説明

モノクロ陰影点群図およびその作成方法

【課題】 3次元計測点群から得られたグラウンドデータの簡単な作成と、正確性が要求され、結果、正確な等高線図を得ること、正確なDEM化が強く求められている。
【解決手段】 本発明は、3次元計測点群から、モノクロ陰影図を作成する工程と、グラウンドデータとを作成する工程を含み、前記モノクロ陰影図に前記グラウンドデータをレイヤー表示する工程を含むモノクロ陰影点群図の作成方法とこのように得られたモノクロ陰影点群図および前記モノクロ陰影点群図の活用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ測量データのような3次元計測点群から得られた新規な陰影点群図とその作成方法とその活用方法に関するものである。更に、詳しくは、モノクロ陰影点群図に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元計測点群から、基礎面のデータ(グラウンドデータ)を取り出して、基礎面のデータ以外のデータと前記グラウンドデータとを活用するに当たって、フィルタリングと呼ばれる作業を行って、グラウンドデータと前記グラウンドデータ以外のデータとを分離することが行われていた。例えば、レーザ測量で得られたレーザデータを前記フィルタリングによって、グラウンドデータ(例えば、地盤データ)を得た後、点検図を用いて点検して、前記グラウンドデータに修正を加え、精度の高い正確な点検後グラウンドデータを得ていた。
【0003】
例えば、航空レーザ測量で得られたレーザデータから樹木、構造物、車等の反射で得られたレーザデータ(地物データ)を除いて、前記地盤データを得ることが行われていた。言い換えると、レーザ測量で得られたレーザデータを、地表面、地盤等の基礎面のデータと、地物等の基礎面ではないレーザデータとに分離することが行われ、フィルタリングと呼ばれていた。前記フィルタリングに関して、特許文献1、特許文献2および特許文献3等が知られている。
【特許文献1】 特開2002−236019
【特許文献2】 特開2004−272688
【特許文献3】 特開2005−172634
【0004】
特許文献1乃至3等に記載されたように、正確な前記グラウンドデータを作成することは、基礎面以外のデータも正確になり、数値標高モデル(DEM)の作成に重要であり、DEMの活用に大きな影響を与えるので、正確なグラウンドデータを得るための色々な試みが行われていた。しかしながら、まだ、充分な正確度が得られていないために、前記したように、前記点検図を活用して点検し、前記グラウンドデータとそれ以外のデータの修正を行って、更に、正確度を向上させる試みが行われていた。
【0005】
代表的な点検図として、例えば、等高線点検図、点群点検図およびメッシュデータ点検図が知られており、これらは一般に用いられている。前記等高線点検図は、簡易オルソフォト画像と計測点と水部ポリゴンとの重ね合わせ図で、点群点検図は、簡易オルソフォト画像と等高線データとの重ね合わせ図で、メッシュデータ点検図は、カラー陰影図である。カラー陰影図は、一般に1/5000で出力され、その他は、1/2500で出力されたものを用いる。
【0006】
しかしながら、これら点検図を用いて得られた前記点検済グラウンドデータの作成に時間がかかる等の問題があり、更に正確度はまだ充分ではなく、しかも、これら点検には、相当の熟練度が要求されている。例えば、前記等高線点検図の場合は、例えば、樹木の表層面と地形との区別がつきにくい課題とか、等高線密集箇所で、急傾斜と樹木の表層との区別がつきにくい等の課題などがあった。また、前記点群点検図は、作成に時間がかかる課題があり、例えば、簡易オルソフォト画像の建物は、実際の寸法よりも大きく表現されるため、前記建物の端部における点群は、地盤データか地物データかの判別が困難であるとか、堤防の法肩など過剰にフィルタリングした箇所の発見が困難であるとか等の課題があった。また例えば、前記メッシュデータ点検図の場合は、レーザデータの端部で異常な結果となる課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これら従来の方法が持っていた問題を解決することを主課題とし、新規な点検図を提供することを次の課題(第一の課題)とし、前記新規な点検図を用いた新規な点検方法を提供することを他の課題(第二の課題)とし、更に、正確度が各段と向上したグラウンドデータと非グラウンドデータを提供することを更に他の課題(第三の課題)としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、3次元計測点群から、モノクロ陰影図を作成する工程と、グラウンドデータを作成する工程を含み、前記モノクロ陰影図に前記グラウンドデータをレイヤー表示する工程