説明

モニタリング装置、医療用テレメータ、ベッドサイドモニタ、医療機器およびモニタリング方法

【課題】簡単な操作で患者の脈拍を確認すること。
【解決手段】アクチュエータ150は、患者から取得された心電図信号のR波に同期して振動する。マイクロスイッチ160は、アクチュエータ150の振動のオンオフを切り替える機能を有し、心拍出力部120が押下されている間にのみオン状態になる。マイクロスイッチ160は、自身がオン状態の間、コントロールIC180に対して、アクチュエータ150を振動させる旨の信号を出力する。この信号を受けたコントロールIC180は、アクチュエータ150を振動させるための、患者の心電図信号のR波の位置と同期した駆動信号を生成し、ドライバ170に出力する。ドライバ170は、この駆動信号に従って、アクチュエータ150を振動させる。操作者は、心拍出力部120を押下している間、アクチュエータ150の振動による触覚の刺激を通じて患者の脈拍を確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の生体情報を監視するためのモニタリング装置、これを備える医療用テレメータ、ベッドサイドモニタおよび医療機器、ならびにモニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の生体情報は、ベッドサイドモニタやテレメータなどの機器により確認することができる。例えば、患者の心電図は、患者に接続された心電図ケーブルを通じて取得された後、ベッドサイドモニタに表示され、もしくはベッドサイドモニタまたはテレメータを経由してセントラルモニタに表示されることにより確認することができる(特許文献1参照)。これらのベッドサイドモニタやテレメータなどの機器によれば、心電図をはじめとする各種の生体情報を同時に扱うことができる。
【0003】
生体情報の中でも、脈拍は、最も頻回に確認される生体情報の1つであり、患者の脈拍だけでよいので確認したいという場合がある。よって、脈拍を確認する手法として様々なものが提案されている。例えば、ベッドサイドモニタやテレメータなどの機器に実装された発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が心電図のR波に同期して点滅するもの、液晶パネルに表示されたハート形などの同期マークが点滅するもの、および内蔵されたスピーカが同期音を鳴らすものなどが挙げられる。これらの手法によれば、発生した音声や表示により、患者の脈拍を確認することができる。
【特許文献1】特開平9−19409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の手法にあっては、患者の脈拍を確認するときに不都合が生じる場合がある。例えば、集中治療室にいる意識のない患者はともかく、病棟などでは、就寝している患者を起こさずに脈拍を確認するのは困難である。まず、就寝している患者に触れると患者を起こしてしまう恐れがある。次に、患者に触れずにその生体情報を確認するための手段、例えばスピーカやディスプレイにより脈拍を確認することが考えられるが、これらの機器は、患者が就寝している間にはオフ状態になっていることが多く、これらをオンすることにより発生した音声や表示により患者の睡眠が妨害されてしまう恐れもある。
【0005】
また、自力で動くことができる患者はテレメータを使用して生体情報を取得している場合も多い。この場合、脈拍を確認する者、例えば医師や看護士は、ナースステーションなどに設置されているセントラルモニタまで戻らなければ、患者の脈拍を確認することができない。
【0006】
また、音声や表示により脈拍を確認する場合、患者がこれらの音声や表示に対して神経質になりその脈拍を速めてしまう、あるいはその睡眠が妨げられてしまう恐れがある。さらに、音声により脈拍を確認する場合、周囲の音の大きさによってボリュームを調整する必要が生じて操作が煩雑になり、表示により脈拍を確認する場合、その表示を明確に見ることができないといった視認性の問題が生じる恐れもある。
【0007】
