説明

ミシンの加工布位置決めガイド装置

【課題】 加工布の上面に針落ち基準点を中心とする円を含む縫製基準マークを投影して加工布の位置決めをガイドし、種々の形状の加工布の端縁や加工布に既に形成された縫目から一定の所望の縫目間隔を空けて縫目を簡単に確実に形成可能にする、ミシンの加工布位置決めガイド装置を提供する。
【解決手段】 ミシンMの縫針12の針落ち基準点Pに対して斜め上方から照射して、加工布Wの上面に針落ち基準点Pを中心とする円Maと針落ち基準点Pで交差する十字Mbからなる縫製基準マークMを投影する投影装置15を備え、その縫製基準マークMの円Maのサイズを変更可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンのベッド部に載置された加工布の上面に縫製基準マークを投影して縫製の際に加工布の位置決めをガイドするミシンの加工布位置決めガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンにより加工布に縫製を施す場合、加工布の端縁や加工布に既に形成された縫目から一定の縫目間隔を空けて縫目を形成したい場合がある。そこで、例えば、図20に示すように、外形が略矩形の押え足100を利用して、縫製の際に、押え足100の側端縁に対して加工布101の端縁を位置決めし(例えば、平面視にて押え足100の側端縁に加工布101の端縁が一致するようにし)、その状態を維持するように加工布101を送ると、加工布101の端縁から一定の縫目間隔を空けて縫目102を形成できる。
【0003】
また、例えば、図21に示すように、リング状の押え足105を利用して、縫製の際に、押え足105の外周部に対して加工布106に既に形成された縫目107(形成済縫目107)を位置決めし(例えば、平面視にて押え足105の外周部に形成済縫目107が接するようにし)、その状態を維持するように加工布106を送ると、加工布106に形成済縫目107から一定の縫目間隔を空けて縫目108を形成できる。
【0004】
一方、特許文献1には、加工布の端縁から一定の縫目間隔を空けて縫目を形成するために、ミシンの頭部に、光源と液晶パネルと投影レンズとを有するプロジェクターを装着し、このプロジェクターからミシンのベッド部と加工布の上面に、加工布の端縁を位置決めする目印となる直線状の縫製基準線を投影する装置が開示されている。
【特許文献1】特許第2775961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図20、図21のように、押え足に対して加工布の端縁や形成済縫目を位置決めする場合、押え足の上側にはミシン頭部が存在するため、作業者は押え足と加工布を斜め上側から見ることになるが、押え足自体が邪魔になり、しかも、押え足と加工布の端縁や形成済縫目との相対位置が判りにくいため、押え足に対して加工布の端縁や形成済縫目を正確に位置決めすること、更に、その状態を維持するように加工布を送ることが難しくなる。つまり、加工布の端縁や形成済縫目から一定の縫目間隔を空けて縫目を形成することが難しいという課題がある。
【0006】
また、前記縫目間隔は押え足のサイズによって規定されてしまうため、サイズの異なる押え足に交換しない限り前記縫目間隔を変更することができない。そこで、複数の異なるサイズの押え足を設けておこくことで対処できるが、押え足の付け替え作業が非常に面倒で、コスト的にも非常に不利であり、また、前記縫目間隔を変更するのにも限界があり所望の縫目間隔に変更できない場合が多い。
【0007】
一方、特許文献1の装置では、プロジェクターからミシンのベッド部と加工布の上面に、加工布の端縁を位置決めする目印となる直線状の縫製基準線を、縫針の針落ち点(針板の針孔)から手前に離れた箇所に投影するだけであるので、図20の押え足を利用する場合も同じであるが、湾曲形状を含む加工布の端縁や形成済縫目から一定の縫目間隔を空けて縫目を形成することが難しい。
【0008】
本発明の目的は、加工布の上面に針落ち基準点を中心とする円を含む縫製基準マークを投影して、その縫製基準マークに対して加工布を位置決めして、種々の形状の(湾曲形状を含む)加工布の端縁や加工布に既に形成された縫目から一定の縫目間隔を空けて縫目を簡単に確実に形成可能にすること、前記縫目間隔を所望の間隔に変更可能にすること、前記縫目間隔の変更を簡単に実行可能にすること、等である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のミシンの加工布位置決めガイド装置は、ミシンのベッド部に載置された加工布の上面に縫製基準マークを投影して縫製の際に前記加工布の位置決めをガイドするミシンの位置決めをガイド装置において、前記ミシンの縫針の針落ち基準点に対して斜め上方から照射して、前記加工布の上面に前記針落ち基準点を中心とする円を含む縫製基準マークを投影する投影装置を備えたことを特徴とする。
