説明

ミシン

【課題】 持上げ装置とリフト位置調節装置とを設計する労力を低減させるミシンを提供する。
【解決手段】 ミシンは、縫っている間縫い生地を押さえつけるための少なくとも1つのソーイングフット(10)を有している。持上げ装置(13)はソーイングフット(10)を持上げるために機能する。リフト位置調節装置(30)はソーイングフット(10)の送りリフトを設定するために機能する。持上げ装置(13)とリフト位置調節装置(30)とは、共通の駆動装置(22)を有している。以上により、持上げ装置とリフト位置調節装置とを設計する労力が低減されるミシンをもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1前段(プリアンブル部分)に記載のミシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種類のミシンは明白な先使用から周知である。さらに特許文献1、及び特許文献2、及び特許文献3のミシンが周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE19820646A1
【特許文献2】DE68909031T2
【特許文献3】DE102006011495A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、持上げ装置とリフト位置調節装置とを設計する労力を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明に従い、請求項1に明記されている特徴を有しているミシンによって達成される。
【0006】
従来から周知のミシンの場合には、一方では持上げ装置のための、他方ではリフト位置調節装置のための調節シャフトを別個に備えており、一方では持上げ装置のための、他方ではリフト位置調節装置のための個別の駆動装置がある。本発明に従うと、この2つの装置は共通駆動もされ得ることが実現する。機械的に、2つの装置を共通駆動装置に対して結合することは、相対的にほとんど労せずに達成することが可能である。1つの駆動装置を不要にすることが可能であるため、構成は全体的に費用がかからず、よりコンパクトである。ソーイングフットは、編み機から周知の種類である押さえつけるものとして構成されることが可能である。ソーイングフットは、押さえと送りフットとの2つの部分に構成されることが可能である。持上げ装置及び/又はリフト位置調節装置は、夫々の装置に割り当てられている、対応する調節シャフトが調節シャフトの長手方向軸の周りの回転位置を介して、持上げ位置及び/又はリフト位置のための所望する調節値を設定するように構成されることが可能である。この、調節シャフトの回転位置を介する調節値の設定は、例えば調節シャフトの偏心配置を通じて実現されることが可能である。
【0007】
共通駆動装置は、ステッピングモータ駆動として構成されることが可能である。これにより、送りリフトが細かい段階で設定されるために様々な持上げ位置及び/又は様々なリフト調節が可能となる。これを、関連する縫製環境に適応させるために用いることが可能である。厚い生地を一緒に縫うとき、高い持上げ位置をプリセットすることができる。様々な層数の多層に重なった縫い生地を一緒に縫うとき、縫い生地の段を縫い越えるために、リフト位置を細かく調節して送りリフトを拡張設定することができる。
【0008】
請求項3に記載のカムディスクは、一方では持上げ装置の、他方ではリフト位置調節装置の、駆動装置のモータシャフトに対する機械的結合が、費用をかけずに実現されることを確実にする。カムディスクは、カムディスクの支持シャフトの周りを同軸に延びているカムディスクセクションと、上述の支持シャフトの周りを螺旋状に延びているカムディスクセクションとを備え、上述の支持シャフトの周りを螺旋状に延びているカムディスクセクションは、同軸に延びているカムディスクセクションにつながっている。カムディスクと共に制御されるべきアバットメントセクションは同軸に延びているカムディスクセクションを介してカムディスクに接している限り、このカムディスクは影響を受けないままである。このようなカムディスクの代わりに、セグメント化された歯車を用いることもでき、これらの歯車は、常に歯車セグメントのうちの1つのみが制御されるべきセクションと噛み合うように、駆動モータシャフトに配され、相関関係をもって回転する。この、セグメント化された歯車での実施例の場合もまた、一方で持上げ装置を、他方でリフト位置調節装置を最大限に制御するために駆動モータシャフトの最大回転を小さく、例えば360°より小さく保つことができる。共通駆動の場合に、相互作用するように互いに接している部品の遊隙が無いことは、スプリングプレテンショニングを通じて確実にされることが可能である。