メンテナンス装置、流体噴射装置及びメンテナンス方法
【課題】複数のノズル内から効率よく気泡を排出させることができるメンテナンス装置、流体噴射装置及びメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】プリンターは、ノズル25が複数設けられた流体噴射ヘッド24と、インク供給チューブ27と、メンテナンス装置103とを備える。メンテナンス装置103は、圧力付与位置M2で加圧を行うことでノズル25からインクを膨出させるとともに、該加圧に伴いノズル25からインクが膨出した状態において減圧を行う圧力付与機構29と、圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う場合に、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞するように流体噴射ヘッド24に当接する密着キャップ102と、を備える。
【解決手段】プリンターは、ノズル25が複数設けられた流体噴射ヘッド24と、インク供給チューブ27と、メンテナンス装置103とを備える。メンテナンス装置103は、圧力付与位置M2で加圧を行うことでノズル25からインクを膨出させるとともに、該加圧に伴いノズル25からインクが膨出した状態において減圧を行う圧力付与機構29と、圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う場合に、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞するように流体噴射ヘッド24に当接する密着キャップ102と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス装置、流体噴射装置及びメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体に対して流体を噴射する流体噴射装置として、インクジェット式プリンターが広く知られている。このプリンターは、流体噴射ヘッドに形成されたノズルからインク(流体)を噴射することで、媒体に印刷処理を施すようになっている。
【0003】
こうしたプリンターにおいては、ノズル内に気泡が混入したノズル抜け状態で噴射を行うことで、印刷した画像にドット抜けが生じることがあった。そして、ドット抜けによる印字不良の発生を抑制するため、インクとともにノズル内の気泡を排出するクリーニングを実行するようにしたプリンターがあった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−152725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうしたクリーニングにおいては、気泡を排出するために多量のインクを消費してしまうため、特許文献1においては、印字不良の度合いに応じてインクの供給量を変化させるようにしていた。しかし、クリーニングに伴ってまだかなりのインクを消費してしまうため、さらなるインク消費量の低減が課題となっていた。
【0006】
この課題を解決するために、ノズル内のインクに対して加圧を行うことで、ノズルからインクの一部を膨出させ、そのインクの膨出部分に混入している気泡をノズル開口の外側となる大気側に押し出すというクリーニング方法が考えられる。この場合には、加圧と連続的に減圧を行うことで、加圧に伴ってノズルから膨出した状態にあるインクを引き戻すことができるので、インクの消費を抑制しつつ、気泡を排出することができる。
【0007】
しかし、流体噴射ヘッドに複数のノズルが設けられている場合には、付与される圧力にばらつきが生じ、圧力が付与され難いノズルからは効率よく気泡を排出させることができないという問題が生じうる。
【0008】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のノズル内から効率よく気泡を排出させることができるメンテナンス装置、流体噴射装置及びメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のメンテナンス装置は、流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドと、該流体噴射ヘッド側となる下流側に向けて前記流体を供給する流体供給流路とを有する流体噴射装置のメンテナンス装置であって、前記流体噴射ヘッドよりも上流側の圧力付与位置で、該流体供給流路内の前記流体に対して加圧を行うことで前記ノズルから前記流体を膨出させるとともに、該加圧に伴い前記ノズルから前記流体が膨出した状態において減圧を行う圧力付与機構と、該圧力付与機構が前記加圧及び前記減圧を行う場合に、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口を閉塞するように前記流体噴射ヘッドに当接する当接部材と、を備える。
【0010】
この構成によれば、圧力付与機構が加圧及び減圧を行う場合に、当接部材が、圧力付与位置から各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、圧力損失が相対的に小さい流路を通じて流体が供給されるノズルのノズル開口を閉塞するように流体噴射ヘッドに当接する。そのため、流路の圧力損失が小さく、圧力が付与され易いノズルのノズル開口を閉塞した後に加圧及び減圧をすることで、ノズル開口が閉塞されていないノズル内に集中的に圧力を付与することができる。これにより、圧力損失が大きく、圧力が付与され難いノズルからも、効率よく気泡を排出させることができる。したがって、複数のノズル内から効率よく気泡を排出させることができる。
【0011】
本発明のメンテナンス装置において、前記当接部材は、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の長さに応じて、該長さが相対的に短い流路を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口から優先的に閉塞する。
【0012】
この構成によれば、当接部材が、圧力付与位置からの流路の長さが相対的に短い流路を通じて流体が供給されるノズルのノズル開口から優先的に閉塞することで、相対的に長い流路を通じて流体が供給されるノズル内に集中的に圧力を付与することができる。また、閉塞するタイミングが異なる各ノズル開口を同じ当接部材で閉塞することができるので、複数の当接部材を備える必要がない。そして、当接部材が全てのノズル開口を閉塞することで、ノズル内からの流体の蒸発を抑制することができる。
【0013】
本発明のメンテナンス装置において、前記流体供給流路には、前記圧力付与位置の下流側において前記流体を一時貯留するために一方向に沿って延びる貯留部と、該貯留部内に前記流体を流入させるための流入孔と、前記貯留部内の前記流体を前記各ノズルに向けて供給するために前記一方向に沿って並ぶように配置された複数の流出孔とが設けられ、前記圧力付与機構は、前記当接部材が前記流入孔からの距離が短い前記流出孔を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口を閉塞する前及び閉塞した後に、前記加圧及び前記減圧を行う。
【0014】
この構成によれば、貯留部は一方向に沿って延びるように設けられるとともに、流出孔は一方向に沿って並ぶように配置されるため、流入孔から流出孔に至る圧力損失は、流入孔から流出孔までの距離に応じて異なる。そのため、当接部材がノズル開口を閉塞する前に圧力付与機構が加圧及び減圧を行うと、流入孔からの距離が短い流出孔を通じて流体が供給されるノズルから優先的に気泡が排出される。そして、当接部材が流入孔からの距離が短い流出孔を通じて流体が供給されるノズルのノズル開口を閉塞した後に圧力付与機構が加圧及び減圧を行うと、流入孔からの距離が長い流出孔を通じて流体が供給されるノズル内に集中的に圧力が付与される。したがって、圧力が付与され難いノズルからも、効率よく気泡を排出することができる。
【0015】
本発明のメンテナンス装置において、複数の前記ノズルのノズル開口は一平面上に並ぶように配置され、前記当接部材は、前記一平面と交差する方向に沿って移動可能であるとともに、複数の前記ノズルのうち一部のノズル開口を閉塞したときに、当該一部のノズル以外のノズルから離間した状態となる当接面を有する。
【0016】
この構成によれば、当接部材は一平面と交差する方向に沿って移動可能であるので、一平面に近接する方向に移動することでノズル開口を閉塞する一方、一平面から離間する方向に移動することで閉塞を解除することができる。また、当接部材は、複数のノズルのうち一部のノズル開口を閉塞したときに、当該一部のノズル以外のノズルから離間した状態となる当接面を有するので、移動の過程で一部のノズル開口を選択的に閉塞することができる。
【0017】
本発明のメンテナンス装置において、前記流体噴射ヘッドには、複数の前記ノズルからなるノズル列が設けられるとともに、複数の前記ノズルのノズル開口は一平面上に並ぶように配置され、前記当接部材は、ノズル列方向と交差する移動方向に沿って前記一平面に対してスライド移動可能であるとともに、前記ノズル開口を閉塞するための当接部及び該当接部と隣接する位置に設けられた開口部を有し、前記当接部材には、前記ノズル列方向に並ぶように配置された前記当接部及び前記開口部からなる第1領域と、該第1領域と前記移動方向に隣接する位置に配置された前記開口部からなる第2領域と、前記第1領域又は前記第2領域と前記移動方向に隣接する位置に配置された前記当接部からなる第3領域とが設けられる。
【0018】
この構成によれば、当接部材の第1領域をノズル列に対応する位置に配置することで、当接部と対応する位置にあるノズル開口のみを閉塞することができる。また、当接部材の第2領域をノズル列に対応する位置に配置することで、全てのノズル開口の閉塞を解除することができる。さらに、当接部材の第3領域をノズル列に対応する位置に配置することで、全てのノズル開口を閉塞することができる。すなわち、当接部材の移動に伴って閉塞するノズル開口の数を変化させることで、一部のノズル開口を選択的に閉塞することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドと、該流体噴射ヘッド側となる下流側に向けて前記流体を供給する流体供給流路と、上記メンテナンス装置と、を備える。
【0020】
この構成によれば、上記メンテナンス装置と同様の作用効果を得ることができる。
上記目的を達成するために、本発明のメンテナンス方法は、流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドに向けて前記流体を供給する流体供給流路内の前記流体に対して、前記流体噴射ヘッドよりも上流側の圧力付与位置において加圧を行うことで前記ノズルから前記流体を膨出させるとともに、該加圧に伴い前記ノズルから前記流体が膨出した状態において減圧を行う第1クリーニング工程と、該第1クリーニング工程の後に、複数の前記ノズルのうち、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じて前記流体が供給される一部のノズルのノズル開口を閉塞する閉塞工程と、該閉塞工程の後に、前記一部のノズル以外のノズルを対象として前記加圧及び前記減圧を行う第2クリーニング工程と、を備える。
【0021】
この構成によれば、第1クリーニング工程においては、圧力付与位置から各ノズルに至る流路の圧力損失が小さく、圧力が付与されやすいノズルから優先的に気泡が排出される。そして、閉塞工程においては、圧力付与位置から各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じて流体が供給されるノズルのノズル開口を閉塞する。そのため、第2クリーニング工程においては、流路の圧力損失が大きく、第1クリーニング工程で圧力が付与され難かったノズル内に集中的に圧力を付与して、効率よく気泡を排出することができる。したがって、複数のノズル内から効率よく気泡を排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態におけるインクジェット式プリンターの概略構成を示す模式正面図。
【図2】ラインヘッドの構成を示す底面図。
【図3】流体噴射ヘッド内の概略構成を示す断面図。
【図4】キャッピング装置の概略構成を示す断面図。
【図5】ワイピング装置の概略構成を示す断面図。
【図6】圧力付与機構の構成及び作用を説明するための断面図で、(a)は加圧前、(b)は加圧時を示す。
【図7】インク非供給クリーニングを説明するための断面図で、(a)は加圧前、(b)は加圧時、(c)は減圧時、(d)は静置後を示す。
【図8】加圧時間と減圧時間との関係を示すグラフ。
【図9】第1実施形態におけるインクジェット式プリンターの流路条件1を示す表。
【図10】(a)は流路条件1における加圧インク量の範囲を示す表、(b)は流路条件1における加圧時間及び減圧時間の範囲を示す表。
【図11】第2実施形態におけるインクジェット式プリンターの概略構成を示す模式正面図。
【図12】差圧弁の構成及び作用を説明するための断面図で、(a)は閉弁時、(b)は開弁時を示す。
【図13】(a)は第2実施形態におけるインクジェット式プリンターの流路条件2における加圧インク量の範囲を示す表、(b)は流路条件2における加圧時間及び減圧時間の範囲を示す表。
【図14】圧力付与機構の構成の変形例を示す断面図。
【図15】第3実施形態におけるメンテナンス装置の構成を模式的に示す断面図。
【図16】第3実施形態における密着キャップの作用を説明するための断面図。
【図17】第3実施形態の第1変形例を示す断面図。
【図18】第3実施形態の第2変形例を示す断面図。
【図19】第4実施形態における密着キャップを説明するための斜視図。
【図20】第4実施形態における密着キャップの構成を説明するための下面図。
【図21】密着キャップによる密着キャッピングを説明するための下面図。
【図22】第2クリーニング工程における密着キャップの作用を説明するための下面図。
【図23】第4実施形態の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明を流体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という)に具体化した第1実施形態を図1〜図10を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は各図中に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0024】
図1に示すように、プリンター11は、媒体としての用紙Pを搬送する搬送ユニット12と、用紙Pに印刷処理を施すラインヘッド13と、ラインヘッド13に流体としてのインクを供給するインク供給ユニット14と、メンテナンスユニット15とを備えている。
【0025】
搬送ユニット12は、一対の給紙ローラー16と、無端状の搬送ベルト17と、駆動ローラー18と、従動ローラー19と、駆動ローラー18に接続された駆動モーター20と、一対の排紙ローラー21とを備えている。搬送ベルト17は、駆動ローラー18及び従動ローラー19に巻き掛けられ、駆動モーター20の駆動によって駆動ローラー18が図1における時計回り方向に回転すると周回移動する。そして、給紙ローラー16、搬送ベルト17及び排紙ローラー21によって用紙Pを搬送方向Xに沿って搬送するようになっている。なお、搬送ベルト17は、少なくとも用紙Pの幅方向Y(前後方向)の両端を支持するように複数本(例えば2本)設けられているとともに、前後方向に並ぶ搬送ベルト17の間にメンテナンスユニット15が配置されている。
【0026】
ラインヘッド13は、基体部23と、基体部23に支持された流体噴射ヘッド24とを備えている。図2に示すように、流体噴射ヘッド24は、用紙Pの幅方向Yに沿って延びる2列のラインを形成するように、千鳥状に配列されている。そして、搬送方向Xにおける上流側(左側)に位置する1列目は、幅方向Yに沿って並ぶ4つの流体噴射ヘッド24から構成される一方、搬送方向Xにおける下流側(右側)に位置する2列目は、幅方向Yに沿って並ぶ4つの流体噴射ヘッド24から構成される。
【0027】
各流体噴射ヘッド24には、インクを噴射するためのノズル25が複数設けられている。そして、流体噴射ヘッド24の下面(底面)からなるノズル形成面24aには、複数のノズル25のノズル開口25aによって幅方向Yに沿って延びる2列のノズル列Nが形成されている。図2の部分拡大図に示すように、2列のノズル列Nは、幅方向Yに沿う配置間隔が1/2画素ずつずれるように、ノズル開口25aが千鳥状に配列されている。そして、1列目と2列目の流体噴射ヘッド24は、搬送方向Xに投影したときに両端部の少なくとも1個のノズル25が重なるか、両端のノズル25がノズルピッチを開けて連続するようになっている。
【0028】
このため、プリンター11では、ラインヘッド13を固定したままでも用紙最大幅範囲の印字が可能となっている。なお、本実施形態においては、1つの流体噴射ヘッド24が用紙1.1インチに対応し、8つの流体噴射ヘッド24でA4サイズ(縦297mm×横210mm)の横幅(約8.3インチ)をカバーするようになっている。また、1本のノズル列Nは330個のノズル25から構成される。したがって、1つのラインヘッド13は、幅方向Yに沿って並ぶ8(流体噴射ヘッド24の数)×2(ノズル列Nの数)×330(ノズル列Nを構成するノズル25の数)=5280個のノズル25を有している。
【0029】
なお、ラインヘッド13及びインク供給ユニット14は、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のカラー印刷を行う場合には、色毎に4組設けられる(図1及び図2には簡略化のために1つずつ図示している)。そして、4つのラインヘッド13から、搬送される用紙Pに4色のインク滴を重ね打つことにより、解像度600dpiでの印刷処理が可能となっている。
【0030】
図1に示すように、インク供給ユニット14は、インクを収容したインクカートリッジ26と、インクカートリッジ26から流体噴射ヘッド24側に向けてインクを供給する流体供給路を構成するインク供給チューブ27と、インクを加圧供給するための加圧ポンプ28とを備えている。なお、インクカートリッジ26は図示しないカートリッジホルダーに着脱可能に装着されることで、インク供給チューブ27に接続される。また、インク供給チューブ27の途中位置には、圧力付与機構29が設けられている。
【0031】
ラインヘッド13の基体部23内には、インク供給チューブ27を通じてインクカートリッジ26から供給されるインクを一時的に貯留する共通インク室30が設けられている。共通インク室30には、各流体噴射ヘッド24に対応する複数の分岐流路31が接続されている。そして、共通インク室30内に貯留されたインクは、分岐流路31を通じて複数の流体噴射ヘッド24に供給される。
【0032】
図3に示すように、流体噴射ヘッド24は、上下方向に積層された流路形成部材32、振動板33、流路形成部材34及びノズルプレート35を備えている。流路形成部材32には共通インク室30に連通する分岐流路31と、リザーバー36と、収容室37とが形成されている。振動板33には、リザーバー36と対応する位置に連通孔38が設けられている。流路形成部材34には、連通孔38を通じてリザーバー36と連通するキャビティ39が形成されている。
【0033】
また、振動板33の上面側には、キャビティ39の上方となる位置に圧電素子40が配設されている。そして、ノズルプレート35にはキャビティ39と連通するノズル25が形成されている。すなわち、共通インク室30から分岐流路31を通じて各流体噴射ヘッド24に分配されたインクはリザーバー36に貯留され、リザーバー36から連通孔38及びキャビティ39を通じて各ノズル25に供給される。
【0034】
振動板33は上下方向に振動可能に貼り付けられているとともに、圧電素子40は駆動信号を受けて伸縮することで、振動板33を上下方向に振動させるようになっている。また、振動板33が上下方向に振動すると、キャビティ39の容積が拡縮するようになっている。そして、キャビティ39の容積が縮小されると、キャビティ39内のインクがノズル25からインク滴Fbとして噴射されるようになっている。なお、流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aはノズルプレート35の下面(底面)によって構成される態様となっている。また、本実施形態において、ノズル開口25aは直径約20マイクロメートル、ノズルプレート35の上下方向の厚さは約100マイクロメートルとなっている。