【0010】
この位置決めをガイド装置では、投影装置により、ミシンの縫針の針落ち基準点に対して斜め上方から照射されて、加工布の上面に針落ち基準点を中心とする円を含む縫製基準マークが投影される。依って、縫製の際に、縫製基準マークの円の外周部が加工布の端縁や加工布に既に形成された縫目(形成済縫目)に略接するように加工布を位置決めし、この状態を維持するように加工布を送ることで、加工布の端縁や形成済縫目から一定の縫目間隔(前記円の半径)を空けて縫目が形成される。
【0011】
請求項1の発明に次の構成を採用可能である。
前記縫製基準マークの円のサイズを所望のサイズに変更して設定可能なマークサイズ設定手段を備える(請求項2)。前記マークサイズ設定手段で設定された前記縫製基準マークのサイズを表示するマークサイズ表示手段を備える(請求項3)。
【0012】
前記投影装置は、上端部に光源を有する伸縮可能な筒体と、前記筒体の長さ方向途中部に設けられ前記縫製基準マークを形成する為のマーク形成パターンが形成された透過部と、前記筒体の下端部に設けられた投影レンズと、前記投影レンズを昇降させる投影レンズ昇降手段とを備え、前記マークサイズ設定手段は、前記投影レンズ昇降手段により前記投影レンズを昇降させて前記縫製基準マークのサイズを変更可能に構成される(請求項4)。
【0013】
前記マークサイズ設定手段は、前記縫製基準マークのサイズを入力するマークサイズ入力手段と、前記マークサイズ入力手段で入力されたサイズに応じて前記投影レンズ昇降手段を駆動するアクチュエータとを備える(請求項5)。
【0014】
前記投影装置は、前記加工布に対して斜め上方から照射される前記縫製基準マークの円が真円形になるように、前記マーク形成パターンの形状が設定されているか、或いは、前記筒体に対する前記透過部の姿勢が所定の姿勢に設定されている(請求項6)。
【0015】
前記縫製基準マークは、前記針落ち基準点で交差する十字を含む(請求項7)。前記投影装置により投影する前記縫製基準マークの色を、複数色の何れかの色に変更するマーク色変更手段を備える(請求項8)。
【発明の効果】
【0016】
請求項1のミシンの加工布位置決めガイド装置によれば、ミシンの縫針の針落ち基準点に対して斜め上方から照射して、加工布の上面に針落ち基準点を中心とする円を含む縫製基準マークを投影する投影装置を備えたので、縫製の際に、縫製基準マークの円の外周部が加工布の端縁や加工布に既に形成された縫目(形成済縫目)に略接するように、縫製基準マークに対して加工布を確実に位置決めすることができ、この状態を維持するように加工布を送ることで、種々の形状の(湾曲形状を含む)加工布の端縁や形成済縫目から一定の縫目間隔(前記円の半径)を空けて縫目を簡単に確実に形成することができる。
【0017】
請求項2のミシンの加工布位置決めガイド装置によれば、縫製基準マークの円のサイズを所望のサイズに変更して設定可能なマークサイズ設定手段を備えたので、前記縫目間隔を所望の間隔に変更することができる。
【0018】
請求項3のミシンの加工布位置決めガイド装置によれば、マークサイズ設定手段で設定された縫製基準マークのサイズを表示するマークサイズ表示手段を備えたので、この縫製基準マークのサイズを容易に確認することができる。
【0019】
請求項4のミシンの加工布位置決めガイド装置によれば、投影装置は、上端部に光源を有する伸縮可能な筒体と、筒体の長さ方向途中部に設けられ縫製基準マークを形成する為のマーク形成パターンが形成された透過部と、筒体の下端部に設けられた投影レンズとを備えたので、加工布の上面に縫製基準マークを確実に投影することができ、更に、投影レンズを昇降させる投影レンズ昇降手段を備え、マークサイズ設定手段は、投影レンズ昇降手段により投影レンズを昇降させて縫製基準マークのサイズを変更可能に構成したので、縫製基準マークのサイズ変更を簡単に行うことができる。
【0020】
請求項5のミシンの加工布位置決めガイド装置によれば、マークサイズ設定手段は、縫製基準マークのサイズを入力するマークサイズ入力手段と、マークサイズ入力手段で入力されたサイズに応じて投影レンズ昇降手段を駆動するアクチュエータとを備えたので、作業者がマークサイズ入力手段により所望の縫製基準マークのサイズを入力するだけで、アクチュエータにより投影レンズ昇降手段が駆動され投影レンズが昇降駆動されて、所望のサイズの縫製基準マークを自動的に迅速に投影することができる。