さらには、脈拍の確認の困難性は、患者の脈拍がもともと弱い場合や医療スタッフの熟練度が低い場合といった根本的な問題にも及ぶ。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な操作で患者の脈拍を確認することができるモニタリング装置、これを備える医療用テレメータ、ベッドサイドモニタおよび医療機器、ならびにモニタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のモニタリング装置は、患者に接続されたセンサから該患者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、操作者の触覚を刺激する刺激手段と、前記生体情報に従って前記刺激手段を駆動して、前記刺激手段に触れた者に前記生体情報を通知する駆動手段と、を備える構成を採る。
【0010】
本発明の医療機器は、患者に接続されたセンサから該患者の生体情報を取得するテレメータに接続する接続部と、操作者の触覚を刺激する刺激手段と、前記生体情報に従って前記刺激手段を駆動する駆動手段と、を備える構成を採る。
【0011】
本発明のモニタリング方法は、患者に接続されたセンサから該患者の生体情報を取得して、生体の触覚を刺激する刺激手段を前記生体情報に従って駆動して、前記刺激手段に触れた者に前記生体情報を通知するようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な操作で患者の脈拍を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書において、「生体情報」は、患者に接続された心電図電極ケーブル200から取得された生体信号としての生体情報と、アクチュエータ150から心拍出力部120を介して与えられる物理的な刺激情報としての生体情報との双方を含む。また、「生体情報」としては、例えば、心電図信号、呼吸波形、脈拍、血圧および血中酸素濃度などが挙げられる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る医療用テレメータ100およびこれに接続される心電図電極ケーブル200の外観を示す概略斜視図である。
【0016】
医療用テレメータ100は、セントラルモニタなどの生体情報モニタ(図示せず)との間で、生体情報その他の情報を無線送受信する送受信機としての機能を有する。
【0017】
図1において、医療用テレメータ100は、電源スイッチ101、電池ボックス102、イベントスイッチ103、LED104、リードランプ105、チャージランプ106、ハンギングベルト取付穴107、心電図電極コネクタ110、および心拍出力部120を備える。
【0018】
電源スイッチ101は、医療用テレメータ100への電源供給のオンオフを切り替える。電源スイッチ101が押下されると、電池ボックス102に収容された電池からの電源の供給が開始され、または終了する。
【0019】
電池ボックス102は、医療用テレメータ100の各装置部に電源を供給する電池、例えば充電池を収容する。電池ボックス102に収容された充電池は、医療用テレメータ100を不図示の充電器ホルダ、例えば非接触充電クレードルにはめることにより充電されうる。
【0020】
イベントスイッチ103は、医療用テレメータ100と前記生体情報モニタとの間における認証動作を行うためのスイッチである。イベントスイッチ103が押下されると、医療用テレメータ100から前記生体情報モニタに対して、前記生体情報モニタで予め設定されている機能を動作させるための信号が送信される。この設定機能には、医療用テレメータ100から送信された患者の生体情報を表示する機能、および表示された生体情報から異常が検知されたときに警告音を鳴らす機能などが含まれる。
【0021】
LED104は、点灯することにより、電源スイッチ101およびイベントスイッチ103が押下されたことを示すためのバッテリイベントランプである。LED104は、電源スイッチ101が押下されて医療用テレメータ100の電源がオンされ、またはイベントスイッチ103が押下されて前記生体情報モニタとの間で認証動作が行われると、所定の時間(例えば10秒間)点灯する。
【0022】
リードランプ105は、点灯することにより、生体情報、例えば心電図情報の取得が適切に行われていないことを医療用テレメータ100の操作者に警告する。より具体的には、リードランプ105は、心電図電極が患者に正常に接続されていないこと、または心電図ケーブルコネクタ220が心電図電極コネクタ110に正常に接続されていないことを検知すると、所定の時間(例えば2分間)点灯する。