2つのカムディスクに代わるもう1つの変形例は、レバー機構を通じて実現されることができる。このレバー機構は、駆動モータのモータシャフトに配されているレバーが、第1旋回方向例えば時計回りでは持上げ装置がソーイングフットを持上げ、かつ第2旋回方向例えば反時計回りが加わるとリフト位置調節装置がこの2つの装置のうちの1つを夫々始動させ、相互作用するように構成される。2つのカムディスクに代わるもう1つの変形例は、2つの歯車列伝動装置を通じて実現されることができ、これらの歯車列伝動装置は、空気圧で、又は機械的に、又は電気的に作動させるクラッチにより相互分離させることが可能である。歯車列伝動装置は、歯車の対、又は歯付き/Vベルト、又は連結歯車、又はカム歯車として実現可能である。この変形例の場合には、駆動モータの回転角は、360°より大きくすることもできる。これは、より大きい伝達比を有するために用いることができるので、駆動モータシャフトにより伝達されるトルクは低減される。
【0009】
請求項4に記載の配置は、一方で持上げ装置が作動する、他方で送りリフト調節が作動する機能の分離を確実にする。次に持上げ装置は、リフト位置調節装置から独立して動作するので、これらの装置は互いに障害になることはない。
【0010】
請求項5に記載のカムディスクの1つの実施例及び配置は、持上げ装置の作動がリフト位置調節装置の作動から共通駆動を介して機能を分離することに対して特に好適である。ゼロ位置から動き出すと、両機能は、小さい絶対回転角で、ステッピングモータのモータシャフトの回転により達成されることができる。
【0011】
請求項6及び7に記載の調節シャフトは、一方で持上げ装置の、他方でリフト位置調節装置の、確実で堅固な調節に適していると実証されてきた。代わりに、このような調節シャフトを備えない変形例もまた実現可能である。例えば、持上げ装置は、ソーイングフットの持上げに影響を及ぼすレバーが共通駆動の駆動シャフトに直接関連するように構成されることができる。
【0012】
請求項8に記載のカムディスクは、さらに製造コストを低減する。
【0013】
請求項9に記載の最大調節範囲は、共通駆動によって満足させるべき条件を低減する。
【0014】
請求項10に記載のベアリングは、モータシャフトの確実なガイダンスを確実にするので、これに応じてモータシャフトの駆動側ベアリングによって満足させるべき条件が低減される。
【0015】
請求項11〜13に記載の共通駆動の変形例の利点は、本発明に従う共通駆動に関してすでに上述した利点に一致する。
【0016】
本発明の1つの実施例は、以下でより詳細に図面に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】部分的に内部の詳細を明らかにしたミシンのハウジングの概略正面図である。
【図2】ゼロ位置において共通駆動装置を有している、ミシンのソーイングフットを持上げるための持上げ装置と、ソーイングフットの送りリフトを設定するためのリフト位置調節装置とを伴った、ミシンの機械部品のアセンブリを示す透視図である。
【図3】「最大リフト」位置においてリフト位置調節装置を伴ったアセンブリを示す、図2と類似の図である。
【図4】「持上げられたソーイングフット」位置において持上げ装置を伴ったアセンブリを示す、図2と類似の図である。
【図5】持上げ装置とリフト位置調節装置とのための共通駆動の回転位置の関数として、持上げ位置と送りリフトとを示すグラフである。
【図6】ゼロ位置において共通駆動装置を有しているもう1つの実施例での、ミシンのソーイングフットを持上げるための持上げ装置とソーイングフットの送りリフトを設定するためのリフト位置調節装置とを伴った、ミシンの機械部品のアセンブリを示す、図2と類似の図である。
【図7】ゼロ位置において共通駆動装置を有しているもう1つの実施例での、ミシンのソーイングフットを持上げるための持上げ装置とソーイングフットの送りリフトを設定するためのリフト位置調節装置とを伴った、ミシンの機械部品のアセンブリを示す、図2と類似の図である。
【図8】ゼロ位置において共通駆動装置を有しているもう1つの実施例での、ミシンのソーイングフットを持上げるための持上げ装置とソーイングフットの送りリフトを設定するためのリフト位置調節装置とを伴った、ミシンの機械部品のアセンブリを示す、図2と類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ミシンの図1に示されているのはハウジング1であり、このハウジング1は、スタンド2と、アーム3と、ヘッド4とを有し、図1には示されていないベースプレートを一緒にすると、全体でミシンのC形配置形状となる。図示されていないメインシャフトを介して駆動されるアームシャフト5は針棒6を駆動し、この針棒6はこの針棒6に堅固に取り付けられているミシン針7を有し、上下移動をして、針7はステッチプレート9のステッチ穴8を貫通し、このステッチプレート9は図示されていない支持プレートの一部を形成し、そしてこの支持プレートはミシンのベースプレートの上部に相当する。
