説明

メタルハニカム素材、メタルハニカム構造体及びメタルハニカム素材成形用の金型装置

【課題】流入流体に極めて強い混合と拡散及び反応作用を行うことができるメタルハニカム素材を提供する。
【解決手段】金属板4に、周辺の一部を切開し、残りの部分を折り曲げ立設して舌片となした開口を多数設けてなる構成とする。そしてこのメタルハニカム素材をうず巻き状に積層し、あるいは短冊状にして層状に積層した構成に、またはこのように構成したメタルハニカム構造体の側面側から任意の一部を円柱状に切り出し、さらに長さ方向に切断してなる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い金属板にて構成され、0.5mm〜2mm程度の微小幅や微小高さをもつ開口と舌片が多数形成されてなるメタルハニカム素材、及びこのメタルハニカム素材を用いて、例えば燃料電池の改質器に搭載する触媒や、排気ガス浄化触媒用などに用いる触媒の担体とし、さらには充填塔内に充填する充填物とするメタルハニカム構造体、そしてさらにこのメタルハニカム素材を成形する成形用の金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の改質器や排気ガス浄化用などに用いる触媒は、セラミック担体に触媒を担持した粒状触媒やハニカム触媒が使用されている。そして多くのセラミックハニカムは、格子状セル壁によって仕切られた多数の独立したセル空間が設けられており、各セルの内面に触媒がコーティングされた触媒層となっている。
【0003】
セラミックハニカム触媒は、セラミック粒状触媒に比べて触媒の使用量が少ないことや、圧力損失の面で低圧力損失のために優れている。しかし、例えば燃料電池用改質器のCO選択酸化触媒として改質器に搭載した場合、酸化反応で温度上昇した発熱分を速やかに外部に放出できなくなり、触媒が温度上昇して選択性がなくなるため性能を十分発揮できなかった。
【0004】
そこでセラミックハニカムに比べて熱伝導率が大きく、しかも軽くて扱い易い安価な金属板で作ったメタルハニカムの触媒への期待が高まっている。
【0005】
従来のメタルハニカム構造体は、薄肉の金属板と金属の波板状帯材(波箔)を交互に積層してセルを構成しているために、流路は各々のセルで入口が1個所、出口が1個所の独立構造になっている。そしてこの構造体を巻回成形してケーシング内に収容して固定し、ついでこれにPt、Rh、Pd、Pt−Fe/MORなどの触媒を担持するようにしている。
【0006】
燃料電池に供給する改質ガスのCO濃度は、CO選択酸化触媒の入口CO濃度1vol%(10,000ppm)から10ppm以下まで除去する必要があり、これの除去率は99.9%になる。
除去率=(10,000−10)/10,000×100
=99.9%
【0007】
1Kw級燃料電池改質器のCO選択酸化触媒として、セル数が200個/インチで流路が独立構造になっている従来のメタルハニカム触媒を使用した場合、セル総数は2840セルになる。そして触媒を担持させるには、触媒溶液中にハニカムを浸漬して乾燥させる方法を数回から数十回繰り返す。
【0008】
しかし全てのセルの中まで触媒を均一に担持させるのは極めて困難であり、セルに0.1%の不良があった場合には、許容される不良セル数は2.84セルになり、3セル分に不良があった場合には、CO濃度10ppm以下を達成することはできなかった。
許容不良セル数=2,840×0.001
=2.84セル
【0009】
これを改善する手段として、メタルハニカム内部でガス流と担持触媒との接触効率を向上させる手段も提案されている。例えば、厚さ0.1mm以下の耐熱性薄肉金属板と波板状帯材とを交互に当接部を有するように重ね、これを一括りうず巻き状に巻回して円筒状にして軸方向にガス通路のための多数の網目状通気孔路を持つように形成して、接触効率を向上させるようにしている。
【0010】
このようにした第1の従来技術としては、薄肉金属板と波板状帯材に、直径0.5mm〜10mm、配設密度1〜10個/cmの条件を満たす多数の開口を穿設し、反応ガスをセル間に通過させ、反応ガスと触媒の接触時間、接触効率を向上させるようにしている(特許文献1参照)。
【0011】
第2の従来技術としては、セル壁の少なくとも一部に開口部を設け、この開口部にセル壁に対して傾斜して延びる流動面を付設する技術である。この流動面は、反応ガスを内側セルから外側セルに導き、流速分布を均等化し、これにより反応率を改善するようにしている(特許文献2参照)。
【0012】
さらに第3の従来技術としては、プレス装置の上型と下型のそれぞれに針状突起を設け、この金型に波形金属板を送って針状突起で穿孔し、貫通孔と有面突起を形成する技術も開示されている(特許文献3参照)。また、この技術の問題点を改良するため、一対のローラを使って波板状帯材に貫通孔と突出部を設ける技術も従来提案されている(特許文献4参照)。
【0013】
また、従来の充填塔に充填して用いられる充填物は、プラスチック、磁製、カーボン製、鋼製等種々の材料で、種々の形状に構成されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実開昭62−90742号公報
【特許文献2】特公表4−502880号公報
【特許文献3】特開2003−285129号公報
【特許文献4】特開2005−138128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のメタルハニカム構造体は通常細い角穴の集合体であり、ハニカム内部でガスが分散できないために触媒効果が低くなるなどの問題があった。反応ガスをハニカム内部で乱流や流速分布を均一化したりすることによって、反応ガスと触媒との接触効率を改善する提案はなされているが、ハニカムのセル空間は微小なために均一なハニカム構造体を製造するのは極めて困難である。メタルハニカムを触媒やフィルタ用として使用する場合は、セル空間が均一でなければ効率がよくない。
【0016】
