メッキ鋼材の熱間プレス成形方法及びこれを用いた熱間プレス成形品
本発明は、メッキ鋼材を用いた熱間プレス成形の際に、ブランクに適正な熱処理条件を付与してメッキ層揮発及び酸化スケールの発生を抑制し、且つ2次加熱時に温度の差を付与して異なる強度と物性を確保することができる熱間プレス成形方法に関し、上記メッキ鋼材全体を1次加熱し維持する段階と、上記維持後、メッキ鋼材の全体又は一部をさらに急速加熱する2次加熱段階と、上記2次加熱されたメッキ鋼材を熱間プレス成形し冷却する段階と、を含むメッキ鋼材の熱間プレス成形方法及びこれを用いた熱間プレス成形品に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキされた熱間プレス成形用鋼材に対する熱間プレス成形方法に関し、より詳細には、亜鉛又はアルミニウムがメッキされた熱間プレス成形用メッキ鋼材の加熱時に熱処理パターン制御によって酸化スケールの発生が抑制された、同一強度又は同一部品内で異なる強度分布を有することができる熱間プレス成形方法及びこれを用いた熱間プレス成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、各自動車製造会社は、自動車に部品を適用するにあたり、環境にやさしい燃費節減及び軽量化の社会的要求に対応するために、高強度素材の利用を増やしている。しかしながら、高強度素材の成形はスプリングバック及び寸法凍結性等の問題点を有しており、このような成形の難解性によってその使用に制限がある。
【0003】
このような成形上の問題点は、素材を成形性の良い高温で成形し、成形と同時に金型内で急冷して高強度部品を製造する方式で解決することができる。このような方式を熱間プレス成形工程という。このような工程によると、通常1500MPaの強度を有する部品を成形することができる。
【0004】
このような熱間プレス成形時には高温で移送及び成形がなされ、非メッキ鋼材を用いる場合は、酸化スケールが発生し、発生した酸化スケールは以後の溶接や塗装工程に問題となるため、酸化スケールを除去するためのショットブラスト工程が必須である。これに対し、メッキ鋼材を用いる場合は、このような酸化スケールが発生しないため、ショットブラスト工程が不要であり、原素材がメッキされた特性によって非メッキ鋼材に比べて耐食性が向上するという長所がある。特に、亜鉛メッキ鋼材は、メッキ層の犠牲腐食耐性特性によってアルミニウムがメッキされた鋼材に比べてより優れた耐食性を有している。
【0005】
しかしながら、亜鉛メッキ鋼材は、亜鉛メッキ層が加熱工程中に揮発されて表面不良をもたらすか又は酸化スケールが多く形成されて熱間プレス成形後に別途の酸化スケールを除去する工程が必要であることが知られている。
【0006】
このような問題点を解決するために、従来に提案された加熱パターンを制御する技術としては、韓国公開特許2008−0055957号公報、2006−0090309号公報、2006−0033921号公報、2005−0121744号公報、日本公開特許2004−323897号公報、2003−126920号公報、米国公開特許20070000117号公報等があるが、上記の特許は、予備熱処理後のブランク加工又は最終熱処理温度と時間に対する制御を開示してだけであり、酸化スケールの除去のための工程の省略については今もって所望されたままである。
【0007】
しかしながら、本発明者らは、加熱中に高温での維持時間を最小化することがメッキ層の酸化スケールの発生を最小化して成形後スケール除去工程の省略を可能にすることを見出した。このように、加熱炉内での1次熱処理の後、2次で急速加熱による亜鉛メッキ鋼材の熱処理パターンを規定したものはいままでにない。
【0008】
このように加熱炉で1次で熱処理をし2次で急速加熱する方法を用いると、同一部品内で異なる強度を有する部品を効果的に製造することができる。即ち、急速加熱によって、追加加熱する間に加熱されない部位の温度低下を防止することができ、成形前に十分に加熱された状態で成形をするようになるため、成形性を確保することができる上、高強度領域と低強度領域を明確に具現することができる。
【0009】
また、1次加熱温度が低いため、加熱炉投資費用及び空間(長さ)の減少が可能であり、2次で高周波又は赤外線加熱などの急速加熱方式を用いる場合はエネルギー効率を高めることができるという長所がある。
【0010】
なお、このような1次と2次による加熱方式を用いる場合、異種強度を有する部品を製造することができ、異種強度を有する部品に対する要求及び従来の技術は下記の通りである。
【0011】
熱間プレス成形工程により単一強度のみを有する部品は、衝突性能等の要求性能を満足させるための設計の面で自由度が低下し、これを解決するために、常温成形で多く用いられているテーラードウェルディッドブランク溶接(Tailor Welded Blanks、TWB)技術を組み入れた熱間プレス成形技術が開発されたりした。しかしながら、このようなTWB方式は、ブランクを溶接する工程が追加されるという短所があり、溶接部の信頼性が部品性能に影響を及ぼす可能性があるため、工程管理の面で多くの困難がある。
【0012】
上記TWB方式の他に、熱間プレス成形で部位別強度を異ならせるための技術には、成形後に冷却過程で冷却速度を異ならせる技術があり、このような技術には、金型と素材との接触面積の差によって制御する方法である日本特許公開2007−136474号公報、日本特許公開2003−328031号公報、韓国特許公開2007−0083585号公報及び国際公開WO07/084089号公報等があり、金型の一部分は冷却、一部分は加熱によって冷却速度を制御する方法である日本特許公開2005−161366号公報、日本特許公開2003−328031号公報及び国際公開WO06/128821号公報等がある。
【0013】
しかしながら、上記特許は、冷却速度を均一に制御しなければ均一な物性が得られず、複雑な形状に所望の強度が得られるように冷却速度を適切に制御することが困難であるという短所がある。即ち、秒当たり30℃以上の冷却速度では、引張強度1500MPa程度の物性を安定的に得られるが、それ未満の冷却速度では、冷却速度の減少により物性の減少変化が急変するため、安定的な物性を得ることが困難である。したがって、上記特許は、特に形状が複雑な成形品の場合、接触部位に応じて冷却速度が変わるため、強度を制御することが困難であるという問題点がある。
【0014】
一方、他の方法としては、成形前後の加熱温度を異ならせることにより熱処理特性を異なって付加する技術が提案された。日本特許公開2005−193287号公報には、部分熱処理を用いて形状凍結性に優れた部材を製作するために鋼板のプレス成形時に鋼板の一部をAr1以上に加熱し残部はそれ未満にして少なくともその一部がオーステナイトを含む状態でプレス成形する方法が開示されているが、上記特許は、一部をAr1以上に加熱し残部はそれ未満に加熱する方式を採択しているため、現実的にはブランクを加熱炉内で別途に加熱することが困難であるという問題点がある。
【0015】
また、米国特許公開20080041505号公報には、上記と同じ目的のために領域を区分して分離した加熱炉及びこれを用いた加熱方法について開示されている。しかしながら、上記特許は、2つのゾーン(zone)に区画された加熱炉の内部をコンベヤーで移動しながら互いに異なる温度で熱処理するものであるため、このように構成された加熱炉を用いる場合、十分な温度に加熱するために加熱炉内の維持時間を長くすると、ブランク内での熱伝達によって温度の差を明確にすることが困難になるという問題点がある。
【0016】
一方、日本特許公開2007−231660号公報では、被加工材の2つの部分を区分して互いに異なる温度に加熱した後にプレス加工することにより引張強度の高い硬質部と加工性の高い軟質部で構成する技術を提案しているが、上記特許は、断熱材を設置して互いに異なる温度に加熱されるようにするという点で現実的には適用が困難な技術である。
