モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節剤、抗癌剤及び健康食品
鹿茸から抽出したモノアセチルジアシルグリセロール誘導体の免疫調節剤としての用途が開示される。モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する医薬品及び健康食品が開示される。モノアセチルジアシルグリセロール誘導体は免疫増進を含有する免疫調節に顕著な効果を果す。ハムスターに癌細胞系を注入して癌の発生を誘導した場合、免疫増進に重要な要素であるリンパ球、単核球及び樹状突起細胞を活性化させることにより癌の発生が遅延され、免疫細胞の癌細胞に対する毒性活性を増進させて癌細胞のアポトーシスが誘導される。また、敗血性ショックが誘導されたマウスの場合、免疫機能の調節及びアポトーシスの抑制効果により、120時間以後にも100%の生存率を見せる。したがって、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、免疫調節剤、敗血症治療剤、癌治療剤及び免疫調節又は癌予防のための健康食品用として効果的に使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鹿茸から抽出されたモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節剤、医薬品及び健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
鹿茸(ラテン語:Cervi parvum cornu)は、鹿科の動物から採取して乾燥した石灰化していない角である。韓国の伝統東洋医学では、人参と共に鹿茸が高く評価される各種薬効のために広く使用されている。鹿茸の伝統的な使用のための鹿科は、マンシュウジカ(Cervus nippon Temminick var.mantchuricus Swinhoe、 以下、C.N.と称する。)とロクジョウ(マンシュウアカジカ:Cervus elaphus L.)とに限定される。鹿茸は、多くの薬効を持つものと評価されている。鹿茸は、強壮剤、生長及び発育促進、造血、神経衰弱治療、心不全症治療、一般的な五臓六腑の機能向上に多様な効能があると知られている(韓国の伝統医学書籍である東医宝鑑を参照)。鹿茸の効果について伝統医学の他の書籍にも、心筋機能、疲労回復効果、抵抗力増進を含む強壮効果、滋養効果、活力増強効果が報告されている。鹿茸の神秘な化学的構成に関する研究が多様になされてきた。その結果、遊離アミノ酸、微量(金属)元素、六炭糖、五炭糖、へキソサミン、ウロン酸、シアル酸、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチンA)、多様な脂肪酸、プロスタグランジン類のような活性成分を含有することが確認されている。また、糖脂質、リン脂質、コレステロール、ヒポキサンチン、コレスト−5−エン−3β、7α−ジオール、コレステロールエステル、ポリアミンが鹿茸抽出物から検出されたことが報告されている。また、エストロン及びエストラジオールレセプターの存在が報告されている(NIHコリアリポート、Vol.22, p359, 1985; Korean Biochem.J, Vol.9, No.3, p153, 1976; Korean Biochem.J, Vol.9, NO.4; p215, 1976;Korean Biochem.J, Vol.10, NO.1, p1, 1977;Shoykugaku Zasshi, 43(2), p173, 1989)。
【0003】
免疫は、各種病原体から生体を保護する防御メカニズムである。免疫不全は、免疫系システムの成分の欠陥により、免疫システムが多様な抗原に反応出来ないことである。免疫不全は、先天性免疫不全(congenital or primary immunodeficiency)と、後天性免疫不全(acquired or secondary immunodeficiency)とに大別される。先天性免疫不全の場合、B細胞又はT細胞が先天的に存在しないため、遺伝子治療、抗体注入及び骨髄移植のみにより治療できる。一方後天性免疫不全の場合、全ての免疫関連要素は先天的に存在するが、免疫反応に障害があるため、免疫要素の機能を増進させることにより改善できる。近年、関節炎、アトピー、認知症及び敗血症のような自己免疫疾患の発現が増加している。自己免疫疾患は免疫機能の過度な増加に起因する。自己免疫疾患の治療に免疫抑制剤が利用されているが、免疫抑制剤は免疫性をしばしば減少させる。免疫メカニズムの説明に基づき、免疫性調節のための免疫調節物質の開発に対する多様な試みが行われている。このような試みの目的は、非特異的に免疫細胞を刺激する免疫調節物質により免疫機能の増進又は抑制をコントロールすることにより、病原体に対抗する生体の防御力を増加させて副作用を最小化することにある。免疫調節物質は、癌、敗血症、退行性関節炎、感染症、認知症、老化、糖尿、貧血、皮膚病、喘息、アトピー、ストレス、神経衰弱、全身疲労、慢性疲労症候群及び骨粗しょう症のような生体の大分部の疾病を治療できる。現在、免疫調節物質としては、化学合成物質、微生物組成物及び生物製剤などが利用されている。前述した免疫調節物質の大部分は、片方の効果(免疫増進又は抑制のどちらか)のみを果たすため、使用が制限的である。よって、免疫調節物質は、副作用を誘発したり毒性を持ちうる。前述した問題を解決するために、免疫調節物質の開発をするために、無毒の食品素材、天然物質から抽出した有効成分及び伝統的な漢方薬を主なターゲットとして、薬剤としての効果を検査する実験が進行中にある。しかしながら、これらの免疫調節物質は、相変らず免疫増進又は免疫抑制のどちらか一つの側面のみを持っている。
【0004】
韓国における第1位の死亡原因である癌は毎年増加している。癌治療のための化学療法又は放射線療法は、癌細胞だけでなく一般の正常骨髄細胞、特に免疫及び造血を調節する造血細胞(hematopoietic cell)までも破壊させることにより、免疫システム及び造血器官の機能不全を引き起こす(Korean J. BRM., 1, p23, 1993;Korean J. BRM., 4、p47, 1994; Crit Rev Oncol Hematol. 1, p227, 1984)。敗血症は、重篤な全身への感染によって過度な全身炎症反応に達する、致死率45%を越える深刻な疾病である。大部分の場合、感染した宿主がグラム陰性菌の内毒素(endotoxin)に対して過度に反応する時に発生する。しかし、敗血性ショック治療剤としては、抗生物質、ステロイド製剤又はジグリス(Xigris、イーライリリー社製)が使用されているが、このような抗生物質、ステロイド製剤又はジグリスが敗血症に対して効果が大きくないため、敗血性ショックによる致死率は依然として高い。
【0005】
よって、本発明者は、民間療法として優れた薬理効能を持つ C.N.鹿茸の多様な成分を分離し、さらにこれらのC.N.鹿茸の有効成分の一つであるモノアセチルジアシルグリセロールが生体内で重要な免疫調節作用をすることを観察した。免疫調節効果の結果として、C.N.鹿茸が生体内で毒性を表さず、敗血性ショック治療及び抗癌作用剤として使用される可能性がある。また、本発明者は、本発明のモノアセチルジアシルグリセロールが、安全な免疫増進剤、免疫調節剤、敗血性ショック治療剤及び抗癌剤として使用できることを確認することで、本発明を完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節剤、敗血性ショック治療剤、抗癌剤及び健康食品を提供することにある。健康食品は、免疫調節、敗血症、癌の予防及び治療のためのものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、免疫増進を含む免疫調節に顕著な効果を果す。ハムスターに癌細胞系を注入して癌の発生を誘導した場合、免疫増進に重要な要素であるリンパ球、単核球及び樹状突起細胞を活性化させることにより癌の進行が遅延され、免疫細胞の癌細胞に対する毒性活性を増進させて癌細胞のアポトーシスが誘導される。また、敗血性ショックが誘導されたマウスの場合、免疫機能の調節及びアポトーシスの抑制効果により、120時間以後にも100%の生存率を見せる。したがって、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、免疫調節剤、敗血症治療剤、癌治療剤及び免疫調節又は癌予防のための健康食品用として効果的に使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節剤を提供する。
【化1】
ここで、R1/R2は、9−オクタデセノイル(オレオイル)/ヘキサデカノイル(パルミトイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9−オクタデセノイル(オレオイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9,12−オクタデカジエノイル(リノレオイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレノイル)又はヘキサデカノイル(パルミトイル)/5,8,11,14−エイコサテトラエノイル(アラキドノイル)である。
【0009】
ここで、次の化学式2で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体が好ましい。
【化2】
また、本発明は、前記化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有するAIDS治療剤、敗血症治療剤及び抗癌剤を提供する。また、本発明は、前記化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節用又は抗癌用の健康食品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、上記の化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節剤、AIDS治療剤、敗血症治療剤及び抗癌剤を提供する。本発明の化学式1で表される化合物は、下記5つの化合物の何れか1つである。
【0012】
1)1−オレオイル−2−2パルミトイル−3−アセチルグリセロール(R1/R2=9−オクタデセノイル/ヘキサデカノイル;以下、「化合物1」と称する。)
【0013】
2)1−パルミトイル−2−オレオイル−3−アセチルグリセロール(R1/R2=ヘキサデカノイル/9−オクタデセノイル;以下、「化合物2」と称する。)
【0014】
3)1−パルミトイル−2−リノレオイル−3−アセチルグリセロール(R1/R2=ヘキサデカノイル/9,12−オクタデカジエノイル;以下、「化合物3」と称する。)
【0015】
4)1−パルミトイル−2−リノレノイル−3−アセチルグリセロール(R1/R2=ヘキサデカノイル/9,12,15−オクタデカトリエノイル;以下、「化合物4」と称する。)
【0016】
5)1−パルミトイル−2−アラキドノイル−3−アセチルグリセロール(R1/R2=ヘキサデカノイル/5,8,11,14−エイコサテトラエノイル;以下、「化合物5」と称する。)
【0017】
上記の化学式2で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体の何れも使用可能であるが、特に化合物3が好ましい。本発明の化合物は、 C.N.鹿茸から抽出されたり、或いは、公知の有機合成法により製造される。抽出方法は次のような段階を有する。特に、C.N.鹿茸のクロロホルム抽出物は、最初にヘキサンによりC.N.鹿茸を抽出し、ヘキサン抽出の残余をクロロホルムにより抽出して得られる。この抽出過程で使用されたヘキサン及びクロロホルムの量は、C.N.鹿茸が十分浸る程度である。一般的には、C.N.鹿茸1kgに対しヘキサン及びクロロホルムを各々4〜5リットルの割合で使用される。このような抽出過程により得られたC.N.鹿茸のクロロホルム抽出物が、一連のシリカゲルコラムクロマトグラフィー及びTLC(薄膜クロマトグラフィー)により分画化されて精製される。後続抽出段階の溶離液はクロロホルム/メタノール、ヘキサン/エチルアセテートから選択される。モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を化学的に合成するためには、例えば、グリセロールとパルミチン酸との反応により生成された生成物から1−パルミトイルグリセリンを分離する。目的とするモノアセチルジアシルグリセロールは、酢酸、リノール酸などのようなカルボン酸化合物で、1−パルミトイルグリセリンをエステル化させることにより合成することができ、必要に応じて精製することができる。モノアセチルジアシルグリセロール誘導体の他の合成方法は、ホスファチジルコリンのアセトリシス(acetolysis)である。
【0018】
本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール化合物は、免疫調節剤として有用である。免疫調節は、異常に低下した免疫力の増進、或いは、異常に増加した免疫力の均衡維持を含む。よって、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール化合物は、低下した免疫システム及び癌による各種疾患の予防及び治療だけでなく、自己免疫反応による関節炎、アトピー、認知症及び敗血症のような自己免疫疾患の抑制、予防及び治療効能を持つ。
【0019】
免疫機能の調節における重要なことは、免疫を担当するT細胞の増加でなく、これらのT細胞の活性化の程度、T4とT8細胞の比率及びT4とT8細胞から分泌されたサイトカインの種類である。本発明者らは、本発明のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体の免疫調節効果を調べるために、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体をT−4リンパ球及びT−8リンパ球に処理した。その結果、これらの細胞からサイトカインの一種であるIL−2の分泌が増加されることを確認した(図1参照)。また、多量のサイトカインを一度に測定できるバイオ−プレックス(Bio−plex)を用いて本発明の化合物3で細胞を処理した後、T細胞でのサイトカインの分泌を観察した。その結果、対照群に比べて化合物3で処理した群でIL−2、IL−4及びIL−5の分泌が大幅に多かった(図2参照)。最も多く増加するサイトカインであるIL−4は、抗炎症サイトカインと呼ばれる多機能サイトカインであって、T4細胞から分化したTh2から分泌される。T4がTh1に分化されるのを抑制することで、IL−4は抗癌効果及び免疫反応の調節に非常に重要な役割を果し、自己免疫反応による細胞損傷も抑制できる(Annu. Rev. Immunol. 1999. 17:701〜738)。本発明の化合物は、IL−2の分泌刺激による免疫増強と共に、IL−4の分泌刺激による免疫調節効果を持つ。また、本発明の化合物は、T4と細胞毒性免疫細胞(cytotoxic immune cell)であるT8細胞とを増加及び活性化させ、T4細胞とT8細胞との比を正常に維持できる。よって、免疫体系の異常減少又は異常増加による副作用及び疾患の治療に有用である。敗血性ショックモデルでは、これらの免疫増進の効果がIL−4の分泌刺激及びアポトーシス(apoptosis)を抑制する方向に作用できる。その結果、敗血症の致死率を顕著に低下させることができる。したがって、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、IL−4サイトカインの分泌を増加させるため、例えば、敗血症の予防及び治療など、自己免疫治療に有用である。
【0020】