【0021】
請求項6のミシンの加工布位置決めガイド装置によれば、投影装置は、加工布に対して斜め上方から照射される縫製基準マークの円が真円形になるように、マーク形成パターンの形状が設定されているか、或いは、筒体に対する透過部の姿勢が所定の姿勢に設定されているので、投影装置をミシン頭部に内蔵される機構部品と干渉しない位置に設置し、加工布に対して斜め上方から縫製基準マークを照射しても、照射される縫製基準マークの円が真円形になるので、加工布の端縁や形成済縫目と針落ち基準点との距離(即ち、円の半径)が全周に亙って正確に一定となる縫製基準マークを投影することができる。
【0022】
請求項7のミシンの加工布位置決めガイド装置によれば、縫製基準マークは、針落ち基準点で交差する十字を含むので、加工布の上面の針落ち基準点を明確且つ容易に視認できるので、加工布の端縁や形成済縫目と形成予定の縫目との間の間隔を正確に確認することができる。
【0023】
請求項8のミシンの加工布位置決めガイド装置によれば、投影装置により投影する縫製基準マークの色を、複数色の何れかの色に変更するマーク色変更手段を備えたので、加工布の色とは異なる色の縫製基準マークを、加工布の上面に投影できるので、縫製基準マークの視認性を高めて見易くすることができ、つまり、種々の色の加工布に適用可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のミシンの加工布位置決めガイド装置は、ミシンのベッド部に載置された加工布の上面に縫製基準マークを投影して縫製の際に加工布の位置決めをガイドするために、ミシンの縫針の針落ち基準点に対して斜め上方から照射して、加工布の上面に針落ち基準点を中心とする円を含む縫製基準マークを投影する投影装置を備えたものである。
【実施例1】
【0025】
図1、図2に示すように、ミシンMSは、ベッド部1、脚柱部2、アーム部3を備え、ベッド部1の右部に脚柱部2が立設され、脚柱部2の上部からアーム部3が左方へ延設され、アーム部3の左端側に頭部4が設けられている。ベッド部1の上面部に針板5が設けられ、脚柱部2の前面部にカラー表示可能な液晶ディスプレイ6が設けられ、液晶ディスプレイ6の前面に透明なタッチパネル7が設けられ、アーム部3と頭部4の前面部に起動スイッチ8と投影スイッチ9を含む種々の操作スイッチ類10が設けられている。
【0026】
頭部4には、針棒11が上下動自在に装着されて、その針棒11の下端部に縫針12が取り付けられ、針棒11の後側に押え棒13が昇降自在に装着されて、その押え棒13の下端部に押え足14が取り付けられ、押え足14の布押え部はリングの前半部を切り欠いた半リング状に形成されている。頭部4の前左部に投影装置15が装着され、その投影装置15の大部分が頭部4のカバー4aの内部に収容され、投影装置15の1対の調節ネジ34,35の摘み部34a,35aが操作可能にカバー4aに形成されたスリット4bから外部へ突出している。尚、頭部4には天秤や糸調子器(図示略)も装着されている。
【0027】
図3に示すように、ミシンMSは、制御装置16とミシンモータ17を備え、制御装置16が、起動スイッチ8と投影スイッチ9を含む操作スイッチ類10、タッチパネル7からの信号を受けて、ミシンモータ17、液晶ディスプレイ6、投影装置15の発光部21を駆動制御する。加工布位置決めガイド装置18は、ベッド部1に載置された加工布Wの上面に縫製基準マークMを投影して縫製の際に加工布Wの位置決めをガイドするものであり、投影装置15、制御装置16、投影スイッチ9、タッチパネル7を備えている。
【0028】
加工布位置決めガイド装置18について詳細に説明する。
図2〜図6に示すように、投影装置15は、縫針12の針落ち基準点Pに対して前方且つ左方の斜め上方から照射して、ベッド部1に載置された加工布Wの上面に、針落ち基準点Pを中心とする円Maと針落ち基準点Pで交差する十字Mbからなる縫製基準マークMを投影するものであり、筒体20、発光部21、集光ミラー22、照明光学系レンズ群23、透過部24、投影レンズ25、第1,第2位置調節機構26,27を備えている。
【0029】
