物が生じる。ろ過した後、純水で沈殿物を十分に洗い流し、固体物を60℃以下の真空状態で乾燥させ、茶色の固体マンギフェリンベルベリン塩50.9gを得ることができる。その収量は67.2%である。HPLCで測定すると試薬純度は98.5%である。
<実施例6>
マンギフェリンベルベリン塩の調製
【0046】
反応器へマンギフェリン42.2g(0.1mol)、水300ml、エタノール3000mlを入れ十分に懸濁し、炭酸ナトリウム5.30g(0.05mol)に水を入れ0.2%(w/v)の溶液を作る。ゆっくり混合状態の懸濁液へ入れ、清澄されるまで反応させ、ろ過して反応液Aを抽出する。ベルベリン33.6g(0.1mol)を取り熱湯3000mlで溶解し、ろ過して溶液Bを抽出する。反応液Aをゆっくり溶液Bへ入れた後、十分に混合し、12時間静止すると、沈殿物が生じる。ろ過した後、純水で沈殿物を十分に洗い流し、固体物を60℃以下の真空状態で乾燥させ、茶色の固体マンギフェリンベルベリン塩51.6gを得ることができる。その収量は68.1%である。HPLCで測定すると試薬純度は98.6%である。
<実施例7>
マンギフェリンベルベリン塩の調製
【0047】
上記方法によって調製されたマンギフェリンベルベリン塩粉末333gを精密に量り、100メッシュの網を通した後、微結晶性セルロース200g、薬用澱粉300gを希釈剤として入れて調剤を構成する。均一に混合させた後接着剤を入れ軟材を作る。24メッシュの網を利用して造粒し、乾燥後ペレット化させた後適当の潤滑剤を入れる。10000錠を圧縮製錠し、コーティングすると薬品含有量が33.3mg/錠の薬品を得ることができる。
<実施例8>
マンギフェリンベルベリン塩の調製
【0048】
上記方法によって調製されたマンギフェリンベルベリン塩粉末10gを精密に量り、100メッシュの網を通した後、カルボキシメチルセルロース490g、キシロース500gを入れ均一に混ぜる。接着剤を入れ軟材を作り、24メッシュの網を利用して造粒する。乾燥後ペレット化させ、1000gを製造すれば、薬品含有量は10mg/gである。
<実施例9>
マンギフェリンベルベリン塩の調製
【0049】
上記方法によって調製されたマンギフェリンベルベリン塩粉末333gを精密に量り、100メッシュの網を通した後、微結晶性セルロース100g、薬用澱粉600gを希釈剤として入れる。均一に混ぜた後、接着剤を入れ軟材を作る。24メッシュの網を利用して造粒し、乾燥後ペレット化した後適当の潤滑剤を入れる。カプセルに入れると薬品含有量が33.3mg/粒の薬品が完成する。
<実施例10>
マンギフェリンベルベリン塩の調製
【0050】
上記方法によって調製されたマンギフェリンベルベリン塩粉末10gを精密に量り、極めて細かい粉に研磨して備用とする。適量のカルボキシメチルセルロースナトリウムとヒドロキシ安息香酸エチルを取ってそこに適量の水を入れ粘液嚢を作る。それぞれマンギフェリンベルベリン塩と単糖を適量入れる。1000mlになるまで水を入れながら混ぜて、小分けして包装する。つまり、薬物含有量が10mg/mlになる。
<試験例1>
マンギフェリンベルベリン塩の溶解度測定
【0051】
それぞれ細かい粉に研磨したマンギフェリンベルベリン塩5mgを精密に量り、25℃±2℃50ml蒸留水の中に入れ、5分ごとに30秒間激しい振りながら、30分内の溶解状況を観察する。マンギフェリンベルベリン塩は依然目に見える溶質顆粒があり、その水溶解度は0.1mg/mlより低く、水に殆ど溶けない物質に属する。
<試験例2>
マンギフェリンベルベリン塩の異なるpH酸水における溶解状況
【0052】
純水に塩酸を入れ、それぞれpHの値を1、3、5に調合する。pHが異なる水をそれぞれ50mlを取り、そこに精密に量りとった細かい粉に研磨したマンギフェリンベルベリン塩をそれぞれ50mgを入れ、振りながら溶解状況を観察する。マンギフェリンベルベリン塩は、pH1の水の中では数秒内に迅速に溶解する。pH3の水の中では5分間内に溶解する。pH5の水の中では完全に溶解することができない。
【0053】