【0023】
チャージランプ106は、電池ボックス102に収容された充電池の充電の状態を示す。チャージランプ106は、例えば、医療用テレメータ100が非接触充電クレードルにはめられて充電が始まると点灯し、充電が完了すると点滅する。
【0024】
ハンギングベルト取付穴107は、医療用テレメータ100を首からぶら下げるためのストラップを取り付けるための取付穴である。
【0025】
心電図電極コネクタ110は、心電図電極ケーブル200の心電図ケーブルコネクタ220を挿入するためのコネクタである。心電図電極コネクタ110に心電図ケーブルコネクタ220が挿入されることにより、医療用テレメータ100と心電図電極ケーブル200とが接続される。
【0026】
心拍出力部120は、医療用テレメータ100の側面に取り付けられている。心拍出力部120は、図2に示すように、操作者が医療用テレメータ100を片手で持ちながら押下することができる位置に取り付けられることが好ましい。
【0027】
心拍出力部120は、ゴムなどの弾性体からなり、その内部には、押下された心拍出力部120が変位することができる程度の空間が設けられている。心拍出力部120は、図2に示すように、操作者により押下されると、この操作者に対して、振動による触覚の刺激を通じて患者の脈拍を通知する。
【0028】
より具体的には、心拍出力部120は、図3に示すように、その内部の、押下により接触する位置に設けられたアクチュエータ150の振動を伝達することにより、操作者に患者の脈拍を通知する。このアクチュエータ150は、患者から検出された心電図信号のR波に同期して振動するように構成されている。心拍出力部120、アクチュエータ150およびこれらの周辺の構成については、その制御機構とともに後で図3を用いてさらに詳細に説明する。
【0029】
センサとしての心電図電極ケーブル200は、心電図ケーブル210および心電図ケーブルコネクタ220を備える。
【0030】
心電図ケーブル210は、患者の身体に接続され、患者の生体情報を示す生体信号を検出する。また、心電図ケーブル210のシールド線は、医療用テレメータ100で無線信号処理された生体情報その他の情報を空中放射することにより前記生体情報モニタに無線送信するためのアンテナとしての機能を有する。
【0031】
心電図ケーブルコネクタ220は、心電図電極コネクタ110と接続され、心電図ケーブル210で検出された患者の生体信号を、医療用テレメータ100に出力する。
【0032】
図4は、図1の医療用テレメータ100の内部回路の一例を示す図である。
【0033】
図4において、医療用テレメータ100は、心電図電極ケーブル200からの生体信号を受信する受信系統として、心電アンプ131と、呼吸検出アンプ132と、マルチプレクサ133と、アナログディジタルコンバータ(以下「A/Dコンバータ」という)134とを備える。すなわち、心電アンプ131、呼吸検出アンプ132、マルチプレクサ133およびA/Dコンバータ134は、心電図電極ケーブル200から患者の生体情報を取得する生体情報取得手段としての機能を果たす。
【0034】
心電図アンプ131は、患者から検出され心電図電極ケーブル200を介して入力される生体信号を増幅することにより心電図信号を生成し、この心電図信号をマルチプレクサ133に出力する。
【0035】
呼吸検出アンプ132は、心電図電極ケーブル200を介して測定される生体のインピーダンス変化を増幅することによりインピーダンス呼吸信号を生成する。呼吸検出アンプ132は、生成された呼吸信号を、マルチプレクサ133に出力する。
【0036】
マルチプレクサ133は、心電アンプ131から入力される心電図信号および呼吸検出アンプ132から入力される呼吸信号のうちのいずれかを選択的にA/Dコンバータ134に出力する。ここで、マルチプレクサ133は、心電図信号および呼吸信号を、時系列的、つまり所定の時間間隔毎にA/Dコンバータ134に出力する。マルチプレクサ133が心電図信号および呼吸信号のうちどちらの信号を出力するかは、コントロールIC180により制御される。
【0037】
A/Dコンバータ134は、マルチプレクサ133から入力された心電図信号または呼吸信号に対してアナログディジタル変換を行い、変換後のディジタルデータである心電図信号または呼吸信号をコントロールIC180に出力する。
