説明

メイク落としシート用基材及びメイク落としシート

【課題】
本発明は、従来の不織布よりも拭き取り性に優れ、かつ、肌に対する刺激性が低いメイク落としシートを提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明のメイク落としシートは、少なくとも2層以上の不織布を積層一体化して構成される積層不織布であって、前記積層不織布が、(A)数平均による単繊維直径が1〜500nmの熱可塑性樹脂からなるナノファイバーにより構成された不織布層と(B)数平均による単繊維直径が前記ナノファイバーよりも大きい繊維により構成された不織布層とを少なくとも有することを特徴とするものである。また本発明のメイク落としシートは、前記メイク落としシート用基材にクレンジング剤を含浸してなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来のメイク落としシートよりもメイクアップ化粧料の拭き取り性が高く、肌に対する刺激が低いメイク落としシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯性、使用時の簡便性からシート状のメイク落としが各種提供されてきている。これらはいずれも、不織布や紙等のシート基材にクレンジング剤が含浸されたものであり、メイクアップ化粧料を落とすための美容用具として使用されている。
【0003】
しかし、コットン100%不織布に代表されるように、一般的に基材は、クレンジング剤を保持することを目的に使用されているものであり、拭き取り性を高めるまでには至っていなかった。
【0004】
そこで、マイクロオーダーの繊維径を有する極細繊維を使用した不織布を基材に用いたメイク落としシートが開示されている(特許文献1)が、単繊維直径の細さが十分ではなく、毛穴に詰まったメイクアップ化粧料を十分に除去することができないといった問題があった。さらに、これらの極細繊維は、肌表面の除去を要しない角質まで除去してしまうため、角質層を損傷し、肌のトラブルを引き起こしていた。
【特許文献1】特開2003−95868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、従来の不織布よりも拭き取り性に優れ、かつ、肌に対する刺激性が低いメイク落としシートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0007】
すなわち本発明は、少なくとも2層以上の不織布を積層一体化して構成される積層不織布であって、前記積層不織布が、(A)数平均による単繊維直径が1〜500nmの熱可塑性樹脂からなるナノファイバーにより構成された不織布層と(B)数平均による単繊維直径が前記ナノファイバーよりも大きい繊維により構成された不織布層とを少なくとも有することを特徴とするメイク落としシート用基材である。
【0008】
また本発明は、本発明のメイク落としシート用基材にクレンジング剤を含浸してなることを特徴とするメイク落としシートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の素材に比べて単繊維直径が格段に小さいナノファイバーからなる不織布を拭き取り面に使用することにより、非常に優れた拭き取り性を有し、かつ、肌への刺激性が低いメイク落としシートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のメイク落としシート用基材は、(A)熱可塑性樹脂からなるナノファイバーにより構成された不織布層を有する。
【0011】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリエステルやポリアミド、ポリオレフィン等を採用することができる。これらの樹脂には、他の成分が共重合されていても良い。また、安定剤などの添加物を含有していても良い。
【0012】
本発明でいうナノファイバーとは、数平均による単繊維直径が1〜500nmである繊維をいう。この範囲で規定されるナノファイバーを用いることにより、皮膚表面の細かい溝にも繊維が入り込み、拭き取り性が大幅に向上する。また、このような極限的な細さにより、ナノファイバーは、繊維のしなやかさを示す断面二次モーメントが、マイクロオーダーの極細繊維に比べて1万分の1以下となり、飛躍的に柔軟性が向上し、角質など肌表面に必要以上のダメージを与えることなく汚れを除去することができる。また、繊維間にナノオーダーの空隙を持つようになり、クレンジング剤の吸液性が大幅に向上される。
