説明

メンテナンス装置及び液体噴射装置

【課題】ノズルからの液体の漏出を抑制してノズル開口を閉塞することができるメンテナンス装置及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクを噴射するノズル開口34が形成されたノズル形成面19aにノズル開口34を囲うように先端開口縁49aが当接してノズル形成面19aとの間に閉塞空間を形成可能な有底箱状のキャップ45と、キャップ45をノズル形成面19aに対して相対移動させるカム機構46とを備え、キャップ45は、その内部にノズル形成面19aに当接してノズル開口34を閉塞可能な閉塞部材52を有すると共に、先端開口縁49aをノズル形成面19aに当接させた状態で閉塞部材52がノズル形成面19aに接近した場合には閉塞空間の容積が減少するように変形する構成とされ、カム機構46は、キャップ45の先端開口縁49aがノズル形成面19aに当接した後に閉塞部材52がノズル形成面19aに接近して当接するようにさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス装置及び該メンテナンス装置を備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体をターゲットに対して噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式プリンターが広く知られている。このプリンターは、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)に供給されるインク(液体)を記録ヘッドに形成されたノズルから噴射することによりターゲットとしての記録媒体に印刷(画像形成)を施すようになっている。
【0003】
なお、このようなプリンターでは、ノズルからインクが蒸発してインクの粘度が上昇し、印刷品質を低下させてしまうという問題があった。そこで、こうしたプリンターにおいて、近時は、例えば特許文献1に記載されるように、ノズルが形成されたノズル形成面に押さえ部材(閉塞部)を当接させ、その押さえ部材でノズル開口を閉塞することにより、インクの蒸発を抑制するものが知られている。
【0004】
すなわち、特許文献1のプリンターでは、弾性材からなる正断面形状が逆台形状のキャップ内に、ノズル形成面に対して密着可能に形成された押さえ部材を、キャップの周壁部よりも低い高さとなるように設けている。そして、キャップにおける先広がりした周壁部の先端縁をノズル形成面に当接させると共に、その周壁部を更に外側に広げるようにキャップを変形させることによって、キャップ内の押さえ部材をノズル形成面に当接させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−77433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、メニスカスがノズル開口付近に位置した状態で押さえ部材がノズル形成面に当接すると、メニスカスと押さえ部材とが接触し、メニスカスを破壊してノズルからインクが漏れ出す虞がある。
【0007】
すなわち、特許文献1のプリンターのように、ノズル形成面に押さえ部材が当接する際に周壁部が外側へ広がるキャップでは、ノズル形成面にキャップの周壁部を当接させた状態からキャップが変形して押さえ部材をノズル形成面に当接させる際に、キャップ内の圧力はキャップの内容積が減少しないため上昇しない。したがって、メニスカスがノズル開口付近に位置した状態で押さえ部材がノズル開口を閉塞することになり、メニスカスを破壊してインクを漏出させてしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノズルからの液体の漏出を抑制してノズル開口を閉塞することができるメンテナンス装置及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のメンテナンス装置は、液体を噴射するノズル開口が形成されたノズル形成面に前記ノズル開口を囲うように先端開口縁が当接して前記ノズル形成面との間に閉塞空間を形成可能な有底箱状のキャップと、該キャップを前記ノズル形成面に対して相対移動させる移動手段とを備え、前記キャップは、その内部に前記ノズル形成面に当接して前記ノズル開口を閉塞可能な閉塞部を有すると共に、前記先端開口縁を前記ノズル形成面に当接させた状態で前記閉塞部が前記ノズル形成面に接近した場合には前記閉塞空間の容積が減少するように変形する構成とされ、前記移動手段は、前記キャップの前記先端開口縁が前記ノズル形成面に当接した後に前記閉塞部が前記ノズル形成面に接近して当接するように、前記キャップを前記ノズル形成面に対して相対移動させる。
【0010】
この構成によれば、ノズル形成面に対してキャップの先端開口縁が当接した後に閉塞部がノズル形成面に接近するように相対移動すると、キャップはノズル形成面との間に形成した閉塞空間の容積が減少するように変形する。すると、閉塞空間内の圧力が高まり、ノズル開口付近に位置する液体のメニスカスは、ノズル開口側から押されるように上昇する。そのため、キャップの変形に伴ってノズル形成面に接近する閉塞部がノズル形成面に当接する際には、メニスカスがノズル開口から離れている。したがって、閉塞部とメニスカスとの接触を抑制し、ノズルからの液体の漏出を抑制してノズル開口を閉塞することができる。