【0038】
医療用テレメータ100は、生体情報その他の情報をセントラルモニタやベッドサイドモニタなどの生体情報モニタに無線送信するための送信系統として、高周波発振変調回路141と、RF(Radio Frequency)アンプ142とを備える。
【0039】
高周波発振変調回路141は、コントロールIC180から入力された前記生体情報モニタに送信すべき情報を所定のキャリア周波数でディジタル変調し、変調信号を生成する。高周波発振変調回路141は、この変調信号をRFアンプ142に出力する。
【0040】
RFアンプ142は、高周波発振変調回路141から入力された変調信号を増幅する。RFアンプ142は、この無線信号を、心電図電極コネクタ110および心電図ケーブルコネクタ220を介して、心電図ケーブル210のシールド線をアンテナとして空中に放射する。
【0041】
医療用テレメータ100は、生体の触覚を刺激する刺激手段として、アクチュエータ150を備える。また、医療用テレメータ100は、このアクチュエータ150を駆動してアクチュエータ150に触れた者に患者の脈拍を通知する駆動手段として、マイクロスイッチ160と、ドライバ170とを備える。
【0042】
アクチュエータ150は、患者から取得された心電図信号のR波に同期して振動する。すなわち、アクチュエータ150は、患者の脈拍と同一のタイミングで上下運動する。より具体的には、アクチュエータ150は、コントロールIC180からの、患者の心電図信号のR波に同期した駆動信号を受けたドライバ170により断続的に駆動される。
【0043】
アクチュエータ150は、極めて短時間、例えば100ms以下で収束するような短い振動周期で振動することができる。以下では、このような短い振動周期での振動を適宜「短振動」と呼ぶことにする。アクチュエータ150は、短振動の開始から停止までの一連の流れを、1回分の脈拍の振動感触として、操作者の生体、例えば指先を刺激することにより操作者に通知する。ここで、アクチュエータ150の振動周期は、1回分の脈拍の長さに比べて十分に短い。
【0044】
アクチュエータ150は、永久磁石や電磁石の組み合わせで構成され、単電源かつ低電圧で動作可能な電磁誘導方式のものである。アクチュエータ150としては、この他にも、プランジャ方式アクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、積層圧電素子アクチュエータ、またはモータとカムを用いる機械式アクチュエータなどの様々な種類のものが利用されうる。プランジャ方式アクチュエータの例については、後に図6を用いて説明する。
【0045】
マイクロスイッチ160は、アクチュエータ150の振動のオンオフを切り替える。マイクロスイッチ160は、通常時はオフ状態であり、アクチュエータ150が心拍出力部120を介して押下され、その押下された方向に変位したときに、アクチュエータ150によりさらに押下されてオン状態になる。すなわち、マイクロスイッチ160は、操作者が患者の脈拍を確認するために心拍出力部120を押下している間、つまり心拍出力部120に能動的に接触している間にのみオン状態になる。マイクロスイッチ160は、自身がオン状態の間、コントロールIC180に対して、アクチュエータ150を振動させる旨の信号(以下「振動指示信号」という)を出力し続ける。
【0046】
ここで、心拍出力部120、アクチュエータ150、マイクロスイッチ160およびこれらの周辺の機構について、前述の図3を用いて説明する。
【0047】
アクチュエータ150は、支持部材151に収容されている。この支持部材151の一端はコイルバネ152により常に表面方向(図中のx方向)に付勢されているので、アクチュエータ150は、コイルバネ152が伸縮することにより、その支持中心位置から変位することができる。また、この支持部材151の他端は回動中心部153により壁面と連結されているので、アクチュエータ150は、この連結部位を中心として回動することができる。
【0048】
この構成によれば、操作者により心拍出力部120が押下されると、支持部材151は、コイルバネ152を圧縮して、コイルバネ152の付勢方向(図中のx方向)と反対の方向に変位する。すると、変位した支持部材151の一部によりマイクロスイッチ160が押下され、マイクロスイッチ160がオン状態になる。そして、このオン状態の間、マイクロスイッチ160は、コントロールIC180に対して、振動指示信号を出力し続ける。
