説明

モノシクロペンタジエニル錯体

【課題】簡単かつ高収率で製造することができ、オレフィンの重合に好適な、架橋ドナーを有するシクロペンタジエニル配位子を基礎とする遷移金属錯体を提供する。
【解決手段】本発明は、シクロペンタジエニル基が元素周期律表の第14族に属する少なくとも1個の原子と元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子とを含む少なくとも1種の架橋ドナーで置換されているモノシクロペンタジエニル錯体、及び少なくとも1種のこのようなモノシクロペンタジエニル錯体を含む触媒組成物、この触媒組成物の製造方法、この触媒組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法、及びこの触媒組成物の存在下にオレフィンを重合又は共重合することによりポリオレフィンを製造する方法、さらに上述のようなシクロペンタジエニル基の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロペンタジエニル基が元素周期律表の第14族に属する少なくとも1個の原子と元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子とを含む少なくとも1種の架橋ドナーで置換されているモノシクロペンタジエニル錯体、及び少なくとも1種のこのようなモノシクロペンタジエニル錯体を含む触媒組成物、及びこの触媒組成物の製造方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、この触媒組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法、及びこの触媒組成物の存在下にオレフィンを重合又は共重合することによりポリオレフィンを製造する方法、さらにこの方法による得ることができるポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
α−オレフィンの重合に使用される多くの触媒は、固定された酸化クロムを基礎とするものである(例えば、Kirk-Othmerによる“Encyclopedia of Chemical Technology, 1981, Vol. 16, p.402”(非特許文献1)参照)。これらを用いることにより、一般に高分子量のエチレン単独重合体及び共重合体が得られるが、これらは水素に比較的鈍感で、簡単な操作で分子量を制御することはできない。一方、無機酸化物担体に施されたビス(シクロペンタジエニル)クロム(US3709853号公報(特許文献1))、ビス(インデニル)クロム又はビス(フルオレニル)クロム(US4015059号公報(特許文献2))を使用すると、ポリエチレンの分子量を水素添加の簡単な操作で制御することができる。
【0004】
チーグラー−ナッタ組成物の場合のように、単一の活性中心を有する、即ちシングルサイト触媒に該当する触媒組成物もまた、最近クロム化合物に関して検討されている。触媒の活性挙動及び共重合挙動、及びこの触媒により得られるポリマーの性質は、配位子骨格を目的に応じて変更することにより簡単に変えることができるはずである。
【0005】
DE19710615号公報(特許文献3)には、ドナー配位子で置換されたモノシクロペンタジエニルクロム化合物、及びこの化合物によりエテンとプロペンを重合することができる旨記載されている。このドナーは第15族から得られ、非電荷である。ドナーは、(ZR2nフラグメント{但し、Rは水素、アルキル又はアリールを、Zは第14族の原子を表し、n≧1である}を介してシクロペンタジエニル環に結合している。DE19630580号公報(特許文献4)には、上記Zが炭素で、アミンドナーと組合せられたものが、特に特許請求の範囲に記載されている。
【0006】
WO96/13529号パンフレット(特許文献5)には、多座配位のモノアニオン性配位子を有する還元された元素周期律表第4〜6族の金属の遷移金属錯体が記載されている。これらには、ドナー官能基含有シクロペンタジエニル配位子が含まれる。実施例はチタン化合物に限定されている。
【0007】
WO01/12641号パンフレット(特許文献6)には、特にキノリル又はピリジルドナーを有するクロム、モリブデン及びタングステンのモノシクロペンタジエニル錯体が開示されている。キノリル又はピリジルドナーは、シクロペンタジエニル基に直接又はC1又はSi架橋基を介して結合している。
【0008】
WO01/92346号パンフレット(特許文献7)には、元素周期律表の第4〜6族の元素のシクロペンタジエニル錯体が開示されており、この錯体では、ジヒドロカルビル−Y基(但し、Yは、元素周期律表第14族の元素であり、特別なルイス塩基を有するものである)がシクロペンタジエニル基に結合している。
【0009】
【特許文献1】US3709853号公報
【特許文献2】US4015059号公報
【特許文献3】DE19710615号公報
【特許文献4】DE19630580号公報
【特許文献5】WO96/13529号パンフレット
【特許文献6】WO96/12641号パンフレット
【特許文献7】WO01/92346号パンフレット
【非特許文献1】Encyclopedia of Chemical Technology", 1981, Vol. 16, p.402
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の先行技術における触媒組成物の活性は、未だ最適化されていない。さらに、形成される重合体及び共重合体の分子量は、一般に極めて大きい。
