説明

メモリを内蔵したマイクロプロセッサ

【課題】プログラムをメモリに転送して動作させるマイクロプロセッサでは、通常動作と特殊動作で使用するメモリの容量が異なるが、メモリ全体に電力を供給していたので、消費電力が増大するという課題があった。本発明ではメモリの消費電力を低減することができるマイクロプロセッサを提供することを目的にする。
【解決手段】メモリを独立して電源が供給できる複数のメモリ領域に分割し、使用するメモリ領域にのみ電源を供給するようにした。マイクロプロセッサの消費電力を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメモリを内蔵したマイクロプロセッサに関し、メモリに供給する電力を制御して消費電力を低減することができる、メモリを内蔵したマイクロプロセッサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に組み込み機器の構成を示す。図3において、10は組み込み機器であり、Soc(System On Chip)11、PROM(Programmable Read Only Memory)14、および周辺機器15で構成される。SoC11はCPU(Central Processing Unit)12およびメモリ13で構成される。また、周辺機器15にはポートやカウンタ、他の組み込み機器等と通信する通信部等が含まれる。PROM14には、CPU12上で動作するプログラムが格納される。
【0003】
なお、SoCとは1つの半導体チップ上に異なる複数の機能を集積したものを言う。図3の場合は、SoC11はCPU12とメモリ13を集積している。
【0004】
起動時に、SoC11はPROM14に格納されているプログラムをメモリ13に転送する。CPU12はメモリ13に格納されたプログラムを読み込み、このプログラムに基づいて周辺機器15を操作して所定の機能を実現する。このような組み込み機器10は単独あるいは他の組み込み機器と組み合わされてフィールド機器等の機器を構成し、またシステムの一部として動作する。
【0005】
CPU12とメモリ13は同一チップ内に形成されるので、CPU12がメモリ13をアクセスする時間は、PROM14をアクセスする時間より短い。従って、起動時にPROM14に格納されたプログラムをメモリ13に転送することにより、SoC11の動作速度を速くすることができる。また、PROMとしてアクセス時間が長い安価なものを使用できる。
【0006】
図4に組み込み機器の他の構成を示す。なお、図3と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図4において、20は組み込み機器であり、SoC11および周辺機器15で構成される。また、21はホストコンピュータであり、図示しないネットワークを介して組み込み機器20に接続される。
【0007】
組み込み機器20は、起動するとホストコンピュータ21にプログラムの転送を要求し、送られてきたプログラムをメモリ13に格納する。CPU12はメモリ13に格納されたプログラムを実行する。この構成ではPROM14を用いないので、組み込み機器20の構成を簡単にすることができる。
【0008】
なお、図4の構成では組み込み機器20にはホストコンピュータ21が接続されていなければならないが、最近のフィールド機器はネットワーク化されているので、このネットワークに接続されたホストコンピュータを用いることができる。
【0009】
特許文献1には、外部メモリ107に格納されたプログラムをモジュール単位でRAM103に読み込むことにより、RAMの使用容量を小さくできるCPU内蔵型LSIが記載されている。また、特許文献2には、プリンタファームウエアの一部または全部をホストPCに格納し、印刷処理を行う毎に必要なモジュールをプリンタ側にダウンロードするファームウエアのダウンロード方式が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−272393号公報
【特許文献2】特開2001−067228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような発明には、次のような課題があった。フィールド機器のような組み込み機器では、組み込み機器として動作する通常動作と、メンテナンス等の特殊な処理を行う特殊動作の2種類の動作を実行しなければならない。このため、メモリ13に通常動作で実行するプログラムと特殊動作で実行するプログラムの両方を格納し、動作に応じて使い分けるようにしている。
【0012】
しかし、メモリ13に2つのプログラムを格納しているので必要なメモリサイズが大きくなり、消費電力が増大してしまうという課題があった。
【0013】
特許文献1および特許文献2記載の発明ではRAMあるいはROMの容量を小さくすることができるが、どのモジュールを読み込むかを決定する機構が必要であり、構成が大がかりになる。このため、フィールド機器のように小型、省電力が要求される機器には適用し難いという課題があった。
【0014】
