説明

メソ多孔性粒子を有する混合マトリックス膜及びその作製方法

気体成分の混合物から気体成分を分離するための混合マトリックス膜が開示される。前記膜は、ポリマー中に分散した無機多孔性粒子、好ましくはモレキュラーシーブを有する連続相ポリマーを含む。前記ポリマーは、少なくとも(20)のCO/CH選択率を有し、多孔性粒子は少なくとも0.1ccSTP/gのメソ多孔性を有する。混合マトリックス膜は、ニートポリマーから作製された膜10に比較して、CO透過率が少なくとも30%の増加を示し、選択率の減少は10%以下である。多孔性粒子は、それだけには限らないが、CVX−7及びSSZ−13などのモレキュラーシーブ、及び/又は必要とされるメソ多孔性を有する他のモレキュラーシーブを含むこともできる。混合マトリックス膜を作製する方法も同様に説明される。更に、メソ多孔性粒子を有する混合マトリックス膜を使用して、気体成分を気体成分の混合物から分離する方法について開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に流体を分離するための膜に関し、特に膜の分離能力を向上させるための多孔性粒子を含む膜に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くの参考文献が、その中に多孔性粒子を分散させた連続相ポリマーキャリアーを含む混合マトリックス膜の使用について教示している。その例には、米国特許第4,925,459号(Rojey他)及び米国特許第5,127,925号(Kulprathipanja他)が含まれる。これらの膜は、一般的に有効径の異なる、少なくとも2種類の気体成分を含有する混合物又は供給流からの気体を分離するのに特に有用である。
【0003】
膜の性能は、膜を横断する気体成分のフラックスによって特徴づけられる。このフラックスは、所定の成分の圧力及び厚さを正規化した、透過率(P)と呼ばれる量として表現することができる。気体混合物の分離は、他の成分の透過速度を超えるより速い1成分の透過速度(即ち、より高い透過率)を可能にする膜物質によって達成される。透過流中の1成分を、他の成分を超えて濃縮する膜の効率は、選択率と呼ばれる量で表現することができる。選択率は、膜を横断する気体成分の透過率の比(即ち、P/P、ここでA及びBは2つの成分である)として定義される。膜の透過率及び選択率は、膜材料の自体の材料の性質であり、従って、これらの性質が供給圧力、流速及び他のプロセス条件に関して一定であることが理想である。しかしながら、透過率及び選択率は、共に温度依存性である。膜材料が、所望の成分に関して高い選択率(効率)を有し、一方では所望の成分に関して高い透過率(生産性)を維持していることが望ましい。
【0004】
適切な条件の下で、多孔性粒子の添加は、所望のポリマー膜を通過する気体成分の相対有効透過率を増加(及び/又は他の気体成分の有効透過率を減少)させ、これによってポリマー膜材料の気体分離(選択率)を向上させる。多孔性粒子を連続相ポリマーへ組み込むことによって、選択率が著しく(即ち、約10%又はそれ以上)改善される場合、混合マトリックス膜は、「混合マトリックス効果」を示していると説明することもできる。選択率向上試験は、以下で詳細に説明する。
【0005】
この「混合マトリックス膜」概念は、米国特許第6,503,295号、第6,562,110号及び第6,508,860号並びに米国特許出願第2002/0056369号、及び第2002/0053284号などの出版物において、分離性能を向上させるために、多孔性、モレキュラーシーブ構成要素を使用することが説明されている。いわゆる「混合マトリックス効果」は、ポリマーマトリックス中で貫通物を識別できる細孔寸法を有する、高い寸法及び形状選択性のモレキュラーシーブ(ゼオライト又はカーボンモレキュラーシーブ等)を包含していることによって、実質的にハイブリッド膜の総体的選択率を改善することもできるという原理に基づいている。かかる選択率の向上は、膜だけのニートポリマーを使用して達成できる選択率よりもずっと高い可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる混合マトリックス膜を使用することに伴う重大な問題は、膜の選択性−生産性のトレードオフである。このトレードオフは、膜を最大選択率及び最大生産性のために最適化する場合に遭遇する。一般的に、これら2つの性質は互いに相反して作用する。言い換えれば、高い選択率の膜は、一般的に低い生産性を有しており、これに対して低い選択率の膜は、一般的に高い生産性を備えている。
【0007】
混合マトリックス膜は、高い透過率を有していることが理想である。これは、最低限の表面積を有する膜が、大量の混合気体を分離処理することを可能にする。経済的には、廉価なニートポリマーで作られた或いは生産性が著しく低い廉価なポリマー/シーブ粒子を使い作られたより大きな膜と比較して、より高価なポリマー及び/又は多孔性粒子を使用して、より小さな寸法の膜を使用することができる。更に、膜は、ニートポリマーだけを使用した膜と比較して、選択率を著しく損失してはならない。
【0008】
本発明は、高い水準の選択率を得るために膜の生産性(透過率)を犠牲にしている、以前の混合マトリックス膜の欠点に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、流体成分を、気体成分の混合物を含有する供給流から分離するための混合マトリックス膜を含む。この膜は、その中に分散している無機多孔性粒子を有する連続相ポリマーを含む。ポリマーは、ニートポリマーから作製された膜の形式の場合、少なくとも20のCO/CH選択率を有する。好ましくはモレキュラーシーブである多孔性粒子は、少なくとも0.1ccSTP/g、更には少なくとも0.15ccSTP/gのメソ多孔性を有する。ニートポリマーから作製された膜に比較して、この混合マトリックス膜の透過率は少なくとも30%増加し、選択率の減少は10%以下である。ある場合には、透過率及び選択性の両方が向上することもある。同様に、ある場合には、ニートポリマーから作製された膜に比較して、10%以下の選択率の任意の減少により透過率は50%を超えて増加する。膜中のモレキュラーシーブの添加量は、10〜40重量%の間であることが好ましい。モレキュラーシーブは、小孔のモレキュラーシーブでよい。モレキュラーシーブの好ましい例は、CVX−7及びSSZ−13であり、これらは勿論必要とされる相対的に高いメソ多孔性のレベルを有している。
【0010】
気体成分を、混合気体成分の供給流から分離する方法も本発明において教示される。方法は、その中に分散している、好ましくはモレキュラーシーブである多孔性粒子を有するポリマーを含む混合マトリックス膜を提供する第1ステップを含む。膜は、供給側と透過側を有する。ポリマーは、ニートポリマーから作製される膜の形式の場合、少なくとも20のCO/CH選択率を有する。粒子は、少なくとも0.1ccSTP/gのメソ多孔性を有する。混合マトリックス膜の透過率はニートポリマーから作製された膜に比較して、少なくとも30%増加し、選択率の減少は10%以下である。
【0011】
気体成分を分離する第2ステップは、第1及び第2気体成分を含む供給流を膜の供給側に誘導し、第1気体成分が減損した残留流を供給側から取り出し、第1気体成分が豊富な透過流を膜の透過側から取り出すことを含む。分離される気体成分は、二酸化炭素及びメタンを含むことが好ましい。
【0012】
混合マトリックス膜を作製する方法についても説明する。モレキュラーシーブであることが好ましい無機多孔性粒子を、溶液中でポリマーと混合する。無機多孔性粒子は、少なくとも0.1ccSTP/gのメソ多孔性を有し、ポリマーは少なくとも20の選択性を有する。混合マトリックス膜は、ポリマーの連続相中に分散している多孔性粒子を用いて形成される。混合マトリックス膜の透過率はニートポリマーから作製された膜に比較して、少なくとも30%増加し、選択率の減少は10%以下である。膜は、それだけには限らないが、平板又は中空繊維を含む様々な形状で作製することもできる。
【0013】
著しい選択性の損失なしで向上した膜生産性を備えるために、メソ多孔性粒子を含まないか又は相対的に低い水準のメソ多孔性粒子を有する類似の膜に比較して、相対的に高い水準のメソ多孔性を持った無機多孔性粒子を有する混合マトリックス膜を提供し、これによって従来の膜より、膜単価当たりより大きい生産性を提供することが本発明の目的である。
【0014】
気体混合物中の気体の分離に関して高い選択率を有する連続相ポリマーを使用し、更に、混合マトリックス膜の透過率をニートポリマーから作製した膜に比較して向上させるために、膜の厚さの一部に著しい量の非選択性経路を提供する多孔性粒子をポリマー中に分散して有する混合マトリックス膜を提供することが、別の目的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に従って作製した混合マトリックス膜は、連続相ポリマー中に分散した無機多孔性粒子を有する。無機多孔性粒子は、標準温度及び圧力において少なくとも0.10立方センチメートル/gの最低メソ多孔性(cu.cm.STP/g)を有していることが理想である。この膜は、連続相ポリマーのニート膜に比較して、実質的な選択率の損失なしで、透過率の著しい増加を示す。ある場合には、選択率及び透過率のどちらも向上する。