【0011】
本発明のメンテナンス装置において、前記キャップは、前記閉塞部が設けられた底壁部と、前記閉塞部を囲うように形成された周壁部とを有し、前記底壁部及び前記周壁部の少なくとも一方が前記閉塞空間の容積が減少するように変形する構成とされている。
【0012】
この構成によれば、キャップの先端開口縁がノズル形成面に当接すると共に、閉塞部がノズル形成面に接近するように、移動手段がキャップをノズル形成面に対して相対移動させると、キャップは底壁部及び周壁部の少なくとも一方が変形する。すなわち、底壁部及び周壁部の少なくとも一方が変形することにより、閉塞空間の容積が減少して、閉塞空間内の圧力を上昇させることができる。したがって、キャップの設計の自由度が向上する。
【0013】
本発明のメンテナンス装置において、前記底壁部及び前記周壁部の少なくとも一方は弾性を有する。
この構成によれば、キャップをノズル形成面から離間させる場合には、弾性変形した壁部が元の形状に戻る。したがって、変形した壁部を元の形状に戻すための手段を設ける必要がなく、メンテナンス装置を簡素化することができる。
【0014】
本発明の液体噴射装置は、前記ノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、液体供給源側となる上流側から前記液体噴射ヘッド側となる下流側へ液体を供給する液体供給流路と、上記構成のメンテナンス装置とを備える。
【0015】
この構成によれば、上記メンテナンス装置に係る発明と同様の作用効果を奏し得る。
本発明の液体噴射装置は、前記液体供給流路において、上流側から下流側への液体の通過を許容すると共に、下流側から上流側への液体の通過を制限する一方向弁をさらに備える。
【0016】
この構成によれば、閉塞空間の加圧力を維持することができる。すなわち、下流側から上流側への液体の通過が一方向弁により抑制されるため、上昇したメニスカスと閉塞部との間に形成された空気層は加圧された状態となる。そして、空気層への液体の蒸発量は、空気層における飽和蒸気量に関係し、圧力が高いほど空気層へ蒸発する液体の量が減少する。したがって、一方向弁という簡単な構成の具備により、空気層への液体の蒸発を抑制し、液体の増粘を抑制することができる。
【0017】
本発明の液体噴射装置は、前記液体供給流路において、液体の通過を制限可能な電磁弁と、該電磁弁と前記移動手段とを制御する制御手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記移動手段を駆動した状態で前記電磁弁を閉弁する。
【0018】
一般に、上流側から供給された液体は、毛細管力によってノズル開口付近まで充填される。その点、この構成によれば、電磁弁を制御することによりノズル開口付近に位置する液体のメニスカスの移動量を変更すると共に、上昇したメニスカスの位置を維持させることができる。すなわち、例えばキャップの移動途中で電磁弁を閉弁させた場合には、キャップの移動完了後に電磁弁を閉弁させた場合と比べてノズル開口に近い位置にメニスカスを維持させることができる。したがって、メニスカスと閉塞部材間の空気層の圧力を高めることができる。さらに、上流側から下流側への液体の移動も制限されるため、メニスカスの下降を抑制することができる。したがって、閉塞部をノズル形成面に当接させた際に、液体と閉塞部との接触をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態におけるプリンターの模式図。
【図2】待機位置に位置するメンテナンス装置の模式図。
【図3】クリーニング位置に位置するキャップの模式図。
【図4】当接位置に位置するキャップの模式図。
【図5】第2の実施形態におけるキャップの模式図。
【図6】当接位置に位置するキャップの模式図。
【図7】第3の実施形態におけるキャップの模式図。
【図8】当接位置に位置するキャップの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化した第1の実施形態を図1〜図4に従って説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、「上下方向」をいう場合は、重力方向における上下方向であって、図1において紙面に直交する方向であると共に、図2に矢印で示した方向を示すものとする。
【0021】
図1に示すように、流体噴射装置としてのプリンター11は、平面視矩形状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内には、プラテン13が左右方向に延びるように設けられていると共に、該プラテン13上には、図示しない紙送り機構によりターゲットとしての用紙Pが給送されるようになっている。また、フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向(左右方向)に沿って、ガイド軸14が架設されている。
【0022】
このガイド軸14には、キャリッジ15が、該ガイド軸14の軸線方向(左右方向)に往復移動可能に支持されている。さらに、キャリッジ15は、フレーム12内の後面に設けられた一対のプーリー16間に張設された無端状のタイミングベルト17を介して、フレーム12の背面に設けられたキャリッジモーター18に駆動連結されている。そして、キャリッジ15は、キャリッジモーター18の駆動により、ガイド軸14に沿って往復移動されるようになっている。