【0049】
一方、図5に示すように、操作者により心拍出力部120が押下されていないときは、支持部材151とマイクロスイッチ160とは接触せず、したがってマイクロスイッチ160はオフ状態である。
【0050】
ドライバ170は、コントロールIC180から入力された、患者の心電図信号のR波に同期した駆動信号に従って、アクチュエータ150を駆動させる。すなわち、ドライバ170は、患者の脈拍と同期したタイミングでアクチュエータ150を振動させる。
【0051】
医療用テレメータ100は、各装置部を総合的に制御するためのコントロールIC(Integrated Circuit)180を備えている。コントロールIC180は、例えばゲートアレイによって実現される。
【0052】
コントロールIC180は、医療用テレメータ100の電源が投入されると、各装置部の初期化処理を行う。また、コントロールIC180は、心電図信号および呼吸信号のうちどちらの信号をマルチプレクサ133から出力させるかを切り替える制御を行う。また、コントロールIC180は、セントラルモニタやベッドサイドモニタなどの生体情報モニタに無線送信するための生体情報その他の情報を、高周波発振変調回路141に出力する。
【0053】
コントロールIC180は、医療用テレメータ100と心電図電極ケーブル200とが適切に接続されているか否かを確認する機能を果たす。より具体的には、まず、コントロールIC180は、マルチプレクサ133の出力を心電アンプ131の側に切り替えて、A/Dコンバータ134から心電図信号を取り込む。次いで、コントロールIC180は、この心電図信号のレベルを検出することによって、心電図ケーブルコネクタ220が心電図電極コネクタ110に接続されているか否かを確認する。そして、コントロールIC180は、これらが接続されていないときは、リードランプ105を点灯させる。
【0054】
コントロールIC180は、マイクロスイッチ160からの振動指示信号が入力されている間、アクチュエータ150を駆動させるための駆動信号を生成する。より具体的には、コントロールIC180は、A/Dコンバータ134から入力された心電図信号を解析してR波の位置を検出し、検出されたR波の位置と同期した駆動信号を生成する。コントロールIC180は、生成された駆動信号をドライバ170に出力する。
【0055】
最後に、医療用テレメータ100は、電池ボックス102に収容された電池の電圧を各装置部で必要な電圧に昇圧して供給する電源回路191と、電池ボックス102に収容された充電池に対する非接触充電を行う内部に給電用のコイルを有する充電制御回路192とを備える。
【0056】
以下、上述のように構成された医療用テレメータ100の動作について説明する。ここでは、医療用テレメータ100が夜間モード、つまり患者の生体情報のモニタリングは行っているもののその映像または音声による出力を行わないモードに滞在している場合において、操作者が心拍出力部120を押下することにより患者の脈拍を確認する場合について説明する。
【0057】
図3に示すように、操作者が心拍出力部120を押下すると、アクチュエータ150が図中のx方向と反対の方向に変位する。これによりマイクロスイッチ160が押下され、マイクロスイッチ160がオン状態になる。マイクロスイッチ160は、オン状態の間、コントロールIC180に対して、振動指示信号を出力し続ける。
【0058】
コントロールIC180は、この振動指示信号が入力されている間、アクチュエータ150を駆動させるための駆動信号を生成して、生成された駆動信号をドライバ170に出力する。上記のように、この駆動信号は、患者から取得された心電図信号のR波と同期している。
【0059】
そして、ドライバ170は、コントロールIC180から入力された駆動信号に従って、アクチュエータ150を断続的に駆動させる。これにより、アクチュエータ150は、患者の脈拍と同期したタイミングで振動する。ここで、マイクロスイッチ160をオンするべくコイルバネ152を押下する力は、アクチュエータ150の駆動力と比べて十分に大きいので、アクチュエータ150の駆動に伴ってマイクロスイッチ160がオフしてしまうことはない。