【0035】
ここで、インクカートリッジ26はラインヘッド13よりも低い位置に設けられている。そのため、流体噴射ヘッド24内の領域(インク流路)は、水頭差によって−1kPa程度の負圧となっている。この負圧は、ノズル25からインクが垂れ落ちることを防止するとともに、ノズル25内に凹状のメニスカスを形成して噴射動作を安定させるためのものである。
【0036】
次に、メンテナンスユニット15について説明する。
メンテナンスユニット15は、流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aをキャッピングするためのキャッピング装置41(図4参照)と、ノズル形成面24aをワイピングするためのワイピング装置42(図5参照)とを備えている。なお、キャッピング装置41及びワイピング装置42は流体噴射ヘッド24毎に設けてもよいし、複数の流体噴射ヘッド24を同時にキャッピングしたりワイピングしたりするようにしてもよい。
【0037】
キャッピング装置41は、ノズル25の乾燥を防止するためのキャッピングに用いられる他、インクカートリッジ26内のインクをノズル25から吸引することで、気泡や増粘したインクなどを排出させる吸引クリーニングを実行する際に用いられる。さらに、キャッピング装置41は、インクカートリッジ26内のインクを加圧ポンプ28でノズル25から排出させる加圧クリーニングの際にも、ノズル25から排出されるインクを受容するために用いられる。一方、ワイピング装置42は、ノズル形成面24aを払拭して紙粉やインク等の付着物を除去したり、ノズル25のメニスカスを整えたりするためのワイピングを実行する際に用いられる。
【0038】
まず、キャッピング装置41について説明する。
図4に示すように、キャッピング装置41は、有底四角箱状のキャップ43と、キャップ43を昇降させる昇降機構44と、吸引機構45とを備えている。キャップ43の周壁の上面全体には可撓性材料からなる四角枠状のシール部材46が設けられているとともに、キャップ43の底壁には排出管47が下方に向かって突設されている。
【0039】
排出管47には、吸引機構45を構成する可撓性材料よりなる排出チューブ48の一端側が接続されている。排出チューブ48の他端側は廃インクタンク49内に挿入されている。また、廃インクタンク49内には、多孔質部材からなる廃インク吸収材50が収容されている。
【0040】
キャップ43と廃インクタンク49との間には、吸引機構45を構成するチューブポンプ51が配設されている。チューブポンプ51は、円筒状のケース52と、平面視円形状をなすポンプホイル53と、ホイル軸54と、一対の押圧ローラー55とを有している。ポンプホイル53は、ケース52の軸心に設けられたホイル軸54を中心にケース52内に回動可能に収容されている。また、排出チューブ48の中間部は、ケース52の内周壁に沿うようにケース52内に収容されている。
【0041】
ポンプホイル53には、円弧状をなす一対のローラー案内溝56がホイル軸54を挟んで対向するように形成されている。各ローラー案内溝56は、一端がポンプホイル53の内周側に位置する一方、他端がポンプホイル53の外周側に位置している。すなわち、両ローラー案内溝56は、一端から他端に向かって徐々にホイル軸54から遠ざかるように延びている。また、一対の押圧ローラー55は両ローラー案内溝56内に回動軸57を介して挿通支持されている。なお、両回動軸57は、それぞれ両ローラー案内溝56内を摺動自在になっている。
【0042】
そして、ポンプホイル53を、正方向(図4に矢印で示す時計回り方向)に回動させると、押圧ローラー55がローラー案内溝56の他端側(ポンプホイル53の外周側)に往路移動し、排出チューブ48の中間部を上流側から下流側へ順次押し潰しながら回動する。この回動により、チューブポンプ51より上流側の排出チューブ48の内部が減圧される。
【0043】
また、ポンプホイル53を逆方向(図4における反時計回り方向)に回動させると、押圧ローラー55がローラー案内溝56の一端側(ポンプホイル53の内周側)に復路移動する。この移動により、両押圧ローラー55がそれぞれ排出チューブ48の中間部に軽く接した状態となり、排出チューブ48の内部の減圧状態が解消される。
【0044】
昇降機構44は、キャップ43に下方から当接するカム部材58と、カム部材58を回動させるためのモーター59と、動力伝達機構60とを備えている。そして、モーター59が正方向に駆動されると、動力伝達機構60を介してカム部材58が回動されて、キャップ43がノズル形成面24aに当接するようになっている。
【0045】
したがって、キャップ43がノズル形成面24aに当接した状態でポンプホイル53が正方向に駆動されると、キャップ43とノズル形成面24aとで囲み形成された空間域Rに負圧が発生する。これにより、ノズル25からインクが排出される吸引クリーニングが実行される。なお、ポンプホイル53が逆方向に駆動されると空間域Rの負圧が解消される。その後、昇降機構44のモーター59が逆方向に駆動されると、キャップ43が下降して、用紙Pの搬送経路から退避する。
【0046】
次に、ワイピング装置42について説明する。
図5に示すように、ワイピング装置42は、ワイピング機構61と、ワイピング機構61を昇降させる昇降機構62とを備えている。
【0047】
ワイピング機構61は、ホルダー63と、前後方向に沿って延びるようにホルダー63に架設されたリードスクリュー64と、リードスクリュー64を回転させるためのモーター65と、支持部材66と、ゴムなどの弾性体からなる板状のワイパー67とを備えている。ワイパー67は支持部材66上に立設される態様で支持されるとともに、支持部材66はリードスクリュー64に支持されている。また、支持部材66の上面側には、貯留凹部66aが形成されている。
【0048】
昇降機構62はワイピング機構61のホルダー63に下方から当接するカム部材68と、カム部材68を回動させるためのモーター69と、動力伝達機構70とを備えている。そして、モーター69が正方向に駆動されると、動力伝達機構70を介してカム部材68が回動されて、ワイパー67がノズル形成面24aに当接する位置までワイピング機構61が上昇するようになっている。
【0049】
また、モーター65が正方向に駆動されるとリードスクリュー64が正方向に回転し、支持部材66とともにワイパー67が前後方向に沿って移動する過程で、ノズル形成面24aに摺接する。これにより、ノズル形成面24aを払拭により清掃するワイピングが実行される。このとき、ノズル形成面24aから払拭されたインクや紙粉はワイパー67を伝って流下し、貯留凹部66aに貯留される。
【0050】
次に、圧力付与機構29について説明する。
図6に示すように、圧力付与機構29は、定形性を有する流路形成部材71を有している。流路形成部材71の左端には上流側のインク供給チューブ27と接続される接続部72が設けられる一方、流路形成部材71の右端には下流側のインク供給チューブ27と接続される接続部73が設けられる。また、流路形成部材71の上面側には、平面視円形状の凹部71aが形成されている。そして、接続部72内には、上流側のインク供給チューブ27と凹部71a内とを連通させる流入路72aが形成されている。一方、接続部73内には、下流側のインク供給チューブ27と凹部71a内とを連通させる流出路73aが形成されている。
【0051】
流路形成部材71の上面側には、可撓性を有するフィルム部材74が凹部71aの開口を閉塞するように撓みを有した状態で固着されている。また、フィルム部材74の外面側の略中央部には、凹部71aの開口面積よりも面積の小さい円板状の押圧板74aが固着されている。そして、フィルム部材74と凹部71aとによって、圧力室75が囲み形成されている。圧力室75は、流入路72a及び流出路73aを通じてインク供給チューブ27と連通することで、流体供給路の一部を構成する。
【0052】
圧力室75内には、圧力室75の内容積を拡大する方向にフィルム部材74を付勢する付勢部材76が配設されている。付勢部材76は、例えばコイルばねや板ばねなどから構成することができる。また、押圧板74aの上方には、押圧板74aに当接するカム部材77が配置されている。カム部材77は回転軸78を介して支持されているとともに、モーター79の駆動に伴って回転軸78とともに回動するようになっている。
【0053】
したがって、図6(a)に示す状態でモーター79を正方向に駆動するとカム部材77が付勢部材76の付勢力に抗して同図における反時計回り方向に回動する。これにより、図6(b)に示すようにフィルム部材74が圧力室75の内容積を減少させる方向に変位し、圧力室75から押し出されたインクによってインク供給チューブ27内のインクが加圧される。また、図6(b)に示す状態でモーター79を逆方向に駆動すると、カム部材77が同図における時計回り方向に回動する。これにより、付勢部材76の付勢力でフィルム部材74が圧力室75の内容積を増加させる方向に変位し、圧力室75内に引き込まれるインクによってインク供給チューブ27内が減圧される。
【0054】
次に、プリンター11におけるメンテナンス動作について説明する。
プリンター11においては、インクカートリッジ26の交換時にインク供給チューブ27内に気泡が混入してドット抜けが生じたり、電源を切ったまま放置していたためにインクが増粘してノズル25の目詰まりが生じたりすることがある。こうしたドット抜けや目詰まりに起因する印刷品質の低下を抑制するため、プリンター11ではキャッピング装置41を用いて吸引クリーニングや加圧クリーニングを実行する。以下、このようにインクカートリッジ26内のインクを供給しつつノズル25からインクを排出するクリーニングを「インク供給クリーニング」という。
【0055】
また、印刷処理によってノズル形成面24aに紙粉などが付着した場合には、ワイピング装置42でノズル形成面24aをワイピングする。なお、インク供給クリーニング後には、排出されたインクがノズル形成面24aに付着したり、ノズル開口25aに凸状のメニスカスが形成されたりするため、インク供給クリーニングの直後にもワイピングを行う。
【0056】
ところが、このようなワイピングを行うと、ワイパー67がノズル25内に空気を押し込んでしまい、ノズル25内に微少な気泡を生じてしまうことがある。こうした気泡はインクカートリッジ26の交換等で混入する気泡と比較するとかなり小さく、ノズル25付近に留まっていることが多い。そのため、プリンター11においては、ノズル25付近の微少な気泡を排出するために、圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングを実行する。
【0057】
次に、圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングについて詳述する。
インク非供給クリーニングは、圧力付与機構29が加圧を行ってノズル25からインクを膨出させる加圧工程と、この加圧工程の後に、加圧に伴いノズル25からインクが膨出した状態において圧力付与機構29が減圧を行う減圧工程とから構成される。すなわち、加圧工程では、圧力付与機構29が圧力室75のインクを一気に押し出すことによってノズル25内に圧力を伝播させ、図7(a)に示すようにノズル25の内壁に付着した気泡を引きはがす。そして、図7(b)に示すようにノズル25からインクを膨出させることで、気泡をノズル開口25aの外側となる大気側に押し出す。
【0058】
また、減圧工程では、圧力付与機構29が圧力室75の容積を増加させることで、圧力室75に押し出した分のインクを引き戻す。これにより、ノズル25からインク滴Fbが噴射したり落下(滴下)したりする前に、ノズル25から凸状に膨出した状態のインクを図7(c)に示すようノズル25内に回収する。なお、気泡が排出されるとノズル25内に気泡の容積分の空隙が生じるが、短時間静置すると毛管力によって共通インク室30のインクが図7(d)に示すようにノズル25内に補給される。
【0059】
こうしたインク非供給クリーニングの加圧と減圧は、複数回繰り返して実施することで、排出されにくい気泡についても、徐々に外側に移動させることができる。例えば、複数回加圧と減圧を繰り返す場合には、ノズル25内だけでなく、流体噴射ヘッド24内や共通インク室30内にある気泡も排出させることができる。また、気泡の排出に伴ってノズル25内に空隙が生じた場合にも、加圧と減圧を繰り返し行うことで、ノズル25の液面位置が徐々に揃えられる。
【0060】
なお、減圧工程においては、加圧工程で減少させた容積を元に戻してもよいし、減圧のために増加させる容積を加圧のために減少させた容積よりも小さくしてもよい。例えば、加圧と減圧を複数回繰り返して共通インク室30内にある比較的大きな気泡が排出された場合には、ノズル25全体が空隙となるノズル抜けを生じる虞もある。こうしたノズル抜けが生じると、毛管力によるインクの補給がされにくいこともあるので、特に複数回加圧と減圧を繰り返した最後の減圧時には、引き込むインクの量を少なくするのが好ましい。
【0061】
ここで、図8に示すように、減圧工程で減圧を行う減圧時間Tdは、加圧工程で加圧を行う加圧時間Taよりも長く設定されるのが好ましい。また、加圧時間Taについては、短すぎると伝播する圧力でインク滴Fbが噴射されてインクが無駄に消費されてしまったり、減圧開始が早すぎて気泡が押し出される前にインクを引き戻してしまったりする虞がある。逆に、加圧時間Taが長すぎると、インクの流速が遅くなって気泡をノズル25の内壁から引きはがすことができなかったり、減圧によってインクを引き戻すのが間に合わなくなってインクが消費されてしまったりする虞がある。
【0062】
一方、減圧時間Tdが長すぎると、同じくインクを引き戻すのが間に合わなくなってインクが消費されてしまう虞がある。逆に、減圧時間Tdが短すぎると、ノズル25の外側から空気を引き込み、気泡を生じてしまう虞がある。
【0063】
そして、インク滴Fbの噴射を抑制しつつ気泡の排出性を確保するために適正な加圧時間Taは、例えば0.05秒から0.5秒と非常に短時間である。一方、このような短時間で減圧を行うと空気を引き込んでしまうため、0.05秒から0.5秒の加圧時間Taに対しては、加圧時間Ta<減圧時間Tdとすることが好ましい。
【0064】
本実施形態において、加圧及び減圧は、ノズル25からインク滴Fbが噴射されない程度に圧力室75の容積を変動させることで実行される。そのため、加圧のための容積変動に伴って押し出されるインクの量(以下、これを「加圧インク量Vd」という)、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適切な値は、ノズル25や流体噴射ヘッド24の設置数などの流路条件によって変動する。そこで、加圧インク量Vd、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適切な値の範囲と流路条件について説明する。
【0065】
本実施形態のプリンター11の流路条件(以下、これを「流路条件1」という)としては、図9に示すように、インクカートリッジ26の内容積(領域No1)が約50cc、インクカートリッジ26から圧力室75までのインク供給チューブ27の内容積(領域No2)が約3.5ccとなっている。また、圧力室75の変動可能な容積(領域No3)が約1.0cc、圧力室75より下流側のインク供給チューブ27の内容積(領域No4)が約1.9cc、共通インク室30の内容積(領域No5)が約3.1cc、8つの流体噴射ヘッド24を合計した内容積(領域No6)が約0.9ccとなっている。
【0066】
そして、流路条件1でインク非供給クリーニングを行う場合の加圧インク量Vdの適正範囲を図10(a)に、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適正範囲を図10(b)に示す。
【0067】
加圧インク量Vdについては、圧力室75の容積約1.0ccのうち、0.22cc≦Vd≦0.62ccとなる範囲で容積を減少させて加圧を行うことが好ましい。なお、0.22cc>Vdの場合には気泡を排出するだけの加圧力が得られない虞があり、0.62cc<Vdの場合にはインクが消費されてしまう虞がある。
【0068】
また、0.22cc≦Vd≦0.62ccとした場合の加圧時間Taは0.05秒≦Ta≦0.5秒、減圧時間Tdは0.09秒≦Td≦0.7秒(ただし、Ta<Td)であることが好ましい。
【0069】
圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングは、実行後にノズル形成面24aにインクが付着することがない上、ノズル25のメニスカスを整えることができるため、インク供給クリーニンクのように後処理としてワイピングを行う必要がない。また、インク消費を限りなくゼロにすることができるとともに非常に短時間で行うことができる。
【0070】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)圧力付与機構29がインク供給チューブ27内のインクに対して加圧を行うことで、ノズル25からインクの一部を膨出させ、そのインクの膨出部分に混入している気泡をノズル開口25aの外側となる大気側に押し出すことができる。また、圧力付与機構29が加圧と連続的に減圧を行うと、加圧に伴ってノズル25から膨出した状態にあるインクをノズル開口25aからの落下等によって無駄に消費されないように流体噴射ヘッド24内に引き戻すことができる。したがって、圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングによれば、インクの消費を抑制しつつ、気泡を排出することができる。
【0071】
(2)加圧を短時間で行って気泡の排出性を確保するとともに、減圧時間Tdを加圧時間Taより長くすることで、ノズル開口25aからの気泡の引き込みを抑制することができる。
【0072】
(3)圧力付与機構29が圧力室75の容積を減少させることで、減少した容積分のインクを押し出し、ノズル25側に圧力を波及させることができる。また、減圧は圧力室75の容積を増加させることで行うので、加圧のために減少させた容積を元に戻すことで、加圧と連続的に減圧を行うことができる。
【0073】
(4)加圧に伴ってノズル25から気泡が排出されると、その分ノズル25内に空隙が生じるが、減圧のために増加させる圧力室75の容積を、加圧のために減少させる圧力室75の容積よりも小さくすることで、空隙に起因するノズル抜けの発生を抑制することができる。
【0074】
(5)各ノズル25の背圧を共通インク室30で調整することで、ノズル25のメニスカスを均一に整えることができる。例えば、インク非供給クリーニングの加圧や減圧に伴うインクの流動は、共通インク室30を経由してノズル25内に波及する。そのため、気泡が排出された一つのノズル25内に空隙が生じた場合にも、加圧と減圧を繰り返すことで、その他のノズル25との間で液面位置が揃えられる。そして、圧力付与機構29はインク流路において共通インク室30よりも上流側に設けられるので、流体噴射ヘッド24数が増加した場合にも、構成が複雑にならない。
【0075】
(6)流路条件1において、圧力付与機構29が加圧を行う加圧時間Taは0.05秒から0.5秒と非常に短時間であるので、ノズル25の内壁に付着した気泡を引きはがして排出することができる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図11〜図13に基づいて説明する。
第1実施形態のプリンター11においては、インク流路を構成する各領域No1〜No6は連通しているため、圧力室75から押し出されたインクは、下流側の領域No3〜No6のみならず、上流側の領域No1,No2にも移行する。そのため、上流側に圧力が波及する分、ノズル25内に至る圧力が弱まる。そこで、第2実施形態においては、押し出されたインクを下流側のみに流下させることができるプリンター11Aについて説明する。
【0077】
図11に示すように、第2実施形態のプリンター11Aは、プリンター11のインク供給ユニット14に代えて、インク供給ユニット14Aを備えている。そして、インク供給ユニット14Aにおいては、インク供給チューブ27に差圧弁80と開閉弁81とが設けられている。