【0011】
そこで、本発明の目的は、簡単かつ高収率で製造することができる、オレフィンの重合に好適な架橋ドナーを有するシクロペンタジエニル配位子を基礎とする別の遷移金属錯体を見いだすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的が、式(I):
Cp−(Z−A)mA (I)
{但し、Cpがシクロペンタジエニル基を表し、
Aが元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子を含む非電荷ドナーを表し、
Zが、元素周期律表の第14族に属する少なくとも1個の原子と元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子とを含む、AとCpとの間の架橋基を表し、
Aがチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステン、又は元素周期律表の第3族及びランタニドに属する元素を表し、
mが1、2又は3を表す。}
で表される構造的特徴を含むモノシクロペンタジエニル錯体により達成されることを見いだした。
【0013】
さらに、本発明者らは、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体を含む触媒組成物、このモノシクロペンタジエニル錯体又はその触媒組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法、及びこのモノシクロペンタジエニル錯体又は触媒組成物の存在下にオレフィンを重合又は共重合することによりポリオレフィンを製造する方法、及びこの方法により得られるポリマーも見いだした。さらに、この方法における中間体及びその製造方法も発見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のモノシクロペンタジエニル錯体は、式Cp−(Z−A)mA(I)[記号は上述したのと同じ意味を表す。]で表される構造部分を含んでいる。従って、他の配位子が金属原子MAに結合することができる。他の配位子の数は、例えば金属原子の酸化状態に依存している。しかしながら、使用可能な他の配位子が別のシクロペンタジエニル基を含むことはない。好適な他の配位子には、例えば、Xについて記載されるようなモノアニオン性及びジアニオン性配位子が含まれる。さらに、アミン、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、スルフィド又はホスフィン等のルイス塩基を金属中心Mに結合させることもできる。モノシクロペンタジエニル錯体は、モノマー状でもダイマー状でもオリゴマー状でも良い。モノシクロペンタジエニル錯体は、モノマー状であるのが好ましい。
【0015】
Aは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン及びタングステンから成る群から選択された金属である。触媒活性錯体における遷移金属MAの酸化状態は、一般的に当業者に公知である。クロム、モリブデン、及びタングステンは、酸化状態3価で存在していることが極めて多く、チタン、ジルコニウム、ハフニウム及びバナジウムは酸化状態4価で存在していることが多いが、チタンとバナジウムは酸化状態3価でも存在しうる。しかしながら、酸化状態が活性触媒の酸化状態に対応していない錯体を使用することもできる。このような錯体は、適当な活性化剤により適当に還元又は還元することができる。MAは、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン又はタングステンであるのが好ましい。特に好ましいのは、酸化状態が2、3、及び4価、特に3価のクロムである。
【0016】
mは1、2又は3であることができ、すなわち、1個、2個又は3個の基−Z−AがCpに結合することができる。2個又は3個の基が存在する場合には、それらは同一であっても異なっていても良い。1個のみの基−Z−AがCpに結合しているのが好ましい(m=1)。
【0017】
非電荷のドナーAは、元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子を含む非電荷の官能基又はカルベン、例えば、アミン、イミン、カルボキシアミド、カルボン酸エステル、ケトン(オキソ)、エーテル、チオケトン、ホスフィン、ホスフィット、ホスフィンオキシド、スルホニル、スルホンアミド、カルベン、例えば、N−置換イミダゾル−2−イリデン、又は、非置換の又は置換された又は縮合した部分的に不飽和のヘテロ環又はヘテロ芳香族環である。ドナーAは、遷移金属MAに分子間で結合しても良く、遷移金属MAに分子内で結合しても良く、遷移金属に結合していなくても良い。ドナーAは金属中心MAに分子間で結合しているのが好ましい。式Cp−Z−A−MAの構造部分を含むモノシクロペンタジエニル錯体が特に好ましい。
【0018】
Zは、元素周期律表の第14族に属する少なくとも1個の原子、特に炭素又はケイ素と、元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子、特に酸素、イオウ、窒素、又はリンとを含む、AとCpとの間の架橋基である。元素周期律表の第14族に属する少なくとも1個の原子と、元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子は、AとCpとの間を直接連結する成分である。直接連結部−原子(第14族)−原子(第15族又は第16族)−は、Zの最短成分である。Zは元素周期律表の第14族の原子又は第15族又は第16族の原子を介してCpと結合することができる。Zは第14族の原子を介してCpと結合しているのが好ましい。
