説明

マーク用生地およびそれを用いたマーク形成方法

【課題】体操着、ユニフォーム、水着などの頻繁に伸縮する衣類に接着されてこれと共に伸縮し、しかも衣類との耐久性の良い接着を形成する取り付け簡便なマーク用生地を提供すること、並びに前記マーク用生地を用いたマーク形成方法を提供すること。
【解決手段】伸縮性のマーク地に、融点が125℃〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・s、100%モジュラスが2〜8MPaのポリウレタン樹脂からなる接着剤をラミネートすることを特徴とするホットメルト接着層を有するマーク用生地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体操着、ユニホーム、水着などの頻繁に伸縮する衣類に接着されてこれと共に伸縮し、しかも衣類との耐久性の良い接着を形成する取り付け簡便なマーク用生地に係り、特にポリウレタン樹脂からなる接着剤からなるホットメルト接着層を有するマーク用生地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、野球、バレーボール、サッカーなどのように複数の選手がチームを構成して競技を行うに際し、互いの選手の識別を一目瞭然とするため、或いは一つのチームとしてのまとまりを主張するためなどとして、ユニホームに数字、文字、図形等によるマークを接着形成して使用されている。これらのマークは、主として以下の二通りの方法により衣類と接着される。すなわち、フエルトやメルトン生地を手又はミシンなどで縫い合わせるか、ホットメルト層を有するニット、クロス、ナイロンなどの生地を所望の形状に加工し、該ホットメルト層を衣類に接するように配置して、加熱、加圧することにより接着されるのである。
【0003】
ホットメルト層を有するマーク用生地に関する従来技術としては、腰の強い布帛で作られたユニホームおよび極めて伸縮性に富む布地を利用して作られたユニホームにも適するマーク用生地(特許文献1)を提供するものがある。この提案は、熱圧着層形成材を作るとき、マーク地にラミネートするとき、マーク地と接着対象物を接着するときの各加熱加圧操作では溶融しない介在層を介在させて、その両面に熱可塑性ホットメルト合成樹脂フィルムを配した三層構造体とし、該熱圧着層形成材をマーク地にラミネートしたものである。この提案によれば、接着対象物に応じて選択された接着剤が、介在層によって分離されているために必要以上に双方が浸透することを防止できる。
【0004】
また、マーク地用ホットメルト接着層と、生布用ホットメルト接着層を有するマーク用生地(特許文献2)を提供するものがある。この提案は、ホットメルト接着層を積層構造とし、マーク用生地をマークの形状に合わせてカットする際に、前記ホットメルト接着層でマーク地本体の伸びを抑えて作業性を向上させることを目的とするものである。これは、従来のウレタン樹脂製のホットメルト接着層を用いたマーク用生地(特許文献3)の課題であるカットする際に、マーク地本体と一緒にホットメルト接着層も伸びてしまい、カット作業が容易でないとともに、マークのカット面の切口に糸引きやホットメルト接着層の滲み出しが生じ、カット面の切口の仕上がりが悪いという課題を解決するものである。しかし、いずれの提案でも被服の伸縮性に充分に追随することができるまでには至っていなかったのである。
【0005】
ところで、前記縫い合わせることにより接着する方法は、複雑な形状になるほど手間と時間を要する上に、接着後に衣類の美観、風合いを損ねる場合がある点で問題があり、ホットメルト層を溶融して接着する方法は、縫い合わせる方法に比べて簡易ではあるが、マーク地素材および衣類にホットメルト樹脂が溶融するために素材を硬化させ伸縮性を悪くするという問題があった。この伸縮性の低下によって、特にスポーツウエアなどのマークに使用すると、着用した際に違和感があり、短期間の使用においてすら、マーキング部分の剥離やひび割れ等が生じるおそれがあった。
【特許文献1】特開2001−324928号公報
【特許文献2】特開2001−200482号公報
【特許文献3】特開平1−234238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果なされたものであり、その目的とするところは、体操着、ユニホーム、水着などの頻繁に伸縮する衣類に接着されてこれと共に伸縮し、しかも衣類との耐久性の良い接着を形成する取り付け簡便なマーク用生地を提供すること、並びに前記マーク用生地を用いたマーク形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、伸縮性のマーク地に、融点が125〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・s、100%モジュラスが2〜8MPaの物性値を有するポリウレタン樹脂からなる接着剤がラミネートされたホットメルト接着層を有するマーク用生地が、上記目的を効果的に達成することを見だし、本発明に至った。
【0008】