【0016】
一般的に、メソ細孔を有する粒子は、約10〜100Åの孔の断面寸法を有しており、これは分離する気体の有効直径よりもずっと大きい。これら気体は、一般的に約2.6Å〜4Åの範囲である。例えば、二酸化炭素及びメタンの有効直径は、3.3Å及び3.8Åである。モレキュラーシーブのメソ多孔性を評価する定量試験は、以下に詳細に説明する。
【0017】
特定の理論に拘泥することを望むものではないが、多孔性粒子中のメソ細孔の存在が、気体が膜の横断においてこれを通過しなければならないポリマーの距離又は厚さを減少することによって透過率を向上させると思われる。メソ細孔は、膜中に非選択性の容積又は経路を形成し、これを通って気体が迅速に通過することができる。高度に選択性のあるポリマーキャリアーを気体は依然として通過しなければならないので、膜は有意の選択性を保持している。膜の粒子中にメソ細孔が存在することが、効果的に混合マトリックス膜が薄い膜のような生産性(透過率)を有することを可能にする。しかしながら、引っ張り強さの目的において、混合マトリックス膜は、ニートポリマー膜よりも大きな強度を有しているはずである。
【0018】
高度に選択性で、多孔性粒子を支持できる連続相ポリマーについて最初に説明する。次いで、連続相ポリマーに組み込まれる例示的無機多孔性粒子について教示する。ポリマー及び多孔性粒子を使用して混合マトリックス膜を作製する方法を次に説明する。最後に、本発明に従って作製した混合マトリックス膜が、従来の膜に比較して、著しい選択性能の損失なしで、相対的に高い透過率を持って作製され得ることを示す実施例を提供する。好ましい実施形態において、この膜は二酸化炭素及びメタンを含有する気体混合物を分離するのに有用である。
【0019】
I.ポリマーの選択
例えば、二酸化炭素及びメタンなどの、所望の分離する気体を通過させることのできる適切に選択されたポリマーを使用することができる。ポリマーは、1つ又は複数の所望の気体を、個別の気体の内の1つ、例えば二酸化炭素が、別の気体、例えばメタンよりも速い速度でポリマーを通過できるなど、他の成分とは異なる速度でポリマーを透過できることが好ましい。
【0020】
CO及びCH分離のための混合マトリックス膜の作製に使用するのに最も好ましいポリマーには、Ultem(登録商標)1000、Matrimid(登録商標)5218、6FDA/BPDA−DAM、6FDA−6FpDA、及び6FDA−IPDA(すべてポリイミド樹脂)が含まれる。6FDA/BPDA−DAM及び6FDA−IPDAは、Delaware州WilmingtonのE.I.du Pont de Nemours and Companyから入手することができ、米国特許第5,234,471号に記載されている。Matrimid(登録商標)5218は、New York州BrewsterのAdvanced Materialsから市販されている。Ultem(登録商標)1000は、Indiana州Mount VernonのGeneral Electric Plasticsから商業的に入手することもできる。
【0021】
適切なポリマーの例には、置換及び非置換ポリマーを含み、ポリスルホン;アクリロニトリルスチレンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー及びスチレン−ビニルベンジルハライドコポリマーなどのスチレン含有コポリマーを含むポリ(スチレン);ポリカーボネート;セルロースアセテート−ブチレート、セルロースプロピオネート、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロースその他などのセルロースポリマー;アリールポリアミド及びアリールポリイミドを含むポリアミド及びポリイミド;ポリエ−テル;ポリエーテルイミド;ポリエーテルケトン;ポリ(フェニレンオキシド)及びポリ(キシレンオキシド)などのポリ(アリーレンオキシド);ポリ(エステルアミド−ジイソシアネート);ポリウレタン;ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アクリレート)、ポリ(フェニレンテレフタレート)その他などのポリエステル(ポリアリーレートを含む);ポリピロロン;ポリスルフィド;ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(ブテン−1)、ポリ(4−メチルペンテン−1)、例えばポリ(ビニルクロリド)などのポリビニル、ポリ(ビニルフルオリド)、ポリ(ビニリデンクロリド)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)及びポリ(ビニルプロピオネート)などのポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルケトン)、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール)などのポリ(ビニルアルデヒド)、ポリ(ビニルアミド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルウレタン)、ポリ(ビニルウレア)、ポリ(ビニルホスフェート)、及びポリ(ビニルサルフェート)など、上記以外のアルファ−オレフィン不飽和を有するモノマーからのポリマー;ポリアリル;ポリ(ベンゾベンズイミダゾール);ポリヒドラジド;ポリオキサジアゾール;ポリトリアゾール;ポリ(ベンズイミダゾール);ポリカルボジイミド;ポリホスファジンなど;及びアクリロニトリル−臭化ビニル−パラ−スルホフェニルメタリルエーテルのナトリウム塩のターポリマーなど、上記からの反復単位を含有するブロックインターポリマーを含むインターポリマー;前述のいずれかを含むグラフト及びブレンドから選択することもできる。置換ポリマーを提供する代表的な置換基には、フッ素、塩素及び臭素などのハロゲン、ヒドロキシル基、低アルキル基、低アルコキシ基、単環式アリール、低アシル基などが含まれる。膜は、少なくとも約20、より好ましくは35℃において少なくとも30の二酸化炭素/メタンの選択率を示すことが好ましい。
【0022】
ポリマーは、ゴム状ポリマー又は柔軟性ガラス状ポリマーとは対照的な、硬質のガラス状ポリマーであることが好ましい。ガラス状ポリマーは、ポリマー鎖のセグメント運動の速度によってゴム状ポリマーと区別される。ガラス状態におけるポリマーは、ゴム状ポリマーの液体のような性質及びゴム状ポリマーに遠い距離(>0.5nm)にわたって急速にセグメント配置を調節する能力を可能にする、急速な分子運動を有していない。ガラス状ポリマーは、凍結形態における不動の分子主鎖を有するからまった状態の分子鎖の、非平衡的状態で存在する。ガラス転移温度(T)は、ゴム状又はガラス状の境界点である。T超では、ポリマーはゴム状態で存在する。T未満では、ポリマーはガラス状態で存在する。一般的に、ガラス状ポリマーはガス拡散に関して選択性環境を備えており、ガス分離の用途に有利である。硬質のガラス状ポリマーは、硬質のポリマー主鎖を持ったポリマーを表し、限定された分子内回転運動を有し、しばしば高いガラス転移温度(T>150℃)を有することで特徴づけられる。
【0023】
硬質の、ガラス状ポリマーにおいて、拡散係数が優位となる傾向があり、ガラス状膜は、小さくて低沸点分子を好む選択性を有する傾向がある。膜は、二酸化炭素(及び窒素)を、メタン及び他の軽質炭化水素より優先的に通過させる硬質の、ガラス状ポリマー材料から作られることが好ましい。かかるポリマーは当業者においてよく知られており、例えば、米国特許第4,230,463号(Monsanto)及び米国特許第3,567,632号(DuPont)に記載されている。適切な膜材料には、ポリイミド、ポリスルホン、及びセルロースポリマーが含まれる。
【0024】
II.メソ多孔性粒子
本発明の、無機多孔性粒子は、少なくとも0.10ccSTP/gのメソ多孔性を有していることが好ましい。更に大きな透過率のためには、モレキュラーシーブが0.15ccSTP/g以上のメソ多孔性を有していてもよい。本明細書において、メソ多孔性は、全細孔容積と多孔性粒子中のミクロ細孔容積との間の差異であると定義される。ミクロ細孔容積は、ASTM D4365−95を使用して決定することができる。全細孔容積は、0.99P/Pにおける吸着Nガス量(cu.cm.STP/g)である。「無機」という用語は、その枠組みにおいて実質上炭素を含まない粒子を意味するものとする。もっと正確に言えば、粒子の枠組みは、一般的にシリカ及びアルミナに依存する。本明細書及び添付の特許請求範囲において、メソ多孔性粒子は、少なくとも0.10ccSTP/gのメソ多孔性を有している粒子を意味するものとする。非−メソ多孔性粒子は、0.10ccSTP/g未満のメソ多孔性を有している粒子であると定義される。
【0025】
メソ多孔性粒子は、例えば米国特許第3,702,886号に記載されているZSM−5のような中間孔径モレキュラーシーブでも、例えば米国特許第4,401,556号に記載されているゼオライトYのような大孔径モレキュラーシーブでもよい。代わりに、モレキュラーシーブは、米国特許第5,098,684号に従って合成したMCM41などのメソ多孔性モレキュラーシーブとすることもできる。