細胞間の相互作用が多様な造血細胞及び免疫細胞を刺激すると知られており、特に樹状突起細胞は兔疫体系に非常に重要なものと知られている。本発明者らは、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が分離・誘導された樹状突起細胞及びTCR(t-cell Receptor)の相互作用にどのような影響を及ぼすかを調査した。このために、化合物3で処理された樹状突起細胞(DC)のRT−PCRが遂行され、DCとTCRとの間の相互作用を媒介する接着分子の発現を測定した。その結果、Vcam−1、Icam−1、Icam−2、VLA−4、VLA−5及びLFA−1のような接着分子の発現が対照群に比べて増加した(図5参照)。上記の結果から、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、T細胞を活性化すると共に、樹状突起細胞を活性化して、それによってT細胞が癌細胞の抗原を認識するようになることで、特異的な抗癌効果も持つことを確認した。
【0021】
以上の結果から、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、T細胞を活性化することでサイトカインの分泌を増加させ、細胞間接着分子の発現を増加させることで、造血細胞及び免疫細胞の増殖及び刺激を促進して、免疫力を増加させる効果を持つことを確認した。その結果として、これらの化合物には多様な疾病に対する免疫療法としての使用の可能性があることを確認した。例えば、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、T4及びT8細胞増殖効果により、人のAIDS患者の免疫力を増進させる治療剤又は健康食品として使用され得る。AIDS患者の初期には、T4が減少するが、深刻な発病は観察されない。一方、AIDS患者の後期には、T8が減少して深刻な発病が観察される。従って、T4/T8の比率が重要な要因になり、T4およびT8の絶対的数字も重要な要因になる。さらに、本発明者らは、IL−4分泌の増加による免疫機能の調節が各種の自己免疫疾患にも効果的であることを確認した。本発明による化合物の敗血性ショックの予防及び治療としての用途を調査するために、マウスのCLP(Cecal Ligation and Punctur)テストが行なわれた。その結果、実験した全てのマウスが120時間まで生存した。よって、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体が敗血性ショック(敗血症)の予防及び治療に有用であることを確認した。このような結果から、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、免疫増進効果及び免疫機能調節効果を持つ理想的な免疫調節剤として有利であることを確認した。
【0022】
また、本発明者らは、本発明の化合物の癌の予防及び治療剤としての用途を調査するために、治療が非常に難しい癌として知られている胆管癌及び悪性黒色腫に対する化合物の抗癌効果を調べた。まず、本発明者らは、胆管癌細胞系であるKIBG−5をハムスターに静脈注射及び皮下注射して癌発生を誘導した。続いて、RPMI、BMSC、アデノウイルス/ΔE1、樹状突起細胞+腫瘍 溶菌液、化合物3、アデノウイルス/IL−2及び混合物をハムスターに注入し、4週間後、その結果が観察された。その結果を肉眼や顕微鏡で観察したところ、樹状突起細胞+腫瘍溶菌液処理群、化合物3処理及びアデノウイルス/IL−2処理群は、腫瘍が形成されなかった(図6参照)。また、腫瘍細胞を静脈注射して8週間後に観察した。その結果、BMSC+アデノウイルス/IL−2処理群を除いた全ての群で肺転移病変が形成された。生体組織検査により、樹状突起細胞+腫瘍溶菌液処理群及び化合物3処理群で微細な病巣が観察された(図7、図8及び図9参照)。また、腫瘍細胞を皮下注入して12週間後に観察した。その結果、BMSC+Ad/hIL−2処理群及びBMSC+Ad/hIL−2+化合物3処理群を除いた全ての群で腫瘍が形成された(図10参照)。腫瘍の形成は化合物3の濃度に依存して抑制された(図11及び図12参照)。後述するように、本発明者らは、ハムスターに胆管癌細胞(KIBG−5)を注入して転移性癌を誘導し、ハムスターを本発明のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体で処理した。その結果、本発明のこれらの化合物の処理によって癌発生が著しく抑制されることを確認した。
【0023】
悪性黒色腫細胞をマウス尻尾の静脈に注入して癌発生を誘導した。続いて、RPMI、樹状突起細胞(DC)、腫瘍溶菌液及び化合物3で各々又は混合して処理した。その結果、RPMI処理された対照群では肺転移病変が形成されたが、化合物3と樹状突起細胞+腫瘍溶菌液とで処理した群では肺転移病変が観察されなかった(図13及び図14参照)。また、化合物3処理群と樹状突起細胞+腫瘍溶菌液処理群とでは、腫瘍を注入し、6週間後、その結果を観察したところ、90%の生存率を見せた(図15参照)。これらの結果から、本発明者らは、化合物3が抗癌効果を持つ、T細胞(T4及びT8)を活性化させることを確認した。よって、化合物3で活性化させたT−細胞の悪性黒色腫に対する細胞毒性検査をインビトロで実施した。その結果、化合物3でT−細胞を処理しなかった時よりも化合物3でT−細胞を処理した時、細胞毒性が増加して、また、T−細胞の量が増加するほど細胞毒性が増加することを観察した(図16参照)。前述するように、本発明のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、癌発生を抑制させ、T細胞を活性化させて癌細胞に対する毒性を示すことが確認され、抗癌剤として有用であることが示された。本発明の生成物を抗癌剤として使用することは、胆管癌、腎臓癌及び悪性黒色腫に有望であり、他の形態の悪性疾患にも使用しうる。
【0024】
以後、本発明者らは、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分とする試験用カプセル及び錠剤を製造することにより本発明を完成した。本発明の免疫調節剤、AIDS治療剤、敗血症治療剤及び抗癌剤は、 モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を、化合物の総重量に対して20〜100重量%含有することが好ましく、30〜100重量%含有することがより好ましい。モノアセチルジアシルグリセロールの量が少なかったり多かったりする場合、投薬し難いだけで特別な利益はない。また、敗血症治療剤、抗癌剤及び免疫調節剤として経口投与する場合には、1日1回〜3回、または1回〜4回、1回50mg/kgの用量で投与することが好ましい。本発明による化合物は、有効成分に加えて医薬としての形態で製造するために、本発明の化合物に薬学的に許容される1以上の担体を追加で含むことができる。担体は生理食塩水、緩衝生理食塩水、水、グリセロール及びエタノールからなる群から選ばれるが、これに限定されるものではない。適した公知の医学製剤(Remingtons's Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing Company、Easton PA)の何れも使用可能である。本発明の組成物は、経口投与が可能であり、一般的な医薬製剤の形態で使用できる。本発明の組成物は、一般的に使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、分解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を混合することにより、経口投与用として調製できる。本発明の組成物の有効な投与量は、年齢、性別、健康状態、活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度及び共に使用する薬物によって決定され得る。例えば、1日経口投与量は0.24〜9.0gであるが、常にこれに限定されるものではない。また、本発明は用量単位の医学製剤を含む。これは、製剤が個別要素、例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、丸剤、坐薬及びアンプル剤として存在し、これらの活性成分含量は個別投与量の分率又は倍数に該当することを意味する。用量単位は、例えば、個別投与量の1、2、3又は4倍、或いは、1/2、1/3又は1/4倍を含有できる。個別投与量は、好ましくは1回に投与され、通常1日投与量の全部、1/2、1/3又は1/4倍に該当する活性化合物の量を含有する。経口投与のための固形製剤は錠製、丸剤、散剤、及びカプセル剤であり、経口投与のための液状製剤は懸濁剤、液剤、乳剤及びシロップ剤である。前述した製剤はよく使用される水、液状パラフィンのような簡単な希釈剤以外に多様な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤を含むことができる。本発明の化合物は、前述した経口投与用製剤だけでなく、注射用製剤として提供され得る。例えば、滅菌注射用の水性又は油性懸濁液は、公知の技術により分散剤、湿潤剤又は懸濁剤を用いて製造できる。薬学的に許容される溶媒は、水、リンゲル液、等張NaCl溶液を包含する。滅菌固定オイルは、溶媒又は懸濁媒質として使用され、モノグリセリド、ジグリセリド及びポリプロピレングリコールを含む無刺激性固定オイルおよびオレイン酸のような脂肪酸を含むことができる。
【0025】
また、本発明は、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分とする免疫調節及び抗癌用の健康食品を提供する。本発明における“健康食品”は、各種疾病の治療や予防、身体機能の均衡的な維持のための食料品、営養剤及び健康補助剤を含む。本発明により製造された健康食品は、0.02〜100重量%のモノアセチルジアシルグリセロールを含有する。本発明の化合物を健康食品として使用する場合、前記化合物を完全な化合物として使用したり、他の食品又は食品成分と共に混合して使用する等、通常の方法によって使用することができる。混合化合物の有効量はその使用目的(予防、健康又は治療的処置)による。予防を目的として使用する場合、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体の量は、健康食品の総重量に対し、好ましくは0.02〜2重量%、より好ましくは0.2〜0.6重量%を含む。モノアセチルジアシルグリセロールの量が少なかったり多かったりする場合、健康食品を飲み難いだけで特別な利益はない。細胞毒性検査でも支持された通り、有効成分は健康の調節又は保存を目的とする長期間の摂取でも安全である。本発明の構成物を含有する食品の種類は特別な制限がない。例えば、肉類ソーセージ、パン、スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤が本発明の組成物を含有する健康食品として製造可能である。健康食品が疾病の治療及び予防を目的とする営養剤や健康補助剤として使用される場合、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体の量は、健康食品の総重量に対して20〜100重量%、好ましくは30〜100重量%、より好ましくは35〜95重量%を含む。このとき、1日摂取量は0.18〜9.0gであるが、これに限定されるものではない。製剤は錠剤及びカプセル剤を含む。
【0026】
前述したように、本発明のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、T細胞の活性化によりサイトカインの分泌を増加させ、細胞間接着分子の発現の増加により造血細胞および免疫細胞を刺激することで、免疫力を増加させ、自己免疫疾患及び癌を予防及び治療する。
【0027】
以下、本発明の実施形態を本発明のよりよい理解の為に詳細に説明する。但し、後述する実施形態は本発明の例示だけで、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
モノアセチルジアシルグリセロール誘導体がT細胞の増殖及び単核球の増殖に及ぼす影響
【0029】
(実施例1−1)モノアセチルジアシルグリセロール誘導体がT細胞の増殖に及ぼす影響
【0030】
(大韓民国ソウルの牙山研究所の生命科学動物ラボで提供された)C57BL/6マウスの脾臓から脾臓細胞を収集した。繰返し行う吸引(aspiration)及びフラッシング(flushing)により単一細胞懸濁液を得た。塩化アンモニウム(ammonium chloride)を用いて赤血球細胞を除去し、ナイロンウールを通過させながら細胞残屑(debris)と凝集塊(clump)とを除去した。抗ヤギIgG(MACS bead、Miltenyi Biotec、bergich gladbach、Germany)、あるいは抗マウスCD4(MACS bead、Miltenyi Biotec、bergich gladbach、Germany)又は抗マウスCD8抗体(MACS bead、Miltenyi Biotec、bergich gladbach、Germany)を含む磁性ビーズ(MACS bead、Miltenyi Biotec、bergich gladbach、Germany)を用いてT細胞を精製した(Turner and Dockrell(1996)Immunology、87:339−342)。
【0031】
T細胞懸濁液は、10%牛胎児血清(Fetal Bovine serum;以下、“FBS”と称する。)(Gibco、Grand Island、NY)が補充されたIMDM(Isocove's modified dulbecco's medium)(Gibco、Grand Island、NY)で懸濁された。(大韓民国ソウルの梨花女子大学で合成し提供された)1μg/mlの化合物1、2、4、5と、0.01、0.1、1μg/ml濃度の化合物3と、20ng/ml濃度のIL−2とを処理して、96ウェルプレートで、ウェル別に5×104の生育可能な細胞を培養した。 培養6日目に3H−チミジンを各細胞培養ウェル当たり1μCiで処理して24時間培養した。培養7日目に細胞を回収して、下記の数式1によってSI(incorporation index)を計算した。
【0032】
(数1)
SI=実験群のウェルから吸収された3H−チミジン(サンプルのCPM)/対照群のウェルから吸収された3H−チミジン(対照群のCPM)
【0033】
その結果、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体処理群では、2.05チミジンの取り込みによりT細胞のSIが2.05に増加した。これはIL−2処理群のものと類似した(表1)。
【表1】
上記表において、*P<0.05、**P<0.005であり、全ての検査は、3重に遂行され、3回繰返された。
(実施例1−2)モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が単核球の増殖に及ぼす影響
【0034】
ヒストパク(Histopaque)1077を用いて人間の全血(whole blood)から単核球を分離した。続いて、5%CO2培養器で3時間、単核球細胞(5×106細胞/ml)が組織培養フラスコに付着するようにした。3時間後、付着されない細胞を除去し、付着細胞を10%FBSが補充されたRPMI 1640培地(GIBCO、Grand Island、NY)内の96ウェルプレートにのせる。各ウェル当たり生育できる細胞5×104個を1μg/ml濃度の化合物1〜5と共に96−ウェルプレートで培養した。6日目に細胞を各ウェル別に1μCi3H−チミジンを用いて24時間培養した。7日目に細胞を回収した後、取り込まれた3H−チミジンを測定した。SIは上記式1によって計算された。その結果、化合物1〜5処理群は、対照群に比べて単核球のSI数値が10.68倍増加し、これは化合物が単核球の増殖を刺激することを意味する(表2)。
【表2】
上記表において、*P<0.001であり、全ての検査は、3重に遂行され、2回繰返された。
【実施例2】
【0035】
化合物3がT細胞の活性に及ぼす影響
【0036】
(実施例2−1)エリスポット(Elispot)によるサイトカイン測定