また、pH1とPH3の水をそれぞれ50ml取り、そこに精密に量った細かい粉に研磨したマンギフェリンベルベリン塩をそれぞれ100mgを入れて振りながら溶解状況を観察するとマンギフェリンベルベリン塩は、pH1の水では1分間内に溶解し、pH3の水では完全に溶解することができない。
【0054】
また、pH1の水を50ml取り、細かい粉に研磨したマンギフェリンベルベリン塩200mgを量り入れ、振りながら溶解状況を観察する。マンギフェリンベルベリン塩は、pH1の水に溶解するが、すぐ沈殿物が生じる。
【0055】
また、pH1の水を50mlずつ三個取り、そこに細かい粉に研磨した割合の異なるマンギフェリン・ベルベリン合成物(モル比が1:1、1:3、1:5)をそれぞれ50mgずつ精密に量り入れ、振りながら溶解状況を観察する。すべての溶液で割合の異なるマンギフェリン・ベルベリン合成物はわずかに溶解する。
【0056】
上記溶液に標識を付け、室温に置いて24時間内の現象を観察する。pH1と3の酸性溶液では、マンギフェリンベルベリン塩の濃度が1mg/ml、2mg/mlの溶液では12時間内に僅かな量の沈殿物が生じる。pH1の酸性溶液では、マンギフェリンベルベリン塩の濃度が4mg/mlの溶液で12時間になる時に多数の沈殿物が生じ始める。
<試験例3>
マンギフェリンベルベリン塩の初歩的安定性に対する考察試験
【0057】
マンギフェリンベルベリン塩を何組取ってガラス瓶内に入れ、密封し、薬品安定性試験箱内に置く。加速試験条件(40℃±2℃/75%RH+5%RH)を設定した後、0、1、2、3ヶ月の時それぞれサンプルを取り、高速液体クロマトグラフィーでマンギフェリンベルベリン塩の含有量を測定する。試験結果、マンギフェリンベルベリン塩は加速試験条件で三ヶ月以内に著しい変化がなかった。これは本品の常温での安定性は1年以上であることを説明する。
【0058】
発明の開示に記載のマンギフェリンベルベリン塩の薬理活性を説明するために、本発明の出願者は体内外を相互結合し、代表性のある疾患モデルで各疾患を代表する形で実験研究を行った。即ち、生体外方式を用いてマンギフェリンベルベリン塩のAMPKリン酸化に対する影響および腫瘍細胞に対する化学治療の増感効果を研究し、それぞれKK-ayマウス、関節リウマチのラット、アルツハイマー病のラットで糖・脂質代謝異常性疾患、自己免疫疾患、神経変性病を代表させた。その後、マンギフェリンベルベリン塩をAMPK活性剤として、各種疾患の治療に用いる可能性に対して下記の通り詳細に説明をする。
<試験例4>
マンギフェリンベルベリン塩のAMPKに対する活性化効果
1、材料
【0059】
上記実施例に基づいて、マンギフェリンベルベリン塩を調製し、DMSOに溶解させる。使用直前に培地またはHBS緩衝液で希釈する。DMSOの最終濃度は≦0.2%である。
【0060】
L6細胞はATCCから購入し、糖分の高いDMEM培地はGIBCO社から、ウシ胎仔血清はHyclone社から購入している。抗AMPKウサギポリクローナル抗体、抗ACCウサギポリクローナル抗体、抗AMPKスレオニン172番リン酸化ウサギポリクローナル抗体、抗ACCセリン酸79番リン酸化ウサギポリクローナル抗体は、Cell Signal Technology社から購入している。
2、実験方法
2.1細胞培養と分化
【0061】
分化前のL6細胞は糖分の高いDMEM培地を用いるが、10%のウシ胎仔血清を含み、100U/mlペニシリン、100U/mlストレプトマイシンを含有した37℃の5%CO2の培養器内に置いて培養する。L6細胞の分化は、細胞が60%ほど成長した時、2%のウシ胎仔血清を含有した糖分の高いDMEM培地に移し、L6細胞が90%程度分化するまで、2日ごとに培地を交換する。
2.2化合物処理およびサンプル収集
【0062】