【0078】
開閉弁81は任意に開閉操作を行うことができる弁であり、圧力付与機構29のすぐ上流側に設けられる。なお、開閉弁81としては、電磁弁や機械的に動作する弁を採用することができる。そして、インク非供給クリーニングを実行する際には、開閉弁81を閉弁状態とすることで、圧力室75から押し出されたインクを下流側のみに流下させる。
【0079】
また、差圧弁80は大気圧とインク圧との差圧を利用して開閉するダイアフラム式の自己閉塞弁で、インクカートリッジ26と開閉弁81との間に配置されている。プリンター11Aにおいては、インクカートリッジ26(図示しないカートリッジホルダ)がラインヘッド13よりも高い位置に設けられている。そのため、差圧弁80によって流体噴射ヘッド24内を−1kPa程度の負圧にしている。
【0080】
図12(a)に示すように、差圧弁80は、定形性を有する流路形成部材82を有している。流路形成部材82の左端には上流側のインク供給チューブ27と接続される接続部83が設けられる一方、流路形成部材82の右端には下流側のインク供給チューブ27と接続される接続部84が設けられる。また、流路形成部材82の上面側には平面視円形状の凹部82aが形成されるとともに、凹部82aの内底面において中心から左方に偏心した位置には、円錐台形状をなす凸部82bが一つ形成されている。そして、この凸部82bの上端面に凹部82a内への開口が形成されるように、接続部83内には上流側のインク供給チューブ27と凹部82a内とを連通させる流入路83aが形成されている。一方、接続部84内には、下流側のインク供給チューブ27と凹部82a内とを連通させる流出路84aが形成されている。
【0081】
流路形成部材82の上面側には、凹部82aの開口を閉塞するように可撓性を有するフィルム部材85が撓みを有した状態で固着されている。また、フィルム部材85の凹部82a内に臨む内面側の略中央部には、凹部82aの開口面積よりも面積の小さい円板状の押圧板86が固着されている。そして、フィルム部材85と凹部82aとによって、圧力室87が囲み形成されている。
【0082】
圧力室87内には、基台部88と、この基台部88に傾動自在に支持されたアーム部材89と、アーム部材89の一端側(左端側)を、凸部82b側に向けて付勢する付勢ばね90とが収容されている。アーム部材89は、常時は付勢ばね90の付勢力を受けて、一端側が凸部82bの上端面に設けられた流入路83aの開口を閉塞するとともに、他端側(右端側)が押圧板86を上方に向けて押し上げた状態となっている。これにより、フィルム部材85が圧力室87の内容積を拡大する方向に撓み変位され、圧力室87及びその下流域に位置する流体噴射ヘッド24内は−1kPa程度の負圧となる。
【0083】
また、流入路83aには、加圧ポンプ28によってインクが加圧状態で供給されるとともに、常には付勢ばね90の付勢力を受けたアーム部材89の一端側によって、圧力室87内への流入が抑制された状態となっている。そして、ノズル25からの噴射又は流出によりインクが消費されると、圧力室87内の負圧が増し、図12(b)に示すように、フィルム部材85が付勢ばね90の付勢力に抗して圧力室87の内容積を減少させる方向に撓み変位する。すると、アーム部材89の他端側が押圧板86を介してフィルム部材85に押圧されて傾動し、一端側が流入路83aの開口を開放するので、流入路83aを通じて圧力室87内に加圧されたインクが流入する。
【0084】
そして、インクの流入に伴って圧力室87内の負圧が減少すると、アーム部材89及びフィルム部材85は再び付勢ばね90の付勢力によって元の位置に復帰する。したがって、流体噴射ヘッド24には消費量に応じたインクが供給されるようになっている。
【0085】
次に、本実施形態におけるインク非供給クリーニングについて説明する。
プリンター11Aにおいては、インク非供給クリーニングを実行する際には差圧弁80が閉弁状態とされる(以下、この状態を「流路条件2」という)。流路条件2では、図9に示す領域のうち、領域No1,2を除いた領域No3〜6が加圧及び減圧の影響範囲となる。
【0086】
そして、流路条件2でインク非供給クリーニングを行う場合の加圧インク量Vdの適正範囲を図13(a)に、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適正範囲を図13(b)に示す。
【0087】
加圧インク量Vdについては、圧力室75の容積約1.0ccのうち、0.18cc≦Vd≦0.48ccとなる範囲で容積を減少させて加圧を行うことが好ましい。すなわち、領域No1,2側にインクが流れることで発生する圧力の損失がなくなるため、流路条件2では流路条件1よりも少ない加圧インク量Vdで気泡を排出することができる。この場合、1つのラインヘッド13には5280個のノズル25が設けられていることから、1ノズル当たりのインクの膨出良好域は、およそ3.5×10−5cc〜9.0×10−5ccとなる。また、Vd=0.33cc、Ta=0.15秒で加圧を行い、Td=0.35秒で減圧を行うことで、特に良好な結果が得られることが確認されている。
【0088】
また、0.18cc≦Vd≦0.48ccとした場合の加圧時間Taは0.025秒≦Ta≦0.2秒、減圧時間Tdは0.1秒≦Td≦0.5秒(ただし、Ta<Td)であることが好ましい。すなわち、流路条件1,2を考慮すると、加圧工程で圧力付与機構29が加圧を行う加圧時間Taは0.025秒から0.5秒に設定されるのが好ましいといえる。
【0089】
以上説明した実施形態によれば、上記(1)〜(5)と同様の作用効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(7)流路条件2において、圧力付与機構29が加圧を行う加圧時間Taは0.025秒から0.2秒と非常に短時間であるので、ノズル25の内壁に付着した気泡を引きはがして排出することができる。
【0090】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・圧力付与機構29は、図14に示す構成の圧力付与機構29Aとしてもよい。
圧力付与機構29Aは、定形性を有する流路形成部材91を有している。流路形成部材91の左端にはインク供給チューブ27と接続される接続部92が設けられる一方、流路形成部材91の右端にはインク供給チューブ27と接続される接続部93が設けられる。また、流路形成部材91の上面側には平面視円形状の凹部91aが形成されている。そして、接続部92内には、インク供給チューブ27と凹部91a内とを連通させる流入路92aが形成される。一方、接続部93内には、インク供給チューブ27と凹部91a内とを連通させる流出路93aが形成される。
【0091】
流路形成部材91の凹部91a内には、ピストン94が摺動自在な状態で収容されている。ピストン94の一端側(下端側)は圧力室75の一壁面を構成する円盤形状の可動部94aを構成するとともに、ピストン94の他端側(上端側)は円盤形状の受圧部94bを構成する。そして、ピストン94の可動部94aと流路形成部材91の凹部91aとによって、圧力室75が囲み形成されている。
【0092】
流路形成部材91の上面側と受圧部94bの下面側との間には、ばねからなる付勢部材76が配設されている。したがって、モーター79が正方向に駆動してカム部材77が同図における反時計回り方向に回動すると、ピストン94の可動部94aが回転軸78から離間する方向に移動する。すると、圧力室75の容積が減少し、圧力室75から押し出されたインクによってインク供給チューブ27内のインクが加圧される。また、モーター79が逆方向に駆動してカム部材77が同図における時計回り方向に回動すると、付勢部材76の付勢力でピストン94の可動部94aが回転軸78に近接する方向に移動する。すると、圧力室75の容積が増加し、圧力室75内に引き込まれるインクによってインク供給チューブ27内が減圧される。
【0093】
・圧力付与機構29は、圧力付与機構29Aのピストン94を可動鉄心で構成するとともに、その周囲にソレノイドを設けるようにしてもよい。この場合には、ソレノイドに電流を流して磁界を発生させることにより、可動鉄心からなるピストン94を移動させることができる。
【0094】
・圧力付与機構が圧電素子を備え、圧電素子によって流体供給路の容積を変動させることで加圧や減圧を行うようにしてもよい。
・弾性変形可能なインク供給チューブ27をカム部材77で押し潰すことで加圧を行うようにしてもよい。この場合には、流路形成部材71を備えなくてもよいので、構成を簡素化することができる。
【0095】
・共通インク室30を備えず、例えばインク供給チューブ27の一端側(基端側)がインクカートリッジ26に接続される一方、他端側(先端側)が複数に分岐して流体噴射ヘッド24に接続されるようにしてもよい。この場合には、基端側に圧力付与機構29を設けてもよいし、分岐した先端側に圧力付与機構29を設けてもよい。
【0096】
・圧力付与機構は、共通インク室30とリザーバー36との間に設けてもよいし、リザーバー36とキャビティ39との間に設けてもよい。
・液体供給路を弾性変形しにくい剛体の管路から構成してもよい。この場合には、加圧工程における加圧や減圧工程における減圧に伴う圧力変動を、管路の弾性変形で吸収することなくノズル25内に伝播させることができる。
【0097】
・流路条件や噴射する流体を変更した場合には、摩擦抵抗や流路抵抗、粘性等が変化するので、加圧インク量Vd、加圧時間Ta及び減圧時間Tdもそれぞれ適切な値に変更するのが好ましい。
【0098】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図15〜図18に基づいて説明する。
なお、第3実施形態のプリンター11は、メンテナンス動作に関連する構成の一部が第1実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0099】
図15に示すように、本実施形態のプリンター11は、圧力付与機構29と、開閉弁101と、ノズル25のノズル開口25aを閉塞するように流体噴射ヘッド24に当接する当接部材としての密着キャップ102とを構成要素の一部とするメンテナンス装置103を備える。なお、メンテナンス装置103は、メンテナンスユニット15の一部としてもよい。
【0100】
開閉弁101は、流体噴射ヘッド24側となる下流側に向けてインクを供給する流体供給流路を構成するインク供給チューブ27の開閉位置M1に設けられている。開閉弁101は任意に開閉操作を行うことができる弁であり、圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う圧力付与位置M2のすぐ上流側において、開閉操作に伴って流路を開閉するようになっている。なお、開閉弁101としては、電磁弁や機械的に動作する弁を採用することができる。そして、本実施形態においてインク非供給クリーニングを実行する際には、開閉弁101を閉弁状態とすることで、圧力室75から押し出されたインクを下流側のみに流下させる。
【0101】
また、メンテナンス装置103には、密着キャップ102をノズル形成面24aと直交する上下方向に昇降移動させるための昇降機構(図示略)が設けられている。これにより、密着キャップ102は、上下方向に沿って移動可能となっている。また、密着キャップ102は、ノズル開口25aを閉塞する当接面104aが上面側に形成されたゴム部材104と、ゴム部材104を下方で支持するスポンジ部材105と、スポンジ部材105を下方で支持する基台部106とを備えている。なお、密着キャップ102において、スポンジ部材105を備えない構成としてもよい。
【0102】
ここで、リザーバー36は、圧力付与機構29の下流側においてインクを一時貯留するために、ノズル列方向となる幅方向Y(前後方向)に沿って延びるように設けられている。そして、リザーバー36内にインクを流入させるための流入孔として機能する分岐流路31は、リザーバー36の幅方向Yにおける中央付近に設けられている。一方、リザーバー36内のインクを各ノズル25に向けて供給する流出孔として機能する複数の連通孔38は、幅方向Yに沿って並ぶように配置されている。
【0103】
また、複数のノズル25のノズル開口25aは、一平面としてのノズル形成面24a上に並ぶように配置されている。なお、図15〜図23においては、簡略化のため、それぞれノズル列Nを構成するノズル25及び連通孔38の数を省略して図示している。
【0104】
密着キャップ102の当接面104aは、幅方向Yにおける中央が盛り上がった凸状の曲面となっている。そのため、密着キャップ102は、幅方向Yに並ぶ複数のノズル25のうち、中央付近に位置する一部のノズル開口25aを閉塞したときに、該ノズル25以外、すなわち両端付近のノズル25から離間した状態となる。
【0105】
次に、密着キャップ102による密着キャッピングについて説明する。
プリンター11において印刷が終了すると、ノズル開口25aからのインク溶媒の蒸発を抑制するために、密着キャップ102でノズル25のノズル開口25aを閉塞する密着キャッピングが行われる。
【0106】
ここで、キャッピング装置41に設けられた有底四角箱状のキャップ43は、ノズル開口25aを囲むようにノズル形成面24aに当接することで、ノズル開口25aの外側に吸引のための空間域Rを囲み形成する。そのため、ノズル25内に形成される液面とキャップ43との接触が避けられるという利点がある。一方、空間域R内に空気が存在したり、排出チューブ48からの透過やその下端側の開口を通じて気体が出入りしたりする分、ノズル25内からインク溶媒が蒸発し、インクの増粘を招く可能性がある。
【0107】
これに対して、密着キャップ102は、ノズル開口25aを閉塞するように流体噴射ヘッド24のノズル開口部に当接するので、ノズル25内からのインク溶媒の蒸発が抑制される。なお、密着キャップ102は、キャップ43とともに備えられるようにしてもよいし、吸引クリーニングを行わない場合には、キャップ43に代えて備えられるようにしてもよい。
【0108】
密着キャッピングは、流体噴射ヘッド24に向かって、密着キャップ102を上昇移動させることで行われる。具体的には、基台部106が上方に移動されることで、密着キャップ102は、当接面104aがノズル形成面24aと離間した位置から、図16に示すように、当接面104aが幅方向Yに並ぶ全てのノズル開口25aを閉塞する位置まで上昇移動する。
【0109】
なお、密着キャップ102の移動完了後、ゴム部材104は、弾性変形して当接面104aがノズル開口部を含むノズル形成面24aに密着するとともに、収縮変形したスポンジ部材105の復元力によって付勢された状態となる。これにより、ノズル25はノズル開口25aが閉塞されて略密閉状態となる。
【0110】
また、プリンター11においては、密着キャップ102による密着キャッピングを行う前に、圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングを行う。これにより、密着キャッピングを解除した後に、気泡の混入がない状態で印刷を開始することができる。
【0111】
ただし、圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさが異なると、各ノズル25内への圧力の伝わり方がばらついてしまう。例えば、分岐流路31、リザーバー36及び各連通孔38の位置関係から、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の長さは、分岐流路31から連通孔38までの距離に応じて異なる。
【0112】
すなわち、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさは、分岐流路31から連通孔38までの距離に応じて変化することになる。そのため、幅方向Yにおいて、分岐流路31からの距離が短い連通孔38を通じてインクが供給される中央付近のノズル25に比べて、分岐流路31からの距離が長い連通孔38を通じてインクが供給される両端付近のノズル25は、流路の圧力損失が大きく、圧力変動の影響が及び難い。
【0113】
そこで、本実施形態では、圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う場合に、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、ノズル開口25aを閉塞する。すなわち、圧力損失が相対的に小さい流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞するように、密着キャップ102を流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aに当接させる。
【0114】
具体的には、まず、閉弁工程として開閉弁101を閉弁状態にする。そして、第1クリーニング工程として、密着キャップ102を流体噴射ヘッド24から離間させた状態で、圧力付与機構29による加圧及び減圧を繰り返し行う。
【0115】
次に、閉塞工程として、密着キャップ102を上昇移動させる。これにより、幅方向Yに延びるノズル列Nを構成する複数のノズル25のノズル開口25aは、中央側から両端側に向けて、順次閉塞されていく。すなわち、密着キャップ102は、当接面104aが凸状の曲面からなるので、上昇移動に伴って、分岐流路31からの距離が短い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞した後に、分岐流路31からの距離が長い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞する。
【0116】
その結果、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の長さに応じて、該長さが相対的に短い流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aから優先的に閉塞される態様となる。そして、密着キャップ102によってノズル開口25aが閉塞されたノズル25内では、インクの流動が抑制されるので、圧力付与機構29による加圧及び減圧が行われても、液面の位置変化が抑制される。
【0117】
また、密着キャップ102が中央付近のノズル開口25aを閉塞した後には、第2クリーニング工程として、ノズル開口25aが閉塞されたノズル25以外のノズル25を対象として圧力付与機構29が加圧及び減圧を繰り返し行う。すなわち、密着キャップ102が中央付近のノズル開口25aを閉塞する前及び閉塞した後に、圧力付与機構29による加圧及び減圧を行う。
【0118】
ここで、圧力付与機構29による加圧及び減圧は、圧力室75内の一定量のインクを出し入れすることで行われるため、一部のノズル開口25aが閉塞されることで、ノズル開口25aが閉塞されていないノズル25内を流動するインクの量が増加する。そのため、第2クリーニング工程では、第1クリーニング工程でインクが流動しにくかったノズル25に対して、加圧時に供給されるインクの割合を増やすことで圧力を増し、効果的に気泡を排出することができるようになっている。
【0119】
なお、第1クリーニング工程と第2クリーニング工程とは、効果を説明する便宜上、密着キャップ102の移動開始から移動完了までの間を任意の途中時点で区切ったものなので、必ずしも移動を2段階に分けて行う必要はない。すなわち、密着キャップ102を3回以上の複数段階に分けて断続的に移動させてもよいし、一定速度で連続的に移動させてもよい。
【0120】
ただし、ノズル25内のインクと密着キャップ102との接触を抑制するために、圧力付与機構29が減圧を行って液面がノズル25内に引き込まれたタイミングで、密着キャップ102をノズル開口部に当接させるのが好ましい。そして、密着キャップ102が上昇移動を終了し、密着キャップ102が全てのノズル開口25aを閉塞すると、密着キャッピングが完了する。
【0121】
なお、密着キャッピングに際して圧力付与機構29による加圧及び減圧を行う場合に限らず、インク非供給クリーニングを効率的に行うために密着キャップ102を使用してもよい。この場合には、第2クリーニング工程の後に密着キャップ102を下降移動させて、ノズル開口25aの閉塞を解除すればよい。
【0122】
