説明

メタルガスケットおよびその製造方法

【課題】冷間圧延、または冷間圧延および析出硬化の組合せによって加工強化されたシート材料でできたメタルガスケットを与える。
【解決手段】合金でできた少なくとも1つのエンボス加工されたシーリングビードを有するガスケットシートを含み、合金は、重量で、18%超のNiと、14%超のCrと、0.1−10%の、Mo,Ti,V,Al,Co,Nb,Ta,およびCuからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、残部Fe及び不可避的不純物からなる、前記ガスケットシートは変形された微細構造を有するメタルガスケットであって、前記変形された微細構造は、冷間減厚の割合に依存して異なる程度の変形を有する冷間圧延された微細構造であり、前記変形された微細構造の硬度よりも大きい硬度を有する変形され析出硬化された微細構造をさらに含む、メタルガスケット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この特許出願は、2006年8月18日および2007年3月9日にそれぞれ出願された、米国仮特許出願連続番号第60/822,897号および第60/894,078号の優先権を主張し、その全体が引用にてここに援用される。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は一般にメタルガスケットに関する。より特定的には、本発明は耐熱合金でできたエンボス加工されたメタルガスケットに関する。さらにより特定的には、本発明は、1100°F超の温度で動作するよう適合された耐熱鉄−ニッケル−クロム合金でできた、エンボス加工されたメタルガスケットに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
流体シールを必要とするディーゼルエンジンを含む内燃機関の耐熱クランプ継手に、ヘッドガスケットおよびエキゾーストガスケットなどの、エンボス加工されたメタルガスケットシートを用いることが周知である。これらのエンボスは、シールする流体チャネルに依存して、全エンボスおよび半エンボスを含む多くの形状およびサイズで形成することができるが、全エンボスの場合はしばしばシートの厚さTの関数である実質的に環状の円弧を含み、幅は約10−20Tのオーダ、高さは約0.5−2.5Tである。
【0004】
エンボス加工されたメタルガスケットの製造には、無数の型の鋼およびステンレス鋼を含む多くのメタルシート材料が用いられてきた。たとえば、301型のステンレス鋼であって冷間減厚によって十分に硬化されたステンレス鋼(301FHSS)が、最大約800−900°Fの運転温度の多くのガスケット適用例でうまく用いられてきた。しかしながらこの材料は、約1000°Fを超える温度においては、クリープ、応力緩和、および他の高温現象の影響を受けやすく、その結果、材料はその強度の大部分を失うのでエンボスに歪みを起させ、動作可能なシールを与えるために必要な量の本来のエンボス高さを維持できず、または一旦クランプ締めが解かれると回復できなくなる。このように、301FHSSはこれらの適用例に望ましいガスケット材料ではない。なぜならば、多くのクランプ継手を効率的かつ動作可能に一緒にシールする能力を失うので、または、この材料を使用するとあまりに多くのガスケット層が必要となるので、継手を動作可能にシールするのに必要なシール高さを経済的にまたは信頼性の高い態様で与えることができないからである。
【0005】
公開された特許出願EP1429057A1に記載されるように、316Ti型のステンレス鋼合金は、301FHSS型に比べて、耐熱強度および高さ回復特性(height recovery properties)を含む他の特性をいくらか改善し、それにより一定のエンボス加工された耐熱メタルガスケット適用例において用いるのに適切になっている。この材料は800−900°Fをいくらか超える温度においてはうまく働くが、約1000°Fを超える温度においてはやはり十分な強度を失い、エンボスも歪みを起こし、上述のように、動作可能なシールを与えるために十分な量の本来のエンボス高さを回復することができない。
【0006】
内燃機関が燃焼プロセスを改善するための新しい技術を採用し続け、排気の減少および燃料効率の増大などを達成する一方、これらの機関で用いられるクランプ継手およびエンボス加工されたメタルガスケットが晒される運転温度は上昇し続けるので、ガスケット適用例において一度はうまく働いた301FHSSおよび316Tiを含むさまざまな型のステンレス鋼などの材料は、経済上、性能上、または他の考慮事項に関して、一定の適用例にとって望ましくないかまたは適切でなくなっている。現在ガスケット材料として用いられているさまざまなステンレス鋼合金の回復性能が図1に示され、この点を例示する。特に1000°Fを超える温度において高さ回復性能が低下するにつれて、継手を動作可能にシールするのに必要なガスケット層の数が増える。
【0007】
たとえば、海上用途のための少なくともいくつかの近代的ディーゼルエンジンの設計においては、ウォータージャケット冷却をなくすために排気システム(たとえば排気マニホルド、ダウンパイプおよび/またはマフラー)を絶縁する傾向にあり、それにより排気マニホルドとエンジンブロックとの間の継手および関連のメタルガスケットの運転温度を、301FHまたは316Tiステンレス鋼によって有効にシールすることができる温度より上に上昇させる。
【0008】
別の実施例において、他のディーゼルエンジンは、排気を減少させるために排気ガス流の一部を燃焼室に戻して再循環させるよう設計されており、それにより、エンジンおよびエンジン制御システムが正しく動作するためにシールしなければならない付加的な耐熱の構成要素および継手を加えることになる。多くの適用例において、排気マニホルドガスケットの近くの温度は1100°Fを超え、1400から1600°Fの温度にまで達し得、従来の301FHSSおよび316Ti合金がガスケット材料として不適切になる。
【0009】