筒体20は、伸縮可能なものであり、外筒30と、外筒30に上側から摺動自在に内嵌された内筒31とを有する。筒体20は、その中心線上に針落ち基準点Pが位置するように、下方へ向かって後方且つ右方へ傾斜する姿勢で配設され、外筒30が第1位置調節機構26を介して頭部4の機枠4cに対して筒体20の長さ方向へ移動して位置調節可能に固定され、内筒31が第2位置調節機構27を介して外筒30に対して筒体20の長さ方向へ移動して位置調節可能に固定されている。
【0030】
内筒31の上端部に光源としての発光部21と集光ミラー22が設けられ、発光部21は電気コード21aにより制御装置16に接続されている。内筒31の長さ方向途中部に照明光学系レンズ群23が設けられ、内筒31の下端部(筒体20の長さ方向途中部)に透過部24が設けられ、外筒30(筒体20)の下端部に投影レンズ25が設けられている。発光部21は、複数色(例えば、赤、青、白の3色)を発光可能なフルカラーLEDからなり、この複数色の何れかの色で択一的に発光させることができる。
【0031】
図5、図6に示すように、透過部24は円板状のマスク部材32を有し、このマスク部材32が筒体20の中心線と直交するように、その外周部が内筒31の内面に固着され、このマスク部材32に、縫製基準マークPを形成する為のスリットからなるマーク形成パターン33が形成されている。ここで、ベッド部1に載置された加工布Wに対して斜め上方から照射される縫製基準マークMの円Maが真円形になるように、マーク形成パターン33の形状が設定されている。
【0032】
透過部24は筒体20の中心線と直交するように配設され、マーク形成パターン33は、円形成パターン33aと十字形成パターン33bからなる。円形成パターン33aの形状は略楕円形状であり、十字形成パターン33bの形状は略楕円形状の長軸と短軸に一致する形状である。ここで、十字形成パターン33bの短軸の方向が、通過部24と針落ち基準点Pとを結ぶ直線の方向と一致する方向に設定されている。尚、スリットからなるマーク形成パターン33は、マスク部材32を切断しないように、円形成パターン33aの周方向4箇所において不連続に形成されている。
【0033】
図2、図4、図5に示すように、第1位置調節機構26は、頭部4の機枠4cに連結された筒状のホルダ4dに外筒30を摺動自在に内嵌させ、ホルダ4dに筒体20の長さ方向に形成されたスリット4eと調節ネジ34とを有する。調節ネジ34は摘み部34aと段部34bとネジ部34cとを有し、ネジ部34cがスリット4eを挿通して外筒30に螺合され、調節ネジ34を締めると、段部34bと外筒30によりホルダ4dが挟持された状態になって外筒30が固定され、調節ネジ34を緩めると、外筒30が固定解除されて外筒30を昇降できる。
【0034】
第2位置調節機構27は、外筒30に内筒31を摺動自在に内嵌させ、外筒30の上部に筒体20の長さ方向に形成されたスリット30aと調節ネジ35とを有する。調節ネジ35は摘み部35aと段部35bとネジ部35cとを有し、ネジ部35cがスリット30aを挿通して内筒31に螺合され、調節ネジ35を締めると、段部35bと内筒31により外筒30が挟持された状態になった内筒31が固定され、調節ネジ35を緩めると、内筒31が固定解除されて内筒31を昇降できる。尚、第1位置調節機構26が、投影レンズ25を昇降させる投影レンズ昇降手段に相当する。
【0035】
発光部21からの光は、照明光学系レンズ群23を通って透過部24に照射され、スリットからなるマーク形成パターン33を通過し、投影レンズ25を通って加工布Wの上面に照射されて、図2、図7に示すように、加工布Wの上面に、針落ち基準点Pを中心とする円Maと針落ち基準点Pで交差する十字Mbからなる縫製基準マークMが投影される。
【0036】
ここで、縫製基準マークM(円Ma及び十字Mb)のサイズを所望のサイズに変更して設定可能なマークサイズ設定機構36が設けられ、このマークサイズ設定機構36は、第1位置調節機構26により外筒30と一体的に投影レンズ25を昇降させ、縫製基準マークMのサイズを変更可能に構成されている。
【0037】
つまり、第1位置調節機構26により、投影レンズ25を上昇させると、縫製基準マークMのサイズが大きくなり、投影レンズ25を下降させると、縫製基準マークMのサイズが小さくなる。このように、投影レンズ25の昇降に応じて縫製基準マークMのサイズを所望の大きさに変更し、更に、第2位置調節機構27により、投影レンズ25に対して透過部24を昇降させてピントを調節する。これにより、綺麗な縫製基準マークMを加工布Wの上面に投影可能になる。
【0038】
制御装置16は、投影スイッチ9のオンオフ操作毎に発光部21の点灯と消灯の制御を交互に行い、例えば、発光部21を点灯させた状態で、図8に示すように、液晶ディスプレイ6に、現在設定され投影されている縫製基準マークMの色を表示させる。