【0060】
また、上記のように、アクチュエータ150は極めて短い振動周期で振動するので、操作者は、短振動の開始から停止までの一連の流れを、1回分の脈拍の振動感触として、高感度に確認することができる。
【0061】
操作者は、心拍出力部120を押下している間、アクチュエータ150の短振動を通じて、触覚により患者の脈拍を確認することができる。すなわち、操作者は、心拍出力部120を押下した指先で、アクチュエータ150の短振動の開始から停止までの一連の流れを1回分の脈拍として感知し、これを数えることにより、患者の脈拍を確認することができる。触覚により脈拍を確認するので、覚醒または睡眠などの状態によらず、患者に触れることなくかつ特別な操作なくして患者の脈拍を確認することができる。特に、この例のように、医療用テレメータ100が夜間モードでかつ患者が睡眠中である場合であっても、患者を覚醒させることなくそのままの状態で脈拍を確認することができる。
【0062】
次に、電磁誘導方式のアクチュエータ150の代わりにプランジャ式アクチュエータを使用した例について、図6を用いて説明する。
【0063】
図6は、心拍出力部120、プランジャ式アクチュエータ230、マイクロスイッチ160およびこれらの周辺の機構を示す図である。
【0064】
図6において、支持部材151はプランジャ式アクチュエータ230を収容し、回動中心部153との連結部位を中心として回動可能であるとともに、コイルバネ152により表面方向(図中のx方向)に付勢されている。
【0065】
この構成によれば、操作者が心拍出力部120を押下すると、支持部材151がコイルバネ152を圧縮し、マイクロスイッチ160がオン状態になる。このオン状態の間、マイクロスイッチ160がコントロールIC180に対して振動指示信号を出力し、コントロールIC180がドライバ170に駆動信号を出力し、ドライバ170は、この駆動信号に従ってプランジャ式アクチュエータ230を振動させる。
【0066】
図6に示すように、プランジャ式アクチュエータ230は、その構造上、奥行きを必要とするので、図3または図5に示す電磁誘導式のアクチュエータ150よりも構造がやや大がかりになる。
【0067】
このように、本実施の形態では、アクチュエータ150が、患者に接続された心電図電極ケーブル200から取得された心電図信号のR波に同期して振動する。これにより、操作者は、心拍出力部120を押下して、心拍出力部120を介して得られるアクチュエータ150の振動を通じた触覚の刺激から患者の脈拍を確認することができる。
【0068】
また、本実施の形態では、アクチュエータ150は、マイクロスイッチ160がオン状態の間にのみ駆動され、このマイクロスイッチ160は、アクチュエータ150が操作者に押下されている間にのみオン状態となる。これにより、アクチュエータ150は、操作者が患者の脈拍を確認しようとしている間にのみ振動するので、アクチュエータ150の駆動電力を必要最低限に抑制することができる。
【0069】
(実施の形態2)
本実施の形態は、上述した図4に示す機構をベッドサイドモニタの内部に内蔵し、このベッドサイドモニタの筐体上に心拍出力部を設けた例である。
【0070】
図7は、本発明の実施の形態2に係るベッドサイドモニタ300の外観を示す概略斜視図である。ベッドサイドモニタ300に内蔵された図4に示す機構は上述した通りであるので、その説明を省略する。
【0071】
ベッドサイドモニタ300は、セントラルモニタなどの生体情報モニタ(図示せず)との間で、生体情報その他の情報を無線または有線により送受信する送受信機としての機能を有する。
【0072】
図7において、ベッドサイドモニタ300は、心拍出力部310、パイロットランプ320および画面330を備える。
【0073】
心拍出力部310は、ベッドサイドモニタ300の筐体上のいずれかの位置に取り付けられている。この例では、心拍出力部310は、ベッドサイドモニタ300の正面の右上隅に取り付けられている。この位置は、患者の脈拍を確認するために使う右手親指が最も触れ易い位置である。
【0074】
心拍出力部310は、ゴムなどの弾性体からなり、その内部には、押下された心拍出力部310が変位することができる程度の空間が設けられている。心拍出力部310は、操作者により押下されると、この操作者に対して、振動による触覚の刺激を通じて患者の脈拍を通知する。