【0019】
縫っている間に縫い生地を押さえつけかつ送りをさせるために、ミシンはソーイングフット10を有し、このソーイングフット10は押さえ11と送りフット12とに分かれる。押さえ11は、縫っている間に縫い生地を押さえつけるために機能する。送りフット12は、ステッチプレート9の長手方向延長部分に平行している、縫製方向に沿って、縫い生地を移動させるために機能する。
【0020】
持上げ装置13は総称であり、ソーイングフット10を持上げるために機能する。この持上げ装置は持上げシャフト14を有し、この持上げシャフト14と、第1持上げシャフト回転レバー15が固定して回転するようにソーイングフット側に連結されている。次に、第1持上げシャフト回転レバー15は、詳細に図示されてはいない連結部を介して、一方では送りフット棒16に対して、他方ではソーイングフット10の押さえ棒17に対して連結されている。第1持上げシャフト回転レバー15とは反対側の端にある、持上げシャフト14の自由端には、固定して回転するように第2持上げシャフト回転レバー18が配されている。図示されていないプレテンショニングスプリングを介して、第2持上げシャフト回転レバー18のアバットメント(abutment)ボルト19が、持上げシャフトカムディスク20にプレスされている。
【0021】
図2は持上げ装置13の中間位置を示しており、持上げシャフトカムディスク20は、アバットメントボルト19がステッピングモータ22のモータシャフト21に対して最小間隔を有するように配向されている。持上げシャフトカムディスク20は、固定して回転するようにモータシャフト21と連結されている。持上げシャフトカムディスク20の持上げシャフト制御カム壁23にはアバットメントボルト19が接しており、この壁23はモータシャフト21の長手方向軸の周りを螺旋状に延びている。
【0022】
さらに、持上げシャフトカムディスク20から間隔をおいて、リフト位置調節装置カムディスク24が、モータシャフト21と固定して回転する配置で取り付けられている。カムディスク20はモータシャフト21と同軸であるカムディスクセクションを、カムディスク24はこの同軸カムディスクセクションに連続してつながっている螺旋形カムディスクセクションを備えている。
【0023】
図で分解して示されているグラブネジ又は段ネジ25を介して、カムディスク20、24は、固定して回転するようにモータシャフト21に位置づけられている。対応するグラブネジ25は、図2〜4に示されているアセンブリの多様な他のシャフト部品を固定して回転させるために機能する。2つのカムディスク20、24は、同じ形状のパーツである。
【0024】
リフト位置調節装置カムディスク24は、持上げシャフトカムディスク20とは逆向きでモータシャフト21に取り付けられている。この逆向きとは、リフト位置調節装置制御カム壁26の螺旋形状が持上げシャフト制御カム壁23とは逆を向くような配向である。さらに、2つのカムディスク20、24は、互いに対して逆向きでモータシャフト21に取り付けられているので、2つのカムディスク20、24の自由端は、モータシャフト21の周りの円周方向に互いに対して180°を成している。
【0025】
リフト位置調節装置カムディスク24に、プレテンションされた状態で、図示されていないプレテンショニングスプリングを介して、リフト位置調節装置回転レバー28のアバットメントボルト27が接している。
【0026】
リフト位置調節装置回転レバー28は、固定して回転するようにリフト位置調節装置(総称)30のリフト歯車列シャフト29と連結されている。リフト歯車列31を介してリフト歯車列シャフト29は、リフト位置調節装置30のリフトシャフト32と作用し合う連結をしている。アームシャフト5に配されているリフト偏心輪33とともに、リフト歯車列31は、送りフット12と押さえ11との送りリフトのリフト位置に影響を及ぼす。
【0027】
図2に従う中間位置では、リフト位置調節装置30のアバットメントボルト27は、モータシャフト21に対して最小間隔を有するようにリフト位置調節装置制御カム壁26に接している。この中間位置ではソーイングフット10は持上げられないで、送りフット12の送りリフトはゼロである。
【0028】
アームシャフト5と、持上げシャフト14と、モータシャフト21と、リフト歯車列シャフト29と、リフトシャフト32とは、全て互いに平行に延びている。
【0029】