まず、6穴プレートにおける細胞を無血清の糖分の高いDMEM培地で培養する。試験化合物は、異なる濃度勾配で無血清の糖分の高いDMEM培地に添加するが、DMSOの含有量は0.2%である。試験化合物と細胞を3時間孵化した後、冷水の1×PBSで2回洗い、200μl 1×SDSの電気泳動緩衝液(50mM Tris・HCL、100mM DTT、2%電気泳動グレードSDS、0.1%ブロモフェノール・ブルー、10%グリセリン)を入れ細胞を10分間亀裂させる。亀裂液を収集し、15秒間超音波で処理した後、100℃で10分間サンプルを熱処理する。
2.3ウエスタンブロット測定
【0063】
亀裂液を10%のSDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動分析後、ブロッティング装置において100Vで1~2時間PVDF膜に移動する。ゲルにおける蛋白質を半乾式でピロキシリン膜に移動し、ポンソーS(Ponceau S)でストライプを定める。封液(3%の脱脂粉乳、0.1%のTween、TBS溶液)において1時間密封した後、1:1000希釈一次抗体を添加して4℃で一晩置き、TBSで3×15min洗浄し、1:1000希釈二次抗体を添加して室温で1時間孵化し、TBSで3×15min洗浄し、ECLに置いて5〜10min洗い流した後、X線フィルムで現像させる。
3、結果
【0064】
結果によると、1.25-5μmol/Lのマンギフェリンベルベリン塩は、用量依存的にAMPKのリン酸化レベルを著しく強化した同時に、ACCリン酸化レベルを著しく強化した。
<試験例5>
マンギフェリンベルベリン塩の腫瘍細胞に対する化学治療相乗作用
1、材料
【0065】
実施例の方法によりマンギフェリンベルベリン塩を調製する(以下、BMと称する)。シスプラチン(DDP)、アドリアマイシン(ADM)、タクソール(TAXOL)は市場から購入し、実験用サンプルはいずれもDMSO溶解後使用する。
2、組分け
【0066】
陰性対照組にはDMSO組、マンギフェリンベルベリン塩組(20μmol/L)、シスプラチン組(1μmol/L)、アドリアマイシン組(1μmol/L)、タクソール組(1μmol/L)、マンギフェリンベルベリン塩組(20μmol/L)+シスプラチン組(1μmol/L)、マンギフェリンベルベリン塩組(20μmol/L)+アドリアマイシン組(1μmol/L)、マンギフェリンベルベリン塩組(20μmol/L)+タクソール組(1μmol/L)がある。
3、実験方法
【0067】
体外培養したヒト肝癌Bel-7402細胞株を、103〜104/穴に従い、穴ごとに200μlを96穴の細胞培養プレートに接種し、24時間後に各試験化合物を添加、そのうち、二つのサンプルを添加した組別は、マンギフェリンベルベリン塩を添加し細胞と共同で3時間培養した後、またシスプラチンまたはアドリアマイシン又はタクソールを添加して72時間培養し、その後、MTT法を用いて細胞毒性を測定するが、試験は繰り返して二回行う。
4、結果
【0068】
マンギフェリンベルベリン塩とシスプラチン又はアドリアマイシン又はタクソールを組み合わせた組の細胞毒性は、シスプラチンやアドリアマイシン又はタクソールを単独で使用する時より著しく高く、マンギフェリンベルベリン塩は化学治療において細胞毒性を増加する効果を持つことを表明する。(図2を参照)
<試験例6>
マンギフェリンベルベリン塩のKK-ayマウスに対する影響
1、薬物
【0069】
実施例の方法に基づいてマンギフェリンベルベリン塩を調製し、3%のカルボキシルメチルセルロースナトリウムで混合した後使用する。ロシグリタゾン塩酸塩(Rosiglitazone hydrochloride)は、浙江万馬薬業有限公司製である。
2、動物
雄性KK-ayマウス、16週齢。
3、組分けおよび投薬
【0070】
KK-ayマウスをランダムに8組分けするが、即ち、モデル組(n=10)、マンギフェリンベルベリン塩低用量組[20mg/kg、n = 10、BML組と称する]、マンギフェリンベルベリン塩中用量組[40mg/kg、n = 10、BMM組と称する]、マンギフェリンベルベリン塩高用量組[80mg/kg、n = 10、BMH組と称する]、メトホルミン組[500mg/kg、n = 10]などである。毎日、所定の時間に胃内投与の形で行い、空白組には、等量の生理食塩水を投与し、合計30日間投与する。