【0017】
上記提案された特許に記載された技術は、殆ど現実的に適用することが困難な概念的な技術であり、複雑な形状で所望の強度が得られるように冷却速度を適切に制御することが困難であるという短所がある。したがって、現実的に適用することが可能であり複雑な形状で領域別に所望の強度が得られる熱間プレス成形品を製造する方法が求められている。
【0018】
一方、亜鉛やアルミニウムメッキ鋼材を用いる場合、メッキ層の揮発を防ぐなど、メッキ層の信頼性を確保し、特に、亜鉛メッキ鋼材の場合、酸化スケール除去工程などの付加的な工程を除去するための努力が必要である。前述したように、異種強度部品を効果的に製造するためには、2次加熱時に急速加熱が必要であるが、十分に合金化されないメッキ層の場合は急速加熱時にメッキ層揮発の問題が発生する可能性が多い。したがって、2次急速加熱時にメッキ層の揮発が発生しないように1次加熱時に熱処理パターンを導出する必要があることを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の一側面は、熱間プレス用メッキ鋼材を用いた熱間プレス成形時、ブランクに適正な熱処理条件を付与してメッキ層の揮発と酸化スケールの発生を抑制し、且つ2次加熱時に温度の差を付与して異なる強度と物性を確保することができる熱間プレス成形方法と上記方法を用いた熱間プレス成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
メッキ鋼材の熱間プレス成形方法であって、上記メッキ鋼材全体を1次加熱し維持する段階と、上記維持後、メッキ鋼材の全体又は一部をさらに急速加熱する2次加熱段階と、上記2次加熱されたメッキ鋼材を熱間プレス成形し冷却する段階と、を含むメッキ鋼材の熱間プレス成形方法及びこれを用いた熱間プレス成形品を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、全体的に同一の強度と物性又は互いに異なる強度及び物性を有する熱間プレス成形品が一つの工程で得られ、メッキ層の酸化スケールの発生が抑制されて成形後に酸化スケール除去工程が不要な熱間プレス成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の熱間プレス成形方法の概略図である。
【図2】従来の熱間プレス加熱炉の時間による温度の変化の例を示すグラフ図である。
【図3】従来例の表面写真(a)とスコッチテーピング後の写真(b)を示した写真図である。
【図4】実施例1−1の1次加熱温度を異ならせた試片の表面写真図である。
【図5】図4のスコッチテーピング後の写真図である。
【図6】実施例1−1の1次加熱後の維持時間を異ならせた試片の表面写真図である。
【図7】図6のスコッチテーピング後の写真図である。
【図8】1次加熱なしにすぐに40℃/秒の速度で900℃に加熱し15秒間維持した試片の表面写真(a)とスコッチテーピング後の写真(b)を示した写真図である。
【図9】実施例1−1において1次加熱温度を500℃とした場合(a)と600℃とした場合(b)のGDS分析結果を示した特性図である。
【図10】図9のSEM写真を示した写真図である。
【図11】実施例1−2において2次加熱温度を異ならせた試片の表面写真図である。
【図12】図11のスコッチテーピング後の写真図である。
【図13】実施例1−2において2次加熱後に維持時間を異ならせた試片の表面写真図である。
【図14】図13のスコッチテーピング後の写真図である。
【図15】実施例2−1の試片の表面写真を示した写真図である。
【図16】図15のGDS分析結果を示した特性図である。
【図17】実施例2−2の試片の表面写真を示した写真図である。
【図18】図17のGDS分析結果を示した特性図である。
【図19】実施例3において試片内の硬度分布から換算された引張強度分布を示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
本発明者らは、メッキ鋼材を用いて熱間プレス成形を行う場合には亜鉛やアルミニウムメッキ層の溶融点が低いため、加熱炉内で通常的な加熱パターンで加熱すると、酸化が多く発生するか又は揮発が発生することが多いことを考慮して、酸化スケールの発生を抑制しメッキ信頼性を確保するためには熱処理条件を制御すべきであることを見出し本発明に至った。
【0025】
また、上記加熱炉で加熱する際に2段の加熱方式により温度の差を有するブランクを確保した後、成形を行うと、同一の金型冷却を行っても異なる強度分布を有することができることを見出し本発明に至った。
【0026】
[熱間プレス成形方法]
まず、本発明の熱間プレス成形方法について説明する。
【0027】
図1には本発明の熱間プレス成形方法の一例を概略的に示した。図1に示されたように、本発明の熱間プレス成形方法は、メッキ鋼材全体を1次加熱し維持する段階と、上記維持後、メッキ鋼材の全体又は一部をさらに急速加熱する2次加熱段階と、上記2次加熱されたメッキ鋼材を熱間プレス成形し冷却する段階と、を含んで行われる。
【0028】
以下、本発明の熱間プレス成形方法について詳細に説明する。
【0029】
本発明の熱間プレス成形方法に適用されるブランクの鋼材は、特に限定されず、Ac3以上の温度でオーステナイト化した後に急冷によって1500MPa程度の高強度が得られる一般的な熱間プレス成形に適用される鋼材であれば良い。
【0030】
本発明のメッキ鋼材は、亜鉛系又はアルミニウム系メッキ鋼材であり、メッキ方法として溶融メッキ、合金化溶融メッキ及び電気メッキ等の方法で製造されたものであれば良く、特に限定されるものではない。
【0031】
本発明は、まず、メッキ鋼材全体を加熱する1次加熱及び維持する段階を有する。上記1次加熱及び維持する段階は、上記メッキ鋼材のメッキ層が十分に合金化されるようにするためのものであり、これにより、メッキ層の表面に過度な酸化スケール(scale)が発生することを防止するためのものである。
【0032】
上記1次加熱の温度範囲及び維持時間はメッキ鋼材の種類に応じて変わることもあるが、上記1次加熱の温度範囲はAc1以下であることが好ましい。上記1次加熱は2次で急速加熱及び高温での維持の際にメッキ層が揮発するか又は過度な酸化が発生することを予防するためのものであり、これは、1次加熱によって合金化で融点を上昇させメッキ層の表面に緻密で薄い酸化層を形成させるためである。
【0033】
上記メッキ鋼材が亜鉛又は亜鉛合金メッキ鋼材の場合は、400℃以上〜600℃未満の温度範囲に加熱し、20分以下の時間に維持することが好ましい。
【0034】
上記亜鉛又は亜鉛合金メッキ鋼材を高温に加熱したとき、メッキ層の揮発及び過度な酸化スケールの生成を抑制するためには、メッキ層の適正な合金化がなされ、表面に緻密で薄い酸化層を形成させる必要がある。純粋亜鉛は融点が約420℃であるが、Feとの合金化が進行するにつれ融点が上昇するようになる。したがって、合金化が十分に進行されない状態で高温に加熱すると、メッキ層の揮発の問題が発生するため、上記温度に加熱し維持することが必要である。
【0035】
上記温度が400℃未満の場合は十分な合金化のための時間が過度に必要とされて生産性の面で好ましくなく、600℃以上の場合は表面に既に不均一で過度な酸化層が生成されて追加加熱時に揮発問題及び過度な酸化層生成が発生するため、上記1次加熱は400℃以上〜600℃未満の温度範囲で行うことが好ましい。
【0036】
亜鉛又は亜鉛合金メッキ材の場合、1次加熱温度が高いと、1次加熱温度まで加熱する間に既に適正な合金化がなされ緻密で薄い酸化層が形成されるため、この場合には維持時間が不要である。しかしながら、1次加熱温度が低い場合は、十分な合金化及び緻密で薄い酸化層形成のために適正な維持時間の確保が必要である。したがって、上記維持時間は生産性確保を考慮して20分以下とすることが好ましい。
【0037】