【0019】
Cpは、所望の置換パターンを有していても良く、及び/又は1個以上の芳香族環、脂肪族環、ヘテロ環又はヘテロ芳香族環と縮合していても良いシクロペンタジエニル基であり、且つ1、2又は3個の置換基、好ましくは1個の置換基は基−Z−Aであり、及び/又は、1、2又は3個の置換基、好ましくは1個の置換基は基−Z−Aで置換されており、及び/又は、上記芳香族環、脂肪族環、ヘテロ環又はヘテロ芳香族環が縮合した環が1、2又は3個の置換基−Z−A、好ましくは1個の置換基−Z−Aを有している。シクロペンタジエニル骨格自体は、6個のπ電子を有するC5環であり、この環では、炭素原子の1個が窒素又はリン、好ましくはリンで置換されていても良い。ヘテロ原子で置換されていないC5環を使用するのが好ましい。N、P、O及びSから成る群から選択された少なくとも1個の原子を含むヘテロ芳香族環又は芳香族環をシクロペンタジエニル骨格に縮合させることができる。ここで、“縮合する”とは、ヘテロ環及びシクロペンタジエニル骨格が、2個の原子、好ましくは2個の炭素原子を共有することを意味する。シクロペンタジエニル基はMAに結合している。
【0020】
式Cp−Z−A−MA(II)で表されるモノシクロペンタジエニル錯体が特に有用である。
【0021】
但し、上式において、Cp−Z−Aが
【0022】
【化1】

【0023】
{式中、E1A〜E5Aが、それぞれ炭素を表すか、1個以下のE1A〜E5Aがリンを表し、
1A〜R4Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C22アルキル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR5A2、N(SiR5A32、OR5A、OSiR5A3、SiR5A3、BR5A2を表し、当該有機基R1A〜R4Aがハロゲンで置換されていても良く、及び2個のビシナル基R1A〜R4Aが連結して5員、6員又は7員の環を形成しても良く、及び/又は2個のビシナル基R1A〜R4Aが連結してN、P、O及びSから成る群から選択される少なくとも1個の原子を有する5員、6員又は7員のヘテロ環を形成し、
5Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、及び2個のジェミナル基R5Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
Zが、下記式:
【0024】
【化2】

【0025】
(但し、L1Aが炭素、ケイ素又はゲルマニウム、特にケイ素を表し、
1Aが元素周期律表の第15族又は第16族に属する原子、特に酸素、イオウ、窒素、又はリンを表し、
nが、D1Aが元素周期律表の第16族に属する原子である場合には0を、D1Aが元素周期律表の第15族に属する原子である場合には1を表し、
6A〜R8Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR9A3を表し、当該有機基R6A〜R8Aがハロゲンで置換されていても良く、及び2個のジェミナル基又はビシナル基R6A〜R8Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
9Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、C1〜C10アルコキシ、又はC6〜C10アルールオキシを表し、2個の基R9Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良い。)、
で表される、AとCpとの間の2価の架橋基を表し、
Aが元素周期律表の第15族及び/又は第16族に属する少なくとも1個の原子を含む非電荷ドナー又はカルベン、好ましくは非置換、置換又は縮合ヘテロ芳香族環を表す。}で表わされる基を表わし、
Aが酸化状態3価のチタン、バナジウム、クロム、モリブデン及びタングステンから成る群から選択された金属を表す。
【0026】
好ましいシクロペンタジエニル基Cpでは、全てのE1A〜E5Aが炭素である。
【0027】
金属錯体の重合挙動も、置換基R1A〜R4Aを変更することによって調製することができる。置換基の数及び種類は、重合されるべきオレフィンが金属原子MAに接近する能力に影響を与えることができる。このことにより、様々なモノマー、特に嵩高いモノマーに対する触媒の活性及び選択性が変更させうる。置換基はまた成長ポリマー鎖の停止反応速度にも影響しうるから、形成されるポリマーの分子量もまた置換基の数及び種類により変わりうる。置換基R1A〜R4Aの化学構造は、従って、所望の結果を達成し目的に応じた触媒組成物を得るために、広範囲に亘って変更しうる。