【0075】
より具体的には、心拍出力部310は、その内部の、押下により接触する位置に設けられたアクチュエータの振動を操作者に伝達することにより、患者の脈拍を通知する。上記したように、このアクチュエータは、患者から取得された心電図信号のR波に同期して振動するように構成されている。
【0076】
パイロットランプ320は、ベッドサイドモニタ300の筐体上のいずれかに設けられている。この例では、パイロットランプ320は、心拍出力部310の下部に設けられている。パイロットランプ320は、点灯することにより、ベッドサイドモニタ300の筐体上の心拍出力部310の取付位置を照射する。これにより、操作者は、ベッドサイドモニタ300が夜間モードに滞在し画面330が消灯している場合であっても、心拍出力部310を見失うことがなく、周囲が暗くても患者の脈拍を確認することができる。
【0077】
画面330は、患者から取得された生体情報その他の情報を表示する。
【0078】
本実施の形態において、患者から取得された心電図信号は、ベッドサイドモニタ300に接続された心電図電極ケーブルから検出されたものでもよいし、他のモニタリング装置で検出され有線または無線を通じて送信されたものでもよい。
【0079】
また、本実施の形態において、上述した実施の形態1の医療用テレメータ100とベッドサイドモニタ300または他の医療機器とをケーブル(図示せず)で接続し、このケーブルを経由することにより、医療用テレメータ100で取得された患者の心電図信号に従って、ベッドサイドモニタ300または他の医療機器に内蔵されたアクチュエータを駆動させることができる。
【0080】
このように、本実施の形態では、患者の脈拍を触覚により確認するための心拍出力部310がベッドサイドモニタ300の一部に取り付けられている。これにより、操作者は、ベッドサイドモニタによりその生体情報を監視されている患者に対しても、心拍出力部310を押下して、心拍出力部310を介して得られるアクチュエータ150の振動による触覚の刺激を通じて患者の脈拍を確認することができる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、パイロットランプ320が点灯して心拍出力部310の取付位置を示すので、ベッドサイドモニタ300が夜間モードに滞在し画面330が消灯している場合であっても、心拍出力部310の取付位置を容易に識別することができる。
【0082】
なお、上記各実施の形態では、アクチュエータは、マイクロスイッチが押下されている間にのみ動作するものとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電力的に余裕がある場合には、アクチュエータを常に動作するようにしてもよい。
【0083】
また、上記各実施の形態において、アクチュエータの振動のオンオフは、アクチュエータの押下と関係なく切替可能な切替手段により切り替えるようにしてもよい。この場合でも、アクチュエータ150の駆動電力の抑制に一定の効果が得られる。
【0084】
なお、上記各実施の形態では、アクチュエータは、患者の心電図のR波に同期して振動するものとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、アクチュエータを、患者の脈波または観血血圧の極大値に同期させてもよいし、心電図ではなく他の周期的な生体情報、例えば呼吸波形に同期させてもよい。いずれも、本発明の思想の範囲内で自由に変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態1に係る医療用テレメータおよびこれに接続される心電図電極ケーブルの外観を示す概略斜視図
【図2】心拍出力部の押下の一例を示す図
【図3】心拍出力部が押下されている場合における心拍出力部、アクチュエータ、マイクロスイッチおよびこれらの周辺の機構の一例を示す図
【図4】図1の医療用テレメータの内部回路を示す図
【図5】心拍出力部が押下されていない場合における心拍出力部、アクチュエータ、マイクロスイッチおよびこれらの周辺の機構の一例を示す図
【図6】心拍出力部、アクチュエータ、マイクロスイッチおよびこれらの周辺の機構のさらに他の例を示す図
【図7】本発明の実施の形態2に係るベッドサイドモニタの外観を示す概略斜視図