また、図17に示す第1変形例のように、分岐流路31がリザーバー36の幅方向Yにおける一端側(図17では左端側)に設けられている場合には、分岐流路31から連通孔38に至る流路の長さは、一端側ほど短く、他端側(図17では右端側)ほど長くなる。この場合には、一端側から他端側に向けて斜め下に傾斜する当接面104aを有する密着キャップ102Aを備えればよい。これにより、密着キャップ102Aの当接面104aは、上昇移動の過程で、一端側のノズル開口25aを閉塞したときに、他端側のノズル開口25aから離間した状態となる。
【0123】
さらに、図18に示す第2変形例のように、分岐流路31がリザーバー36の幅方向Yにおける両端側に設けられている場合には、分岐流路31から連通孔38に至る流路の長さは、両端側ほど短く、中央付近ほど長くなる。この場合には、両端側から中央付近に向けて斜め下に傾斜する凹状の曲面からなる当接面104aを有する密着キャップ102Bを備えればよい。これにより、密着キャップ102Bの当接面104aは、両端側のノズル開口25aを閉塞したときに、中央付近のノズル開口25aから離間した状態となる。
【0124】
以上説明した実施形態によれば、上記(1)〜(6)と同様の作用効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(8)圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う場合に、密着キャップ102が、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、圧力損失が相対的に小さい流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞するように流体噴射ヘッド24に当接する。そのため、流路の圧力損失が小さく、圧力が付与され易いノズル25のノズル開口25aを閉塞した後に加圧及び減圧をすることで、ノズル開口25aが閉塞されていないノズル25内に集中的に圧力を付与することができる。これにより、圧力損失が大きく、圧力が付与され難いノズル25からも、効率よく気泡を排出させることができる。したがって、複数のノズル25内から効率よく気泡を排出させることができる。
【0125】
(9)密着キャップ102が、圧力付与位置M2からの流路の長さが相対的に短い流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aから優先的に閉塞することで、相対的に長い流路を通じてインクが供給されるノズル25内に集中的に圧力を付与することができる。また、閉塞するタイミングが異なる各ノズル開口25aを同じ密着キャップ102で閉塞することができるので、複数の密着キャップ102を備える必要がない。そして、密着キャップ102が全てのノズル開口25aを閉塞することで、ノズル25内からのインク溶媒の蒸発を抑制することができる。
【0126】
(10)リザーバー36は一方向に沿って延びるように設けられるとともに、連通孔38は一方向に沿って並ぶように配置されるため、分岐流路31から連通孔38に至る圧力損失は、分岐流路31から連通孔38までの距離に応じて異なる。そのため、密着キャップ102がノズル開口25aを閉塞する前に圧力付与機構29が加圧及び減圧を行うと、分岐流路31からの距離が短い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25から優先的に気泡が排出される。そして、密着キャップ102が分岐流路31からの距離が短い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞した後に圧力付与機構29が加圧及び減圧を行うと、分岐流路31からの距離が長い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25内に集中的に圧力が付与される。したがって、圧力が付与され難いノズル25からも、効率よく気泡を排出することができる。
【0127】
(11)密着キャップ102はノズル形成面24aと交差する上下方向に沿って移動可能であるので、ノズル形成面24aに近接する上方向に移動することでノズル開口25aを閉塞する一方、ノズル形成面24aから離間する下方向に移動することで閉塞を解除することができる。
【0128】
(12)密着キャップ102は、複数のノズル25のうち一部のノズル開口25aを閉塞したときに、当該一部のノズル25以外のノズル25から離間した状態となる当接面104aを有するので、移動の過程で一部のノズル開口25aを選択的に閉塞することができる。
【0129】
(13)第1クリーニング工程においては、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路の圧力損失が小さく、圧力が付与されやすいノズル25から優先的に気泡が排出される。そして、閉塞工程においては、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞する。そのため、第2クリーニング工程においては、流路の圧力損失が大きく、第1クリーニング工程で圧力が付与され難かったノズル25内に集中的に圧力を付与して、効率よく気泡を排出することができる。したがって、複数のノズル25内から効率よく気泡を排出させることができる。
【0130】
(14)圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う際に、圧力付与位置M2の上流側に位置する開閉弁101が閉弁状態となることで、加圧及び減圧の影響が開閉弁101よりも下流側のみに及ぶようにすることができる。
【0131】
(15)中央が盛り上がった凸状の曲面からなる当接面104aを有する密着キャップ102を上昇移動させることで、複雑な制御を行うことなく、ノズル列Nの中央側から両端側に向けて、順次ノズル開口25aを閉塞していくことができる。
【0132】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図19〜図23に基づいて説明する。
第4実施形態のプリンター11は、第3実施形態とメンテナンス装置103の構成の一部が異なっている。したがって、以下の説明においては、第3実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第3実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0133】
図19に示すように、本実施形態のメンテナンス装置103は、密着キャップ102及びその昇降機構に代えて、略平板状の密着キャップ107及び該密着キャップ107を移動させるための移動機構(図示略)を備えている。密着キャップ107は、該移動機構によって上下方向及び搬送方向Xに沿って移動されるようになっている。
【0134】
密着キャップ107は、ノズル開口25aを閉塞するための当接部108と、当接部108と隣接する位置に設けられた開口部109とを有している。なお、開口部109は、同色のインクを噴射するノズル列N毎に設けられている。
【0135】
図20に示すように、密着キャップ107には、幅方向Yに並ぶように配置された当接部108及び開口部109からなる第1領域としての領域D1が設けられている。また、密着キャップ107には、領域D1と搬送方向Xにおける両側に隣接する位置に配置された開口部109のみからなる第2領域としての領域D2及び当接部108のみからなる第3領域としての領域D3が設けられている。なお、図19、図21及び図22では、図20に二点鎖線で示す領域D1〜D3の境界線の図示を省略している。また、領域D1〜D3は互いに離間していてもよいし、その並び順を変更してもよい。
【0136】
領域D1において、当接部108は幅方向Yにおける中央付近に設けられている一方、開口部109は幅方向Yにおける両端付近に設けられている。そして、領域D1と領域D2の開口部109は一体的に形成されているとともに、領域D1と領域D3の当接部108は一体的に形成されている。なお、領域D1において、中央付近の当接部108と両端付近の開口部109とがそれぞれカバーするノズル25の数は、任意に変更することができる。
【0137】
密着キャップ107は、図20に示すように、ノズル列Nの下方に領域D2が配置された状態でノズル形成面24aに当接することで、ノズル列Nを構成する全ノズル25を大気に連通させる。また、密着キャップ107は、図21に示すように、ノズル列Nの下方に領域D3が配置された状態でノズル形成面24aに当接することで、全ノズル開口25aを閉塞する。なお、図20〜図22においては、開口部109を通じて大気に連通されたノズル25(ノズル開口25a)を黒丸で図示する一方、当接部108によって閉塞されたノズル開口25a(ノズル25)を白丸で図示している。
【0138】
密着キャップ107は、図22に示すように、ノズル列Nの下方に領域D1が配置された状態でノズル形成面24aに当接することで、幅方向Yにおける中央付近のノズル開口25aを閉塞する一方、両端付近に位置するノズル25を大気に連通させる。このとき、領域D1の当接部108は、分岐流路31からの距離が短い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25、すなわち圧力損失が相対的に小さい流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞する。
【0139】
また、搬送方向Xにおける開口部109の両側には領域D3が配置されている。これにより、ノズル25が領域D1又は領域D2の開口部109を通じて大気に連通された状態から、密着キャップ107を左右何れの方向に移動させても、速やかに全てのノズル開口25aを閉塞することができるようになっている。
【0140】
そして、密着キャップ107による密着キャッピングの際には、閉弁工程として開閉弁101を閉弁状態とした後、図20に示すように、ノズル列Nの下方に領域D2が配置されるように、密着キャップ107をノズル形成面24aに当接させる。続いて、第1クリーニング工程として、圧力付与機構29による加圧及び減圧を繰り返し行う。
【0141】
次に、閉塞工程として、密着キャップ107をノズル形成面24aに摺接させつつ左方向にスライド移動させることで、図22に示すようにノズル列Nの下方に領域D1を配置する。これにより、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の長さに応じて、該長さが相対的に短い流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aが領域D1の当接部108によって閉塞される。
【0142】
また、閉塞工程の後に、第2クリーニング工程として、ノズル開口25aが閉塞されたノズル25以外のノズル25を対象として圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う。これにより、ノズル開口25aが閉塞されていない両端付近のノズル25に圧力が集中的に付与される。その後、密着キャップ107をさらに左方向にスライド移動させて、図21に示すようにノズル列Nの下方に領域D3を配置する。これにより、全てのノズル25のノズル開口25aが閉塞され、密着キャッピングが完了する。
【0143】
なお、本実施形態において、インク非供給クリーニングを効率的に行うために密着キャップ107を使用する場合には、第2クリーニング工程の後、密着キャップ107を下方向又は右方向に移動させて、ノズル開口25aの閉塞を解除すればよい。
【0144】
また、例えば図23に示す変形例のように、領域D1における当接部108及び開口部109の形状が異なる密着キャップ107Aを採用してもよい。すなわち、領域D1において、当接部108が幅方向Yにおける両端側から中央に向けて、左方側に突設するように傾斜する境界線で開口部109と区画されるようにする。この構成によれば、密着キャップ107Aを左方向に移動させることで、複雑な制御を行うことなく、中央側から両端側に向けて、順次ノズル開口25aを閉塞していくことができる。
【0145】
以上説明した実施形態によれば、上記(1)〜(6),(8)〜(11),(13),(14)と同様の作用効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(16)密着キャップ102の領域D1をノズル列Nに対応する位置に配置することで、当接部108と対応する位置にあるノズル開口25aのみを閉塞することができる。また、密着キャップ102の領域D2をノズル列Nに対応する位置に配置することで、全てのノズル開口25aの閉塞を解除することができる。さらに、密着キャップ102の領域D3をノズル列Nに対応する位置に配置することで、全てのノズル開口25aを閉塞することができる。すなわち、密着キャップ102の搬送方向Xに沿う移動に伴って閉塞するノズル開口25aの数を変化させることで、一部のノズル開口25aを選択的に閉塞することができる。
【0146】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・密着キャップ102は、キャップ43の開口を覆うように、シール部材46に代えてキャップ43の上端側に固定されるようにしてもよい。この場合には、密着キャップ102専用の移動機構を備える必要がないために構成を簡素化することができるし、ワイピング装置42によるワイピングを妨げることもない。
【0147】
なお、密着キャップ102がキャップ43の上端側に固定されている場合には、キャップ43に空間域Rを大気に連通させるための大気開放弁を備え、この大気開放弁を開弁状態としておく。これにより、ノズル25の下方に開口部109が配置されるように密着キャップ102がノズル形成面24aに当接したときに、該ノズル25を大気に連通させることができる。
【0148】
・流路の圧力損失は、リザーバー36の形状に限らず、流路全体を対象として決定してもよい。例えば、共通インク室30から延びる分岐流路31の長さが異なる場合には、閉塞工程において、短い方の分岐流路31を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞すればよい。
【0149】
・開閉弁101を備えなくてもよい。
・幅方向Yに並ぶ複数のノズル25に対して複数の当接部材を設け、各当接部材が異なるタイミングでノズル開口25aを閉塞するようにしてもよい。
【0150】
・一部のノズル25のノズル開口25aを閉塞して圧力付与機構29による加圧及び減圧を行った後に、ノズル開口25aの閉塞を解除して全ノズル25を対象として圧力付与機構29による加圧及び減圧を行ってもよい。あるいは、第1クリーニング工程を省略して、一部のノズル25のみを対象として圧力付与機構29による加圧及び減圧を行ってもよい。
【0151】
・ノズル25は、ノズルプレート35に貫通形成されるものに限らず、流体噴射ヘッド24から突設される円筒状の細い管によって形成されてもよい。
・流体噴射ヘッド24やノズル25の数、ノズル列Nの列数などは任意に設定することができる。
【0152】
・インクカートリッジ26は着脱式でないインクタンクを採用してもよい。
・流体噴射ヘッド24(ラインヘッド13)が移動可能な構成である場合には、当接部材(密着キャップ)に対して流体噴射ヘッド24が移動することで、閉塞工程や密着キャッピングを実行するようにしてもよい。すなわち、当接部材と流体噴射ヘッド24とが相対移動可能な構成であればよい。
【0153】
・キャッピング装置41及びワイピング装置42を備えなくてもよい。
・キャッピング装置41及びワイピング装置42の構成は、任意に変更することができる。
【0154】
・長尺の流体噴射ヘッドを備えるフルラインタイプのラインヘッド式プリンターや、ラテラル式プリンター、あるいはシリアル式プリンターとして実現してもよい。
・上記各実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化したが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0155】
11,11A…流体噴射装置としてのプリンター、24…流体噴射ヘッド、24a…一平面としてのノズル形成面、25…ノズル、25a…ノズル開口、27…流体供給流路を構成するインク供給チューブ、29,29A…圧力付与機構、31…流入孔としての分岐流路、36…貯留部としてのリザーバー、38…流出孔としての連通孔、102,102,102,107,107A…当接部材としての密着キャップ、103…メンテナンス装置、104a…当接面、108…当接部、109…開口部、D1…第1領域としての領域、D2…第2領域としての領域、D3…第3領域としての領域、M2…圧力付与位置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス装置、流体噴射装置及びメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体に対して流体を噴射する流体噴射装置として、インクジェット式プリンターが広く知られている。このプリンターは、流体噴射ヘッドに形成されたノズルからインク(流体)を噴射することで、媒体に印刷処理を施すようになっている。
【0003】
こうしたプリンターにおいては、ノズル内に気泡が混入したノズル抜け状態で噴射を行うことで、印刷した画像にドット抜けが生じることがあった。そして、ドット抜けによる印字不良の発生を抑制するため、インクとともにノズル内の気泡を排出するクリーニングを実行するようにしたプリンターがあった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−152725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうしたクリーニングにおいては、気泡を排出するために多量のインクを消費してしまうため、特許文献1においては、印字不良の度合いに応じてインクの供給量を変化させるようにしていた。しかし、クリーニングに伴ってまだかなりのインクを消費してしまうため、さらなるインク消費量の低減が課題となっていた。
【0006】
この課題を解決するために、ノズル内のインクに対して加圧を行うことで、ノズルからインクの一部を膨出させ、そのインクの膨出部分に混入している気泡をノズル開口の外側となる大気側に押し出すというクリーニング方法が考えられる。この場合には、加圧と連続的に減圧を行うことで、加圧に伴ってノズルから膨出した状態にあるインクを引き戻すことができるので、インクの消費を抑制しつつ、気泡を排出することができる。
【0007】
しかし、流体噴射ヘッドに複数のノズルが設けられている場合には、付与される圧力にばらつきが生じ、圧力が付与され難いノズルからは効率よく気泡を排出させることができないという問題が生じうる。
【0008】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のノズル内から効率よく気泡を排出させることができるメンテナンス装置、流体噴射装置及びメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のメンテナンス装置は、流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドと、該流体噴射ヘッド側となる下流側に向けて前記流体を供給する流体供給流路とを有する流体噴射装置のメンテナンス装置であって、前記流体噴射ヘッドよりも上流側の圧力付与位置で、該流体供給流路内の前記流体に対して加圧を行うことで前記ノズルから前記流体を膨出させるとともに、該加圧に伴い前記ノズルから前記流体が膨出した状態において減圧を行う圧力付与機構と、該圧力付与機構が前記加圧及び前記減圧を行う場合に、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口を閉塞するように前記流体噴射ヘッドに当接する当接部材と、を備える。
【0010】
この構成によれば、圧力付与機構が加圧及び減圧を行う場合に、当接部材が、圧力付与位置から各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、圧力損失が相対的に小さい流路を通じて流体が供給されるノズルのノズル開口を閉塞するように流体噴射ヘッドに当接する。そのため、流路の圧力損失が小さく、圧力が付与され易いノズルのノズル開口を閉塞した後に加圧及び減圧をすることで、ノズル開口が閉塞されていないノズル内に集中的に圧力を付与することができる。これにより、圧力損失が大きく、圧力が付与され難いノズルからも、効率よく気泡を排出させることができる。したがって、複数のノズル内から効率よく気泡を排出させることができる。