エリスポット生物定量法(ESAT−6enzyme−linked immunospot assay)は、この定量法で使用されるエリスポットプレートの各ウェルの底面がサイトカイン特異的な抗体で予めコートされているため、メンブレンに結合したサイトカインを検出するのに非常に敏感な定量法である。従って、エリスポット定量法によりT細胞の活性を測定した。T細胞を24ウェル滅菌組織培養プレート(Nunc、Denmark)に各ウエル当たり2×106細胞を接種した後、化合物3の0.01、0.1、1μg/ml濃度、或いは、IL−2の20ng/ml濃度で処理した。7日目に細胞を回収して、1次抗体(マウスIL−2)でコートされたマルチテストプレート(Elispot system kit、AID、Straberg、Germany)に5×105細胞を接種した。上記プレートを24時間5%CO2培養器で培養した後、細胞によるサイトカインの分泌があった。これは、製造会社の指針に従って市販のIL−2エリスポットキットを用いるエリスポットにより決定される1次抗体によりキャップチャされた。各サンプルに対して2回実験した。エリスポット読取機(AID Elispot Reader System)を用いてエリスポットによりIL−2を産生する細胞の数を算出した。その結果、化合物3処理群は、対照群に比べて1.52倍増加したT−4活性と、1.46倍増加したT−8活性とを示した(図1)。
【0037】
(実施例2−2)バイオ−プレックスを用いたサイトカイン測定
バイオ−プレックスは、1つのウェルで多量のサイトカインを一度に測定できる。よって、バイオ−プレックスキットは、T細胞の活性化の際、分泌されるTh1/Th2経路の8種のサイトカインを定量するのに用いられた。24−ウェル滅菌組織培養プレート(Nunc、Denmark)を抗CD3および抗CD28で処理した。プレートに2×106/mlのT細胞が接種された。T細胞を活性化するために、0.1、1μg/ml化合物3で処理した後、5日間培養した。5日目、各段階にある培養液を回収して遠心分離した。上清液を回収し、その内部に分泌されたサイトカインをバイオ−プレックスキットを用いて製造会社(Bio−rad)の指針に従って定量化した。その結果、化合物3で処理した群において、8種のサイトカイン(IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IL−12、INF−γ、GM−CSF、TNF−α)のうちの3種(IL−2、IL−4、IL−5)が分泌され、その量は化合物3を処理しない対照群に比べて多かった(図2)。
【実施例3】
【0038】
T細胞の増殖の分析
化合物3がAIDS患者の免疫細胞に及ぼす影響を確認するために、次のような実験を遂行した。まず、AIDS患者の末梢血液からヒストパク(Histopaque)1077によって単核球細胞を回収した。塩化アンモニウムを用いて赤血球 細胞を除去した後、ナイロンウールを通過させながら細胞残屑と凝集塊とを除去した。T細胞をマグネチックビーズ(抗ヒトCD3)(MACS bead、Miltenyi Biotec)を用いて精製した。T細胞懸濁液は、10%牛胎児血清(Fetal Bovine serum;以下、“FBS”と称する。)(Gibco、Grand Island、NY)が補充されたIMDM(Isocove's modified dulbecco's medium)(Gibco、Grand Island、NY)で懸濁された。96ウェルプレートで、0.01、0.1、1μg/ml濃度の化合物3または20ng/ml濃度のIL−2とで処理して、ウェル別に5×104生育可能な細胞を培養した。培養6日目に3H−チミジンを各細胞培養ウェル当たり1μCiで処理して24時間培養した。培養7日目に細胞を回収して3H−チミジンの取り込みを計算した。SI(刺激指数)は前述した式1により計算された。その結果、表3に示すように、AIDS患者の場合、T細胞の増殖アッセイで、化合物3処理群における全ての患者(4名中の4名)のチミジンの摂取によるT細胞刺激指数が、対照群に比べて1.5〜3.9倍増加したことが表された。化合物3による刺激の全般的な結果は、IL−2による刺激と比較可能である。
【表3】
【実施例4】
【0039】
化合物3が樹状突起細胞の接着分子の発現に及ぼす影響
【0040】
(実施例4−1)樹状突起細胞の培養
骨髄細胞は、Balb/c AnNマウスの大腿骨及び脛骨から公知の方法により回収した(Park,J.etal.(2003)J.Korean Med. Sci.,18:372−380)。細胞をRPMIで3回洗浄した後、単核球を回収した。これらの単核球細胞をRPMI及び10%FBS内で3時間組織培養フラスコに付着されるようにした。培養後、付着細胞(単核球細胞)を除去した後、マウスrGM−CSF(R&D systems, Minneapolis, MN, USA)20ng/ml、およびマウスIL−4(R&D systems)10ng/ml及びマウスTNF−α(R&D systems)2.5ng/mlが補充された、10%FBS追加のRPMI中、未付着細胞を1×105細胞/mlにて100mm織培養皿に配置した。培養皿は3日毎に交換した。マウスTNF−α(R&D systems)を6日目に添加した後、11日になるまで3日毎に添加した。成熟樹状突起細胞は接着分子研究のRT−PCR用として採取された。その結果、円形の顆粒細胞を3日間培養したとき、これらの細胞は細胞培養プレートのウェルの底面に付着して成長するクラスターを形成し、成熟樹状突起細胞は培養6日又は7日目に群を形成しながら成長した。培養9日目に樹状突起細胞が特異的に小さく長い突起(protrusion)を形成した(図3)。
【0041】
(実施例4−2)樹状突起細胞の表現型の決定
トリパンブルー染色に対して陰性であり、サイズが大きい細胞を計数して、これらのそれぞれの形態を調べた。1×106細胞/mlの細胞を培養した後、洗浄し、1%パラホルムアルデヒド溶液で固定した。固定された細胞はFACScan(Beckton Dickinson、Mountain View、CA、U.S.A)を用いてフローサイトメトリー解析(Flow cytometric analysis)を行うことで、下記のマーカーに対する抗体によって表現型を決定した。ハムスターIgGに対する同型(isotype)対照群、ラットIgG2a、DCマーカー:DEC−205(NLDC−145)及びCD11C、共同−刺激/接着(Co−stimutatory/adhesion)分子:CD80(B7−1)及びCD86(B7−2)、マクロファージマーカー:CD14及びF4/80、顆粒球(Granulocyte)マーカー:Gr−1(Pharmingen、Hamburg、Germany)。その結果、共同−刺激特異的分子マーカーであるCD80及びCD86、樹状突起細胞特異的マーカーであるCD11C及びDEC−205の水準は高かったが、単核球特異的マーカーであるCD14及びF4/80と、顆粒球特異的マーカーであるGr−1との水準は低かった。このような結果は、本発明で分離された樹状突起細胞が、樹状突起細胞の正確な表現型と97%〜98%の純度とを持つことを意味する(図4)。
【0042】
(実施例4−3)接着分子の処理及び発現分析
一般的に、細胞間の相互作用が、多様な造血細胞及び免疫細胞の刺激の過程に関与することが知られている。よって、本発明者らは、化合物3が言及された細胞の多様な接着分子に影響を及ぼすかを確認しようと努力した。特に、前述した実施例で培養した樹状突起細胞を化合物3で1μg/ml濃度で処理し、RT−PCRを遂行した。
【0043】
次のプライマー:Icam−1(配列表の配列番号1及び2)、Icam−2(配列表の配列番号3及び4)、Vcam−1(配列表の配列番号5及び6)、VLA−4(配列表の配列番号7及び8)、VLA−5(配列表の配列番号9及び10)、LFA−1(配列表の配列番号11及び12)及びGAPDH(配列表の配列番号13及び14)をRT−PCR用として使用した。ここで使用された反応セットは、2μlのDNA、10x緩衝液、1.5μlのMgCl2、2μlのdNTP、0.5μlのフォワードプライマー、0.5μlのリバースプライマー、0.2μlのポリメラーゼ及び15.8μlの蒸溜水からなる混合液であった。
【0044】
オリゴ(dt)−プライマーを用いて培養した低密度細胞であるMS−5及び樹状突起細胞から分離したトータルRNAを逆転写させ、94℃で30秒、65℃で30秒及び72℃で50秒PCRを遂行した。PCR遂行回数は総34回、PCR生成物は遂行毎に2倍ずつ増加した。RT−PCRによりVcam−1、Icam−1、Icam−2、VLA−4、VLA−5、およびLFA−1のような接着分子の発現を確認した。定量のために、GARDHに対するPCRを遂行して、相応するcDNAを確認した。その結果は、化合物3で処理した樹状突起細胞に対する接着分子Icam−2、VLA−5、LFA−1の発現が、対照群に比べて非常に増加したことを示した(図5)。
【実施例5】
【0045】
皮下注入法(ローカルモデル)及び静脈注入法(全身モデル)による化合物3の抗癌効果に関する検討
【0046】
(実施例5−1)胆管癌ハムスターモデル
6週齢の雌のシリアンゴールデンハムスター(Harlan、Indianapolis、India、USA)を特定病原菌不在飼育場で飼育した。無血清RPMI 1640培地100μlに懸濁されたKIBG−5細胞(Molcular therapy、Vol.3、No4、pp431−437)5×105を、大腿部血管に静脈注射(intravenously inject、I.V)した。また、無血清RPMI 1640培地100μlに懸濁されたKIGB−5の5×105細胞は、ハムスターの横腹に皮下注射(subcutaneously inject、S.C)された。KIBG−5注入されたハムスターは、下記の7つの群に分けた;
1)RPMI培地処理された対照群、
2)変形されないBMSC細胞(2.5×106)(Leukemia & Lymphoma,Vol.44,No11,pp1973−1978)で処理された実験群、
3)Ad/ΔE150MOI改変BMSC細胞処理された実験群(Leukemia & Lymphoma,Vol.44,No11,pp1973−1978)、
4)DC+腫瘍溶菌液(5×106)処理された実験群、
5)Ad/hIL−2 50 MOI改変BMSC細胞処理された実験群(Leukemia & Lymphoma,Vol.44,No11,pp1973−1978)、
6)Ad/hIL−2 50 MOI改変BMSC細胞処理された実験群+化合物3(25mg/kg/日)処理された実験群、及び
7)化合物3(25mg/kg/日)処理された実験群。
【0047】
ハムスターに癌細胞を注入(BMSC処理群)した1週間後、BMSC細胞2.5×106個を各ハムスターに再注入した。DC+腫瘍溶菌液(5×106)処理群の場合、DC細胞の5×106及び腫瘍溶菌液を1週、2週、3週、4週、6週及び8週のときに各ハムスターに注入(皮下注射又は静脈注射)し、12週間観察した。化合物3処理群の場合、KIBG−5細胞注射の1週間前に、化合物3の経口投与にて、2週間処置及び1週間休みの形式で8週間処置した。
【0048】
その結果、癌細胞注入してから4週間目に、対照群であるRPMI処理群、BMSC処理群及びBMSC+Ad/ΔE1処理群には腫瘍が形成されたが、DC+腫瘍溶菌液処理群、化合物3処理群及びBMSC+Ad/IL−2処理群には腫瘍が発見されなかった(図6)。また、癌細胞を注入してから8週間目に、対照群であるRPMI注入群、BMSC処理群及びBMSC+Ad/ΔE1注入群では多発的肺転移病変が発見され、DC+腫瘍溶菌液処理群及び化合物3処理群ではただ一つの小さな肺病変が発見された。しかしながら、BMSC+Ad/IL−2処理群では病変が発見されなかった(図7〜図9)。また、癌細胞の皮下注入してから12週間目に、対照群であるRPMI処理群、BMSC処理群、BMSC+Ad/ΔE1処理群及びDC+腫瘍溶菌液処理群では腫瘍が形成され、BMSC+Ad/hIL−2処理群では1匹で5mm以下の腫瘍が発見された。しかしながら、BMSC+Ad/hIL−2+化合物3処理群では腫瘍が全く形成されなかった(図10)。
【0049】
一方、6週齢の雌のシリアンハゴールデンハムスターを特定病原菌不在飼育場で飼育した。無血清RPMI 1640培地100μlに懸濁されたKIBG−5細胞(5×105)を大腿部血管に静脈注射した。ハムスターは、下記の4つの群に分けた;1)PBS対照群、2)化合物3(10mg/kg/日)処理群、3)化合物3(25mg/kg/日)処理群、4)化合物3(50mg/kg/日)処理群。腫瘍細胞注入1週間前、化合物3の経口投与を(10、25又は50mg/kg/日)、2週間処置及び1週間休みの形式で12週間行った。各群の動物は、4週間目、8週間目及び12週間目に病理検査に供された。4週間目の肉眼観察から、対照群において注入位置で腫瘍が発現され、化合物3(10、25、50mg/kg/日)処理群では腫瘍が発見されかった。また、8週間目、対照群は両側肺に多発的肺転移病変が観察された。化合物3(50mg/kg/日)処理群は肉眼では多発的肺転移病変が全く観察されなかったが、顕微鏡により一つの微細な病変が観察された。化合物3(10mg/kg/日)処理群では左側肺に腫瘍が見られた(図11および図12)。
【0050】
(実施例5−2)黒色腫マウスモデル
6週齢の雌C57BL/6マウス(韓国ソウルの牙山生命科学研究所で提供)を無菌飼育場で飼育した。無血清RPMI 1640培地100μlに懸濁されたB16F10細胞(2×104)を尻尾静脈に注射した。腫瘍細胞注入1週間前、下記の3群に処理された。
1)RPMI対照群
2)樹状突起細胞(DC)(5×105細胞/日)+腫瘍溶菌液処理群
3)化合物3(50mg/kg/日)処理群
【0051】
樹状突起細胞+腫瘍溶菌液処理群の場合、黒色腫細胞注入1週間前、1週間おきに腫瘍溶菌液と混合された5×105DC細胞を腹腔に注入した。化合物3処理群においては化合物3の50mg/kg/日がこの各マウスに処理された。黒色腫(B16F10)注入1週間前、2週間処置及び1週間休みの形式で6週間化合物3(50mg/kg/日)を経口投与した。その結果、4週間目の肉眼による発見から、対照群において両側肺に多発的肺転移病変が観察された。化合物3処理群と樹状突起細胞+腫瘍溶菌液処理群は、肺転移病変が全く観察されず(図13及び図14)、黒色腫(B16F10)注入後、6週間の観察で90%生存率を示した(図15)。
【0052】
化合物3の抗癌効果が化合物3のT細胞による活性化に因るという推定に基づいて、化合物3で活性化されたT細胞の悪性黒色腫細胞に対する細胞毒性検査を実施した。その結果、化合物3で活性化されたT細胞と黒色腫細胞との比率が100:1のとき、細胞毒性は42%増加した(図16)。
【実施例6】
【0053】
化合物3の毒性試験
合成した化合物3を、20g当り0.1ml容量で経口投与されるエタノール5%溶液に溶かした。対照群はエタノール5%溶液で処理された。SPF設備内で飼育されたICRマウスを検査動物として使用した。薬物投与1日前、その動物を捕獲した後、水や飼料は自由に摂取させた。体重25〜35gのICRマウス8〜10匹を一つの群とした。投与量を62.5mg/kg、125mg/kg、250mg/kg、500mg/kg、1g/kg、2g/kgに増加させながら、試験薬は1回経口投与された。生存数及び異常の有無を投与日から14日間肉眼で観察した。LD50はLichfield-Wilcoxon法に`より計算し(白須、泰彦、吐山、豊秋:新毒性試験法−方法及び評価−急性毒性試験、Realize Inc.、Tokyo、1988)、体重増加率は次の数式2によって算出した。
【0054】
(数2)
体重増加率(%)={14日目の体重−0日目の体重}÷{0日目の体重}×100
【0055】
結果は表4に示す。62.5mg/kg〜2g/kgの化合物3では、毒性が全く検出されなかった。このような観察から、LD50が全部2g/kg以上であることを意味した。また、投与後14日間の観察の際、異常信号は肉眼で観察されなかった。処理群内の動物の体重は、対照群動物と同様に継続的に増加した。表5に示すように、重要で且つ治療に特異的な体重変化(増加又は減少)は、観察されなかった。
【表4】
【表5】
長時間の肝毒性検査は、化合物3の投与量を100mg/kg体重/日としてマウスに4週間経口投与して実施し、肝機能検査、血中脂質検査及びシトクロームC−450活性度検査が観察された。4週末に肝組織が観察された。どのような重大な副作用も観察されなかった。
【実施例7】
【0056】
CLP(Cecal Ligation and Puncture)テスト