【0013】
かかるナノファイバーの数平均による単繊維直径としては、好ましくは1〜200nm、より好ましくは50〜150nmである。
【0014】
また、本発明におけるナノファイバーは、単繊維がバラバラに分散しているものであってもよいが、単繊維が束状に凝集した集合体を形成していることが、化粧料の拭き取り性に優れている点から好ましい。ナノファイバーが束を形成することにより、汚れを除去する際に、大きな汚れをかみ砕きながら、束表面のナノファイバーが肌の溝や毛穴の形状に合わせて変形・分散し、汚れを除去することができる。さらに、拭き取った汚れを束の奧に捕集することにより拭き取った汚れの肌への再付着を抑ぐことができる。
【0015】
ここで、ナノファイバーを得るための方法としては例えば、以下のような方法を採用することができる。
【0016】
すなわち、溶剤に対する溶解性の異なる2種以上のポリマーから、易溶解性ポリマーを海(マトリックス)、難溶解性ポリマーを島(ドメイン)とするポリマーアロイ溶融体となし、これを紡糸した後、冷却固化して繊維化する。そして必要に応じて延伸・熱処理を施し、ポリマーアロイ繊維を得た後、常法により布帛(不織布)とする。そして、易溶解性ポリマーを溶剤で除去することによりナノファイバーを得ることができる。
【0017】
この方法においては、ナノファイバーの前駆体であるポリマーアロイ繊維における島(ドメイン)のサイズによりナノファイバーの直径がほぼ決定されるため、ポリマーアロイ繊維中の島(ドメイン)のサイズを制御することが重要である。
【0018】
島(ドメイン)のサイズの制御は、ポリマーの混練の制御によって行うことができ、混練押出機や静止混練器等によって高混練することが好ましい。なお、単純なチップブレンド(例えば、特開平10−53967号公報)では、混練が不足するため、数十nmサイズで島を分散させることは困難である。
【0019】
また、島を数十nmサイズで超微分散させるには、ポリマーの組み合わせも重要である。島(ドメイン)を円形に近づけるためには、島(ドメイン)ポリマーと海(マトリックス)ポリマーとは互いに非相溶であることが好ましい。しかしながら、単なる非相溶ポリマーの組み合わせでは島(ドメイン)ポリマーを十分に超微分散化させることが難しい。そこで、ポリマーの組み合わせは溶解度パラメーター(SP値)を指標として選ぶとよい。ここで、SP値とは(蒸発エネルギー/モル容積)1/2 で定義される物質の凝集力を反映するパラメータであり、種々のポリマーのSP値は、例えば「プラスチック・データブック」旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、189ページ等に記載されている。2つのポリマーのSP値の差が1〜9(MJ/m31/2であると、非相溶化による島(ドメイン)の円形化と超微分散化とを両立させやすく好ましい。例えば、ナイロン6(N6)とポリエチレンテレフタレート(PET)とはSP値の差が6(MJ/m3 1/2 程度であり、好ましい例であるが、N6とポリエチレン(PE)とはSP値の差が11(MJ/m3 1/2程度であり、好ましくない例として挙げられる。
【0020】
また、溶融粘度も重要であり、島成分を形成するポリマーの溶融粘度を、海成分のそれに比べて低く設定すると剪断力による島成分ポリマーの変形が起こりやすいため、島成分ポリマーの微分散化が進みやすくナノファイバー化の観点からは好ましい。ただし、島成分ポリマーを過度に低粘度にすると海化しやすくなり、繊維全体に対するブレンド比を高くできないため、島成分ポリマーの粘度は海成分ポリマー粘度の1/10以上とすることが好ましい。
【0021】
海(マトリックス)ポリマーを溶解し島(ドメイン)ポリマーを溶解し難い溶剤としては、アルカリ溶液、酸性溶液、有機溶媒、超臨界流体等を挙げることができる。例えば、ナイロンとポリエステルとの組み合わせにおいて、アルカリ溶液に対しては、ナイロンが難溶解性を示し、ポリエステルが易溶解性を示す。
【0022】
本発明のメイク落としシート用基材は、前記のようにナノファイバーにより構成された不織布層((A)層)の他に、数平均による単繊維直径が前記ナノファイバーよりも大きい繊維により構成された不織布層((B)層)を有し、これらが積層されてなることが重要である。
【0023】