を含むモノクロ陰影点群図の作成方法を請求項1とし、前記レイヤー表示を前記モノクロ陰影図の色とは異なる色で表示した請求項1に記載のモノクロ陰影点群図の作成方法を請求項2とし、前記モノクロ陰影図が白黒表示であり、前記レイヤー表示が赤色表示である請求項1または請求項2に記載のモノクロ陰影点群図の作成方法を請求項3として、前記3次元計測点群が、航空レーザ測量で得られたオリジナルデータである請求項1から請求項3のいずれかに記載のモノクロ陰影点群図の作成方法を請求項4とした前記モノクロ陰影点群図の作成方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、3次元計測点群から得られたモノクロ陰影図に、前記3次元計測点群から得られたグラウンドデータをレイヤー表示したモノクロ陰影点群図を請求項5とし、前記レイヤー表示を前記モノクロ陰影図の色とは異なる色で表示した請求項5に記載のモノクロ陰影点群図を請求項6として、前記モノクロ陰影図が白黒表示であり、前記レイヤー表示が赤色表示である請求項5または請求項6に記載のモノクロ陰影点群図を請求項7とし、前記3次元計測点群が、航空レーザ測量で得られたオリジナルデータである請求項5から請求項7のいずれかに記載のモノクロ陰影点群図を請求項8として提供し、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の発明は、前記主課題と前記第一の課題を解決するものである。
【0010】
更に、本発明は、グラウンドデータの点検方法において、3次元計測点群から得られたモノクロ陰影図に、前記3次元計測点群から得られたグラウンドデータをレイヤー表示したモノクロ陰影点群図を用いる点検方法を請求項9として提供し、グラウンドデータの点検方法において、3次元計測点群から得られたモノクロ陰影図に前記3次元計測点群から得られたグラウンドデータをレイヤー表示したモノクロ陰影点群図と、前記グラウンドデータから作成されたカラー陰影図とを用いるデータ点検方法を請求項10として、前記レイヤー表示を前記モノクロ陰影図の色とは異なる色で表示した請求項9または請求項10に記載のデータ点検方法を請求項11とし、前記モノクロ陰影図が白黒表示であり、前記レイヤー表示が赤色表示である請求項9から請求項11のいずれかに記載のデータ点検方法を請求項12として、前記3次元計測点群が、航空レーザ測量で得られたオリジナルデータである請求項9から請求項12のいずれかに記載のデータ点検方法を請求項13として提供し、前記主課題と前記第二の課題を解決しようとするものである。
【0011】
本発明は、請求項9から請求項13のいずれかに記載のデータ点検方法を用いた点検結果に従って、前記グラウンドデータに前記モノクロ陰影点群図を基に点群を追加するおよび/または前記グラウンドデータから前記カラー陰影図を基に点群を削除する工程を含むグラウンドデータの修正方法を請求項14とし、請求項14のグラウンドデータの修正方法により得られた修正済グラウンドデータを請求項15として、前記主課題と前記第三の課題を解決するものである。
【0012】
また、本発明は、請求項5から請求項8のいずれかに記載のモノクロ陰影点群図と、カラー陰影図とを含むことを特徴とするグラウンドデータ点検用図セットを請求項16として提供し、前記主課題と前記第二の課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記カラー陰影図では検査不可能な例えば地盤データの欠落を、前記モノクロ陰影点群図で検査可能となり、モノクロ陰影図にグラウンドデータをカラー表示することで、点群が識別しやすく、検査が容易になる。また、前記カラー陰影図で、過剰に表示された基礎面のデータ即ちグラウンドデータの検査が可能になり、例えば、地物上に残存する点群の検査が可能となった。また、他の方法では難しかった例えば、橋梁のフィルタリングの合否判断が可能となった。
【0014】
更に、前記カラー陰影図を用いることにより、前記モノクロ陰影点群図では、検出が難しいところを補完することができ、例えば、森林部における地物データの残存を検査可能として、更に例えば、微小な地物を表現できる。このように、前記モノクロ陰影点群図をもちいることにより、点群の点検結果の正確度が向上し、前記モノクロ陰影点群図と前記カラー陰影図を組み合わせて用いることにより、点群の点検結果の正確度が更に向上する。その他多くの効果を有するが、それは下記の記載から明確にされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における3次元計測点群とは、レーザ測量等で得られる位置、高度等の情報を有する計測結果の点群の集合体であり、例えば、航空レーザ測量で、得られたオリジナルデータは、前記3次元計測点群の例である。極端には、地物表面上をレーザ測量し、地物表面上の突起、亀裂等を計測するために得られたオリジナルデータも含まれる。前記、3次元計測点群は、従来のフィルタリングの方法で、グラウンドデータと非グラウンドデータ(グラウンドデータ以外のデータ)とに分離される。