反応ガスをセル間で高接触効率かつ小さな抵抗で流すには、孔の直径が0.5mm程度の大きさが必要であると特許文献1に開示されているが、触媒として使用する場合の貫通孔と舌片は0.5mm〜2mm程度が望ましい。しかし0.05mm程度の波板状の薄板(波箔)に、0.5mm〜2mm程度という大きさで貫通孔と舌片をプレス加工で形成する場合(特許文献2,4参照)、舌片はきわめて弱くて脆く、簡単に折れて脱落や破れ、裂け目、亀裂が形成され、さらには形が不揃いになり、市販可能な実用性のある貫通孔と舌片を形成するのは従来困難であった。
【0017】
また、製作工程の上でも従来のメタルハニカム構造体を形成するためには、少なくとも切り込みと折り曲げの2つの工程以上の工程を経なければ製造できない。
【0018】
もし、従来方式のプレス加工で均一に舌片と貫通孔が整然と形成された金属板を形成しようと思えば、折れ曲がったボタン穴のような略コ字の細溝を打ち抜きによって形成し、この細溝で形成された略コ字の切込みを折り曲げる必要がある。しかし、このボタン穴のような略コ字の細溝を打ち抜くには加工限度があり、全体の高さと横幅が0.5mm〜2mm程度になる舌片と開口を形成する細溝を打ち抜くのは困難である。
【0019】
また、特許文献2,3,4に示されたような貫通孔と舌片をプレス加工によって製造する方法は、アイデア上は可能であっても、実際には舌片に損壊、脱落が生じたり、貫通孔が破れ、裂け目、亀裂が入ったりし、形も不揃いで、舌片が曲げられた根元部分では無理な曲げによって加工硬化を起こし、硬く、脆く、また巻回すると根本で折れるか、破れるか、亀裂が入るものであった。
【0020】
一方、上記した従来の充填物にあっては、これを構成する材料の材質からあまり細かな構成にすることができず、これらによる撹拌効果に限界があった。
【0021】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、触媒担体や充填物を構成する素材として良好な触媒効率、撹拌、反応効果を得ることができるメタルハニカム素材と、流入される流体に対して極めて強い混合と拡散及び撹拌、反応を行うことができるメタルハニカム構造体と、1回のプレス工程にて極めて薄い金属板に、周辺の一部に舌片を有した多数の開口を成形することができ、しかもこの舌片の成形をポンチにワークが喰い付くことなく、舌片を損傷させることなく成形することができるようにしたメタルハニカム素材成形用の金型装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するための本発明に係るメタルハニカム素材は、金属板に、周辺の一部を切開し、残りの部分を折り曲げ立設した構成になっている。そしてこのメタルハニカム素材において、開口を格子状に配列し、あるいは開口を千鳥状に配列した。
【0023】
そして、本発明に係るメタルハニカム構造体は、上記構成のメタルハニカム素材を、うず巻き状に積層し、あるいは短冊状にして層状に積層した構成に、またこのように構成したメタルハニカム構造体の側面側から任意の一部を円柱状に切り出しし、さらに長さ方向に切断してなる構成になっている。
【0024】
また、本発明に係るメタルハニカム構造体は、上記したメタルハニカム素材をうず巻き状に、あるいは層状に積層してなる構成のメタルハニカム構造体を両端を開放したケーシング内に充填した構成になっている。
【0025】
そして、上記メタルハニカム素材を成形するメタルハニカム素材成形用の金型装置は、多数の微小ダイを有するダイ部材と、このダイ部材の微小ダイに嵌合する多数の微小ポンチを有するポンチ部材とからなり、上記ダイ部材の微小ダイの開口周辺に、金属板を切断する切り刃と、この切り刃にて切断された舌片を折り曲げる円弧状の折り曲げ面を設け、上記ポンチ部材の微小ポンチの先端周辺に、上記微小ポンチの切り刃に対応する切り刃と、折り曲げ面に対応する円弧状の折り曲げ角部を設けた構成になっている。
【0026】
また、上記メタルハニカム素材を成形するメタルハニカム素材成形用の金型装置は、多数の微小ダイを、成形しようとする開口列の横方向の間隔の整数倍の間隔をあけて縦方向に等間隔に設けたダイ部材と、このダイ部材の微小ダイに嵌合する多数の微小ポンチを設けたポンチ部材とからなり、上記微小ダイの開口周辺に、金属板を切断する切り刃と、この切り刃にて切断された舌片を折り曲げる円弧状の折り曲げ面を設け、上記微小ポンチの先端周辺に、上記微小ポンチの切り刃に対応する切り刃と、折り曲げ面に対応する円弧状の折り曲げ角部を設けてなる金型装置を、縦方向の開口の間隔の1/2ずらせてワークの移動方向に少なくとも2組配置すると共に、ワークの移動方向下流側の金型装置の表面に、上流側の金型装置にて成形される開口の舌片が嵌入する細溝を設け、上流側の金型装置にて横方向に所定の間隔をあけた開口列を成形し、下流側の金型装置にて上記開口列の間に他の開口列を千鳥状に成形するようにした構成になっている。
【0027】
そして上記金型装置において、微小ダイを、ダイ部材に平行に設けたダイ用溝の両辺と、ダイ用溝と直交して平行に設けた入子用溝に嵌合した隣り合った入子の相互間にて構成し、上記入子の上面に細溝を長手方向に設けた構成になっている。
【0028】
さらに、この金型装置において、ダイ部材の微小ダイの舌片を切り出す切り刃に逃げ角を設けた構成になっている。
【発明の効果】
【0029】
本発明の請求項1から請求項3記載の発明に係るメタルハニカム素材によれば、この素材を触媒担体や充填物の素材として用いたときに、良好な触媒効果、撹拌、反応効果を得ることができる。
【0030】
また、請求項4から請求項8記載の本発明に係るメタルハニカム構造体によれば、この構造体内に流入した流体は、メタルハニカム素材の積層内において、舌片において分流と合流が繰り返されると共に、開口を通って隣接する層間に流れることにより、流体粒子に対して極めて強い混合と拡散を行わせることができる。その上、従来の波板状帯材を用いたものに比較してコストを1/10にすることができた。
【0031】
また、ケーシングを用いないメタルハニカム構造体を充填塔の充填物として用いた場合には、充填塔内において良好な撹拌、反応作用を行うことができる。
【0032】
