説明

マーキングフィルム

本出願は、アクリルポリマーを対象としている。特に、マーキングフィルムは、30℃〜180℃のガラス転移温度を有する第1(メタ)アクリルポリマー及び−80℃超30℃未満のガラス転移温度を有する第2(メタ)アクリルポリマーのポリマーブレンドを含むフィルム層を含む。第1及び第2(メタ)アクリルポリマーの一方がカルボキシル基を含み、他方がアミド基を含む。マーキングフィルムは更に、接着剤層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル又はメタクリルフィルム(以降、(メタ)アクリルフィルムと称される)に関連する。本発明のフィルムは、建物のための内部及び外部材料、家具のための面材料、及び乗り物のための内部及び外部材料における接着剤コーティングされた製品の基礎材料として使用することができ、かつまた、これがハロゲンを含まないために、ポリ塩化ビニルベースのフィルムのための基材として有用である。
【背景技術】
【0002】
アクリルフィルムは既知である。例えば、アクリル樹脂で作製されるベースフィルム及び、ベースフィルムの表面上に積層されるアクリル樹脂で作製される保護層を含む化粧板と、オレフィン系樹脂から作製されるベースフィルム及びベースフィルムの表面上に積層されるアクリル樹脂から作製される保護層を含む化粧板とが開示されている。
【0003】
アクリル樹脂がフィルムに形成される場合、生じるフィルムは一般的に、これが剛性及び脆性であるために、化粧板としての使用には適さない。アクリル樹脂の脆性を改善し、アクリル樹脂に可撓性を付与するために、アクリルポリマーが変性されて、アクリル樹脂に添加されてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願は、アクリルポリマーを対象としている。具体的には、30℃〜180℃のガラス転移温度を有する第1(メタ)アクリルポリマー及び−80℃超30℃未満のガラス転移温度を有する第2(メタ)アクリルポリマーのポリマーブレンドを含むフィルム層を含む、マーキングフィルムである。第1及び第2(メタ)アクリルポリマーの一方がカルボキシル基を含み、他方がアミド基を含む。マーキングフィルムは更に接着剤層を含む。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の(メタ)アクリルフィルムは、約30℃〜180℃のガラス転移温度を有する第1(メタ)アクリルポリマー及び−80℃超30℃未満のガラス転移温度を有する第2(メタ)アクリルポリマーのブレンドで形成される。第1又は第2(メタ)アクリルポリマーの一方がカルボキシル基を含み、他方の(メタ)アクリルポリマーがアミド基を含む。用語「(メタ)アクリル」は、本明細書において使用されるとき、アクリル又はメタクリルを意味する。フィルムはその後、接着剤層の添加によりマーキングフィルムへと作製される。
【0006】
カルボキシル基の例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、及びω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0007】
アミド基の例としては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、及びジアセトン(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0008】
第1(メタ)アクリルポリマーは、約10〜約90重量部でブレンド中に存在する。第2(メタ)アクリルポリマーは、約10〜約90重量部でブレンド中に存在する。ポリマーの一方は、ポリマーの約4〜約20モル%のカルボキシル基を含む。そして他方のポリマーは、ポリマーの約5〜15モル%のアミドを含む。別の実施形態において、第1ポリマーは、ポリマーの約5〜約15モル%のカルボキシル基を含む。そして他方のポリマーは、ポリマーの約10〜40モル%のアミドを含む。
【0009】
(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、以下のFOX等式を使用して決定された:
1/Tg=X1/(Tg1+273.15)+X2/(Tg2+273.15)+...+Xn/(Tgn+273.15)
式中、Tg1は、成分1のホモポリマーのガラス転移点を表し、Tg2は、成分2のホモポリマーのガラス転移点を表し、X1は、重合化中に添加されるモノマーの量によって決定される、成分1の重量分画を表し、X2は重合中に添加されるモノマーの量によって決定される、成分2の重量分画を表し、各ポリマーがn種のモノマーから重合されるものと想定した場合にX1+X2+...+Xn=1である。