1100°Fを超えるガスケット適用例にうまく用いられてきた材料としてインコネル(Incone1)(登録商標)718がある。これらの適用例において、材料に割れを生じずにこれらの工程を実行するのに十分な延性を与えるよう、ガスケットシートは焼鈍された(すなわち溶体化処理された)状態で成形されてエンボス加工される。次いで、エンボス加工に続いて約l200−1350°Fの温度で析出硬化熱処理が行われ、1100°F超の温度で動作するのに十分な強度をガスケットシートおよびエンボスに与えるためにガスケットを硬化し、強化する。この材料は、性能という見地からは適切であるが、30lFHSSよりも相当に費用がかかり、ポストエンボス加工熱処理をさらに必要とするので、これらのガスケット製造に余分の費用と複雑とが加わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許出願EP1429057A1
【特許文献2】米国特許第7,135,519号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、301FHSSおよび316Tiが使用され得る温度を超える運転温度で使用するための向上したエンボス加工されたガスケットおよび材料ならびにその製造方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、1100°Fを超える運転温度の耐熱メタルガスケット適用例のために商業的に適切な材料を与える問題について低費用で解決法を与える。
【0013】
本発明の1つの局面によれば、鉄‐ニッケル‐クロム合金のメタルガスケットが与えられ、メタルガスケットは、1000°Fを超える温度で本質的に十分な機能回復を示すエンボスを含み、冷間圧延されたメタルシート材料でできており、かつそのエンボスは加工硬化され、材料を硬化するよう作用するポストエンボス加工熱処理なしで十分な運用強度があり、加工硬化された微細構造の少なくとも一部を保持する。
【0014】
本発明の他の局面によれば、ガスケットは析出硬化可能な鉄‐ニッケル‐クロム合金でできており、それはまず冷間圧延により硬化され、析出硬化熱処理によって析出硬化され、次にエンボスを成形して加工硬化するようエンボス加工され、その後は材料を硬化するよう作用するポストエンボス加工熱処理はなされない。
【0015】
本発明の他の局面によれば、この種のガスケットを作る際に使用するための、材料を硬化するよう作用するポストエンボス加工熱処理のない冷間圧延/加工硬化エンボス処理に応答する任意の鉄−ニッケル−クロム合金が考慮される。
【0016】
本発明の他の局面によれば、コイル形状の析出硬化が後続する冷間圧延加工硬化、次に材料をさらに硬化するよう作用するポストエンボス加工熱処理のないエンボス加工処理に対応する任意の合金も、この種のガスケットを作る際に使用するため考慮される。
【0017】
本発明のさらなる局面によれば、本発明のガスケットとして使用するための、少なくとも1つのエンボス加工されたシーリングビードを有するガスケットシートであって、重量で、l8%超のNiと、14%超のCrと、0.1−10%の、Mo,Ti,V,Al,Co,Nb,TaおよびCuからなる群から選択される少なくとも1つの要素と、実質的にFeである残部を含む合金でできており、変形された加工硬化された微細構造を有するガスケットシートが考慮される。
【0018】
本発明のさらなる局面によれば、ガスケットシートであって、重量で、18−28%のNiと、18−23%のCrと、0−8%のMoと、0−1.5%のCuと、0−1%のSiと、0−3%のMnと、0−0.6%のTiと、0−0.6%のAlと、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.03%のPと、0−0.4%のNと、実質的にFeである残部とを含む鉄−ニッケル−クロム合金からできている、少なくとも1つのエンボス加工されたシーリングビードを有するガスケットシートが、本発明のガスケットとして使用するよう考慮される。
【0019】
本発明のさらなる局面によれば、ガスケットシートであって、重量で、24−55%のNiと、13.5−21%のCrと、1−3.3%のMoと、0−0.15%のCuと、0−1%のSiと、0−2%のMnと、0.65−2.3%のTiと、0−0.8%のAlと、0−0.5%のVと、0.001−0.01%のBと、0−1%のCoと、NbまたはTaの合計0−5.5%と、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.015%のPと、実質的にFeである残部とを含む鉄−ニッケル−クロム合金を有するガスケットシートが、本発明のガスケットとして使用するために考慮される。
【0020】
本発明の他の局面によれば、本発明は、エンボス加工されたメタルガスケットを作る方法を含み、方法は、鉄−ニッケル−クロム合金の焼鈍されたシートを形成するステップと、変形された微細構造を有する変形されたシートを形成するために前記焼鈍されたシートを変形させるステップと、少なくとも1つのエンボス加工されたシーリングビードを有する前記変形されたシートからガスケットを形成するステップとを含み、前記エンボス加工されたシーリングビードは、1100°F超の温度で、十分にクランプ締めされシールされた継手において実質的に十分な機能回復を伴ってシールできるよう動作可能である。
【0021】
本発明のさらなる局面によれば、本発明の鉄−ニッケル−クロム合金ガスケットシートは耐熱コーティングで被膜されていてもよい。耐熱コーティングは、化学的に剥離されたバーミキュライト、耐熱有機樹脂、補完的な無機樹脂、および薄片状の充填材を含んでもよい。
【0022】
本発明のこれらの、および他の機能ならびに利点は、以下の詳細な説明および添付された図面に関して考慮されるとより容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】クランプ締め試験を受けたいくつかの先行技術のメタルガスケット合金について、回復したエンボス高さを温度の関数として示すグラフである。
【図2】本発明の例示的実施例によって構築されたガスケットの平面図である。
【図3】図2のガスケットの一部の拡大された部分断面図である。
【図4】クランプ締め試験を受けた本発明のいくつかの合金について、回復したエンボス高さを温度の関数として示すグラフである。
【図5】定荷重クランプ締め試験を受ける本発明のいくつかの合金について、回復したエンボス高さを温度の関数として示すグラフである。
【図6】200倍の倍率で見た、本発明のガスケットシートの断面試料の微細構造の顕微鏡写真である。
【図7】本発明の方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好ましい実施例の詳細な説明