CLPテストは、上記化合物3の敗血性ショックに対する予防及び治療効果を確認するために行われた。10匹の7〜10週齢の同種交配雄C3H/HeNマウス(体重20〜25g)を一つの群として形成した。これらのマウスに2週間50mg/kg/日の容量で処置し、1週間休みの形式で化合物3を経口投与した後、ケタミン(ketamine)80mg/kg及びロムパン(rompun)16mg/kgを使用してマウスを麻酔した。麻酔されたマウスにCLPモデルによる敗血性ショックを誘導させた。敗血性ショックを誘導していから1時間後、化合物3の50mg/kgで処理し、以後、24時間毎に同様な処理が3日間継続された。対照群にPBS+5%エタノール溶液が経口投与された。化合物3処理群及び対照群の時間経過に従う生存率を表6に示す。化合物3処理群は120時間経過後にも100%の生存率を見せた。
【表6】
(製造例1)化合物3を有効成分として含有する医薬品の製造
【0057】
上記実験例により化合物3が優れた免疫調節及び抗癌活性を持つことを確認した後、本発明者らは化合物3を有効成分として含有する治療剤を製造した。また、化合物3を有効成分として含有する治療剤の下記製造例は、治療剤の製造だけでなく、健康食品の製造にも応用できる。下記の製造例において、%は別途の言及がなければ重量%を示す。
【0058】
(製造例1−1)軟質ゼラチンカプセルの製造
【0059】
(製造例1−1−1)
化合物3 30%
ビタミンC 4.5%
ビタミンD3 0.001%
硫酸マンガン 0.1%
ワックス(Wax) 10%
パーム油 25%
紅花油(Carthamus tinctorius) 30.399%
【0060】
(製造例1−1−2)
化合物3 31.25%
月見草オイル 59.75%
大豆油 6.7%
ビタミンE酢酸エステル(DL-α- 酢酸トコフェロール)2.1%
大豆レシチン 0.2%
【0061】
(製造例1−1−3)
化合物3 98.0%
ビタミンE酢酸エステル(DL-α- 酢酸トコフェロール)2.0%
【0062】
(製造例1−2)錠剤の製造
化合物3 30%
ビタミンC 10%
ビタミンD3 0.001%
硫酸マンガン 0.1%
結晶セルロース 25.0%
乳糖 32.999%
ステアリン酸マグネシウム 2%
【0063】
(製造例1−3)注射用製剤の製造
化合物3 2%
プロピレングリコール 35%
モノグリセリド 8%
エタノール 5%
水 50%
前述した組成及び含量に基づき、通常の方法を用いて注射用製剤を製造した。
【0064】
(製造例2)化合物1、2、4及び5を各々有効成分として含有する医薬品の製造
【0065】
化合物3の代りに、各々化合物1、2、4及び5を同比率で使用した以外は、前述した製造例1と同様な方法及び組成により、軟質ゼラチンカプセル、錠剤及び注射剤懸濁液を製造した。
【0066】
(製造例3)化合物3を有効成分として含有する健康食品の製造
前記実験例により化合物3が優れた免疫調節効果、抗敗血性ショック及び抗癌活性を持つことを確認した後、本発明者らは化合物3を有効成分として含有する健康食品を製造した。
【0067】
(製造例3−1)飲料の製造
蜂蜜 522mg
チオクト酸アミド 5mg
ニコチン酸アミド 10mg
塩酸リボフラビンナトリウム 3mg
塩酸ピリドキシン 2mg
イノシトール 30mg
オルト酸 50mg
化合物3 0.48〜1.28mg
水 200ml
前述した組成及び含量に基づき、通常の方法を用いて飲料を製造した。
【0068】
(製造例3−2)チューインガムの製造
ガムベース 20%
砂糖 76.36〜76.76%
化合物3 0.24〜0.64%
フルーツ香料 1%
水 2%
チューインガムは、前記組成及び含量に基づき、下記の通常の方法を用いて製造した。
【0069】
(製造例3−3)キャンディの製造
砂糖 50〜60%
水飴 39.26〜49.66%
化合物3 0.24〜0.64%
オレンジ香料 0.1%
キャンディは、前記組成及び含量に基づき、下記の通常の方法を用いて製造した。
【0070】
(製造例3−4)ビスケットの製造
強力粉1級 88kg
薄力粉1級 76.4kg
精白糖 16.5kg
食塩 2.5kg
グルコース 2.7kg
パームショートニング 40.5kg
アンモ 5.3kg
重曹 0.6kg
重硫酸ナトリウム 0.55kg
コメ粉 5.0kg
ビタミンB1 0.003kg
ビタミンB2 0.003kg
ミルク香料 0.16kg
水 71.1kg
全脂粉乳 4kg
代用粉乳 1kg
第1リン酸カルシウム 0.1kg
散布塩 1kg
噴霧乳 25kg
化合物3 0.2〜0.5kg
ビスケットは、前記組成及び含量に基づき、下記の通常の方法を用いて製造した。
【0071】
(製造例3−5)アイスクリームの製造
乳脂肪 10.0%
無脂乳固形分 10.8%
砂糖 12.0%
水飴 3.0%
乳化安定剤(スパン) 0.5%
香料(ストロベリ) 0.15%
水 63.31〜62.91%
化合物3 0.24〜0.64%
アイスクリームは、前記組成及び含量に基づき、下記の通常の方法を用いて製造した。
【0072】
(製造例3−6)チョコレートの製造
砂糖 34.36〜34.76%
ココアバター 34%
ココアマット 15%
ココアパウダー 15%
レシチン 0.5%
バニラ香料 0.5%
化合物3 0.24〜0.64%
チョコレートは、前記組成及び含量に基づき、下記の通常の方法を用いて製造した。
【0073】
(製造例4)化合物1、2、4及び5を有効成分として含有する健康食品の製造
【0074】
化合物3の代りに、各々化合物1、2、4及び5を同比率で使用した以外は、前記前述した製造例3と同様な方法及び組成に基づき、飲料、チューインガム、キャンディ、ビスケット、アイスクリーム及びチョコレートを製造した。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】対照群、IL−2処理群(20ng/ml処理)及び化合物3処理群(1μg/ml処理)のT細胞(T−4及びT−8)活性を示す写真セットである。各数字はIL−2特異的抗体を捕獲したスポットの個数を示す。
【図2】化合物3によるTリンパ球の活性化時のサイトカインの分泌を示すグラフである。 (1)対照群:抗CD3、抗CD28処理群 (2)実験群:抗CD3、抗CD28および化合物3(0.1、1μg /ml)処理群
【図3】GM−CSF(20ng/ml)、IL−4(20ng/ml)及びTNF−α(5ng/ml)を処理した後、マウス骨髄細胞由来マウス樹状突起細胞(DC)の形態を示す写真である。 A:マウス骨髄細胞を1×106細胞数/ml密度に接種した直後の顕微鏡写真(×100)である。 B:3日間の培養後、丸い骨髄幹細胞を示す顕微鏡写真(×400)であって、前記細胞はクラスターを形成し、細胞培養プレートウェルの底面に付着して成長する。 C:培養6日目または7日目にクラスターを形成しつつある成熟樹状突起細胞の成長を示す顕微鏡写真(×400)であって、小さな写真は特定細胞の拡大写真(×2)である。 D:培養9日目の樹状突起細胞が特異的に長くて小さな突起(protrusion)を形成する樹状突起細胞の顕微鏡写真(×1000)であって、小さな写真は特定細胞の拡大写真(×2)である。
【図4】Balb/c AnNマウスから分離した骨髄細胞の培養11日目の樹状突起細胞の特異的マーカー、単核球特異的マーカー及び顆粒球特異的マーカーの発現を分析したFACS結果を示すグラフである(このとき、ハムスターIgG及びラットIgG2aに対する異性体対照群染色がセッティングマーカー系(直線)として使用された)。 下記のマーカーが使用される。 共同刺激特異的マーカーとしてCD80及びCD86 樹状突起細胞特異的マーカーとしてCD11c及びDEC−205 単核球/大食細胞特異的マーカーとしてCD14及びF4/80 顆粒球特異的マーカーとしてGr−1
【図5】接着分子の発現に対する樹状突起細胞の化合物3の影響を示す電気泳動写真である。 レーン1:Vcam−1 レーン2:Icam−1 レーン3:Icam−2 レーン4:VLA−4 レーン5:VLA−5 レーン6:LFA−1 レーン7:GAPDH (+):化合物3処理群、 (−):対照群。
【図6】腫瘍KIGB−5を静脈注射し、異なる条件で処理して4週間後、注入部位の近所での腫瘍形成結果を示す写真である。 A:RPMI対照群 B:BMSC処理群 C:BMSC+Ad/ΔE1処理群。
【図7】腫瘍KIGB−5を静脈注射し、異なる条件で処理して8週間後、注入部位の近辺での腫瘍形成結果を示す写真である。 A:RPMI対照群 B:BMSC(2.5×106細胞/日)処理群 C:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/ΔE1(50 MOI)処理群 D:樹状突起細胞(5×106細胞/日)+腫瘍分解処理群 E:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/IL−2(50 MOI)処理群 F:化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図8】腫瘍KIGB−5を静脈注射し、8週間後、各群での肺転移病変を肉眼や顕微鏡による観察を示す写真である。 図8において、 A:RPMI対照群 B:BMSC(2.5×106細胞/日)処理群 C:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/ΔE1(50 MOI)処理群 D:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/ΔIL−2(50 MOI)処理群
【図9】腫瘍KIGB−5を静脈注射し、8週間後、各群での肺転移病変を肉眼や顕微鏡による観察を示す写真である。 図9において、 A:RPMI対照群 B:樹状突起細胞(5×106細胞/日)+腫瘍分解処理群 C:化合物3(25mg/kg/日)処理群。
【図10】腫瘍KIGB−5を皮下移植し、12週間後、各群の肺腫瘍及びそのサイズを示す写真である。 A:RPMI対照群 B:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/ΔE1(50 MOI)処理群 C:BMSC(2.5×106細胞/日)処理群 D:DC(5×106細胞/日)+腫瘍分解処理群 E:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/IL−2(50 MOI)処理群 F:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/IL−2(50 MOI)+化合物3(25mg/kg/日)処理群 G:化合物3(25mg/kg/日)処理群。
【図11】胆管癌細胞(5×105細胞)を注入し、8週間後、化合物3の多様な容量で処理されたシリアンハゴールデンハムスターの各群の肺転移病変の肉眼所見を示す写真である。 A:PBS対照群 B:化合物3(10mg/kg/日)処理群 C:化合物3(25mg/kg/日)処理群 D:化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図12】胆管癌細胞(5×105細胞)を注入し、8週間後、化合物3の多様な容量で処理されたシリアンハゴールデンハムスターの各群の肺転移病変の顕微鏡所見を示す写真である。 A:PBS対照群 B:化合物3(10mg/kg/日)処理群 C:化合物3(25mg/kg/日)処理群 D:化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図13】黒色腫細胞(2×104細胞)を静脈注入し、4週間後、多様に治療されたC57B1/6マウスのそれぞれの肺転移病変が肉眼で発見されることを示す写真である。 A:PBS対照群 B:樹状突起細胞(4×105細胞/日)+腫瘍分解処理群 C:化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図14】黒色腫細胞(2×104細胞)を静脈注入し、4週間後、多様に治療されたC57B1/6マウスのそれぞれの肺転移病変が肉眼で発見されることを示す写真である。 A:PBS対照群 B:樹状突起細胞(4×105細胞/日)+腫瘍分解処理群 C:化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図15】黒色腫細胞(2×104細胞)を静脈注入し、6週間の各処理群の生存率を示すグラフである。(1)RPMI対照群、(2)樹状突起細胞(5×105細胞/日)+腫瘍分解処理群、(3) 化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図16】黒色腫細胞に対する化合物3により活性化されたTリンパ球の細胞毒性を示すグラフである。(1) 対照群1:抗CD3、 抗CD28処理群(2) 対照群2: 抗CD3、 抗CD28とIL−2(20ng/ml)処理群(3) 実験群: 抗CD3、 抗CD28と化合物3(1μg/ml)処理群
【技術分野】
【0001】
本発明は鹿茸から抽出されたモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節剤、医薬品及び健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
鹿茸(ラテン語:Cervi parvum cornu)は、鹿科の動物から採取して乾燥した石灰化していない角である。韓国の伝統東洋医学では、人参と共に鹿茸が高く評価される各種薬効のために広く使用されている。鹿茸の伝統的な使用のための鹿科は、マンシュウジカ(Cervus nippon Temminick var.mantchuricus Swinhoe、 以下、C.N.と称する。)とロクジョウ(マンシュウアカジカ:Cervus elaphus L.)とに限定される。鹿茸は、多くの薬効を持つものと評価されている。鹿茸は、強壮剤、生長及び発育促進、造血、神経衰弱治療、心不全症治療、一般的な五臓六腑の機能向上に多様な効能があると知られている(韓国の伝統医学書籍である東医宝鑑を参照)。鹿茸の効果について伝統医学の他の書籍にも、心筋機能、疲労回復効果、抵抗力増進を含む強壮効果、滋養効果、活力増強効果が報告されている。鹿茸の神秘な化学的構成に関する研究が多様になされてきた。その結果、遊離アミノ酸、微量(金属)元素、六炭糖、五炭糖、へキソサミン、ウロン酸、シアル酸、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチンA)、多様な脂肪酸、プロスタグランジン類のような活性成分を含有することが確認されている。また、糖脂質、リン脂質、コレステロール、ヒポキサンチン、コレスト−5−エン−3β、7α−ジオール、コレステロールエステル、ポリアミンが鹿茸抽出物から検出されたことが報告されている。また、エストロン及びエストラジオールレセプターの存在が報告されている(NIHコリアリポート、Vol.22, p359, 1985; Korean Biochem.J, Vol.9, No.3, p153, 1976; Korean Biochem.J, Vol.9, NO.4; p215, 1976;Korean Biochem.J, Vol.10, NO.1, p1, 1977;Shoykugaku Zasshi, 43(2), p173, 1989)。
【0003】
免疫は、各種病原体から生体を保護する防御メカニズムである。免疫不全は、免疫系システムの成分の欠陥により、免疫システムが多様な抗原に反応出来ないことである。免疫不全は、先天性免疫不全(congenital or primary immunodeficiency)と、後天性免疫不全(acquired or secondary immunodeficiency)とに大別される。先天性免疫不全の場合、B細胞又はT細胞が先天的に存在しないため、遺伝子治療、抗体注入及び骨髄移植のみにより治療できる。一方後天性免疫不全の場合、全ての免疫関連要素は先天的に存在するが、免疫反応に障害があるため、免疫要素の機能を増進させることにより改善できる。近年、関節炎、アトピー、認知症及び敗血症のような自己免疫疾患の発現が増加している。自己免疫疾患は免疫機能の過度な増加に起因する。自己免疫疾患の治療に免疫抑制剤が利用されているが、免疫抑制剤は免疫性をしばしば減少させる。免疫メカニズムの説明に基づき、免疫性調節のための免疫調節物質の開発に対する多様な試みが行われている。このような試みの目的は、非特異的に免疫細胞を刺激する免疫調節物質により免疫機能の増進又は抑制をコントロールすることにより、病原体に対抗する生体の防御力を増加させて副作用を最小化することにある。免疫調節物質は、癌、敗血症、退行性関節炎、感染症、認知症、老化、糖尿、貧血、皮膚病、喘息、アトピー、ストレス、神経衰弱、全身疲労、慢性疲労症候群及び骨粗しょう症のような生体の大分部の疾病を治療できる。現在、免疫調節物質としては、化学合成物質、微生物組成物及び生物製剤などが利用されている。前述した免疫調節物質の大部分は、片方の効果(免疫増進又は抑制のどちらか)のみを果たすため、使用が制限的である。よって、免疫調節物質は、副作用を誘発したり毒性を持ちうる。前述した問題を解決するために、免疫調節物質の開発をするために、無毒の食品素材、天然物質から抽出した有効成分及び伝統的な漢方薬を主なターゲットとして、薬剤としての効果を検査する実験が進行中にある。しかしながら、これらの免疫調節物質は、相変らず免疫増進又は免疫抑制のどちらか一つの側面のみを持っている。