より好適には、前記ホットメルト接着層の厚さが50〜150μmであること、前記伸縮性のマーク地が、ペットフィルム上に顔料を含有する熱硬化性のポリウレタン樹脂又は熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるバインダーを塗布して形成されるシート層であることはいずれも本発明の特徴の一つである。ペットフィルムに展開された伸縮性のマーク地とすることにより、所望のマーク形状を形成する際に、カッティングプロッターなどによるカットが容易に行えるからである。
【0009】
また、前記顔料を有する熱硬化性ポリウレタン樹脂又は熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるバインダーを塗布して形成されるシート層と、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるホットメルト接着層との間に、チタンを含有する白色の熱硬化性ポリウレタン樹脂からなる介在層を有すること、この介在層の厚さが好ましくは20〜50μmであること、そして前記顔料が好ましくは水性インクであることも、本発明の好適な態様の一つである。前記介在層は、被接着物である衣服の色を隠蔽し、マーク地の色を効果的に際だたせることができるからである。
【0010】
さらに、前記ホットメルト接着層を形成する熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリエステルポリオールとジイソシアネート化合物を反応させてられるポリエステル系ポリウレタン樹脂であることは、本発明の重要な特徴点である。前記物性値を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂を得るためには、前記ポリエステル系が好適だからである。
【0011】
そして、前記マーク用生地を用いて、圧力500〜2000g/cm、温度140〜180℃の条件下で衣類に熱圧着することにより、極めて簡易にマークを形成することができるという方法をも本発明の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマーク用生地は、スポーツウエアなどの頻繁に伸縮する衣類に接着されてもこれと共に伸縮するために、着用時において身体にフィットする感覚があり、マークが伸縮性を有するゆえに、従来のマークのようにマーキング部分の剥離やひび割れ等が生じることがない。また前記マーク用生地を用いて加圧加熱という簡易なマーク形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のマーク用生地は、伸縮性のマーク地に融点が125〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・s、100%モジュラスが2〜8MPaの物性値を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる接着剤をラミネートしたものである。
【0014】
前記融点とは、微量融点測定器で測定し、自重で変形する温度をいう。従来のマーク用生地に用いられている一般的なポリウレタン樹脂から成る接着剤(以降において単にポリウレタン接着剤という)の融点は、90〜110℃である。本発明のポリウレタン接着剤は従来汎用されているものよりも高い融点を示すところに特徴がある。これまで、マーク用接着剤はマークを圧着するための装置の仕様に合わせるように設計されており、短時間で接着することが生産性の面で好ましいために、接着剤の融点は低いものが選ばれていたのである。すなわち生産性を考慮すれば当然低温の融点のポリウレタン接着剤を選択することが一般的ではあるが、本発明では従来のポリウレタン接着剤を使用することによる伸縮性の低いマークを改良するという視点から、敢えて高い温度のポリウレタン接着剤を選択したのである。そして、その融点は125〜165℃、好ましくは135〜160℃の範囲であり、前記より低い融点のポリウレタン接着剤では、従来通りのマーク伸縮性に問題があり、前記融点より高いポリウレタン接着剤では、被接着物である衣類に対して悪影響を与えるおそれがあるので好ましくないからである。
【0015】
前記溶融粘度とは、加熱することによって溶融したときのポリウレタン接着剤が有する流動性を示すものである。従来のマーク用生地に用いられている一般的なポリウレタン接着剤の溶融粘度は温度150℃において精々3000〜4000Pa・sである。しかし、本発明のポリウレタン接着剤の溶融粘度は150℃において8000〜15000Pa・s、このましくは9000〜12000Pa・sである。このように従来のポリウレタン接着剤よりも極めて高い粘度を有するという特徴及び、融点が高いという特徴から、被接着物である衣類の繊維間に浸透する量が適度に調整される。すなわち、マークを接着する際の温度分布に対応して接着剤が流動するために、マークと衣類との境界面近傍では接着剤の濃度が高く、衣類の内部方法にいくに従って、接着剤濃度が低くなるというグラデーションにより、マークを接着する前の衣類の伸縮性に影響を与えることなく、接着できるのである。
【0016】