【0023】
キャリッジ15におけるプラテン13と対向する面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が搭載されている。キャリッジ15上には、液体としてのインクを一時貯留すると共に該インクの圧力を調整して記録ヘッド19に供給するバルブユニット20が、プリンター11に使用されるインクの色(種類)に対応して複数個(本実施形態では4個)備えられている。
【0024】
そして、図1におけるフレーム12内の右端部寄り位置であって、キャリッジ15のホームポジション領域には、記録ヘッド19のクリーニング等を行うためのメンテナンス装置としてのメンテナンスユニット21が配設されている。
【0025】
さらに、図1におけるホームポジション領域よりも右側となるフレーム12の右端部には、カートリッジホルダー23が設けられている。このカートリッジホルダー23には、互いに異なる色のインクを収容した複数個(本実施形態では4個)の液体供給源としてのインクカートリッジ24が着脱可能に装着されるようになっている。
【0026】
そして、各インクカートリッジ24がカートリッジホルダー23にそれぞれ装着されている状態では、各インクカートリッジ24と各バルブユニット20とが、インク供給チューブ25を介してそれぞれ接続されるようになっている。そして、印刷などによる記録ヘッド19からのインクの消費により、各インクカートリッジ24内のインクが各インク供給チューブ25及び各バルブユニット20を介して記録ヘッド19に供給されるようになっている。したがって、インク供給チューブ25及びバルブユニット20は、インクカートリッジ24側となる上流側から記録ヘッド19側となる下流側へインクを供給する液体供給流路として機能している。
【0027】
また、カートリッジホルダー23の上方には、各インクカートリッジ24に加圧空気を供給するための加圧ポンプ26が載置されている。この加圧ポンプ26には、カートリッジホルダー23に装着可能なインクカートリッジ24と同数(本実施形態では4本)の空気供給チューブ27の上流端が接続されていると共に、各空気供給チューブ27の下流端は、カートリッジホルダー23に接続されている。したがって、各インクカートリッジ24がカートリッジホルダー23にそれぞれ装着されている状態では、各インクカートリッジ24と加圧ポンプ26とが、空気供給チューブ27を介してそれぞれ接続されるようになっている。
【0028】
図2には、ホームポジションに位置する記録ヘッド19を、記録ヘッド19の上方位置に設けられた1つのバルブユニット20及びメンテナンスユニット21と共に図示している。
【0029】
記録ヘッド19には、記録ヘッド19の下面となるノズル形成面19aに多数のノズル30(図2では1つのみ図示)のノズル開口34が前後方向に沿ったノズル列(図示略)を形成するように、前後方向に所定間隔をおいて規則的に形成されている。なお、ノズル列は、インクの種類に応じて複数(本実施形態では4列)形成され、左右方向に所定間隔をおいて形成されている。そして、キャリッジ15の移動に伴って各ノズル30からプラテン13上に給紙された用紙Pに対してインクを噴射することにより、印刷が行われるようになっている。但し、各ノズル30の構成は同じであるため、図2には1つのノズル30を図示している。そして、以下においては、この図2に示す1つのノズル30を例にして説明する。
【0030】
さて、記録ヘッド19は、1つのノズル列を構成する各ノズル30と連通するリザーバ(図示略)と、該リザーバと各ノズル30とを接続するキャビティ31とを備えている。そして、ノズル30は、キャビティ31に接続されて上流側から下流側に向かって徐々に断面積が小さくなるテーパー部32と、該テーパー部32とノズル開口34との間を連結する連結部33とから構成されている。そして、上流側からノズル30にインクが充填されると、ノズル30内であって且つノズル形成面19aに開口したノズル開口34の付近にメニスカスMが形成される。なお、メニスカスMとは、毛細管現象によってインクの中央部がノズル開口34から見て凹面形状をなすように盛り上がってできる曲面のことである。
【0031】
また、各バルブユニット20の構成は同じであるため、図2には1つのバルブユニット20を図示している。そして、以下においては、この図2に示す1つのバルブユニット20を例にして説明する。
【0032】
バルブユニット20には、下流側の減圧に伴って上流側から下流側へのインクの通過を許容する一方向弁36と、インクの通過を許容もしくは遮断可能な電磁弁37とが設けられている。
【0033】
一方向弁36は、電磁弁37よりも上流側に設けられ、インクカートリッジ24から加圧供給されたインクを一次貯留する貯留室38と、貯留室38よりも下流側に位置する圧力室39とを有している。貯留室38と圧力室39は、隔壁部40によって隔てられると共に、その隔壁部40には弁孔40aが貫通形成されている。そして、弁孔40aには、ばね41により閉弁方向に付勢されて隔壁部40に貯留室38側から当接する弁体42が配置され、その弁体42がばね41の付勢力に抗して開弁方向へ移動することにより、貯留室38と圧力室39が連通するようになっている。