【0010】
約30℃〜160℃のガラス転移温度を有する(メタ)アクリルポリマーの例としては、メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/メタアクリル酸、メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/メタクリル酸、及びメチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/N,N−ジメチルアクリルアミドのコポリマーが挙げられる。
【0011】
−80℃〜30℃のガラス転移温度を有する(メタ)アクリルポリマーの例としては、ブチルアクリレート/N,N−ジメチルアクリルアミド、ブチルアクリレート/ジアセトンアクリルアミド、2−エチルヘキシルアクリレート/N,N−ジメチルアクリルアミド、ブチルアクリレート/N−イソプロピルアクリルアミドのコポリマーが挙げられる。
【0012】
本発明の(メタ)アクリルフィルムは、従来的なフィルム形成方法によって形成され得る。特に、フィルムは、これらのポリマーの溶液を混合し、混合溶液をライナーの剥離表面上に適用し、溶液を乾燥によって固化することによって形成され得る。コーティング装置として、バーコーター、ナイフコーター、ロールコーター及びダイコーターなどの従来的なコーターが使用され得る。このフィルムは、溶融押出法によって形成され得る。固化操作は、溶融樹脂成分を冷却する操作と同じである。
【0013】
所望の引張強度及び伸長特性を有するフィルムは、ポリマーの混合比率を変えることによって得られる場合がある。例えば、より高いTgを有するポリマーの、より低いTgを有するポリマーに対する混合比率は、一般的に好ましくは、10:90〜90:10の範囲、より好ましくは20:80〜90:10、及び最も好ましくは30:70〜90:10の範囲である。より高いTgを有するより多量のポリマーを有することが好ましい。
【0014】
更に、引張強度、及び伸長特性は、多官能(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを添加することによって自由に調節することができる。この多官能(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーは、紫外線光で照射することによってポリマーに組み込まれ得る。多官能(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーの例としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート変性ビスフェノールA、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、並びにエチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物及びグリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物などのエポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0015】
ポリマーは、第1の態様において、ラジカル発生基によって架橋されてもよく、又はこれらは、第2の態様において、ヒドロキシル基とポリイソシアネートの反応によって架橋される。これらを架橋することによってネットワークが形成され、低温における伸長特性の改善に寄与する。
【0016】
本発明の(メタ)アクリルフィルムにおいて、引張破断強度は、好ましくは3MPa以上、より好ましくは10MPa以上、及び最も好ましくは20MPa以上である。引張破断強度が3MPa未満である場合、生じるフィルムが被着物に適用される最に破断する傾向があるか、又は再配置の操作の間にフィルムが伸張して変形するという問題が生じ得る。本発明の(メタ)アクリルフィルムにおいて、伸長は好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、及び最も好ましくは75%以上である。伸長が20%未満である場合、生じるフィルムは、被着物に適用される最に破断する傾向があるという問題が生じる。このような伸長値はまた、湾曲した、三次元的形状の基材に適用されるマーキングフィルムの能力を向上させる。
【0017】
マーキングフィルムにおける、(メタ)アクリルフィルムは、前面及び後面を有し、例えば、トナー又はインク画像のために、前面に着色剤を受容する。トナーが落ちることを防ぐため、フィルム前面上に、着色剤を覆うようにして保護フィルムが提供され得る。この場合、トナーは、保護フィルムを通して可視である画像を形成する。また、トナーと(メタ)アクリルフィルムとの間の接着は、(メタ)アクリルフィルムの表面上にレセプタ層を提供することによって向上させることができる。