図2に従う中間位置から動き出して、図3に従う「最大リフト」位置ではステッピングモータ22はモータシャフト21を図3の矢印34の方向の通りに180°回転させたところである。よって図3に従う透視図では、2つのカムディスク20、24は、時計回りに、すなわち図2に従う中間位置から180°回転したところである。持上げシャフト回転レバー18のアバットメントボルト19は、持上げシャフトカムディスク20の、モータシャフト21に同軸であるセクション35に接しているため、第2持上げシャフト回転レバー18の位置は中間位置に対して変化していない。従ってソーイングフット10は持上げられないままである。
【0030】
「最大リフト」位置ではリフト位置調節装置30のアバットメントボルト27は、リフト位置調節装置制御カム壁26に接しており、モータシャフト21に対して最大間隔を有している。よって、図3に従う位置ではリフト位置調節装置回転レバー28は、反時計回りに最大旋回するので、これに応じてリフト歯車列シャフト29は、中間位置から反時計回りに回転する。このリフト歯車列シャフト29の位置ではリフト歯車列31は、送りフット12と押さえ11との送りリフトを最大化にする。
【0031】
図4は「持上げられたソーイングフット」位置におけるアセンブリを示しており、図2に従う中間位置から動き出して、ステッピングモータ22がモータシャフト21を図4の矢印36の方向の通りに180°回転させたところである。よって、図4に従う透視図では、モータシャフト21は、中間位置から動き出して、図4に従う位置に向かって、すなわち反時計回りに180°回転したところである。この調節運動の間にリフト位置調節装置30のアバットメントボルト27は、リフト位置調節装置カムディスク24の、モータシャフト21に同軸であるセクション37の上を移動するので、図4に従う「持上げられたソーイングフット」位置ではアバットメントボルト27は図2に従う中間位置と比べて位置を変化させていない。従って、図4に従う「持上げられたソーイングフット」位置では送りリフトはゼロのままである。図4に従う位置では持上げシャフトアバットメントボルト19は持上げシャフト制御カム壁23に接しており、ボルト19はモータシャフト21に対して最大間隔を有している。
【0032】
「持上げられたソーイングフット」位置では第2持上げシャフト回転レバー18と持上げシャフト14とは時計回りに旋回する。これに対応して第1持上げシャフト回転レバー15も旋回する。この連係を介してレバー15は送りフット棒16と押さえ棒17とを上方へ変位させるのでソーイングフット10は持上げられる。
【0033】
図5は、モータシャフト21の、回転角nMSに従属する持上げ及びリフト位置を調節する間の状態をグラフで再度示している。図5の横軸は、単位が度であるモータシャフト21の回転角を示し、0°の中間位置から始まっている。図5の実線は、持上げシャフト14の回転角nRSがモータシャフト21の回転角に対して従属していることを示している。マイナスの回転角の場合、すなわち図2に従う位置と図3に従う位置との間のモータシャフト21の回転範囲では、持上げシャフト14は全く回転しないので、ソーイングフット10は持上げられないままである。モータシャフト21がプラスの回転角の場合、すなわち図2に従う位置と図4に従う位置との間のモータシャフト21の回転範囲では、持上げシャフト14の回転角はモータシャフト21の回転角に直線を成して従属している。モータシャフト21が150°の回転角の場合、持上げシャフト14は絶対値約52°で旋回する。
【0034】
図5の点線は、リフト歯車列シャフト29の回転角nLSがモータシャフト21の回転角に対して従属していることを示している。モータシャフト21がプラスの回転角の場合、リフト歯車列シャフト29は中間位置のままである、すなわち旋回しない。モータシャフト21がマイナスの回転角の場合、リフト歯車列シャフト29の回転又は旋回角は、モータシャフト21の回転角に直線を成して従属している。モータシャフト21がー150°の回転角の場合、約55°のリフト歯車列シャフト29の旋回角となる。
【0035】
よってモータシャフト21の所定回転角に対して、2つのカムディスク20、24のうちの1つのみが、持上げ装置13又はリフト位置調節装置30を変位させるために作動する。
【0036】
ソーイングフットが持上げられている状態で、送りリフトは常にゼロに等しい事実があることから、持上げている間ソーイングフット10の動作不良は間違いなく回避される。
【0037】
2つのカムディスク20、24の間にはラジアルベアリング38が配されており(図1参照)、このベアリング38はハウジング1に対してモータシャフト21を支持している。ラジアルベアリング38は、ボールベアリングとして構成されている。ラジアルベアリング38のブッシュは図示されていない。