本発明の目的は、簡単な構成で消費電力を低減することができる、メモリを内蔵したマイクロプロセッサを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
独立して電源が供給できる複数のメモリ領域に分割されたメモリと、
前記メモリ領域のうち、使用するメモリ領域にのみ電源を供給する電源制御部と、
前記メモリにアクセスし、このメモリに格納されたプログラムおよび/またはデータに基づいて動作するCPUと、
を具備したものである。使用しないメモリ領域に電源を供給しないので、マイクロプロセッサの消費電力を低減できる。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記マイクロプロセッサに接続された、プログラムが格納されたPROMを具備し、このPROMに格納されたプログラムを前記メモリのメモリ領域に格納するようにしたものである。PROMに格納されているプログラムをメモリに転送することにより、マイクロプロセッサの動作速度を高めることができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
ホストコンピュータが送信するプログラムを受信し、この受信したプログラムを前記メモリのメモリ領域に格納するようにしたものである。PROMを用いないので、構成が簡単になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1、2、および3の発明によれば、メモリを独立して電源が供給できる複数のメモリ領域に分割し、使用するメモリ領域にのみ電源を供給するようにした。
【0019】
使用しないメモリ領域に電源を供給しないので、電源を供給するメモリ領域の数を少なくすることができる。このため、マイクロプロセッサの消費電力を低減することができるという効果がある。
【0020】
また、消費電力が制限されるフィールド機器等では、低減した消費電力の分だけCPU12や周辺機器15に供給する電力を増加させることができるので、機器のパフォーマンスを向上させることができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示した構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示した構成図である。
【図3】従来の組み込み機器の構成図である。
【図4】従来の組み込み機器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るメモリを内蔵したマイクロプロセッサの一実施例を示した構成図である。なお、図3と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0023】
図1において、30は組み込み機器であり、SoC31、PROM34、および周辺機器15で構成される。また、SoC31は、CPU12、メモリ32、およびスイッチ33で構成される。VccはSoc31の電源である。SoC31はマイクロプロセッサを構成し、スイッチ33は電源制御部を構成している。
【0024】
メモリ32は、互いに独立して電源が供給できる2つのメモリ領域32a、32bに分割される。CPU12とメモリ領域32aには直接電源Vccが供給され、メモリ領域32bにはスイッチ33を介して電源Vccが供給される。
【0025】
PROM34は2つの領域34aと34bに分割される。領域34aには通常動作時に実行される通常動作用のプログラムが格納され、領域34bには特殊動作(例えばメンテナンス)時に実行される特殊動作用プログラムが格納される。
【0026】
組み込み機器30の起動時にスイッチ33はオフにされ、領域34aに格納されている通常動作用プログラムがメモリ領域32aに転送される。CPU13はメモリ領域32aに格納された通常動作用プログラムを実行する。スイッチ33がオフなので、メモリ領域32bには電源Vccが供給されず、SoC31の消費電力は小さくなる。
【0027】
特殊動作のときは、スイッチ33がオンにされ、メモリ領域32bに電力が供給される。そして、領域34bに格納されている特殊動作用プログラムがメモリ領域32bに転送される。CPU12はメモリ領域32bに格納された特殊動作用プログラムを実行する。
【0028】
この特殊動作用プログラムは、必要に応じて通常動作用プログラムのルーチンを呼び出す。このため、特殊動作のときは、メモリ領域32aと32bの両方に電源Vccを供給する。特殊動作が終了して通常動作に移行すると、スイッチ33はオフにされる。メモリ領域32bには電力が供給されなくなるので、SoC31の消費電力は低減する。
【0029】
すなわち、メモリ32のうち、使用するメモリ領域(通常動作ではメモリ領域32a、特殊動作ではメモリ領域32aと32b)にのみ電源を供給するようにする。
【0030】