考えられる有機炭素置換基R1A〜R4Aとしては、例えば、水素、直鎖状でも分枝状でもよいC1〜C22アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル、置換基としてC1〜C10アルキル及び/又はC6〜C10アリールを有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル、直鎖状でも環状でも分枝状でもよく二重結合が鎖末端に存在しても鎖の途中に存在しても良いC2〜C22アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル、さらにアルキル基によって置換されていても良いC6〜C22アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−又は3,4,5−トリメチルフェニル、又はさらにアルキル基によって置換されていても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルである。2個の基R1A〜R4Aが連結して5員、6員又は7員の環を形成しても良く、及び/又は、2個のビシナル基R1A〜R4Aが連結してN、P、O及びSから成る群から選択される少なくとも1個の原子を有する5員、6員又は7員のヘテロ環を形成してもよく、及び/又は、有機基R1A〜R4Aがフッ素、臭素又は塩素のようなハロゲンで置換されていても良い。さらに、基R1A〜R4AがアミノNR5A2又はN(SiR5A32、アルコキシ又はアリールオキシOR5A、例えば、ジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシであることができる。有機ケイ素置換基SiR5A3では、基R5Aは基R1A〜R4Aに関してより詳細に記載したのと同じ有機炭素基であることができ、2個の基R5Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良い。例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−t−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルが挙げられる。これらの基SiR5A3は、窒素又は酸素を介してシクロペンタジエニル骨格に結合してもよく、例としてはトリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ、又はトリ−t−ブチルシリルオキシが挙げられる。好ましい基R1A〜R4Aは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−又はo−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−又はトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニル、及びアントラニルである。有機ケイ素置換基としては、アルキル基に1〜10個の炭素原子を有するトリアルキルシリル基が特に好ましく、中でもトリメチルシリル基が極めて好ましい。
【0028】
2個のビシナル基R1A〜R4Aが、これらと結合しているE1A〜E5Aと共に、窒素、リン、酸素及びイオウから選ばれる少なくとも1個の原子、特に好ましくは窒素及びイオウを含むヘテロ環、好ましくはヘテロ芳香族環を形成していても良く、且つ上記ヘテロ環又はヘテロ芳香族環に存在する基E1A〜E5Aが炭素であることが好ましい。ヘテロ環及びヘテロ芳香族環は5員又は6員の環であるのが好ましい。環の原子として炭素の他に1〜4個の窒素原子及び/又は1個のイオウ又は酸素原子を有していても良い5員のヘテロ環の例として、1,2−ジヒドロフラン、フラン、チオフェン、ピロール、イソオキサゾール、3−イソチアゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾールを挙げることができる。1〜4個の窒素原子及び/又は1個のリン原子を有していても良い6員のヘテロアリール基の例として、ピリジン、ホスファベンゼン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン及び1,2,3−トリアジンを挙げることができる。5員又は6員のヘテロ環は、C1〜C10アルキル、C6〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、トリアルキルシリル、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素又は臭素、ジアルキルアミド、アルキルアリールアミド、ジアリールアミド、アルコキシ、又はアリールオキシで置換されていても良く、或いは1個以上の芳香族環又はヘテロ芳香族環と縮合されていても良い。ベンゾ縮合5員環のヘテロアリール基の例としては、インドール、インダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール及びベンゾイミダゾールを挙げることができる。ベンゾ縮合6員環のヘテロアリール基の例としては、クロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,10−フェナントロリン及びキノリジンを挙げることができる。ヘテロ環の命名及び番号の付け方は、Lettauによる“Chemie der Heterocyclen, 1st edition, VEB, Weinheim 1979”を利用した。ヘテロ環/ヘテロ芳香族環は、ヘテロ環/ヘテロ芳香族環の炭素−炭素二重結合を介してシクロペンタジエニル骨格と縮合しているのが好ましい。1個のヘテロ原子を有するヘテロ環/ヘテロ芳香族環は、2,3−又はb−縮合であるのが好ましい。
【0029】