【0026】
「中間の孔径」という語句は、本明細書において使用する場合、約4.0から7.1Åに及ぶ本実施形態のモレキュラーシーブのチャンネルの結晶的自由直径(crystallographic free diameters)を意味する。モレキュラーシーブのチャンネルの結晶的自由直径の説明は、例えば、ゼオライト及び他の非ゼオライト様モレキュラーシーブに関して、参照により本明細書に組み込まれている、「Atlasゼオライト枠組み種類(Atlas of Zeolite Framework Types)」C.Baerlocher他編集、第5改訂版(2001年)において公表されている。
【0027】
「大孔径」という語句は、本明細書において使用する場合、本実施形態のモレキュラーシーブのチャンネルの結晶的自由直径が7.1Åを超えることを意味する。
【0028】
しかしながら、モレキュラーシーブは小孔モレキュラーシーブであることがより好ましい。これらのシーブは、4.0Å未満の結晶的自由直径の孔を有する。小孔モレキュラーシーブが、最大のマイナー自由直径が3.0〜4.0Åの間のモレキュラーシーブであることが最も好ましい。
【0029】
その上、モレキュラーシーブの総合粒径も小さいことが理想的である。寸法は、粒径の数平均を指す。本明細書において使用する場合、記号「μ」は、ミクロンでの長さの基準、別の言い方ではマイクロメートルを表す。本明細書で説明する小粒子の粒径に関して、この長さの基準は、粒子がほぼ球形であろうと想定した粒子の公称又は平均直径であり、細長い粒子の場合は、長さが粒径である。
【0030】
小粒子の寸法を決定するための、様々な分析的方法が実務者に利用可能である。かかる方法の1つが、コールタールカウンター(Coulter Counter)法を使用するもので、この方法は数値を測定するために開口部の両側の白金電極から発生する電流を利用して、開口部を通過する個々の粒子の寸法を決定する。コールタールカウンター法は、J.K.Beddow編、「Particle Characterization in Technology,Volume1,Applications and Microanalysis」、CRC Press,Inc.、1984、pp.183−186、及びT.Allen、「Particle Size Measurement」、London:Chapman及びHall、1981、pp.392−413においてより詳細に説明されている。粒子を寸法に従って、垂直な空気の振動カラムと篩スタック上の反復性機械的パルスの組合せによって分離する音波篩も、本発明の方法において使用される粒子の粒径分布を決定するのに使用できる。音波篩は、例えば、T.Allen、「Particle Size Measurement」、London:Chapman及びHall、1981、pp.175−176において説明されている。平均粒径は、例えば、Malvern MasterSizer機を使用したレーザー光線散乱法によって決定することもできる。平均粒径は、下記の式を含む様々な周知の方法によって計算することができる。
【数1】


(ここで、zは、長さが間隔L内に含まれる粒子の数である)。本発明の目的に関し、平均粒径は、数平均として定義される。
【0031】
寸法は、0.2〜3.0ミクロンの間が理想であり、より好ましくは0.2〜1.5ミクロンの間、更に一層好ましくは0.2〜0.7ミクロンの間である。より小さな粒径によって、より高い膜の引っ張り強さが得られると思われる。モレキュラーシーブは、好ましくは1ミクロン未満、より好ましくは0.5ミクロン未満の数平均粒径を有するようの合成されることが好ましい。あまり好ましいことではないが、粒径は合成した後で、高剪断湿式ミル粉砕又はボールミル粉砕などによって低下させることができる。
【0032】
結晶寸法は、電子顕微鏡で測定して、0.03〜0.5ミクロンの間が理想であり、より好ましくは0.03〜0.3ミクロンの間、更に一層好ましくは0.03〜0.2ミクロンの間である。凝集物粒子シーブ内の小さな結晶寸法が、高いメソ多孔性に貢献すると思われる。
【0033】
モレキュラーシーブの構造型は、「IUPAC Commission on Zeolite Nomenclature)」による規則制定の後、「IZA Structure Commission」によって割り当てられたそれらの構造型式コードによって特定することができる。それぞれの独自の構成組織トポロジーが、3つの大文字から成る構造型式コードによって指定される。本発明で使用する好ましいモレキュラーシーブには、AEI、CHA、ERI、LEV、AFX、AFT及びGISのIZA構造指定を有するモレキュラーシーブが含まれる。かかる小孔モレキュラーシーブの例示的組成物には、ゼオライト、ある種のアルミノリン酸塩(AIPO’s)、シリコアルミノリン酸塩(SAPO’s)、メタロ−アルミノリン酸塩(MeAPO’s)、エレメントアルミノリン酸塩(EIAPO’s)、メタロ−シリコアルミノリン酸塩(MeAPSO’s)及びエレメンタルシリコアルミノリン酸塩(EIAPSO’s)を含む非ゼオライトモレキュラーシーブ(NZMS)が含まれる。
【0034】
本発明で使用することもできる小さなモレキュラーシーブの、制限するのではなくて例証としての例は、以下の表1に含まれる。表1は、どの様にしてモレキュラーシーブが合成されるかを説明した米国特許及び参考文献を含んでいる。これらの米国特許及び参考文献は、それらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明で使用するのに最も好ましいモレキュラーシーブは、ERI構造をもつシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブであるCVX−7である。好ましいCVX−7の合成のより詳細な説明は、以下の実施例5で説明する。一般的に、メソ多孔性CVX−7を作製するための合成条件は、以下の合成混合物中のモル比を含む。
SiO/Al =0〜0.2
/Al =0.7〜1.2
HF/Al =0〜2
Mg+2/Al =0〜0.1
有機物/Al =0.6〜5.0
O/A1 =30〜150
【0036】
好ましい有機物は、シクロヘキシルアミンである。好ましいシード含有量は0.5〜10重量%である。合成温度は、175〜210℃において、高温の場合12時間、低温の場合7日間が好ましい。
【0037】
別の特に好ましいシーブ粒子は、メソ多孔性SSZ−13である。メソ多孔性SSZ−13の合成の例は、実施例1に記述されている。同様に、特に好ましいシーブには、SAPO−17、MeAPSO−17、SAPO−34、SAPO−44及びSAPO−47が含まれる。MeAPSO−17モレキュラーシーブは、制限するのではなく例として、チタン、マグネシウム、クロム、ニッケル、鉄、コバルト、及びバナジウムを含む金属構成要素を有することができる。
【0038】
【表1】

【0039】
III.混合マトリックス膜の形成方法
モレキュラーシーブは、場合によって、但し好ましくは、所望のマトリックスポリマー少量又はマトリックス相に使用される有機ポリマーと混和性の適切な「ノリ付け剤(sizing agent)」を添加することによって、「下塗り(primed)(又はノリ付け(sized))」することができる。一般的に、この少量のポリマー又は「ノリ付け剤」は、モレキュラーシーブが適切な溶媒中に分散され、超音波攪拌源によって超音波処理された後に加えられる。
場合によっては、ポリマー又は「ノリ付け剤」が不溶性である非極性の非溶媒を、希釈された懸濁物に加えて、ポリマーのモレキュラーシーブ上への沈澱を開始させることもできる。「下塗り」されたモレキュラーシーブは、注型のための適切な溶媒中での再分散の前に、ろ過して取り出し、例えば、真空オーブンなどの任意の慣用の手段によって、乾燥することができる。少量のポリマー又は「ノリ付け剤」は、最初の薄い被覆(即ち境界層)をモレキュラーシーブ表面に提供し、ポリマーマトリックスに適合する粒子を作製することを助ける。
【0040】
好ましい実施形態において、最終混合マトリックス膜に加えられる全ポリマー材料の約10%の量は、モレキュラーシーブを「下塗り」するために使用される。スラリーを、好ましくは約6から7時間の間、攪拌し混合する。混合後、加えられる残りの量のポリマーは、スラリーへと堆積される。モレキュラーシーブの量及び加えられるポリマーの量が、最終混合マトリックス膜における「添加量」(又は固体粒子濃度)を決定する。本発明を制限することなく、モレキュラーシーブの添加量は、約10体積%から約60体積%であることが好ましく、より好ましくは約20体積%から約50体積%である。所望の粘度を実現するためには、溶媒中のポリマー溶液濃度は、約5重量%から約25重量%が好ましい。最後に、スラリーは適切な手段により約12時間再度十分に攪拌して混合される。
【0041】
粒子をポリマーフィルムに組み込む前に、少量のポリマーを用いて粒子を「下塗り」するこの技術は、粒子を一層ポリマーフィルムに適合させると思われる。また、粒子とポリマーの間のより大きな親和/付着を促進すると思われ、混合マトリックス膜中の欠陥を取り除くこともできる。