前記100%モジュラスとは、ポリウレタン接着剤のフィルムに対して特定の伸び(本発明では100%の伸び)を与えた時の引張応力を示し、柔軟性を示す一つの尺度として用いられているものである。すなわち、モジュラスが大きな材料は伸びが少なく、一方モジュラスが小さい材料は伸びた後の戻りが悪くなるという特徴を示すようになるが、従来のマーク用生地に用いられている一般的なポリウレタン接着剤の100%モジュラスは、8.5〜13MPaである。しかし、本発明のポリウレタン接着剤の100%モジュラスは、2〜8MPa、好ましくは4〜6MPaである。このことからも容易に理解できるように、マーク用生地に用いた場合には優れた伸縮性を発現するのである。
【0017】
前記各物性を満足するポリウレタン接着剤は、フィルム状に成形されたものが好適に用いられる。具体的には、日東紡績株式会社製ダンヒューズ(登録商標)等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。そして、前記フィルム状のポリウレタン接着剤をマーク地にラミネートすることによりマーク用生地を製造することができる。このとき適宜加熱することによりマーク地との仮接着力を高めることができる。なお、ラミネートする方法以外にも、マーク用生地の上にポリウレタン樹脂を射出して形成したり、ポリウレタン樹脂を有機溶媒に溶解して該溶液を塗布する方法などがある。
【0018】
マーク地にラミネートされたポリウレタン接着剤はホットメルト層として、マーク用生地の衣類に対する接着効果の機能を有するのである。すなわち、マーク用生地と衣類を重ねてマーク用生地側から熱を加えると、マーク地、ホットメルト層の順に熱が伝えられ、この熱により前記ホットメルト層が溶融し、ポリウレタン樹脂がマーク地および衣類の構成繊維の間に浸透する。これが冷却されて固化すると、所謂アンカー効果により両者(マーク地と衣類)を強固に結合するのである。本発明のポリウレタン接着剤は、マーク用生地のホットメルト層を形成するものであるが、その厚みは50〜150μm、好ましくは60〜100μmである。前記厚みより薄い場合には、必要とする接着強度を得られないおそれがあり、前記厚みよりさらに厚くなると、マーク用生地部分の重量感が増して、着心地が悪くなるおそれがあるからである。
【0019】
本発明の伸縮性のマーク地は、ニット、クロス、ナイロンなどの一般的な生地から構成されていてもよいが、ペットフィルム上に顔料を含有する熱硬化性ポリウレタン樹脂又は熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるバインダーを塗布して形成されるシート層を塗布して形成される伸縮性のマーク地であることがより好ましい。顔料を種々選択することによりバラエティに富んだ色彩を作り出すことができること、顔料が熱硬化性ポリウレタン樹脂の内部にトラップされることにより容易に色落ちしない染色が可能になるなどの利点がある。特に顔料が樹脂シート層内に物理的にトラップされる結果、水性顔料を使用しても色落ちの心配がなく、顔料が水性であるという環境配慮型製品とすることができる。また、マークが接着された衣類は、人の肌に近い部分に密着して使用されるという状況において安心して着用できるという商品価値をも高めることができるのである。水性インクは市場で入手可能なものであれば良く、ポリウレタン樹脂エマルジョン系のバインダー等を含むものが好ましい。
【0020】
前記熱硬化性ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、またはポリカプロラクトンポリオールなどのポリオールに、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、またはヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネートを混合して、25〜50μmの厚みを有するシート状に形成したものが挙げられる。特に、溶融温度が170〜200℃、硬化温度230〜240℃、デュロ硬度85A〜95Aの熱硬化性(硬化型)を有する耐熱ウレタン系樹脂が好ましい。この場合には、堅牢性に優れる。例えば、これは、(日本ポリウレタン工業社製)商品名:ニッポラン(登録商標)5033、5111、5115、5120、5138、5193、5196、5199、5230、5238、5980に、ジイソシアネートを10:1〜4の範囲内から選択される割合で含有したものを挙げることができる。なお、前記樹脂は、商品名:ニッポラン(登録商標)5196、5199、5230、5238が、無黄変である点でより好ましい。
【0021】
また、前記ジイソシアネートとしては、例えば、(日本ポリウレタン工業社製)商品名:コロネート(登録商標)HX、XL、HXLV、HK、Lが挙げられる。商品名:コロネート(登録商標)HXが混合しやすい点で好ましい。したがって、マーク地用シート層のウレタン系樹脂としては、好ましくは、商品名:ニッポラン(登録商標)5199に、コロネート(登録商標)HXを10:1〜4の範囲内から選択される割合で含有したものである。
【0022】
熱可塑性ポリウレタンとしては、特に限定するものではなく、種々のウレタン系樹脂配合水性エマルジョンが使用される。
【0023】