上記メッキ鋼材が亜鉛メッキ鋼材の場合、1次加熱後のメッキ層のFe含量は5〜30重量%となるようにすることが好ましい。これは、メッキ層のFe含量が5重量%未満であると、融点が低くてFeとZnの相互拡散が十分に進行されず、Znの蒸気圧が高くなるため、緻密で薄い亜鉛酸化層が表面に形成される前にZnが蒸発して酸化層(スケール)の生成を抑制することができず、Fe含量が30重量%を超えると、亜鉛酸化層が表面に形成されることが困難となり、下層のFe−Zn合金層が酸化して酸化層(スケール)が生成されることが容易になるためである。
【0038】
また、上記メッキ鋼材がアルミニウム又はアルミニウム合金メッキ鋼材の場合は、700℃超〜Ac1以下の温度範囲に加熱し、20分以下の時間に維持することが好ましい。
【0039】
上記アルミニウム又はアルミニウム合金メッキ鋼材を高温に加熱したとき、メッキ層の揮発を抑制するためには、メッキ層の適正な合金化がなされ、表面に緻密で薄い酸化層を形成させる必要がある。純粋アルミニウムは融点が約680℃であるが、Feとの合金化が進行するにつれ融点が上昇するようになる。したがって、合金化が十分に進行されない状態で高温に加熱すると、メッキ層の揮発の問題が発生するため、上記温度に加熱し維持することが必要である。
【0040】
上記メッキ鋼材が加熱温度700℃以下で加熱された場合は、十分な合金化のための時間が過度に必要であり、それによって生産性に問題が生じる。このため、加熱温度は700℃を超える必要がある。また、上記メッキ鋼材が、温度Ac1を超えた温度で加熱されると、基材は組織の変態が起こるため、過熱温度の上限はAc1に限定することが好ましい。
【0041】
アルミニウム又はアルミニウム合金メッキ鋼材の場合、1次加熱温度が高いと、1次加熱温度まで加熱するうちに既に適正な合金化がなされるため、この場合には維持時間が不要である。しかしながら、1次加熱温度が低くて維持時間が短い場合は、十分な合金化の目的を達成することができないため、適正な維持時間の確保が必要であり、この際には生産性を考慮して20分以下に限定することが好ましい。
【0042】
上記メッキ鋼材がアルミニウム又はアルミニウム合金メッキ鋼材の場合は、1次加熱後のメッキ層の表面のFe含量が5重量%以上となるようにすることが好ましい。これは、メッキ層の表面のFe含量が5重量%未満の状態で急速に2次加熱を行うと、メッキ層が揮発してしまう問題が発生するためである。この際、上記合金化量の測定はメッキ層の表面から約2μm以内に限定することが好ましい。
【0043】
上記1次加熱及び維持されたメッキ鋼材に対して全体又は一部をさらに急速加熱する2次加熱段階を有する。この際の加熱温度はAc3以上から950℃までの温度範囲であることが好ましく、この際の加熱速度は10℃/秒以上の急速加熱速度であることが好ましい。
【0044】
上記メッキ鋼材の一部を追加加熱する場合、追加加熱された部分は成形及び冷却の後にマルテンサイト組織を有するようになり、追加加熱されない部分は初期の組織をそのまま有するようになるため、強度の差異を有する熱間プレス成形品が得られる。
【0045】
特に、亜鉛メッキ鋼材の場合、追加加熱されない部分は、メッキ層内に亜鉛含量が多いため、追加加熱された部分に比べて耐食性の面で優れた特性を確保することができる。このように強度及び耐食性の差異を活用すると、低強度及び耐食性が要求される部分と高強度が要求される部分とが同時に必要なB−ピラー(pillar)のような部品の生産が可能となるという長所がある。
【0046】
上記2次加熱段階では10℃/秒以上の加熱速度に急速加熱する。メッキ鋼材の場合、高温で長時間維持されると、メッキ層の酸化が多く発生するようになる。また、基材の側面で冷却後に十分な強度を得るためには、Ac3以上に加熱してオーステナイト変態をさせる必要がある。したがって、加熱炉雰囲気のように遅い速度でAc3以上の温度まで加熱をする場合は、高温で維持する時間が長くなり、これによるメッキ層の過度な酸化を抑制することができない。したがって、1次加熱及び維持によって十分に合金化させ表面に緻密で薄い酸化層を形成させた後、2次で急速加熱して高温で維持する時間を短縮させてメッキ層が酸化することを防止する必要がある。したがって、このような目的を達成するために、上記2次加熱では10℃/秒以上の加熱速度で急速加熱することが好ましい。
【0047】
上記2次加熱後には維持時間を有するが、この際の維持時間はオーステナイト変態が十分に完了する水準まで維持すれば良く、最小化することが好ましいため、本発明では特に限定しない。
【0048】
上記Ac3以上の温度に加熱する理由は、オーステナイト変態によって冷却後にマルテンサイト相を得るためである。950℃を超えて過度に加熱すると、メッキ層の揮発及び急速な酸化をもたらす可能性がある。
【0049】
上記2次加熱された鋼材に対して熱間プレス成形を行い、冷却する。上記成形及び冷却は通常の熱間プレス成形方法に従えば良いため、本発明では特に限定しない。
【0050】
[熱間プレス成形品]
本発明の熱間プレス成形品によると、メッキ鋼材、特に、亜鉛メッキ鋼材やアルミニウムメッキ鋼材を用いる場合にも、表面の酸化スケールの発生を低減して優れた表面特性を有する熱間プレス成形品を提供することができる。
【0051】
また、本発明の熱間プレス成形品は、上記2次加熱段階でブランクの一部のみを加熱する方式を有するため、最終成形後、相違する強度を有することができる。即ち、2次加熱が行われた部分は、Ac3以上の温度まで加熱されて十分なオーステナイト変態がなされ、熱間プレス成形を経ながらマルテンサイト等の組織に変態して高い強度を有することができる。
【0052】
これに対し、2次加熱が行われない部分は、変態が発生しないため、低い強度を有する。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(従来例)
合金化溶融亜鉛メッキに対し、従来の方法で、即ち、熱間プレス成形前に加熱炉で制御せず、加熱した後に熱間プレス成形を行った後、酸化スケールを観察する実験を行った。
【0055】
上記従来例の実験では、図2に示された加熱炉の温度条件を基準に合金化溶融亜鉛メッキ素材を加熱し急冷した後、その試片の表面の写真(図3(a))及び試片の表面にスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールの態様(図3(b))を観察し、これを図3に示した。
【0056】
図3に示されたように、試片の表面上には大きな問題がないように見えるが、スコッチテープに付いている酸化スケールが非常に多く発生するため、前述したように溶接や塗装工程のために酸化スケールを除去する別途の工程が必要であることが分かる。
【0057】
(実施例1−1)
亜鉛メッキ鋼材の一種である合金化溶融亜鉛メッキ鋼材に対し、1次加熱温度及び維持時間を異ならせて行った後、表面の写真及びスコッチテープを着脱した後のスコッチテープに付いている酸化スケールを観察した。
【0058】
図4は1次加熱温度を異ならせた後、3分間維持し、2次で40℃/秒で加熱し、900℃で15秒間維持した後に急冷した試片の表面を観察した写真であり、図5は図4の試片の表面にスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールの態様を示した写真である。
【0059】
図4及び図5に示されたように、1次加熱温度が600℃以上であると、2次加熱後に表面に酸化がひどく発生するため、亜鉛メッキ鋼材の場合は600℃未満まで1次加熱することが好ましいことが分かる。
【0060】
図6は1次加熱温度を500℃にした後、維持時間を異ならせ、2次で40℃/秒で加熱し、900℃で15秒間維持した後に急冷した試片の表面を観察した写真であり、図7は図6の試片の表面にスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールの態様を示した写真である。