【0042】
混合マトリックス膜は、通常上記の粒子及び所望のポリマーを含有する均一なスラリーの注型によって形成される。スラリーは、例えば、ホモジナイザー及び/又は超音波を使用して、ポリマー又はポリマー溶液中の粒子の分散を最大化して混合することができる。注型方法は、
(1)溶液を、平らな水平表面(好ましくはガラス表面)上に注ぐ;
(2)溶媒を、ゆっくりと実質上完全に溶液から蒸発させて固体膜を形成する;及び
(3)膜を乾燥する
の3段階で実施することが好ましい。
【0043】
膜の厚さ及び面積を制御するために、溶液は金属リングの鋳型に注ぐことが好ましい。領域を覆って蒸発溶媒のフラックスを制限することにより、溶媒は好ましくはゆっくりと蒸発する。通常蒸発は完了するまでに約12時間を要するが、使用する溶媒に応じて更に長くすることができる。固体膜を平らな表面からとり除いて真空オーブン中で乾燥することが好ましい。真空オーブンの温度は、残存溶媒を除去し、最終混合マトリックス膜をアニーリングするために、約50℃から約110℃(又は、溶媒の標準沸点より約50℃超)であることが好ましい。
【0044】
最終の、乾燥した混合マトリックス膜は、そのガラス転移温度(T)を超える温度で更にアニーリングすることができる。混合マトリックス膜のTは、任意の適切な方法(例えば、示差走査熱量測定法)で決定することができる。混合マトリックス膜は、平らな表面に固定して、高温の真空オーブン中に置くことができる。真空オーブン(例えば、Thermcraft(登録商標)ファーネスチューブ)中の圧力は、約0.01mmHgと約0.10mmHgの間であることが好ましい。システムは、0.05mmHg以下の圧力まで排気することが好ましい。加熱プロトコールは、温度が、好ましくは約2〜3時間で、混合マトリックス膜のTに達するようにプログラムされる。次いで温度を、好ましくは約10℃から約30℃、最も好ましくは約20℃、Tより上昇させて、その温度を約30分から約2時間維持する。加熱サイクルが完了した後、混合マトリックス膜を、真空下周囲温度まで冷却する。
【0045】
得られた混合マトリックス膜は、所望の成分及び他の成分を含む気体混合物から、1つ又は複数の気体成分を分離するのに有効な膜材料である。使用の非限定例において、得られた膜は、二酸化炭素をメタンから分離する能力を有し、これら物質に対して透過率があり、適切な強度、耐熱性、耐久性及び商用的精製で使用される溶媒に耐性を有している。
【0046】
IV.膜を含む分離システム
膜は、例えば中空繊維、管状形状、及び他の膜形状など、当該技術において知られているどのような形状でもよい。他の幾つかの膜形状には、渦巻状、プリーツ状、平板、又は多角形チューブが含まれる。複合中空繊維膜チューブは、それが相対的に大きな流体接触面積を有しているので好ましいことがある。接触面積は、付加的にチューブ又はチューブ状輪郭を加えることで、更に増加させることもできる。接触は、また流体乱流又は渦巻きを増加させることによって気体流を変えることで増加させることもできる。
【0047】
平板膜に関して、混合マトリックス選択性層の厚さは約0.001と0.005インチの間であり、約0.002インチであることが好ましい。非対称の中空繊維形状において、混合マトリックスの選択性表面薄層の厚さは、約1,000Åから約5,000Åであることが好ましい。連続ポリマー相におけるモレキュラーシーブの添加量は、体積比で約10%と60%の間であり、より好ましくは、約20%から50%である。
【0048】
良好な気体選択率、例えば二酸化炭素/メタン選択率を備えた好ましいガラス状物質は、相対的に低い透過率を有する傾向がある。従って、膜の好ましい形状は、インテグラルスキン(integrally skinned,削り出し)または非対称的中空繊維の複合体であり、これらは大きな膜面積の使用を促進するものであり、共に非常に薄い選択性膜及び高い充填密度を有している。中空チューブも使用することができる。
【0049】
シートは、供給材残留スペーサと透過スペーサによって交互に分離されている多数の膜の層を含むフラットスタック透過材を製造するのに使用することができる。これらの層は、個別の供給材残存ゾーンと透過ゾーンを明確にするために、それらの端部に沿って接着することができる。かかる種類の装置は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,104,532号に記載されている。
【0050】
膜は、混合マトリックス膜を含有する1つ又は複数の内管を取り囲んでいる外側の穿孔外殻を含む分離システム中に含めることができる。外殻及び内管は、異物回収ゾーンを隔離するためにパッキングを用いて取り囲むことができる。
【0051】
一実施形態において、気体混合物は、コンテインメント回収ゾーンを経由し外側の穿孔外殻の穿孔を通って分離システムに入る。気体混合物は、内管を通って上方へと通過する。気体混合物が内管を通過するとき、混合物の1つ又は複数の成分が選択性膜を通って内管から浸透し、コンテインメント回収ゾーンに入る。
【0052】
膜は、カートリッジに含めて異物を混合気体から透過させるのに使用することができる。異物は膜を通過して透過することができ、一方所望成分は、膜の頂部から継続して取り出される。膜は、穿孔チューブ内に積み重ねて内管を形成することもできるし、又は相互接続して自立したチューブを形成することもできる。積み重ねられた膜要素のそれぞれは、混合気体の1つ又は複数の成分を透過するように設計することもできる。例えば、1つの膜は二酸化炭素を除去するように、第2の膜は硫化水素を除去するように、そして第3の膜は窒素を除去するように設計することもできる。膜は、様々な成分を気体混合物から異なる順序で除去するように、様々な配置で積み重ねることもできる。
【0053】
異なる成分は、単一の異物回収ゾーンへと除去して一緒に処分するか又は異なるゾーンに除去することもできる。膜は、特定の用途に応じて、直列又は並列配置又はこれらの組合せで配置することもできる。
【0054】
膜は、ワイヤライン、コイル巻き、又はポンピングなどの慣用の修正技術によって、取り出し可能及び入れ替え可能とすることもできる。入れ替えに加えて、膜要素は、その場所で、気体、液体、洗浄剤、又は他の物質を膜にポンプで通して膜の表面に蓄積した物質を取り除いて洗浄することもできる。
【0055】
本明細書で説明した膜を含む気体分離システムは、特定の用途に応じて長さを変えることもできる。気体混合物は、混合物が膜のチューブの内側に流れ、除去された成分が、チューブを浸透通過するインサイド−アウト流路に従って膜を通って流れることができる。別の方法として、気体混合物は、アウトサイド−インの流路に従って膜を通って流れることができる。
【0056】
液体又は微粒子異物と膜との間の損傷を与える可能性のある接触の悪影響を防止又は減少させるために、外管内で混合気体流に回転或いは渦巻きを起こさせることもできる。この回転は、例えば1つ又は複数の渦巻き偏向板を使用するなど、周知の方法により実現することもできる。混合気体から除去した成分を除去及び/又はサンプリングするために、ベントを備えていてもよい。
【0057】
V.精製方法
分離する気体、例えば二酸化炭素及びメタンを含有する混合物は、例えば、上記形態のいずれかの混合マトリックス膜を通すガス相プロセスによって濃縮することができる。
【0058】
混合物を濃縮するための好ましい条件は、約25℃と200℃の間の温度、及び約50psiaと5,000psiaの間の圧力を使用することを含む。これらの条件は、供給流に基づくルーチンの実験作業を用いて変更することができる。
【0059】
他の気体混合物は、上記のどの形態かの混合マトリックス膜を使用して精製することができる。例えば、用途には窒素又は酸素による空気の濃縮、メタン流からの窒素又は水素の除去、或いは合成ガス流からの一酸化炭素の除去が含まれる。また混合マトリックス膜は、精油所流、及び例えばパラフィンの接触脱水素における脱水素反応流出物など、他のプロセス流からの水素分離にも使用することができる。一般的に、混合マトリックス膜は、例えば、水素、窒素、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、ヘリウム及び酸素を含む気体混合物のどの分離プロセスにも使用することもできる。同様に、膜はエチレンのエタンからの分離及びプロピレンのプロパンからの分離に使用することができる。分離できる気体は、モレキュラーシーブを通って通過できる運動直径(kinetic diameter)を有する気体である。気体分子の運動直径(本明細書では「分子の大きさ」とも呼ばれる)は周知であり、モレキュラーシーブ中のボイドの運動直径もよく知られており、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、D.W.Breck、Zeolite Molecular Sieves、Wiley(1974)に記載されている。
【0060】
VI.膜評価