【符号の説明】
【0086】
100 医療用テレメータ
110 心電図電極コネクタ
120、310 心拍出力部
150 アクチュエータ
151 支持部材
152 コイルバネ
153 回動中心部
160 マイクロスイッチ
170 ドライバ
180 コントロールIC
200 心電図電極ケーブル
210 心電図ケーブル
220 心電図ケーブルコネクタ
230 プランジャ式アクチュエータ
300 ベッドサイドモニタ
320 パイロットランプ
330 画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に接続されたセンサから該患者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
操作者の触覚を刺激する刺激手段と、
前記生体情報に従って前記刺激手段を駆動して、前記刺激手段に触れた者に前記生体情報を通知する駆動手段と、
を備えることを特徴とするモニタリング装置。
【請求項2】
前記刺激手段は、
振動体を備え、
前記駆動手段は、
前記振動体の振動を制御可能である、
ことを特徴とする請求項1記載のモニタリング装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、
前記振動体の振動のオンオフを切り替えるスイッチを備える、
ことを特徴とする請求項2記載のモニタリング装置。
【請求項4】
前記振動体は、
変位可能に支持されており、
前記スイッチは、
前記振動体の変位に応じて振動のオンオフを切り替える、
ことを特徴とする請求項3記載のモニタリング装置。
【請求項5】
前記スイッチは、
前記振動体が所定位置にあるときには振動をオフにし、前記振動体が前記所定位置から変位しているときには振動をオンにする、
ことを特徴とする請求項4記載のモニタリング装置。
【請求項6】
前記生体情報は、前記患者の心電図信号を含み、
前記振動体は、前記患者の心電図信号のR波に同期して振動する、
ことを特徴とする請求項2記載のモニタリング装置。
【請求項7】
前記生体情報は、前記患者の脈波を含み、
前記振動体は、前記患者の脈波に同期して振動する、
ことを特徴とする請求項2記載のモニタリング装置。
【請求項8】
前記生体情報は、前記患者の観血血圧を含み、
前記振動体は、前記患者の観血血圧の極大値に同期して振動する、
ことを特徴とする請求項2記載のモニタリング装置。
【請求項9】
前記生体情報は、前記患者の呼吸波形を含み、
前記振動体は、前記患者の呼吸波形に同期して振動する、
ことを特徴とする請求項2記載のモニタリング装置。
【請求項10】
前記振動体は、
短振動を生成可能である、
ことを特徴とする請求項2記載のモニタリング装置。
【請求項11】
前記振動体は、
プランジャを含む、
ことを特徴とする請求項2記載のモニタリング装置。
【請求項12】
前記振動体は、
形状記憶合金から形成される、
ことを特徴とする請求項2記載のモニタリング装置。
【請求項13】
前記振動体は、
モータとカムとで構成される、
ことを特徴とする請求項2記載のモニタリング装置。
【請求項14】
請求項1記載のモニタリング装置を備えることを特徴とする医療用テレメータ。
【請求項15】
請求項1記載のモニタリング装置を備えることを特徴とするベッドサイドモニタ。
【請求項16】
患者に接続されたセンサから該患者の生体情報を取得するテレメータに接続する接続部と、
操作者の触覚を刺激する刺激手段と、
前記生体情報に従って前記刺激手段を駆動する駆動手段と、
を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項17】
患者に接続されたセンサから該患者の生体情報を取得して、生体の触覚を刺激する刺激手段を前記生体情報に従って駆動して、前記刺激手段に触れた者に前記生体情報を通知する、
ことを特徴とするモニタリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−17991(P2008−17991A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191538(P2006−191538)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【Fターム(参考)】