図2および図3は、本発明の例示的な実施例によって構築された、エンボス加工されたメタルガスケット10を示す。単層または多層のエンボス加工されたメタルガスケットが考慮され、本発明の範囲内に含まれる。
【0025】
ガスケット10は少なくとも1つの金属層12を含む。金属層12は、少なくとも1つの流体運搬開口部14を含むようにスタンピングまたは別の方法で成形されたメタルシート材料で製作される。層12はさらに、ねじ切りボルトなどの締結具(示されない)を受取るための付加的な開口部16を含んでもよく、それは、ガスケット10によってシールされる排気マニホルド(示されない)およびエンジンブロック(示されない)など、第1の継手部材20と第2の継手部材22との間にガスケット10をクランプ締めするのに用いることができ、それによりシールされた継手を形成する。第1の継手部材20および第2の継手部材22ならびにガスケット10は、これらの構成要素がクランプ締め直前の位置にそれぞれあるように、クランプ締めされない状態で図3に示される。
【0026】
少なくとも1つの金属層l2は、一定の析出硬化可能な合金を含む適切な鉄−ニッケル−クロム合金から製作されてもよい。選択された鉄−ニッケル−クロム合金のメタルシート材料は、室温で測定して少なくとも1000MPaの範囲の引張強さ、および少なくとも5%、より特定的には5−25%、さらにより特定的には5−10%、最も特定的には6−9%のできるだけ大きい伸びを生じるように、材料を加工硬化するため冷間圧延される。メタルシート材料は、高温運転条件下でそれが設置される継手にシールを与え続けるように、材料に割れを生じることなくエンボス加工されたガスケットを形成し、かつその一方で1000°Fを超える高温においてガスケットとして機能しかつ適切な強度を維持するための十分な引張強さを与えるよう、圧延、スタンピング、プレス加工、および他の公知の処理方法のさまざまな組合せによって、所望のガスケット形状がシートまたはロールから切取られてここに記載される必要な開口部およびエンボスを形成するよう処理され、またはその逆が行われることを可能にするため、十分な延性および伸びを有していなければならない。メタルシート材料が析出硬化可能な鉄−ニッケル−クロム合金を含む場合、材料は冷間圧延に続いてさらに析出硬化され、適切な析出硬化熱処理を用いてガスケット10の耐熱特性をさらに高めることができる。
【0027】
冷間圧延および析出硬化熱処理に続き、シート材料は上述のさまざまな開口部を形成するためにブランキングしてガスケットにすることができる。ブランキング動作中、またはブランキングの前後いずれかの別個の動作中にブランクがエンボス加工されて、開口部14の少なくとも1つを囲む少なくとも1つのシールエンボスまたはビード18を生成することができる。エンボス18は典型的には環状の円弧もしくは他の湾曲した部分である全エンボス加工であってもよく、または、典型的には一連の相補的な半径もしくは環状の円弧もしくは他の湾曲した部分を用いる、シート表面の一部が他の部分に対して隆起した半エンボス加工であってもよい。このエンボス18は、ガスケットシートに組込まれたばね部材を含み、ばね部材はそれぞれの継手部材20、22の表面に対して流体開口部をシールするのに十分な力を加える。エンボス加工ステップ中に与えられる冷間加工および変形はエンボス18を含む部分のメタルシートに有意の付加的な強度を加えないが、本発明は、このステップにおいて、特にエンボスに隣接した領域でシート材料に付加的な機械的強度を与えるのに十分な変形を排除するものではない。好ましい冷間圧延された鉄−ニッケル−クロム合金材料からできたガスケット10はシーリングビード18を有し、それは、ガスケットの耐用年数の間1000°Fを超える運転温度において運転負荷下でクランプ締めされると、適切なシールを維持するために、シールされた継手の表面に対して適切なシール応力を与えるのに十分な弾力性を維持する。本発明のガスケット10のこの局面は、ガスケット10がガスケットの耐用期間を通して経験する所与のエンジン用途を代表する温度、継手負荷、環境もしくは他の条件下で、またはエンジン認定基準を満たすために必要な条件下で、すなわち1000°Fしきい値を超える温度、最大1400°Fを含む温度、および1600°Fさえも超える温度で、長期間、運転条件下でガスケットをクランプ締めすることにより、試験することができる。エンボス加工されたメタルガスケット10は、これらの条件下で、予期されるガスケットの耐用年数全般にわたってシールする能力を維持しなければならない。耐熱ガスケット技術の当業者は、保持される弾力性を測定する多くの方法があり得ること、それらすべてが共通して、ガスケットが所与の温度、継手負荷、環境および他の条件下でも必ず存続できるか否かを試験しようとしていることを認識するであろう。試験自体の具体的詳細は重要ではなく、ガスケットが1000°Fを超える温度、恐らく1400°Fを上回る温度、および最大l600°F、またそれをさらに超える温度さえも経験するようなエンジン運転条件を代表する試験条件下で、シールされた継手においてガスケットが発揮する能力の実証が重要である。
【0028】
適切な1つの試験は、開口部と、エンボスまたはシーリングビード18を代表する、開口部を囲む全エンボスとを有する冷間圧延された適切なメタルシート材料のテストワッシャを準備することを含む。ワッシャは、2.75インチのODおよび1.75インチのIDを有し、材料厚さTは約0.010インチである。開始時のビード高さは1.5T、すなわち金属層の本体の上面の上0.015インチである。ワッシャは厚さ1インチの2つのプラテンの間で1000PLI(線状インチ当たりポンド(Pounds per Linear Inch)の負荷の下、グレード5のボルトでクランプ締めされ、次にエンジン運転温度を代表する温度で17時間加熱され、取除かれて、本体の上のビード高さが再び測定される。許容された業界基準としては、本体上面の上0.0025インチの最小の回復したビード高さは、測定された試験温度においてガスケットの耐用年数の間適切なシールを維持するのに許容できるものであり、それはビードの本質的に十分な機能上、運転上の回復に対応する。したがって、このレベルの最小回復ビード高さの性能が目標性能レベルとして特定される。しかしながら、この最小回復ビード高さを超える回復性能が非常に望ましく、有用であることも認識されている。