平らな混合マトリックス膜の透過率測定は、マノメーター法又は一定容積法を用いて行うことができる。密で、平らなポリマーフィルムの透過率測定を実施する装置は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、O’Brien他、J.Membrane Sci.、29、229(1986)及びCostello他、Ind.Eng.Chem.Res.、31、2708(1992)に記載されている。透過率システムは、上流及び下流のための2つの受入れ容積を含有する温度自動調節付きチャンバー、膜セル、下流のためのMKS Baratron(登録商標)絶対圧力変換器(0〜10トール又は0〜100トールの範囲)、上流のためのアナログ又はデジタル高圧力ゲージ(0〜1000psia)、溶接したステンレス鋼配管、Nupro(登録商標)ベローズ式密封弁、及びCajon VCR(登録商標)金属面密封接続を含んでいる。チャンバーの温度は、25℃から75℃の範囲で透過率測定を行えるように調節できる。
【0061】
透過率試験装置の概略図を図1に示す。ここで、1は加熱チャンバー、2は供給ガスシリンダー、3は真空ポンプ、4は供給物受入れ容積、5は透過気体受入れ容積、6は圧力変換器、7は膜セル、8は温度自動調節機能付きヒーター、9はファン、10は圧力ゲージである。
【0062】
平らな膜は、膜を通る透過気体のために、円形の事前にカットした露出部を有する付着性アルミニウムマスクを用いてマスクすることができる。アルミニウムマスク接着部と膜の間に非選択性気体が流れるのを防止するために、5分間エポキシを、膜とアルミニウムマスクの接合部分に塗布することも用いられる。膜の厚さ(高解像度マイクロメーターによる)及び膜透過表面積(イメージスキャン及び面積計算ソフトによる)を測定する。
【0063】
エポキシを、おおよそ12時間から約24間かけて乾燥した後、マスクした膜を透過セル及び透過システムに設置することができる。透過システムの上流セクション及び下流セクションの両方を、約24時間から48時間排気して、膜へと吸着されるガス又は蒸気を取り除く(「脱ガス」)。膜の透過試験は、所望の気体(純粋の気体又は気体混合物)を有する上流を所望の圧力で加圧することによって実施することができる。透過速度は、MKS Baratron(登録商標)絶対圧力変換器の時間の経過に伴う圧力上昇と、既知の下流(透過)容積とから測定することができる。圧力上昇データは、高精度データ取得ハードウェア/ソフトウェア(又は別の方法として、速度規制ストリップチャート記録紙上にプロットする)によって記録される。気体混合供給の試験を実施するときは、透過気体流をガスクロマトグラフィーによって分析して、組成を決定する。所定の気体の透過試験に続いて、上流セクション及び下流セクションの両方を、次の気体を透過試験する前に一夜排気した。
【0064】
モレキュラーシーブが適切にそして成功裏に作製され、向上した透過率能を有する混合マトリックス膜を生成することを検証するために、試験を行うことができる。この試験は、試験ポリマーを用いてサンプル混合マトリックス膜を調製し、指定のモレキュラーシーブ粒子を添加量し、CO/CH透過選択率を、シーブを添加していない同じ試験ポリマーの膜、即ちニートポリマーから作製した膜との比較を含む。この試験は35℃において、ニートポリマーで作製された膜を横断する圧力差が50psiaで実施された。CO/CH透過選択率は、COの透過率のCHのそれに対する比を取ることで決定される。透過気体の透過率「i」は、圧力及び厚さを正規化した膜を通り抜ける成分のフラックスであり、次式によって規定される。
【数2】


ここで、Pは、成分iの透過率であり、lは膜層の厚さであり、Nは成分iの膜を通り抜けるフラックス(単位膜面積当たりの体積流量)であり、Δpiは成分iの分圧駆動力(上流と下流の間の分圧差)である。透過率は、しばしば慣習的にバーラー(Barrer)の単位で表現される(1Barrer=10−10cm(STP)・cm/cm・s・cmHg)。透過率の測定は、マノメーター法又は一定容積法を用いて測定することができる。フィルムにおける透過率測定を行う装置は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、O’Brien他.、J.Membrane Sci.、29、229(1986)及びCostello他.、Ind.Eng.Chem.Res.、31、2708(1992)において記述されている。
【0065】
CO及びCHの純粋気体又は混合気体(例えば、10%CO/90%CH)の透過率試験は、混合マトリックス膜上で実施される。混合マトリックス膜は、上流は約50psiaの圧力で、そして下流は真空の状態で、別々に各気体を試験する。透過率システム内部の温度は、約35℃に維持する。シーブ粒子を加えていない同じ試験ポリマーで調製した膜上で、CO及びCHの純粋気体又は混合気体(例えば、10%CO/90%CH)の同様の透過率試験を実施する。モレキュラーシーブ粒子が、本明細書に記載されている方法によって適切に生成され調製されたことを確認するために、混合マトリックス膜は、試験ポリマー膜だけのCO/CH透過率の30%以上のCO/CH透過率の向上を示し、ニートポリマーから作製された膜に比較して、選択率の任意の減少が10%以下でなければならない。
【0066】
上記試験は、混合マトリックス膜について、CO及びCHの透過率及び選択率について実施したが、本発明は、あらゆる流体分離のために、メソ多孔性粒子を使用する混合マトリックス膜を使用することも包含する。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
メソ多孔性SSZ−13粒子の合成
高いメソ多孔性を有するSSZ−13粒子を、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタアンモニウム陽イオンを結晶化テンプレート又は構造指向剤として用いて、米国特許第4,544,538号に従い調製した。シリカ源はHiSil33(PPG)、アルミナ源はReheis F−2000であった。試薬のモル比は、
SiO/Al =37
OH/SiO =0.38
Na/SiO =0.20
有機物/SiO =0.18
O/SiO =17であった。
【0068】
結晶化は、160℃において6日間、攪拌しながら実施した。生成物は、ろ過、洗浄、及び焼成の後で、全細孔容積0.494ccSTP/g、ミクロ細孔容積0.295ccSTP/g及びメソ細孔容積0.199ccSTP/gを有していた。メソ細孔分析を、ASTM D4365−95に従って実施した。「メソ細孔容積」は、全細孔容積とミクロ細孔容積の差として定義される。
【0069】
比較例A
非メソ多孔性SSZ−13粒子の合成
別のSSZ−13を、実施例1と同様に以下の試薬のモル比で作製した。
SiO/Al =39
OH/SiO =0.41
Na/SiO =0.21
有機物/SiO =0.21
O/SiO =50
【0070】
この場合、SiO源は、Cab−o−Sil M−5(Cabot)であった。結晶化は、160℃において6日間、攪拌しながら実施した。生成物は、ろ過、洗浄、及び焼成の後で、全細孔容積0.372ccSTP/g、ミクロ細孔容積0.299ccSTP/g及びメソ細孔容積0.073ccSTP/gを有していた。メソ細孔分析を、ASTM D4365−95に従って実施した。「メソ細孔容積」は、全細孔容積とミクロ細孔容積の差として定義される。
【0071】
(実施例2)
混合マトリックス膜の調製
混合マトリックス膜を、SSZ−13ゼオライト粒子を分散相として用いて調製した。ポリマー中に分散する前に、SSZ−13ゼオライト粒子は最初にシラン結合剤を用いて表面改質を行った。使用したシラン結合剤は、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン(APDMES)であり、以下の化学構造を有している。
【化1】

【0072】
シラン化手順は下記の通り実施した。200mLの溶液を、イソプロピルアルコール(ACS認定品質等級)及び蒸留水の95:5(体積)比により調製した。別個の500mL容器中で、シラン結合剤(3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、即ちAPDMES)4.0グラムを、SSZ−13ゼオライト2グラムに加えた。第1ステップで調製したイソプロパノール溶液をこの500mL容器に加えてスラリーを形成した。SSZ−13/APDMES/イソプロパノール/水のスラリーを超音波ホーン(Sonics and Materials)を用いて、5分間間隔(5分間超音波処理した後5分間休む)で、合計30分間超音波処理/30分間休みの超音波処理を施した。
【0073】
超音波処理の後、スラリーを高速(〜9000rpm)で1時間遠心分離し、沈澱した固体分を低部に、イソプロパノール/水溶液混合物を頂部に残した。遠心分離が完了したならば、イソプロパノール/水溶液を傾瀉し、その後に沈澱した固体(APDMESシラン化SSZ−13)を底部に残した。新しいイソプロパノール100mLを沈澱した固体に加えてスラリーを形成し、これを上記の第3ステップ(30分間超音波処理/30分間休み)に従って、1時間超音波処理した。超音波処理の後、スラリーを高速(9000rpm)で1時間遠心分離し、沈澱した固体分(APDMES−シラン化SSZ−13)を低部に、イソプロパノール溶液を頂部に残した。上記の遠心分離手順を、イソプロパノールの追加の2個の分割量について繰り返した。APDMES−シラン化SSZ−13粒子を容器からこすり取ってアルミフォイルを敷いたペトリ皿に移し、真空オーブン中で150℃において一夜乾燥した。シーブは、フィルムに組み込む直前まで取っておいた。