(B)層を積層させることにより、ナノファイバー単独では得られなかった効果を発現させることができる。例えば、ナノファイバーにより構成された不織布層((A)層)単独では強度が弱いために実使用に耐えることができないが、(B)層を積層することにより、ナノファイバーによる拭き取り効果などをいかしつつ、繊維構造体としての力学的強度を向上させることができ補強効果が得られる。
【0024】
また、ナノファイバーにより構成された不織布層((A)層)単独では高次加工を施した際に吸水膨潤などにより寸法変化を起こしてしまう場合があるが、(B)層を積層することにより、寸法安定性を付与することができる。
【0025】
また、単繊維直径の異なる繊維からなる不織布層同士が積層されていることで、毛細管現象により単繊維直径の太い(B)層から繊維径のより細い(A)層へのクレンジング剤の移行が促進される。
【0026】
(B)層を構成する繊維の数平均による単繊維直径としては、上記のような効果を奏する上で、1〜100μmが好ましい。
【0027】
また、(B)層を構成する繊維は、単繊維直経の異なる2種類以上の繊維が混在していてもよい。
【0028】
(B)層を構成する繊維は、素材の異なる2種類以上が混在していてもよい。
【0029】
(B)層を構成する繊維としては、断面形状が異形断面であることが好ましい。丸断面繊維に比べて構造的に多くのクレンジング剤を保液することができ、高い拭き取り性が得られるためである。
【0030】
(A)層及び(B)層を形成する方法としては、乾式法でもよいし湿式法でもよい。
【0031】
また、積層不織布を形成する方法としては、(A)層と(B)層との間にバインダーを付与して接着する方法、ニードルパンチや高圧水流により絡合させる方法、(B)層に熱融着性繊維を混ぜておいて加熱ロールにて熱融着させる方法、一方の層に他方の層を構成する繊維(またはその前駆体の繊維)をメルトブロー法やスパンボンド法にて直接積層させる方法等を採用することができる。
【0032】
また(A)層については、ナノファイバーの前駆体であるポリマーアロイ繊維の状態で不織布層または積層不織布を形成し、その後に脱海処理によりナノファイバーを形成させてもよい。
【0033】
(A)層の積層不織布に占める割合としては、15質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。15質量%以上とすることで、ナノファイバーの繊維間から他の繊維がナノファイバー層の表面に露出するのを防ぎ、拭き取り性が阻害されるのを防ぐことができる。また上限値としては、50質量%以下であることが好ましい。50質量%以下とすることにより、メイク落としシート用基材として十分な強度が得られる。
【0034】
積層不織布における積層構成としては、(A)層/(B)層/(A)層の3層構成とすることが好ましい。そうすることで、シートの両面にナノファイバーを有することになり、染色あるいはプリントなどによる表示がなくても、使用面を間違えずに済み、確実にナノファイバーを有する面で拭き取ることがでる。また、両面とも使用することができるので経済的である。
【0035】
一方、(A)層/(B)層の2層構成の場合には、(B)層で粗拭きを行った後に(A)層で仕上げを行うという使用方法を採用することができる。
【0036】
積層不織布の目付としては、50〜400g/mが好ましく、より好ましくは70〜350g/m、さらに好ましくは100〜300g/mである。目付を50g/m以上とすることで、形態安定性が良く、使用時の取り扱い性が良くなる。また、400g/m以下とすることで、クレンジング剤を吸液しても重量が重くならず取り扱い性が悪くなるのを防ぐことができる。
【0037】
また、積層不織布は、湿潤時の引張強力がタテ・ヨコの平均で0.5N/50mm以上であることが好ましく、より好ましくは50N/50mm以上、さらに好ましくは100N/50mm以上、さらに好ましくは300N/50mm以上である。湿潤時の引張強力を0.5N/50mm以上とすることで、クレンジング剤含浸時の工程通過性などを満足することができる。
【0038】
また、積層不織布は、湿潤時の引裂強力がタテ・ヨコの平均で1N以上であることが好ましく、より好ましくは5N以上、さらに好ましくは10N以上である。1N以上とすることで、拭き取り時に穴があき破れるといった問題を防ぐことができる。また、上限としては、100Nもあればよい。
【0039】