【0061】
図6及び7の結果によると、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の場合、1次加熱後、維持時間による試片の表面での効果の差異は大きくなかった。これに対し、図8に示されたように、1次加熱区間なしにすぐに秒当たり40℃の速度で900℃まで加熱し15秒間維持した試片の写真(図8(a))とテーピングテスト写真(図8(b))からは、メッキ層揮発の問題が発生する可能性があることが分かるため、1次加熱で十分に合金化させメッキ層の表面に緻密で薄い酸化層を生成させることが必須であることが分かる。
【0062】
1次加熱温度及び維持時間をより詳細に分析するために、下記のような実験を行った。
【0063】
合金化溶融亜鉛メッキされた素材を10℃/秒の速度で500℃まで加熱し3分間維持した後に急冷した試片(図9(a))と600℃まで加熱し3分間維持した後に急冷した試片(図9(b))のメッキ層に対するGDS分析結果を図9に示した。図9からは、600℃で維持した試片は合金化が多く進行されて約30%程度進行されていることを確認することができる。一方、図9と同じ条件で準備された試片のメッキ層に対するSEM写真をそれぞれ図10(a)及び図10(b)に示した。図10からは、600℃で維持した試片の表面層には過度な酸化スケールが多く形成されているが、500℃で維持した試片の表面には微細な酸化スケールが均一に形成されていることを確認することができる。
【0064】
したがって、上述した内容をまとめて見ると、2次加熱時に揮発及び酸化スケールの発生を抑制するためには、600℃未満の温度で20分以内の一定時間を維持して2次加熱する前にメッキ層の含量が5〜30%以内となるようにすることが重要であることを確認することができる。
【0065】
(実施例1−2)
一方、上記実施例1−1と同じ合金化溶融亜鉛メッキ素材に対し、2次加熱温度及び維持時間を異ならせて行った後、表面の写真及びスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールを観察した。
【0066】
図11は上記素材を500℃まで加熱し、3分間維持し、2次加熱温度を異ならせた後、15秒間維持し急冷した試片の表面を観察した写真であり、図12は図11の試片の表面にスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールの態様を示した写真である。
【0067】
図11及び図12を参照すると、1次合金化を経た後に2次で急速加熱を行うと、700〜930℃で15秒間維持した場合、試片に表面スケールが多く発生していないことを確認することができる。
【0068】
図13は上記素材を500℃まで加熱し、3分間維持した後、40℃/秒の加熱速度で900℃まで2次加熱を行った後、維持時間を異ならせた試片の表面を観察した写真であり、図14は図13の試片の表面にスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールの態様を示した写真である。
【0069】
図13及び図14を参照すると、2次維持時間が長くなっても、1次加熱で合金化させ表面に緻密で薄い酸化層を形成させ2次で急速加熱した場合、酸化スケールの生成が多くなるわけではないため、2次加熱での維持時間はオーステナイト変態が十分に完了する水準まで維持すれば良く、好ましくは最小化することが良いという結論が得られる。
【0070】
(実施例2−1)
アルミニウムメッキ鋼材の一種である溶融アルミニウムメッキ鋼材に対し、1次で700℃まで加熱し3分間維持した後、20℃/秒の加熱速度で2次加熱し15秒間維持した試片の表面を観察し、その写真を図15に示した。また、上記1次加熱及び維持を終えた試片のGDS結果を図16に示した。
【0071】
図16の結果からは、メッキ層の表面のFe合金化率が5%未満程度に過ぎず、1次加熱で十分な合金化がなされないため、図15に示されたように2次加熱時に試片の下方にメッキ層が流れ落ちる問題点が観察された。
【0072】
したがって、アルミニウムメッキ鋼材の1次加熱時には、亜鉛メッキ鋼材に比べてより高い加熱温度が要求されることが分かる。
【0073】
(実施例2−2)
アルミニウムメッキ鋼材の一種である溶融アルミニウムメッキ鋼材に対し、1次で750℃まで加熱し3分間維持した後、20℃/秒の加熱速度で2次加熱し15秒間維持した試片の表面を観察し、その写真を図17に示した。また、上記1次加熱及び維持を終えた試片のGDS結果を図18に示した。
【0074】
図18の結果からは、メッキ層の表面のFe合金化率が約10%程度であり、1次加熱で十分な合金化がなされるため、図17に示されたように2次急速加熱後にもメッキ層には問題がないことが観察された。
【0075】
(実施例3)
一方、上記実施例1−1の合金化溶融亜鉛メッキ鋼材に対し、1次で500℃に加熱し3分維持した後、鋼材の中央部分を高周波加熱で40℃/秒の速度で急速加熱し15秒間維持した後、平板金型に圧着して急冷を行った試片の硬度分布から換算した引張強度を図19に示した。
【0076】
図19からは、2次で追加加熱された部位は高強度を有し追加加熱されない部位は低強度を有することを確認することができる。このような方法を用いると、一つの部品で低強度と高強度分布を有する部品を製造することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキされた熱間プレス成形用鋼材に対する熱間プレス成形方法に関し、より詳細には、亜鉛又はアルミニウムがメッキされた熱間プレス成形用メッキ鋼材の加熱時に熱処理パターン制御によって酸化スケールの発生が抑制された、同一強度又は同一部品内で異なる強度分布を有することができる熱間プレス成形方法及びこれを用いた熱間プレス成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、各自動車製造会社は、自動車に部品を適用するにあたり、環境にやさしい燃費節減及び軽量化の社会的要求に対応するために、高強度素材の利用を増やしている。しかしながら、高強度素材の成形はスプリングバック及び寸法凍結性等の問題点を有しており、このような成形の難解性によってその使用に制限がある。
【0003】
このような成形上の問題点は、素材を成形性の良い高温で成形し、成形と同時に金型内で急冷して高強度部品を製造する方式で解決することができる。このような方式を熱間プレス成形工程という。このような工程によると、通常1500MPaの強度を有する部品を成形することができる。
【0004】
このような熱間プレス成形時には高温で移送及び成形がなされ、非メッキ鋼材を用いる場合は、酸化スケールが発生し、発生した酸化スケールは以後の溶接や塗装工程に問題となるため、酸化スケールを除去するためのショットブラスト工程が必須である。これに対し、メッキ鋼材を用いる場合は、このような酸化スケールが発生しないため、ショットブラスト工程が不要であり、原素材がメッキされた特性によって非メッキ鋼材に比べて耐食性が向上するという長所がある。特に、亜鉛メッキ鋼材は、メッキ層の犠牲腐食耐性特性によってアルミニウムがメッキされた鋼材に比べてより優れた耐食性を有している。
【0005】
しかしながら、亜鉛メッキ鋼材は、亜鉛メッキ層が加熱工程中に揮発されて表面不良をもたらすか又は酸化スケールが多く形成されて熱間プレス成形後に別途の酸化スケールを除去する工程が必要であることが知られている。
【0006】
このような問題点を解決するために、従来に提案された加熱パターンを制御する技術としては、韓国公開特許2008−0055957号公報、2006−0090309号公報、2006−0033921号公報、2005−0121744号公報、日本公開特許2004−323897号公報、2003−126920号公報、米国公開特許20070000117号公報等があるが、上記の特許は、予備熱処理後のブランク加工又は最終熱処理温度と時間に対する制御を開示してだけであり、酸化スケールの除去のための工程の省略については今もって所望されたままである。