【0018】
(メタ)アクリルフィルムの後面上には、接着剤層が提供される。接着剤層は通常、平坦な接着剤表面を形成するが、これは不均一な接着剤表面を有する場合がある。接着剤層の不均一な接着剤表面上において、突出部、及び突出部を囲む陥没部が形成され、接着剤層が最初に被着体に結合される際に、接着剤表面の陥没部と被着物の表面との間の空間により、外側と連絡する連絡経路が画定される。非常に軽い圧力下における接着を低減又は排除するために、接着剤の表面上に粒子が提供され得る。
【0019】
着色剤は通常、トナー又はインクである。トナーは、バインダー樹脂及びバインダー樹脂中に分散した顔料を含む。バインダー樹脂は、塩化ビニルアセテートコポリマー、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される1種類以上による混合物で構成される。
【0020】
保護フィルムは、光透過特性を有する。光透過率は通常、60%以上、好ましくは70%以上、及び特に好ましくは80%以上である。本明細書において使用される用語「光透過率」は、分光光度計、又は光度計としても機能する色度計により、550nmの波長を有する光を使用して測定される、全光透過率を意味する。
【0021】
保護フィルムは、好ましくは、高い透明性を有する樹脂フィルムから作製される。樹脂フィルムの樹脂は、例えば、フッ素樹脂、フタレートポリエステル(例えば、PET及びPEN)、アクリル樹脂、及び耐石油樹脂が挙げられる。フッ素樹脂は、フッ素モノマーを重合することによって得られるポリマーである。フッ素モノマーとしては、例えば、フッ化ビニリデン、プロピレンヘキサフルオリン、エチレンテトラフルオライド、及びエチレンクロライドトリフルオライドなどのフッ素エチレンモノマーが挙げられる。メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート及びブチルメタクリレートなどの、メチルメタクリレート、並びに、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート及びブチルアクリレートなどの、アクリレートから選択される、1種類以上の共重合可能なモノマーを混合することも可能である。また保護フィルムは、フッ素樹脂とアクリル樹脂をブレンドすることによって得られる、樹脂組成物から作製され得る。保護フィルムの厚さは通常、5〜120μm、及びより好ましくは10〜100μmの範囲内である。
【0022】
保護フィルムの接着剤層は通常、保護フィルムを(メタ)アクリルフィルムに結合するために使用される。保護フィルムのための接着剤層の接着剤は、特に限定されないが、通常感圧性接着剤である。感圧性接着剤は、(メタ)アクリルフィルムの表面上の着色剤又はトナーによって形成される不均一部に良好に一致し、それによって保護フィルム及び(メタ)アクリルフィルムを、その間に気泡を残すことなく(気泡は可視性を低減し得る)、互いに密接に接触するようにすることを可能にする。保護フィルムのための接着剤層の厚さは通常、15〜100μm、及び好ましくは25〜80μmの範囲内である。
【0023】
レセプタ層を構成する樹脂は、特に限定されないが、アクリルポリマー、ポリオレフィン、ポリビニルアセテート、フェノキシ樹脂又はレセプタ特性を示す他の同様の材料を使用することができる。レセプタ層に寄与する樹脂のガラス転移温度は通常、0〜100℃の範囲内である。レセプタ層のガラス転移温度が高すぎる場合、トナーの移行性は低下し、明瞭な画像が得られない場合がある。更に、レセプタ層のガラス転移性が高すぎる場合、マーキングフィルム全体の可撓性が低下し得る。レセプタ層のガラス転移温度は、着色剤を受容する表面の通常温度における粘着を効率的に低下させるために、好ましくは0℃以上に調節される。その結果、マーキングフィルム前駆体とレセプタシートの、保護フィルムを適用する前の張り付きを効果的に防ぐことが可能となる。したがって、ロールの形状で保存された後、ロールは巻き戻す間に容易に使用することができる。レセプタ層の厚さは通常、2〜50μm、及びより好ましくは5〜40μmの範囲内である。
【0024】
接着剤層のための接着剤は、特に限定されないが、通常感圧性接着剤である。例えば、感圧接着剤層として、単一層の感圧接着剤フィルム、又は2つの感圧接着剤層を含む二重コーティング接着剤が、好ましくは使用される。
【0025】