縮合ヘテロ環を有するシクロペンタジエニル基Cpの例としては、チアペンタレン、2−メチルチアペンタレン、2−エチルチアペンタレン、2−イソプロピルチアペンタレン、2−n−ブチルチアペンタレン、2−t−ブチルチアペンタレン、2−トリメチルシリルチアペンタレン、2−フェニルチアペンタレン、2−ナフチルチアペンタレン、3−メチルチアペンタレン、4−フェニル−2,6−ジメチル−1−チアペンタレン、4−フェニル−2,6−ジエチル−1−チアペンタレン、4−フェニル−2,6−ジイソプロピル−1−チアペンタレン、4−フェニル−2,6−ジ−n−ブチル−1−チアペンタレン、4−フェニル−2,6−ジ−トリメチルシリル−1−チアペンタレン、アザペンタレン、2−メチルアザペンタレン、2−エチルアザペンタレン、2−イソプロピルアザペンタレン、2−n−ブチルアザペンタレン、2−トリメチルシリルアザペンタレン、2−フェニルアザペンタレン、2−ナフチルアザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジメチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジエチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−n−ブチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−t−ブチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−トリメチルシリル−1−アザペンタレン、1−t−ブチル−2,5−ジメチル−1−アザペンタレン、オキサペンタレン、ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジエチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−n−ブチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−t−ブチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−トリメチルシリル−1−ホスファペンタレン、1−メチル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、1−t−ブチル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、7−シクロペンタ[1,2]チエニル[3,4]シクロペンタジエン及び7−シクロペンタ[1,2]ピロリル[3,4]シクロペンタジエンを挙げることができる。
【0030】
さらに好ましいシクロペンタジエニル基Cpでは、基R1A〜R5Aの4個、即ち2対のビシナル基が、2個のヘテロ環、特にヘテロ芳香族環を形成している。ヘテロ環は、上で詳細に述べたものと同じである。2個の縮合ヘテロ環を有するシクロペンタジエニル基Cpの例は、7−シクロペンタジチオフェン、7−シクロペンタジピロール及び7−シクロペンタジホスフォールである。
【0031】
縮合ヘテロ環を有するこのようなシクロペンタジエニル基の合成は、例えば上述のWO98/22486号パンフレットに記載されている。“metalorganic catalysts for synthesis and polymerization, Springer Verlag 1999, p.150ff”において、Ewenらがこれらのシクロペンタジエニル基の別の合成を記載している。
【0032】
特に好ましい基R1A〜R4Aは、上述の有機炭素置換基及び環状の縮合環を形成する有機炭素置換基、すなわち、E1A〜E5A骨格と共に、好ましくはC5−シクロペンタジエニル骨格と共に例えば置換又は非置換のインデニル、ベンズインデニル、フェナントレニル又はテトラヒドロインデニル環をしている基である。
【0033】
このようなシクロペンタジエニル基(好ましくは1位に存在する基−Z−Aがない基)の例としては、3−メチルシクロペンタジエニル、3−エチルシクロペンタジエニル、3−イソプロピルシクロペンタジエニル、3−t−ブチルシクロペンタジエニル、ジアルキルシクロペンタジエニル、例えば、テトラヒドロインデニル、2,4−ジメチルシクロペンタジエニル又は3−メチル−5−t−ブチルシクロペンタジエニル、トリアルキルシクロペンタジエニル、例えば、2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル、及びテトラアルキルシクロペンタジエニル、例えば、2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル、及び、インデニル、2−メチルインデニル、2−エチルインデニル、2−イソプロピルインデニル、3−メチルインデニル、ベンズインデニル、及び2−メチルベンズインデニルを挙げることができる。縮合環基は、さらにC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR5A2、N(SiR5A32、OR5A、OSiR5A3又はSiR5A3を有しても良く、例えば4−メチルインデニル、4−エチルインデニル、4−イソプロピルインデニル、5−メチルインデニル、4−フェニルインデニル、5−メチル−4−フェニルインデニル、2−メチル−4−フェニルインデニル又は4−ナフチルインデニルである。
【0034】