【0007】
しかしながら、本発明者らは、加熱中に高温での維持時間を最小化することがメッキ層の酸化スケールの発生を最小化して成形後スケール除去工程の省略を可能にすることを見出した。このように、加熱炉内での1次熱処理の後、2次で急速加熱による亜鉛メッキ鋼材の熱処理パターンを規定したものはいままでにない。
【0008】
このように加熱炉で1次で熱処理をし2次で急速加熱する方法を用いると、同一部品内で異なる強度を有する部品を効果的に製造することができる。即ち、急速加熱によって、追加加熱する間に加熱されない部位の温度低下を防止することができ、成形前に十分に加熱された状態で成形をするようになるため、成形性を確保することができる上、高強度領域と低強度領域を明確に具現することができる。
【0009】
また、1次加熱温度が低いため、加熱炉投資費用及び空間(長さ)の減少が可能であり、2次で高周波又は赤外線加熱などの急速加熱方式を用いる場合はエネルギー効率を高めることができるという長所がある。
【0010】
なお、このような1次と2次による加熱方式を用いる場合、異種強度を有する部品を製造することができ、異種強度を有する部品に対する要求及び従来の技術は下記の通りである。
【0011】
熱間プレス成形工程により単一強度のみを有する部品は、衝突性能等の要求性能を満足させるための設計の面で自由度が低下し、これを解決するために、常温成形で多く用いられているテーラードウェルディッドブランク溶接(Tailor Welded Blanks、TWB)技術を組み入れた熱間プレス成形技術が開発されたりした。しかしながら、このようなTWB方式は、ブランクを溶接する工程が追加されるという短所があり、溶接部の信頼性が部品性能に影響を及ぼす可能性があるため、工程管理の面で多くの困難がある。
【0012】
上記TWB方式の他に、熱間プレス成形で部位別強度を異ならせるための技術には、成形後に冷却過程で冷却速度を異ならせる技術があり、このような技術には、金型と素材との接触面積の差によって制御する方法である日本特許公開2007−136474号公報、日本特許公開2003−328031号公報、韓国特許公開2007−0083585号公報及び国際公開WO07/084089号公報等があり、金型の一部分は冷却、一部分は加熱によって冷却速度を制御する方法である日本特許公開2005−161366号公報、日本特許公開2003−328031号公報及び国際公開WO06/128821号公報等がある。
【0013】
しかしながら、上記特許は、冷却速度を均一に制御しなければ均一な物性が得られず、複雑な形状に所望の強度が得られるように冷却速度を適切に制御することが困難であるという短所がある。即ち、秒当たり30℃以上の冷却速度では、引張強度1500MPa程度の物性を安定的に得られるが、それ未満の冷却速度では、冷却速度の減少により物性の減少変化が急変するため、安定的な物性を得ることが困難である。したがって、上記特許は、特に形状が複雑な成形品の場合、接触部位に応じて冷却速度が変わるため、強度を制御することが困難であるという問題点がある。
【0014】
一方、他の方法としては、成形前後の加熱温度を異ならせることにより熱処理特性を異なって付加する技術が提案された。日本特許公開2005−193287号公報には、部分熱処理を用いて形状凍結性に優れた部材を製作するために鋼板のプレス成形時に鋼板の一部をAr1以上に加熱し残部はそれ未満にして少なくともその一部がオーステナイトを含む状態でプレス成形する方法が開示されているが、上記特許は、一部をAr1以上に加熱し残部はそれ未満に加熱する方式を採択しているため、現実的にはブランクを加熱炉内で別途に加熱することが困難であるという問題点がある。
【0015】
また、米国特許公開20080041505号公報には、上記と同じ目的のために領域を区分して分離した加熱炉及びこれを用いた加熱方法について開示されている。しかしながら、上記特許は、2つのゾーン(zone)に区画された加熱炉の内部をコンベヤーで移動しながら互いに異なる温度で熱処理するものであるため、このように構成された加熱炉を用いる場合、十分な温度に加熱するために加熱炉内の維持時間を長くすると、ブランク内での熱伝達によって温度の差を明確にすることが困難になるという問題点がある。
【0016】
一方、日本特許公開2007−231660号公報では、被加工材の2つの部分を区分して互いに異なる温度に加熱した後にプレス加工することにより引張強度の高い硬質部と加工性の高い軟質部で構成する技術を提案しているが、上記特許は、断熱材を設置して互いに異なる温度に加熱されるようにするという点で現実的には適用が困難な技術である。
【0017】
上記提案された特許に記載された技術は、殆ど現実的に適用することが困難な概念的な技術であり、複雑な形状で所望の強度が得られるように冷却速度を適切に制御することが困難であるという短所がある。したがって、現実的に適用することが可能であり複雑な形状で領域別に所望の強度が得られる熱間プレス成形品を製造する方法が求められている。
【0018】
一方、亜鉛やアルミニウムメッキ鋼材を用いる場合、メッキ層の揮発を防ぐなど、メッキ層の信頼性を確保し、特に、亜鉛メッキ鋼材の場合、酸化スケール除去工程などの付加的な工程を除去するための努力が必要である。前述したように、異種強度部品を効果的に製造するためには、2次加熱時に急速加熱が必要であるが、十分に合金化されないメッキ層の場合は急速加熱時にメッキ層揮発の問題が発生する可能性が多い。したがって、2次急速加熱時にメッキ層の揮発が発生しないように1次加熱時に熱処理パターンを導出する必要があることを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の一側面は、熱間プレス用メッキ鋼材を用いた熱間プレス成形時、ブランクに適正な熱処理条件を付与してメッキ層の揮発と酸化スケールの発生を抑制し、且つ2次加熱時に温度の差を付与して異なる強度と物性を確保することができる熱間プレス成形方法と上記方法を用いた熱間プレス成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
メッキ鋼材の熱間プレス成形方法であって、上記メッキ鋼材全体を1次加熱し維持する段階と、上記維持後、メッキ鋼材の全体又は一部をさらに急速加熱する2次加熱段階と、上記2次加熱されたメッキ鋼材を熱間プレス成形し冷却する段階と、を含むメッキ鋼材の熱間プレス成形方法及びこれを用いた熱間プレス成形品を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、全体的に同一の強度と物性又は互いに異なる強度及び物性を有する熱間プレス成形品が一つの工程で得られ、メッキ層の酸化スケールの発生が抑制されて成形後に酸化スケール除去工程が不要な熱間プレス成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の熱間プレス成形方法の概略図である。
【図2】従来の熱間プレス加熱炉の時間による温度の変化の例を示すグラフ図である。
【図3】従来例の表面写真(a)とスコッチテーピング後の写真(b)を示した写真図である。
【図4】実施例1−1の1次加熱温度を異ならせた試片の表面写真図である。
【図5】図4のスコッチテーピング後の写真図である。
【図6】実施例1−1の1次加熱後の維持時間を異ならせた試片の表面写真図である。
【図7】図6のスコッチテーピング後の写真図である。
【図8】1次加熱なしにすぐに40℃/秒の速度で900℃に加熱し15秒間維持した試片の表面写真(a)とスコッチテーピング後の写真(b)を示した写真図である。
【図9】実施例1−1において1次加熱温度を500℃とした場合(a)と600℃とした場合(b)のGDS分析結果を示した特性図である。