【0039】
そこで、縫製基準マークMの色を変更したい場合、タッチパネル7の「色変更」の表示部分をタッチすることで、制御装置16が、液晶ディスプレイ6に図9のマーク色変更画面を表示させ、このマーク色変更画面において、例えば、変更可能な色(「青」「赤」「白」)を表示させ、タッチパネル7の希望色(「青」又は「赤」又は「白」)の表示部分をタッチして入力し、「確定」の表示部分をタッチすることで、制御装置16が、入力された希望色で発光部21を点灯させる。
【0040】
尚、制御装置16とタッチパネル7が、投影装置15により投影する縫製基準マークMの色を、複数色の何れかの色に変更するマーク色変更手段に相当する。尚、発光部21が消灯状態で、制御装置16は、発光部21が前回消灯直前に点灯していた色を記憶部に記憶しておいて、次に、投影スイッチ9がオン操作されたときに、その記憶された色で発光部21を点灯させるようにしてもよい。
【0041】
以上説明した加工布位置決めガイド装置18の作用・効果について説明する。
針落ち基準点Pに対して斜め上方から照射して、ベッド部1に載置された加工布Wの上面に、針落ち基準点Pを中心とする円Maを含む縫製基準マークMを投影する投影装置15を備えたので、図10〜図12に示すように、縫製の際に、縫製基準マークMの円Maの外周部が加工布Wに既に形成された縫目Se(形成済縫目Se)に略接するように、加工布Wを確実に位置決めすることができ、この状態を維持するように加工布Wを送ることで、種々の形状の(湾曲形状を含む)形成済縫目Seから一定の縫目間隔(円Maの半径)を空けて縫目Sを簡単に確実に形成することができる。
【0042】
また、図示していないが、縫製の際に、縫製基準マークMの円Maの外周部が加工布Wの端縁に略接するように、加工布Wを確実に位置決めすることができ、この状態を維持するように加工布Wを送ることで、種々の形状の(湾曲形状を含む)加工布Wの端縁から一定の縫目間隔(円Maの半径)を空けて縫目を簡単に確実に形成することができる。
【0043】
ここで、投影装置15は、縫針12の針落ち基準点Pに対して前方且つ左方の斜め上方から照射するが、押え足14の布押え部はリングの前半部を切り欠いた半リング状に形成されているので、縫製基準マークMの少なくとも前半部は確実に加工布Wの上面に投影されるため、また、縫製の際に加工布Wは後方へ送られるため、また、作業者が押え足14の邪魔になることなく、縫製基準マークMの少なくとも前半部を視認できるため、縫製の際に、縫製基準マークMの円Maの外周部が形成済縫目Seや加工布Wの端縁に略接するように、加工布Wを確実に位置決めし、この状態を維持するように加工布Wを確実に送ることが可能になる。
【0044】
故に、例えば、図10、11に示すように、加工布Wに所望の図形の縫目から外側に一定の縫目間隔を空けた縫目を複数形成して、波紋状の模様を形成するような手法のキルト縫いを容易に行うことができ、このようなキルト縫いにより綺麗な模様を形成する作品を作ることができる。
【0045】
縫製基準マークMの円Maのサイズを所望のサイズに変更して設定可能なマークサイズ設定機構36を備えたので、前記縫目間隔を所望の間隔に変更することができる。例えば、図10に示すように、縫目間隔が狭い模様を形成したい場合には、円Maのサイズを小さくし、図11に示すように、縫目間隔が広い模様を形成したい場合には、円Maのサイズを大きくすることができる。
【0046】
投影装置15は、上端部に発光部21を有する伸縮可能な筒体20と、筒体20の長さ方向途中部に設けられ縫製基準マークMを形成する為のマーク形成パターン33が形成された透過部24と、筒体20の下端部に設けられた投影レンズ25とを備えたので、加工布Wの上面に縫製基準マークMを確実に投影することができる。
【0047】
更に、投影レンズ25を昇降させる投影レンズ昇降手段として、第1位置調節機構26を備え、マークサイズ設定機構36は、第1位置調節機構26により投影レンズ25を昇降させ、縫製基準マークMのサイズを変更可能に構成したので、縫製基準マークMのサイズ変更を簡単に行うことができる。
【0048】
投影装置15は、加工布Wに対して斜め上方から照射される縫製基準マークMの円Maが真円形になるように、マーク形成パターン33の形状が設定されているため、加工布Wの上面に真円形の円Maを含む縫製基準マークMを確実に投影できる。更に、投影装置15を頭部4に内蔵される機構部品と干渉しない位置に設置し、加工布Wに対して斜め上方から縫製基準マークMを照射しても、照射される縫製基準マークMの円が真円形になるので、加工布Wの端縁や形成済縫目と針落ち基準点Pとの距離(即ち、円の半径)が全周に亙って正確に一定となる縫製基準マークMを投影することができる。