そして上記開口が格子状に、あるいは千鳥状に配置されることにより、メタルハニカム素材の層間を流れる流体の拡散を良好に行うことができる。
【0033】
また、本発明の請求項9,10記載のメタルハニカム素材成形用の金型装置にあっては、1回にてあるいは2回のプレス工程にて極めて薄い金属板に、周辺の一部に舌片を有した多数の開口を格子状に、あるいは千鳥状に形成することができる。そして上記舌片は、微小ダイの折り曲げ面と、これに対向する微小ポンチの折り曲げ角部にて、それぞれの円弧面にて折り曲げ成形されることにより、この舌片の折り曲げがスムーズに行われると共に、応力集中による破損が生じることなく成形することができる。
【0034】
さらに上記請求項9記載の金型装置によれば、舌片を有する開口を格子状に、また請求項10記載の金型装置によれば、舌片を有する開口を千鳥状にそれぞれ成形することができる。そして請求項11記載の構成では、入子の上面に細溝を設けたことにより、入子の折り曲げ面側の弾性変形量が増大し、入子上端が微小ポンチから曲げ力を受ける場合に、この部分が板ばねのように変形して上記曲げ力を逃すことができ、これにより舌片の根元に加工硬化が進行するのを抑えることができる。
【0035】
さらに請求項12記載の金型装置によれば、上記開口と舌片の成形時に、舌片が微小ポンチに喰い付くのを防止でき、舌片の加工硬化を抑えることができ、割れや亀裂、舌片の潰れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るメタルハニカム構造体を示す一部破断斜視図である。
【図2】メタルハニカム構造体に用いるメタルハニカム素材を示す斜視図である。
【図3】(a)は開口を格子状に配列したメタルハニカム素材の正面図であり、(b)は開口を千鳥状に配列したメタルハニカム素材の正面図である。
【図4】メタルハニカム素材の成形状態を概略的に示す正面図である。
【図5】金型装置を示す一部破断正面図である。
【図6】金型装置の要部を示す斜視図である。
【図7】ダイ部材を示す平面図である。
【図8】ダイ部材を示す側面図である。
【図9】図7のA−A断面図である。
【図10】微小ダイの拡大断面図である。
【図11】入子を組み合わせる前のダイ部材の一部を示す平面図である。
【図12】入子を組み合わせたダイ部材の一部を示す平面図である
【図13】入子の断面形状を示す断面図である
【図14】ポンチ部材を示す平面図である。
【図15】ポンチ部材を短尺方向から視た側面図である。
【図16】ポンチ部材を長尺方向から視た側面図である。
【図17】図15における要部の拡大説明図である。
【図18】微小ポンチによる成形初期状態を示す断面図である。
【図19】図18の状態を示す斜視図である。
【図20】微小ポンチによる成形終端状態を示す断面図である。
【図21】図20に示す状態の縦断側面図である。
【図22】開口を千鳥状に成形するためのダイ部材を示す平面図である。
【図23】開口を千鳥状に成形する際の作用説明図である。
【図24】開口を千鳥状に成形する際の作用説明図である。
【図25】メタルハニカム構造体の他例を示す正面図である。
【図26】メタルハニカム構造体の他例を示す正面図である。
【図27】メタルハニカム構造体の他例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係るメタルハニカム構造体の実施の形態を図1、図2、図3にて説明する。
【0038】
図中1は円柱状に構成されるメタルハニカム構造体で、このメタルハニカム構造体1は外殻となる円筒状のケーシング2と、このケーシング2内にうず巻き状に充填されたメタルハニカム素材3とからなっており、矢印で示すように軸方向に流体を流すようになっている。メタルハニカム素材3は図1、図2に示すように、薄い帯状の金属板4に多数の開口5と、この各開口5の周辺の一部に立設された舌片6を有する構成になっている。この実施の形態においてのメタルハニカム素材3のうず巻き方向を長尺側、ケーシング2の軸方向を短尺方向となっており、上記長尺方向の長さは、メタルハニカム構造体1の径方向の大きさにより、また短尺方向の長さ(幅)は、その軸方向長さによって任意にとられる。
【0039】
上記開口5は一例として四角形になっており、舌片6は開口5を打ち抜き形成する際に、この打ち抜き片の一辺を板面に対して直角状に折り曲げて立ち上げた形状となっている。開口5は図2及び図3(a)に示すように長尺方向と短尺方向に格子状に整然と配列され、あるいは図3(b)に示すように短尺方向に千鳥状に配列されている。そして上記舌片6は、各開口5の短尺方向の一辺に立設されている。上記開口5は、舌片6を除く部分は円弧状になっていてもよい。
【0040】
このように構成された構造体を改質器や排気ガス浄化用触媒として用いる場合には、ケーシング2内のメタルハニカム素材3の表面にPt、Rh、Pd等の触媒をドブ漬け等により付着させる。
【0041】
上記のように構成された、例えば図3(a)に示されて両方向に整然と格子状に開口5を形成したメタルハニカム素材3を、図1に示すようにうず巻き状にケーシング2に収容することにより、メタルハニカム構造体1が構成される。このとき一例として図1に示すように、メタルハニカム構造体1は、これの舌片6が開口5に対して流体の流入方向の下流側となるようにして用いられる。
【0042】
上記のようにケーシング2にうず巻き状に収容されるメタルハニカム素材3は、ケーシング2の半径方向に隣接する帯状金属板4の間に舌片の高さ分のセル空間が形成される。そしてこの空間には、帯状金属板4の巻回面と直交(交差)する方向に多数の舌片6が列をなして突設された形態となる。
【0043】
上記のように構成されたメタルハニカム構造体1に、これの矢印で示した上流側から流体が流入されると、この流体はうず巻き状の上記セル空間を通って下流側へ流れるが、このときにセル空間において多数の舌片6が立設されていることにより、この舌片6によって遮られ、ここで流れの向きを変えて舌片6の横方向に分流する。また、この舌片6の上流側には、帯状金属板4を貫通する開口5が設けてあることにより、上記舌片6に遮られた流体はこれの横方向だけでなく、図2に示すように帯状金属板4の内側に隣接するセル空間へと流入し、結局上記流体の流れは、各セル空間において流体の流れ方向の各段の舌片6により、セル空間の円周方向と隣接するセル空間相互に流れて撹拌されながら下流側へ流れる。