【0074】
Ultem(登録商標)1000ポリマーマトリックス中に、18重量%のAPDMES−シラン化SSZ−13シーブを含む混合マトリックス膜を以下の手順で形成した。合計で0.250グラムのAPDMES−シラン化SSZ−13粒子(上記のシラン化で調製した)を、CHCL溶媒約5mLを含有する40mLの小瓶に加えた。スラリー中の粒子を、小瓶中で強力な超音波ホーン(VibraCell(商標)、Sonics & Materials,Inc.)を用いて約2分間超音波処理した。スラリーは、機械的振動器上で約1時間十分に攪拌し混合した。全体で0.125グラムの乾燥Ultem(登録商標)1000ポリマーを、小瓶中のスラリーに加えた。小瓶を、機械的振動器上で約2時間十分に混合した。次いで、乾燥Ultem(登録商標)1000ポリマー1.00グラムをスラリー溶液に加えて、APDMES−シラン化SSZ−13粒子を18重量%添加量した溶液を形成した。小瓶を、再度機械的振動器上で約16時間十分に再度混合した。密封可能なプラスチックグローブバッグ(Instruments for Research and Industry(登録商標)、Cheltenham、PA)をセットし、CHCCl溶媒約200mLを用いてほぼ飽和した。Ultem/APDMES−シラン化SSZ−13スラリー溶液を、プラスチックグローブバッグの内側に置かれている、平らで、清潔で、水平な、レベル合わせしたガラス表面上に注いだ。ほぼ飽和した環境は、CHClの蒸発を減速させる。
【0075】
注型/ドクターブレードを、溶液の取り出し又は「注型」に使用して、均一な厚さのウェットフィルムを形成した。得られた液体フィルムを、逆さにしたガラス製覆い皿で覆って、溶媒の蒸発を更に遅らせ、ほこりなどとの接触を防止した。ポリマーフィルムからCHCl溶媒を、約12時間かけてゆっくりと蒸発させた。厚さが約35ミクロンの、乾燥フィルムをガラス基材から取り除いた。得られた混合マトリックス膜を、真空オーブン中、150℃において約12時間乾燥した。
【0076】
(実施例3)
メソ多孔性SSZ−13粒子を使用する混合マトリックス膜の調製
混合マトリックス膜を、実施例1で調製したメソ多孔性SSZ−13粒子を用いて調製した。これらのメソ多孔性SSZ−13粒子は、実施例2で説明したように、Ultem(登録商標)1000ポリマーマトリックス相中に分散する前に、最初にAPDMESでシラン化した。混合マトリックス膜は、18重量%のAPDMES−シラン化メソ多孔性SSZ−13粒子をUltem(登録商標)1000マトリックス内に含有し、実施例2と同じ方法で調製された。
【0077】
比較例B
非メソ多孔性SSZ−13粒子を使用するUltem混合マトリックス膜の調製
混合マトリックス膜を、比較例Aで調製した非メソ多孔性SSZ−13粒子を用いて調製した。これらの非メソ多孔性SSZ−13粒子は、実施例2で説明したように、Ultem(登録商標)1000ポリマーマトリックス相中に分散する前に、最初にAPDMESでシラン化した。混合マトリックス膜は、18重量%のAPDMES−シラン化非メソ多孔性SSZ−13粒子をUltem(登録商標)1000マトリックス内に含有し、実施例2と同じ方法で調製された。
【0078】
比較例C
Ultem(登録商標)1000のニートポリマー膜の調製
Ultem(登録商標)1000は、ポリエーテルイミドであり、General Electric Plastics of Mount Vernon、Indiana州.から市販されている。これの化学構造を以下に示す。
【化2】

【0079】
ニートUltem(登録商標)1000膜は、溶液注型を介して形成される。Ultem(登録商標)1000を、最初真空オーブン中、110℃で一夜乾燥した。次いで乾燥Ultem(登録商標)1000ポリマー0.55グラムを、40mL小瓶中の5mLのCHCl溶媒に加えた。ポリマーが溶液に溶解したことを保証するために、小瓶を機械式攪拌機上で約1時間十分に攪拌し混合した。ポリマー溶液を、調節された環境(例えばプラスチックグローブバッグ)内部に置かれた平らで、清潔で、水平な、レベル合わせしたガラス表面上に注いだ。注型/ドクターブレードを、溶液の取り出し又は「注型」に使用して、均一な厚さのウェットフィルムを形成した。液体フィルムは、逆さにしたガラス製覆い皿で覆って、蒸発を遅らせ、ほこりなどとの接触を防止した。ポリマーフィルムから溶媒を、約12時間かけてゆっくりと蒸発させた。厚さが約30ミクロンの、乾燥フィルムをガラス基材から取り除いた。得られたUltem(登録商標)1000膜を、真空オーブン中、150℃において約12時間乾燥した。
【0080】
Ultem(登録商標)1000のニートポリマー膜の透過性質を、前の「膜評価」セクションにおいて説明した装置及び手順を使用して決定した。透過試験中、10%CO/90%CHを含有する気体混合物を供給ガスとして使用した。ニートUltem(登録商標)1000フィルムの上流又は供給側は、圧力50psiaでこの気体混合物に曝されていた。ニートUltem(登録商標)1000膜の下流又は透過側は、真空に維持されていたので、結果として50psiaの差圧駆動力が、ニートUltem(登録商標)1000膜を横断して生じた。透過システムを35℃の一定温度に維持して、膜を通り抜ける気体の透過速度を、圧力上昇法を用いて測定し、透過ガスの成分をガスクロマトグラフィー(HP6890)を用いて分析した。結果を、個々の気体透過率及び気体間の総合的選択率について表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2の透過率値から、ニートUltem(登録商標)1000膜のCO/CHに関する透過率比率(選択率)は、35℃において39.2であった。
【0083】
(実施例4)
メソ多孔性及び非メソ多孔性SSZ−13粒子を使用する混合マトリックス膜の透過率試験
実施例3及び比較例BからのUltem(登録商標)1000−SSZ−13混合マトリックスフィルム(SSZ−13が18重量%)からのサンプルクーポン切片を、透過試験により評価した。実施例3は、APDMESシラン化メソ多孔性SSZ−13ゼオライト粒子を使用したが、これに対して比較例Bは、APDMESシラン化非メソ多孔性SSZ−13ゼオライト粒子を使用した。各実施例からのクーポン切片を適当なサイズ及び寸法に切断し、透過試験セル中で使用して(「膜評価」セクションで説明したように)、10%CO/90%CHを含有する混合気体混合物に関する透過率及び分離係数を測定した。Ultem(登録商標)1000−SSZ−13混合マトリックス膜の上流側は、この気体混合物に50psiaの圧力で曝されていた。Ultem(登録商標)1000−SSZ−13混合マトリックス膜の下流側は、真空に維持されていたので、結果として50psiaの差圧駆動力が、Ultem(登録商標)1000−SSZ−13混合マトリックス膜を横断して生じた。透過システムを35℃の一定温度に維持して、膜を通り抜ける気体の透過速度を、圧力上昇法を用いて測定し、透過ガスの成分をガスクロマトグラフィー(HP6890)を用いて分析した。結果を、これらUltem(登録商標)1000−SSZ−13混合マトリックス膜に関するCO気体透過率及び総合的CO/CH選択率について表3に示す。このデータを、比較例CからのニートUltem(登録商標)1000膜から評価したデータと比較する。
【0084】
【表3】

【0085】
Ultem(登録商標)1000−SSZ−13(メソ多孔性SSZ−13を使用)混合マトリックス膜は、比較例CのニートUltem(登録商標)フィルムにおけるそのような対応する値よりも、CO/CH選択率が20%高く、CO透過率は236%高いことを示している。従って、この混合マトリックス膜は、混合マトリックス効果を示している。これらのAPDMESシラン化メソ多孔性SSZ−13ゼオライト粒子の添加は、混合マトリックス膜に対してニートポリマー膜を超える有益な性能向上を提供した。
【0086】
これに対して、Ultem(登録商標)1000−SSZ−13混合マトリックス膜(非メソ多孔性SSZ−13粒子を使用)のCO/CH透過率比(選択率)は、38.7である。この混合マトリックス膜は、このCO/CH選択率が、比較例Cで試験されたニートUltem(登録商標)1000ポリマー膜に関して測定された(39.2のCO/CH選択率の)CO/CH透過率を超えて増加していないので、混合マトリックス効果又は選択率の向上は観察されていない。更に、このUltem(登録商標)1000−SSZ−13混合マトリックス膜に関するCO透過率は、比較例CのニートUltem(登録商標)フィルムにおける対応するCO透過率より12%しか高くない。これらの性能結果は、メソ多孔性SSZ−13粒子を使用するUltem(登録商標)1000−SSZ−13混合マトリックス膜(実施例3)の向上した分離能力に対して対照的である。
