説明

モジュール実装型制御装置

【課題】バックボードのスロットアドレスを変更することなく、IOモジュールを増加させるためのノードを任意に拡張できるモジュール実装型制御装置を実現する。
【解決手段】1台のCPUモジュールと、複数台のIOモジュールとが、スロットアドレスで管理される第1バックボードバスに実装され、前記CPUモジュールから前記第1バックボードバスに送信されるCMDフレームのスロットアドレスで指定された前記IOモジュールを呼び出して通信する第1ノードを備えるモジュール実装型制御装置において、前記第1バックボードバスに実装された第1中継モジュールと中継バスを介して通信する、第Nバックボードバスに実装された第N中継モジュールは、受信したCMDフレームの通信信号を並べ戻す回路を具備すると共に、該CMDフレームのCRCコードをチェックし、一致の場合、該CMDフレームは前記CPUモジュールから自己ノードへの通信と認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1台のCPUモジュールと、夫々が制御対象と通信する複数台のIOモジュールとが、スロットアドレスで管理される第1バックボードバスに実装され、前記CPUモジュールから前記第1バックボードバスに送信される通信信号およびCRCコードを含むCMDフレームにより、前記通信信号内のスロットアドレスで指定された前記IOモジュールを呼び出して通信する第1ノードを備えるモジュール実装型制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のモジュール実装型制御装置の構成例を示す機能ブロック図である。本発明の対象であるモジュール実装型制御装置をノード10で示す。ここで、ノードとは1つのバックボードに実装される複数のモジュールよりなるシステムのことである。
【0003】
図3において、CPUモジュール11および7台のIOモジュール12乃至18は、夫々バスインタフェース回路を介してバックボードバス19が備える所定本数のバスに並列的に接続して実装され、スロットアドレス(図示では1〜8)で管理されている。
【0004】
IOモジュール13を代表として示せば、各IOモジュールは、制御対象(フィールド機器)50と通信している。CPUモジュール11は、自己のバスインタフェース回路からバックボードバス19を介してIOモジュール13を呼び出し、制御対象50の信号を入出力し、制御対象50を制御する演算を行う。
【0005】
スロットアドレスとは、バックボードバス19のモジュール実装位置を示す所定ビットの番号であり、CPUモジュール11とIOモジュール12乃至18が通信するときの通信相手を指定するために使われる。
【0006】
CPUモジュール11は、通信相手のIOモジュール13のスロットアドレスを指定してコマンド(以下、CMD)フレームをバックボードバス19に送信する。IOモジュール13は、バックボードバス19からCMDフレームを受信し、CMDフレームに含まれる宛先スロットアドレスと自分のスロットアドレスを比較して一致していれば、CMDフレームを処理してレスポンス(以下、RSP)フレームをCPUモジュール11に返信する。
【0007】
図4は、CMDフレームおよびRPSフレームの構成例である。図4(A)はCMDフレームの構成例であり、ヘッダ、スロットアドレス、制御データ、CRCコードから成る。CRCコードは、フレーム全体から計算されるチェックサム値で、この値が正しいときだけフレームは処理される。図4(B)は、RSPフレームの構成例であり、ヘッダ、スロットアドレス、返信データ、CRCコードから成る。
【0008】
CPUモジュール11は、ネットワーク60を介して上位装置70と通信し、ノード10は分散型制御システムにおける制御ステーションを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−198630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のモジュール実装型制御装置では、筐体の寸法上の制約からバックボードの横幅が規制され、図示のように実装できるモジュール数が例えば8台に制限され、CPUモジュールを除いて7台のIOモジュールしか実装することができず、IOモジュールをこれ以上増やすことができない。
【0011】