なお、マーク地用シート層は、積層構造であっても良く、該積層構造の1層が例えば10〜15μmの厚みを有し、例えば前記樹脂にジイソシアネートを10:3〜5の範囲内から選択される割合で含有した熱硬化性ウレタン系樹脂なるもので、他の層が前記マーク地用シート層のウレタン系樹脂からなるものであっても良い。
【0024】
本発明のマーク地は、前記熱硬化性ポリウレタン樹脂層又は熱可塑性ポリウレタンからなるバインダーをペットフィルムの上に展開してシート層を形成したものが好ましいのであるが、ペットフィルム上に展開することによって、カッティングプロッターなどによるカットが容易に行えるというメリットがある。下記に説明するホットメルト層を形成する熱可塑性ポリウレタン樹脂も、マーク地を形成する前記熱硬化性ポリウレタン樹脂又は熱可塑性ポリウレタン樹脂も、共に室温において柔軟であるために、これら単独では所望の形状にカット加工することが困難である。これは、上述の柔軟なマーク用生地を提案する従来技術において、未だ未解決の部分であった。しかし、ペットフィルム上にマーク地を展開して形成されていることによって、硬質のペットフィルムと柔軟なマーク地とが適度な接着力で積層されている状態では、カッティングプロッターなどによる加工が容易に行えるのである。
【0025】
一般にポリウレタン樹脂は、上述の通り長鎖ジオールとジイソシアネートの重縮合により得られるが、ソフトセグメントである長鎖ジオールのタイプにより、ポリエーテル系とポリエステル系に分けられる。本発明のホットメルト層を形成する熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールとジイソシアネート化合物を反応させてられるポリエステル系ポリウレタン樹脂であることが好ましい。このポリエステルポリオールは、ジカルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの、芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、ドデカンジオン酸、セパシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられ、これらを一種もしくは二種以上を組み合わせて使用しても良い。本発明ではアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸が好適である。
【0026】
前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールなどが挙げられ、これらを一種もしくは二種以上を組み合わせて使用しても良い。本発明では、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、分子量200〜2000のポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコールなどが好ましい。
【0027】
一方、前記ジイソシアネートとしては、脂肪族、脂環式および芳香族のジイソシアネートが使用される。具体的にはヘキサメチレン−1,6,ジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン−1,5,ジイソシアネート、2−エチルブチレン−1,4,ジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネートあるいは少なくともこれら2種類以上の混合物、イソホロン−ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサン−ジイソシアネート、1−メチル−2,4−および−2,6−シクロヘキサン−ジイソシアネートのような脂環式ジイソシアネート、2,4−トルイレン−ジイソシアネート、2,4−および2,6−トルイレン−ジイソシアネートの混合物、1,5−ナフチレン−ジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネートである。これらのうちでもヘキサメチレン−1,6,ジイソシアネート、イソホロン−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネートが好ましく、ことに4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネートが好ましい。
【0028】
前記ジイソシアネートには、例えばジイソシアネート全量に対して3モル%、好ましくは1モル%以下の濃度範囲で多官能性ポリイソシアネートを添加してもよい。但し、この量については熱可塑性のポリウレタンが得られるように調整されなければならない。多官能性ポリイソシアネートを使用すると熱硬化性になり、接着剤としての機能を果たしがたくなるからである。このような多官能性ポリイソシアネートを添加する場合には、活性水素原子を有する単官能性化合物を同時に使用して、ポリウレタンの化学的架橋を抑制することもできる。前記多官能性ポリイソシアネートの例としては、ポリフェニル−ポリメチレン−ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0029】