【0011】
本発明のメンテナンス装置において、前記当接部材は、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の長さに応じて、該長さが相対的に短い流路を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口から優先的に閉塞する。
【0012】
この構成によれば、当接部材が、圧力付与位置からの流路の長さが相対的に短い流路を通じて流体が供給されるノズルのノズル開口から優先的に閉塞することで、相対的に長い流路を通じて流体が供給されるノズル内に集中的に圧力を付与することができる。また、閉塞するタイミングが異なる各ノズル開口を同じ当接部材で閉塞することができるので、複数の当接部材を備える必要がない。そして、当接部材が全てのノズル開口を閉塞することで、ノズル内からの流体の蒸発を抑制することができる。
【0013】
本発明のメンテナンス装置において、前記流体供給流路には、前記圧力付与位置の下流側において前記流体を一時貯留するために一方向に沿って延びる貯留部と、該貯留部内に前記流体を流入させるための流入孔と、前記貯留部内の前記流体を前記各ノズルに向けて供給するために前記一方向に沿って並ぶように配置された複数の流出孔とが設けられ、前記圧力付与機構は、前記当接部材が前記流入孔からの距離が短い前記流出孔を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口を閉塞する前及び閉塞した後に、前記加圧及び前記減圧を行う。
【0014】
この構成によれば、貯留部は一方向に沿って延びるように設けられるとともに、流出孔は一方向に沿って並ぶように配置されるため、流入孔から流出孔に至る圧力損失は、流入孔から流出孔までの距離に応じて異なる。そのため、当接部材がノズル開口を閉塞する前に圧力付与機構が加圧及び減圧を行うと、流入孔からの距離が短い流出孔を通じて流体が供給されるノズルから優先的に気泡が排出される。そして、当接部材が流入孔からの距離が短い流出孔を通じて流体が供給されるノズルのノズル開口を閉塞した後に圧力付与機構が加圧及び減圧を行うと、流入孔からの距離が長い流出孔を通じて流体が供給されるノズル内に集中的に圧力が付与される。したがって、圧力が付与され難いノズルからも、効率よく気泡を排出することができる。
【0015】
本発明のメンテナンス装置において、複数の前記ノズルのノズル開口は一平面上に並ぶように配置され、前記当接部材は、前記一平面と交差する方向に沿って移動可能であるとともに、複数の前記ノズルのうち一部のノズル開口を閉塞したときに、当該一部のノズル以外のノズルから離間した状態となる当接面を有する。
【0016】
この構成によれば、当接部材は一平面と交差する方向に沿って移動可能であるので、一平面に近接する方向に移動することでノズル開口を閉塞する一方、一平面から離間する方向に移動することで閉塞を解除することができる。また、当接部材は、複数のノズルのうち一部のノズル開口を閉塞したときに、当該一部のノズル以外のノズルから離間した状態となる当接面を有するので、移動の過程で一部のノズル開口を選択的に閉塞することができる。
【0017】
本発明のメンテナンス装置において、前記流体噴射ヘッドには、複数の前記ノズルからなるノズル列が設けられるとともに、複数の前記ノズルのノズル開口は一平面上に並ぶように配置され、前記当接部材は、ノズル列方向と交差する移動方向に沿って前記一平面に対してスライド移動可能であるとともに、前記ノズル開口を閉塞するための当接部及び該当接部と隣接する位置に設けられた開口部を有し、前記当接部材には、前記ノズル列方向に並ぶように配置された前記当接部及び前記開口部からなる第1領域と、該第1領域と前記移動方向に隣接する位置に配置された前記開口部からなる第2領域と、前記第1領域又は前記第2領域と前記移動方向に隣接する位置に配置された前記当接部からなる第3領域とが設けられる。
【0018】
この構成によれば、当接部材の第1領域をノズル列に対応する位置に配置することで、当接部と対応する位置にあるノズル開口のみを閉塞することができる。また、当接部材の第2領域をノズル列に対応する位置に配置することで、全てのノズル開口の閉塞を解除することができる。さらに、当接部材の第3領域をノズル列に対応する位置に配置することで、全てのノズル開口を閉塞することができる。すなわち、当接部材の移動に伴って閉塞するノズル開口の数を変化させることで、一部のノズル開口を選択的に閉塞することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドと、該流体噴射ヘッド側となる下流側に向けて前記流体を供給する流体供給流路と、上記メンテナンス装置と、を備える。
【0020】
この構成によれば、上記メンテナンス装置と同様の作用効果を得ることができる。
上記目的を達成するために、本発明のメンテナンス方法は、流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドに向けて前記流体を供給する流体供給流路内の前記流体に対して、前記流体噴射ヘッドよりも上流側の圧力付与位置において加圧を行うことで前記ノズルから前記流体を膨出させるとともに、該加圧に伴い前記ノズルから前記流体が膨出した状態において減圧を行う第1クリーニング工程と、該第1クリーニング工程の後に、複数の前記ノズルのうち、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じて前記流体が供給される一部のノズルのノズル開口を閉塞する閉塞工程と、該閉塞工程の後に、前記一部のノズル以外のノズルを対象として前記加圧及び前記減圧を行う第2クリーニング工程と、を備える。
【0021】
この構成によれば、第1クリーニング工程においては、圧力付与位置から各ノズルに至る流路の圧力損失が小さく、圧力が付与されやすいノズルから優先的に気泡が排出される。そして、閉塞工程においては、圧力付与位置から各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じて流体が供給されるノズルのノズル開口を閉塞する。そのため、第2クリーニング工程においては、流路の圧力損失が大きく、第1クリーニング工程で圧力が付与され難かったノズル内に集中的に圧力を付与して、効率よく気泡を排出することができる。したがって、複数のノズル内から効率よく気泡を排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態におけるインクジェット式プリンターの概略構成を示す模式正面図。
【図2】ラインヘッドの構成を示す底面図。
【図3】流体噴射ヘッド内の概略構成を示す断面図。
【図4】キャッピング装置の概略構成を示す断面図。
【図5】ワイピング装置の概略構成を示す断面図。
【図6】圧力付与機構の構成及び作用を説明するための断面図で、(a)は加圧前、(b)は加圧時を示す。
【図7】インク非供給クリーニングを説明するための断面図で、(a)は加圧前、(b)は加圧時、(c)は減圧時、(d)は静置後を示す。
【図8】加圧時間と減圧時間との関係を示すグラフ。
【図9】第1実施形態におけるインクジェット式プリンターの流路条件1を示す表。
【図10】(a)は流路条件1における加圧インク量の範囲を示す表、(b)は流路条件1における加圧時間及び減圧時間の範囲を示す表。
【図11】第2実施形態におけるインクジェット式プリンターの概略構成を示す模式正面図。
【図12】差圧弁の構成及び作用を説明するための断面図で、(a)は閉弁時、(b)は開弁時を示す。
【図13】(a)は第2実施形態におけるインクジェット式プリンターの流路条件2における加圧インク量の範囲を示す表、(b)は流路条件2における加圧時間及び減圧時間の範囲を示す表。
【図14】圧力付与機構の構成の変形例を示す断面図。
【図15】第3実施形態におけるメンテナンス装置の構成を模式的に示す断面図。
【図16】第3実施形態における密着キャップの作用を説明するための断面図。
【図17】第3実施形態の第1変形例を示す断面図。
【図18】第3実施形態の第2変形例を示す断面図。
【図19】第4実施形態における密着キャップを説明するための斜視図。
【図20】第4実施形態における密着キャップの構成を説明するための下面図。
【図21】密着キャップによる密着キャッピングを説明するための下面図。
【図22】第2クリーニング工程における密着キャップの作用を説明するための下面図。
【図23】第4実施形態の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明を流体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という)に具体化した第1実施形態を図1〜図10を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は各図中に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0024】
図1に示すように、プリンター11は、媒体としての用紙Pを搬送する搬送ユニット12と、用紙Pに印刷処理を施すラインヘッド13と、ラインヘッド13に流体としてのインクを供給するインク供給ユニット14と、メンテナンスユニット15とを備えている。
【0025】
搬送ユニット12は、一対の給紙ローラー16と、無端状の搬送ベルト17と、駆動ローラー18と、従動ローラー19と、駆動ローラー18に接続された駆動モーター20と、一対の排紙ローラー21とを備えている。搬送ベルト17は、駆動ローラー18及び従動ローラー19に巻き掛けられ、駆動モーター20の駆動によって駆動ローラー18が図1における時計回り方向に回転すると周回移動する。そして、給紙ローラー16、搬送ベルト17及び排紙ローラー21によって用紙Pを搬送方向Xに沿って搬送するようになっている。なお、搬送ベルト17は、少なくとも用紙Pの幅方向Y(前後方向)の両端を支持するように複数本(例えば2本)設けられているとともに、前後方向に並ぶ搬送ベルト17の間にメンテナンスユニット15が配置されている。
【0026】
ラインヘッド13は、基体部23と、基体部23に支持された流体噴射ヘッド24とを備えている。図2に示すように、流体噴射ヘッド24は、用紙Pの幅方向Yに沿って延びる2列のラインを形成するように、千鳥状に配列されている。そして、搬送方向Xにおける上流側(左側)に位置する1列目は、幅方向Yに沿って並ぶ4つの流体噴射ヘッド24から構成される一方、搬送方向Xにおける下流側(右側)に位置する2列目は、幅方向Yに沿って並ぶ4つの流体噴射ヘッド24から構成される。
【0027】
各流体噴射ヘッド24には、インクを噴射するためのノズル25が複数設けられている。そして、流体噴射ヘッド24の下面(底面)からなるノズル形成面24aには、複数のノズル25のノズル開口25aによって幅方向Yに沿って延びる2列のノズル列Nが形成されている。図2の部分拡大図に示すように、2列のノズル列Nは、幅方向Yに沿う配置間隔が1/2画素ずつずれるように、ノズル開口25aが千鳥状に配列されている。そして、1列目と2列目の流体噴射ヘッド24は、搬送方向Xに投影したときに両端部の少なくとも1個のノズル25が重なるか、両端のノズル25がノズルピッチを開けて連続するようになっている。
【0028】
このため、プリンター11では、ラインヘッド13を固定したままでも用紙最大幅範囲の印字が可能となっている。なお、本実施形態においては、1つの流体噴射ヘッド24が用紙1.1インチに対応し、8つの流体噴射ヘッド24でA4サイズ(縦297mm×横210mm)の横幅(約8.3インチ)をカバーするようになっている。また、1本のノズル列Nは330個のノズル25から構成される。したがって、1つのラインヘッド13は、幅方向Yに沿って並ぶ8(流体噴射ヘッド24の数)×2(ノズル列Nの数)×330(ノズル列Nを構成するノズル25の数)=5280個のノズル25を有している。
【0029】
なお、ラインヘッド13及びインク供給ユニット14は、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のカラー印刷を行う場合には、色毎に4組設けられる(図1及び図2には簡略化のために1つずつ図示している)。そして、4つのラインヘッド13から、搬送される用紙Pに4色のインク滴を重ね打つことにより、解像度600dpiでの印刷処理が可能となっている。
【0030】
図1に示すように、インク供給ユニット14は、インクを収容したインクカートリッジ26と、インクカートリッジ26から流体噴射ヘッド24側に向けてインクを供給する流体供給路を構成するインク供給チューブ27と、インクを加圧供給するための加圧ポンプ28とを備えている。なお、インクカートリッジ26は図示しないカートリッジホルダーに着脱可能に装着されることで、インク供給チューブ27に接続される。また、インク供給チューブ27の途中位置には、圧力付与機構29が設けられている。
【0031】
ラインヘッド13の基体部23内には、インク供給チューブ27を通じてインクカートリッジ26から供給されるインクを一時的に貯留する共通インク室30が設けられている。共通インク室30には、各流体噴射ヘッド24に対応する複数の分岐流路31が接続されている。そして、共通インク室30内に貯留されたインクは、分岐流路31を通じて複数の流体噴射ヘッド24に供給される。
【0032】
図3に示すように、流体噴射ヘッド24は、上下方向に積層された流路形成部材32、振動板33、流路形成部材34及びノズルプレート35を備えている。流路形成部材32には共通インク室30に連通する分岐流路31と、リザーバー36と、収容室37とが形成されている。振動板33には、リザーバー36と対応する位置に連通孔38が設けられている。流路形成部材34には、連通孔38を通じてリザーバー36と連通するキャビティ39が形成されている。
【0033】
また、振動板33の上面側には、キャビティ39の上方となる位置に圧電素子40が配設されている。そして、ノズルプレート35にはキャビティ39と連通するノズル25が形成されている。すなわち、共通インク室30から分岐流路31を通じて各流体噴射ヘッド24に分配されたインクはリザーバー36に貯留され、リザーバー36から連通孔38及びキャビティ39を通じて各ノズル25に供給される。
【0034】
振動板33は上下方向に振動可能に貼り付けられているとともに、圧電素子40は駆動信号を受けて伸縮することで、振動板33を上下方向に振動させるようになっている。また、振動板33が上下方向に振動すると、キャビティ39の容積が拡縮するようになっている。そして、キャビティ39の容積が縮小されると、キャビティ39内のインクがノズル25からインク滴Fbとして噴射されるようになっている。なお、流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aはノズルプレート35の下面(底面)によって構成される態様となっている。また、本実施形態において、ノズル開口25aは直径約20マイクロメートル、ノズルプレート35の上下方向の厚さは約100マイクロメートルとなっている。
【0035】
ここで、インクカートリッジ26はラインヘッド13よりも低い位置に設けられている。そのため、流体噴射ヘッド24内の領域(インク流路)は、水頭差によって−1kPa程度の負圧となっている。この負圧は、ノズル25からインクが垂れ落ちることを防止するとともに、ノズル25内に凹状のメニスカスを形成して噴射動作を安定させるためのものである。
【0036】
次に、メンテナンスユニット15について説明する。
メンテナンスユニット15は、流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aをキャッピングするためのキャッピング装置41(図4参照)と、ノズル形成面24aをワイピングするためのワイピング装置42(図5参照)とを備えている。なお、キャッピング装置41及びワイピング装置42は流体噴射ヘッド24毎に設けてもよいし、複数の流体噴射ヘッド24を同時にキャッピングしたりワイピングしたりするようにしてもよい。
【0037】
キャッピング装置41は、ノズル25の乾燥を防止するためのキャッピングに用いられる他、インクカートリッジ26内のインクをノズル25から吸引することで、気泡や増粘したインクなどを排出させる吸引クリーニングを実行する際に用いられる。さらに、キャッピング装置41は、インクカートリッジ26内のインクを加圧ポンプ28でノズル25から排出させる加圧クリーニングの際にも、ノズル25から排出されるインクを受容するために用いられる。一方、ワイピング装置42は、ノズル形成面24aを払拭して紙粉やインク等の付着物を除去したり、ノズル25のメニスカスを整えたりするためのワイピングを実行する際に用いられる。
【0038】
まず、キャッピング装置41について説明する。
図4に示すように、キャッピング装置41は、有底四角箱状のキャップ43と、キャップ43を昇降させる昇降機構44と、吸引機構45とを備えている。キャップ43の周壁の上面全体には可撓性材料からなる四角枠状のシール部材46が設けられているとともに、キャップ43の底壁には排出管47が下方に向かって突設されている。
【0039】
排出管47には、吸引機構45を構成する可撓性材料よりなる排出チューブ48の一端側が接続されている。排出チューブ48の他端側は廃インクタンク49内に挿入されている。また、廃インクタンク49内には、多孔質部材からなる廃インク吸収材50が収容されている。
【0040】
キャップ43と廃インクタンク49との間には、吸引機構45を構成するチューブポンプ51が配設されている。チューブポンプ51は、円筒状のケース52と、平面視円形状をなすポンプホイル53と、ホイル軸54と、一対の押圧ローラー55とを有している。ポンプホイル53は、ケース52の軸心に設けられたホイル軸54を中心にケース52内に回動可能に収容されている。また、排出チューブ48の中間部は、ケース52の内周壁に沿うようにケース52内に収容されている。
【0041】
ポンプホイル53には、円弧状をなす一対のローラー案内溝56がホイル軸54を挟んで対向するように形成されている。各ローラー案内溝56は、一端がポンプホイル53の内周側に位置する一方、他端がポンプホイル53の外周側に位置している。すなわち、両ローラー案内溝56は、一端から他端に向かって徐々にホイル軸54から遠ざかるように延びている。また、一対の押圧ローラー55は両ローラー案内溝56内に回動軸57を介して挿通支持されている。なお、両回動軸57は、それぞれ両ローラー案内溝56内を摺動自在になっている。
【0042】
そして、ポンプホイル53を、正方向(図4に矢印で示す時計回り方向)に回動させると、押圧ローラー55がローラー案内溝56の他端側(ポンプホイル53の外周側)に往路移動し、排出チューブ48の中間部を上流側から下流側へ順次押し潰しながら回動する。この回動により、チューブポンプ51より上流側の排出チューブ48の内部が減圧される。
【0043】
また、ポンプホイル53を逆方向(図4における反時計回り方向)に回動させると、押圧ローラー55がローラー案内溝56の一端側(ポンプホイル53の内周側)に復路移動する。この移動により、両押圧ローラー55がそれぞれ排出チューブ48の中間部に軽く接した状態となり、排出チューブ48の内部の減圧状態が解消される。
【0044】
昇降機構44は、キャップ43に下方から当接するカム部材58と、カム部材58を回動させるためのモーター59と、動力伝達機構60とを備えている。そして、モーター59が正方向に駆動されると、動力伝達機構60を介してカム部材58が回動されて、キャップ43がノズル形成面24aに当接するようになっている。
【0045】
したがって、キャップ43がノズル形成面24aに当接した状態でポンプホイル53が正方向に駆動されると、キャップ43とノズル形成面24aとで囲み形成された空間域Rに負圧が発生する。これにより、ノズル25からインクが排出される吸引クリーニングが実行される。なお、ポンプホイル53が逆方向に駆動されると空間域Rの負圧が解消される。その後、昇降機構44のモーター59が逆方向に駆動されると、キャップ43が下降して、用紙Pの搬送経路から退避する。
【0046】
次に、ワイピング装置42について説明する。
図5に示すように、ワイピング装置42は、ワイピング機構61と、ワイピング機構61を昇降させる昇降機構62とを備えている。