【図10】図9のSEM写真を示した写真図である。
【図11】実施例1−2において2次加熱温度を異ならせた試片の表面写真図である。
【図12】図11のスコッチテーピング後の写真図である。
【図13】実施例1−2において2次加熱後に維持時間を異ならせた試片の表面写真図である。
【図14】図13のスコッチテーピング後の写真図である。
【図15】実施例2−1の試片の表面写真を示した写真図である。
【図16】図15のGDS分析結果を示した特性図である。
【図17】実施例2−2の試片の表面写真を示した写真図である。
【図18】図17のGDS分析結果を示した特性図である。
【図19】実施例3において試片内の硬度分布から換算された引張強度分布を示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
本発明者らは、メッキ鋼材を用いて熱間プレス成形を行う場合には亜鉛やアルミニウムメッキ層の溶融点が低いため、加熱炉内で通常的な加熱パターンで加熱すると、酸化が多く発生するか又は揮発が発生することが多いことを考慮して、酸化スケールの発生を抑制しメッキ信頼性を確保するためには熱処理条件を制御すべきであることを見出し本発明に至った。
【0025】
また、上記加熱炉で加熱する際に2段の加熱方式により温度の差を有するブランクを確保した後、成形を行うと、同一の金型冷却を行っても異なる強度分布を有することができることを見出し本発明に至った。
【0026】
[熱間プレス成形方法]
まず、本発明の熱間プレス成形方法について説明する。
【0027】
図1には本発明の熱間プレス成形方法の一例を概略的に示した。図1に示されたように、本発明の熱間プレス成形方法は、メッキ鋼材全体を1次加熱し維持する段階と、上記維持後、メッキ鋼材の全体又は一部をさらに急速加熱する2次加熱段階と、上記2次加熱されたメッキ鋼材を熱間プレス成形し冷却する段階と、を含んで行われる。
【0028】
以下、本発明の熱間プレス成形方法について詳細に説明する。
【0029】
本発明の熱間プレス成形方法に適用されるブランクの鋼材は、特に限定されず、Ac3以上の温度でオーステナイト化した後に急冷によって1500MPa程度の高強度が得られる一般的な熱間プレス成形に適用される鋼材であれば良い。
【0030】
本発明のメッキ鋼材は、亜鉛系又はアルミニウム系メッキ鋼材であり、メッキ方法として溶融メッキ、合金化溶融メッキ及び電気メッキ等の方法で製造されたものであれば良く、特に限定されるものではない。
【0031】
本発明は、まず、メッキ鋼材全体を加熱する1次加熱及び維持する段階を有する。上記1次加熱及び維持する段階は、上記メッキ鋼材のメッキ層が十分に合金化されるようにするためのものであり、これにより、メッキ層の表面に過度な酸化スケール(scale)が発生することを防止するためのものである。
【0032】
上記1次加熱の温度範囲及び維持時間はメッキ鋼材の種類に応じて変わることもあるが、上記1次加熱の温度範囲はAc1以下であることが好ましい。上記1次加熱は2次で急速加熱及び高温での維持の際にメッキ層が揮発するか又は過度な酸化が発生することを予防するためのものであり、これは、1次加熱によって合金化で融点を上昇させメッキ層の表面に緻密で薄い酸化層を形成させるためである。
【0033】
上記メッキ鋼材が亜鉛又は亜鉛合金メッキ鋼材の場合は、400℃以上〜600℃未満の温度範囲に加熱し、20分以下の時間に維持することが好ましい。
【0034】
上記亜鉛又は亜鉛合金メッキ鋼材を高温に加熱したとき、メッキ層の揮発及び過度な酸化スケールの生成を抑制するためには、メッキ層の適正な合金化がなされ、表面に緻密で薄い酸化層を形成させる必要がある。純粋亜鉛は融点が約420℃であるが、Feとの合金化が進行するにつれ融点が上昇するようになる。したがって、合金化が十分に進行されない状態で高温に加熱すると、メッキ層の揮発の問題が発生するため、上記温度に加熱し維持することが必要である。
【0035】
上記温度が400℃未満の場合は十分な合金化のための時間が過度に必要とされて生産性の面で好ましくなく、600℃以上の場合は表面に既に不均一で過度な酸化層が生成されて追加加熱時に揮発問題及び過度な酸化層生成が発生するため、上記1次加熱は400℃以上〜600℃未満の温度範囲で行うことが好ましい。
【0036】
亜鉛又は亜鉛合金メッキ材の場合、1次加熱温度が高いと、1次加熱温度まで加熱する間に既に適正な合金化がなされ緻密で薄い酸化層が形成されるため、この場合には維持時間が不要である。しかしながら、1次加熱温度が低い場合は、十分な合金化及び緻密で薄い酸化層形成のために適正な維持時間の確保が必要である。したがって、上記維持時間は生産性確保を考慮して20分以下とすることが好ましい。
【0037】
上記メッキ鋼材が亜鉛メッキ鋼材の場合、1次加熱後のメッキ層のFe含量は5〜30重量%となるようにすることが好ましい。これは、メッキ層のFe含量が5重量%未満であると、融点が低くてFeとZnの相互拡散が十分に進行されず、Znの蒸気圧が高くなるため、緻密で薄い亜鉛酸化層が表面に形成される前にZnが蒸発して酸化層(スケール)の生成を抑制することができず、Fe含量が30重量%を超えると、亜鉛酸化層が表面に形成されることが困難となり、下層のFe−Zn合金層が酸化して酸化層(スケール)が生成されることが容易になるためである。
【0038】
また、上記メッキ鋼材がアルミニウム又はアルミニウム合金メッキ鋼材の場合は、700℃超〜Ac1以下の温度範囲に加熱し、20分以下の時間に維持することが好ましい。
【0039】
上記アルミニウム又はアルミニウム合金メッキ鋼材を高温に加熱したとき、メッキ層の揮発を抑制するためには、メッキ層の適正な合金化がなされ、表面に緻密で薄い酸化層を形成させる必要がある。純粋アルミニウムは融点が約680℃であるが、Feとの合金化が進行するにつれ融点が上昇するようになる。したがって、合金化が十分に進行されない状態で高温に加熱すると、メッキ層の揮発の問題が発生するため、上記温度に加熱し維持することが必要である。
【0040】
上記メッキ鋼材が加熱温度700℃以下で加熱された場合は、十分な合金化のための時間が過度に必要であり、それによって生産性に問題が生じる。このため、加熱温度は700℃を超える必要がある。また、上記メッキ鋼材が、温度Ac1を超えた温度で加熱されると、基材は組織の変態が起こるため、過熱温度の上限はAc1に限定することが好ましい。
【0041】
アルミニウム又はアルミニウム合金メッキ鋼材の場合、1次加熱温度が高いと、1次加熱温度まで加熱するうちに既に適正な合金化がなされるため、この場合には維持時間が不要である。しかしながら、1次加熱温度が低くて維持時間が短い場合は、十分な合金化の目的を達成することができないため、適正な維持時間の確保が必要であり、この際には生産性を考慮して20分以下に限定することが好ましい。
【0042】
上記メッキ鋼材がアルミニウム又はアルミニウム合金メッキ鋼材の場合は、1次加熱後のメッキ層の表面のFe含量が5重量%以上となるようにすることが好ましい。これは、メッキ層の表面のFe含量が5重量%未満の状態で急速に2次加熱を行うと、メッキ層が揮発してしまう問題が発生するためである。この際、上記合金化量の測定はメッキ層の表面から約2μm以内に限定することが好ましい。
【0043】
上記1次加熱及び維持されたメッキ鋼材に対して全体又は一部をさらに急速加熱する2次加熱段階を有する。この際の加熱温度はAc3以上から950℃までの温度範囲であることが好ましく、この際の加熱速度は10℃/秒以上の急速加熱速度であることが好ましい。
【0044】
上記メッキ鋼材の一部を追加加熱する場合、追加加熱された部分は成形及び冷却の後にマルテンサイト組織を有するようになり、追加加熱されない部分は初期の組織をそのまま有するようになるため、強度の差異を有する熱間プレス成形品が得られる。
【0045】