接着剤層は、接着剤ポリマーを含有する接着剤のフィルムをコーティングすることによって作製され得る。好ましくは、接着剤は、接着剤ポリマー及び架橋剤を含む。本明細書において使用される用語「接着剤ポリマー」は、通常温度(約25℃)において接着力を呈するポリマーを指す。接着剤ポリマーは例えば、アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン及びポリエステルが使用され得る。
【0026】
接着剤ポリマーの架橋の場合に、架橋剤が使用される場合、架橋剤の量は、使用される架橋剤によって変化するが、通常は接着剤ポリマーの100重量部を基準として、0.02〜2重量部、及び好ましくは0.03〜1重量部の範囲内ある。
【0027】
接着剤層のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−50〜0℃、及びより好ましくは−45〜−5℃の範囲内である。接着剤層のTgが高すぎるとき、フィルムと被着物との間の結合形成が、より低い温度において困難になり得る。一方で、接着剤層のTgが低すぎる場合、マーキングフィルムがロールの形態で保存される際にロールの側部から接着剤が滲出し、相互に接触するマーキングフィルムの張り付きが生じ得る。Tgは、動的粘弾性測定装置(Rheometrics Scientific Inc.のRDA−II)を使用して測定する際に、Tan δから決定される値である。1ラジアン/秒(radian/see)(ねじれモード)、−60〜100℃の加熱範囲、及び5℃/秒の加熱速度の条件下で測定が行なわれ得る。見本の厚さは通常、1〜2mmである。
【0028】
接着剤フィルムの厚さは通常、5〜100μm、好ましくは20〜80μm、及びより好ましくは25〜50μmの範囲内である。本発明の効果が低減しない限り、粘着付与剤、弾性微小球、接着剤ポリマー微小球、結晶性ポリマー、無機粉末、及び紫外線吸収剤などの、添加物を追加することができる。
【0029】
接着剤層は通常、平坦な接着剤表面を有するが、不均一な接着剤表面又は構造化表面を有し得る。
【0030】
マーキングフィルムは、以下の方法で生成され得る。最初に上記の(メタ)アクリルフィルムが調整される。マーキングフィルムがレセプタ層を含む場合、レセプタ層はライナー上に形成され、(メタ)アクリルフィルムはその後、ライナーを有するレセプタ層上に形成される。この場合、本発明の効果が損なわれない限り、他の層、例えばプライマー層又は接着剤層が、(メタ)アクリルフィルムとレセプタ層との間に提供され得る。
【0031】
接着剤層は、(メタ)アクリルフィルムの後面と密接に接触するようにされる。接着剤を含むコーティング溶液はライナーの剥離表面上に適用され、乾燥させられてライナーを有する接着剤層を形成し、その後ライナーを有する接着剤層が(メタ)アクリルフィルムの後面上に積層され、それによって接着剤層を(メタ)アクリルフィルムの後面と緊密に接触させる。
【0032】
画像は、(メタ)アクリルフィルムの表面上に形成され、保護フィルムがその上に光学的に提供され、それによってマーキングフィルムを完成することを可能にする。
【0033】
マーキングフィルムの厚さは通常、30〜200μm、例えば、50〜100μmの範囲内である。厚さが小さすぎる場合、機械的強度が低減し、マーキングフィルムは、被着物への結合の後に再び剥離する際に破断する傾向にある。一方で、厚さが大きすぎると、マーキングフィルムの可撓性が低下する傾向にある。
【実施例】
【0034】
これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲に限定することを意味するものではない。特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載される部、百分率、比率等は全て重量による。
【0035】
【表1】

【0036】
試験方法
ガラス転移温度(Tg)−方法1:硬質(高いTg)ポリマー
ポリマー溶液のサンプルは、Comma Coaterで38マイクロメートル厚さの剥離−処理ポリエステルフィルム(Purex(商標)A−71;帝人デュポンフィルム株式会社(日本))上にコーティングされ、炉で80℃で10分間にわたり、その後150℃で10分間にわたり乾燥された。50マイクロメートルの乾燥フィルム厚さを提供するために、コーティング条件が制御された。15ミリメートル(mm)長さ、及び10mm幅の乾燥フィルムのサンプルが、粘弾性動的分析器(RSA−III;Rheometric Scientific Incorporated)を使用してその動的粘弾性を評価されるが、この際設定は以下である:10.0Hzの引張モード、0℃〜150℃の温度範囲、及び5.0℃/分の加熱速度。Tgは、tan δ(損失率E”/貯蔵率E’)のピーク値として定義された。
【0037】
ガラス転移温度(Tg)−方法2:軟質(低いTg)ポリマー