【0047】
ワイピング機構61は、ホルダー63と、前後方向に沿って延びるようにホルダー63に架設されたリードスクリュー64と、リードスクリュー64を回転させるためのモーター65と、支持部材66と、ゴムなどの弾性体からなる板状のワイパー67とを備えている。ワイパー67は支持部材66上に立設される態様で支持されるとともに、支持部材66はリードスクリュー64に支持されている。また、支持部材66の上面側には、貯留凹部66aが形成されている。
【0048】
昇降機構62はワイピング機構61のホルダー63に下方から当接するカム部材68と、カム部材68を回動させるためのモーター69と、動力伝達機構70とを備えている。そして、モーター69が正方向に駆動されると、動力伝達機構70を介してカム部材68が回動されて、ワイパー67がノズル形成面24aに当接する位置までワイピング機構61が上昇するようになっている。
【0049】
また、モーター65が正方向に駆動されるとリードスクリュー64が正方向に回転し、支持部材66とともにワイパー67が前後方向に沿って移動する過程で、ノズル形成面24aに摺接する。これにより、ノズル形成面24aを払拭により清掃するワイピングが実行される。このとき、ノズル形成面24aから払拭されたインクや紙粉はワイパー67を伝って流下し、貯留凹部66aに貯留される。
【0050】
次に、圧力付与機構29について説明する。
図6に示すように、圧力付与機構29は、定形性を有する流路形成部材71を有している。流路形成部材71の左端には上流側のインク供給チューブ27と接続される接続部72が設けられる一方、流路形成部材71の右端には下流側のインク供給チューブ27と接続される接続部73が設けられる。また、流路形成部材71の上面側には、平面視円形状の凹部71aが形成されている。そして、接続部72内には、上流側のインク供給チューブ27と凹部71a内とを連通させる流入路72aが形成されている。一方、接続部73内には、下流側のインク供給チューブ27と凹部71a内とを連通させる流出路73aが形成されている。
【0051】
流路形成部材71の上面側には、可撓性を有するフィルム部材74が凹部71aの開口を閉塞するように撓みを有した状態で固着されている。また、フィルム部材74の外面側の略中央部には、凹部71aの開口面積よりも面積の小さい円板状の押圧板74aが固着されている。そして、フィルム部材74と凹部71aとによって、圧力室75が囲み形成されている。圧力室75は、流入路72a及び流出路73aを通じてインク供給チューブ27と連通することで、流体供給路の一部を構成する。
【0052】
圧力室75内には、圧力室75の内容積を拡大する方向にフィルム部材74を付勢する付勢部材76が配設されている。付勢部材76は、例えばコイルばねや板ばねなどから構成することができる。また、押圧板74aの上方には、押圧板74aに当接するカム部材77が配置されている。カム部材77は回転軸78を介して支持されているとともに、モーター79の駆動に伴って回転軸78とともに回動するようになっている。
【0053】
したがって、図6(a)に示す状態でモーター79を正方向に駆動するとカム部材77が付勢部材76の付勢力に抗して同図における反時計回り方向に回動する。これにより、図6(b)に示すようにフィルム部材74が圧力室75の内容積を減少させる方向に変位し、圧力室75から押し出されたインクによってインク供給チューブ27内のインクが加圧される。また、図6(b)に示す状態でモーター79を逆方向に駆動すると、カム部材77が同図における時計回り方向に回動する。これにより、付勢部材76の付勢力でフィルム部材74が圧力室75の内容積を増加させる方向に変位し、圧力室75内に引き込まれるインクによってインク供給チューブ27内が減圧される。
【0054】
次に、プリンター11におけるメンテナンス動作について説明する。
プリンター11においては、インクカートリッジ26の交換時にインク供給チューブ27内に気泡が混入してドット抜けが生じたり、電源を切ったまま放置していたためにインクが増粘してノズル25の目詰まりが生じたりすることがある。こうしたドット抜けや目詰まりに起因する印刷品質の低下を抑制するため、プリンター11ではキャッピング装置41を用いて吸引クリーニングや加圧クリーニングを実行する。以下、このようにインクカートリッジ26内のインクを供給しつつノズル25からインクを排出するクリーニングを「インク供給クリーニング」という。
【0055】
また、印刷処理によってノズル形成面24aに紙粉などが付着した場合には、ワイピング装置42でノズル形成面24aをワイピングする。なお、インク供給クリーニング後には、排出されたインクがノズル形成面24aに付着したり、ノズル開口25aに凸状のメニスカスが形成されたりするため、インク供給クリーニングの直後にもワイピングを行う。
【0056】
ところが、このようなワイピングを行うと、ワイパー67がノズル25内に空気を押し込んでしまい、ノズル25内に微少な気泡を生じてしまうことがある。こうした気泡はインクカートリッジ26の交換等で混入する気泡と比較するとかなり小さく、ノズル25付近に留まっていることが多い。そのため、プリンター11においては、ノズル25付近の微少な気泡を排出するために、圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングを実行する。
【0057】
次に、圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングについて詳述する。
インク非供給クリーニングは、圧力付与機構29が加圧を行ってノズル25からインクを膨出させる加圧工程と、この加圧工程の後に、加圧に伴いノズル25からインクが膨出した状態において圧力付与機構29が減圧を行う減圧工程とから構成される。すなわち、加圧工程では、圧力付与機構29が圧力室75のインクを一気に押し出すことによってノズル25内に圧力を伝播させ、図7(a)に示すようにノズル25の内壁に付着した気泡を引きはがす。そして、図7(b)に示すようにノズル25からインクを膨出させることで、気泡をノズル開口25aの外側となる大気側に押し出す。
【0058】
また、減圧工程では、圧力付与機構29が圧力室75の容積を増加させることで、圧力室75に押し出した分のインクを引き戻す。これにより、ノズル25からインク滴Fbが噴射したり落下(滴下)したりする前に、ノズル25から凸状に膨出した状態のインクを図7(c)に示すようノズル25内に回収する。なお、気泡が排出されるとノズル25内に気泡の容積分の空隙が生じるが、短時間静置すると毛管力によって共通インク室30のインクが図7(d)に示すようにノズル25内に補給される。
【0059】
こうしたインク非供給クリーニングの加圧と減圧は、複数回繰り返して実施することで、排出されにくい気泡についても、徐々に外側に移動させることができる。例えば、複数回加圧と減圧を繰り返す場合には、ノズル25内だけでなく、流体噴射ヘッド24内や共通インク室30内にある気泡も排出させることができる。また、気泡の排出に伴ってノズル25内に空隙が生じた場合にも、加圧と減圧を繰り返し行うことで、ノズル25の液面位置が徐々に揃えられる。
【0060】
なお、減圧工程においては、加圧工程で減少させた容積を元に戻してもよいし、減圧のために増加させる容積を加圧のために減少させた容積よりも小さくしてもよい。例えば、加圧と減圧を複数回繰り返して共通インク室30内にある比較的大きな気泡が排出された場合には、ノズル25全体が空隙となるノズル抜けを生じる虞もある。こうしたノズル抜けが生じると、毛管力によるインクの補給がされにくいこともあるので、特に複数回加圧と減圧を繰り返した最後の減圧時には、引き込むインクの量を少なくするのが好ましい。
【0061】
ここで、図8に示すように、減圧工程で減圧を行う減圧時間Tdは、加圧工程で加圧を行う加圧時間Taよりも長く設定されるのが好ましい。また、加圧時間Taについては、短すぎると伝播する圧力でインク滴Fbが噴射されてインクが無駄に消費されてしまったり、減圧開始が早すぎて気泡が押し出される前にインクを引き戻してしまったりする虞がある。逆に、加圧時間Taが長すぎると、インクの流速が遅くなって気泡をノズル25の内壁から引きはがすことができなかったり、減圧によってインクを引き戻すのが間に合わなくなってインクが消費されてしまったりする虞がある。
【0062】
一方、減圧時間Tdが長すぎると、同じくインクを引き戻すのが間に合わなくなってインクが消費されてしまう虞がある。逆に、減圧時間Tdが短すぎると、ノズル25の外側から空気を引き込み、気泡を生じてしまう虞がある。
【0063】
そして、インク滴Fbの噴射を抑制しつつ気泡の排出性を確保するために適正な加圧時間Taは、例えば0.05秒から0.5秒と非常に短時間である。一方、このような短時間で減圧を行うと空気を引き込んでしまうため、0.05秒から0.5秒の加圧時間Taに対しては、加圧時間Ta<減圧時間Tdとすることが好ましい。
【0064】
本実施形態において、加圧及び減圧は、ノズル25からインク滴Fbが噴射されない程度に圧力室75の容積を変動させることで実行される。そのため、加圧のための容積変動に伴って押し出されるインクの量(以下、これを「加圧インク量Vd」という)、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適切な値は、ノズル25や流体噴射ヘッド24の設置数などの流路条件によって変動する。そこで、加圧インク量Vd、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適切な値の範囲と流路条件について説明する。
【0065】
本実施形態のプリンター11の流路条件(以下、これを「流路条件1」という)としては、図9に示すように、インクカートリッジ26の内容積(領域No1)が約50cc、インクカートリッジ26から圧力室75までのインク供給チューブ27の内容積(領域No2)が約3.5ccとなっている。また、圧力室75の変動可能な容積(領域No3)が約1.0cc、圧力室75より下流側のインク供給チューブ27の内容積(領域No4)が約1.9cc、共通インク室30の内容積(領域No5)が約3.1cc、8つの流体噴射ヘッド24を合計した内容積(領域No6)が約0.9ccとなっている。
【0066】
そして、流路条件1でインク非供給クリーニングを行う場合の加圧インク量Vdの適正範囲を図10(a)に、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適正範囲を図10(b)に示す。
【0067】
加圧インク量Vdについては、圧力室75の容積約1.0ccのうち、0.22cc≦Vd≦0.62ccとなる範囲で容積を減少させて加圧を行うことが好ましい。なお、0.22cc>Vdの場合には気泡を排出するだけの加圧力が得られない虞があり、0.62cc<Vdの場合にはインクが消費されてしまう虞がある。
【0068】
また、0.22cc≦Vd≦0.62ccとした場合の加圧時間Taは0.05秒≦Ta≦0.5秒、減圧時間Tdは0.09秒≦Td≦0.7秒(ただし、Ta<Td)であることが好ましい。
【0069】
圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングは、実行後にノズル形成面24aにインクが付着することがない上、ノズル25のメニスカスを整えることができるため、インク供給クリーニンクのように後処理としてワイピングを行う必要がない。また、インク消費を限りなくゼロにすることができるとともに非常に短時間で行うことができる。
【0070】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)圧力付与機構29がインク供給チューブ27内のインクに対して加圧を行うことで、ノズル25からインクの一部を膨出させ、そのインクの膨出部分に混入している気泡をノズル開口25aの外側となる大気側に押し出すことができる。また、圧力付与機構29が加圧と連続的に減圧を行うと、加圧に伴ってノズル25から膨出した状態にあるインクをノズル開口25aからの落下等によって無駄に消費されないように流体噴射ヘッド24内に引き戻すことができる。したがって、圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングによれば、インクの消費を抑制しつつ、気泡を排出することができる。
【0071】
(2)加圧を短時間で行って気泡の排出性を確保するとともに、減圧時間Tdを加圧時間Taより長くすることで、ノズル開口25aからの気泡の引き込みを抑制することができる。
【0072】
(3)圧力付与機構29が圧力室75の容積を減少させることで、減少した容積分のインクを押し出し、ノズル25側に圧力を波及させることができる。また、減圧は圧力室75の容積を増加させることで行うので、加圧のために減少させた容積を元に戻すことで、加圧と連続的に減圧を行うことができる。
【0073】
(4)加圧に伴ってノズル25から気泡が排出されると、その分ノズル25内に空隙が生じるが、減圧のために増加させる圧力室75の容積を、加圧のために減少させる圧力室75の容積よりも小さくすることで、空隙に起因するノズル抜けの発生を抑制することができる。
【0074】
(5)各ノズル25の背圧を共通インク室30で調整することで、ノズル25のメニスカスを均一に整えることができる。例えば、インク非供給クリーニングの加圧や減圧に伴うインクの流動は、共通インク室30を経由してノズル25内に波及する。そのため、気泡が排出された一つのノズル25内に空隙が生じた場合にも、加圧と減圧を繰り返すことで、その他のノズル25との間で液面位置が揃えられる。そして、圧力付与機構29はインク流路において共通インク室30よりも上流側に設けられるので、流体噴射ヘッド24数が増加した場合にも、構成が複雑にならない。
【0075】
(6)流路条件1において、圧力付与機構29が加圧を行う加圧時間Taは0.05秒から0.5秒と非常に短時間であるので、ノズル25の内壁に付着した気泡を引きはがして排出することができる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図11〜図13に基づいて説明する。
第1実施形態のプリンター11においては、インク流路を構成する各領域No1〜No6は連通しているため、圧力室75から押し出されたインクは、下流側の領域No3〜No6のみならず、上流側の領域No1,No2にも移行する。そのため、上流側に圧力が波及する分、ノズル25内に至る圧力が弱まる。そこで、第2実施形態においては、押し出されたインクを下流側のみに流下させることができるプリンター11Aについて説明する。
【0077】
図11に示すように、第2実施形態のプリンター11Aは、プリンター11のインク供給ユニット14に代えて、インク供給ユニット14Aを備えている。そして、インク供給ユニット14Aにおいては、インク供給チューブ27に差圧弁80と開閉弁81とが設けられている。
【0078】
開閉弁81は任意に開閉操作を行うことができる弁であり、圧力付与機構29のすぐ上流側に設けられる。なお、開閉弁81としては、電磁弁や機械的に動作する弁を採用することができる。そして、インク非供給クリーニングを実行する際には、開閉弁81を閉弁状態とすることで、圧力室75から押し出されたインクを下流側のみに流下させる。
【0079】
また、差圧弁80は大気圧とインク圧との差圧を利用して開閉するダイアフラム式の自己閉塞弁で、インクカートリッジ26と開閉弁81との間に配置されている。プリンター11Aにおいては、インクカートリッジ26(図示しないカートリッジホルダ)がラインヘッド13よりも高い位置に設けられている。そのため、差圧弁80によって流体噴射ヘッド24内を−1kPa程度の負圧にしている。
【0080】
図12(a)に示すように、差圧弁80は、定形性を有する流路形成部材82を有している。流路形成部材82の左端には上流側のインク供給チューブ27と接続される接続部83が設けられる一方、流路形成部材82の右端には下流側のインク供給チューブ27と接続される接続部84が設けられる。また、流路形成部材82の上面側には平面視円形状の凹部82aが形成されるとともに、凹部82aの内底面において中心から左方に偏心した位置には、円錐台形状をなす凸部82bが一つ形成されている。そして、この凸部82bの上端面に凹部82a内への開口が形成されるように、接続部83内には上流側のインク供給チューブ27と凹部82a内とを連通させる流入路83aが形成されている。一方、接続部84内には、下流側のインク供給チューブ27と凹部82a内とを連通させる流出路84aが形成されている。
【0081】
流路形成部材82の上面側には、凹部82aの開口を閉塞するように可撓性を有するフィルム部材85が撓みを有した状態で固着されている。また、フィルム部材85の凹部82a内に臨む内面側の略中央部には、凹部82aの開口面積よりも面積の小さい円板状の押圧板86が固着されている。そして、フィルム部材85と凹部82aとによって、圧力室87が囲み形成されている。
【0082】
圧力室87内には、基台部88と、この基台部88に傾動自在に支持されたアーム部材89と、アーム部材89の一端側(左端側)を、凸部82b側に向けて付勢する付勢ばね90とが収容されている。アーム部材89は、常時は付勢ばね90の付勢力を受けて、一端側が凸部82bの上端面に設けられた流入路83aの開口を閉塞するとともに、他端側(右端側)が押圧板86を上方に向けて押し上げた状態となっている。これにより、フィルム部材85が圧力室87の内容積を拡大する方向に撓み変位され、圧力室87及びその下流域に位置する流体噴射ヘッド24内は−1kPa程度の負圧となる。
【0083】
また、流入路83aには、加圧ポンプ28によってインクが加圧状態で供給されるとともに、常には付勢ばね90の付勢力を受けたアーム部材89の一端側によって、圧力室87内への流入が抑制された状態となっている。そして、ノズル25からの噴射又は流出によりインクが消費されると、圧力室87内の負圧が増し、図12(b)に示すように、フィルム部材85が付勢ばね90の付勢力に抗して圧力室87の内容積を減少させる方向に撓み変位する。すると、アーム部材89の他端側が押圧板86を介してフィルム部材85に押圧されて傾動し、一端側が流入路83aの開口を開放するので、流入路83aを通じて圧力室87内に加圧されたインクが流入する。
【0084】
そして、インクの流入に伴って圧力室87内の負圧が減少すると、アーム部材89及びフィルム部材85は再び付勢ばね90の付勢力によって元の位置に復帰する。したがって、流体噴射ヘッド24には消費量に応じたインクが供給されるようになっている。
【0085】
次に、本実施形態におけるインク非供給クリーニングについて説明する。
プリンター11Aにおいては、インク非供給クリーニングを実行する際には差圧弁80が閉弁状態とされる(以下、この状態を「流路条件2」という)。流路条件2では、図9に示す領域のうち、領域No1,2を除いた領域No3〜6が加圧及び減圧の影響範囲となる。
【0086】
そして、流路条件2でインク非供給クリーニングを行う場合の加圧インク量Vdの適正範囲を図13(a)に、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適正範囲を図13(b)に示す。
【0087】
加圧インク量Vdについては、圧力室75の容積約1.0ccのうち、0.18cc≦Vd≦0.48ccとなる範囲で容積を減少させて加圧を行うことが好ましい。すなわち、領域No1,2側にインクが流れることで発生する圧力の損失がなくなるため、流路条件2では流路条件1よりも少ない加圧インク量Vdで気泡を排出することができる。この場合、1つのラインヘッド13には5280個のノズル25が設けられていることから、1ノズル当たりのインクの膨出良好域は、およそ3.5×10−5cc〜9.0×10−5ccとなる。また、Vd=0.33cc、Ta=0.15秒で加圧を行い、Td=0.35秒で減圧を行うことで、特に良好な結果が得られることが確認されている。
【0088】
また、0.18cc≦Vd≦0.48ccとした場合の加圧時間Taは0.025秒≦Ta≦0.2秒、減圧時間Tdは0.1秒≦Td≦0.5秒(ただし、Ta<Td)であることが好ましい。すなわち、流路条件1,2を考慮すると、加圧工程で圧力付与機構29が加圧を行う加圧時間Taは0.025秒から0.5秒に設定されるのが好ましいといえる。
【0089】