尚、本発明においてタテ方向及びヨコ方向は、積層工程の進行方向と平行な方向をタテ方向とし、直交する方向をヨコ方向として定義される。
【0040】
また、積層不織布は、保水率が300〜2000%の範囲内であることが好ましい。保水率を300%以上とすることで、クレンジング剤を十分に吸収することができる。また、2000%以下とすることで、クレンジング剤を吸液したメイク落としシートとしての重量が重くなりすぎず、過剰な薬液が液だれを起こし使用時の取り扱い性が悪いといった問題も防ぐことができる。
【0041】
本発明のメイク落としシートは、本発明のメイク落としシート基材に、クレンジング剤を含浸させてなる。クレンジング剤はメイクアップ化粧料を落とすためのものであり、その汚れを浮き立たせる効果とナノファイバーの拭き取り性との相乗効果により飛躍的に高い拭き取り性が得られる。
【0042】
メイク落としシート用基材に含浸させるクレンジング剤としては、一般的に使用されているものを採用することができ、例えば、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、環状シリコーン、流動パラフィン、POE等を挙げることができる。
【0043】
また、クレンジング剤には、保湿剤、美白成分、ビタミン等の美容効果のある薬液を混合していてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0045】
[測定方法]
(1)海島構造におけるドメインサイズ
合成繊維を横断面が出るようにスライスし、当該横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察して、面内の島数が50を超える場合にはn数50を無作為に抽出し、島一つ一つの横断面積を画像解析ソフトウェアにて測定し、当該面積から、真円換算にて直径にあたるドメインサイズを平均値で算出した。
【0046】
(2)TEMによる不織布横断面観察
不織布をエポキシ樹脂で包埋し、横断面方向に超薄切片を切り出して透過型電子顕微鏡(TEM)(日立製作所社製H−7100FA型)で不織布横断面を観察した。
【0047】
(3)ナノファイバーの数平均による単繊維直径
TEMによる不織布横断面写真からナノファイバー層を抽出し、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、同一写真内で互いに近接する30本ずつのナノファイバーの群を無作為に10箇所抽出し、計300本の単繊維直径を測定し、その単純平均値を求め、ナノファイバーの数平均による単繊維直径とした。
【0048】
(4)(B)層の繊維の数平均による単繊維直径
JIS 1015に基づいて繊度を測定し、繊度と「繊維ハンドブック(日本化学繊維協会編)」などに掲載されている素材の比重から当該繊維の単糸直径を求めた。繊維が異形断面繊維の場合は、当該異形断面繊維の断面を同面積の円形に換算して求めた。
【0049】
(5)目付
JIS L 1913:1998 6.2に基づいて測定した。
試料から300mm×300mmの試験片を、鋼製定規とかみそり刃とを用いて3枚採取した。標準状態における試験片の質量を測定して、単位面積当たりの質量を次の式によって求め、平均値を算出した。
=m/S
ここに、m:単位面積当たりの質量(g/m
m:試験片の平均重量(g)
S:試験片の面積(m)。
【0050】
(6)質量比率
積層不織布に対する(A)層の質量比率は、それぞれの層について前記(5)により目付を測定し、以下の式により算出して求めた。
(A)層の質量比率(%)=(mA1+mA2+…)/(m+mA2+…+mB1+mB2…)×100
ここに、mAn:積層前の(A)層の目付(g/m
Bn:積層前の(B)層の目付(g/m
n=1,2,… 。
【0051】
(7)湿潤時の引張強力
JIS L 1913:1998 6.3.2に準じて測定した。
幅50mm、長さ300mmの試験片を、タテ方向及びヨコ方向にそれぞれ5枚採取した。
試験片を20℃の水中に1時間浸漬し、取り出してから速やかに定速伸長形引張試験機に取り付けて測定を行った。
つかみ間隔を200mmとし、100mm/minの引張速度で、試験片が切断するまで荷重を加え、最大荷重時の強さを測定し、タテ・ヨコ10枚の平均値を算出した。
【0052】
(8)湿潤時の引裂強力
上記(7)と同様の湿潤処理をした以外はJIS L 1913:1998 6.4.2 トラペゾイド法に基づいて測定した。