【0044】
このように、うず巻き状に層状をなしたセル空間において、多数の舌片6がこのセル空間を流体の流れ方向に仕切る壁、あるいは柱のようなものに作用し、舌片6相互の隙間が開口5が隣接するセル空間相互を連通する流路となる。しかも、この舌片6の壁、あるいは柱による堰き止めは一段だけではなく、流れ方向に多数段階に行われて、流体の撹拌は繰り返し行われ、流体粒子に対して極めて強い混合と拡散が行われる。
【0045】
メタルハニカム素材3を構成する帯状金属板4は、例えば0.05mmのように肉厚が薄く、いわゆる金属箔が用いられる。そして開口5と舌片6の大きさが小さければ小さいほど、セル空間の厚さ方向の大きさが小さくなってセル空間の容積は小さくなり、セル空間相互と横断する確率が高くなるし、舌片6による堰き止め段数も多く形成でき、流体粒子の混合と拡散はより強くなる。すなわち、流体の流れとセル空間の濡れ面積の接触する接触効率が向上する。しかし、開口5と舌片6の大きさが小さくなるほど流体抵抗が大きくなり、メタルハニカム構造体1を通過する圧力損失が上昇する。したがって、開口5と下片6の大きさには好適な範囲が存在する。
【0046】
そして流体的な側面だけでメタルハニカム構造体1の構造を決定することはできない。例えば0.5mm〜2mm程度の大きさ、もしくはこの近傍の大きさの開口5と舌片6が配列された構造が流体的に優れた構造であったとしても、これを実際に製造、加工できるものでなければならない。従来の製造方法ではこれができなかった。一見製造できたようにみえても舌片が脆く、うず巻き状に巻回してメタルハニカム素材3を形成したとき、舌片6が折れたり潰れたりして開口5を塞いでしまう。このような品質のものでは、実用的なメタルハニカム構造体1とはいえない。当然に、触媒用担体やフィルタとして利用することはできない。
【0047】
そこで、本発明にての実施の形態におけるメタルハニカム構造体1に用いられる帯状金属板4と、これに形成する開口5と舌片6の詳細について以下に説明する。
【0048】
帯状金属板4は0.01mm以上(通常数十μm)の平板の金属薄板(フープ材)で、かつ材質がステンレス鋼、アルミ含有ステンレス材などの弾性材料からなる金属板が好適である。プレスして切断と折り曲げを行ったときに加工硬化して、帯状金属板4を巻回する時点に舌片6が折れて脱落したり、損壊したりするような脆い材料は好ましくない。さらに、触媒用担体や排気微粒子捕集用フィルタ、充填物などとして利用する場合には、耐熱性、耐蝕性に優れた材料でなければならない。
【0049】
帯状金属板4は、例えば横幅が40mm〜300mm程度、長さはメタルハニカム構造体1の直径に比例した長さのフープ材が好適である。メタルハニカム構造体1として帯状金属板4を重ね巻きにするときは、舌片6の長さが構造体の大きさに影響するから、開口5や舌片6の大きさを調整すると共に、帯状金属板4の長さを変える必要がある。ただ、この長さを1000mm〜2000mm程度で所定の長さに設定しておき、1枚を巻いた上にさらに別の帯状金属板2を順に重ね巻きして構造体の大きさを大きくすることもできる。
【0050】
この実施の形態におけるメタルハニカム構造体1としては、燃焼バーナー用のフィルタをつくるため、帯状金属板4として厚さ0.05mm、横幅50mmのステンレス鋼の薄板(金属箔)を使用している。これに形成するとき開口5や舌片6の一例を説明すると、開口5と舌片6の大きさは、略コ字状の切り込みと曲げから構成されるため、開口5と舌片6のサイズは基本的に同一の寸法となる。図2に示した舌片6の高さhは0.5mm、巻回方向の横幅wは1.5mmであり、開口5の一方の幅はこのhとほぼ等しく0.5mm、他方の幅はwと等しい1.5mm程度にしている。この大きさの開口5と舌片6が図2のように1mm〜4mm程度の間隙pをおいて縦横に配列される。ここではPは1.5mmである。なお、舌片3の高さhが0.5mmというのは、後述する微小ポンチと微小ダイを形成するとき、0.5mm幅の砥石を使って溝を刻設してこれらを組み立てているためである。現在0.5mm幅の砥石が汎用される最も狭い幅を削れるものであり、かつ開口の大きさに関して、流れの点でも圧力損失が少なく高接触効率となるため、高さh0.5mmが選択されている。ただ、必要に応じてこれより狭い幅の砥石、例えば0.1mm幅等を選べば、本発明で簡単に高さhをさらに低い高さにすることができる。また、当然に0.5mmより高い高さhにすることもできる。
【0051】
ところで開口5や舌片6は、図2、図3(a)のように、高さhと横幅wが略等しい正方形の形状で、格子状に配列されたものだけではない。図3(b)のように開口5の一方の幅が他方の幅と比較して長く、長方形の形状であってもよく、また開口5や舌片6の行及び/または列の配置が行及び/または列で少しずれて、例えば半ピッチずつずれて千鳥状に配列されていてもよい。なお、この配列は金型をつくるとき入子の種類を複数種類とし、配列を順位変化させて嵌め込むだけで簡単に変えることができる。
【0052】
次に、上記したメタルハニカム構造体1に用いるメタルハニカム素材3を帯状に成形する金型装置について説明する。
【0053】
図4は、プレス装置10にて帯状金属板4からメタルハニカム素材3を成形する状態を概略的に示すものであり、コイル状に巻かれた帯状金属板(フープ材)4は、ワーク送りローラ10aにてプレス装置10に順次間欠的に送り込まれ、プレス装置10の作動により成形されてメタルハニカム素材3として送り出され、再びコイル状に巻き取られるようになっている。
【0054】
図5は、上記プレス装置10の概略的構成を一部破断して示すものである。このプレス装置10はクランクプレス機であり、図示しないモータにて駆動されるクランクロッドで、往復運動に変換するクランク機構を備えた駆動装置11が設けられている。クランク機構にはフライホイールが設けられている。