4、観察指標
【0071】
血糖と血中脂質:試験終了時血液検体を採取し、血糖(mmol/L)、血中脂質[トリグリセリド(TG、mmol/L)、コレステロール(TC、mmol/L)、低密度リポタンパク質 コレステロール(LDL、mmol/L)、高密度リポタンパク質 コレステロール(HDL、mmol/L)を含む]、肝酵素[アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT、U/L)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST、U/L)を含む]は、GF-D800の半自動生化学分析装置(山東高密彩虹分析機器有限公司製)を利用して測定した。
インスリン:放射性免疫分析、γカウンターによるカウント、インスリン放射性免疫分析キット、山東維坊市三維(3V)生物公司製である。
インスリン感性指数(ISI)計算:ISI=Ln(1/FPG×1/INS)。
【0072】
尿中微量アルブミン:代謝ケージから24時間の尿液を収集しその尿量を記録し、尿液を遠心して上清を取り-80℃で予備として保存する。随時尿は毎週月曜日の13:00に掉尾反射法により収集する。酵素免疫測定法(ELISA法)により尿中微量アルブミンを測定し、尿中アルブミン排泄率(尿中アルブミン排泄率=尿中微量アルブミン濃度(mg/L)×尿液の総量(ml)/総量収集の時間(分)=μg/分、UAER)を算出するが、図面上の単位はmg/24hで表示する。
5、統計学的分析
測定データの値は平均値の標準偏差

で表示し、両組の間の比較はt-検定を採用する。
6、結果
【0073】
マンギフェリンベルベリン塩40mg/kgは、KK-ayマウスの血糖、血中脂質、インスリン、尿中アルブミン排泄率、肝酵素などの各指標を著しく改善することができ、インスリン感性指数を著しく向上させる(図3~4を参照)。
<試験例7>
マンギフェリンベルベリン塩の痴呆ラットに対する活性作用
1、試験材料
1.1動物
【0074】
SD雄性ラット、SPFクラス、体重250〜300g、自由な飲水、摂食、実験前に実験環境にて2~3d順応させ、実験室の温度は25℃にコントロールし、相対湿度は40%〜80%とする。
1.2薬品、試薬および設備
マンギフェリンベルベリン塩:実施例の方法に基づいて調製する。
凝集状態のβ澱粉様ペプチド1〜40断片(Aβ1-40):アメリカSigma社から購入する。
実験動物の定位固定装置(SN2型):日本成茂社製である。
モリス水迷路:中国医学科学院薬物研究所研究製造である。
2、組分けと投薬
【0075】
SDマウスをランダムで5組に分け、組ごとに10匹とするが、具体的には下記の通りである。つまり、(1)偽手術対照組:海馬内に等量の生理食塩水を注射する;(2)Aβ1-40処理モデル組;(3)マンギフェリンベルベリン塩の低用量組(20mg/kg、BML組と称する);(4)マンギフェリンベルベリン塩の中用量組(40mg/kg、BMM組と称する);(5)マンギフェリンベルベリン塩の高用量組(80mg/kg、BMH組と称する)。
投薬方法:各組の動物にモデル作り前の一週間から胃内投与を開始し、1日1回、連続で4週間投与する。迷路訓練中には、訓練前0.5h投薬する。
3、試験方法
3.1 Aβ1-40のラットAD様病変モデルの製造:
凝集状態のβ澱粉様ペプチド1〜40断片(Aβ1-40)をラットの海馬内に注入しAD様病変の動物モデルを作る。具体的には下記の通りである。
【0076】
SDラットは、麻酔後、定位固定装置によりAβ1-40で両側海馬内にそれぞれ1μl(先に、Aβ1-40を無菌状態の生理食塩水10μg/μlに溶解し、使用前37℃で1週間孵化する)注射する。注射部位は、大泉門後方3.5mm、脳の正中線横2.0mm、その深さは2.7mmである。
3.2観察指標と方法
【0077】