なぜならばそれはガスケット設計に直接関連し、影響を与えるからである。たとえば、ここに記述された最小値を上回る回復ビード高さを結果として生じる、ガスケット材料の性能の向上により、ガスケットをより少ない層を用いて設計することができる。ガスケット層の数が減ることにより、典型的には費用低減およびガスケットの信頼度向上、またはその両方に繋がる。なぜならば、追加的な層を使用すると、複数のガスケット層のうちのいずれかに位置するガスケットの故障に繋がる欠陥が生じる可能性が高くなり、そのためガスケットにおいて支障が生じる可能性が増大し得るからである。図4に示されるように、下記のチャートに示される5つの合金でできたワッシャは、1000°F、1200°F、1400°F、1500°Fおよび1600°Fを含むさまざまな温度で試験され、すべてがビード回復の許容可能な規格内にあることがわかった。すべての試料の最終ビード高さはガスケット本体の表面の少なくとも0.0025インチ上である目標性能に合致するかこれを超過し、例外は、合金Aが目標性能に極めて近い性能を示し、下記に記述される理由で、本発明のガスケットシート材料をも含むことであった。本発明のシート材料はすべて、下記にさらに記述されるような実質的に十分な機能回復を示した合金Aを例外として、1100°F超の温度を含む、1000°Fを上回る温度でのエンボスの十分な機能回復を示した点で、図1のものを含む先行技術のシート材料よりも向上した性能を実証した。
【0029】
析出硬化可能であり得る本発明の適切な鉄−ニッケル−クロム合金のいくつかは、冷間加工および析出硬化の組合せからも利益を得るかもしれないと考えられる。このように、本発明では、所望の強度と上述の伸び特性を生じるために、冷間圧延ステップ後にシート材料にコイル形状の析出硬化熱処理を与えてもよいことが考えられる。材質選定および熱処理技術の当業者は、不要な実験または発明をすることなく、合金の特定の組成および達成すべき所望の最終特性に依存して、析出硬化熱処理サイクルが所望の最終結果を達成するよう実行され得ることを理解するであろう。たとえば、本発明によって考察され、より詳細に下記に記述される析出硬化可能な合金のいくつかは、一般に1000°F超の温度で8−l5時間の、冷間圧延に続く析出硬化熱処理サイクルから利益を得るかもしれない。適切な析出硬化可能な合金組成は、高ニッケル、高クロム合金であって、やはりここにさらに記述されるような、析出硬化を容易にする添加物を備える。
【0030】
【表1】

【0031】
限定する意図はないが、所望の合金の組成は、重量パーセントで、18%超のNiと、14%超のCrと、0.1−10%の、Mo,Ti,V,Al,Co,Nb,TaおよびCuの少なくとも1つと、偶発的な不純物と同様に所望の特性を損なわない他の添加物が許容されるが実質的にFeである残部と、の範囲にあり得る。上記の範囲内の本発明の適切な合金の具体的な実施例は、表1に要約されて下記に記述される合金A−Dを含む。
【0032】
合金Aは、重量で、18−22%のNiと、18−22%のCrと、0−0.75%のCuと、0−1%のSiと、0−1%のMnと、0−0.6%のTiと、0−0.6%のAlと、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、実質的にFeである残部と、を含むよう記述され得る。上述のように、合金Aはさらに、結果的な合金が、ガスケットの製造および設置、ならびにl100°Fを超える温度での実質的に十分なガスケット高さの回復に一致する機械的性質を有する限り、他の合金添加物を含んでもよい。図4で見られ得るように、合金Aの回復高さは、1000°F超の温度でガスケットの表面の上0.0025インチを僅かに下回る。しかしながら、図1および図4で見られ得るように、この性能は301FHまたは316Tiのいずれよりも優れ、約1100°Fを超える温度を含む高温において、性能の向上はさらに大きかった。このように、合金Aの性能の安定性、および301FHと316Tiとの性能を上回る改善が実証されたことを考慮すると、合金Aは、少なくともl200°Fを含む1100°Fを超える温度において実質的に十分な機能回復を示す。合金Aは、ここに記述されるような析出硬化熱処理を受けた場合にいくらかの析出硬化を生じ得るが、析出硬化可能な合金であるとは考えられない。したがって、排除するものではないが、合金Aのシート材料は、ここに記述されるように、析出硬化熱処理を受けることなく、所望の冷間加工を与えるために冷間圧延によって処理されることが好ましい。
【0033】
合金Bは、重量で、26−28%のNiと、20.5−23.0%のCrと、6.5−8%のMoと、0.5−1.5%のCuと、0−0.05%のSiと、0−3%のMnと、0−0.020%のCと、0−0.01%のSと、0−0.03%のPと、0.3−0.4%のNと、実質的にFeである残部とを含むように記述され得る。上述のように、合金Bはさらに、結果的な合金が、ガスケットの製造および設置、ならびにl100°Fを超える温度での実質的に十分なガスケット高さの回復に一致する機械的性質を有する限り、他の合金添加物を含んでもよい。図4で見られ得るように、合金Bの回復高さは、1000°F超の温度で、ガスケットの表面の上0.0025インチを上回る。このように、合金Bは、少なくともl200°Fを含む1100°F超の温度において十分な機能回復を示す。合金Bは、ここに記述されるような析出硬化熱処理を受けた場合にいくらかの析出硬化を生じ得るが、析出硬化可能な合金であるとは考えられない。したがって、排除するものではないが、合金Bのシート材料は、ここに記述されるように、析出硬化熱処理を受けることなく、所望の冷間加工を与えるために冷間圧延によって処理されることが好ましい。
【0034】