テンプレートを用い、75mm×150mmの試験片を、タテ方向およびヨコ方向にそれぞれ5枚採取し、試験片上に本規定に示す位置に等脚台形の印を付け、この印の短辺の中央に短辺と直角に15mmの切れ目を入れた。
試験片を20℃の水中に1時間浸漬し、取り出してから速やかに、試験片のつかみ間隔を25mmとして、台形の短辺は張り、長辺は緩めて印に沿って引張試験機のつかみ具に取り付けた。
引張速度は100mm/minとし、タテ・ヨコ10枚の引裂強さの平均値を算出した。
【0053】
(9)保水率
JIS L 1906:2000 付属書 3.2に準じて測定した。
10cm×10cmの試験片を3枚採取し、その質量を1mgまで測定した。
室温で試験片を水道水中に15分間浸漬し、ピンセットで試験片を水中から取り出して1分間水をしたたり落とした後、その質量を1mgまで測定した。
次の式によって保水率を算出し、さらにその平均値を求めた。
m=(m−m)/m×100
ここに、m:保水率(%)
:試験片の標準状態での質量(mg)
:試験片を湿潤し、水をしたたり落としたあとの質量(mg)。
【0054】
(10)性能評価
各実施例および比較例で得られた不織布に、クレンジング剤(コーセーコスメポート(株)「ホワイトクレンジングウォーター」)を試験片質量に対して4.0倍量含浸させたものを用い、クレンジング剤含浸性、拭き取り性、皮膚刺激性、手持ち感について女性パネル10名により各人の絶対評価にて10点満点で評価し、10名の平均点(小数点以下は四捨五入)から下記基準にて評価した。
A:9〜10点
B:7〜8点
C:5〜6点
D:3〜4点
E:0〜2点。
【0055】
[実施例1]
(ポリマーアロイ繊維)
溶融粘度212Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec-1)、融点220℃のナイロン6(N6)(40質量%)と、重量平均分子量12万、溶融粘度30Pa・s(240℃、剪断速度2432sec-1)、融点170℃で光学純度99.5%以上のポリL乳酸(60質量%)とを別々に計量し、別々に下記詳細の2軸押し出し混練機に供給し、220℃で混練してポリマーアロイチップを得た。
スクリュー形状:同方向完全噛合型 2条ネジ
スクリュー :直径37mm、有効長さ1670mm、L/D=45.1
混練部長さはスクリュー有効さの28%
混練部はスクリュー有効長さの1/3より吐出側に位置させた
途中3箇所のバックフロー部有り
ベント :2箇所。
【0056】
得られたポリマーアロイチップを、ステープル用紡糸機の一軸押し出し型溶融装置に供給し、溶融温度235℃、紡糸温度235℃(口金面温度220℃)、紡糸速度1200m/minとして溶融紡糸を行い、ポリマーアロイ繊維を得た。これを合糸した後、スチーム延伸を行い単糸繊度3.0dtexのポリマーアロイ繊維からなるトウを得た。得られたポリマーアロイ繊維の強度は、3.5cN/dtex、伸度45%、U%=1.0%の優れた特性を示した。繊維の横断面をTEMで観察したところ、島(ドメイン)は数平均による直径が99nmで均一に分散していた。
【0057】
(捲縮・カット工程)
上記ポリマーアロイ繊維からなるトウに捲縮(12山/25mm)を施した後、51mmの短繊維にカットした。
【0058】
((A)層の不織布)
上記短繊維をカードで開繊した後、クロスラップウエーバーでウエッブとした。このウエッブに、ニードルパンチを80本/cmのパンチ密度で行い、目付225g/mの(A)層の不織布を得た。
【0059】
((B)層の不織布)
分割割繊用のナイロン6(N6)/ポリブチレンテレフタレート(PBT)複合繊維(分割後のN6単繊維直径5μm、分割後のPBT単繊維直径7μm)からなるカット長51mmのカットファイバーを、カードで開繊した後、クロスラップウエーバーでウエッブとした。このウエッブに、ニードルパンチを80本/cmのパンチ密度で行い、目付210g/mの(B)層の不織布を得た。
【0060】
(積層不織布)
上記で得られた(A)層の不織布と(B)層の不織布とを積層し、さらにニードルパンチを45本/cmのパンチ密度で行い、目付435g/mの積層不織布を得た。
【0061】
(メイク落としシート用基材)
上記積層不織布に対して、1%水酸化ナトリウム水溶液で温度95℃、浴比1:40にて処理することにより、ポリ乳酸を脱海し、N6ナノファイバーとN6/PBT分割割繊糸とからなる目付300g/mのメイク落としシート用基材を得た。