本発明の目的は、バックボードのスロットアドレスを変更することなく、IOモジュール数を増加させるためのノードを任意に拡張することができるモジュール実装型制御装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)1台のCPUモジュールと、夫々が制御対象と通信する複数台のIOモジュールとが、スロットアドレスで管理される第1バックボードバスに実装され、前記CPUモジュールから前記第1バックボードバスに送信される通信信号およびCRCコードを含むCMDフレームにより、前記通信信号内のスロットアドレスで指定された前記IOモジュールを呼び出して通信する第1ノードを備えるモジュール実装型制御装置において、
前記第1バックボードバスに実装された第1中継モジュールと、
前記第1中継モジュールと中継バスを介して通信する、第N(N≧2)中継モジュールおよび複数台のIOモジュールが実装された第Nバックボードバスを具備する第Nノードと、
前記CMDフレームの通信信号を所定のパターンに基づいて並べ替えて前記第1中継モジュールに送信する、前記CPUモジュール内に設けられた並べ替え回路と、
を備え、
前記第N中継モジュールは、
前記第1中継モジュールより前記中継バスを介して受信したCMDフレームの通信信号を前記所定のパターンに基づいて並べ戻す、並べ戻し回路を具備すると共に、受信したCMDフレームの通信信号中のCRCコードと並べ戻した通信信号との一致をチェックし、一致がとれた場合には、受信したCMDフレームは前記CPUモジュールから自己ノードへの通信と認識することを特徴とするモジュール実装型制御装置。
【0013】
(2)前記CPUモジュールによる並び替え対象となる前記CMDフレームの通信信号は、前記CPUモジュールから特定のIOモジュールへ送信する制御データであることを特徴とする(1)に記載のモジュール実装型制御装置。
【0014】
(3)前記CPUモジュールによる並び替え対象となる前記CMDフレームの通信信号は、前記CPUモジュールから送信する特定のIOモジュールのスロットアドレスであることを特徴とする(1)に記載のモジュール実装型制御装置。
【0015】
(4)前記CPUモジュールは、分散型制御システムを構成する上位装置とネットワークを介して通信することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のモジュール実装型制御装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、CPUモジュールが通信する拡張されたノードに応じてCMDフレームのデータの並べ替えと並べ戻しのパターンを決めておくことで、システム規模に応じて拡張ノードを任意に増加することにより、IOモジュール数を任意に増設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用したモジュール実装型制御装置の一実施例を示す機能ブロック図である。
【図2】CMDフレーム中の通信信号のデータ並べ替えを説明する模式図である。
【図3】従来のモジュール実装型制御装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図4】CMDフレームおよびRPSフレームの構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用したモジュール実装型制御装置の一実施例を示す機能ブロック図である。図3で説明した従来構成と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0019】
図1において、第1ノード100は、図3で示した従来構成のノード10と基本的には同一機能である。CPUモジュール101および7台のIOモジュール102乃至107は、夫々バスインタフェース回路を介して第1バックボードバス109が備える所定本数のバスに並列的に接続して実装され、スロットアドレス(図示では1〜8)で管理されている。
【0020】
IOモジュール103を代表として示せば、各IOモジュールは、制御対象(フィールド機器)50と通信している。CPUモジュール101は、自己のバスインタフェース回路からバックボードバス109を介してIOモジュール103を呼び出し、制御対象50の信号を入出力し、制御対象50を制御する演算を行う。
【0021】
図3に示した従来構成のノード10との差の第1は、CPUモジュール101のバスインタフェース回路内に、CMDフレームの通信信号(制御データまたはスロットアドレス)の信号データ順序を、拡張するノードに対応して所定のパターンで並べ替えるための並べ替え回路101Aを追加させた構成にある。
【0022】
図3に示した従来構成のノード10との差の第2は、8台目のモジュールとして、第1中継モジュール108をバックボードバス109に接続して実装した構成にある。第1中継モジュール108は、拡張ノード200、300と通信するためのバス中継回路108Aを備えている。
【0023】