分子量の制御のためにも用いられる前記活性水素原子を有する単官能性化合物としては、ブチルアミン、ジブチルアミン、ステアリルアミン、ピロリドンのようなモノアミン、ブタノール、オクタノール、シクロヘキサノールのようなモノアルコールが適当である。
【0030】
前記のジカルボン酸と多価アルコールとからポリエステルポリオールを調製し、該ポリエステルポリオールと前記ジイソシアネートとを反応させて、本発明のホットメルト層を形成する熱可塑性ポリエステル系ポリウレタン樹脂が合成されるのである。
【0031】
本発明のマーク用生地は、好適には前記伸縮性のマーク地に前記ポリウレタン樹脂からなるシートをラミネートすることにより得られる。そのラミネートの条件としては、厚さ50〜100μmのポリウレタン樹脂からなるシートを、マーク地と重ね合わせて、温度120〜180℃で、加圧300〜800g/cm2、加熱加圧時間は約30〜60秒である。このように簡易な方法でマーク用生地を作製したのち、所望のマーク形状に加工するのである。
【0032】
本発明においては、上記顔料を含有する熱硬化性ポリウレタン樹脂又は熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるバインダーのシート層と、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるホットメルト接着層との間に、例えばチタンを含有する白色の熱硬化性ポリウレタン樹脂や、赤、黒等の顔料を含有する熱硬化性ポリウレタン樹脂からなる介在層を有することができる。この介在層は、マークを接着する衣類が黒色などの濃い色合いの場合に、その色がマーク地の色と重なることによって、マーク地本来の色がぼけてしまうような場合や、マーク地の色が薄い場合にその色彩を鮮明にすることができるという効果を有する。このような介在層は、上記マーク地を形成するシート層と同様の熱硬化性ポリウレタン樹脂を用いることができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、またはポリカプロラクトンポリオールなどのポリオールに、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、またはヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネートを混合し、チタンホワイトを3〜5%を添加して、20〜30μmの厚みを有するシート状に形成したものが挙げられる。
【0033】
この介在層のポリウレタン樹脂としては、特に、溶融温度が160〜180℃、硬化温度230〜240℃、デュロ硬度60A〜80Aの熱硬化性(硬化型)を有する耐熱ウレタン系樹脂が好ましい。また、この介在層の厚さは、20〜50μmがこのましく、前記厚さより薄いと、衣類の色を隠蔽する効果に欠けるようになり、前記厚さより厚いとマーク用生地部分の重量感が増して、着心地が悪くなるおそれがあるからである。
【0034】
また、前記のマーク用生地のシート層、介在層、ホットメルト層からなる三層構造(ペットフィルムのシートを合わせれば四層構造であるが、ペットフィルム層はマークを衣類に接着した後廃棄される)に、目的に応じてさらなる介在層を増やすこともできる。さらに、例えば、活性炭、カーボン等を熱可塑性バインダーと混合し、昇華防止の機能として活用することも可能である。
【0035】
こうして得られたマークはポリウレタン接着剤がホットメルト層として衣類との接着機能を果たし、かつマーク地の伸縮性を損なうことなく接着されるので、マークを附した衣類が、風合いや着心地に優れたものとなるのである。このマークの接着方法については、圧力500〜2000g/cm2、温度140〜180℃で、加熱加圧時間は数分〜数十分で、衣類に熱圧着することにより容易に接着することができる。この時、従来のマークの接着方法では前記温度条件が140〜150℃、圧力条件200〜400g/cm2である点で、大きく異なる。これは、従来使用されているポリウレタン接着剤の融点や溶融粘度が、本発明のそれとは大きく相違するからである。
【0036】
前記のようにして形成された伸縮性のあるマークは、衣類との接着力に優れ、商品価値の非常に高いものとなる。以下に本発明の実施例について説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り何ら限定されるものではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0037】
本発明のマーク用生地は、一例として図1に示す工程により作成される。すなわち、(a)ペットフィルム1を準備し、(b)ペットフィルム上に顔料を含有する熱硬化性ウレタン樹脂又は熱可塑性ウレタン樹脂の伸縮性のマーク地2を塗布する。この伸縮性のマーク地は、顔料を含有することによって好みの色のマークを形成することができる。この時の塗布する厚みは適宜選択すれば良く、具体的には15〜25μmである。伸縮性のマーク地を塗布した後、乾燥機内で乾燥し、マーク地を構成するウレタン樹脂を硬化させる。(c)次にロールクォーターでチタンを含有する白色の介在層3を密着させる。(d)最後に熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる接着剤を載せてホットメルト接着層4を形成し、150℃、500g/cm2で1分間加熱加圧してマーク用生地を作製した後、(e)カッティングプロッターなどによって所望のマーク形状に加工することによりマークが得られる。得られたマークは、接着層4を被服の所望の位置に向けて重ね合わせ、圧力500〜2000g/cm2、温度140〜180℃で、加熱加圧時間は数分〜数十分で、熱圧着することにより容易に接着することができる。