【0062】
得られたメイク落としシート用基材におけるナノファイバーの質量比率は30%であった。これから、ナノファイバーを抜き取り、TEM観察したところ、数平均による単繊維直径は99nmであった。また、このメイク落としシート用基材は、形態安定性に優れているものであった。
【0063】
[実施例2]
(ポリマーアロイ繊維)
実施例1で用いたのと同様のポリマーアロイ繊維を使用した。
【0064】
(捲縮・カット工程)
上記ポリマーアロイ繊維を用い、実施例1と同様の捲縮・カット加工を施した。
【0065】
((A)層の不織布)
目付を75g/mとした以外は実施例1と同様にして、(A)層の不織布を作製した。
【0066】
((B)層の不織布)
目付を70g/mとした以外は実施例1と同様にして、(B)層の不織布を作製した。
【0067】
(積層不織布)
上記で得られた(A)層の不織布と(B)層の不織布とを積層し、実施例1と同様にして、目付145g/mの積層不織布を得た。
【0068】
(メイク落としシート用基材)
上記積層不織布に対して、実施例1と同様の脱海処理を施し、N6ナノファイバーとN6/PBT分割割繊糸とからなる目付100g/mのメイク落としシート用基材を得た。
【0069】
得られたメイク落としシート用基材におけるナノファイバーの質量比率は30%であった。また、このメイク落としシート用基材は、形態安定性に優れているものであった。
【0070】
[実施例3]
(ポリマーアロイ繊維)
実施例1で用いたのと同様のポリマーアロイ繊維を使用した。
【0071】
(捲縮・カット工程)
上記ポリマーアロイ繊維を用い、実施例1と同様の捲縮・カット加工を施し、ポリマーアロイ繊維を短繊維を得た。
【0072】
((A)層の不織布)
上記短繊維を用い、実施例1と同様にして、目付225g/mの(A)層の不織布を作製した。
【0073】
((B)層の不織布)
コットン(micronaire繊度4.3、単繊維直径12μm、平均繊維長1.1×2.54cmのアメリカ綿)を、カードで開繊した後、クロスラップウエーバーでウエッブとした。このウエッブに、ニードルパンチを80本/cmのパンチ密度で行い、目付210g/mの(B)層の不織布を得た。
【0074】
(積層不織布)
上記で得られた(A)層の不織布と(B)層の不織布とを積層し、実施例1と同様にして、目付435g/mの積層不織布を得た。
【0075】
(メイク落としシート用基材)
上記積層不織布に対して、実施例1と同様の脱海処理を施し、N6ナノファイバーとコットンとからなる目付300g/mのメイク落としシート用基材を得た。
【0076】
得られたメイク落としシート用基材におけるナノファイバーの質量比率は30%であった。また、このメイク落としシート用基材は、形態安定性に優れているものであった。
【0077】
[実施例4]
(ポリマーアロイ繊維)
実施例1で用いたのと同様のポリマーアロイ繊維を使用した。
【0078】
(捲縮・カット工程)
上記ポリマーアロイ繊維を用い、実施例1と同様の捲縮・カット加工を施した。
【0079】
((A)層の不織布)
目付を75g/mとした以外は実施例1と同様にして、(A)層の不織布を作製した。
【0080】
((B)層の不織布)
コットン(micronaire繊度4.3、単繊維直径12μm、平均繊維長1.1×2.54cmのアメリカ綿)を、カードで開繊した後、クロスラップウエーバーでウエッブとした。このウエッブに、ニードルパンチを80本/cmのパンチ密度で行い、目付70g/mの(B)層の不織布を得た。
【0081】
(積層不織布)
上記で得られた(A)層の不織布と(B)層との不織布とを積層し、実施例1と同様にして、目付145g/mの積層不織布を得た。
【0082】
(メイクおとしシート用基材)
上記積層不織布に対して、実施例1と同様の脱海処理を施し、N6ナノファイバーとコットンとからなる目付100g/mのメイク落としシート用基材を得た。
【0083】
得られたメイクおとしシート用基材におけるナノファイバーの質量比率は30%であった。また、このメイク落としシート用基材は、形態安定性に優れているものであった。
【0084】
[実施例5]
(ポリマーアロイ繊維)
実施例1で用いたのと同様のポリマーアロイ繊維を使用した。
【0085】
(捲縮・カット工程)
上記ポリマーアロイ繊維からなるトウに捲縮(12山/25mm)を施した後、38mmの短繊維にカットした。
【0086】
(積層不織布)