【0034】
すなわち、ノズル30からインクが噴射されてインクが消費されると、圧力室39内が減圧され、圧力室39と大気との差圧に基づきフィルム43が圧力室39側へ撓み変形する。そして、この撓み力がばね41の付勢力より大きくなると、弁体42が隔壁部40から離間する開弁位置に移動し、加圧された貯留室38内のインクが圧力室39側へ流入する。そして、圧力室39へインクが流入してその室圧が高まると、ばね41の付勢力が打ち勝って弁体42が再び隔壁部40と当接する閉弁位置に移動することになる。
【0035】
このように、一方向弁36は、弁体42よりも下流側の減圧によって開弁するのに対し、上流側が加圧された場合には、弁体42が閉じる方向に力を受けるため、開弁せずに閉弁状態を維持する。また、下流側が加圧された場合も同様に、フィルム43が圧力室39の容積を増大させる方向へ撓み変形するため、弁体42は、フィルム43から開弁方向への力を受けずに閉弁状態を維持する。さらに、上流側のインクは、加圧ポンプ26によって加圧されているため、弁体42よりも上流側が減圧されることはない。すなわち、一方向弁36は、下流側が減圧されたときにだけ開く弁である。
【0036】
なお、圧力室39の一部は、可撓性材料(例えば合成樹脂やゴム等)よりなるフィルム43により構成されており、例えばフィルム43とともに変位可能な図示しない片持ちの金属片(例えば櫛歯状金属片の一片)を弁体42の当接箇所に配置している。
【0037】
また、メンテナンスユニット21は、有底四角箱状をなしてノズル形成面19aに当接可能なキャップ45と、該キャップ45を昇降させる移動手段としてのカム機構46と、キャップ45内からインクを排出させる排出機構47とを備えている。
【0038】
キャップ45は、四角環状の周壁部49と、周壁部49の下側を閉塞する底壁部50とからなる壁部51を有している。さらに、底壁部50には、ノズル形成面19aと対向すると共に、上下方向において周壁部49よりも高さが低い閉塞部としての閉塞部材52が設けられている。すなわち、閉塞部材52は、キャップ45がノズル形成面19aに当接した際に、該ノズル形成面19aと壁部51とによって囲み形成される閉塞空間53(図3参照)内に位置するように設けられている。
【0039】
さらに、キャップ45は、周壁部49の上端(先端)であるキャップ45における先端開口縁49aがノズル形成面19aに当接した際に、ノズル形成面19aに開口した全てのノズル開口34を囲うように形成されている。また、閉塞部材52は、ノズル形成面19aに当接した際に全てのノズル開口34を閉塞可能に形成されている。ただし、図2では、ノズル30を1つだけ図示しているため、この1つノズル30に対応したキャップ45を図示している。そして、以下においては、この図2に示すキャップ45を例にして説明する。
【0040】
キャップ45の周壁部49と底壁部50は、共に弾性材料(例えばゴム)によって形成されている。そして、周壁部49は、底壁部50と連続した四角環状の下壁部49bと、該下壁部49bと連続した四角環状の上壁部49cとを有する蛇腹形状をしている。すなわち、下壁部49bの左右各壁と上壁部49cの左右各壁との間は谷折り部54aで連結されると共に、下壁部49bの前後各壁と上壁部49cの前後各壁との間は山折り部54bで連結されている。そして、蛇腹形状の周壁部49は、その弾性力により常には図2及び図3に示す形状となるように付勢されている。
【0041】
また、キャップ45は、カム機構46によって下方から支持されている。すなわち、カム機構46は、カム軸56と、該カム軸56と一体回転可能であって底壁部50に当接してキャップ45を支持するカム部材57と、カム軸56を回転させるカムモーター58とを備えている。したがって、カムモーター58が駆動されてカム部材57が回転すると、キャップ45は、上下方向に往復移動し、ノズル形成面19aに対して相対移動する。
【0042】
具体的には、図2に示す待機位置にキャップ45が位置した状態においてカム部材57が回転すると、キャップ45は上昇することになり、その先端開口縁49aがノズル形成面19aに当接するクリーニング位置(図3参照)へ移動する。すなわち、キャップ45は、先端開口縁49aがノズル形成面19aに当接して移動が規制される。そして、カム部材57がさらに回転すると、そのように移動が規制されたキャップ45は内容積が減少する収縮方向へ蛇腹形状が折り畳まれるように変形し、閉塞部材52がノズル形成面19aに当接する当接位置まで底壁部50が移動する(図4参照)。
【0043】
なお、当接位置に位置しているキャップ45は、その周壁部49が蛇腹形状を折り畳まれて収縮しているが、その状態からカム部材57がさらに回転すると、今度は周壁部49が内容積を増加させる伸長方向へ弾性復帰するように変形し、先端開口縁49aとノズル形成面19aとが当接した状態を維持したまま底壁部50がクリーニング位置まで移動する(図3参照)。そして、さらにカム部材57が回転すると、キャップ45は下降して先端開口縁49aとノズル形成面19aとが離間し、待機位置まで移動する(図2参照)。
【0044】