【0055】
駆動装置11のモータを駆動すると、クランク機構を介して上下動可能に取り付けられたラム12が上下動して、これに取り付けられた上型13が上下動するようになっている。上型13の下方には、プレス装置10のベッドに固定された下型14が設置されており、この下型14と上記上型13の間にワーク15が挿入されるようになっている。ワーク15は、この実施の形態の場合には帯状金属板4である。
【0056】
上型13と下型14には、上型13が下型14に対して横揺れを起こさないで上下動できるように、この動きをガイドする支持機構16が設けられている。この支持機構16は、ベッドに立設されたガイド棒17、上型13に固定されてガイド棒17に摺動自在に挿通するブッシュ18、ガイド棒17の周囲に配置され、かつブッシュ18の下端を上方へ付勢するばね19から構成されている。
【0057】
また、上型13の下面にはパンチプレート20が水平に、かつ取り付け位置から若干上方へ移動可能に取り付けられている。そしてこの上型13とパンチプレート20との間に、パンチプレート20を下方へ付勢するばね21が介装してあり、このばね21にてプレス時の振動を吸収する吸振機構が構成されている。
【0058】
上型13の下面には、下方に向かってガイドピン22が突設されており、このガイドピン22は、パンチプレート20にブッシュ23を介して摺動自在に貫通すると共に、下型14に設けた穴にブッシュ24を介して摺動自在に嵌合するようになっていて、このガイドピン22にてパンチプレート20が下型14に対して横ぶれすることなく、上下方向に案内されるようになっている。
【0059】
下型14の上面には、表面に後述する微小ダイを設けたダイ部材25が、またパンチプレート20の下面には、表面に後述する微小ポンチを設けたポンチ部材26がそれぞれ対向して取り付けられている。そして上記微小ポンチは、微小ダイに入れ込み状に噛み合うようになっている。
【0060】
したがって、帯状金属板4をワーク15としてダイ25上に配置した状態で駆動装置11を駆動してパンチプレート20を下降し、これの微小ポンチを微小ダイに噛み合わすことにより、帯状金属板4に開口5と舌片6を同時に多数格子状に配列した状態に成形することが可能である。
【0061】
上記微小ダイ、微小ポンチは、ダイ部材25、パンチ部材26の大きさに比べてそれぞれ相対的に小さい(微小である)ことを意味しており、この実施の形態では0.5mm程度、あるいはそれより小さい微小高さや微小幅をもつ開口、舌片を多数形成するものである。
【0062】
続いて、本発明の実施の形態で使用するプレス装置10に取り付ける金型装置のダイ部材25とポンチ部材26について図6から図17に基づいて説明する。
【0063】
図6は、ダイ部材25とポンチ部材26が噛み合う直前の状態を一部破断して概略的に示すもので、ダイ部材25には多数の微小ダイ30が、またポンチ部材26には上記微小ダイ30に噛み合う多数の微小ポンチ31が設けてある。
【0064】
図6において、ダイ部材25に多数平行に設けたダイ用溝32と、このダイ用溝32と直交して設けた入子用溝33に嵌入した入子34にて区切られた空間が、上記微小ダイ30となっている。そしてこの微小ダイ30のダイ用溝32の両側辺と入子34の背側辺がコ字状の切り刃C1,C2,C3になっており、入子34の裏側辺が円弧状になった折り曲げガイド面C4となっていて、微小ダイ30に微小ポンチ31が嵌入することにより、ダイ部材25とポンチ部材26の間に位置された帯状金属体4が、上記ダイ用溝32の両側辺による切り刃C1,C2と入子34の背側片による切り刃C3にてコ字状の舌片6が四角状に切り抜かれ、入子34の表側辺による折り曲げガイド面C4にて、この舌片6が折り曲げられるようになっている。微小ポンチ31の上記折り曲げガイド面C4に対向する先端部は円弧状になっている。
【0065】
次にダイ部材25の構成を図7から図13に基づいて説明する。
【0066】
図7はダイ部材25を示す平面図、図8はその側面図、図9はダイ部材25の微小ダイ30を作るためのダイ用溝32を示す図7のA−Aに沿った断面図、図10はこれの拡大図、図11はダイ部材25の入子34を組み合わせる前の表面の一部を示す平面図、図12は入子34を組み合わせた状態のダイ部材25の一部を示す平面図、図13は入子の断面形状を示す断面図である。
【0067】
ダイ部材25は図7、図8に示すようになっていて、これの平面形状は一方が長くなっている矩形状になっており、これの表面側には、長手方向に貫通するダイ用溝32が短手方向に複数本平行に設けてある。
【0068】
またこのダイ部材25の表面側には、上記ダイ用溝32と直交する入子用溝33が短手方向に貫通して多数本平行に設けてある。図11はこの状態を示すもので、この入子用溝33にダイ部材25の短手方向の長さを同一長さにした入子34が嵌合され、この入子34の嵌合により図12に示すように、上記ダイ用溝32が入子34に仕切られて、多数の微小ダイ30が格子状に形成されるようになっている。
【0069】
このダイ部材25のダイ用溝32の断面形状は、図9、図10に示すようになっていて、これによって形成される突起35の先端の両側辺が切り刃C1,C2となり、この切り刃C1,C2に連なる側面には図10に示すように、逃げ角θ分の逃げがとられている。この逃げ角θは1.5〜3度、好ましくは2度程度となっている。
【0070】
上記入子34の断面形状は図6、図13に示すようになっていて、これの上面の上記微小ダイ30に対応する表側辺の角部が半径Rの円弧状になっていて、この角部が折り曲げガイド面C4となっている。そしてこの入子34の上面には、断面形状が一方の内面を傾斜角αに傾斜させて台形状に形成された細溝36が、これの傾斜した方の面が折り曲げガイド面C4側となるようにして入子34の全長にわたって設けられている。
【0071】
この細溝36は、入子34の折り曲げガイド面C4に力が作用したときに、この部分が細溝36側に撓むことができるようにするためのものであり、この細溝36の内面の傾斜角αはこの実施の形態では7〜12度、できれば10度程度がよい。