【0016】
前記モノクロ陰影図は、前記3次元計測点群からカラー陰影図を得る方法と同じ方法が用いられ、カラーで表現せずに、モノクロで表現して得られる陰影図であり、本発明において、好ましくは、前記3次元計測点群(オリジナルデータ)から従来の方法で得たもので、カラーのデータをモノクロ(明暗)情報に変換したものである。また、本発明において、モノクロとは、モノトーンのことであり、単色での濃淡表現を含む。例えば、白黒の濃淡(白黒表示)で表現されたものが一般的であるが、青白色等の単色の濃淡(モノカラー表示)で表現されたものも含む。また、本発明にかかるカラー陰影図は、好ましくは、前記グラウンドデータから得たものが用いられる。
【0017】
また、前記モノクロ陰影点群図は、前記モノクロ陰影図に前記グラウンドデータの点群を所定の色(例えば、赤)で、重畳して得られるものである。白黒の濃淡の背景に赤で点群を表示するのが一般的であるが、青色の濃淡の背景に黄色の点群を表示するように、色のコントラストが、大きい色の組み合わせを用いることもできる。このようにして点群の検出が容易にできるようになり、従来の点群点検図のように、点群の識別が困難な状態が著しく減少する。
【0018】
例えば、航空レーザ測量において得られたオリジナルデータを用いて、従来のフィルタリングによりグラウンドデータと非グラウンドデータに分離し、前記グラウンドデータからカラー陰影図を従来の方法で得ておき、一方、前記カラー陰影図の作成方法のカラーをモノトーン化することにより、前記オリジナルデータからモノクロ陰影図(例えば白黒表示のもの)を作成し、前記グラントデータの点群を所定の色(例えば赤)で重畳(レイヤー表示)させて、航空レーザ測量によるグラウンドデータの点検用のモノクロ陰影点群図と、前記カラー陰影図を用意して、本発明にかかるグラウンドデータ点検用図セットを用意する。本発明における点検方法は、前記モノクロ陰影点群図または前記点検用図セットを用いる以外は、従来の方法で行い、前記モノクロ陰影点群図を用いたときには、好ましくは、例えば、点群密度の低いところの判断に用い、前記カラー陰影図は、好ましくは、例えば、点群密度の高いところの確認に用いる。
【0019】
結果として、問題があったと判断したときには、前記不足の点群は前記非グラウンドデータから前記グラウンドデータに移動させることによって補って、過度の点群は削除して前記非グラウンドデータに移行して、前記グラウンドデータと前記非グラウンドデータを補正する。このようにして、非常に正確度の高いグラウンドデータと非グラウンドデータが得られ、その活用における正確度も向上する。例えば、正確度の高い等高線図がえられる、および正確度の高いDEM化ができる効果を有する。
【0020】
本発明は、フィルタリングの異常点の明確な判断が可能であるので、非専門家でも容易に検査可能となる効果も有し、簡易オルソフォト画像の作成工程が不要なので、工期短縮ができる効果も有する。
【0021】
以下、本発明を図面により、更に具体的に説明する。図1は、本発明にかかる1実施例にかかるモノクロ陰影点群図の概念図であって、(A)がある箇所の断面図の概略図であり、(B)が同箇所の平面図であって、本発明にかかるモノクロ陰影点検図の概念図である。4は、平地の地表面であり、3は、堤防の天端であり、5は、河川である。6と7は、河川5の両岸である。1は、法尻で、2は、法肩である。
【0022】
(B)は、白黒のモノクロ陰影図にグラウンドデータの赤い点群8が重畳されている。(丸い点は、点群を意味する。)点群8が取れすぎてすくない事例であり、従来の簡易オルソフォトの点群点検図では、検出困難な箇所であるが、本発明の場合は、背景のモノクロ陰影図と点群の区別が容易なために、背景がよく判別でき、点群の取れすぎが容易に検出できる。本実施例においては、法尻と法肩との間の点群が表示されていない例である。従って、法尻と法肩との間に点群を追加する例になる。
【0023】
図2は、カラー陰影図の例とモノクロ陰影点群図の例を説明するための概念図であり、9は、地盤であり、10は樹木である。図は省略したが、カラー陰影図の場合は、図2において、点群8は見られない。本発明にかかる他の実施例のモノクロ陰影点群図(図2)では、点群8が認められる。しかし、前記カラー陰影図によれば、点群8のある地物(建物)の屋根であることがわかり、地盤でないことが容易に理解できるので、前記点群8は、過度の点群であることがわかる。従って、図2の例では、点群8は、グラウンドデータから削除され、非グラウンドデータに移動させるデータであることが容易に理解できる。これらは、従来の方法ではなしえなかったことである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本発明の1実施例にかかる概念図である。