合金AおよびBは、いくつかの他の析出硬化可能でない鉄−ニッケル−クロム合金を代表すると考えられる。その合金は、重量で、18%超のNiと、14%超のCrと、0.1−10%の、Mo,Ti,V,Al,Co,Nb,TaまたはCuの少なくとも1つと、実質的にFeおよび偶発的な不純物である残部とを有するように一般には記述され得、より特定的には、これらの合金の構成する範囲以内にあるものであって、重量で、l8−28%のNiと、18−23%のCrと、0−8%のMoと、0−1.5%のCuと、0−1%のSiと、0−3%のMnと、0−0.6%のTiと、0−0.6%のAlと、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.03%のPと、0−0.4%のNと、実質的にFeである残部とを含む。これらの合金は、少なくとも1200°Fを含む1100°F超の温度において少なくとも実質的に十分な機能回復を示すと考えられる。これらの合金はここに記述されるような析出硬化熱処理を受けた場合にいくらかの析出硬化を生じ得るが、析出硬化可能な合金であるとは考えられない。したがって、排除するものではないが、これらの合金のシート材料は、ここに記述されるように、析出硬化熱処理を受けることなく、所望の冷間加工を与えるために冷間圧延によって処理されることが好ましい。
【0035】
合金Cは、重量で、24−27%のMiと、13.5−16%のCrと、1−1.5%のMoと、0−1%のSiと、0−2%のMnと、0−0.08%のCと、1.9−2.3%のTiと、0.1−0.5%のVと、0−0.35%のAlと、0.003−0.01%のBと、実質的にFeである残部と、を含むよう記述され得る。上述のように、合金Cはさらに、結果的な合金が、ガスケットの製造および設置、ならびにl100°Fを超える温度での実質的に十分なガスケット高さの回復に一致する機械的性質を有する限り、他の合金添加物を含んでもよい。図4で見られ得るように、合金Cの回復高さは、1000°F超の温度で、ガスケットの表面の上0.0025インチを相当に上回る。このように、合金Cは、少なくともl500°Fを含む1100°F超の温度においても十分な機能回復を示す。合金Cは析出硬化可能な合金である。したがって、冷間圧延のみも排除されない一方、合金Cのシート材料が、ここに記述されるように、所望の冷間加工を与えるために冷間圧延によって処理され、次に、エンボス加工の形成に先立って、ここに記述されるような付加的な析出硬化熱処理が続くことが好ましい。このような合金が析出硬化熱処理に続いて冷間加工された微細構造を明らかに示すように、この熱処理はこれらの合金にさらに大きな強度を与え、冷間加工の圧下および冷間圧延によって与えられた関連する強度増加を十二分に埋め合わせる。
【0036】
合金Dは、この材料の異なる熱処理を示す合金D−1および合金D−2によって図4に示される。合金Dは、重量で、50−55%のNiと、17−21%のCrと、2.8−3.3%のMoと、0−0.15%のCuと、0−0.35%のSiと、0−0.35%のMnと、0.65−1.15%のTiと、0.35−0.8%のAlと、0.001−0.006%のBと、0−1%のCoと、NbまたはTaの合計4.75−5.5%と、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.015%のPと、実質的にFeである残部とを含むよう記述され得る。上述のように、合金Dはさらに、結果的な合金が、ガスケットの製造および設置、ならびに、少なくとも1600°Fを含むl100°Fを超える温度での実質的に十分な回復に一致する機械的性質を有する限り、他の合金添加物を含んでもよい。図4で見られ得るように、合金Dの回復高さは、1000°F超の温度で、ガスケットの表面の上0.0025インチを相当に上回る。このように、合金Dは析出硬化可能な合金である。したがって、冷間圧延のみも排除されない一方、合金Dのシート材料が、ここに記述されるように、所望の冷間加工を与えるために冷間圧延によって処理され、次に、エンボス加工の形成に先立って、ここに記述されるような付加的な析出硬化熱処理が続くことが好ましい。
【0037】
合金CおよびDは、いくつかの他の析出硬化可能な鉄−ニッケル−クロム合金を代表すると考えられる。その合金は、重量で、18%超のNiと、14%超のCrと、0.1−10%の、Mo,Ti,V,Al,Co,Nb,TaまたはCuの少なくとも1つと、実質的にFeおよび偶発的な不純物である残部とを有するとして一般には記述され得、より特定的には、これらの合金の構成する範囲以内にあるものであって、重量で、24−55%のNiと、13.5−21%のCrと、1−3.3%のMoと、0−0.15%のCuと、0−1%のSiと、0−2%のMnと、0.65−2.3%のTiと、0−0.8%のAlと、0−0.5%のVと、0.001−0.01%のBと、0−1%のCoと、NbまたはTaの合計0−5.5%と、0−0.08%のCと、0−0.015%のS、0−0.015%のPと、実質的にFeである残部とを含む。これらの合金は、少なくとも1500°F、および合金Dによって示されるように1600°Fを超える温度さえをも含む、1100°F超の温度において十分な機能回復を示すと考えられる。析出硬化の有効性は上述の合金組成の範囲にわたって異なり得るが、これらの合金は一般に析出硬化可能な合金であると考えられる。冷間圧延のみも排除されない一方、合金Dのシート材料が、ここに記述されるように、所望の冷間加工を与えるために冷間圧延によって処理され、次に、エンボス加工の形成に先立って、ここに記述されるような付加的な析出硬化熱処理が続くことが好ましい。
【0038】
図5は、本発明の鉄−ニッケル−クロム合金のガスケットが示す十分な機能回復の付加的な証拠を与える。上述されるような合金A−Dの試験片は高温の定荷重試験を受ける。そこで試験片は、上述の試験装置の初期荷重に類似する定荷重を維持するよう適合された試験装置に示される温度で保持される。定荷重の局面に起因して、これは本発明の合金の、上述の図5で報告された試験よりも厳しい回復特性試験である。見られ得るように、合金は、このさらに厳しい試験条件下でも十分な機能回復を示した。
【0039】
冷間圧延およびエンボス加工の結果、シーリングビードまたはエンボス18は加工硬化され、それは図6に一般に示されるように、冷間圧延されエンボス加工される前の材料の状態と比較して、メタルシートビードの方向性結晶粒組織によって明らかに示される。本発明の合金の微細構造は、たとえば冷間加工に続いて析出硬化された合金は析出硬化されないものに比べて示される方向性結晶粒組織が少ないなど、微細構造で明らかに示される冷間加工の程度によって異なり得る。しかし本発明の合金は、残りの冷間加工およびポストエンボス熱処理の欠如を示す微細構造上の証拠を示す。
【0040】