【0004】
韓国における第1位の死亡原因である癌は毎年増加している。癌治療のための化学療法又は放射線療法は、癌細胞だけでなく一般の正常骨髄細胞、特に免疫及び造血を調節する造血細胞(hematopoietic cell)までも破壊させることにより、免疫システム及び造血器官の機能不全を引き起こす(Korean J. BRM., 1, p23, 1993;Korean J. BRM., 4、p47, 1994; Crit Rev Oncol Hematol. 1, p227, 1984)。敗血症は、重篤な全身への感染によって過度な全身炎症反応に達する、致死率45%を越える深刻な疾病である。大部分の場合、感染した宿主がグラム陰性菌の内毒素(endotoxin)に対して過度に反応する時に発生する。しかし、敗血性ショック治療剤としては、抗生物質、ステロイド製剤又はジグリス(Xigris、イーライリリー社製)が使用されているが、このような抗生物質、ステロイド製剤又はジグリスが敗血症に対して効果が大きくないため、敗血性ショックによる致死率は依然として高い。
【0005】
よって、本発明者は、民間療法として優れた薬理効能を持つ C.N.鹿茸の多様な成分を分離し、さらにこれらのC.N.鹿茸の有効成分の一つであるモノアセチルジアシルグリセロールが生体内で重要な免疫調節作用をすることを観察した。免疫調節効果の結果として、C.N.鹿茸が生体内で毒性を表さず、敗血性ショック治療及び抗癌作用剤として使用される可能性がある。また、本発明者は、本発明のモノアセチルジアシルグリセロールが、安全な免疫増進剤、免疫調節剤、敗血性ショック治療剤及び抗癌剤として使用できることを確認することで、本発明を完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節剤、敗血性ショック治療剤、抗癌剤及び健康食品を提供することにある。健康食品は、免疫調節、敗血症、癌の予防及び治療のためのものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、免疫増進を含む免疫調節に顕著な効果を果す。ハムスターに癌細胞系を注入して癌の発生を誘導した場合、免疫増進に重要な要素であるリンパ球、単核球及び樹状突起細胞を活性化させることにより癌の進行が遅延され、免疫細胞の癌細胞に対する毒性活性を増進させて癌細胞のアポトーシスが誘導される。また、敗血性ショックが誘導されたマウスの場合、免疫機能の調節及びアポトーシスの抑制効果により、120時間以後にも100%の生存率を見せる。したがって、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、免疫調節剤、敗血症治療剤、癌治療剤及び免疫調節又は癌予防のための健康食品用として効果的に使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節剤を提供する。
【化1】
ここで、R1/R2は、9−オクタデセノイル(オレオイル)/ヘキサデカノイル(パルミトイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9−オクタデセノイル(オレオイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9,12−オクタデカジエノイル(リノレオイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレノイル)又はヘキサデカノイル(パルミトイル)/5,8,11,14−エイコサテトラエノイル(アラキドノイル)である。
【0009】
ここで、次の化学式2で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体が好ましい。
【化2】
また、本発明は、前記化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有するAIDS治療剤、敗血症治療剤及び抗癌剤を提供する。また、本発明は、前記化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節用又は抗癌用の健康食品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、上記の化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有する免疫調節剤、AIDS治療剤、敗血症治療剤及び抗癌剤を提供する。本発明の化学式1で表される化合物は、下記5つの化合物の何れか1つである。
【0012】
1)1−オレオイル−2−2パルミトイル−3−アセチルグリセロール(R1/R2=9−オクタデセノイル/ヘキサデカノイル;以下、「化合物1」と称する。)
【0013】
2)1−パルミトイル−2−オレオイル−3−アセチルグリセロール(R1/R2=ヘキサデカノイル/9−オクタデセノイル;以下、「化合物2」と称する。)
【0014】
3)1−パルミトイル−2−リノレオイル−3−アセチルグリセロール(R1/R2=ヘキサデカノイル/9,12−オクタデカジエノイル;以下、「化合物3」と称する。)
【0015】
4)1−パルミトイル−2−リノレノイル−3−アセチルグリセロール(R1/R2=ヘキサデカノイル/9,12,15−オクタデカトリエノイル;以下、「化合物4」と称する。)
【0016】
5)1−パルミトイル−2−アラキドノイル−3−アセチルグリセロール(R1/R2=ヘキサデカノイル/5,8,11,14−エイコサテトラエノイル;以下、「化合物5」と称する。)
【0017】
上記の化学式2で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体の何れも使用可能であるが、特に化合物3が好ましい。本発明の化合物は、 C.N.鹿茸から抽出されたり、或いは、公知の有機合成法により製造される。抽出方法は次のような段階を有する。特に、C.N.鹿茸のクロロホルム抽出物は、最初にヘキサンによりC.N.鹿茸を抽出し、ヘキサン抽出の残余をクロロホルムにより抽出して得られる。この抽出過程で使用されたヘキサン及びクロロホルムの量は、C.N.鹿茸が十分浸る程度である。一般的には、C.N.鹿茸1kgに対しヘキサン及びクロロホルムを各々4〜5リットルの割合で使用される。このような抽出過程により得られたC.N.鹿茸のクロロホルム抽出物が、一連のシリカゲルコラムクロマトグラフィー及びTLC(薄膜クロマトグラフィー)により分画化されて精製される。後続抽出段階の溶離液はクロロホルム/メタノール、ヘキサン/エチルアセテートから選択される。モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を化学的に合成するためには、例えば、グリセロールとパルミチン酸との反応により生成された生成物から1−パルミトイルグリセリンを分離する。目的とするモノアセチルジアシルグリセロールは、酢酸、リノール酸などのようなカルボン酸化合物で、1−パルミトイルグリセリンをエステル化させることにより合成することができ、必要に応じて精製することができる。モノアセチルジアシルグリセロール誘導体の他の合成方法は、ホスファチジルコリンのアセトリシス(acetolysis)である。
【0018】
本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール化合物は、免疫調節剤として有用である。免疫調節は、異常に低下した免疫力の増進、或いは、異常に増加した免疫力の均衡維持を含む。よって、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール化合物は、低下した免疫システム及び癌による各種疾患の予防及び治療だけでなく、自己免疫反応による関節炎、アトピー、認知症及び敗血症のような自己免疫疾患の抑制、予防及び治療効能を持つ。
【0019】
免疫機能の調節における重要なことは、免疫を担当するT細胞の増加でなく、これらのT細胞の活性化の程度、T4とT8細胞の比率及びT4とT8細胞から分泌されたサイトカインの種類である。本発明者らは、本発明のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体の免疫調節効果を調べるために、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体をT−4リンパ球及びT−8リンパ球に処理した。その結果、これらの細胞からサイトカインの一種であるIL−2の分泌が増加されることを確認した(図1参照)。また、多量のサイトカインを一度に測定できるバイオ−プレックス(Bio−plex)を用いて本発明の化合物3で細胞を処理した後、T細胞でのサイトカインの分泌を観察した。その結果、対照群に比べて化合物3で処理した群でIL−2、IL−4及びIL−5の分泌が大幅に多かった(図2参照)。最も多く増加するサイトカインであるIL−4は、抗炎症サイトカインと呼ばれる多機能サイトカインであって、T4細胞から分化したTh2から分泌される。T4がTh1に分化されるのを抑制することで、IL−4は抗癌効果及び免疫反応の調節に非常に重要な役割を果し、自己免疫反応による細胞損傷も抑制できる(Annu. Rev. Immunol. 1999. 17:701〜738)。本発明の化合物は、IL−2の分泌刺激による免疫増強と共に、IL−4の分泌刺激による免疫調節効果を持つ。また、本発明の化合物は、T4と細胞毒性免疫細胞(cytotoxic immune cell)であるT8細胞とを増加及び活性化させ、T4細胞とT8細胞との比を正常に維持できる。よって、免疫体系の異常減少又は異常増加による副作用及び疾患の治療に有用である。敗血性ショックモデルでは、これらの免疫増進の効果がIL−4の分泌刺激及びアポトーシス(apoptosis)を抑制する方向に作用できる。その結果、敗血症の致死率を顕著に低下させることができる。したがって、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、IL−4サイトカインの分泌を増加させるため、例えば、敗血症の予防及び治療など、自己免疫治療に有用である。
【0020】
細胞間の相互作用が多様な造血細胞及び免疫細胞を刺激すると知られており、特に樹状突起細胞は兔疫体系に非常に重要なものと知られている。本発明者らは、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が分離・誘導された樹状突起細胞及びTCR(t-cell Receptor)の相互作用にどのような影響を及ぼすかを調査した。このために、化合物3で処理された樹状突起細胞(DC)のRT−PCRが遂行され、DCとTCRとの間の相互作用を媒介する接着分子の発現を測定した。その結果、Vcam−1、Icam−1、Icam−2、VLA−4、VLA−5及びLFA−1のような接着分子の発現が対照群に比べて増加した(図5参照)。上記の結果から、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、T細胞を活性化すると共に、樹状突起細胞を活性化して、それによってT細胞が癌細胞の抗原を認識するようになることで、特異的な抗癌効果も持つことを確認した。
【0021】
以上の結果から、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、T細胞を活性化することでサイトカインの分泌を増加させ、細胞間接着分子の発現を増加させることで、造血細胞及び免疫細胞の増殖及び刺激を促進して、免疫力を増加させる効果を持つことを確認した。その結果として、これらの化合物には多様な疾病に対する免疫療法としての使用の可能性があることを確認した。例えば、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、T4及びT8細胞増殖効果により、人のAIDS患者の免疫力を増進させる治療剤又は健康食品として使用され得る。AIDS患者の初期には、T4が減少するが、深刻な発病は観察されない。一方、AIDS患者の後期には、T8が減少して深刻な発病が観察される。従って、T4/T8の比率が重要な要因になり、T4およびT8の絶対的数字も重要な要因になる。さらに、本発明者らは、IL−4分泌の増加による免疫機能の調節が各種の自己免疫疾患にも効果的であることを確認した。本発明による化合物の敗血性ショックの予防及び治療としての用途を調査するために、マウスのCLP(Cecal Ligation and Punctur)テストが行なわれた。その結果、実験した全てのマウスが120時間まで生存した。よって、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体が敗血性ショック(敗血症)の予防及び治療に有用であることを確認した。このような結果から、本発明によるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、免疫増進効果及び免疫機能調節効果を持つ理想的な免疫調節剤として有利であることを確認した。
【0022】
また、本発明者らは、本発明の化合物の癌の予防及び治療剤としての用途を調査するために、治療が非常に難しい癌として知られている胆管癌及び悪性黒色腫に対する化合物の抗癌効果を調べた。まず、本発明者らは、胆管癌細胞系であるKIBG−5をハムスターに静脈注射及び皮下注射して癌発生を誘導した。続いて、RPMI、BMSC、アデノウイルス/ΔE1、樹状突起細胞+腫瘍 溶菌液、化合物3、アデノウイルス/IL−2及び混合物をハムスターに注入し、4週間後、その結果が観察された。その結果を肉眼や顕微鏡で観察したところ、樹状突起細胞+腫瘍溶菌液処理群、化合物3処理及びアデノウイルス/IL−2処理群は、腫瘍が形成されなかった(図6参照)。また、腫瘍細胞を静脈注射して8週間後に観察した。その結果、BMSC+アデノウイルス/IL−2処理群を除いた全ての群で肺転移病変が形成された。生体組織検査により、樹状突起細胞+腫瘍溶菌液処理群及び化合物3処理群で微細な病巣が観察された(図7、図8及び図9参照)。また、腫瘍細胞を皮下注入して12週間後に観察した。その結果、BMSC+Ad/hIL−2処理群及びBMSC+Ad/hIL−2+化合物3処理群を除いた全ての群で腫瘍が形成された(図10参照)。腫瘍の形成は化合物3の濃度に依存して抑制された(図11及び図12参照)。後述するように、本発明者らは、ハムスターに胆管癌細胞(KIBG−5)を注入して転移性癌を誘導し、ハムスターを本発明のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体で処理した。その結果、本発明のこれらの化合物の処理によって癌発生が著しく抑制されることを確認した。
【0023】
悪性黒色腫細胞をマウス尻尾の静脈に注入して癌発生を誘導した。続いて、RPMI、樹状突起細胞(DC)、腫瘍溶菌液及び化合物3で各々又は混合して処理した。その結果、RPMI処理された対照群では肺転移病変が形成されたが、化合物3と樹状突起細胞+腫瘍溶菌液とで処理した群では肺転移病変が観察されなかった(図13及び図14参照)。また、化合物3処理群と樹状突起細胞+腫瘍溶菌液処理群とでは、腫瘍を注入し、6週間後、その結果を観察したところ、90%の生存率を見せた(図15参照)。これらの結果から、本発明者らは、化合物3が抗癌効果を持つ、T細胞(T4及びT8)を活性化させることを確認した。よって、化合物3で活性化させたT−細胞の悪性黒色腫に対する細胞毒性検査をインビトロで実施した。その結果、化合物3でT−細胞を処理しなかった時よりも化合物3でT−細胞を処理した時、細胞毒性が増加して、また、T−細胞の量が増加するほど細胞毒性が増加することを観察した(図16参照)。前述するように、本発明のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、癌発生を抑制させ、T細胞を活性化させて癌細胞に対する毒性を示すことが確認され、抗癌剤として有用であることが示された。本発明の生成物を抗癌剤として使用することは、胆管癌、腎臓癌及び悪性黒色腫に有望であり、他の形態の悪性疾患にも使用しうる。