【0049】
縫製基準マークMは、針落ち基準点Pで交差する十字Mbを含むので、加工布Wの上面に針落ち基準点Pを表示することができ、加工布Wの上面の針落ち基準点Pを明確且つ容易に視認することができる。投影装置15により投影する縫製基準マークMの色を、複数色の何れかの色に変更することができるので、加工布Wの色とは異なる色の縫製基準マークMを、加工布Wの上面に投影できるので、縫製基準マークMの視認性を高めて見易くすることができ、つまり、種々の色の加工布Wに適用可能になる。
【実施例2】
【0050】
図13、図14に示すように、加工布位置決めガイド装置18Aは、投影装置15、制御装置16A、投影スイッチ9、タッチパネル7、昇降位置検出機構40を備えている。制御装置16Aと昇降位置検出機構40以外の、投影装置15、投影スイッチ9、タッチパネル7、及び、ミシンMSの構成は、実施例1と同じであるので同一符号を付して説明を省略する。但し、投影装置15の外筒30が摺動自在に内嵌されたホルダ4dには、投影装置15の筒体20の長さ方向にスリット4fが形成されている。
【0051】
昇降位置検出機構40は、投影装置15の外筒30の昇降位置を検出するものであり、ポテンショメータ41、揺動アーム42、連結軸部材43を備えている。ポテンショメータ41は、ホルダ4dが固定された機枠4cに固定され、電気コード41aにより制御装置16Aに接続され、ポテンショメータ41の入力軸41bに揺動アーム42の基端部が固定されている。揺動アーム42には長穴42aが形成され、連結軸部材43は外筒30に固定され、スリット4fを挿通して長穴42aに係合されている。
【0052】
制御装置16Aは、実施例1の制御装置16と同様に、図15に示すように、液晶ディスプレイ6に、現在設定され投影されている縫製基準マークMの色を表示させ、タッチパネル7の「色変更」の表示部分をタッチすることで、図9のマーク色変更画面を表示させて、マーク色を変更することができる。
【0053】
更に、制御装置16Aは、図15に示すように、液晶ディスプレイ6に、現在設定され投影されている縫製基準マークMのサイズを表示させる。この場合、制御装置16Aは、ポテンショメータ41からの信号に基づいて、縫製基準マークMの半径を演算し、その半径の数値と、現在設定され投影されているサイズ、形状、色の縫製基準マークM自体を表示させる。尚、液晶ディスプレイ6と制御手段16Aが、マークサイズ設定機構36で設定された縫製基準マークMのサイズを表示するマークサイズ表示手段に相当する。
【0054】
この加工布位置決めガイド装置18Aによれば、マークサイズ設定機構36で設定された縫製基準マークMのサイズを表示するので、この縫製基準マークMのサイズを容易に確認することができる。その他は実施例1と同様の作用・効果を奏する。
【実施例3】
【0055】
図16、図17に示すように、加工布位置決めガイド装置18Bは、投影装置15B、制御装置16B、投影スイッチ9、タッチパネル7、昇降駆動機構50を備えている。投影装置15Bと制御装置16Bと昇降駆動機構50以外の、投影スイッチ9、タッチパネル7、及び、ミシンMSの構成は、実施例1と同じであるので同一符号を付して説明を省略する。但し、投影装置15Bの外筒30が摺動自在に内嵌されたホルダ4dには、投影装置15の筒体20の長さ方向にスリット4fが形成されている。
【0056】
投影装置15Bは、実施例1の投影装置15において、第1位置調節機構26のスリット4e、調節ネジ34を省略したものであり、その代わりに、昇降駆動機構50が設けられている。昇降駆動機構50は、投影装置15Bの外筒30を昇降駆動し、その外筒30の昇降位置を保持可能なものであり、ステッピングモータ51、揺動アーム52、連結軸部材53、初期位置スイッチ54を備えている。
【0057】
ステッピングモータ51は、ホルダ4dが固定された機枠4cに固定され、電気コード51aにより制御装置16Bに接続され、ステッピングモータ51の出力軸51bに揺動アーム52の基端部が固定されている。揺動アーム52には長穴52aが形成され、連結軸部材53は外筒30に固定され、スリット4fを挿通して長穴52aに係合されている。初期位置スイッチ54は、揺動アーム52が近接するようにホルダ4dに固定された近接スイッチからなり、電気コード54aにより制御装置16Bに接続されている。