メタロセンのように、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体は、キラルであり得る。従って、シクロペンタジエニル骨格上の置換基R1A〜R4Aの1個が1個以上のキラル中心を有することができ、或いは、シクロペンタジエニル基Cp自体がエナンチオトピックでありうるため、シクロペンタジエニル基Cpが金属錯体Mに結合したときにのみキラリティーが誘導される(シクロペンタジエニル化合物のキラリティーに関する形式については、R. Halterman, Chem. Rev. 92, (1992), 965-994参照)。
【0035】
シクロペンタジエニルCpと非電荷ドナーAの間の架橋基Zは、好ましくは炭素又はケイ素と酸素−、イオウ−、窒素−、又はリン含有架橋員とから成る2価の有機架橋基である。シクロペンタジエニル及びAの間の連結部分の長さを変化させることにより、触媒の活性に影響を与えることができる。ZはL1Aを介してCpに結合しているのが好ましい。
【0036】
架橋基Zにおける炭素有機置換基R6A〜R8Aは、例えば下記のものが使用可能である。即ち、水素、直鎖でも分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル又はn−ドデシル、置換基としてC6〜C10アリールを有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、直鎖でも環式でも分岐でも良く、2重結合が内部又は末端に存在し得るC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル又はシクロオクタジエニル、置換基としてアルキル基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−又は2,6−ジメチルフェン−1−イル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−又は3,4,5−トリメチルフェン−1−イル、又は置換基としてアルキル基を有しても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルであり、さらに、基R6A〜R8Aの2個が互いに連結して5員又は6員の環、例えばシクロヘキサンを形成してもよく、有機基R6A〜R8Aがフッ素、塩素又は臭素のようなハロゲンで置換されていてもよく、例としてはペンタフルオロフェニル又はビス−3,5−トリフルオロメチルフェン−1−イルが挙げられ、またアルキル又はアリールで置換されていてもよい。
【0037】
特に好ましい置換基R6A〜R7Aは、水素、直鎖でも分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル又はn−ドデシル、置換基としてアルキル基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−又は2,6−ジメチルフェン−1−イル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−又は3,4,5−トリメチルフェン−1−イル、又は置換基としてアルキル基を有しても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルであり、さらに、基R6A〜R7Aの2個が互いに連結して5員又は6員の環、例えばシクロヘキサンを形成してもよく、有機基R6A〜R7Aがフッ素、塩素又は臭素、特にフッ素のようなハロゲンで置換されていてもよく、例としてはペンタフルオロフェニル又はビス−3,5−トリフルオロメチルフェン−1−イルが挙げられ、アルキル又はアリールで置換されていてもよい。特に好ましい置換基R6A〜R7Aは、水素、メチル、エチル、1−プロピル、2−イソプロピル、1−ブチル、2−t−ブチル、ベンジル、フェニル及びペンタフルオロフェニルである。
【0038】
有機基R8Aは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−又はo−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−又はトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニル及びアントラニルである。
【0039】
有機ケイ素置換基SiR9A3のR9Aとしては、基R6A〜R8Aについて上で詳細に記述した基と同じ基が使用可能であり、2個の基R9Aは連結して5又は6員の環を形成しても良い。例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−t−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル及びジメチルフェニルシリルが挙げられる。
【0040】
Zは、−CR6A7A−D1A(R8An−または−SiR6A7A−D1A(R8An−基であるのが好ましく、−CR6A7A−O−、−CR6A7A−NR8A−、−SiR6A7A−O−、−SiR6A7A−NR8A−であるのが特に好ましく、−SiR6A7A−O−が極めて好ましい。基R6A〜R8Aに関して示した好ましい形態が、この場合も好ましく、−CR6A7A−は好ましくは−CHR6A−、−CH2−又は−C(CH32−基である。−L1A6A7A−D1A(R8An−におけるL1Aは、シクロペンタジエニル基またはAと結合することができる。L1A又はその好ましい形態がシクロペンタジエニル基と結合しているのが好ましい。
【0041】