【0087】
従って、高メソ多孔性(0.1ccSTP/g超と規定される)シーブ粒子の添加は、混合マトリックス膜に対してニートポリマーで作製された膜を超える有益なそして実質的な透過率の向上をもたらす。更に、透過率及び生産性における増加は、「低」メソ多孔性シーブ粒子を組み込んだ膜の増加よりも著しく高い。
【0088】
(実施例5)
メソ多孔性CVX−7粒子の合成
ERI枠組み構造を有するシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ、CVX−7を、以下の手順に従って合成した。初めに、アルミニウムイソプロポキシド(Chattem Chemical,Inc製)634グラムを、100(US)メッシュに粉砕し、激しく攪拌しながら脱イオン水1、600グラムに添加した。この混合物を2時間攪拌した。次いで、正リン酸(水中85重量%、EMS)352グラムを、アルミニウムイソプロポキシド/水混合物に激しく攪拌しながらゆっくりと加えた。得られた混合物を30分間激しく混合した。
【0089】
次の段階において、コロイド状シリカLUDOX AS−30(Du Pont製)31.2グラムを、攪拌しながら混合物に加え、その後48重量%のフッ化水素酸(Baker製)64.8グラムを加えた。得られた混合物を1時間攪拌した。最後に、シクロヘキシルアミン155グラム(Aldrich製)を混合物に加え、その後30分間攪拌した。調製は、出来上がったばかりの7グラムのSAPO−17を手始めとした。この材料は、米国特許第4,440,871号に従い作製した。最終混合物のpHは4.8であった。混合物200グラムを、1ガロンのステンレス鋼ライナーに移し、このライナーを攪拌反応装置に置いた。材料を、200℃において150rpmで42時間にわたって攪拌して合成した。
【0090】
生成混合物のpHは7.1であった。生成物は、その母液から真空ろ過によって分離し、続いてHCl/メタノール溶液(0.05M HCl5部に対してメタノール1部)1.5ガロンで洗浄し、水2ガロンですすいだ。生成物は室温で一夜乾燥した。その後生成物を、温度を室温から630℃まで、1℃/分で上昇させて焼成した。混合物を630℃で6時間保持し、次いで室温に冷却した。得られた生成物のPXRDパターンはエリオナイト型(Erionite−type)物質であった。生成物は、ICPバルク元素分析で測定して、シリカの対アルミナモル比が0.1であった。
【0091】
ミクロ細孔分析(ASTM D4365−95)を、このバッチからのCVX−7ゼオライト粒子について実施した。結果を表4に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
このバッチからのCVX−7粒子は、高度(0.1ccSTP/g超と定義される)のメソ多孔性を示す。
【0094】
(実施例6)
メソ多孔性CVX−7粒子を使用する混合マトリックス膜の調製
混合マトリックス膜を、実施例5において合成したように、分散相としてメソ多孔性CVX−7粒子を使用して調製した。比較例Cで説明したように、以前と同様Ultem(登録商標)1000を、混合マトリックス膜中のポリマー連続マトリックス相として使用した。Ultem(登録商標)1000マトリックス内に、18重量%CVX−7粒子を含有する混合マトリックス膜を調製した。しかしながら、相対的に低いシリカの対アルミナモル比(0.1)を有するこれらCVX−7シーブ粒子は、非シラン化であった。従ってこれらは著しい混合マトリックス効果を達成するのにシラン結合剤を必要としなかった。これらは、任意のシラン結合剤による更なる表面改良なしで、「合成したまま」の状態で使用した。これに対して、高いシリカの対アルミナ比を有するSSZ−13シーブは、シラン化なしでは、満足すべき混合マトリックス効果を備えていなかった。
【0095】
Ultem(登録商標)1000−CVX−7混合マトリックス膜を、以下のステップで形成した。最初に、非シラン化CVX−7粒子0.250グラムを、CHCl溶媒約5mLを含有する40mLの小瓶に加え、スラリーを形成した。スラリー中の粒子を、小瓶中で強力な超音波ホーン(VibraCell(商標)、Sonics & Materials,Inc.製)を用いて、約2分間超音波処理した。スラリーを機械式攪拌機上で約1時間十分に攪拌及び混合した。乾燥したUltem(登録商標)1000ポリマー0.160グラムを、小瓶中のスラリーに加えた。次いで小瓶を機械式攪拌機上で約2時間十分に混合した。乾燥したUltem(登録商標)1000ポリマー1.003グラムをスラリー溶液に加えて、非シラン化CVX−7粒子を18重量%添加量した溶液を生成した。小瓶を、機械式攪拌機上で約16時間再度十分に混合した。密封可能なプラスチックグローブバッグ(Instruments for Research and Industry(登録商標)、Cheltenham、PA)をセットし、CHCl溶媒200mLを用いてほぼ飽和した。
【0096】
Ultem/非シラン化CVX−7スラリー溶液を、プラスチックグローブバッグの内側に置かれている、平らで、清潔で、水平な、レベル合わせしたガラス表面上に注いだ。ほぼ飽和した環境は、CHClの蒸発を減速させる。注型/ドクターブレードを、溶液の取り出し又は「注型」に使用して、均一な厚さのウェットフィルムを形成した。得られた液体フィルムは、逆さにしたガラス製覆い皿で覆って、溶媒の蒸発を更に遅らせ、ほこりなどとの接触を防止した。ポリマーフィルムからCHCl溶媒を、約12時間かけてゆっくりと蒸発させた。厚さが約35ミクロンの、乾燥フィルムをガラス基材から取り除いた。得られた混合マトリックス膜を、真空オーブン中、150℃において約12時間乾燥した。
【0097】
(実施例7)
メソ多孔性CVX−7粒子を使用する混合マトリックス膜の透過率試験
実施例6からのUltem(登録商標)1000−CVX7混合マトリックスフィルム(メソ多孔性CVX−7が18重量%)からのサンプルクーポン切片を、透過試験により評価した。クーポン切片を適当なサイズ及び寸法に切断し、透過試験セル中で使用して(「膜評価」セクションで説明したように)、10%CO/90%CHを含有する混合気体混合物に関する透過率及び分離係数を測定した。Ultem(登録商標)1000−CVX7混合マトリックス膜の上流側は、この気体混合物に50psiaの圧力で曝されていた。混合マトリックス膜の下流側は、真空に維持されていたので、結果として50psiaの差圧駆動力が、混合マトリックス膜を横断して生じた。透過システムを35℃の一定温度に維持して、膜を通り抜ける気体の透過速度を、圧力上昇法を用いて測定し、透過ガスの成分をガスクロマトグラフィー(HP6890)を用いて分析した。結果を、これら混合マトリックス膜に関するCO気体透過率及び総合的CO/CH選択率について表5に示す。このデータを、比較例CからのニートUltem(登録商標)1000膜から評価したデータと比較する。
【0098】
【表5】

【0099】
CO/CHに関するUltem(登録商標)1000−CVX−7混合マトリックス膜の透過率比(選択率)は、62.9であった。Ultem(登録商標)1000−CVX−7混合マトリックス膜のCO/CH選択率及びCO透過率は、両方とも比較例Cにおいて調べたニートUltem(登録商標)1000フィルムのそれを超えて向上した。従って、この混合マトリックス膜は、混合マトリックス効果を示す。18重量%のメソ多孔性CVX−7粒子を含有するこのUltem(登録商標)1000−CVX7−混合マトリックス膜は、ニートUltem(登録商標)1000フィルムのかかる対応する値より、CO/CH選択率が60%高く、CO透過率は107%高い。これらの非シラン化メソ多孔性CVX−7粒子の添加は、混合マトリックス膜に対して、ニート膜を超える有益な性能向上を提供した。従って、高メソ多孔性(0.1ccSTP/g超と規定される)シーブ粒子の添加は、低メソ多孔性を有するシーブ粒子の添加に比較して、混合マトリックス膜に対してニート膜を超える有益なそして実質的な透過率の向上もたらす。
【0100】
前述の明細書において、本発明はその一部の好ましい実施形態について記述し、例示の目的で多くの詳細内容について説明したが、当業者にとって、本発明が変更しやすく、本発明明細書で説明されている他の詳細が、本発明の基本原則から逸脱することなく大幅に変更できることは明らかである。例えば、実施例はCO及びCHの気体分離について説明したが、本発明は、いかなる流体分離のための、混合マトリックス膜及びメソ多孔性粒子を含有する混合マトリックス膜の作製方法及び使用も包含する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】特定の膜の透過率及び選択率を試験するために使用された分離システムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体分離のための混合マトリックス膜であって、
分散した無機モレキュラーシーブを有する連続相ポリマーを含み、前記ポリマーが少なくとも20のCO/CH選択率を有し、前記モレキュラーシーブが少なくとも0.1ccSTP/gのメソ多孔性を有し、ここで、