また、排出機構47は、キャップ45の底壁部50に上流端がキャップ45内と連通するように接続された排出チューブ60と、該排出チューブ60の下流端がインクを排出可能に接続された直方体状をなす廃インクタンク61とを備えている。そして、キャップ45と廃インクタンク61との間における排出チューブ60の中間部には、キャップ45側から廃インクタンク61側へ向かってキャップ45内を吸引するためのチューブポンプ62が設けられている。なお、廃インクタンク61内には、該廃インクタンク61内に排出されたインクを吸収して保持する廃インク吸収材63が収容されている。
【0045】
さらに、図2に示すように、プリンター11には、プリンター11の稼働状態を統括制御する制御手段としての制御部65が設けられている。そして、制御部65は、キャリッジモーター18、電磁弁37、カムモーター58、チューブポンプ62を駆動制御してメンテナンス処理を行うようになっている。
【0046】
そこで次に、以上のように構成されたプリンター11における作用について、以下説明する。なお、プリンター11の印刷時には、キャップ45は、図2に示すように待機位置に位置していると共に、電磁弁37は開弁されているものとする。
【0047】
さて、例えばユーザーからクリーニング処理の実行指令を図示しない操作部から受信した場合や、前回のクリーニング処理から所定時間が経ったと判断した場合には、制御部65は、クリーニング処理を実行する。すなわち、まず制御部65は、キャリッジモーター18の駆動を制御してキャリッジ15をホームポジションへ移動させる。その後、制御部65は、カムモーター58を駆動してカム部材57を回転させ、図3に示すようにキャップ45をクリーニング位置へ移動させる。
【0048】
さらに、制御部65は、チューブポンプ62を駆動してキャップ45内の空気を吸引する。すると、キャップ45の閉塞空間内は減圧されるため、ノズル30からインクが排出されると共に、排出されたインクが排出チューブ60を介して廃インクタンク61に排出され、記録ヘッド19がクリーニングされる。その後、制御部65は、カムモーター58を駆動してカム部材57を回転させることにより、キャップ45を待機位置(図2参照)へ移動させる。
【0049】
また、プリンター11の電源がオフされると、制御部65は、キャリッジモーター18の駆動を制御してキャリッジ15をホームポジションへ移動させる。その後、制御部65は、カムモーター58を駆動してカム部材57を回転させ、図4に示すようにキャップ45を当接位置へ移動させると共に、電磁弁37を閉弁し、ノズル30側へのインクの移動を制限する。
【0050】
すなわち、キャップ45は、カム部材57にノズル形成面19aに向けて押圧されることにより上昇し、クリーニング位置(図3参照)まで移動すると先端開口縁49aがノズル形成面19aに当接する。さらに、カム部材57が回転すると、底壁部50が押圧されてノズル形成面19aに接近するため、周壁部49は、下壁部49bと上壁部49cとの間の谷折り部54aが閉塞空間53の内側に向かうと共に山折り部54bが閉塞空間53の外側に向かうように変形して収縮するため、閉塞空間53の容積が減少する。すると、容積が減少する閉塞空間53内の圧力が高まるため、この圧力がノズル30を介して一方向弁36の圧力室39に作用し、フィルム43が大気圧側に撓み変形して圧力室39の容積を増大させる。したがって、ノズル開口34付近に位置したメニスカスMは、図4に示すようにノズル開口34側から押されるようにキャビティ31側へ移動する。なお、このとき閉塞空間53内の圧力は、メニスカスMがノズル開口34から離れ得る圧力(例えば3kPa以上)であることが好ましい。
【0051】
したがって、底壁部50がクリーニング位置(図3参照)から当接位置(図4参照)まで移動し、閉塞部材52がノズル形成面19aに当接してノズル開口34を閉塞した際には、上昇したメニスカスMと閉塞部材52との間に、加圧された空気の空気層66が形成される。
【0052】
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)カム部材57が回転してキャップ45の先端開口縁49aがノズル形成面19aに当接した状態から更にカム部材57が回転すると、キャップ45内の閉塞部材52がノズル形成面19aに接近する。このとき、キャップ45は、ノズル形成面19aとの間に形成した閉塞空間53の容積が減少するように変形する。すると、閉塞空間53内の圧力が高まり、ノズル開口34付近に位置するインクのメニスカスMは、ノズル開口34側から押されるように上昇する。そのため、キャップ45の変形に伴ってノズル形成面19aに接近する閉塞部材52がノズル形成面19aに当接する際には、メニスカスMがノズル開口34から離れている。したがって、閉塞部材52とメニスカスMとの接触を抑制し、ノズル30からのインクの漏出を抑制してノズル開口34を閉塞することができる。
【0053】
(2)カム機構46が底壁部50を押圧してキャップ45をノズル形成面19aに当接させた後、さらにカム機構46のカム部材57が回転すると、キャップ45は、蛇腹形状の周壁部49が底壁部50に設けられた閉塞部材52をノズル形成面19aに接近させることになる収縮方向へ蛇腹形状が折り畳まれるように変形する。すると、閉塞空間53の容積が減少して閉塞空間53内の圧力が上昇するため、簡単な構成でノズル30からのインクの漏出を抑制してノズル開口34を閉塞することができる。したがって、キャップ45の設計の自由度が向上する。
【0054】