Aは、元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子を含む非電荷ドナー又はカルベンを意味し、好ましくは酸素、イオウ、窒素、及びリンから成る群から選択された1個以上の原子、好ましくは窒素、リンを含む。Aにおけるドナー官能基は、金属Mに分子内でまたは分子間で結合することができる。Aにおけるドナー官能基は、金属Mに分子内で結合しているのが好ましい。考えられるドナーは、元素周期律表の第15族又は第16族に属する元素を含む非電荷の官能基、例えばアミン、イミン、カルボキシアミド、カルボン酸エステル、ケトン(オキソ)、エーテル、チオケトン、ホスフィン、ホスフィット、ホスフィンオキシド、スルホニル、スルホンアミド、カルベン、例えばN−置換イミダゾル−2−イリデン、または非置換、置換又は縮合ヘテロ環である。AがZとシクロペンタジエニル基とに結合している構成単位の合成は、WO00/35928号パンフレットに記載しているのと類似の方法で実施することができる。
【0042】
Aは、−OR10A、−SR10A、−NR10A11A、−PR10A11A、−C=NR10A、及び非置換、置換又は縮合ヘテロ芳香族環であるのが好ましく、−NR10A11A、−C=NR10A、及び非置換、置換又は縮合ヘテロ芳香族環であるのが特に好ましい。
【0043】
10A及びR11Aは、相互に独立してそれぞれ、水素、直鎖でも分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル又はn−ドデシル、置換基としてC6〜C10アリールを有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、直鎖でも環式でも分岐でも良く、2重結合が内部又は末端に存在し得るC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル又はシクロオクタジエニル、置換基としてアルキル基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−又は2,6−ジメチルフェン−1−イル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−又は3,4,5−トリメチルフェン−1−イル、又は置換基としてアルキル基を有しても良く、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルであり、またはSiR12A3であり、有機基R10A〜R11Aがフッ素、塩素又は臭素のようなハロゲン、窒素含有基、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、又は、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR12A3で置換されていてもよく、2個のビシナル基R10A、R11Aはまた連結して5員又は6員の環を形成してもよく、基R12Aは、相互に独立してそれぞれ、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、又は、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、2個の基R12Aが連結して5員または6員の環を形成しても良い。
【0044】
NR10A11Aは、アミド置換基である。2級アミド、例えばジメチルアミド、N−エチルメチルアミド、ジエチルアミド、N−メチルプロピルアミド、N−メチルイソプロピルアミド、N−エチルイソプロピルアミド、ジプロピルアミド、ジイソプロピルアミド、N−メチルブチルアミド、N−エチルブチルアミド、N−メチル−t−ブチルアミド、N−t−ブチルイソブチルアミド、ジブチルアミド、ジ−s−ブチルアミド、ジイソブチルアミド、t−アミル−t−ブチルアミド、ジペンチルアミド、N−メチルヘキシルアミド、ジヘキシルアミド、t−アミル−t−オクチルアミド、ジオクチルアミド、ビス(2−エチルヘキシル)アミド、ジデシルアミド、N−メチルオクタデシルアミド、N−メチルシクロヘキシルアミド、N−エチルシクロヘキシルアミド、N−イソプロピルシクロヘキシルアミド、N−t−ブチルシクロヘキシルアミド、ジシクロヘキシルアミド、ピロリドン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、デカヒドロキノリン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリド、及びN−エチルアニリドが好ましい。
【0045】
イミノ基−C=NR10Aでは、R10Aは置換基としてアルキル基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−又は2,6−ジメチルフェン−1−イル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−又は3,4,5−トリメチルフェン−1−イルが好ましい。
【0046】