特に、亜鉛メッキ鋼材の場合、追加加熱されない部分は、メッキ層内に亜鉛含量が多いため、追加加熱された部分に比べて耐食性の面で優れた特性を確保することができる。このように強度及び耐食性の差異を活用すると、低強度及び耐食性が要求される部分と高強度が要求される部分とが同時に必要なB−ピラー(pillar)のような部品の生産が可能となるという長所がある。
【0046】
上記2次加熱段階では10℃/秒以上の加熱速度に急速加熱する。メッキ鋼材の場合、高温で長時間維持されると、メッキ層の酸化が多く発生するようになる。また、基材の側面で冷却後に十分な強度を得るためには、Ac3以上に加熱してオーステナイト変態をさせる必要がある。したがって、加熱炉雰囲気のように遅い速度でAc3以上の温度まで加熱をする場合は、高温で維持する時間が長くなり、これによるメッキ層の過度な酸化を抑制することができない。したがって、1次加熱及び維持によって十分に合金化させ表面に緻密で薄い酸化層を形成させた後、2次で急速加熱して高温で維持する時間を短縮させてメッキ層が酸化することを防止する必要がある。したがって、このような目的を達成するために、上記2次加熱では10℃/秒以上の加熱速度で急速加熱することが好ましい。
【0047】
上記2次加熱後には維持時間を有するが、この際の維持時間はオーステナイト変態が十分に完了する水準まで維持すれば良く、最小化することが好ましいため、本発明では特に限定しない。
【0048】
上記Ac3以上の温度に加熱する理由は、オーステナイト変態によって冷却後にマルテンサイト相を得るためである。950℃を超えて過度に加熱すると、メッキ層の揮発及び急速な酸化をもたらす可能性がある。
【0049】
上記2次加熱された鋼材に対して熱間プレス成形を行い、冷却する。上記成形及び冷却は通常の熱間プレス成形方法に従えば良いため、本発明では特に限定しない。
【0050】
[熱間プレス成形品]
本発明の熱間プレス成形品によると、メッキ鋼材、特に、亜鉛メッキ鋼材やアルミニウムメッキ鋼材を用いる場合にも、表面の酸化スケールの発生を低減して優れた表面特性を有する熱間プレス成形品を提供することができる。
【0051】
また、本発明の熱間プレス成形品は、上記2次加熱段階でブランクの一部のみを加熱する方式を有するため、最終成形後、相違する強度を有することができる。即ち、2次加熱が行われた部分は、Ac3以上の温度まで加熱されて十分なオーステナイト変態がなされ、熱間プレス成形を経ながらマルテンサイト等の組織に変態して高い強度を有することができる。
【0052】
これに対し、2次加熱が行われない部分は、変態が発生しないため、低い強度を有する。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(従来例)
合金化溶融亜鉛メッキに対し、従来の方法で、即ち、熱間プレス成形前に加熱炉で制御せず、加熱した後に熱間プレス成形を行った後、酸化スケールを観察する実験を行った。
【0055】
上記従来例の実験では、図2に示された加熱炉の温度条件を基準に合金化溶融亜鉛メッキ素材を加熱し急冷した後、その試片の表面の写真(図3(a))及び試片の表面にスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールの態様(図3(b))を観察し、これを図3に示した。
【0056】
図3に示されたように、試片の表面上には大きな問題がないように見えるが、スコッチテープに付いている酸化スケールが非常に多く発生するため、前述したように溶接や塗装工程のために酸化スケールを除去する別途の工程が必要であることが分かる。
【0057】
(実施例1−1)
亜鉛メッキ鋼材の一種である合金化溶融亜鉛メッキ鋼材に対し、1次加熱温度及び維持時間を異ならせて行った後、表面の写真及びスコッチテープを着脱した後のスコッチテープに付いている酸化スケールを観察した。
【0058】
図4は1次加熱温度を異ならせた後、3分間維持し、2次で40℃/秒で加熱し、900℃で15秒間維持した後に急冷した試片の表面を観察した写真であり、図5は図4の試片の表面にスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールの態様を示した写真である。
【0059】
図4及び図5に示されたように、1次加熱温度が600℃以上であると、2次加熱後に表面に酸化がひどく発生するため、亜鉛メッキ鋼材の場合は600℃未満まで1次加熱することが好ましいことが分かる。
【0060】
図6は1次加熱温度を500℃にした後、維持時間を異ならせ、2次で40℃/秒で加熱し、900℃で15秒間維持した後に急冷した試片の表面を観察した写真であり、図7は図6の試片の表面にスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールの態様を示した写真である。
【0061】
図6及び7の結果によると、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の場合、1次加熱後、維持時間による試片の表面での効果の差異は大きくなかった。これに対し、図8に示されたように、1次加熱区間なしにすぐに秒当たり40℃の速度で900℃まで加熱し15秒間維持した試片の写真(図8(a))とテーピングテスト写真(図8(b))からは、メッキ層揮発の問題が発生する可能性があることが分かるため、1次加熱で十分に合金化させメッキ層の表面に緻密で薄い酸化層を生成させることが必須であることが分かる。
【0062】
1次加熱温度及び維持時間をより詳細に分析するために、下記のような実験を行った。
【0063】
合金化溶融亜鉛メッキされた素材を10℃/秒の速度で500℃まで加熱し3分間維持した後に急冷した試片(図9(a))と600℃まで加熱し3分間維持した後に急冷した試片(図9(b))のメッキ層に対するGDS分析結果を図9に示した。図9からは、600℃で維持した試片は合金化が多く進行されて約30%程度進行されていることを確認することができる。一方、図9と同じ条件で準備された試片のメッキ層に対するSEM写真をそれぞれ図10(a)及び図10(b)に示した。図10からは、600℃で維持した試片の表面層には過度な酸化スケールが多く形成されているが、500℃で維持した試片の表面には微細な酸化スケールが均一に形成されていることを確認することができる。
【0064】
したがって、上述した内容をまとめて見ると、2次加熱時に揮発及び酸化スケールの発生を抑制するためには、600℃未満の温度で20分以内の一定時間を維持して2次加熱する前にメッキ層の含量が5〜30%以内となるようにすることが重要であることを確認することができる。
【0065】
(実施例1−2)
一方、上記実施例1−1と同じ合金化溶融亜鉛メッキ素材に対し、2次加熱温度及び維持時間を異ならせて行った後、表面の写真及びスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールを観察した。
【0066】
図11は上記素材を500℃まで加熱し、3分間維持し、2次加熱温度を異ならせた後、15秒間維持し急冷した試片の表面を観察した写真であり、図12は図11の試片の表面にスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールの態様を示した写真である。
【0067】
図11及び図12を参照すると、1次合金化を経た後に2次で急速加熱を行うと、700〜930℃で15秒間維持した場合、試片に表面スケールが多く発生していないことを確認することができる。
【0068】
図13は上記素材を500℃まで加熱し、3分間維持した後、40℃/秒の加熱速度で900℃まで2次加熱を行った後、維持時間を異ならせた試片の表面を観察した写真であり、図14は図13の試片の表面にスコッチテープを付けて外した後のスコッチテープに付いている酸化スケールの態様を示した写真である。
【0069】