以上説明した実施形態によれば、上記(1)〜(5)と同様の作用効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(7)流路条件2において、圧力付与機構29が加圧を行う加圧時間Taは0.025秒から0.2秒と非常に短時間であるので、ノズル25の内壁に付着した気泡を引きはがして排出することができる。
【0090】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・圧力付与機構29は、図14に示す構成の圧力付与機構29Aとしてもよい。
圧力付与機構29Aは、定形性を有する流路形成部材91を有している。流路形成部材91の左端にはインク供給チューブ27と接続される接続部92が設けられる一方、流路形成部材91の右端にはインク供給チューブ27と接続される接続部93が設けられる。また、流路形成部材91の上面側には平面視円形状の凹部91aが形成されている。そして、接続部92内には、インク供給チューブ27と凹部91a内とを連通させる流入路92aが形成される。一方、接続部93内には、インク供給チューブ27と凹部91a内とを連通させる流出路93aが形成される。
【0091】
流路形成部材91の凹部91a内には、ピストン94が摺動自在な状態で収容されている。ピストン94の一端側(下端側)は圧力室75の一壁面を構成する円盤形状の可動部94aを構成するとともに、ピストン94の他端側(上端側)は円盤形状の受圧部94bを構成する。そして、ピストン94の可動部94aと流路形成部材91の凹部91aとによって、圧力室75が囲み形成されている。
【0092】
流路形成部材91の上面側と受圧部94bの下面側との間には、ばねからなる付勢部材76が配設されている。したがって、モーター79が正方向に駆動してカム部材77が同図における反時計回り方向に回動すると、ピストン94の可動部94aが回転軸78から離間する方向に移動する。すると、圧力室75の容積が減少し、圧力室75から押し出されたインクによってインク供給チューブ27内のインクが加圧される。また、モーター79が逆方向に駆動してカム部材77が同図における時計回り方向に回動すると、付勢部材76の付勢力でピストン94の可動部94aが回転軸78に近接する方向に移動する。すると、圧力室75の容積が増加し、圧力室75内に引き込まれるインクによってインク供給チューブ27内が減圧される。
【0093】
・圧力付与機構29は、圧力付与機構29Aのピストン94を可動鉄心で構成するとともに、その周囲にソレノイドを設けるようにしてもよい。この場合には、ソレノイドに電流を流して磁界を発生させることにより、可動鉄心からなるピストン94を移動させることができる。
【0094】
・圧力付与機構が圧電素子を備え、圧電素子によって流体供給路の容積を変動させることで加圧や減圧を行うようにしてもよい。
・弾性変形可能なインク供給チューブ27をカム部材77で押し潰すことで加圧を行うようにしてもよい。この場合には、流路形成部材71を備えなくてもよいので、構成を簡素化することができる。
【0095】
・共通インク室30を備えず、例えばインク供給チューブ27の一端側(基端側)がインクカートリッジ26に接続される一方、他端側(先端側)が複数に分岐して流体噴射ヘッド24に接続されるようにしてもよい。この場合には、基端側に圧力付与機構29を設けてもよいし、分岐した先端側に圧力付与機構29を設けてもよい。
【0096】
・圧力付与機構は、共通インク室30とリザーバー36との間に設けてもよいし、リザーバー36とキャビティ39との間に設けてもよい。
・液体供給路を弾性変形しにくい剛体の管路から構成してもよい。この場合には、加圧工程における加圧や減圧工程における減圧に伴う圧力変動を、管路の弾性変形で吸収することなくノズル25内に伝播させることができる。
【0097】
・流路条件や噴射する流体を変更した場合には、摩擦抵抗や流路抵抗、粘性等が変化するので、加圧インク量Vd、加圧時間Ta及び減圧時間Tdもそれぞれ適切な値に変更するのが好ましい。
【0098】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図15〜図18に基づいて説明する。
なお、第3実施形態のプリンター11は、メンテナンス動作に関連する構成の一部が第1実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0099】
図15に示すように、本実施形態のプリンター11は、圧力付与機構29と、開閉弁101と、ノズル25のノズル開口25aを閉塞するように流体噴射ヘッド24に当接する当接部材としての密着キャップ102とを構成要素の一部とするメンテナンス装置103を備える。なお、メンテナンス装置103は、メンテナンスユニット15の一部としてもよい。
【0100】
開閉弁101は、流体噴射ヘッド24側となる下流側に向けてインクを供給する流体供給流路を構成するインク供給チューブ27の開閉位置M1に設けられている。開閉弁101は任意に開閉操作を行うことができる弁であり、圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う圧力付与位置M2のすぐ上流側において、開閉操作に伴って流路を開閉するようになっている。なお、開閉弁101としては、電磁弁や機械的に動作する弁を採用することができる。そして、本実施形態においてインク非供給クリーニングを実行する際には、開閉弁101を閉弁状態とすることで、圧力室75から押し出されたインクを下流側のみに流下させる。
【0101】
また、メンテナンス装置103には、密着キャップ102をノズル形成面24aと直交する上下方向に昇降移動させるための昇降機構(図示略)が設けられている。これにより、密着キャップ102は、上下方向に沿って移動可能となっている。また、密着キャップ102は、ノズル開口25aを閉塞する当接面104aが上面側に形成されたゴム部材104と、ゴム部材104を下方で支持するスポンジ部材105と、スポンジ部材105を下方で支持する基台部106とを備えている。なお、密着キャップ102において、スポンジ部材105を備えない構成としてもよい。
【0102】
ここで、リザーバー36は、圧力付与機構29の下流側においてインクを一時貯留するために、ノズル列方向となる幅方向Y(前後方向)に沿って延びるように設けられている。そして、リザーバー36内にインクを流入させるための流入孔として機能する分岐流路31は、リザーバー36の幅方向Yにおける中央付近に設けられている。一方、リザーバー36内のインクを各ノズル25に向けて供給する流出孔として機能する複数の連通孔38は、幅方向Yに沿って並ぶように配置されている。
【0103】
また、複数のノズル25のノズル開口25aは、一平面としてのノズル形成面24a上に並ぶように配置されている。なお、図15〜図23においては、簡略化のため、それぞれノズル列Nを構成するノズル25及び連通孔38の数を省略して図示している。
【0104】
密着キャップ102の当接面104aは、幅方向Yにおける中央が盛り上がった凸状の曲面となっている。そのため、密着キャップ102は、幅方向Yに並ぶ複数のノズル25のうち、中央付近に位置する一部のノズル開口25aを閉塞したときに、該ノズル25以外、すなわち両端付近のノズル25から離間した状態となる。
【0105】
次に、密着キャップ102による密着キャッピングについて説明する。
プリンター11において印刷が終了すると、ノズル開口25aからのインク溶媒の蒸発を抑制するために、密着キャップ102でノズル25のノズル開口25aを閉塞する密着キャッピングが行われる。
【0106】
ここで、キャッピング装置41に設けられた有底四角箱状のキャップ43は、ノズル開口25aを囲むようにノズル形成面24aに当接することで、ノズル開口25aの外側に吸引のための空間域Rを囲み形成する。そのため、ノズル25内に形成される液面とキャップ43との接触が避けられるという利点がある。一方、空間域R内に空気が存在したり、排出チューブ48からの透過やその下端側の開口を通じて気体が出入りしたりする分、ノズル25内からインク溶媒が蒸発し、インクの増粘を招く可能性がある。
【0107】
これに対して、密着キャップ102は、ノズル開口25aを閉塞するように流体噴射ヘッド24のノズル開口部に当接するので、ノズル25内からのインク溶媒の蒸発が抑制される。なお、密着キャップ102は、キャップ43とともに備えられるようにしてもよいし、吸引クリーニングを行わない場合には、キャップ43に代えて備えられるようにしてもよい。
【0108】
密着キャッピングは、流体噴射ヘッド24に向かって、密着キャップ102を上昇移動させることで行われる。具体的には、基台部106が上方に移動されることで、密着キャップ102は、当接面104aがノズル形成面24aと離間した位置から、図16に示すように、当接面104aが幅方向Yに並ぶ全てのノズル開口25aを閉塞する位置まで上昇移動する。
【0109】
なお、密着キャップ102の移動完了後、ゴム部材104は、弾性変形して当接面104aがノズル開口部を含むノズル形成面24aに密着するとともに、収縮変形したスポンジ部材105の復元力によって付勢された状態となる。これにより、ノズル25はノズル開口25aが閉塞されて略密閉状態となる。
【0110】
また、プリンター11においては、密着キャップ102による密着キャッピングを行う前に、圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングを行う。これにより、密着キャッピングを解除した後に、気泡の混入がない状態で印刷を開始することができる。
【0111】
ただし、圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさが異なると、各ノズル25内への圧力の伝わり方がばらついてしまう。例えば、分岐流路31、リザーバー36及び各連通孔38の位置関係から、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の長さは、分岐流路31から連通孔38までの距離に応じて異なる。
【0112】
すなわち、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさは、分岐流路31から連通孔38までの距離に応じて変化することになる。そのため、幅方向Yにおいて、分岐流路31からの距離が短い連通孔38を通じてインクが供給される中央付近のノズル25に比べて、分岐流路31からの距離が長い連通孔38を通じてインクが供給される両端付近のノズル25は、流路の圧力損失が大きく、圧力変動の影響が及び難い。
【0113】
そこで、本実施形態では、圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う場合に、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、ノズル開口25aを閉塞する。すなわち、圧力損失が相対的に小さい流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞するように、密着キャップ102を流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aに当接させる。
【0114】
具体的には、まず、閉弁工程として開閉弁101を閉弁状態にする。そして、第1クリーニング工程として、密着キャップ102を流体噴射ヘッド24から離間させた状態で、圧力付与機構29による加圧及び減圧を繰り返し行う。
【0115】
次に、閉塞工程として、密着キャップ102を上昇移動させる。これにより、幅方向Yに延びるノズル列Nを構成する複数のノズル25のノズル開口25aは、中央側から両端側に向けて、順次閉塞されていく。すなわち、密着キャップ102は、当接面104aが凸状の曲面からなるので、上昇移動に伴って、分岐流路31からの距離が短い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞した後に、分岐流路31からの距離が長い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞する。
【0116】
その結果、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の長さに応じて、該長さが相対的に短い流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aから優先的に閉塞される態様となる。そして、密着キャップ102によってノズル開口25aが閉塞されたノズル25内では、インクの流動が抑制されるので、圧力付与機構29による加圧及び減圧が行われても、液面の位置変化が抑制される。
【0117】
また、密着キャップ102が中央付近のノズル開口25aを閉塞した後には、第2クリーニング工程として、ノズル開口25aが閉塞されたノズル25以外のノズル25を対象として圧力付与機構29が加圧及び減圧を繰り返し行う。すなわち、密着キャップ102が中央付近のノズル開口25aを閉塞する前及び閉塞した後に、圧力付与機構29による加圧及び減圧を行う。
【0118】
ここで、圧力付与機構29による加圧及び減圧は、圧力室75内の一定量のインクを出し入れすることで行われるため、一部のノズル開口25aが閉塞されることで、ノズル開口25aが閉塞されていないノズル25内を流動するインクの量が増加する。そのため、第2クリーニング工程では、第1クリーニング工程でインクが流動しにくかったノズル25に対して、加圧時に供給されるインクの割合を増やすことで圧力を増し、効果的に気泡を排出することができるようになっている。
【0119】
なお、第1クリーニング工程と第2クリーニング工程とは、効果を説明する便宜上、密着キャップ102の移動開始から移動完了までの間を任意の途中時点で区切ったものなので、必ずしも移動を2段階に分けて行う必要はない。すなわち、密着キャップ102を3回以上の複数段階に分けて断続的に移動させてもよいし、一定速度で連続的に移動させてもよい。
【0120】
ただし、ノズル25内のインクと密着キャップ102との接触を抑制するために、圧力付与機構29が減圧を行って液面がノズル25内に引き込まれたタイミングで、密着キャップ102をノズル開口部に当接させるのが好ましい。そして、密着キャップ102が上昇移動を終了し、密着キャップ102が全てのノズル開口25aを閉塞すると、密着キャッピングが完了する。
【0121】
なお、密着キャッピングに際して圧力付与機構29による加圧及び減圧を行う場合に限らず、インク非供給クリーニングを効率的に行うために密着キャップ102を使用してもよい。この場合には、第2クリーニング工程の後に密着キャップ102を下降移動させて、ノズル開口25aの閉塞を解除すればよい。
【0122】
また、図17に示す第1変形例のように、分岐流路31がリザーバー36の幅方向Yにおける一端側(図17では左端側)に設けられている場合には、分岐流路31から連通孔38に至る流路の長さは、一端側ほど短く、他端側(図17では右端側)ほど長くなる。この場合には、一端側から他端側に向けて斜め下に傾斜する当接面104aを有する密着キャップ102Aを備えればよい。これにより、密着キャップ102Aの当接面104aは、上昇移動の過程で、一端側のノズル開口25aを閉塞したときに、他端側のノズル開口25aから離間した状態となる。
【0123】
さらに、図18に示す第2変形例のように、分岐流路31がリザーバー36の幅方向Yにおける両端側に設けられている場合には、分岐流路31から連通孔38に至る流路の長さは、両端側ほど短く、中央付近ほど長くなる。この場合には、両端側から中央付近に向けて斜め下に傾斜する凹状の曲面からなる当接面104aを有する密着キャップ102Bを備えればよい。これにより、密着キャップ102Bの当接面104aは、両端側のノズル開口25aを閉塞したときに、中央付近のノズル開口25aから離間した状態となる。
【0124】
以上説明した実施形態によれば、上記(1)〜(6)と同様の作用効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(8)圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う場合に、密着キャップ102が、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、圧力損失が相対的に小さい流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞するように流体噴射ヘッド24に当接する。そのため、流路の圧力損失が小さく、圧力が付与され易いノズル25のノズル開口25aを閉塞した後に加圧及び減圧をすることで、ノズル開口25aが閉塞されていないノズル25内に集中的に圧力を付与することができる。これにより、圧力損失が大きく、圧力が付与され難いノズル25からも、効率よく気泡を排出させることができる。したがって、複数のノズル25内から効率よく気泡を排出させることができる。
【0125】
(9)密着キャップ102が、圧力付与位置M2からの流路の長さが相対的に短い流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aから優先的に閉塞することで、相対的に長い流路を通じてインクが供給されるノズル25内に集中的に圧力を付与することができる。また、閉塞するタイミングが異なる各ノズル開口25aを同じ密着キャップ102で閉塞することができるので、複数の密着キャップ102を備える必要がない。そして、密着キャップ102が全てのノズル開口25aを閉塞することで、ノズル25内からのインク溶媒の蒸発を抑制することができる。
【0126】
(10)リザーバー36は一方向に沿って延びるように設けられるとともに、連通孔38は一方向に沿って並ぶように配置されるため、分岐流路31から連通孔38に至る圧力損失は、分岐流路31から連通孔38までの距離に応じて異なる。そのため、密着キャップ102がノズル開口25aを閉塞する前に圧力付与機構29が加圧及び減圧を行うと、分岐流路31からの距離が短い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25から優先的に気泡が排出される。そして、密着キャップ102が分岐流路31からの距離が短い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞した後に圧力付与機構29が加圧及び減圧を行うと、分岐流路31からの距離が長い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25内に集中的に圧力が付与される。したがって、圧力が付与され難いノズル25からも、効率よく気泡を排出することができる。
【0127】
(11)密着キャップ102はノズル形成面24aと交差する上下方向に沿って移動可能であるので、ノズル形成面24aに近接する上方向に移動することでノズル開口25aを閉塞する一方、ノズル形成面24aから離間する下方向に移動することで閉塞を解除することができる。
【0128】
(12)密着キャップ102は、複数のノズル25のうち一部のノズル開口25aを閉塞したときに、当該一部のノズル25以外のノズル25から離間した状態となる当接面104aを有するので、移動の過程で一部のノズル開口25aを選択的に閉塞することができる。
【0129】
(13)第1クリーニング工程においては、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路の圧力損失が小さく、圧力が付与されやすいノズル25から優先的に気泡が排出される。そして、閉塞工程においては、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞する。そのため、第2クリーニング工程においては、流路の圧力損失が大きく、第1クリーニング工程で圧力が付与され難かったノズル25内に集中的に圧力を付与して、効率よく気泡を排出することができる。したがって、複数のノズル25内から効率よく気泡を排出させることができる。
【0130】
(14)圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う際に、圧力付与位置M2の上流側に位置する開閉弁101が閉弁状態となることで、加圧及び減圧の影響が開閉弁101よりも下流側のみに及ぶようにすることができる。
【0131】