【0024】
以後、本発明者らは、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分とする試験用カプセル及び錠剤を製造することにより本発明を完成した。本発明の免疫調節剤、AIDS治療剤、敗血症治療剤及び抗癌剤は、 モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を、化合物の総重量に対して20〜100重量%含有することが好ましく、30〜100重量%含有することがより好ましい。モノアセチルジアシルグリセロールの量が少なかったり多かったりする場合、投薬し難いだけで特別な利益はない。また、敗血症治療剤、抗癌剤及び免疫調節剤として経口投与する場合には、1日1回〜3回、または1回〜4回、1回50mg/kgの用量で投与することが好ましい。本発明による化合物は、有効成分に加えて医薬としての形態で製造するために、本発明の化合物に薬学的に許容される1以上の担体を追加で含むことができる。担体は生理食塩水、緩衝生理食塩水、水、グリセロール及びエタノールからなる群から選ばれるが、これに限定されるものではない。適した公知の医学製剤(Remingtons's Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing Company、Easton PA)の何れも使用可能である。本発明の組成物は、経口投与が可能であり、一般的な医薬製剤の形態で使用できる。本発明の組成物は、一般的に使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、分解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を混合することにより、経口投与用として調製できる。本発明の組成物の有効な投与量は、年齢、性別、健康状態、活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度及び共に使用する薬物によって決定され得る。例えば、1日経口投与量は0.24〜9.0gであるが、常にこれに限定されるものではない。また、本発明は用量単位の医学製剤を含む。これは、製剤が個別要素、例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、丸剤、坐薬及びアンプル剤として存在し、これらの活性成分含量は個別投与量の分率又は倍数に該当することを意味する。用量単位は、例えば、個別投与量の1、2、3又は4倍、或いは、1/2、1/3又は1/4倍を含有できる。個別投与量は、好ましくは1回に投与され、通常1日投与量の全部、1/2、1/3又は1/4倍に該当する活性化合物の量を含有する。経口投与のための固形製剤は錠製、丸剤、散剤、及びカプセル剤であり、経口投与のための液状製剤は懸濁剤、液剤、乳剤及びシロップ剤である。前述した製剤はよく使用される水、液状パラフィンのような簡単な希釈剤以外に多様な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤を含むことができる。本発明の化合物は、前述した経口投与用製剤だけでなく、注射用製剤として提供され得る。例えば、滅菌注射用の水性又は油性懸濁液は、公知の技術により分散剤、湿潤剤又は懸濁剤を用いて製造できる。薬学的に許容される溶媒は、水、リンゲル液、等張NaCl溶液を包含する。滅菌固定オイルは、溶媒又は懸濁媒質として使用され、モノグリセリド、ジグリセリド及びポリプロピレングリコールを含む無刺激性固定オイルおよびオレイン酸のような脂肪酸を含むことができる。
【0025】
また、本発明は、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分とする免疫調節及び抗癌用の健康食品を提供する。本発明における“健康食品”は、各種疾病の治療や予防、身体機能の均衡的な維持のための食料品、営養剤及び健康補助剤を含む。本発明により製造された健康食品は、0.02〜100重量%のモノアセチルジアシルグリセロールを含有する。本発明の化合物を健康食品として使用する場合、前記化合物を完全な化合物として使用したり、他の食品又は食品成分と共に混合して使用する等、通常の方法によって使用することができる。混合化合物の有効量はその使用目的(予防、健康又は治療的処置)による。予防を目的として使用する場合、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体の量は、健康食品の総重量に対し、好ましくは0.02〜2重量%、より好ましくは0.2〜0.6重量%を含む。モノアセチルジアシルグリセロールの量が少なかったり多かったりする場合、健康食品を飲み難いだけで特別な利益はない。細胞毒性検査でも支持された通り、有効成分は健康の調節又は保存を目的とする長期間の摂取でも安全である。本発明の構成物を含有する食品の種類は特別な制限がない。例えば、肉類ソーセージ、パン、スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤が本発明の組成物を含有する健康食品として製造可能である。健康食品が疾病の治療及び予防を目的とする営養剤や健康補助剤として使用される場合、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体の量は、健康食品の総重量に対して20〜100重量%、好ましくは30〜100重量%、より好ましくは35〜95重量%を含む。このとき、1日摂取量は0.18〜9.0gであるが、これに限定されるものではない。製剤は錠剤及びカプセル剤を含む。
【0026】
前述したように、本発明のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、T細胞の活性化によりサイトカインの分泌を増加させ、細胞間接着分子の発現の増加により造血細胞および免疫細胞を刺激することで、免疫力を増加させ、自己免疫疾患及び癌を予防及び治療する。
【0027】
以下、本発明の実施形態を本発明のよりよい理解の為に詳細に説明する。但し、後述する実施形態は本発明の例示だけで、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
モノアセチルジアシルグリセロール誘導体がT細胞の増殖及び単核球の増殖に及ぼす影響
【0029】
(実施例1−1)モノアセチルジアシルグリセロール誘導体がT細胞の増殖に及ぼす影響
【0030】
(大韓民国ソウルの牙山研究所の生命科学動物ラボで提供された)C57BL/6マウスの脾臓から脾臓細胞を収集した。繰返し行う吸引(aspiration)及びフラッシング(flushing)により単一細胞懸濁液を得た。塩化アンモニウム(ammonium chloride)を用いて赤血球細胞を除去し、ナイロンウールを通過させながら細胞残屑(debris)と凝集塊(clump)とを除去した。抗ヤギIgG(MACS bead、Miltenyi Biotec、bergich gladbach、Germany)、あるいは抗マウスCD4(MACS bead、Miltenyi Biotec、bergich gladbach、Germany)又は抗マウスCD8抗体(MACS bead、Miltenyi Biotec、bergich gladbach、Germany)を含む磁性ビーズ(MACS bead、Miltenyi Biotec、bergich gladbach、Germany)を用いてT細胞を精製した(Turner and Dockrell(1996)Immunology、87:339−342)。
【0031】
T細胞懸濁液は、10%牛胎児血清(Fetal Bovine serum;以下、“FBS”と称する。)(Gibco、Grand Island、NY)が補充されたIMDM(Isocove's modified dulbecco's medium)(Gibco、Grand Island、NY)で懸濁された。(大韓民国ソウルの梨花女子大学で合成し提供された)1μg/mlの化合物1、2、4、5と、0.01、0.1、1μg/ml濃度の化合物3と、20ng/ml濃度のIL−2とを処理して、96ウェルプレートで、ウェル別に5×104の生育可能な細胞を培養した。 培養6日目に3H−チミジンを各細胞培養ウェル当たり1μCiで処理して24時間培養した。培養7日目に細胞を回収して、下記の数式1によってSI(incorporation index)を計算した。
【0032】
(数1)
SI=実験群のウェルから吸収された3H−チミジン(サンプルのCPM)/対照群のウェルから吸収された3H−チミジン(対照群のCPM)
【0033】
その結果、モノアセチルジアシルグリセロール誘導体処理群では、2.05チミジンの取り込みによりT細胞のSIが2.05に増加した。これはIL−2処理群のものと類似した(表1)。
【表1】
上記表において、*P<0.05、**P<0.005であり、全ての検査は、3重に遂行され、3回繰返された。
(実施例1−2)モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が単核球の増殖に及ぼす影響
【0034】
ヒストパク(Histopaque)1077を用いて人間の全血(whole blood)から単核球を分離した。続いて、5%CO2培養器で3時間、単核球細胞(5×106細胞/ml)が組織培養フラスコに付着するようにした。3時間後、付着されない細胞を除去し、付着細胞を10%FBSが補充されたRPMI 1640培地(GIBCO、Grand Island、NY)内の96ウェルプレートにのせる。各ウェル当たり生育できる細胞5×104個を1μg/ml濃度の化合物1〜5と共に96−ウェルプレートで培養した。6日目に細胞を各ウェル別に1μCi3H−チミジンを用いて24時間培養した。7日目に細胞を回収した後、取り込まれた3H−チミジンを測定した。SIは上記式1によって計算された。その結果、化合物1〜5処理群は、対照群に比べて単核球のSI数値が10.68倍増加し、これは化合物が単核球の増殖を刺激することを意味する(表2)。
【表2】
上記表において、*P<0.001であり、全ての検査は、3重に遂行され、2回繰返された。
【実施例2】
【0035】
化合物3がT細胞の活性に及ぼす影響
【0036】
(実施例2−1)エリスポット(Elispot)によるサイトカイン測定
エリスポット生物定量法(ESAT−6enzyme−linked immunospot assay)は、この定量法で使用されるエリスポットプレートの各ウェルの底面がサイトカイン特異的な抗体で予めコートされているため、メンブレンに結合したサイトカインを検出するのに非常に敏感な定量法である。従って、エリスポット定量法によりT細胞の活性を測定した。T細胞を24ウェル滅菌組織培養プレート(Nunc、Denmark)に各ウエル当たり2×106細胞を接種した後、化合物3の0.01、0.1、1μg/ml濃度、或いは、IL−2の20ng/ml濃度で処理した。7日目に細胞を回収して、1次抗体(マウスIL−2)でコートされたマルチテストプレート(Elispot system kit、AID、Straberg、Germany)に5×105細胞を接種した。上記プレートを24時間5%CO2培養器で培養した後、細胞によるサイトカインの分泌があった。これは、製造会社の指針に従って市販のIL−2エリスポットキットを用いるエリスポットにより決定される1次抗体によりキャップチャされた。各サンプルに対して2回実験した。エリスポット読取機(AID Elispot Reader System)を用いてエリスポットによりIL−2を産生する細胞の数を算出した。その結果、化合物3処理群は、対照群に比べて1.52倍増加したT−4活性と、1.46倍増加したT−8活性とを示した(図1)。
【0037】
(実施例2−2)バイオ−プレックスを用いたサイトカイン測定
バイオ−プレックスは、1つのウェルで多量のサイトカインを一度に測定できる。よって、バイオ−プレックスキットは、T細胞の活性化の際、分泌されるTh1/Th2経路の8種のサイトカインを定量するのに用いられた。24−ウェル滅菌組織培養プレート(Nunc、Denmark)を抗CD3および抗CD28で処理した。プレートに2×106/mlのT細胞が接種された。T細胞を活性化するために、0.1、1μg/ml化合物3で処理した後、5日間培養した。5日目、各段階にある培養液を回収して遠心分離した。上清液を回収し、その内部に分泌されたサイトカインをバイオ−プレックスキットを用いて製造会社(Bio−rad)の指針に従って定量化した。その結果、化合物3で処理した群において、8種のサイトカイン(IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IL−12、INF−γ、GM−CSF、TNF−α)のうちの3種(IL−2、IL−4、IL−5)が分泌され、その量は化合物3を処理しない対照群に比べて多かった(図2)。
【実施例3】
【0038】
T細胞の増殖の分析
化合物3がAIDS患者の免疫細胞に及ぼす影響を確認するために、次のような実験を遂行した。まず、AIDS患者の末梢血液からヒストパク(Histopaque)1077によって単核球細胞を回収した。塩化アンモニウムを用いて赤血球 細胞を除去した後、ナイロンウールを通過させながら細胞残屑と凝集塊とを除去した。T細胞をマグネチックビーズ(抗ヒトCD3)(MACS bead、Miltenyi Biotec)を用いて精製した。T細胞懸濁液は、10%牛胎児血清(Fetal Bovine serum;以下、“FBS”と称する。)(Gibco、Grand Island、NY)が補充されたIMDM(Isocove's modified dulbecco's medium)(Gibco、Grand Island、NY)で懸濁された。96ウェルプレートで、0.01、0.1、1μg/ml濃度の化合物3または20ng/ml濃度のIL−2とで処理して、ウェル別に5×104生育可能な細胞を培養した。培養6日目に3H−チミジンを各細胞培養ウェル当たり1μCiで処理して24時間培養した。培養7日目に細胞を回収して3H−チミジンの取り込みを計算した。SI(刺激指数)は前述した式1により計算された。その結果、表3に示すように、AIDS患者の場合、T細胞の増殖アッセイで、化合物3処理群における全ての患者(4名中の4名)のチミジンの摂取によるT細胞刺激指数が、対照群に比べて1.5〜3.9倍増加したことが表された。化合物3による刺激の全般的な結果は、IL−2による刺激と比較可能である。
【表3】
【実施例4】
【0039】
化合物3が樹状突起細胞の接着分子の発現に及ぼす影響
【0040】
(実施例4−1)樹状突起細胞の培養
骨髄細胞は、Balb/c AnNマウスの大腿骨及び脛骨から公知の方法により回収した(Park,J.etal.(2003)J.Korean Med. Sci.,18:372−380)。細胞をRPMIで3回洗浄した後、単核球を回収した。これらの単核球細胞をRPMI及び10%FBS内で3時間組織培養フラスコに付着されるようにした。培養後、付着細胞(単核球細胞)を除去した後、マウスrGM−CSF(R&D systems, Minneapolis, MN, USA)20ng/ml、およびマウスIL−4(R&D systems)10ng/ml及びマウスTNF−α(R&D systems)2.5ng/mlが補充された、10%FBS追加のRPMI中、未付着細胞を1×105細胞/mlにて100mm織培養皿に配置した。培養皿は3日毎に交換した。マウスTNF−α(R&D systems)を6日目に添加した後、11日になるまで3日毎に添加した。成熟樹状突起細胞は接着分子研究のRT−PCR用として採取された。その結果、円形の顆粒細胞を3日間培養したとき、これらの細胞は細胞培養プレートのウェルの底面に付着して成長するクラスターを形成し、成熟樹状突起細胞は培養6日又は7日目に群を形成しながら成長した。培養9日目に樹状突起細胞が特異的に小さく長い突起(protrusion)を形成した(図3)。