(3)キャップ45をノズル形成面19aから離間させる場合には、蛇腹形状を折り畳むように弾性変形した周壁部49が元の形状へ弾性復帰するように戻る。したがって、壁部51の周壁部49を元の形状に戻すための手段を設ける必要なく、メンテナンスユニット21を簡素化することができる。
【0055】
(4)閉塞空間53の加圧力を維持することができる。すなわち、下流側から上流側へのインクの通過が一方向弁36により抑制されるため、上昇したメニスカスMと閉塞部材52との間に形成された空気層66は加圧された状態となる。そして、空気層66へのインクの蒸発量は、空気層66における飽和蒸気量に関係し、圧力が高いほど空気層66へ蒸発するインクの量が減少する。したがって、一方向弁36という簡単な構成の具備により、空気層66へのインクの蒸発を抑制し、インクの増粘を抑制することができる。
【0056】
(5)一般に、上流側から供給されたインクは、毛細管力によってノズル開口34付近まで充填される。その点、電磁弁37を制御することによりノズル開口34付近に位置するインクのメニスカスMの移動量を変更すると共に、上昇したメニスカスMの位置を維持させることができる。すなわち、例えばキャップ45の移動途中で電磁弁37を閉弁させた場合には、キャップ45の移動完了後に電磁弁37を閉弁させた場合と比べてノズル開口34に近い位置にメニスカスMを維持させることができる。したがって、メニスカスMと閉塞部材52間の空気層66の圧力を高めることができる。さらに、上流側から下流側へのインクの移動も制限されるため、メニスカスMの下降を抑制することができる。したがって、閉塞部材52をノズル形成面19aに当接させた際に、インクと閉塞部材52との接触をより抑制することができる。
【0057】
(6)記録ヘッド19に形成されたノズル30は、複数のノズル30がリザーバ(図示略)を介して連通している。そのため、例えば、上流側から減圧してメニスカスMを上昇させる場合には、各ノズル30におけるメニスカスMを均一に引き上げることは困難である。さらに、上流側から減圧した場合には、メニスカスMと閉塞部材52との間に形成される空気層66が減圧された状態となる。そのため、空気層66における飽和蒸気量が増加し、空気層66内の圧力が高まった状態と比べてインクが蒸発して増粘しやすくなってしまう問題がある。その点、ノズル開口34を囲うキャップ45の閉塞空間53の容積を減少させて閉塞空間53の圧力を高めることにより、各ノズル30に同じ加圧力を付与することができる。したがって、各ノズル30におけるメニスカスMのばらつきを抑制すると共に、空気層66の圧力を高めることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図5,図6に従って説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態とはキャップの周壁部の形状を変更した点でのみ構成が相違しており、その他の構成は共通しているため、同様の構成部分については同一符号を付すことにして、その詳細な重複説明を省略する。
【0059】
図5に示すように、キャップ70の四角環状の周壁部71は、第1の実施形態におけるキャップ45の周壁部49を谷折り部54a及び山折り部54bを通る平面で切断した場合の形状、すなわち、第1の実施形態における周壁部49の下壁部49bに相当する形状に形成されている。
【0060】
そして、底壁部72には、上下方向において周壁部71よりも高さが低く、且つノズル形成面19aと対向するように閉塞部としての閉塞部材74が設けられている。すなわち、閉塞部材74は、キャップ70がノズル形成面19aに当接した際に、周壁部71と底壁部72とからなる壁部75と、ノズル形成面19aとによって囲み形成される閉塞空間76内に位置するようになっている。
【0061】
また、キャップ70は、カム部材57に支持されると共に、カム部材57の回転に伴って上下方向に往復移動し、ノズル形成面19aに対して相対移動する。
なお、キャップ70は、先端開口縁71aがノズル形成面19aに当接した際に、ノズル形成面19aに開口した全てのノズル開口34を囲うように形成されている。また、閉塞部材74は、ノズル形成面19aに当接した際に全てのノズル開口34を閉塞可能に形成されている。
【0062】
但し、図5,図6では、ノズル30を1つだけ図示しているため、この1つのノズル30に対応したキャップ70を図示している。そして、以下においては、この図5,図6に示す1つのノズル30及びキャップ70を例にしてプリンター11の電源がオフされた場合の作用について説明する。なお、記録ヘッド19はホームポジションに位置し、さらにキャップ70は、ノズル形成面19aと先端開口縁71aとが離間した待機位置(図示略)に位置しているものとする。
【0063】
まず制御部65は、カムモーター58を駆動してカム部材57を回転させる。すると、図5に示すように、キャップ70は、先端開口縁71aがノズル形成面19aに当接するクリーニング位置へ移動する。
【0064】