【0038】
以下には、一方では持上げ装置13に対する、他方ではリフト位置調節装置30に対する、ステッピングモータ22の機械的連結の他の3つの実施例が図6〜8に基づいて説明されている。図1〜5に関してすでに上述した実施例に対応する部品は、同じ符号であり、ここでは詳細には述べない。
【0039】
図6に従う実施例の場合には、ステッピングモータ22から、一方では持上げシャフト14へ、他方ではリフト歯車列シャフト29へ、動力伝達は歯付きセグメントを介している。2つの歯付きセグメント39、40は、ステッピングモータ22のモータシャフト21に、互いに間隔をおいて固定して回転するように軸方向に取り付けられている。第1ステッピングモータ歯付きセグメント39は、持上げシャフト歯付きセグメント41と噛み合っており、次に、このセグメント41は、固定して回転するように持上げシャフト14に取り付けられている。第2ステッピングモータ歯付きセグメント40は、リフト歯車列シャフト歯付きセグメント42と噛み合っており、このセグメント42は、リフト歯車列シャフト29に固定して回転するように取り付けられている。
【0040】
図6は、ソーイングフット10が持上げられていなく送りフット12の送りリフトがゼロであるゼロ位置におけるアセンブリを示している。図6のモータシャフト21が反時計回り(矢印43の方向)に回転するとき、持上げ装置13は稼働しソーイングフット10は持上げられる。このように回転する間歯付きセグメントの対40,42は影響を受けないままであるので、リフト位置調節装置30は稼働せず、ソーイングフット10は持上げられた状態で送りフット12の送りリフトはゼロのままである。ステッピングモータ22のモータシャフト21の時計回りの回転(矢印44の方向)の場合には、図6に従う中間位置から動き出して、リフト歯車列シャフト29は噛み合っている歯付きセグメント40、42を介して回転し、送りフット12の送りリフトはゼロ以外で設定される。この時計回りの回転の間歯付きセグメント39、41の対がまた影響を受けないままになるので、送りリフトは設定され、ソーイングフット10は持上げられないままである。
【0041】
歯付きセグメント39は歯を備えている円周部分を有しており、この歯はモータシャフト21の全円周の約4分の1、すなわち90°に広がっている。歯付きセグメント40の場合には歯は同じように90°の円周部分に広がっている。歯付きセグメント41、42の場合には歯は夫々約60°の円周部分に広がっている。
【0042】
歯を保持している歯付きセグメント39〜42の円周部分を介して、並びにこの歯付きセグメントを保持している円周部分の半径を介して、並びに歯を備えている部分の幅を介して、モータシャフト21の回転と、各駆動されるシャフト14又は29の回転との間の伝達比を設定することができる。
【0043】
歯付きセグメントの互いの初期の噛み合いは、留め具とプレテンショニングスプリングとの図示されていない配置形状を介して確実にされる。
【0044】
図7に従う実施例の場合には、モータシャフト21は、レバー機構を介して、一方では持上げシャフト14と、他方ではリフト歯車列シャフト29と連結されており、モータシャフト21は互いに間隔をおいて軸方向に配されている2つのレバー45、46を保持している。レバー45、46は、モータシャフト21に固定して回転するように取り付けられている。アバットメントボルト47を介してステッピングモータレバー45は、持上げシャフトレバー48と相互作用し、このレバー48は、持上げシャフト14に固定して回転するように取り付けられている。アバットメントボルト49を介してもう1つのステッピングモータレバー46は、リフト歯車列シャフトレバー50と相互作用する。このレバー50も、リフト歯車列シャフト29に固定して回転するように取り付けられている。
【0045】
図7もアセンブリの中間位置を示しており、ソーイングフット10は持上げられていなく送りフット12の送りリフトはゼロである。モータシャフト21が反時計回り(矢印43の方向)に回転するとき、これに応じて持上げ装置13は、図2〜4に従うアセンブリと図6に従うアセンブリとに関して夫々上述したように稼働する。モータシャフト21が時計回りに(矢印44の方向に)回転するとき、これに応じてリフト位置調節装置30は稼働する。
【0046】
レバー48、50が、ステッピングモータ22が稼働するにつれて、アバットメントボルト47、49から離れるとき、このレバー48、50は中間位置にとどまり、図示されていない留め具と図示されていないプレテンショニングスプリングとを介して固定される。
【0047】
アバットメントボルト47、49は緩衝材から成ることが可能であるので、図7に従うレバー機構が稼働している間ノイズの発生は最小限に抑えられる。