混合マトリックス膜のCO透過率がニートポリマーから作製された膜に比較して、少なくとも30%増加し、選択率の減少は10%以下である、混合マトリックス膜。
【請求項2】
前記モレキュラーシーブが、少なくとも0.15ccSTP/gのメソ多孔性を有する、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
ニートポリマーから作製された膜に比較して、前記透過率が少なくとも50%増加し、選択率の減少は10%以下である、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
前記ポリマーが、少なくとも30のCO/CH選択率を有する、請求項1に記載の膜。
【請求項5】
膜中のモレキュラーシーブ添加量が、20体積%と50体積%の間である、請求項1に記載の膜。
【請求項6】
前記ポリマーが、置換及び非置換ポリマーを含む群から選択され、ポリスルホン;アクリロニトリルスチレンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー及びスチレン−ビニルベンジルハライドコポリマーを含むスチレン含有コポリマーを含むポリ(スチレン);ポリカーボネート;セルロースアセテート−ブチレート、セルロースプロピオネート、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロースを含むセルロースポリマー;アリールポリアミド及びアリールポリイミドを含むポリアミド及びポリイミド;ポリエ−テル;ポリエーテルイミド;ポリエーテルケトン;ポリ(フェニレンオキシド)及びポリ(キシレンオキシド)を含むポリ(アリーレンオキシド);ポリ(エステルアミド−ジイソシアネート);ポリウレタン;ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(アルキルメタクリレート、ポリ(アクリレート)、ポリ(フェニレンテレフタレート)を含むポリエステル(ポリアリーレートを含む);ポリピロロン;ポリスルフィド;ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(ブテン−1)、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(ビニルクロリド)を含むポリビニル、ポリ(ビニルフルオリド)、ポリ(ビニリデンクロリド)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)及びポリ(ビニルプロピオネート)を含むポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルケトン)、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール)を含むポリ(ビニルアルデヒド)、ポリ(ビニルアミド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルウレタン)、ポリ(ビニルウレア)、ポリ(ビニルホスフェート)及びポリ(ビニルサルフェート)を含む、上記以外のアルファ−オレフィン不飽和を有するモノマーからのポリマー;ポリアリル;ポリ(ベンゾベンズイミダゾール);ポリヒドラジド;ポリオキサジアゾール;ポリトリアゾール;ポリ(ベンズイミダゾール);ポリカルボジイミド;ポリホスファジン;及びアクリルニトリル−臭化ビニル−パラ−スルホフェニルメタリルエーテルのナトリウム塩のターポリマーを含む上記からの反復単位を含有するブロックインターポリマーを含むインターポリマー;前述のいずれかを含むグラフト及びブレンドから選択されてもよく、ここで、置換ポリマーを提供する一般的な置換基は、フッ素、塩素及び臭素を含むハロゲン;ヒドロキシル基;低級アルキル基;低級アルコキシ基;単環式アリール及び低級アシル基を含む、請求項1に記載の膜。
【請求項7】
前記連続相ポリマーが、ポリエーテルイミド、ポリイミド、6FDA/BPDA−DAM、6FDA−6FpDA、及び6FDA−IPDAを含む群から選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項8】
前記モレキュラーシーブが、CVX−7及びSSZ−13を含む群から選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項9】
前記モレキュラーシーブが、アルミノリン酸塩(AlPO)、シリコアルミノリン酸塩(SAPO)、メタロ−アルミノリン酸塩(MeAPO)、エレメントアルミノリン酸塩(EIAPO)、金属シリコアルミノリン酸塩(MeAPSO)及びエレメンタルシリコアルミノリン酸塩(ELAPSO)の少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項10】
前記モレキュラーシーブが小孔モレキュラーシーブである、請求項1に記載の膜。
【請求項11】
前記モレキュラーシーブが、AEI、CHA、ERI、LEV、AFX、AFT、及びGISの少なくとも1つの構造を有する、請求項1に記載の膜。
【請求項12】
気体成分の混合物を含有する供給流から気体成分を分離する方法であって、
(a)分散しているモレキュラーシーブを有する連続相ポリマーを含む混合マトリックス膜を提供するステップであって、前記膜が供給側と透過側を有し、前記ポリマーが少なくとも20のCO/CH選択率を有し、前記モレキュラーシーブが少なくとも0.1ccSTP/gのメソ多孔性を有するステップと、
(b)第1及び第2気体成分の混合物を含有する供給流を膜の供給側に向け、第1気体成分が減損した残留流を供給側から取り出し、第1気体成分が豊富な透過流を透過側から取り出すステップと
を含み、ここで混合マトリックス膜のCO透過率がニートポリマーから作製された膜に比較して、少なくとも30%増加し、選択率の減少は10%以下である方法。
【請求項13】
前記分離される気体成分が、二酸化炭素及びメタンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記モレキュラーシーブが、小孔モレキュラーシーブである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記モレキュラーシーブが、AEI、CHA、ERI、LEV、AFX、AFT、及びGISの少なくとも1つの構造を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記モレキュラーシーブが、CVX−7及びSSZ−13を含む群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記モレキュラーシーブが、少なくとも0.15ccSTP/gのメソ多孔性を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記混合マトリックス膜の透過率がニートポリマーから作製された膜に比較して、少なくとも50%増加し、選択率の減少は10%以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーが、少なくとも30のCO/CH選択率を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
混合マトリックス膜を作製する方法であって、
無機モレキュラーシーブをポリマーと溶液中で混合するステップであって、前記無機モレキュラーシーブが少なくとも0.1ccSTP/gのメソ多孔性を有し、前記ポリマーが、少なくとも20のCO/CH選択率を有するステップと、
前記ポリマーの連続相中に分散したモレキュラーシーブを用いて混合マトリックス膜を形成するステップと、
を含み、ここで混合マトリックス膜のCO透過率がニートポリマーから作製された膜に比較して、少なくとも30%増加し、選択率の減少は10%以下である、方法。
【請求項21】
前記モレキュラーシーブのメソ多孔性が少なくとも0.15ccSTP/gである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ニートポリマーが、少なくとも30の選択率を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
混合マトリックス膜を形成するステップが、前記無機モレキュラーシーブ及びポリマーを含む溶液を中空繊維へと紡糸することを含む、請求項20に記載の混合マトリックス膜。

【図1】
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【公表番号】特表2008−520432(P2008−520432A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543298(P2007−543298)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/041918
【国際公開番号】WO2006/055817
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】