ポリマー溶液のサンプルは、Comma Coaterで38マイクロメートル厚さの剥離−処理ポリエステルフィルム(Purex(商標)A−71;帝人デュポンフィルム株式会社(日本))上にコーティングされ、炉で80℃で10分間にわたり乾燥された。50マイクロメートルの乾燥フィルム厚さを提供するために、コーティング条件が制御された。乾燥ポリマーフィルムはその後、3.0mmの高さを有する積層体を提供するように積層され、8.0mmの直径を有する円筒形サンプルを提供するようにダイで切断された。このサンプルは、粘弾性動的分析器(RSA−III;Rheometric Scientific Incorporated)を使用して、その動的粘弾性を評価されるが、この際設定は以下である:10.0Hzの引張モード、−60℃〜100℃の温度範囲、及び5.0℃/分の加熱速度。Tgは、tan δ(損失率E”/貯蔵率E’)のピーク値として定義された。
【0038】
分子量
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)が、屈折率タイプ検出器を備えるHP−1090 SERIES II器具(Agilent Technologies Japanにより製造)で、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定され、以下のパラメータを使用した:PLゲルMIXED−Bx2(300mm×7.5mm、内径5mm)カラム(Plymer Laboratoriesにより製造されるスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーカラム)、テトラヒドロフラン(THF)溶媒、1.0mL/分の流量、0.1重量/堆積%、100マイクロリットルの注射堆積、室温、ポリスチレン(polystrene)に対して較正される。多分散指数がまた算出された。
【0039】
引張強度及び伸長−方法1
硬質(高いTg)及び軟質(低いTg)ポリマーの溶液ブレンドがPurex(商標)A−71上にコーティングされ、炉で80℃で10分間にわたり、その後150℃で10分間にわたり乾燥させられた。50マイクロメートルの乾燥フィルム厚さを提供するために、コーティング条件が制御された。生じる乾燥フィルムは、株式会社オリエンテック(日本)により製造されるTENSILON RTC−1325Aを使用し、JIS−K−7161「プラスチック−引張特性の試験方法(Plastics-Determination of tensile properties)」、及びJIS−K−7127「引張特性の試験方法−第3部:フィルム及びシートの試験条件(Plastics-Determination of tensile properties-Part 3: Test conditions for films and sheets)」に従ってその引張強度及び伸長を評価され、パラメータは以下であった:50.0mmのゲージ長さ、300mm/分の引張分離率、12.0mmの幅及び0.05mmの厚さを有するJIS−K−7127に記載のタイプ2のサンプル試料、及び25℃の試験温度。メガパスカル(MPa)による破断点引張強度は、T=F/Aとして算出され、ここでFは破断点における引張強度(ニュートン)であり、Aは断面積A(平方ミリメートルmm)であった。%での、破断点の引張伸長は、E=[(L1−L0)/L0]×100で算出され、式中Eは伸長(%)、L1は破断点におけるゲージ長さ(mm)、L0は初期ゲージ長さ(50.0mm)であった。
【0040】
硬質及び軟質ポリマーのブレンドの相溶性
硬質(高いTg)及び軟質(低いTg)ポリマーのブレンドの相溶性は、視覚的観察によって判定された。試験方法「Tensile Strength and Elongation」に記載されるように調整される、光学的透明性を呈するブレンドの乾燥フィルムは、許容可能な相溶性を有するものと判断された(「OK」)。曇っているように見え、相分離を示すフィルムは、許容不可能であるものと判断された(「NG」)。
【0041】
インクジェット画像品質
溶媒インクジェット画像が、溶媒インクジェットプリンター(ローランドディージー株式会社(静岡県浜松市北区新都田1丁目6番4号、日本)によって製造されるXC540)を使用して実施例1に記載される透明なインクレセプタ上に印刷され、Rolandによって提供されるECO−SOL MAXインクが使用された。印刷条件は、次の通りであった。6色(シアン、マゼンタ、黄色、黒色、ライトシアン、ライトマゼンタ)、デュアルモード、高画像品質モード(720dpi(283dpcm)及び1440dpi(567dpcm))、可変ドットA。300%インク密度カラーバー、及びピクチャ画像が印刷された。印刷速度は約3m/時であった。圧盤温度は約40℃であった。画像品質及び色密度は、外観検査によって判断された。画像品質及び色密度は、「良好」又は「不良」のいずれかによって指定された。