【0048】
レバー45、46、48、50の互いに対する相対的な長さによって、モータシャフト21から、一方では持上げシャフト14への、他方ではリフト歯車列シャフト29への動力伝達比は設定されることができる。
【0049】
図8に従う実施例の場合には、モータシャフト21の、一方では持上げシャフト14との、他方ではリフト歯車列シャフト29との駆動連結はクラッチを介して成される。図8に従う実施例の場合には、ステッピングモータシャフト21は2つのクラッチ51、52を保持しており、このクラッチ51、52は、モータシャフト21に互いに間隔をおいて軸方向に取り付けられている。モータシャフト歯車53はクラッチ51と、モータシャフト歯車54はクラッチ52と連結されている。被動歯車としての第1モータシャフト歯車53は、エンドレス伝動ベルト55を介して、持上げシャフト歯車56と伝動連結している。持上げシャフト歯車56は、固定して回転するように持上げシャフト14に取り付けられている。リフト歯車列シャフト歯車58は、固定して回転するようにリフト歯車列シャフト29に取り付けられており、もう1つのエンドレス伝動ベルト57を介して、被動歯車としての第2モータシャフト歯車54と伝動連結している。
【0050】
図8は、中間位置におけるアセンブリを示しており、ソーイングフット10は持上げられていなく、送りフット12の送りリフトはゼロである。
【0051】
2つのクラッチ51、52は、夫々、モータシャフト21の1つの回転方向だけでモータシャフト21と被動歯車53、54との間に伝動連結を設けており、これに対する逆方向では、一方向クラッチ51、52は、モータシャフト21と被動歯車53、54との間に作用し合う連結はないことを確実にする。
【0052】
クラッチ51は、モータシャフト21が反時計回りに(矢印43の方向に)回転するとき、モータシャフト21と被動歯車53との間の確実な噛み合いを保証する。この場合、モータシャフト21は持上げシャフト14を駆動するがリフト歯車列シャフト29を駆動しない。クラッチ52は、モータシャフト21が反時計回りに(矢印44の方向に)回転するとき、モータシャフト21と被動歯車54との間の確実な噛み合いを作り出す。この場合、モータシャフト21はリフト歯車列シャフト29を駆動するが持上げシャフト14を駆動しない。
【0053】
従って図8に従う動力伝達連結の機能は、図1〜7に従う実施例に関して上述した動力伝達連結の機能に一致する。
【0054】
図示されているのは歯車53、54、56、58であり、夫々同数の歯と同じ直径を有している。歯数と歯車の直径を変化させることによって、一方で持上げ装置13の、他方でリフト位置調節装置30の動力伝達比を、プリセット値まで調節することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ハウジング
2 スタンド
3 アーム
4 ヘッド
5 アームシャフト
6 針棒
7 ミシン針
8 ステッチ穴
9 ステッチプレート
10 ソーイングフット
11 押さえ
12 送りフット
13 持上げ装置
14 持上げシャフト
15、18 持上げシャフト回転レバー
16 送りフット棒
17 押さえ棒
19、27、47、49 アバットメントボルト
20 持上げシャフトカムディスク
21 モータシャフト
22 ステッピングモータ
23 持上げシャフト制御カム壁
24 リフト位置調節装置カムディスク
25 グラブネジ又は段ネジ
26 リフト位置調節装置制御カム壁
28 リフト位置調節装置回転レバー
29 リフト歯車列シャフト
30 リフト位置調節装置
31 リフト歯車列
32 リフトシャフト
33 リフト偏心輪
34、36、43、44 矢印
35、37 セクション
38 ラジアルベアリング
39、40 ステッピングモータ歯付きセグメント
41 持上げシャフト歯付きセグメント
42 リフト歯車列シャフト歯付きセグメント
45、46 ステッピングモータレバー
48 持上げシャフトレバー
50 リフト歯車列シャフトレバー
51、52 クラッチ
53、54 モータシャフト歯車
55、57 伝動ベルト
56 持上げシャフト歯車
58 リフト歯車列シャフト歯車


【特許請求の範囲】
【請求項1】
−縫っている間に縫い生地を押さえつけるための少なくとも1つのソーイングフット(10)を有し、
−ソーイングフット(10)を持上げるための持上げ装置(13)を有し、
−ソーイングフット(10)の送りリフトを設定するために持上げ装置と別個に体現されているリフト位置調節装置(30)を有し、
−一方では持上げ装置(13)が持上げ位置を設定するために付属の調節シャフト(14)を備え、他方ではリフト位置調節装置(30)がリフト位置を設定するために付属の調節シャフト(29)を備えている