【0058】
制御装置16Bは、実施例1の制御装置16と同様に、図15に示すように、液晶ディスプレイ6に、現在設定され投影されている縫製基準マークMの色を表示させ、タッチパネル7の「色変更」の表示部分をタッチすることで、図9のマーク色変更画面を表示させて、マーク色を変更することができる。
【0059】
また、制御装置16Bは、実施例2の制御装置16Bと同様に、図15に示すように、液晶ディスプレイ6に、現在設定され投影されている縫製基準マークMのサイズを表示させる。この場合、制御装置16Bは、初期位置スイッチ54からの信号とステッピングモータ51の駆動量に基づいて、縫製基準マークMの半径を演算し、その半径の数値と、現在設定され投影されているサイズ、形状、色の縫製基準マークM自体を表示させる。
【0060】
更に、縫製基準マークMのサイズを所望のサイズに変更したい場合、タッチパネル7の「サイズ変更」の表示部分をタッチすることで、制御装置16Bが、液晶ディスプレイ6に、図19に示すマークサイズ変更画面を表示させ、このマークサイズ変更画面において、例えば、希望サイズの半径の数値と、その数値を変更する為の操作部(「△」「▽」)を表示させる。
【0061】
タッチパネル7の操作部(「△」「▽」)の表示部分をタッチして希望サイズの半径の数値を表示させて、「確定」の表示部分をタッチすることで、制御装置16Bが、その希望サイズの縫製基準マークMを投影できるように、ステッピングモータ51を駆動制御して、外筒30と共に投影レンズ25を昇降させる。
【0062】
尚、タッチパネル7が、縫製基準マークMのサイズを入力するマークサイズ入力手段に相当し、ステッピングモータ51が、マークサイズ入力手段で入力されたサイズに応じて投影レンズ昇降手段を駆動するアクチュエータに相当し、縫製基準マークMの円Maのサイズを所望のサイズに変更して設定可能なマークサイズ設定機構36Bが、このタッチパネル7とステッピングモータ51を備えている。
【0063】
この加工布位置決めガイド装置18Bによれば、マークサイズ設定機構36Bは、縫製基準マークMのサイズを入力するタッチパネル7と、タッチパネル7で入力されたサイズに応じて投影レンズ25を昇降駆動するステッピングモータ51とを備えたので、作業者がタッチパネル7により所望の縫製基準マークMのサイズを入力するだけで、ステッピングモータ51により投影レンズ25が昇降駆動されて、所望のサイズの縫製基準マークMを自動的に迅速に投影することができる。その他は実施例1,2と同様の作用・効果を奏する。
【0064】
実施例1〜3の加工布位置決めガイド装置18〜18Bを次のように変更してもよい。
1]投影装置15,15Bが、加工布Wに対して斜め上方から照射される縫製基準マークMの円Maが真円形になるように、透過部24を内筒31の長さ方向に対して所定角度傾斜する姿勢に配設し、円形成パターン33aを円形状に形成するようにしてもよい。
2]マスク部材32の代わりに透明板を設け、この透明板に光が透過しにくい色(黒色等)で着色してマーク形成パターン33を形成してもよい。
【0065】
3]実施例2の昇降位置検出機構40又は実施例3の昇降駆動機構50において、ポテンショメータ41又はステッピングモータ51と外筒30との連結については、揺動アーム42,52を廃止して、ラック・ピニオンを介して連結してもよい。
4]押え足14としてリング状のものを適用してもよい。また、押え足14の布押え部を透明樹脂材料で形成してもよい。
5]投影装置15,15Bは、縫製基準マークMをレーザー光で投影する装置であってもよい。
6]その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記開示事項以外の種々の変更を付加して実施可能であり、また、本発明の加工布位置決めガイド装置については、種々のミシンに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例1のミシンの斜視図である。
【図2】加工布をセットした状態で頭部の一部を切り欠いたミシンの斜視図である。
【図3】ミシンの制御系のブロック図である。
【図4】投影装置の斜視図である。
【図5】投影装置の縦断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】縫製基準マークの平面図である。
【図8】縫製基準マークの内容表示画面である。
【図9】マーク色変更画面である。
【図10】縫製の際に縫製基準マークを利用した状態の図である。
