説明

マンドレル用模型およびマンドレルの製造方法

【課題】ゴムホース10を製造するために用いるマンドレル用模型30を簡単な構成とし、製造工程を簡略化すること。
【解決手段】マンドレル用模型30は、ゴムホース10の曲げ形状に沿った形状のマンドレル21を鋳造するために用いるものであり、金属棒材31Aを軌跡に倣って曲げることによって形成された芯金用金属部材31Bと、芯金用金属部材31Bが挿入されマンドレル21の外径と同じ外径を有するゴム製または樹脂製の弾性チューブ32とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲線状に曲げられたゴムホースを製造するためのマンドレル用模型およびマンドレルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のゴムホースは、自動車におけるラジエータホース、各種装置におけるゴムホース等として広く使用されている。ゴムホースを製造するに当たっては、直線状の未加硫ホースに、成形すべきゴムホースの中心線に沿った曲線状の金属製のマンドレルを挿入し、未加硫ホースを曲線状に保持したまま加硫処理を施す。その後、マンドレルから加硫によって成形されたゴムホースを引き抜く。これにより所望する形状を有するゴムホースが製造される。
【0003】
上述の加硫処理に使用されるマンドレルは、以下のような工程により製造される。すなわち、木材を切削加工することによりマンドレル用模型を作成し、マンドレル用模型を砂型で型取りをし、砂型のキャビティに溶融金属を流しこむことにより行なっている。マンドレル用模型は、ゴムホースを大きく曲げる場合には、複数の木型を分割して形成しこれらを繋ぐことで構成されている。こうした模型の製造を簡略化するための技術として、数値制御によるCAD−CAMによる技術が提案されている(特許文献1)。しかし、機械加工によってマンドレル用模型を製造する場合には各木型を繋ぐ部分の形状を滑らかにするために手作業を必要とし、またマンドレル用模型を大きく曲げた形状とする場合には、木材素材の選定に熟練性を要し、製作が面倒であった。
【0004】
【特許文献1】特開平2−217134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、簡単に製造することができるマンドレル用成形型およびマンドレルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明は、
曲線状に曲げられたゴムホースの形状に沿ったマンドレルを鋳造するために用いるマンドレル用模型において、
金属棒材を上記曲線状に倣って曲げることによって形成された芯金用金属部材と、
芯金用金属部材が挿入され、上記マンドレルの外径と同じ外径を有するゴム製または樹脂製の弾性チューブと、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明において、金属棒材をゴムホースの軌跡に沿って曲げた芯金用金属部材を作成し、芯金用金属部材を弾性チューブに挿入することで、マンドレル用模型を形成する。すなわち、マンドレル用模型の骨格となる芯金用金属部材を細くて曲げやすい金属棒材を用いて曲げ加工を施すことで作成し、さらに、マンドレルに不足する肉厚分を、追従性のある弾性チューブで補うことによりマンドレル用模型を形成している。
【0008】
金属棒材を、曲げ加工機や手作業により、高い精度で所定の曲げの軌跡に沿わせることで芯金用金属部材を作成することができ、しかも、マンドレルに不足する肉厚分の外形も、芯金用金属部材に簡単に挿入できる弾性チューブで補うことができるから、製造工程を簡単にできる。したがって、従来の技術で説明したように、マンドレル用模型を複数の木型を組み合わせて製造する場合と比べて、木型の切削加工や、複数の木型の繋ぎ部分における成形作業が不要となり、短時間で製作することができ、また、木材の選択などの熟練性も不要である。
【0009】
また、マンドレル用模型の外形は、外形の異なる他の弾性チューブに交換することで、種々のゴムホースに対応することができる。
【0010】
また、本発明の他の態様は、
曲線状に曲げられたゴムホースの形状に沿ったマンドレルを製造する方法において、
金属棒材を準備する工程と、
金属棒材を上記曲線状に沿って曲げることによって形成された芯金用金属部材と、
上記マンドレルの外径と同じ外径を有するゴム製または樹脂製の弾性チューブを準備する工程と、
上記芯金用金属部材を上記弾性チューブに挿入することでマンドレル用模型を製造する工程と、