そして、カム部材57がさらに回転すると、先端開口縁71aがノズル形成面19aに当接して移動が規制されたキャップ70は四角環状の先端開口縁71aの左右各縁が閉塞空間76の内側に向かうと共に前後各縁が閉塞空間76の外側に向かうように弾性変形して収縮する。そのため、閉塞部材74がノズル形成面19aに当接する当接位置まで底壁部72が移動する(図6参照)。なお、キャップ70は、先端開口縁71aの開口面積が広がってしまうのが抑制された状態で変形する。したがって、キャップ70の高さが減少する分だけ閉塞空間76の容積は減少し、閉塞空間76内の圧力が高まってメニスカスMが上昇する。
【0065】
そのため、図6に示すように、底壁部72が当接位置まで移動し、閉塞部材74がノズル形成面19aに当接してノズル開口34を閉塞した際には、上昇したメニスカスMと閉塞部材74との間に、加圧された空気の空気層66が形成される。
【0066】
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態における(1)〜(6)の効果に加えて、さらに以下のような効果を得ることができる。
(7)周壁部71を高さ方向(上下方向)において低くすることにより、高さ方向においてキャップ70の小型化を図ることができる。
【0067】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図7,図8に従って説明する。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態とはキャップの構成を変更した点でのみ構成が相違しており、その他の構成は共通しているため、同様の構成部分については同一符号を付すことにして、その詳細な重複説明を省略する。
【0068】
図7に示すように、キャップ80の四角環状の周壁部81は、底壁部82と平行な面で切断した場合の断面積が、底壁部82の面積と等しくなるように底壁部82に対して垂直に形成されている。また、底壁部82には、上下方向において周壁部81よりも高さが低く、且つノズル形成面19aと対向するように閉塞部としての閉塞部材84が設けられている。すなわち、閉塞部材84は、キャップ80がノズル形成面19aに当接した際に、周壁部81と底壁部82とからなる壁部85と、ノズル形成面19aとによって囲み形成される閉塞空間86内に位置するようになっている。
【0069】
そして、キャップ80は、カム部材57に支持されると共に、カム部材57の回転に伴って上下方向に往復移動し、ノズル形成面19aに対して相対移動する。
なお、キャップ80は、先端開口縁81aがノズル形成面19aに当接した際に、ノズル形成面19aに開口した全てのノズル開口34を囲うように形成されている。また、閉塞部材84は、ノズル形成面19aに当接した際に全てのノズル開口34を閉塞可能に形成されている。但し、図7,図8では、ノズル30を1つだけ図示しているため、この1つのノズル30に対応したキャップ80を図示している。そして、以下においては、この図7,図8に示す1つのノズル30及びキャップ80を例にして、プリンター11の電源がオフされた場合の作用について説明する。なお、記録ヘッド19はホームポジションに位置し、さらにキャップ80は、ノズル形成面19aと先端開口縁81aとが離間した待機位置(図示略)に位置しているものとする。
【0070】
まず制御部65は、カムモーター58を駆動してカム部材57を回転させる。すると、図7に示すように、キャップ80は、先端開口縁81aがノズル形成面19aに当接するクリーニング位置へ移動する。
【0071】
そして、カム部材57がさらに回転すると、先端開口縁81aがノズル形成面19aに当接して移動が規制されたキャップ80は、底壁部82がノズル形成面19aに接近するように弾性変形する。したがって、閉塞空間86の容積は減少し、閉塞空間86内の圧力が高まってメニスカスMが上昇する。
【0072】
そのため、図8に示すように、底壁部82が当接位置まで弾性変形し、閉塞部材84がノズル形成面19aに当接してノズル開口34を閉塞した際には、上昇したメニスカスMと閉塞部材84との間に、加圧された空気の空気層66が形成される。
【0073】
上記第3の実施形態によれば、第1の実施形態及び第2の実施形態における(1)〜(7)の効果に加えて、さらに以下のような効果を得ることができる。
(8)ノズル形成面19aに当接した周壁部81は、先端開口縁81aをノズル形成面19aに押し付ける方向に力を受けるため、加圧された閉塞空間86から空気が漏れるのを抑制し、より大きな圧力を維持することができる。
【0074】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態において、一方向弁36及び電磁弁37を設けない構成としてもよい。また、どちらか一方の弁のみを設けるようにしてもよい。
【0075】
・上記第1,第2の実施形態において、底壁部50,72は、剛性部材によって形成するようにしてもよい。また第3の実施形態において、周壁部81は、剛性部材によって形成するようにしてもよい。また、周壁部49,71,81及び底壁部50,72,82を共に剛性材料によって形成する場合には、例えば、環状の周壁部を上下方向に摺動可能に連結することにより形成されたテレスコピック形状とすることにより、閉塞空間の容積を減少させることができる。
【0076】
・上記各実施形態において、キャップ45,70,80を可撓性材料によって形成し、変形したキャップ45,70,80を元の形状に戻すための構成(ばねなど)を別途設けるようにしてもよい。
【0077】