ミシンであり、持上げ装置(13)とリフト位置調節装置(30)とのための共通駆動装置(22)を設けることを特徴とするミシン。
【請求項2】
駆動装置(22)がステッピングモータで形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
駆動装置(22)のモータシャフト(21)に2つのカムディスク(20、24)が取り付けられており、
−この2つのカムディスク(20、24)のうちの一方である持上げシャフトカムディスク(20)が、持上げ装置(13)と機械的に連結されていることと、
−この2つのカムディスク(20、24)のうちの他方であるリフト位置調節装置カムディスク(24)が、リフト位置調節装置(30)と機械的に連結されていることと
を特徴とする、請求項1又は2に記載のミシン。
【請求項4】
カムディスク(20、24)が、モータシャフト(21)の所定回転角に対して2つのカムディスク(20、24)のうちの1つだけが持上げ装置(13)を変位させるために又はリフト位置調節装置(30)を変位させるために稼働するように、モータシャフト(21)に形成されかつ配向されていることを特徴とする、請求項3に記載のミシン。
【請求項5】
カムディスク(20、24)が、駆動装置(22)の回転の第1方向に2つのカムディスク(20、24)のうちの一方が、かつ駆動装置(22)の回転の第2方向に2つのカムディスク(20、24)のうちの他方が稼働するように、モータシャフト(21)に形成されかつ配向されていることを特徴とする、請求項4に記載のミシン。
【請求項6】
持上げ装置(13)が調節シャフト(14)を備え、この調節シャフト(14)が稼働している持上げシャフトカムディスク(20)の変位を通じて長手方向軸の周りを旋回可能であることを特徴とする、請求項1〜5のうちの1項に記載のミシン。
【請求項7】
リフト位置調節装置(30)が調節シャフト(29)を備え、この調節シャフト(29)が稼働しているリフト位置調節装置カムディスク(24)の変位を通じて長手方向軸の周りを旋回可能であることを特徴とする、請求項1〜6のうちの1項に記載のミシン。
【請求項8】
2つのカムディスク(20、24)が同じ外形を有していることを特徴とする、請求項3〜7のうちの1項に記載のミシン。
【請求項9】
360°より小さいモータシャフトの最大調節範囲を特徴とする、請求項3〜8のうちの1項に記載のミシン。
【請求項10】
2つのカムディスク(20、24)の間にモータシャフト(21)のためのラジアルベアリングが配されていることを特徴とする、請求項3〜9のうちの1項に記載のミシン。
【請求項11】
駆動装置(22)のモータシャフト(21)に2つの歯付きセグメント(39、40)が配されており、
−この2つの歯付きセグメント(39、40)のうちの一方である持上げシャフト歯付きセグメント(39)が持上げ装置(13)と機械的に連結されていることと、
−この2つの歯付きセグメント(39、40)のうちの他方であるリフト位置調節歯付きセグメント(40)がリフト位置調節装置(30)と機械的に連結されていることと
を特徴とする、請求項1〜10のうちの1項に記載のミシン。
【請求項12】
駆動装置(22)のモータシャフト(21)に2つのレバー(45、46)が配されており、
−この2つのレバー(45、46)のうちの一方である持上げシャフトレバー(45)が持上げ装置(13)と機械的に連結されていることと、
−この2つのレバー(45、46)のうちの他方であるリフト位置調節装置レバー(46)がリフト位置調節装置(30)と機械的に連結されていることと
を特徴とする、請求項1〜11のうちの1項に記載のミシン。
【請求項13】
駆動装置(22)のモータシャフト(21)に2つのクラッチ(51、52)が配されており、
−この2つのクラッチ(51、52)のうちの一方である持上げシャフトクラッチ(51)が持上げ装置(13)と機械的に連結されていることと、
−この2つのクラッチ(51、52)のうちの他方であるリフト位置調節クラッチ(52)がリフト位置調節装置(30)と機械的に連結されていることと
を特徴とする、請求項1〜12のうちの1項に記載のミシン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−240771(P2009−240771A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−65872(P2009−65872)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(595143159)デュルコップ アードラー アクチエンゲゼルシャフト (37)
【Fターム(参考)】