【0041】
(実施例4−2)樹状突起細胞の表現型の決定
トリパンブルー染色に対して陰性であり、サイズが大きい細胞を計数して、これらのそれぞれの形態を調べた。1×106細胞/mlの細胞を培養した後、洗浄し、1%パラホルムアルデヒド溶液で固定した。固定された細胞はFACScan(Beckton Dickinson、Mountain View、CA、U.S.A)を用いてフローサイトメトリー解析(Flow cytometric analysis)を行うことで、下記のマーカーに対する抗体によって表現型を決定した。ハムスターIgGに対する同型(isotype)対照群、ラットIgG2a、DCマーカー:DEC−205(NLDC−145)及びCD11C、共同−刺激/接着(Co−stimutatory/adhesion)分子:CD80(B7−1)及びCD86(B7−2)、マクロファージマーカー:CD14及びF4/80、顆粒球(Granulocyte)マーカー:Gr−1(Pharmingen、Hamburg、Germany)。その結果、共同−刺激特異的分子マーカーであるCD80及びCD86、樹状突起細胞特異的マーカーであるCD11C及びDEC−205の水準は高かったが、単核球特異的マーカーであるCD14及びF4/80と、顆粒球特異的マーカーであるGr−1との水準は低かった。このような結果は、本発明で分離された樹状突起細胞が、樹状突起細胞の正確な表現型と97%〜98%の純度とを持つことを意味する(図4)。
【0042】
(実施例4−3)接着分子の処理及び発現分析
一般的に、細胞間の相互作用が、多様な造血細胞及び免疫細胞の刺激の過程に関与することが知られている。よって、本発明者らは、化合物3が言及された細胞の多様な接着分子に影響を及ぼすかを確認しようと努力した。特に、前述した実施例で培養した樹状突起細胞を化合物3で1μg/ml濃度で処理し、RT−PCRを遂行した。
【0043】
次のプライマー:Icam−1(配列表の配列番号1及び2)、Icam−2(配列表の配列番号3及び4)、Vcam−1(配列表の配列番号5及び6)、VLA−4(配列表の配列番号7及び8)、VLA−5(配列表の配列番号9及び10)、LFA−1(配列表の配列番号11及び12)及びGAPDH(配列表の配列番号13及び14)をRT−PCR用として使用した。ここで使用された反応セットは、2μlのDNA、10x緩衝液、1.5μlのMgCl2、2μlのdNTP、0.5μlのフォワードプライマー、0.5μlのリバースプライマー、0.2μlのポリメラーゼ及び15.8μlの蒸溜水からなる混合液であった。
【0044】
オリゴ(dt)−プライマーを用いて培養した低密度細胞であるMS−5及び樹状突起細胞から分離したトータルRNAを逆転写させ、94℃で30秒、65℃で30秒及び72℃で50秒PCRを遂行した。PCR遂行回数は総34回、PCR生成物は遂行毎に2倍ずつ増加した。RT−PCRによりVcam−1、Icam−1、Icam−2、VLA−4、VLA−5、およびLFA−1のような接着分子の発現を確認した。定量のために、GARDHに対するPCRを遂行して、相応するcDNAを確認した。その結果は、化合物3で処理した樹状突起細胞に対する接着分子Icam−2、VLA−5、LFA−1の発現が、対照群に比べて非常に増加したことを示した(図5)。
【実施例5】
【0045】
皮下注入法(ローカルモデル)及び静脈注入法(全身モデル)による化合物3の抗癌効果に関する検討
【0046】
(実施例5−1)胆管癌ハムスターモデル
6週齢の雌のシリアンゴールデンハムスター(Harlan、Indianapolis、India、USA)を特定病原菌不在飼育場で飼育した。無血清RPMI 1640培地100μlに懸濁されたKIBG−5細胞(Molcular therapy、Vol.3、No4、pp431−437)5×105を、大腿部血管に静脈注射(intravenously inject、I.V)した。また、無血清RPMI 1640培地100μlに懸濁されたKIGB−5の5×105細胞は、ハムスターの横腹に皮下注射(subcutaneously inject、S.C)された。KIBG−5注入されたハムスターは、下記の7つの群に分けた;
1)RPMI培地処理された対照群、
2)変形されないBMSC細胞(2.5×106)(Leukemia & Lymphoma,Vol.44,No11,pp1973−1978)で処理された実験群、
3)Ad/ΔE150MOI改変BMSC細胞処理された実験群(Leukemia & Lymphoma,Vol.44,No11,pp1973−1978)、
4)DC+腫瘍溶菌液(5×106)処理された実験群、
5)Ad/hIL−2 50 MOI改変BMSC細胞処理された実験群(Leukemia & Lymphoma,Vol.44,No11,pp1973−1978)、
6)Ad/hIL−2 50 MOI改変BMSC細胞処理された実験群+化合物3(25mg/kg/日)処理された実験群、及び
7)化合物3(25mg/kg/日)処理された実験群。
【0047】
ハムスターに癌細胞を注入(BMSC処理群)した1週間後、BMSC細胞2.5×106個を各ハムスターに再注入した。DC+腫瘍溶菌液(5×106)処理群の場合、DC細胞の5×106及び腫瘍溶菌液を1週、2週、3週、4週、6週及び8週のときに各ハムスターに注入(皮下注射又は静脈注射)し、12週間観察した。化合物3処理群の場合、KIBG−5細胞注射の1週間前に、化合物3の経口投与にて、2週間処置及び1週間休みの形式で8週間処置した。
【0048】
その結果、癌細胞注入してから4週間目に、対照群であるRPMI処理群、BMSC処理群及びBMSC+Ad/ΔE1処理群には腫瘍が形成されたが、DC+腫瘍溶菌液処理群、化合物3処理群及びBMSC+Ad/IL−2処理群には腫瘍が発見されなかった(図6)。また、癌細胞を注入してから8週間目に、対照群であるRPMI注入群、BMSC処理群及びBMSC+Ad/ΔE1注入群では多発的肺転移病変が発見され、DC+腫瘍溶菌液処理群及び化合物3処理群ではただ一つの小さな肺病変が発見された。しかしながら、BMSC+Ad/IL−2処理群では病変が発見されなかった(図7〜図9)。また、癌細胞の皮下注入してから12週間目に、対照群であるRPMI処理群、BMSC処理群、BMSC+Ad/ΔE1処理群及びDC+腫瘍溶菌液処理群では腫瘍が形成され、BMSC+Ad/hIL−2処理群では1匹で5mm以下の腫瘍が発見された。しかしながら、BMSC+Ad/hIL−2+化合物3処理群では腫瘍が全く形成されなかった(図10)。
【0049】
一方、6週齢の雌のシリアンハゴールデンハムスターを特定病原菌不在飼育場で飼育した。無血清RPMI 1640培地100μlに懸濁されたKIBG−5細胞(5×105)を大腿部血管に静脈注射した。ハムスターは、下記の4つの群に分けた;1)PBS対照群、2)化合物3(10mg/kg/日)処理群、3)化合物3(25mg/kg/日)処理群、4)化合物3(50mg/kg/日)処理群。腫瘍細胞注入1週間前、化合物3の経口投与を(10、25又は50mg/kg/日)、2週間処置及び1週間休みの形式で12週間行った。各群の動物は、4週間目、8週間目及び12週間目に病理検査に供された。4週間目の肉眼観察から、対照群において注入位置で腫瘍が発現され、化合物3(10、25、50mg/kg/日)処理群では腫瘍が発見されかった。また、8週間目、対照群は両側肺に多発的肺転移病変が観察された。化合物3(50mg/kg/日)処理群は肉眼では多発的肺転移病変が全く観察されなかったが、顕微鏡により一つの微細な病変が観察された。化合物3(10mg/kg/日)処理群では左側肺に腫瘍が見られた(図11および図12)。
【0050】
(実施例5−2)黒色腫マウスモデル
6週齢の雌C57BL/6マウス(韓国ソウルの牙山生命科学研究所で提供)を無菌飼育場で飼育した。無血清RPMI 1640培地100μlに懸濁されたB16F10細胞(2×104)を尻尾静脈に注射した。腫瘍細胞注入1週間前、下記の3群に処理された。
1)RPMI対照群
2)樹状突起細胞(DC)(5×105細胞/日)+腫瘍溶菌液処理群
3)化合物3(50mg/kg/日)処理群
【0051】
樹状突起細胞+腫瘍溶菌液処理群の場合、黒色腫細胞注入1週間前、1週間おきに腫瘍溶菌液と混合された5×105DC細胞を腹腔に注入した。化合物3処理群においては化合物3の50mg/kg/日がこの各マウスに処理された。黒色腫(B16F10)注入1週間前、2週間処置及び1週間休みの形式で6週間化合物3(50mg/kg/日)を経口投与した。その結果、4週間目の肉眼による発見から、対照群において両側肺に多発的肺転移病変が観察された。化合物3処理群と樹状突起細胞+腫瘍溶菌液処理群は、肺転移病変が全く観察されず(図13及び図14)、黒色腫(B16F10)注入後、6週間の観察で90%生存率を示した(図15)。
【0052】
化合物3の抗癌効果が化合物3のT細胞による活性化に因るという推定に基づいて、化合物3で活性化されたT細胞の悪性黒色腫細胞に対する細胞毒性検査を実施した。その結果、化合物3で活性化されたT細胞と黒色腫細胞との比率が100:1のとき、細胞毒性は42%増加した(図16)。
【実施例6】
【0053】
化合物3の毒性試験
合成した化合物3を、20g当り0.1ml容量で経口投与されるエタノール5%溶液に溶かした。対照群はエタノール5%溶液で処理された。SPF設備内で飼育されたICRマウスを検査動物として使用した。薬物投与1日前、その動物を捕獲した後、水や飼料は自由に摂取させた。体重25〜35gのICRマウス8〜10匹を一つの群とした。投与量を62.5mg/kg、125mg/kg、250mg/kg、500mg/kg、1g/kg、2g/kgに増加させながら、試験薬は1回経口投与された。生存数及び異常の有無を投与日から14日間肉眼で観察した。LD50はLichfield-Wilcoxon法に`より計算し(白須、泰彦、吐山、豊秋:新毒性試験法−方法及び評価−急性毒性試験、Realize Inc.、Tokyo、1988)、体重増加率は次の数式2によって算出した。
【0054】
(数2)
体重増加率(%)={14日目の体重−0日目の体重}÷{0日目の体重}×100
【0055】
結果は表4に示す。62.5mg/kg〜2g/kgの化合物3では、毒性が全く検出されなかった。このような観察から、LD50が全部2g/kg以上であることを意味した。また、投与後14日間の観察の際、異常信号は肉眼で観察されなかった。処理群内の動物の体重は、対照群動物と同様に継続的に増加した。表5に示すように、重要で且つ治療に特異的な体重変化(増加又は減少)は、観察されなかった。
【表4】
【表5】
長時間の肝毒性検査は、化合物3の投与量を100mg/kg体重/日としてマウスに4週間経口投与して実施し、肝機能検査、血中脂質検査及びシトクロームC−450活性度検査が観察された。4週末に肝組織が観察された。どのような重大な副作用も観察されなかった。
【実施例7】
【0056】
CLP(Cecal Ligation and Puncture)テスト
CLPテストは、上記化合物3の敗血性ショックに対する予防及び治療効果を確認するために行われた。10匹の7〜10週齢の同種交配雄C3H/HeNマウス(体重20〜25g)を一つの群として形成した。これらのマウスに2週間50mg/kg/日の容量で処置し、1週間休みの形式で化合物3を経口投与した後、ケタミン(ketamine)80mg/kg及びロムパン(rompun)16mg/kgを使用してマウスを麻酔した。麻酔されたマウスにCLPモデルによる敗血性ショックを誘導させた。敗血性ショックを誘導していから1時間後、化合物3の50mg/kgで処理し、以後、24時間毎に同様な処理が3日間継続された。対照群にPBS+5%エタノール溶液が経口投与された。化合物3処理群及び対照群の時間経過に従う生存率を表6に示す。化合物3処理群は120時間経過後にも100%の生存率を見せた。
【表6】
(製造例1)化合物3を有効成分として含有する医薬品の製造
【0057】
上記実験例により化合物3が優れた免疫調節及び抗癌活性を持つことを確認した後、本発明者らは化合物3を有効成分として含有する治療剤を製造した。また、化合物3を有効成分として含有する治療剤の下記製造例は、治療剤の製造だけでなく、健康食品の製造にも応用できる。下記の製造例において、%は別途の言及がなければ重量%を示す。
【0058】
(製造例1−1)軟質ゼラチンカプセルの製造
【0059】
(製造例1−1−1)
化合物3 30%
ビタミンC 4.5%
ビタミンD3 0.001%
硫酸マンガン 0.1%
ワックス(Wax) 10%
パーム油 25%
紅花油(Carthamus tinctorius) 30.399%
【0060】
(製造例1−1−2)
化合物3 31.25%
月見草オイル 59.75%
大豆油 6.7%
ビタミンE酢酸エステル(DL-α- 酢酸トコフェロール)2.1%
大豆レシチン 0.2%
【0061】
(製造例1−1−3)
化合物3 98.0%
ビタミンE酢酸エステル(DL-α- 酢酸トコフェロール)2.0%
【0062】
(製造例1−2)錠剤の製造
化合物3 30%
ビタミンC 10%
ビタミンD3 0.001%
硫酸マンガン 0.1%
結晶セルロース 25.0%
乳糖 32.999%
ステアリン酸マグネシウム 2%
【0063】
(製造例1−3)注射用製剤の製造
化合物3 2%
プロピレングリコール 35%
モノグリセリド 8%
エタノール 5%
水 50%
前述した組成及び含量に基づき、通常の方法を用いて注射用製剤を製造した。
【0064】
(製造例2)化合物1、2、4及び5を各々有効成分として含有する医薬品の製造
【0065】
化合物3の代りに、各々化合物1、2、4及び5を同比率で使用した以外は、前述した製造例1と同様な方法及び組成により、軟質ゼラチンカプセル、錠剤及び注射剤懸濁液を製造した。
【0066】
(製造例3)化合物3を有効成分として含有する健康食品の製造
前記実験例により化合物3が優れた免疫調節効果、抗敗血性ショック及び抗癌活性を持つことを確認した後、本発明者らは化合物3を有効成分として含有する健康食品を製造した。
【0067】
(製造例3−1)飲料の製造
蜂蜜 522mg
チオクト酸アミド 5mg
ニコチン酸アミド 10mg
塩酸リボフラビンナトリウム 3mg
塩酸ピリドキシン 2mg
イノシトール 30mg
オルト酸 50mg
化合物3 0.48〜1.28mg
水 200ml
前述した組成及び含量に基づき、通常の方法を用いて飲料を製造した。
【0068】
(製造例3−2)チューインガムの製造
ガムベース 20%
砂糖 76.36〜76.76%
化合物3 0.24〜0.64%
フルーツ香料 1%
水 2%
チューインガムは、前記組成及び含量に基づき、下記の通常の方法を用いて製造した。
【0069】
(製造例3−3)キャンディの製造
砂糖 50〜60%
水飴 39.26〜49.66%
化合物3 0.24〜0.64%
オレンジ香料 0.1%
キャンディは、前記組成及び含量に基づき、下記の通常の方法を用いて製造した。
【0070】
(製造例3−4)ビスケットの製造
強力粉1級 88kg
薄力粉1級 76.4kg
精白糖 16.5kg
食塩 2.5kg
グルコース 2.7kg
パームショートニング 40.5kg
アンモ 5.3kg
重曹 0.6kg
重硫酸ナトリウム 0.55kg
コメ粉 5.0kg
ビタミンB1 0.003kg
ビタミンB2 0.003kg
ミルク香料 0.16kg
水 71.1kg
全脂粉乳 4kg
代用粉乳 1kg
第1リン酸カルシウム 0.1kg
散布塩 1kg
噴霧乳 25kg
化合物3 0.2〜0.5kg
ビスケットは、前記組成及び含量に基づき、下記の通常の方法を用いて製造した。
【0071】
(製造例3−5)アイスクリームの製造
乳脂肪 10.0%
無脂乳固形分 10.8%
砂糖 12.0%
水飴 3.0%
乳化安定剤(スパン) 0.5%
香料(ストロベリ) 0.15%
水 63.31〜62.91%
化合物3 0.24〜0.64%
アイスクリームは、前記組成及び含量に基づき、下記の通常の方法を用いて製造した。
【0072】
(製造例3−6)チョコレートの製造
砂糖 34.36〜34.76%
ココアバター 34%
ココアマット 15%