空間学習記憶能力テスト:Morrisモリス水迷路を用いる。ステージは迷路の東北象限真中に設置し、水平面はステージより1.5cm高く、水温は19℃〜20℃を維持し、ラットは毎日2回にわたって連続して5d訓練し、最長の歩行時間を70sに設定し、ストップウオッチで時間を計り、ラットがステージを見つけるのに必要な時間(潜伏期、EL)を記録する。
4、結果
【0078】
訓練日数の増加に伴い、各組のラットの平均ELは徐々に短縮される。偽手術組と比べて、モデル組のラットのELが著しく延長し、四日目からの差異が著しく、モデル作りに成功したことを説明する。5d目の潜伏期を例として、実験各組のELを比較した結果、マンギフェリンベルベリン塩の中・高用量組のラットのELは著しく短縮し、マンギフェリンベルベリン塩はAβ1-40に誘導されたラットの空間学習記憶障害を顕著に改善することができる(図5を参照)。
<試験例8>
マンギフェリンベルベリン塩の関節リウマチの動物モデルに対する影響
1 材料
【0079】
Wistarラット、雄性、100±20g。牛由来のコラーゲンII(Collagen II)は、酸可溶性であり、アメリカSigma社製である。フロイント不完全アジュバントは、アメリカSigma社製である。TNF-αキットは南京建成生物工程研究所から購入したものである。
2 モデル作り
【0080】
フロイント不完全アジュバントを利用して、酸可溶性のコラーゲンII(CII)をCII濃度が2.5mg/mlの乳剤に調合し、ラットごとにCII250μg含有の 100μl乳剤を右後足蹠部から皮内注射して炎症を誘発させる。
正常対照組:ラットごとにCIIを含まないフロイント不完全アジュバントで調合した乳剤100μlを注射する。
3 投薬と組分け
【0081】
ラットをランダムで6組に分け、組ごとに10匹とするが、具体的には下記の通りである。つまり、(1)正常対照組:(2)モデル組;(3)マンギフェリンベルベリン塩の低用量組(10mg/kg、BML組と称する);(4)マンギフェリンベルベリン塩の中用量組(20mg/kg、BMM組と称する);(5)マンギフェリンベルベリン塩の高用量組(40mg/kg、BMH組と称する);(6)陽性対照組:デキサメタゾンリン酸ナトリウム組(0.1mg/kg、Dexa組と証する)。
投薬方法:初回は、2週間免疫性を与えた後胃内投与を開始し、1日1回、連続して4週間投与し、正常対照組とモデル組には同じ量の生理食塩水を投与する。
4 観察指標
4.1足の浮腫:毛細血管拡大測定法により右後足の体積を測り、浮腫増加率[(投薬後の値−投薬前の値)/投薬前の値]×100%を求める。
【0082】
4.2サイトカインの測定:実験終了時、ラットの大動脈から採血し、血清を抽出し、冷蔵して測定に用いる。TNF-αは、ELISAキットの説明により測定する。
5 結果
【0083】
マンギフェリンベルベリン塩の中・高用量組はモデルラットの足浮腫とサイトカインTNF-αの分泌を著しく抑制し、よって、マンギフェリンベルベリン塩は関節リウマチのモデルラットに対して治療の効果があることを表明する(図6を参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)下記の構造を有するマンギフェリンベルベリン塩(mangiferin-berberine salt)であって、



2)、前記マンギフェリンベルベリン塩の融点は176℃〜178℃である
ことを特徴とするマンギフェリンベルベリン塩。
【請求項2】
前記マンギフェリンベルベリン塩の炭素スペクトルデータは、ベルベリンC6、C13a、C8a、C12aなどの炭素原子の化学シフトが遮蔽効果により顕著な変化を引き起こすという特徴を有する請求項1に記載のマンギフェリンベルベリン塩。
【請求項3】
前記マンギフェリンベルベリン塩の炭素スペクトルデータは、マンギフェリンC3、C7の炭素原子の化学シフトが反遮へい効果により顕著な変化が生じる特徴を有する請求項2に記載のマンギフェリンベルベリン塩。
【請求項4】
1)、マンギフェリンとアルカリ性のナトリウム(カリウム)塩を反応させてマンギフェリンモノナトリウム(カリウム)塩を調製し、