上記短繊維をカードで開繊した後、クロスラップウエーバーで(A)層用のウエッブを作製した。また、コットン(micronaire繊度4.3、単繊維直径12μm、平均繊維長1.1×2.54cmのアメリカ綿)を、カードで開繊した後、クロスラップウエーバーで(B)層用のウエッブを作製した。これらのウエッブを、(A)層用のウエッブ/(B)層用のウエッブ/(A)層用のウエッブが目付で65(g/m)/50(g/m)/65(g/m)となるように積層し、孔径100μm、ノズルピッチ0.6mmのノズルヘッドからなるウォタージェットパンチにて、2.5m/minの処理速度で表裏ともに10MPaで絡合処理をし、目付180g/mの積層不織布を得た。
【0087】
(メイク落としシート用基材)
上記積層不織布に対して、実施例1と同様の脱海処理を施し、N6ナノファイバーとコットンからなる目付100g/mのメイク落としシート用基材を得た。
【0088】
得られたメイク落としシート用基材のナノファイバー重量比率は49%であった。また、このメイク落としシート用基材は、形態安定性に優れているものであった。
【0089】
[比較例1]
市販のコットン不織布からなる目付300g/mのメイク落としシート用基材を用いた。
【0090】
【表1】

【0091】
表1の結果から、実施例1〜5はメイク落としシートとしての優れた特性を有していることがわかる。一方、比較例1は、拭き取り性が低く、使用時の取り扱い性が悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層以上の不織布を積層一体化して構成される積層不織布であって、前記積層不織布が、(A)数平均による単繊維直径が1〜500nmの熱可塑性樹脂からなるナノファイバーにより構成された不織布層と(B)数平均による単繊維直径が前記ナノファイバーよりも大きい繊維により構成された不織布層とを少なくとも有することを特徴とするメイク落としシート用基材。
【請求項2】
前記(B)層の、数平均による単繊維直径が前記ナノファイバーよりも大きい繊維の平均の単繊維直径が1〜100μmである、請求項1に記載のメイク落としシート用基材。
【請求項3】
前記(A)層を構成するナノファイバーの数平均による単繊維直径が200nm以下である、請求項1または2に記載のメイク落としシート用基材。
【請求項4】
前記ナノファイバーが束状に凝集した集合体を形成している、請求項1〜3のいずれかに記載のメイク落としシート用基材。
【請求項5】
前記(B)層の、数平均による単繊維直径が前記ナノファイバーよりも大きい繊維の断面形状が異形断面である、請求項1〜4のいずれかに記載のメイク落としシート用基材。
【請求項6】
前記積層不織布が、(A)層/(B)層/(A)層の3層から構成されている、請求項1〜5のいずれかに記載のメイク落としシート用基材。
【請求項7】
前記(A)層の前記積層不織布に占める割合が15質量%以上である、請求項1〜6のいずれかに記載のメイク落としシート用基材。
【請求項8】
前記(A)層の前記積層不織布に占める割合が50質量%以下である、請求項7に記載のメイク落としシート用基材。
【請求項9】
前記積層不織布の目付が50〜400g/mである、請求項1〜8のいずれかに記載のメイク落としシート用基材。
【請求項10】
前記積層不織布の湿潤時の引張強力が0.5N/50mm以上である、請求項1〜9のいずれかに記載のメイク落としシート用基材。
【請求項11】
前記積層不織布の湿潤時の引張強力が50N/50mm以上である、請求項10に記載のメイク落としシート用基材。
【請求項12】
前記積層不織布の湿潤時の引裂強力が1N以上である、請求項1〜11のいずれかに記載のメイク落としシート用基材。
【請求項13】
前記積層不織布の保水率が300〜2000%である、請求項1〜12のいずれかに記載のメイク落としシート用基材。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のメイク落としシート用基材にクレンジング剤を含浸してなることを特徴とするメイク落としシート。

【公開番号】特開2007−68986(P2007−68986A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214220(P2006−214220)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】