【図11】縫製の際に縫製基準マークを利用した状態の図である。
【図12】縫製の際に縫製基準マークを利用した状態の図である。
【図13】実施例2の投影装置の斜視図である。
【図14】ミシンの制御系のブロック図である。
【図15】縫製基準マークの内容表示画面である。
【図16】実施例3の投影装置の斜視図である。
【図17】ミシンの制御系のブロック図である。
【図18】縫製基準マークの内容表示画面である。
【図19】マークサイズ変更画面である。
【図20】従来技術に係る縫製の際に押え足を利用した状態の図である。
【図21】別の従来技術に係る縫製の際に押え足を利用した状態の図である。
【符号の説明】
【0067】
MS ミシン
M 縫製基準マーク
Ma 円
Mb 十字
P 針落ち基準点
W 加工布
1 ベッド部
6 液晶ディスプレイ
7 タッチパネル
15,15B 投影装置
16,16A,16B 制御装置
18,18A,18B 加工布位置決めガイド装置
20 筒体
21 発光部
25 投影レンズ
26 第1位置調節機構
27 第2位置調節機構
33 マーク形成パターン
36,36B マークサイズ設定機構
50 昇降駆動機構
51 ステッピングモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンのベッド部に載置された加工布の上面に縫製基準マークを投影して縫製の際に前記加工布の位置決めをガイドするミシンの加工布位置決めガイド装置において、
前記ミシンの縫針の針落ち基準点に対して斜め上方から照射して、前記加工布の上面に前記針落ち基準点を中心とする円を含む縫製基準マークを投影する投影装置を備えたことを特徴とするミシンの加工布位置決めガイド装置。
【請求項2】
前記縫製基準マークの円のサイズを所望のサイズに変更して設定可能なマークサイズ設定手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のミシンの加工布位置決めガイド装置。
【請求項3】
前記マークサイズ設定手段で設定された前記縫製基準マークのサイズを表示するマークサイズ表示手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載のミシンの加工布位置決めガイド装置。
【請求項4】
前記投影装置は、上端部に光源を有する伸縮可能な筒体と、前記筒体の長さ方向途中部に設けられ前記縫製基準マークを形成する為のマーク形成パターンが形成された透過部と、前記筒体の下端部に設けられた投影レンズと、前記投影レンズを昇降させる投影レンズ昇降手段とを備え、
前記マークサイズ設定手段は、前記投影レンズ昇降手段により前記投影レンズを昇降させて前記縫製基準マークのサイズを変更可能に構成されたことを特徴とする請求項2又は3に記載のミシンの加工布位置決めガイド装置。
【請求項5】
前記マークサイズ設定手段は、前記縫製基準マークのサイズを入力するマークサイズ入力手段と、前記マークサイズ入力手段で入力されたサイズに応じて前記投影レンズ昇降手段を駆動するアクチュエータとを備えたことを特徴とする請求項4に記載のミシンの加工布位置決めガイド装置。
【請求項6】
前記投影装置は、前記加工布に対して斜め上方から照射される前記縫製基準マークの円が真円形になるように、前記マーク形成パターンの形状が設定されているか、或いは、前記筒体に対する前記透過部の姿勢が所定の姿勢に設定されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のミシンの加工布位置決めガイド装置。
【請求項7】
前記縫製基準マークは、前記針落ち基準点で交差する十字を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のミシンの加工布位置決めガイド装置。
【請求項8】
前記投影装置により投影する前記縫製基準マークの色を、複数色の何れかの色に変更するマーク色変更手段を備えたことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のミシンの加工布位置決めガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−229344(P2007−229344A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57286(P2006−57286)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】