一旦ビード18が形成されると、少なくとも1つの金属層12が熱処理されたりさらに処理されたりせず、特に、付加的な析出硬化熱処理の実行などによってビード18をさらに硬化する態様で処理されることが好ましい。いずれにせよ、ガスケット10のポストエンボス加工熱処理または他の処理が、冷間加工もしくは析出硬化または上述のようにその両方の少なくとも一部を保持することを条件に実行され、ここに記述された引張強さ、延性および高温回復性能の維持と一致する。換言すれば、ビード18は、ビードが形成される時にその最終強度および硬度を生じ、一旦形成されればそれを変更したり強化したりするためには、ポストエンボス加工熱処理を含め、何も行われない。
【0041】
図7を参照して、本発明のエンボス加工されたガスケットは、次のステップを含む方法によって作られ得る。鉄−ニッケル−クロム合金の焼鈍されたシートを形成するステップと、変形された微細構造を有する変形されたシートを形成するために焼鈍されたシートを変形させるステップと、少なくとも1つのエンボス加工されたシーリングビードを有する変形されたシートからガスケットを形成するステップとであり、エンボス加工されたシーリングビードは、1100°F超の温度で、十分にクランプ締めされシールされた継手において実質的に十分な機能回復を伴ってシールできるように動作可能である。この方法は当然、適切な鉄−ニッケル−クロムガスケット材料の融成物100を形成するステップを含む。次いで、連続的鋳造によるスラブへの、または鋳込ビレットへの凝固によって、合金の融成物が中間ステップで形成される。次いで、スラブまたはビレットは、熱間圧延200のステップによって、材料の1つ以上の連続的なロールに形成される。高温圧延された材料は、一般に約0.l8−0.25インチの範囲の厚さを有する。次いで、高温圧延された材料は、熱間圧延に起因する酸化および他の表面の不純物を取除くために一般に脱スケールステップを受ける。次いで、脱スケールされた材料は、材料を過度に硬化して続くガスケット処理をするには脆くなりすぎることを回避するために、中程度の厚さにまで一般に冷間圧延400のステップを受ける。このステップには一般に中間焼鈍し500を含むステップが続き、冷間圧延400によって与えられた冷間加工のかなりの部分を取除く。冷間圧延400および中間焼鈍し500はガスケットシート材料の所望の寸法または開始時の厚さを得るために一般に少なくとも一度繰返される。一旦所望の寸法が達成されれば、本発明のシート材料は、所望のガスケット厚さTにまで冷間圧延600を受ける。Tへの冷間圧延600の量が焼鈍された出発原料の本来の厚さの約10−70%の低減であることが好ましく、冷間圧延減厚の量が本来の厚さの約30−40%の低減であるのがより好ましい。したがって、変形させるステップは冷間圧延600を含んでもよく、焼鈍されたシートは、ここに記述された最小値および範囲を有する、冷間減厚の割合に依存して異なる程度の変形を有する冷間圧延された微細構造を生成する。
【0042】
本発明の方法は、さらに、冷間圧延600によって変形された微細構造がさらに析出硬化されるような析出硬化熱処理700を与えるステップを任意に含んでもよい。変形され析出硬化された微細構造は、所与の合金について前記変形された微細構造の硬度よりも大きな硬度を有する。析出硬化熱処理は、約1200−1350°Fの温度で実行されてもよい。
【0043】
冷間圧延された鉄−ニッケル−クロム合金材料、または代替的に、冷間圧延され析出硬化された合金材料は、次に少なくとも1つのエンボスを形成するためにここに記述されるようなエンボス加工800のステップを受ける。
【0044】
本発明の方法はさらに任意に次のステップを含んでもよい。コーティングされたガスケットを生成するための耐熱ガスケットコーティングを備えたガスケットをコーティングするステップ900である。ガスケットコーティング(示されない)は、米国特許第7,135,519号に記述されたように、化学的に剥離されたバーミキュライトを含んでもよく、そこでバーミキュライトの少なくとも90重量パーセントは30ミクロン以下の厚さを有し、1ミリメートルを超える寸法はなく、さらに、少なくとも300°Cに耐熱である高温有機樹脂と、補完的な無機樹脂と、薄片状の充填材とを含む。驚くべきことに、このガスケットコーティング材料は、本発明のガスケット10の、より高い運転温度範囲に関する使用にも適している。
【0045】
本発明は、ガスケットまたはガスケットの一部のためにシール強化するコーティングを与え、そこではコーティングは化学的に剥離されたバーミキュライトの薄片状の粒子を含み、前記粒子の少なくとも90重量%は30ミクロン以下の厚さを有し、1ミリメートルを超える大きい寸法はなく、粒子はコーティングの10−90重量%を形成し、コーティングはさらに少なくとも300°Cに耐熱である有機ポリマ結合剤を50−10重量%含む。
【0046】
本目的のために、有機ポリマ結合剤は、結合剤が厚さ1ミリメートル以下のフィルムに形成され、24時間自由大気においてある特定の温度に加熱された場合に、分解しないか、またはフィルムの少なくとも20重量%の残余文を残して分解するならば、その特定の温度に耐熱性があると考えられる。
【0047】
この種のコーティングは、使用中に1600°F超の高温を経験する内燃機関用の排気ガスケットのような、エンボス加工されたガスケットのシール能力を改良する。好ましくは、本発明によるコーティングは、100ミクロン未満の厚さ、より好ましくは80ミクロン未満、さらに最も好ましくは50から75ミクロンを有する。
【0048】
明らかに、本発明の多くの修正および変形が上記の教示に照らして可能である。したがって、本発明は添付された請求項の範囲内で特に記述された以外の方法で実行され得ることが理解される。
【符号の説明】
【0049】
100 融成、200 熱間圧延、300 脱スケール、400 冷間圧延、500 中間焼鈍し、600 冷間圧延、700 析出硬化熱処理、800 エンボス加工、900 コーティング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルガスケットであって、合金でできた少なくとも1つのエンボス加工されたシーリングビードを有するガスケットシートを含み、合金は、重量で、18%超のNiと、14%超のCrと、0.1−10%の、Mo,Ti,V,Al,Co,Nb,Ta,およびCuからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記ガスケットシートは変形された微細構造を有するメタルガスケットであって、