ココアパウダー 15%
レシチン 0.5%
バニラ香料 0.5%
化合物3 0.24〜0.64%
チョコレートは、前記組成及び含量に基づき、下記の通常の方法を用いて製造した。
【0073】
(製造例4)化合物1、2、4及び5を有効成分として含有する健康食品の製造
【0074】
化合物3の代りに、各々化合物1、2、4及び5を同比率で使用した以外は、前記前述した製造例3と同様な方法及び組成に基づき、飲料、チューインガム、キャンディ、ビスケット、アイスクリーム及びチョコレートを製造した。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】対照群、IL−2処理群(20ng/ml処理)及び化合物3処理群(1μg/ml処理)のT細胞(T−4及びT−8)活性を示す写真セットである。各数字はIL−2特異的抗体を捕獲したスポットの個数を示す。
【図2】化合物3によるTリンパ球の活性化時のサイトカインの分泌を示すグラフである。 (1)対照群:抗CD3、抗CD28処理群 (2)実験群:抗CD3、抗CD28および化合物3(0.1、1μg /ml)処理群
【図3】GM−CSF(20ng/ml)、IL−4(20ng/ml)及びTNF−α(5ng/ml)を処理した後、マウス骨髄細胞由来マウス樹状突起細胞(DC)の形態を示す写真である。 A:マウス骨髄細胞を1×106細胞数/ml密度に接種した直後の顕微鏡写真(×100)である。 B:3日間の培養後、丸い骨髄幹細胞を示す顕微鏡写真(×400)であって、前記細胞はクラスターを形成し、細胞培養プレートウェルの底面に付着して成長する。 C:培養6日目または7日目にクラスターを形成しつつある成熟樹状突起細胞の成長を示す顕微鏡写真(×400)であって、小さな写真は特定細胞の拡大写真(×2)である。 D:培養9日目の樹状突起細胞が特異的に長くて小さな突起(protrusion)を形成する樹状突起細胞の顕微鏡写真(×1000)であって、小さな写真は特定細胞の拡大写真(×2)である。
【図4】Balb/c AnNマウスから分離した骨髄細胞の培養11日目の樹状突起細胞の特異的マーカー、単核球特異的マーカー及び顆粒球特異的マーカーの発現を分析したFACS結果を示すグラフである(このとき、ハムスターIgG及びラットIgG2aに対する異性体対照群染色がセッティングマーカー系(直線)として使用された)。 下記のマーカーが使用される。 共同刺激特異的マーカーとしてCD80及びCD86 樹状突起細胞特異的マーカーとしてCD11c及びDEC−205 単核球/大食細胞特異的マーカーとしてCD14及びF4/80 顆粒球特異的マーカーとしてGr−1
【図5】接着分子の発現に対する樹状突起細胞の化合物3の影響を示す電気泳動写真である。 レーン1:Vcam−1 レーン2:Icam−1 レーン3:Icam−2 レーン4:VLA−4 レーン5:VLA−5 レーン6:LFA−1 レーン7:GAPDH (+):化合物3処理群、 (−):対照群。
【図6】腫瘍KIGB−5を静脈注射し、異なる条件で処理して4週間後、注入部位の近所での腫瘍形成結果を示す写真である。 A:RPMI対照群 B:BMSC処理群 C:BMSC+Ad/ΔE1処理群。
【図7】腫瘍KIGB−5を静脈注射し、異なる条件で処理して8週間後、注入部位の近辺での腫瘍形成結果を示す写真である。 A:RPMI対照群 B:BMSC(2.5×106細胞/日)処理群 C:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/ΔE1(50 MOI)処理群 D:樹状突起細胞(5×106細胞/日)+腫瘍分解処理群 E:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/IL−2(50 MOI)処理群 F:化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図8】腫瘍KIGB−5を静脈注射し、8週間後、各群での肺転移病変を肉眼や顕微鏡による観察を示す写真である。 図8において、 A:RPMI対照群 B:BMSC(2.5×106細胞/日)処理群 C:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/ΔE1(50 MOI)処理群 D:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/ΔIL−2(50 MOI)処理群
【図9】腫瘍KIGB−5を静脈注射し、8週間後、各群での肺転移病変を肉眼や顕微鏡による観察を示す写真である。 図9において、 A:RPMI対照群 B:樹状突起細胞(5×106細胞/日)+腫瘍分解処理群 C:化合物3(25mg/kg/日)処理群。
【図10】腫瘍KIGB−5を皮下移植し、12週間後、各群の肺腫瘍及びそのサイズを示す写真である。 A:RPMI対照群 B:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/ΔE1(50 MOI)処理群 C:BMSC(2.5×106細胞/日)処理群 D:DC(5×106細胞/日)+腫瘍分解処理群 E:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/IL−2(50 MOI)処理群 F:BMSC(2.5×106細胞/日)+Ad/IL−2(50 MOI)+化合物3(25mg/kg/日)処理群 G:化合物3(25mg/kg/日)処理群。
【図11】胆管癌細胞(5×105細胞)を注入し、8週間後、化合物3の多様な容量で処理されたシリアンハゴールデンハムスターの各群の肺転移病変の肉眼所見を示す写真である。 A:PBS対照群 B:化合物3(10mg/kg/日)処理群 C:化合物3(25mg/kg/日)処理群 D:化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図12】胆管癌細胞(5×105細胞)を注入し、8週間後、化合物3の多様な容量で処理されたシリアンハゴールデンハムスターの各群の肺転移病変の顕微鏡所見を示す写真である。 A:PBS対照群 B:化合物3(10mg/kg/日)処理群 C:化合物3(25mg/kg/日)処理群 D:化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図13】黒色腫細胞(2×104細胞)を静脈注入し、4週間後、多様に治療されたC57B1/6マウスのそれぞれの肺転移病変が肉眼で発見されることを示す写真である。 A:PBS対照群 B:樹状突起細胞(4×105細胞/日)+腫瘍分解処理群 C:化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図14】黒色腫細胞(2×104細胞)を静脈注入し、4週間後、多様に治療されたC57B1/6マウスのそれぞれの肺転移病変が肉眼で発見されることを示す写真である。 A:PBS対照群 B:樹状突起細胞(4×105細胞/日)+腫瘍分解処理群 C:化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図15】黒色腫細胞(2×104細胞)を静脈注入し、6週間の各処理群の生存率を示すグラフである。(1)RPMI対照群、(2)樹状突起細胞(5×105細胞/日)+腫瘍分解処理群、(3) 化合物3(50mg/kg/日)処理群。
【図16】黒色腫細胞に対する化合物3により活性化されたTリンパ球の細胞毒性を示すグラフである。(1) 対照群1:抗CD3、 抗CD28処理群(2) 対照群2: 抗CD3、 抗CD28とIL−2(20ng/ml)処理群(3) 実験群: 抗CD3、 抗CD28と化合物3(1μg/ml)処理群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、免疫調節剤。
【化1】
ここで、R1/R2は、9−オクタデセノイル(オレオイル)/ヘキサデカノイル(パルミトイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9−オクタデセノイル(オレオイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9,12−オクタデカジエノイル(リノレオイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレノイル)又はヘキサデカノイル(パルミトイル)/5,8,11,14−エイコサテトラエノイル(アラキドノイル)である。
【請求項2】
前記化学式1で表される前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、次の化学式2で表されるモノアセチルジアシルグリセロールであることを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節剤。
【化2】
【請求項3】
前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、T−細胞内のIL−2、IL−4及びIL−5からなる群から選択されるサイトカインの分泌を刺激することを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節剤。
【請求項4】
前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、自己免疫反応による細胞損傷を抑制することを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節剤。
【請求項5】
前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、IL−4の分泌を刺激し、T4及びT8細胞の両方を増殖及び活性化させるように機能することを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節剤。
【請求項6】
前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、免疫調節剤の総重量に対して20〜100重量%含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節剤。
【請求項7】
前記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、AIDS治療剤。
【請求項8】
前記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、敗血症治療剤。
【請求項9】
前記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、抗癌剤。
【請求項10】
前記抗癌剤が、胆管癌、腎臓癌又は悪性黒色腫の治療剤に用いられることを特徴とする、請求項9に記載の抗癌剤。
【請求項11】
前記抗癌剤が、T−細胞が癌細胞の抗原を認識することができるように樹状突起細胞を活性化させることを特徴とする、請求項9に記載の抗癌剤。
【請求項12】
前記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、免疫調節用又は癌予防用の健康食品。
【請求項13】
前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、健康食品の総重量に対して0.02〜100重量%含有されることを特徴とする、請求項12に記載の健康食品。
【請求項1】
下記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、免疫調節剤。
【化1】
ここで、R1/R2は、9−オクタデセノイル(オレオイル)/ヘキサデカノイル(パルミトイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9−オクタデセノイル(オレオイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9,12−オクタデカジエノイル(リノレオイル)、ヘキサデカノイル(パルミトイル)/9,12,15−オクタデカトリエノイル(リノレノイル)又はヘキサデカノイル(パルミトイル)/5,8,11,14−エイコサテトラエノイル(アラキドノイル)である。
【請求項2】
前記化学式1で表される前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、次の化学式2で表されるモノアセチルジアシルグリセロールであることを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節剤。
【化2】
【請求項3】
前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、T−細胞内のIL−2、IL−4及びIL−5からなる群から選択されるサイトカインの分泌を刺激することを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節剤。
【請求項4】
前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、自己免疫反応による細胞損傷を抑制することを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節剤。
【請求項5】
前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、IL−4の分泌を刺激し、T4及びT8細胞の両方を増殖及び活性化させるように機能することを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節剤。
【請求項6】
前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、免疫調節剤の総重量に対して20〜100重量%含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節剤。
【請求項7】
前記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、AIDS治療剤。
【請求項8】
前記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、敗血症治療剤。
【請求項9】
前記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、抗癌剤。
【請求項10】
前記抗癌剤が、胆管癌、腎臓癌又は悪性黒色腫の治療剤に用いられることを特徴とする、請求項9に記載の抗癌剤。
【請求項11】
前記抗癌剤が、T−細胞が癌細胞の抗原を認識することができるように樹状突起細胞を活性化させることを特徴とする、請求項9に記載の抗癌剤。
【請求項12】
前記化学式1で表されるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、免疫調節用又は癌予防用の健康食品。
【請求項13】
前記モノアセチルジアシルグリセロール誘導体が、健康食品の総重量に対して0.02〜100重量%含有されることを特徴とする、請求項12に記載の健康食品。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【公表番号】特表2007−534681(P2007−534681A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509400(P2007−509400)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001175
【国際公開番号】WO2005/112912
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506355279)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001175
【国際公開番号】WO2005/112912
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506355279)
【Fターム(参考)】
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