【図2】 本発明の他の実施例にかかる概念図である。
【符号の説明】
【0025】
1 法尻
2 法肩
3 堤防の天端
4 地表面
5 河川
8 点群
9 地盤
10 樹木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元計測点群から、モノクロ陰影図を作成する工程と、グラウンドデータを作成する工程を含み、前記モノクロ陰影図に前記グラウンドデータをレイヤー表示する工程を含むことを特徴とするモノクロ陰影点群図の作成方法。
【請求項2】
前記レイヤー表示を前記モノクロ陰影図の色とは異なる色で表示したことを特徴とする請求項1に記載のモノクロ陰影点群図の作成方法。
【請求項3】
前記モノクロ陰影図が白黒表示であり、前記レイヤー表示が赤色表示であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモノクロ陰影点群図の作成方法。
【請求項4】
前記3次元計測点群が、航空レーザ測量で得られたオリジナルデータであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のモノクロ陰影点群図の作成方法。
【請求項5】
3次元計測点群から得られたモノクロ陰影図に、前記3次元計測点群から得られたグラウンドデータをレイヤー表示したことを特徴とするモノクロ陰影点群図。
【請求項6】
前記レイヤー表示を前記モノクロ陰影図の色とは異なる色で表示したことを特徴とする請求項5に記載のモノクロ陰影点群図。
【請求項7】
前記モノクロ陰影図が白黒表示であり、前記レイヤー表示が赤色表示であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のモノクロ陰影点群図。
【請求項8】
前記3次元計測点群が、航空レーザ測量で得られたオリジナルデータであることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載のモノクロ陰影点群図。
【請求項9】
グラウンドデータの点検方法において、3次元計測点群から得られたモノクロ陰影図に、前記3次元計測点群から得られたグラウンドデータをレイヤー表示したモノクロ陰影点群図を用いることを特徴とするデータ点検方法。
【請求項10】
グラウンドデータの点検方法において、3次元計測点群から得られたモノクロ陰影図に前記3次元計測点群から得られたグラウンドデータをレイヤー表示したモノクロ陰影点群図と、前記グラウンドデータから作成されたカラー陰影図とを用いることを特徴とするデータ点検方法。
【請求項11】
前記レイヤー表示を前記モノクロ陰影図の色とは異なる色で表示したことを特徴とする請求項9または請求項10に記載のデータ点検方法。
【請求項12】
前記モノクロ陰影図が白黒表示であり、前記レイヤー表示が赤色表示であることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載のデータ点検方法。
【請求項13】
前記3次元計測点群が、航空レーザ測量で得られたオリジナルデータであることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれかに記載のデータ点検方法。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれかに記載のデータ点検方法を用いた点検結果に従って、前記グラウンドデータに前記モノクロ陰影点群図を基に点群を追加するおよび/または前記グラウンドデータから前記カラー陰影図を基に点群を削除する工程を含むことを特徴とするグラウンドデータの修正方法。
【請求項15】
請求項14のグラウンドデータの修正方法により得られたことを特徴とする修正済グラウンドデータ。
【請求項16】
請求項5から請求項8のいずれかに記載のモノクロ陰影点群図と、カラー陰影図とを含むことを特徴とするグラウンドデータ点検用図セット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−310785(P2008−310785A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182638(P2007−182638)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(390023249)国際航業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】