拡張される第2ノード200において、バックボードバス209には、7台のIOモジュール201乃至207および1台の第2中継モジュール208が夫々バスインタフェースを介して接続して実装されている。
【0024】
第2中継モジュール208内には、CPUモジュール101の並べ替え回路101Aにより、第2ノード200に対応して所定のパターンでCMDフレームの通信信号を並べ替えた信号を、同じ所定のパターンで並べ戻すための並べ戻し回路208Aを備えている。
【0025】
同様に、拡張される第3ノード300において、バックボードバス309には、7台のIOモジュール301乃至307および1台の第3中継モジュール308が夫々バスインタフェースを介して接続して実装されている。
【0026】
第3中継モジュール308内には、CPUモジュール101の並べ替え回路101Aにより、第3ノード300に対応して所定のパターンでCMDフレームの通信信号を並べ替えた信号を、同じ所定のパターンで並べ戻すための並べ戻し回路308Aを備えている。
【0027】
第1ノード100の第1中継モジュール108は、バス中継回路108Aより中継バス400を介して第2ノード200の第2中継モジュール208および第3ノード300の第3中継モジュール308と接続されている。CPUモジュール101は、中継バス400を介して拡張された第2ノード200および第3ノード300に実装されたIOモジュールを呼び出して通信することができる。
【0028】
CPUモジュール101が第1ノード100のIOモジュール101乃至107と通信する場合には、図3で説明した従来装置と同様に、CPU101よりCMDフレームを第1バックボードバス109に送信する。この場合には、CMDフレーム内の通信信号の並べ替えは行われない。
【0029】
CPUモジュール101が第2ノード200のIOモジュール201乃至207と通信する場合、および第3ノード300のIOモジュール301乃至307と通信する場合には、CPUモジュール101は並べ替え回路101AによりCMDフレーム内の通信信号の並べ替えを実行したCMDフレームを第1中継モジュール108に送信する。
【0030】
第1中継モジュール108は、CPUモジュール101より送信されたCMDフレームを、中継バス400を介して第2ノード200の第2中継モジュール208および第3ノード300の第3中継モジュール308に送信する。
【0031】
CPUモジュール101が第2ノード200のIOモジュールと通信する場合には、CPUモジュール101は並べ替え回路101Aにより第2モジュールに対応した所定のパターンでCMDフレーム内の通信信号の並べ替えを実行したCMDフレームを第1中継モジュール108に送信する。
【0032】
第2中継モジュール208は、第1中継モジュール108より中継バス400を介して受信したCMDフレームの通信信号を、並べ戻し回路208Aにより第2ノードに対応した所定のパターンに基づいて並べ戻す。
【0033】
更に、並べ戻した通信信号と受信したCMDフレーム中のCRCコードとを比較して一致をチェックし、一致がとれた場合には前記CPUモジュールから第2ノードへのCMDフレームの送信であると認識し、CMDフレームのスロットアドレスで指定されるIOモジュール207とCPUモジュール101との通信が成立する。
【0034】
このとき、第3ノードの第3中継モジュールでは、第3ノードに対応した所定のパターンに基づいて、第1中継モジュール108より中継バス400を介して受信したCMDフレームの通信信号の並べ戻しが実行されるが、並べ戻した通信信号と受信したCMDフレーム中のCRCコードを比較したとき、一致が取れないので、CRCエラーが発生し、送信されたCMDフレームは第3ノード以外のノード宛のCMDフレームであることを認識し、受信しない。
【0035】
同様に、CPUモジュール101が第3ノード300のIOモジュールと通信する場合には、CPUモジュール101は並べ替え回路101Aにより第3モジュールに対応した所定のパターンでCMDフレーム内の通信信号の並べ替えを実行したCMDフレームを第1中継モジュール108に送信する。
【0036】
第3中継モジュール308は、第1中継モジュール108より中継バス400を介して受信したCMDフレームの通信信号を、並べ戻し回路308Aにより第3ノードに対応した所定のパターンに基づいて並べ戻す。
【0037】
更に、並べ戻した通信信号と受信したCMDフレーム中のCRCコードとを比較して一致をチェックし、一致がとれた場合には前記CPUモジュールから第3ノードへのCMDフレームであると認識し、CMDフレームのスロットアドレスで指定されるIOモジュール306とCPUモジュール101との通信が成立する。