【0042】
再加工性
150mm長さ及び70mm幅の試料が切断された。23℃において、株式会社パルテック(神奈川県平塚市大神3233−1、日本)によって提供される、メラミン塗布されたパネルに接触する接着剤層に、プラスチックスキージを使用して試料が適用された。試料はその後、手によって迅速に剥離された。試料が、フィルムの破断を生じることなく容易に取り除かれた場合、これは「良好」と評価された。フィルムの破断のために試料が取り除かれない場合、これは「不良」と評価された。
【0043】
降伏強さ、伸長−方法2
25mm幅及び150mm長さの試料が切断された。降伏強さ及び伸長の両方が、300mm/分のジョー分離速度、及び100mmのゲージ長さを使用して、「TENSILON」引張試験機を使用して、20℃で測定された。
【0044】
ポリマー調製及び評価
硬質(高いTg)ポリマー溶液H1〜H6、H8及びH9の調製及び評価。
【0045】
モノマー及び量が表1に示される:「硬質(高いTg)(メタ)アクリルポリマーの調製物」が、150重量部(pbw)のエチルアセテートへと、0.6pbsのV−601反応開始剤と共に添加された。混合物は、その後窒素でパージされ、溶液は65℃で24時間にわたり重合された。生じるポリマーの、官能基の種類及び含有量(モル%)、ガラス転移温度(Tg)(試験方法1)、分子量、並びに多分散指数が判定されて、以下の表1に示される。
【0046】
硬質(高いTg)ポリマー溶液H7の調製及び評価
以下の修正を加えつつ、H1に関して記載されたものと同じ方法を使用して、ポリマー溶液H7が調製された。使用されるエチルアセテートの量は、255pbwであり、0.2pbwのV−65反応開始剤が利用され、反応条件は50℃、24時間であった。生じるポリマーの特性は、以下の表1に示される。
【0047】
軟質(低いTg)ポリマー溶液S1〜S7及びS9〜S14の調製及び評価
モノマー及び量が表2に示される:「軟質(低いTg)アクリルポリマーの調製物」は、163pbwのエチルアセテート及び70pbwの2−ブタノンの溶媒混合物に、0.2pbwのV−65反応開始剤と共に添加される。混合物は、その後窒素でパージされ、溶液は50℃で24時間にわたり重合された。生じるポリマーの、官能基の種類及び含有量(モル%)、ガラス転移温度(Tg)(試験方法2)、分子量、並びに多分散指数が判定されて、以下の表2に示される。
【0048】
軟質(低いTg)ポリマー溶液S8の調製及び評価
以下のようにして、S1に関して記載されたものと同じ方法を使用して、ポリマー溶液S8が調製された。エチルアセテート、186pbwが溶媒として使用された。生じるポリマーの特性は、以下の表2に示される。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
ポリマーブレンド調製及び評価
示される比率のポリマーを提供するために、以下の表3に示されるように、様々な量の異なるポリマー溶液を混合することによって、硬質(高いTg)及び軟質(低いTg)ポリマーのブレンドが調製された。ブレンドされた溶液が使用されて乾燥フィルムを調製し、引張強度及び伸長(方法1)、及び相溶性を評価された。
【0052】
【表4】

【0053】
実施例22〜30及びCE 6
ポリマー溶液は、表4に記載されるように混合された。相溶性を確認するために透明性が点検された。溶液が透明であるものとして認識された場合、相溶性は良好であるものと判断された。ポリマーブレンド溶液は、ナイフコーターで50マイクロメートルの剥離ポリエステルフィルム上にコーティングされた。上記のコーティングされた層は、95℃で3分間、及び155℃で2分間乾燥させた。乾燥後、50マイクロメートルの透明なアクリルフィルム層が得られた。上記のフィルムの降伏強さ及び伸長が、試験方法2を使用して評価された。結果が以下の表5に記載された。
【0054】
粘着性ポリマー(BA:AA=96:4、580,000のMw、−50℃のTg、EtAc/Tolueneにおいて42%固体)がブレンドされて、架橋剤1と混合され、接着剤化合物を形成した。粘着性ポリマーの架橋剤に対する比率は、重量で100:0.2であった。接着剤化合物が、以下の構造を有する剥離ライナー上に、ナイフコーターでコーティングされた:シリコーン剥離層/ポリエチレンフィルム層/紙コア層/ポリエチレンフィルム層。コーティングされた層は、90℃で5分間にわたり、乾燥及び架橋された。乾燥後、30μmの接着剤層が得られた。その後、上記のアクリル接着剤がフィルムと積層された。実施例のインクジェット画質及び再加工性が評価された。結果が以下の表5で評価された。