前述したように、通常動作のときはスイッチ33がオフになり、メモリ領域32bには電源Vccが供給されない。このため、通常動作時の消費電力を低減することができる。特殊動作のときはSoC31の消費電力は通常動作時より大きくなるが、特殊動作はメンテナンス時等でのみ実行されるので、実行される時間割合は小さい。このため、組み込み機器30の平均的な消費電力を低減することができる。
【0031】
図2に本発明の他の実施例を示す。なお、図1および図4と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0032】
図2において、40は組み込み機器であり、SoC31および周辺機器15で構成される。この組み込み機器40は、図1の組み込み機器30からPROM34を除いた構成を有している。
【0033】
ホストコンピュータ21は組み込み機器40に接続される。組み込み機器40の起動時に、ホストコンピュータ21は通常動作用プログラムを組み込み機器40に送信する。組み込み機器40は、受信した通常動作用プログラムをメモリ領域32aに格納する。
【0034】
起動後の動作は図1実施例と同じである。通常動作のときは、スイッチ33はオフにされる。CPU12はメモリ領域32aに格納された通常動作用プログラムを実行する。メモリ領域32bには電源Vccが供給されないので、消費電力は低減される。
【0035】
特殊動作のときは、スイッチ33はオンにされる。組み込み機器40はホストコンピュータ21に特殊動作用プログラムの送信を要求し、送られてきた特殊動作用プログラムをメモリ領域32bに格納する。CPU12はメモリ領域32bに格納された特殊動作用プログラムを実行する。
【0036】
この実施例でも、通常動作時にはメモリ領域32bには電力が供給されないので、SoC31の消費電力を低減することができる。
【0037】
なお、これらの実施例ではマイクロプロセッサに相当するSoC31はCPUとメモリから構成されているが、周辺機器15やその他の要素を含む構成であってもよい。
【0038】
また、メモリ領域32a、32bにはプログラムが格納されるとして説明したが、データを格納する領域であってもよい。例えば、特殊動作では通常動作よりも広いデータ格納領域が必要とされる場合は、通常動作を実行するときに使用しないデータ格納領域に電源を供給しないようにする。
【0039】
また、図1、図2実施例では電源制御部としてスイッチ33を使用したが、他の構成であってもよい。要は、使用するメモリ領域にのみ電源を供給する構成であればよい。
【0040】
また、これらの実施例では通常動作用プログラムと特殊動作用プログラムについて説明したが、他のプログラムであってもよい。要は、同時に実行されることがないプログラムであればよい。
【0041】
また、メモリ領域32aに格納されるプログラムとメモリ領域32bに格納されるプログラムが相互に他に依存せずに動作する場合は、メモリ領域32a、32bの両方についてスイッチを介して電源Vccを供給して、メモリ領域32aに格納されたプログラムを実行するときはメモリ領域32aにのみ電源Vccを供給し、メモリ領域32bに格納されたプログラムを実行するときはメモリ領域32bにのみ電源Vccを供給してもよい。このようにすると、消費電力を更に低減することができる。
【0042】
さらに、これらの実施例ではメモリ32、PROM34を2つの領域に分割するようにしたが、切り換えるプログラムの数に応じて3つ以上に分割し、実行するプログラム/データが格納されているメモリ領域にのみ電力を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
12 CPU
15 周辺機器
21 ホストコンピュータ
30、40 組み込み機器
31 SoC
32 メモリ
32a、32b メモリ領域
33 スイッチ
34 PROM
34a、34b 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立して電源が供給できる複数のメモリ領域に分割されたメモリと、
前記メモリ領域のうち、使用するメモリ領域にのみ電源を供給する電源制御部と、
前記メモリにアクセスし、このメモリに格納されたプログラムおよび/またはデータに基づいて動作するCPUと、
を具備したことを特徴とするメモリを内蔵したマイクロプロセッサ。
【請求項2】
前記マイクロプロセッサに接続され、プログラムが格納されたPROMを具備し、このPROMに格納されたプログラムを前記メモリのメモリ領域に格納するようにしたことを特徴とする請求項1記載のメモリを内蔵したマイクロプロセッサ。
【請求項3】
ホストコンピュータが送信するプログラムを受信し、この受信したプログラムを前記メモリのメモリ領域に格納するようにしたことを特徴とする請求項1記載のメモリを内蔵したマイクロプロセッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−84039(P2012−84039A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231284(P2010−231284)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】