【0072】
次にポンチ部材26の構成を図14から図17に基づいて説明する。
【0073】
図14はポンチ部材26を示す平面図(下面図)、図15はその短尺方向から視た側面図、図16は長尺方向から視た側面図、図17は図15における要部の拡大説明図である。
【0074】
ポンチ部材26は上記ダイ部材25に対応する形状になっていて、これの表面(下面)にダイ部材25の微小ダイ30に噛み合う多数の微小ポンチ31が突設してある。この各微小ポンチ31は、ダイ部材25の長手方向と短手方向に直交する溝を加工することにより刻設される。
【0075】
この微小ポンチ31において、微小ダイ30の切り刃C1,C2,C3に対応するエッジは鋭利(90度、あるいは90度以下)に形成されているが、この微小ポンチ31の頂面には、舌片6を切り出すために図17に示すように、微小ダイ30の折り曲げガイド面C4側に向けて傾斜角βの斜面状になっている。この傾斜角βは5〜8度で、好ましくは7度程度である。そしてこの微小ポンチ31の上記傾斜面の延長上の先端であり、微小ダイ30の折り曲げガイド面C4に対応する折り曲げ角部C5は、微小ダイ31の円弧と同様に半径R2の円弧状に形成されている。この角部C5及び上記傾斜面により微小ポンチ31の下降に伴い、押し下げ力の作用点が徐々に移動し、切り出された舌片6が緩やかに曲げることができるようになっている。
【0076】
この微小ポンチ31の先端の折り曲げ角部C5の円弧の半径R2は、帯状金属板4に板厚が0.05mmのステンレス鋼の金属箔を用いて、0.1mm〜0.5mm程度の開口5と舌片6を成形する場合には、0.03mm〜0.05mmの範囲、できれば0.04mm程度がのぞましい。
【0077】
なお、微小ポンチ31の折り曲げ角部C5と微小ダイ31の折り曲げガイド面C4とのクリアランスは、微小ダイ31の切り刃C1,C2,C3と各エッジのクリアランスより比較的大きな値が選ばれる。しかし、適度の大きさを超えた大きいクリアランスにすると、微小ダイ30の切り刃C1,C2と曲げ面の交点に亀裂が入ることがある。実施の形態のように細溝36を設けた入子34を嵌め込む構造によらずに、クリアランスを大きくするだけで単純に舌片6を折り曲げようとすると開口5に亀裂が入り、裂けてしまう。
【0078】
次に、上記したダイ部材25とポンチ部材26を用いて帯状金属板(ワーク15)に、開口5と舌片6を加工する作用を説明する。
【0079】
図5に示すプレス装置10の下型14にダイ部材25を、パンチプレート20にポンチ部材26を対向させて設置し、これの間に帯状金属板4を配置してプレス装置10を作動して、上型13を介してパンチプレート20を下動する。
【0080】
かくすることにより、上記帯状金属板4を省略して示す図6において、ダイ部材25に対してポンチ部材26が下降し、微小ポンチ31が微小ダイ30に噛み合う。このときに図18に示すように、まず高さの一番高い刃先の位置で微小ポンチ31の刃面が帯状金属板4に食い込み、微小ダイ30における切り刃C3との間でせん断面を形成し、帯状金属板4に切り込みを入れる。
【0081】
この切込みが入った状態で、さらに微小ポンチ31を下降させると、図19に示すように、微小ポンチ31の側面の平行な2つのエッジが切り刃C1,C2に沿ったライン上の位置(最大せん断荷重が作用する位置)でクラックが生じ、このクラックが板を貫通してせん断し、切り刃C1,C2による両側の横一線の切り込みから、略コ字状の舌片6となるよう切り込みが帯状金属板4に入れられる。このときの帯状金属板4のせん断には、これの材料特性、ダイとポンチ間のクリアランスが影響する。
【0082】
その後の微小ポンチ31の押し込み工程においては、微小ダイ30の両側の切り刃C1,C2と微小ポンチ31のエッジによる2面の残りの切り込みが両側で同時進行にて行われる。微小ポンチ31の先端には、傾斜角βの斜面が形成されているため、微小ポンチ31の押し込みに伴い、切り刃C1,C2による切断は、各刃面において一点だけで行われ、2つの切断点が移動し、あたかも鋏で切断するように切り込みが大きくなっていく。このため刃先に材料が付着することがない。
【0083】
その後、さらに微小ポンチ31が降下すると、図18に示すように、この微小ポンチ31の高さが最も低い折り曲げ角部C5が微小ダイ30の折り曲げガイド面C4の位置にまで降下すると、この折り曲げガイド面C4にはR1の円弧が形成されているため、微小ポンチ31の折り曲げ角部C5のR2の円弧によって切り出された舌片6に対して曲げモーメントが作用されて、舌片6に対する曲げが開始される。
【0084】
このときにおいて、微小ダイ30の折り曲げガイド面C4を構成する入子34には、細溝36が形成されていることにより、微小ポンチ31の押圧面がR1の円弧に沿って順次当接して、これの作用点を下方へ移動させながら入子34の側面を押圧した状態で、入子34の折り曲げガイド面C4の部分が細溝36側へ僅かに撓んで、この部分の弾性変形が生じる。
【0085】
この微小ポンチ31と微小ダイ30の協働作用により、折り曲げガイド面C4に加工硬化を避けるための逃げとなる案内と変化を起こし、帯状金属板4の舌片5の根元部分を脆くせずに折り曲げることが可能になる。
【0086】
図20は微小ポンチ31の下降終端で、微小ダイ30の折り曲げガイド面C4での折り曲げを終えた状態を示すもので、舌片6の先端は微小ポンチ31の降下に伴って図18に示す状態から円弧を描いて図20に示す状態に90度折り曲げられる。このとき微小ダイ30の両側の切り刃C1,C2の側面には逃げ角θが設けられているため、図21に示すように、微小ダイ30の側面と舌片6の側面の間隔が徐々に広がり、舌片6の両側に次第に余裕ができ、折り曲げに伴って仮にバリが生じても微小ダイ30に喰い付くことがない。
【0087】