前記変形された微細構造は、冷間減厚の割合に依存して異なる程度の変形を有する冷間圧延された微細構造であり、前記変形された微細構造の硬度よりも大きい硬度を有する変形され析出硬化された微細構造をさらに含む、メタルガスケット。
【請求項2】
前記合金は、重量で、18−28%のNiと、18−23%のCrと、0−8%のMoと、0−1.5%のCuと、0−1%のSiと、0−3%のMnと、0−0.6%のTiと、0−0.6%のAlと、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.03%のPと、0−0.4%のNと、残部Fe及び不可避的不純物からなる、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記合金は、重量で、18−22%のNiと、18−22%のCrと、0−0.75%のCuと、0−1%のSiと、0−1%のMnと、0−0.6%のTiと、0−0.6%のAlと、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、残部Fe及び不可避的不純物からなる、請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記合金は、重量で、26−28%のNiと、20.5−23%のCrと、6.5−8%のMoと、0.5−1.5%のCuと、0−0.05%のSiと、0−3%のMnと、0−0.020%のCと、0−0.01%のSと、0−0.03%のPと、0.3−0.4%のNと、残部Fe及び不可避的不純物からなる、請求項2に記載のガスケット。
【請求項5】
前記合金は、重量で、24−55%のNiと、13.5−21%のCrと、1−3.3%のMoと、0−0.15%のCuと、0−1%のSiと、0−2%のMnと、0.65−2.3%のTiと、0−0.8%のAlと、0−0.5%のVと、0.001−0.01%のBと、0−1%のCoと、NbまたはTaの合計0−5.5%と、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.015%のPと、残部Fe及び不可避的不純物からなる、請求項1に記載のガスケット。
【請求項6】
前記合金は、重量で、24−27%のNiと、13.5−16%のCrと、1−1.5%のMoと、0−1%のSiと、0−2%のMnと、1.90−2.30%のTiと、0−0.35%のAlと、0.1−0.5%のVと、0.003−0.01%のBと、0−0.08%のCと、残部Fe及び不可避的不純物からなる、請求項5に記載のガスケット。
【請求項7】
前記合金は、重量で、50−55%のNiと、17−21%のCrと、2.8−3.3%のMoと、0−0.15%のCuと、0−0.35%のSiと、0−0.35%のMnと、0.65−1.15%のTiと、0.35−0.8%のAlと、0.001−0.006%のBと、0−1%のCoと、NbまたはTaの合計4.75−5.5%と、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.015%のPと、残部Fe及び不可避的不純物からなる、請求項5に記載のガスケット。
【請求項8】
鉄−ニッケル−クロム合金でできた少なくとも1つのエンボス加工されたシーリングビードを有するガスケットシートを含み、前記エンボス加工されたシーリングビードは、1100°F超の温度で、十分にクランプ締めされシールされた継手において実質的に十分な機能回復を伴ってシールできるよう動作可能である、メタルガスケット。
【請求項9】
前記鉄−ニッケル−クロム合金は、重量で、18%超のNiと、13.5%超のCrと、0.1−10%の、Mo,Ti,V,Al,Co,Nb,Ta,およびCuからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、残部Fe及び不可避的不純物からなる、請求項8に記載のメタルガスケット。
【請求項10】
前記鉄−ニッケル−クロム合金は、重量で、18−28%のNiと、18−23%のCrと、0−8%のMoと、0−1.5%のCuと、0−1%のSiと、0−3%のMnと、0−0.6%のTiと、0−0.6%のAlと、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.03%のPと、0−0.4%のNと、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記エンボス加工されたシーリングビードは、最大1200°Fの温度で、十分にクランプ締めされシールされた継手において実質的に十分な機能回復を伴ってシールできるよう動作可能である、請求項9に記載のメタルガスケット。
【請求項11】
前記鉄−ニッケル−クロム合金は、重量で、24−55%のNiと、13.5−21%のCrと、1−3.3%のMoと、0−0.15%のCuと、0−1%のSiと、0−2%のMnと、0.65−2.3%のTiと、0−0.8%のAlと、0−0.5%のVと、0.001−0.01%のBと、0−1%のCoと、NbまたはTaの合計0−5.5%と、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.015%のPと、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記エンボス加工されたシーリングビードは、最大1500°Fの温度で、十分にクランプ締めされシールされた継手において実質的に十分な機能回復を伴ってシールできるよう動作可能な、請求項9に記載のメタルガスケット。
【請求項12】
前記鉄−ニッケル−クロム合金は、重量で、50−55%のNiと、17−21%のCrと、2.8−3.3%のMoと、0−0.15%のCuと、0−0.35%のSiと、0−0.35%のMnと、0.65−1.15%のTiと、0.35−0.8%のAlと、0.001−0.006%のBと、0−1%のCoと、NbまたはTaの合計4.75−5.5%と、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.015%のPと、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記エンボス加工されたシーリングビードは、最大1600°Fの温度で、十分にクランプ締めされシールされた継手において実質的に十分な機能回復を伴ってシールできるよう動作可能な、請求項9に記載のメタルガスケット。