上記マンドレル用模型を模型として砂型を形成する工程と、
砂型からマンドレル用模型を外すことにより形成されたキャビティに溶融金属を流し、さらに冷却することでマンドレルを形成する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0012】
(1) ゴムホース10の構成
図1は自動車のエンジンとラジエータとを接続している3次元に曲げられているゴムホース10であり、EPDMゴム材料からなるゴム基体12に補強糸14が埋設されることで構成されている。
【0013】
(2) ゴムホース10の製造方法
次に、ゴムホース10の製造方法について説明する。図2はゴムホース10の製造工程を説明する説明図である。図2(A)に示すように、未加硫ホース10Aを準備する。未加硫ホース10Aは、未加硫状態のEPDM、SBR、NBR等からなるゴム材料を押出装置で押し出すとともに、ブレーダ装置で補強糸を編み組することにより製造することができる。
未加硫ホース10Aは、金属製マンドレル装置20に装着される。金属製マンドレル装置20は、マンドレル21と、マンドレル21の端部に固定され加硫装置内で支持するための支持金具22と、ストッパ機構23とを備えている。マンドレル21は、ゴムホース10(図1)の中心線に沿った曲線状の金属製の芯金である。ストッパ機構23は、未加硫ホース10Aの端部が広がることを防止するための機構であり、マンドレル21の外周部から突出したストッパ部23aと、マンドレル21にスライド可能に嵌合されたキャップ23bと、キャップ23bに付勢するスプリング23cとを備えている。キャップ23bは、マンドレル21に対して回動することで係合・係脱可能になっており、マンドレル21に対して係脱したときにスプリング23cにより押されて図示右側へ移動する。
【0014】
図2(B)に示すように、金属製マンドレル装置20に、未加硫ホース10Aを装着するには、マンドレル21の端部から、未加硫ホース10Aの穴11Aに挿入する。このとき、マンドレル21と未加硫ホース10Aの穴11Aの壁面との間には、潤滑油を塗布することで、挿入作業を容易にすることが好ましい。そして、図2(C)に示すように、未加硫ホース10Aが全長にわたってマンドレル21に挿入されると、未加硫ホース10Aの端部12Aがストッパ部23aに当たる。そして、キャップ23bを回転することにより、キャップ23bで未加硫ホース10Aの端部12Aを覆う。この状態にて、加硫装置内に装填して、蒸気加熱などの加熱処理を施すことにより、未加硫ホース10Aを加硫する。その後、金属製マンドレル装置20から、ゴムホース10を引き抜くことによってゴムホース10(図1)が得られる。
【0015】
(3) マンドレル21の製造方法
図3はマンドレル21を製造する工程を説明する説明図である。マンドレル21は、ゴムホース10の曲線状の形状に沿って成形するために、マンドレル用模型30(図3(E)参照)を製作し、さらにこのマンドレル用模型30を用い、砂型鋳造により製造される。すなわち、図3(A)に示すように、金属棒材31Aを用意する。金属棒材31Aは、直径6〜10mmで長さ100〜1000mmの丸棒であり、鉄などなどから形成されている。図3(B)に示すように、金属棒材31Aを曲げ加工機により曲げることで芯金用金属部材31Bが形成される。曲げ加工機として、数値制御式の3次元曲げ加工機(千代田工業株式会社製)を用いた場合に、金属棒材31Aを複数のローラに沿わせつつ3次元形状に曲げることができる。芯金用金属部材31Bは、曲げられたゴムホース10の中心に沿って曲げる。
次に、図3(C)(D)に示すように、弾性チューブ32に芯金用金属部材31Bを挿入する。弾性チューブ32は、芯金用金属部材31Bの外径よりも僅かに大きい内径の穴32Aaを有し、かつ未加硫ホース10Aの内径とほぼ同じ外径に形成されている。弾性チューブ32は、EPDMなどのゴムまたは可撓性を有する軟質の樹脂などから形成することができる。続いて、図3(E)に示すように、弾性チューブ32の端部にストッパ形成部材33を圧入する。ストッパ形成部材33は、図2のストッパ部23aを形成するための部材である。これにより、マンドレル用模型30が完成する。
【0016】
マンドレル用模型30を用いて、汎用の鋳造を行なう。すなわち、マンドレル用模型30を模型として砂型を形成し、砂型からマンドレル用模型30を外すことにより形成されたキャビティに溶融金属を流し、さらに冷却することでマンドレルの原型を形成する。マンドレルの原型の外面を仕上げ加工し、さらに支持金具22の取付加工やストッパ機構23を装着することにより、金属製マンドレル装置20が完成する。