(15)中央が盛り上がった凸状の曲面からなる当接面104aを有する密着キャップ102を上昇移動させることで、複雑な制御を行うことなく、ノズル列Nの中央側から両端側に向けて、順次ノズル開口25aを閉塞していくことができる。
【0132】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図19〜図23に基づいて説明する。
第4実施形態のプリンター11は、第3実施形態とメンテナンス装置103の構成の一部が異なっている。したがって、以下の説明においては、第3実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第3実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0133】
図19に示すように、本実施形態のメンテナンス装置103は、密着キャップ102及びその昇降機構に代えて、略平板状の密着キャップ107及び該密着キャップ107を移動させるための移動機構(図示略)を備えている。密着キャップ107は、該移動機構によって上下方向及び搬送方向Xに沿って移動されるようになっている。
【0134】
密着キャップ107は、ノズル開口25aを閉塞するための当接部108と、当接部108と隣接する位置に設けられた開口部109とを有している。なお、開口部109は、同色のインクを噴射するノズル列N毎に設けられている。
【0135】
図20に示すように、密着キャップ107には、幅方向Yに並ぶように配置された当接部108及び開口部109からなる第1領域としての領域D1が設けられている。また、密着キャップ107には、領域D1と搬送方向Xにおける両側に隣接する位置に配置された開口部109のみからなる第2領域としての領域D2及び当接部108のみからなる第3領域としての領域D3が設けられている。なお、図19、図21及び図22では、図20に二点鎖線で示す領域D1〜D3の境界線の図示を省略している。また、領域D1〜D3は互いに離間していてもよいし、その並び順を変更してもよい。
【0136】
領域D1において、当接部108は幅方向Yにおける中央付近に設けられている一方、開口部109は幅方向Yにおける両端付近に設けられている。そして、領域D1と領域D2の開口部109は一体的に形成されているとともに、領域D1と領域D3の当接部108は一体的に形成されている。なお、領域D1において、中央付近の当接部108と両端付近の開口部109とがそれぞれカバーするノズル25の数は、任意に変更することができる。
【0137】
密着キャップ107は、図20に示すように、ノズル列Nの下方に領域D2が配置された状態でノズル形成面24aに当接することで、ノズル列Nを構成する全ノズル25を大気に連通させる。また、密着キャップ107は、図21に示すように、ノズル列Nの下方に領域D3が配置された状態でノズル形成面24aに当接することで、全ノズル開口25aを閉塞する。なお、図20〜図22においては、開口部109を通じて大気に連通されたノズル25(ノズル開口25a)を黒丸で図示する一方、当接部108によって閉塞されたノズル開口25a(ノズル25)を白丸で図示している。
【0138】
密着キャップ107は、図22に示すように、ノズル列Nの下方に領域D1が配置された状態でノズル形成面24aに当接することで、幅方向Yにおける中央付近のノズル開口25aを閉塞する一方、両端付近に位置するノズル25を大気に連通させる。このとき、領域D1の当接部108は、分岐流路31からの距離が短い連通孔38を通じてインクが供給されるノズル25、すなわち圧力損失が相対的に小さい流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞する。
【0139】
また、搬送方向Xにおける開口部109の両側には領域D3が配置されている。これにより、ノズル25が領域D1又は領域D2の開口部109を通じて大気に連通された状態から、密着キャップ107を左右何れの方向に移動させても、速やかに全てのノズル開口25aを閉塞することができるようになっている。
【0140】
そして、密着キャップ107による密着キャッピングの際には、閉弁工程として開閉弁101を閉弁状態とした後、図20に示すように、ノズル列Nの下方に領域D2が配置されるように、密着キャップ107をノズル形成面24aに当接させる。続いて、第1クリーニング工程として、圧力付与機構29による加圧及び減圧を繰り返し行う。
【0141】
次に、閉塞工程として、密着キャップ107をノズル形成面24aに摺接させつつ左方向にスライド移動させることで、図22に示すようにノズル列Nの下方に領域D1を配置する。これにより、圧力付与位置M2から各ノズル25に至る流路毎の長さに応じて、該長さが相対的に短い流路を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aが領域D1の当接部108によって閉塞される。
【0142】
また、閉塞工程の後に、第2クリーニング工程として、ノズル開口25aが閉塞されたノズル25以外のノズル25を対象として圧力付与機構29が加圧及び減圧を行う。これにより、ノズル開口25aが閉塞されていない両端付近のノズル25に圧力が集中的に付与される。その後、密着キャップ107をさらに左方向にスライド移動させて、図21に示すようにノズル列Nの下方に領域D3を配置する。これにより、全てのノズル25のノズル開口25aが閉塞され、密着キャッピングが完了する。
【0143】
なお、本実施形態において、インク非供給クリーニングを効率的に行うために密着キャップ107を使用する場合には、第2クリーニング工程の後、密着キャップ107を下方向又は右方向に移動させて、ノズル開口25aの閉塞を解除すればよい。
【0144】
また、例えば図23に示す変形例のように、領域D1における当接部108及び開口部109の形状が異なる密着キャップ107Aを採用してもよい。すなわち、領域D1において、当接部108が幅方向Yにおける両端側から中央に向けて、左方側に突設するように傾斜する境界線で開口部109と区画されるようにする。この構成によれば、密着キャップ107Aを左方向に移動させることで、複雑な制御を行うことなく、中央側から両端側に向けて、順次ノズル開口25aを閉塞していくことができる。
【0145】
以上説明した実施形態によれば、上記(1)〜(6),(8)〜(11),(13),(14)と同様の作用効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(16)密着キャップ102の領域D1をノズル列Nに対応する位置に配置することで、当接部108と対応する位置にあるノズル開口25aのみを閉塞することができる。また、密着キャップ102の領域D2をノズル列Nに対応する位置に配置することで、全てのノズル開口25aの閉塞を解除することができる。さらに、密着キャップ102の領域D3をノズル列Nに対応する位置に配置することで、全てのノズル開口25aを閉塞することができる。すなわち、密着キャップ102の搬送方向Xに沿う移動に伴って閉塞するノズル開口25aの数を変化させることで、一部のノズル開口25aを選択的に閉塞することができる。
【0146】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・密着キャップ102は、キャップ43の開口を覆うように、シール部材46に代えてキャップ43の上端側に固定されるようにしてもよい。この場合には、密着キャップ102専用の移動機構を備える必要がないために構成を簡素化することができるし、ワイピング装置42によるワイピングを妨げることもない。
【0147】
なお、密着キャップ102がキャップ43の上端側に固定されている場合には、キャップ43に空間域Rを大気に連通させるための大気開放弁を備え、この大気開放弁を開弁状態としておく。これにより、ノズル25の下方に開口部109が配置されるように密着キャップ102がノズル形成面24aに当接したときに、該ノズル25を大気に連通させることができる。
【0148】
・流路の圧力損失は、リザーバー36の形状に限らず、流路全体を対象として決定してもよい。例えば、共通インク室30から延びる分岐流路31の長さが異なる場合には、閉塞工程において、短い方の分岐流路31を通じてインクが供給されるノズル25のノズル開口25aを閉塞すればよい。
【0149】
・開閉弁101を備えなくてもよい。
・幅方向Yに並ぶ複数のノズル25に対して複数の当接部材を設け、各当接部材が異なるタイミングでノズル開口25aを閉塞するようにしてもよい。
【0150】
・一部のノズル25のノズル開口25aを閉塞して圧力付与機構29による加圧及び減圧を行った後に、ノズル開口25aの閉塞を解除して全ノズル25を対象として圧力付与機構29による加圧及び減圧を行ってもよい。あるいは、第1クリーニング工程を省略して、一部のノズル25のみを対象として圧力付与機構29による加圧及び減圧を行ってもよい。
【0151】
・ノズル25は、ノズルプレート35に貫通形成されるものに限らず、流体噴射ヘッド24から突設される円筒状の細い管によって形成されてもよい。
・流体噴射ヘッド24やノズル25の数、ノズル列Nの列数などは任意に設定することができる。
【0152】
・インクカートリッジ26は着脱式でないインクタンクを採用してもよい。
・流体噴射ヘッド24(ラインヘッド13)が移動可能な構成である場合には、当接部材(密着キャップ)に対して流体噴射ヘッド24が移動することで、閉塞工程や密着キャッピングを実行するようにしてもよい。すなわち、当接部材と流体噴射ヘッド24とが相対移動可能な構成であればよい。
【0153】
・キャッピング装置41及びワイピング装置42を備えなくてもよい。
・キャッピング装置41及びワイピング装置42の構成は、任意に変更することができる。
【0154】
・長尺の流体噴射ヘッドを備えるフルラインタイプのラインヘッド式プリンターや、ラテラル式プリンター、あるいはシリアル式プリンターとして実現してもよい。
・上記各実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化したが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0155】
11,11A…流体噴射装置としてのプリンター、24…流体噴射ヘッド、24a…一平面としてのノズル形成面、25…ノズル、25a…ノズル開口、27…流体供給流路を構成するインク供給チューブ、29,29A…圧力付与機構、31…流入孔としての分岐流路、36…貯留部としてのリザーバー、38…流出孔としての連通孔、102,102,102,107,107A…当接部材としての密着キャップ、103…メンテナンス装置、104a…当接面、108…当接部、109…開口部、D1…第1領域としての領域、D2…第2領域としての領域、D3…第3領域としての領域、M2…圧力付与位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドと、該流体噴射ヘッド側となる下流側に向けて前記流体を供給する流体供給流路とを有する流体噴射装置のメンテナンス装置であって、
前記流体噴射ヘッドよりも上流側の圧力付与位置で、該流体供給流路内の前記流体に対して加圧を行うことで前記ノズルから前記流体を膨出させるとともに、該加圧に伴い前記ノズルから前記流体が膨出した状態において減圧を行う圧力付与機構と、
該圧力付与機構が前記加圧及び前記減圧を行う場合に、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口を閉塞するように前記流体噴射ヘッドに当接する当接部材と、を備えることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記当接部材は、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の長さに応じて、該長さが相対的に短い流路を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口から優先的に閉塞することを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記流体供給流路には、前記圧力付与位置の下流側において前記流体を一時貯留するために一方向に沿って延びる貯留部と、該貯留部内に前記流体を流入させるための流入孔と、前記貯留部内の前記流体を前記各ノズルに向けて供給するために前記一方向に沿って並ぶように配置された複数の流出孔とが設けられ、
前記圧力付与機構は、前記当接部材が前記流入孔からの距離が短い前記流出孔を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口を閉塞する前及び閉塞した後に、前記加圧及び前記減圧を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
複数の前記ノズルのノズル開口は一平面上に並ぶように配置され、
前記当接部材は、前記一平面と交差する方向に沿って移動可能であるとともに、複数の前記ノズルのうち一部のノズル開口を閉塞したときに、当該一部のノズル以外のノズルから離間した状態となる当接面を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
前記流体噴射ヘッドには、複数の前記ノズルからなるノズル列が設けられるとともに、複数の前記ノズルのノズル開口は一平面上に並ぶように配置され、
前記当接部材は、ノズル列方向と交差する移動方向に沿って前記一平面に対してスライド移動可能であるとともに、前記ノズル開口を閉塞するための当接部及び該当接部と隣接する位置に設けられた開口部を有し、
前記当接部材には、前記ノズル列方向に並ぶように配置された前記当接部及び前記開口部からなる第1領域と、該第1領域と前記移動方向に隣接する位置に配置された前記開口部からなる第2領域と、前記第1領域又は前記第2領域と前記移動方向に隣接する位置に配置された前記当接部からなる第3領域とが設けられることを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項6】
流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドと、
該流体噴射ヘッド側となる下流側に向けて前記流体を供給する流体供給流路と、
請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置と、を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項7】
流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドに向けて前記流体を供給する流体供給流路内の前記流体に対して、前記流体噴射ヘッドよりも上流側の圧力付与位置において加圧を行うことで前記ノズルから前記流体を膨出させるとともに、該加圧に伴い前記ノズルから前記流体が膨出した状態において減圧を行う第1クリーニング工程と、
該第1クリーニング工程の後に、複数の前記ノズルのうち、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じて前記流体が供給される一部のノズルのノズル開口を閉塞する閉塞工程と、
該閉塞工程の後に、前記一部のノズル以外のノズルを対象として前記加圧及び前記減圧を行う第2クリーニング工程と、を備えることを特徴とするメンテナンス方法。
【請求項1】
流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドと、該流体噴射ヘッド側となる下流側に向けて前記流体を供給する流体供給流路とを有する流体噴射装置のメンテナンス装置であって、
前記流体噴射ヘッドよりも上流側の圧力付与位置で、該流体供給流路内の前記流体に対して加圧を行うことで前記ノズルから前記流体を膨出させるとともに、該加圧に伴い前記ノズルから前記流体が膨出した状態において減圧を行う圧力付与機構と、
該圧力付与機構が前記加圧及び前記減圧を行う場合に、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口を閉塞するように前記流体噴射ヘッドに当接する当接部材と、を備えることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記当接部材は、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の長さに応じて、該長さが相対的に短い流路を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口から優先的に閉塞することを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記流体供給流路には、前記圧力付与位置の下流側において前記流体を一時貯留するために一方向に沿って延びる貯留部と、該貯留部内に前記流体を流入させるための流入孔と、前記貯留部内の前記流体を前記各ノズルに向けて供給するために前記一方向に沿って並ぶように配置された複数の流出孔とが設けられ、
前記圧力付与機構は、前記当接部材が前記流入孔からの距離が短い前記流出孔を通じて前記流体が供給される前記ノズルのノズル開口を閉塞する前及び閉塞した後に、前記加圧及び前記減圧を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
複数の前記ノズルのノズル開口は一平面上に並ぶように配置され、
前記当接部材は、前記一平面と交差する方向に沿って移動可能であるとともに、複数の前記ノズルのうち一部のノズル開口を閉塞したときに、当該一部のノズル以外のノズルから離間した状態となる当接面を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
前記流体噴射ヘッドには、複数の前記ノズルからなるノズル列が設けられるとともに、複数の前記ノズルのノズル開口は一平面上に並ぶように配置され、
前記当接部材は、ノズル列方向と交差する移動方向に沿って前記一平面に対してスライド移動可能であるとともに、前記ノズル開口を閉塞するための当接部及び該当接部と隣接する位置に設けられた開口部を有し、
前記当接部材には、前記ノズル列方向に並ぶように配置された前記当接部及び前記開口部からなる第1領域と、該第1領域と前記移動方向に隣接する位置に配置された前記開口部からなる第2領域と、前記第1領域又は前記第2領域と前記移動方向に隣接する位置に配置された前記当接部からなる第3領域とが設けられることを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項6】
流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドと、
該流体噴射ヘッド側となる下流側に向けて前記流体を供給する流体供給流路と、
請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置と、を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項7】
流体を噴射するノズルが複数設けられた流体噴射ヘッドに向けて前記流体を供給する流体供給流路内の前記流体に対して、前記流体噴射ヘッドよりも上流側の圧力付与位置において加圧を行うことで前記ノズルから前記流体を膨出させるとともに、該加圧に伴い前記ノズルから前記流体が膨出した状態において減圧を行う第1クリーニング工程と、
該第1クリーニング工程の後に、複数の前記ノズルのうち、前記圧力付与位置から前記各ノズルに至る流路毎の圧力損失の大きさに応じて、該圧力損失が相対的に小さい流路を通じて前記流体が供給される一部のノズルのノズル開口を閉塞する閉塞工程と、
該閉塞工程の後に、前記一部のノズル以外のノズルを対象として前記加圧及び前記減圧を行う第2クリーニング工程と、を備えることを特徴とするメンテナンス方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−245682(P2011−245682A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119280(P2010−119280)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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