【請求項13】
耐熱コーティングをさらに含む、請求項12に記載のメタルガスケット。
【請求項14】
前記耐熱コーティングは、
化学的に剥離したバーミキュライトを含み、バーミキュライトの少なくとも90重量%は30ミクロン以下の厚さを有し、1ミリメートルより大きい寸法を有さず、
少なくとも300℃の耐熱を有する高温有機樹脂と、
補完的な無機樹脂と、
薄片状の充填材とを含む、請求項13に記載のメタルガスケット。
【請求項15】
エンボス加工されたメタルガスケットを作る方法であって、
鉄−ニッケル−クロム合金の焼鈍されたシートを形成するステップと、
変形された微細構造を有する変形されたシートを形成するために前記焼鈍されたシートを変形させるステップと、
少なくとも1つのエンボス加工されたシーリングビードを有する前記変形されたシートからガスケットを形成するステップとを含み、前記エンボス加工されたシーリングビードは、1100°F超の温度で、十分にクランプ締めされシールされた継手において実質的に十分な機能回復を伴ってシールできるよう動作可能である、方法。
【請求項16】
前記変形させるステップは、焼鈍されたシートを冷間圧延して、冷間減厚の割合に依存して異なる程度の変形を有する冷間圧延された微細構造を生成するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
冷間減厚の前記割合は10−70%の範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
冷間減厚の前記割合は30−40%の範囲である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記変形させるステップは、前記変形されたシートに圧延方向に少なくとも5%の引張り延びを与えるために十分なある程度の変形を生成する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記変形させるステップは、前記変形されたシートに圧延方向に少なくとも5−10%の引張り延びを与えるために十分なある程度の変形を生成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記鉄−ニッケル−クロム合金は、重量で、18%超のNiと、14%超のCrと、0.1−10%の、Mo,Ti,V,Al,Co,Nb,Ta,およびCuからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記エンボス加工されたシーリングビードは、最大1200°Fの温度で、十分にクランプ締めされシールされた継手において実質的に十分な機能回復を伴ってシールできるよう動作可能である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記鉄−ニッケル−クロム合金は、重量で、24−55%のNiと、13.5−21%のCrと、1−3.3%のMoと、0−0.15%のCuと、0−1%のSiと、0−2%のMnと、0.65−2.3%のTiと、0−0.8%のAlと、0−0.5%のVと、0.001−0.01%のBと、0−1%のCoと、NbまたはTaの合計0−5.5%と、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.015%のPと、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記エンボス加工されたシーリングビードは、最大約1500°Fの温度で、十分にクランプ締めされシールされた継手において実質的に十分な機能回復を伴ってシールできるよう動作可能である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記合金は、重量で、50−55%のNiと、17−21%のCrと、2.8−3.3%のMoと、0−0.15%のCuと、0−0.35%のSiと、0−0.35%のMnと、0.65−1.15%のTiと、0.35−0.8%のAlと、0.001−0.006%のBと、0−1%のCoと、NbまたはTaの合計4.75−5.5%と、0−0.08%のCと、0−0.015%のSと、0−0.015%のPと、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記エンボス加工されたシーリングビードは、最大約1600°Fの温度で、十分にクランプ締めされシールされた継手において実質的に十分な機能回復を伴ってシールできるよう動作可能である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
析出硬化熱処理を与えるステップをさらに含み、前記変形された微細構造はさらに、変形され析出硬化された微細構造を含み、前記変形され析出硬化された微細構造は前記変形された微細構造の硬度よりも大きい硬度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記析出硬化された熱処理は約1200−1350°Fの温度において実行される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ガスケットを耐熱コーティングでコーティングするステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記耐熱コーティングは、
化学的に剥離したバーミキュライトを含み、バーミキュライトの少なくとも90重量%は30ミクロン以下の厚さを有し、1ミリメートルを超える寸法を有さず、
少なくとも300℃に耐熱である高温有機樹脂と、
補完的な無機樹脂と、
薄片状の充填材とを含む、請求項26に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−80598(P2011−80598A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245845(P2010−245845)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【分割の表示】特願2007−212223(P2007−212223)の分割
【原出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】