舌片6の曲げ成形後には、駆動装置10を作動してポンチ部材26を上昇させて、微小ダイ30から微小ポンチ31を抜き取る工程を行う。このとき本発明の実施の形態では、微小ダイ30には逃げ角θが形成されているため、この抜き工程においても帯状金属板4のバリの存在が少なく、また比較的バリが多い部分は底に近いところで、舌片6と微小ダイ30の間隔が広いため円滑に引き抜くことができる。また、下降後に帯状金属板4をストリップするときもバリが少ないため、喰い付きで帯状金属板4が取り外せないことはない。
【0088】
これにより、従来のメタルハニカム素材の加工方法では、ワークの喰い付きでストリップできなかったり、舌片をダイから剥ぎ取れなかったりするため、どうしても帯状金属板の舌片に破損を生じ、また仮にうまく剥ぎ取ったとしても舌片が弱くて脆く、その後のメタルハニカム構造体を製造するときに帯状金属板を巻回すると舌片が破損、脱落、潰れが生じていたが、本発明のものにあってはこのようなことを防ぐことができる。
【0089】
上記のようにしてポンチ部材26の昇降動の一工程により、図7、図14に示したダイ部材25とポンチ部材26により、これらの短手方向から供給される帯状金属板4に、両部材25,26に設けた微小ダイ30、微小ポンチ31の数だけの開口5と、これに伴う舌片6が格子状に成形される。そしてこれの一工程ごとに、すなわち帯状金属板4を、短尺方向に並べた数分の開口5、舌片6を成形ごとに間欠送りすることにより、これの長手方向に連続して開口5と舌片6が形成される。そしてこれは図4に示すように巻き取っていく。
【0090】
以上説明したように、本発明の実施の形態のメタルハニカム素材を加工する金型装置の金型によれば、金型で1度に数百ヶ所の切り起こしを行うことは難しい、との常識を覆し、金型を使用して1回のプレス工程で金属板に0.5mm〜2mm程度の微小な多くの開口と、舌片を1度に数百ヶ所以上で形成することができる。さらにプレス時にポンチにワークが喰い付くのを防ぐことができると共に、舌片の加工硬化を抑えることができ、割れや亀裂、舌片の潰れをなくすことができる。
【0091】
また、この金属加工装置で成形したメタルハニカム素材を用いたメタルハニカム構造体1によれば、舌片6が整然と均一に形成できるため、反応ガスがメタルハニカム構造体を通過するときに、この反応ガスが切り起こした舌片6に当たり、横方向あるいは開口を通って積層方向に流れ、メタルハニカム素材内部全体を均一に流れることになり、メタルハニカム素材3に担持したPt、Rh、Pd、Pt−Fe/MORなどの触媒との接触効率が向上し、局所的な未反応を防ぐことができる。
【0092】
舌片6を切り起こした帯状金属板4は、これの成形後に図4に示すように巻き取ることができ、洗浄が容易で、重ね巻きや平行に並べることで容易にメタルハニカム構造体を作ることができる。そして製造工程が金型によるプレス工程だけであるためコストダウンを図ることができる。
【0093】
さらに加工時間も短時間で済み、その上、金型における微小ダイ30、微小ポンチ31の3面カットの大きさや方向、1面曲げの大きさや方向を選択することにより、通過するガスの流体抵抗をきわめて容易に調整できる。そして入子構造の入子の種類を複数種類にすることにより、舌片6と開口5の形状、そのピッチを周期的に変化させることができる。
【0094】
上記した実施の形態にあっては、図7、図14に示したダイ部材25とポンチ部材26を1組用いることにより図3(a)に示したところの、長手方向と短手方向に格子状に開口5を形成したメタルハニカム素材3を成形することができる。
【0095】
また、図3(b)に示した舌片6を有する開口5を千鳥状に形成したメタルハニカム素材を作る場合には、ダイ部材25、ポンチ部材26のそれぞれにおいて、短手方向に1列とび間隔に微小ダイ30と微小ポンチ31を設けた第1の1組のダイ部材とポンチ部材と、短手方向に1列とび間隔で、かつ上記1組の両部材に対して長手方向に0.5ピッチずれた位置に微小ダイと微小ポンチを設けた第2の1組のダイ部材とポンチ部材を短手方向に並べて配置し、この2組のダイ、ポンチの部材間をワークを通して順次成形する。
【0096】
図22はそのダイ部材を示すもので、微小ダイ30を横方向(ワークの長尺方向)に1列おきに設けた第1・第2のダイ部材25a,25bとを、上記相互の微小ダイ30を縦方向(ワークの短尺方向)に1/2ピッチずらせて横方向にならべて配置し、それぞれの微小ダイ30に対応する微小ポンチを設けたポンチ部材(図示せず)にてワークに開口5を成形する。
【0097】
図23、図24はその成形状態を示すもので、まず図23に示すように第1のダイ部材25aにてワーク15に開口5を1列おきに成形する。ついでこのワーク15を、この第1のダイ部材25aからはずして所定ピッチだけ送り、第1のダイ部材25aにて成形された部分の1列おきの間隔部を第2のダイ部材25bの微小ダイ30部に位置させてポンチ部材を下降させて、この第2のダイ部材26bによる成形を行う。これにより図24の右側で示されるように千鳥状の開口5が成形される。
【0098】
このとき、各台部材25a,25bに対応するポンチ部材を同時に作動することにより、送り方向の後続部分に図24の左側に示すように1列おきの開口5が順次成形される。
【0099】
図23、図24において、開口5はポンチ部材により図において上方から打ち抜き成形されることにより、舌片6は下側へ折り曲げ成形される。したがって第1のダイ部材25aにて成形された部分が第2のダイ部材25b上に移動したときに、この舌片6が、この第2ダイ部材25bの微小ダイ30の1列おき部分に位置するが、この舌片6は、この部分の入子34の細溝36に嵌入されて、先に成形された開口5の舌片6が第2のダイ部材25bに干渉することがない。
【0100】
本発明におけるメタルハニカム構造体1は、図1に示したように円筒状のケーシング2内にメタルハニカム素材3をうず巻き状に充填した形態のほかに、図25に示すように、円筒状のケーシング2内に平板状のメタルハニカム素材3を層状に充填したもの、あるいは四角状のケーシング2a内に平板状のメタルハニカム素材3を充填したもの等がある。
【0101】
また上記実施の形態では、メタルハニカム構造体において、メタルハニカム素材の舌片6が流体の流入方向に対して直交する姿勢にしてケーシング内に充填した例を示したが、舌片6を流体の流入方向に向けて充填した構成にしてもよい。