【0055】
ポリマー調製及び評価
ポリマー溶液H10〜H14及びS15〜S17の調製及び評価
ポリマー溶液のブレンドに示されるモノマー及び比率を使用した溶液重合によりポリマーが調製されたポリマーは全て、良好な相溶性を有することが見出された。生じるポリマーの、官能基の種類、ガラス転移温度(FOXの法則によって算出される値)、及び重量平均分子量が、上記のように判定されて、以下の表4に示される。
【0056】
【表5】

【0057】
(実施例24)
H−1/ TiO2(TiPureR960としてDuPontから入手可能)/メチル−イソブチル−ケトン(MIBK)(重量で10:50:40)を含む顔料予備混合物が調製された。上記のアクリル樹脂化合物がペイントシェーカー(Thinkyにより提供されるARE250)で、10分間にわたって混合された。硬質ポリマー1、軟質ポリマー1、及びTiO2の比率は、重量で100:100:50であった。上記のポリマー及び顔料の相溶性は、「良好」と判断された。
【0058】
上記のポリマー溶液は、ナイフコーターで50μm剥離ポリエステルフィルム上にコーティングされた。その後、上記のコーティングされた層が、95℃で3分間、及び155℃で2分間、乾燥及び架橋された。乾燥後、50μmのアクリルフィルム層が得られた。上記の白いフィルムは、実施例22と同じ接着剤と積層された。
【0059】
(実施例30)
実施例30は実施例22の通りであるが、架橋剤2を添加して調製された。S15と架橋剤2の比率は、重量で100:3であり、9の架橋剤比率を有した。
【0060】
実施例22〜30は、180℃で30分間にわたり、ヒートエイジングされた。その後、フィルムの白化及び黄化は認識されなかった。
【0061】
【表6】

【0062】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない、本発明の様々な修正及び変更が、当業者には明らかとなるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30℃〜180℃のガラス転移温度を有する第1(メタ)アクリルポリマー及び−80℃超30℃未満のガラス転移温度を有する第2(メタ)アクリルポリマーのポリマーブレンドを含むフィルム層と、接着剤層とを含むマーキングフィルムであって、前記第1及び第2(メタ)アクリルポリマーの一方がカルボキシル基を含み、他方がアミド基を含む、マーキングフィルム。
【請求項2】
前記第1(メタ)アクリルポリマーがカルボキシル基を含み、前記第2(メタ)アクリルポリマーがアミド基を含む、請求項1に記載のマーキングフィルム。
【請求項3】
前記第1(メタ)アクリルポリマーが、50℃以上のガラス転移温度を有し、かつ5〜15モル%のカルボキシル基を含み、前記第2(メタ)アクリルポリマーが30℃以下のガラス転移温度を有し、かつ10〜40モル%のアミド基を含む、請求項2に記載のマーキングフィルム。
【請求項4】
前記第1(メタ)アクリルポリマーの含有量が100重量部であり、前記第2(メタ)アクリルポリマーの含有量が40〜200重量部である、請求項3に記載のマーキングフィルム。
【請求項5】
前記第1(メタ)アクリルポリマーがアミド基を含み、前記第2(メタ)アクリルポリマーがカルボキシル基を含む、請求項1に記載のマーキングフィルム。
【請求項6】
前記第1(メタ)アクリルポリマーが、50℃以上のガラス転移温度を有し、かつ10〜40モル%のアミド基を含み、前記第2(メタ)アクリルポリマーが30℃以下のガラス転移温度を有し、かつ5〜15モル%のカルボキシル基を含む、請求項5に記載のマーキングフィルム。
【請求項7】
前記第1(メタ)アクリルポリマーの含有量が100重量部であり、前記第2(メタ)アクリルポリマーの含有量が40〜200重量部である、請求項6に記載のマーキングフィルム。
【請求項8】
前記第1(メタ)アクリルポリマーが100,000以上の重量平均分子量を有し、前記第2(メタ)アクリルポリマーが100,000以上の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のマーキングフィルム。

【公表番号】特表2013−517158(P2013−517158A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549022(P2012−549022)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2011/020957
【国際公開番号】WO2011/088096
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】