【0038】
本発明例で使用したポリウレタン接着剤シートは、日東紡績株式会社製のポリウレタン接着剤で、商品名ダンヒューズ(登録商標)6730、6120、6150の3種類を用いた。このマーク用生地1を所望のマーク形状に合わせてカットし、マーク形状にカットされたマーク用生地を、ポリエステル繊維からなるユニホームの背面側中央位置にセットして、さらに加圧加熱することにより接着した。マーク地およびポリウレタン接着剤シートを表1に示すように各種変更して、マーク付きユニホームを作製した。
【0039】
こうして得られたマーク付きユニホームを縦横に引っ張ることによりマーク形状を変形させたときの、マーク部分の追随性と、変形後のマークの表面状態について、優、良、可、不可の四段階で評価した。
【0040】
【表1】

【0041】
前記表1に示すように、本発明のポリウレタン接着剤を用いたマークは、ユニホームの変形に合わせて柔軟に伸縮し、変形終了後においてもマークにひび割れなどの発生もないことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、体操着、ユニホーム、水着などの頻繁に伸縮する衣類に接着されてこれと共に伸縮し、しかも衣類との耐久性の良い接着を形成する取り付け簡便なマーク用生地が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は本発明のマーク用生地を作製する一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ペットフィルム
2 伸縮性のマーク地
3 介在層
4 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性のマーク地に、融点が125〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・s、100%モジュラスが2〜8MPaの熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる接着剤がラミネートされたホットメルト接着層を有することを特徴とするマーク用生地。
【請求項2】
前記ホットメルト接着層の厚さが50〜150μmであることを特徴とする請求項1記載のマーク用生地。
【請求項3】
前記伸縮性のマーク地が、ペットフィルム上に顔料を含有する熱硬化性ポリウレタン樹脂又は熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂を塗布して形成されるシート層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマーク用生地。
【請求項4】
前記顔料が、樹脂バインダーの水性インクであることを特徴とする請求項3記載のマーク用生地。
【請求項5】
樹脂バインダーからなる前記顔料を含有する熱硬化性ポリウレタン樹脂又は熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂を塗布して形成されるシート層と、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるホットメルト接着層との間に、熱硬化性ポリウレタン樹脂からなる介在層を有することを特徴とする請求項1乃至4に記載のマーク用生地。
【請求項6】
前記熱硬化性ポリウレタンの介在層の厚さが20〜50μmであることを特徴とする請求項5記載のマーク用生地。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリエステルポリオールとジイソシアネート化合物を反応させてられるポリエステル系ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1または2、または5に記載のマーク用生地。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれかに記載のマーク用生地を用いて、圧力500〜2000g/cm、温度140〜180℃で衣類に熱圧着することを特徴とするマーク形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−13556(P2009−13556A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146717(P2008−146717)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(598101343)株式会社エヌエスケーエコーマーク (1)
【出願人】(500412644)有限会社サンショウ (12)
【Fターム(参考)】