【0102】
上記した実施の形態での説明では、メタルハニカム素材3をケーシング2に充填してなるメタルハニカム構造体1について説明したが、このメタルハニカム構造体において、これの使用目的によっては上記ケーシング2を用いなくてもよい。
【0103】
図27は、ケーシングを用いないメタルハニカム構造体1aを示すもので、このメタルハニカム構造体1aは多数枚のメタルハニカム素材3を層状に積層し、かつ相互の素材を電着手段、溶融金属による接着等の公知の手段にて接合した構成になっている。
【0104】
そしてこのメタルハニカム構造体1aの一例として、長尺のメタルハニカム素材3をうず巻き状に積層した積層体、あるいは多数の短冊状のメタルハニカム素材3を積層した積層体から、この積層体の端面形状の一部を、この積層体の全長にわたってワイヤカット手段にて円形に切り取った構成になっている。このケーシングを用いないメタルハニカム構造体は、メタルハニカム素材3をうず巻き状に、あるいは短冊状のものを積層したものであってよいことはもちろんである。
【0105】
このケーシング2を用いないメタルハニカム構造体は、これの直径が例えば10mm〜30mm、長さが20mm〜50mm程度にして充填塔内の充填物として用いることができ、この場合、この充填物がハニカム構成であることにより、充填塔内において良好な撹拌、反応作用を行うことができる。
【符号の説明】
【0106】
1,1a…メタルハニカム構造体、2,2a…ケーシング、3…メタルハニカム素材、4…帯状金属板、5…開口、6…舌片
10…プレス装置、10a…ワーク送りローラ、11…駆動装置、12…ラム、13…上型、14…下型、15…ワーク、16…支持機構、17…ガイド棒、18…ブッシュ、19…ばね、20…パンチプレート、21…ばね、22…ガイドピン、23,24…ブッシュ、25,25a,25b…ダイ部材、29…ポンチ部材
30…微小ダイ、31…微小ポンチ、32…ダイ用溝、33…入子用溝、34…入子、35…突起、36…細溝
C1,C2,C3…切り刃、C4…折り曲げ面、C5…折り曲げ角部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板に、周辺の一部を切開し、残りの部分を折り曲げ立設して舌片となした開口を多数設けてなることを特徴とするメタルハニカム素材。
【請求項2】
開口を格子状に配列したことを特徴とする請求項1記載のメタルハニカム素材。
【請求項3】
開口を千鳥状に配列したことを特徴とする請求項1記載のメタルハニカム素材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項記載のメタルハニカム素材をうず巻き状に積層してなることを特徴とするメタルハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項記載のメタルハニカム素材を短冊状にして層状に積層してなることを特徴とするメタルハニカム構造体。
【請求項6】
請求項5または請求項6記載のメタルハニカム素材の側面側から任意の一部を円柱状に切り出してなることを特徴とするメタルハニカム構造体。
【請求項7】
請求項6記載のメタルハニカム構造体を長手方向に切断してなることを特徴とするメタルハニカム構造体。
【請求項8】
請求項4から請求項7記載のいずれか1項記載のメタルハニカム構造体を両端を開放したケーシング内に充填したことを特徴とするメタルハニカム構造体。
【請求項9】
多数の微小ダイを有するダイ部材と、このダイ部材の微小ダイに嵌合する多数の微小ポンチを有するポンチ部材とからなり、
上記ダイ部材の微小ダイの開口周辺に、金属板を切断する切り刃と、この切り刃にて切断された舌片を折り曲げる円弧状の折り曲げ面を設け、
上記ポンチ部材の微小ポンチの先端周辺に、上記微小ポンチの切り刃に対応する切り刃と、折り曲げ面に対応する円弧状の折り曲げ角部を設けた
ことを特徴とするメタルハニカム素材成形用の金型装置。
【請求項10】
多数の微小ダイを、成形しようとする開口列の横方向の間隔の整数倍の間隔をあけて縦方向に等間隔に設けたダイ部材と、このダイ部材の微小ダイに嵌合する多数の微小ポンチを設けたポンチ部材とからなり、
上記微小ダイの開口周辺に、金属板を切断する切り刃と、この切り刃にて切断された舌片を折り曲げる円弧状の折り曲げ面を設け、
上記微小ポンチの先端周辺に、上記微小ポンチの切り刃に対応する切り刃と、折り曲げ面に対応する円弧状の折り曲げ角部を設けてなる金型装置を、
縦方向の開口の間隔の1/2ずらせてワークの移動方向に少なくとも2組配置すると共に、ワークの移動方向下流側の金型装置の表面に、上流側の金型装置にて成形される開口の舌片が嵌入する細溝を設け、
上流側の金型装置にて横方向に所定の間隔をあけた開口列を成形し、下流側の金型装置にて上記開口列の間に他の開口列を千鳥状に成形するようにした
ことを特徴とするメタルハニカム素材成形用の金型装置。
【請求項11】
微小ダイを、ダイ部材に平行に設けたダイ用溝の両辺と、ダイ用溝と直交して平行に設けた入子用溝に嵌合した隣り合った入子の相互間にて構成し、上記入子の上面に細溝を長手方向に設けたことを特徴とする請求項9,10のいずれか1項記載のメタルハニカム素材成形用の金型装置。
【請求項12】
ダイ部材の微小ダイの舌片を切り出す切り刃に逃げ角を設けたことを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか1項記載のメタルハニカム素材成形用の金型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−136267(P2011−136267A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296846(P2009−296846)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(511069943)株式会社新日本ケミカル・コンサルタント (1)
【Fターム(参考)】