図13及び図14を参照すると、2次維持時間が長くなっても、1次加熱で合金化させ表面に緻密で薄い酸化層を形成させ2次で急速加熱した場合、酸化スケールの生成が多くなるわけではないため、2次加熱での維持時間はオーステナイト変態が十分に完了する水準まで維持すれば良く、好ましくは最小化することが良いという結論が得られる。
【0070】
(実施例2−1)
アルミニウムメッキ鋼材の一種である溶融アルミニウムメッキ鋼材に対し、1次で700℃まで加熱し3分間維持した後、20℃/秒の加熱速度で2次加熱し15秒間維持した試片の表面を観察し、その写真を図15に示した。また、上記1次加熱及び維持を終えた試片のGDS結果を図16に示した。
【0071】
図16の結果からは、メッキ層の表面のFe合金化率が5%未満程度に過ぎず、1次加熱で十分な合金化がなされないため、図15に示されたように2次加熱時に試片の下方にメッキ層が流れ落ちる問題点が観察された。
【0072】
したがって、アルミニウムメッキ鋼材の1次加熱時には、亜鉛メッキ鋼材に比べてより高い加熱温度が要求されることが分かる。
【0073】
(実施例2−2)
アルミニウムメッキ鋼材の一種である溶融アルミニウムメッキ鋼材に対し、1次で750℃まで加熱し3分間維持した後、20℃/秒の加熱速度で2次加熱し15秒間維持した試片の表面を観察し、その写真を図17に示した。また、上記1次加熱及び維持を終えた試片のGDS結果を図18に示した。
【0074】
図18の結果からは、メッキ層の表面のFe合金化率が約10%程度であり、1次加熱で十分な合金化がなされるため、図17に示されたように2次急速加熱後にもメッキ層には問題がないことが観察された。
【0075】
(実施例3)
一方、上記実施例1−1の合金化溶融亜鉛メッキ鋼材に対し、1次で500℃に加熱し3分維持した後、鋼材の中央部分を高周波加熱で40℃/秒の速度で急速加熱し15秒間維持した後、平板金型に圧着して急冷を行った試片の硬度分布から換算した引張強度を図19に示した。
【0076】
図19からは、2次で追加加熱された部位は高強度を有し追加加熱されない部位は低強度を有することを確認することができる。このような方法を用いると、一つの部品で低強度と高強度分布を有する部品を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ鋼材の熱間プレス成形方法であって、
前記メッキ鋼材全体を1次加熱し維持する段階と、
前記維持後、メッキ鋼材の全体又は一部をさらに急速加熱する2次加熱段階と、
前記2次加熱されたメッキ鋼材を熱間プレス成形し冷却する段階と、
を含む、メッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項2】
前記メッキ鋼材が亜鉛メッキ鋼材又は亜鉛合金メッキ鋼材の場合、前記1次加熱及び維持する段階は、400℃以上〜600℃未満の温度範囲に加熱し、20分以下の時間に維持する、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項3】
前記メッキ鋼材がアルミニウムメッキ鋼材又はアルミニウム合金メッキ鋼材の場合、前記1次加熱及び維持する段階は、700℃超〜Ac1以下の温度範囲に加熱し、20分以下の時間に維持する、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項4】
前記メッキ鋼材が亜鉛メッキ鋼材又は亜鉛合金メッキ鋼材の場合、前記1次加熱及び維持する段階は、メッキ層のFe含量が5〜30重量%となるように行う、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項5】
前記メッキ鋼材がアルミニウムメッキ鋼材又はアルミニウム合金メッキ鋼材の場合、前記1次加熱及び維持する段階は、メッキ層の表面のFe含量が5重量%以上となるように行う、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項6】
前記2次加熱する段階は、10℃/秒以上の昇温速度で加熱する、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項7】
前記2次加熱する段階は、Ac3から950℃までの温度範囲で加熱する、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法で製造される、熱間プレス成形品。
【請求項9】
前記熱間プレス成形品は、強度分布を有する、請求項8に記載の熱間プレス成形品。
【請求項1】
メッキ鋼材の熱間プレス成形方法であって、
前記メッキ鋼材全体を1次加熱し維持する段階と、
前記維持後、メッキ鋼材の全体又は一部をさらに急速加熱する2次加熱段階と、
前記2次加熱されたメッキ鋼材を熱間プレス成形し冷却する段階と、
を含む、メッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項2】
前記メッキ鋼材が亜鉛メッキ鋼材又は亜鉛合金メッキ鋼材の場合、前記1次加熱及び維持する段階は、400℃以上〜600℃未満の温度範囲に加熱し、20分以下の時間に維持する、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項3】
前記メッキ鋼材がアルミニウムメッキ鋼材又はアルミニウム合金メッキ鋼材の場合、前記1次加熱及び維持する段階は、700℃超〜Ac1以下の温度範囲に加熱し、20分以下の時間に維持する、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項4】
前記メッキ鋼材が亜鉛メッキ鋼材又は亜鉛合金メッキ鋼材の場合、前記1次加熱及び維持する段階は、メッキ層のFe含量が5〜30重量%となるように行う、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項5】
前記メッキ鋼材がアルミニウムメッキ鋼材又はアルミニウム合金メッキ鋼材の場合、前記1次加熱及び維持する段階は、メッキ層の表面のFe含量が5重量%以上となるように行う、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項6】
前記2次加熱する段階は、10℃/秒以上の昇温速度で加熱する、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項7】
前記2次加熱する段階は、Ac3から950℃までの温度範囲で加熱する、請求項1に記載のメッキ鋼材の熱間プレス成形方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法で製造される、熱間プレス成形品。
【請求項9】
前記熱間プレス成形品は、強度分布を有する、請求項8に記載の熱間プレス成形品。
【図1】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2013−515618(P2013−515618A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547010(P2012−547010)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009394
【国際公開番号】WO2011/081394
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(592000691)ポスコ (130)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009394
【国際公開番号】WO2011/081394
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(592000691)ポスコ (130)
【Fターム(参考)】
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