【0038】
このとき、第2ノードの第2中継モジュールでは、第2ノードに対応した所定のパターンに基づいて、第1中継モジュール108より中継バス400を介して受信したCMDフレームの通信信号の並べ戻しが実行されるが、並べ戻した通信信号と受信したCMDフレーム中のCRCコードを比較したとき、一致が取れないので、CRCエラーが発生し、送信されたCMDフレームは第2ノード以外のノード宛のCMDフレームであることを認識して受信しない。
【0039】
図2は、CMDフレーム中の通信信号のデータ並べ替えを説明する模式図である。図2(A)は、例えば第2ノード200と通信する場合のデータ先頭の2ビットを並べ替えるパターンであり、(0,1,2)を(1,0,2)と並べ替える。
【0040】
図2(B)は、例えば第3ノード300と通信する場合のデータ先頭1ビットと第3ビットを並べ替えるパターンであり、(0,1,2)を(2,1,0)と並べ替える。並べ替えおよび並べ戻しの対象は、通信信号の制御データ部分の他に、スロットアドレスを並べ替える手法でも本発明を実施することができる。
【0041】
図1で示した実施例では、拡張されるノードが2個の場合を説明したが、データの並べ替えおよび並べ戻しのパターン数を増やすことで、拡張ノード数をさらに増加させ、任意のN個(N)(N≧2)とするノードの拡張と、IOモジュールの増設が可能となる。
【符号の説明】
【0042】
50 制御対象
60 ネットワーク
70 上位装置
100 第1ノード
101 CPUモジュール
101A 並べ替え回路
102〜107 IOモジュール
108 第1中継モジュール
108A バス中継回路
109 第1バックボードバス
200 第2ノード
201〜207 IOモジュール
208 第2中継モジュール
208A 並べ戻し回路
209 第2バックボードバスバス
300 第3ノード
301〜307 IOモジュール
308 第3中継モジュール
308A 並べ戻し回路
309 第3バックボードバスバス
400 中継バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台のCPUモジュールと、夫々が制御対象と通信する複数台のIOモジュールとが、スロットアドレスで管理される第1バックボードバスに実装され、前記CPUモジュールから前記第1バックボードバスに送信される通信信号およびCRCコードを含むCMDフレームにより、前記通信信号内のスロットアドレスで指定された前記IOモジュールを呼び出して通信する第1ノードを備えるモジュール実装型制御装置において、
前記第1バックボードバスに実装された第1中継モジュールと、
前記第1中継モジュールと中継バスを介して通信する、第N(N≧2)中継モジュールおよび複数台のIOモジュールが実装された第Nバックボードバスを具備する第Nノードと、
前記CMDフレームの通信信号を所定のパターンに基づいて並べ替えて前記第1中継モジュールに送信する、前記CPUモジュール内に設けられた並べ替え回路と、
を備え、
前記第N中継モジュールは、
前記第1中継モジュールより前記中継バスを介して受信したCMDフレームの通信信号を前記所定のパターンに基づいて並べ戻す、並べ戻し回路を具備すると共に、受信したCMDフレームの通信信号中のCRCコードと並べ戻した通信信号との一致をチェックし、一致がとれた場合には、受信したCMDフレームは前記CPUモジュールから自己ノードへの通信と認識することを特徴とするモジュール実装型制御装置。
【請求項2】
前記CPUモジュールによる並び替え対象となる前記CMDフレームの通信信号は、前記CPUモジュールから特定のIOモジュールへ送信する制御データであることを特徴とする請求項1に記載のモジュール実装型制御装置。
【請求項3】
前記CPUモジュールによる並び替え対象となる前記CMDフレームの通信信号は、前記CPUモジュールから送信する特定のIOモジュールのスロットアドレスであることを特徴とする請求項1に記載のモジュール実装型制御装置。
【請求項4】
前記CPUモジュールは、分散型制御システムを構成する上位装置とネットワークを介して通信することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のモジュール実装型制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−190335(P2012−190335A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54416(P2011−54416)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】