【0017】
(4) 本実施例の作用・効果
(4)−1 マンドレル用模型30は、その骨格を細く曲げやすい金属棒材31Aを用いて曲げ加工を施すことで芯金用金属部材31Bを形成し、さらに、不足する肉厚分を、追従性のある弾性チューブ32で補うことにより製造しているので、従来の所望の形状に倣った精度の高い形状とすることができる。
【0018】
(4)−2 金属棒材を曲げ加工機や手作業により、高い精度で所定の曲げの形状に沿わせることで芯金用金属部材31Bを作成することができ、しかも、マンドレル21に不足する肉厚分の外形も、芯金用金属部材31Bに簡単に挿入できる弾性チューブ32で補うことができるから、製造工程を簡単にできる。したがって、従来の技術で説明したように、マンドレル用模型30を複数の木型を組み合わせて製造する場合と比べて、木型の切削加工や、複数の木型の繋ぎ部分における成形作業が不要となり、短時間で製作することができ、また、木材の選択などの熟練性も不要である。
【0019】
(4)−3 マンドレル用模型30の外形は、外形の異なる他の弾性チューブ32に交換することで、種々のゴムホース10に対応することができる。
【0020】
(4)−4 マンドレル21は、マンドレル用模型30を用いて、汎用の鋳造により製造することができる。すなわち、マンドレル用模型30を模型として砂型を形成し、砂型からマンドレル用成形型を外すことにより形成されたキャビティに溶融金属を流し、さらに冷却することでマンドレル21を製造することができる。こうして製造されたマンドレル21は、従来のマンドレルと同じような成形精度が得られ、ゴムホース10を癖付けするとともに加硫工程に用いることができる。
【0021】
(4)−5 未加硫ホース10Aの端部12Aを止めるストッパ部23aを作成するのに、ストッパ形成部材33を弾性チューブ32に外嵌させるだけで容易に対応することができる。
【0022】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例にかかるマンドレル用模型を用いて製造されるゴムホース10を示す断面図である。
【図2】ゴムホースの製造工程を説明する説明図である。
【図3】マンドレルを製造する工程を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0024】
10…ゴムホース
10A…未加硫ホース
11A…穴
12…ゴム基体
12A…端部
14…補強糸
20…金属製マンドレル装置
21…マンドレル
22…支持金具
23…ストッパ機構
23a…ストッパ部
23b…キャップ
23c…スプリング
30…マンドレル用模型
31A…金属棒材
31B…芯金用金属部材
32…弾性チューブ
32Aa…穴
33…ストッパ形成部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲線状に曲げられたゴムホース(10)の形状に沿ったマンドレル(21)を鋳造するために用いるマンドレル用模型において、
金属棒材(31A)を上記曲線状に倣って曲げることによって形成された芯金用金属部材(31B)と、
芯金用金属部材(31B)が挿入され、上記マンドレル(21)の外径と同じ外径を有するゴム製または樹脂製の弾性チューブ(32)と、
を備えたことを特徴とするマンドレル用成形型。
【請求項2】
曲線状に曲げられたゴムホースの形状に沿ったマンドレルを製造する方法において、
金属棒材(31A)を準備する工程と、
金属棒材(31A)を上記曲線状に沿って曲げることによって形成された芯金用金属部材(31B)と、
上記マンドレル(21)の外径と同じ外径を有するゴム製または樹脂製の弾性チューブ(32)を準備する工程と、
上記芯金用金属部材(31B)を上記弾性チューブ(32)に挿入することでマンドレル用模型(30)を製造する工程と、
上記マンドレル用模型(30)を模型として砂型を形成する工程と、
砂型からマンドレル用模型(30)を外すことにより形成されたキャビティに溶融金属を流し、さらに冷却することでマンドレル(21)を形成する工程と、
を備えたことを特徴とするマンドレルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−238621(P2008−238621A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83414(P2007−83414)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】