・上記各実施形態において、閉塞部材52,74,84はキャップ45,70,80と一体成形してもよい。また、第3の実施形態のように、底壁部50が変形する場合、もしくはノズル形成面19aにおいて周壁部49,71,81が当接する部分に凹部を形成することにより、底壁部50,72,82をノズル形成面19aに当接させてノズル開口34を閉塞するようにしてもよい。なお、この場合には、底壁部50,72,82が閉塞部として機能する。また、例えば内側に折りたたまれた周壁部49によってノズル開口34を閉塞するようにしてもよい。なお、この場合には、周壁部49が閉塞部として機能する。
【0078】
・上記第1の実施形態において、周壁部49は、下壁部49bと上壁部49cとを谷折り部54a及び山折り部54bを介して交互に複数段に連結することにより、複数の谷折り部54a及び山折り部54bを有する蛇腹状に形成してもよい。また谷折り部54a及び山折り部54bは、それぞれが螺旋状に形成されていてもよい。
【0079】
・上記各実施形態において、キャップ45,70,80は、各ノズル列に対応するように複数設けてもよい。
・上記各実施形態において、キャップ45,70,80を移動させる移動手段は、ピニオンとラックなどを用いてもよい。また、記録ヘッド19を移動させることにより、記録ヘッド19とキャップ45,70,80とを相対移動させてもよい。
【0080】
・上記各実施形態では、プリンター11に搭載されたメンテナンスユニット21に具体化したが、本発明はそれ以外の装置で使用されるノズル開口34を閉塞するメンテナンス装置にも適用することができる。
【0081】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
11…プリンター(液体噴射装置)、19…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、19a…ノズル形成面、20…バルブユニット(液体供給流路)、21…メンテナンスユニット(メンテナンス装置)、24…インクカートリッジ(液体供給源)、25…インク供給チューブ(液体供給流路)、34…ノズル開口、36…一方向弁、37…電磁弁、45,70,80…キャップ、46…カム機構(移動手段)、49,71,81…周壁部、49a,71a,81a…先端開口縁、50,72,82…底壁部、52,74,84…閉塞部材(閉塞部)、53,76,86…閉塞空間、65…制御部(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口が形成されたノズル形成面に前記ノズル開口を囲うように先端開口縁が当接して前記ノズル形成面との間に閉塞空間を形成可能な有底箱状のキャップと、
該キャップを前記ノズル形成面に対して相対移動させる移動手段と
を備え、
前記キャップは、その内部に前記ノズル形成面に当接して前記ノズル開口を閉塞可能な閉塞部を有すると共に、前記先端開口縁を前記ノズル形成面に当接させた状態で前記閉塞部が前記ノズル形成面に接近した場合には前記閉塞空間の容積が減少するように変形する構成とされ、
前記移動手段は、前記キャップの前記先端開口縁が前記ノズル形成面に当接した後に前記閉塞部が前記ノズル形成面に接近して当接するように、前記キャップを前記ノズル形成面に対して相対移動させることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記キャップは、前記閉塞部が設けられた底壁部と、前記閉塞部を囲うように形成された周壁部とを有し、前記底壁部及び前記周壁部の少なくとも一方が前記閉塞空間の容積が減少するように変形する構成とされていることを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記底壁部及び前記周壁部の少なくとも一方は弾性を有することを特徴とする請求項2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
前記ノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
液体供給源側となる上流側から前記液体噴射ヘッド側となる下流側へ液体を供給する液体供給流路と、
請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置と
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
前記液体供給流路において、上流側から下流側への液体の通過を許容すると共に、下流側から上流側への液体の通過を制限する一方向弁をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体供給流路において、液体の通過を制限可能な電磁弁と、
該電磁弁と前記移動手段とを制御する制御手段と
をさらに備え、
前記制御手段は、前記移動手段を駆動した状態で前記電磁弁を閉弁することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−251473(P2011−251473A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127057(P2010−127057)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】