2)、マンギフェリンモノナトリウム(カリウム)塩とベルベリンを反応させてマンギフェリンベルベリン塩を生成させることを特徴とする請求項1に記載のマンギフェリンベルベリン塩の調製方法。
【請求項5】
上記のマンギフェリンとアルカリ性ナトリウム(カリウム)塩のモル比は1:0.5〜1であり、上記のマンギフェリンモノナトリウム(カリウム)塩とベルベリンのモル比は1:1であることを特徴とする請求項4に記載のマンギフェリンベルベリン塩の調製方法。
【請求項6】
上記のアルカリ性ナトリウム(カリウム)塩は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムの一種または二種類以上の混合物から選択可能であり、上記のベルベリンは、塩酸ベルベリン、硫酸ベルベリン、タンニン酸ベルベリンまたはベルベリンその他の医学的に受け入れることが可能な塩であってもよいし、ベルベリン、塩酸ベルベリン、硫酸ベルベリンを優先とすることを特徴とする請求項4に記載のマンギフェリンベルベリン塩の調製方法。
【請求項7】
請求項1〜3に記載のマンギフェリンベルベリン塩を含むAMPK活性剤。
【請求項8】
糖尿病、糖尿病の各種慢性合併症(冠動脈性心疾患、冠状動脈アテローム性硬化症、脳血管疾患などの大血管疾患、糖尿病性腎疾患、糖尿病性網膜症などの細小血管障害、神経障害、糖尿病性足壊疽、黄斑症、白内障、緑内障、屈折率変化、虹彩毛様体障害などの眼部のその他障害などを含む)、肥満、脂質異常症、インスリン抵抗性、高インスリン血症、X症候組、心筋肥大、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、心不全、高血圧、上気道感染、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、肺繊維症、肝炎、脂肪肝、アルコール性肝炎、肝繊維症、肝硬変、前立腺炎、膵炎、腎臓炎、腎炎症候組、慢性腎不全、関節リウマチ、骨関節炎、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、記憶障害、認知症、パーキンソン病、腫瘍(腫瘍に対する放射線治療・化学治療の非反応性、腫瘍の放射線治療・化学治療による毒性反応を含む)、運動代替のいずれか又はいくつかの予防または治療に用いられることを特徴とする請求項7に記載のAMPK活性剤。
【請求項9】
請求項1に記載のマンギフェリンベルベリン塩と薬用可能の添加物により構成されることを特徴とする薬物。
【請求項10】
上記の薬物は、臨床に適用する各種剤形、具体的に、錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、粒剤、丸薬、シロップ剤、経口液剤、経口懸濁液、ゲル、凍結乾燥注射剤に製造可能であることを特徴とする請求項9に記載の薬物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−530078(P2012−530078A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515316(P2012−515316)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000791
【国際公開番号】WO2010/145192
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511294051)海南徳澤薬物研究有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】HAINAN DEZE DRUG RESEARCH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】WU, Wei Room 6A, Dongfangyang Building, No 129−2 Binhai Road Xiuying District Haikou, Hainan 570105 (CN)
【Fターム(参考)】