Aは、環炭素に加えて、酸素、イオウ、窒素及びリンから成る群から選択されるヘテロ原子を含み得る、非置換、置換又は縮合ヘテロ芳香族環であるのが好ましい。環の原子として、炭素原子に加えて、1〜4個の窒素原子、又は1〜3個の窒素原子及び/又は1個のイオウ原子又は酸素原子を含むことができる5員のヘテロアリール基の例としては、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、3−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾル−3−イル、1,2,4−オキサジアゾル−5−イル、1,3,4−オキサジアゾル−2−イル及び1,2,4−トリアゾル−3−イルを挙げることができる。1〜4個の窒素原子及び/又は1個のリン原子を有していても良い6員のヘテロアリール基の例として、2−ピリジニル、2−ホスファベンゼニル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル、1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル、1,2,4−トリアジン−6−イルを挙げることができる。5員又は6員のヘテロアリール基はまた、C1〜C10アルキル、C6〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、トリアルキルシリル又はハロゲン、例えばフッ素、塩素又は臭素、で置換されていても良く、或いは1個以上の芳香族環又はヘテロ芳香族環と縮合されていても良い。ベンゾ−縮合5員ヘテロアリール基の例としては、2−インドリル、7−インドリル、2−クマロニル、7−クマロニル、2−チアナフテニル、7−チアナフテニル、3−インダゾリル、7−インダゾリル、2−ベンズイミダゾリル及び7−ベンズイミダゾリルを挙げることができる。ベンゾ−縮合6員ヘテロアリール基の例としては、2−キノリル、8−キノリル、3−シンノリル、8−シンノリル、1−フタラジル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、8−キナゾリル、5−キノキサリル、4−アクリジル、1−フェナントリジル、及び1−フェナジルを挙げることができる。ヘテロ環の命名及び番号の付け方は、L. FieserとM. Fieserによる“Lehrbuch der organischen Chemie, 3rd revised edition, Verlag Chemie, Weinheim 1957”を利用した。
【0047】
ヘテロ芳香族環Aの中は、ヘテロ芳香族単位に1、2、3、4又は5個の窒素原子を有する非置換、置換及び/又は縮合6員へテロ芳香族環が特に好ましく、中でも置換又は非置換の2−ピリジル又は2−キノリルが好ましい。
【0048】
したがって、Aは式(IV)で表される基であるのが好ましい。
【0049】
【化3】

【0050】
上式において、E6A〜E9Aが、それぞれ相互に独立して、炭素又は窒素を表し、
13A〜R16Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR17A3を表し、当該有機基R13A〜R16Aが、ハロゲン又は窒素で置換されていても良く、或いはさらにC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル又はSiR17A3で置換されていても良く、2個のビシナル基R13A〜R16A又はR13AとZとが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
17Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、2個の基R17Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
pが、E6A〜E9Aが窒素の場合は0を表し、E6A〜E9Aが炭素の場合は1を表す。
【0051】
特に、0個又は1個のE6A〜E9Aが窒素であり、他の基は炭素であるのが好ましい。Aは、2−ピリジル、6−メチル−2−ピリジル、4−メチル−2−ピリジル、5−メチル−2−ピリジル、5−エチル−2−ピリジル、4,6−ジメチル−2−ピリジル、3−ピリダジル、4−ピリミジル、6−メチル−4−ピリミジル、2−ピラジニル、6−メチル−2−ピラジニル、5−メチル−2−ピラジニル、3−メチル−2−ピラジニル、3−エチルピラジニル、3,5,6−トリメチル−2−ピラジニル、2−キノリル、4−メチル−2−キノリル、6−メチル−2−キノリル、7−メチル−2−キノリル、2−キノキサリル又は3−メチル−2−キノキサリルが特に好ましい。
【0052】
製造の容易性を考慮すると、Zが−Si(CH32−O−または−Si(CH32−NR8A−であり、Aが非置換又は置換2−キノリル、又は、非置換又は置換2−ピリジルである化合物が好ましい。この場合に、Aは−O−または−NR8A−に結合しているのが好ましい。上述した各基における好ましい形態は、この組み合わせにおいても好ましい。
【0053】
Aは、酸化状態3価のチタン、バナジウム、クロム、モリブデン及びタングステンから成る群から選択される金属であり、酸化状態3価のチタン及びクロムが好ましい。特に、酸化状態2、3及び4価、特に3価のクロムが好ましい。金属錯体、特にクロム錯体は、対応する金属塩、例えば、金属の塩化物を配位子アニオンと反応させる簡単な方法(例、DE19710615号公報の実施例と類似の方法)により得ることができる。
【0054】
好ましいモノシクロペンタジエニル錯体は、式Cp−YmA1An(V)で表され、上式において、Cp、Y、A、m及びMAは上述したのと同義であり、それらの好ましい形態はここでも好ましく、そして
基X1Aは、それぞれ相互に独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR18A19A、OR18A、SR18A、SO318A、OC(O)R18A、CN、SCN、β−ジケトナート、CO、BF4-、PF6-、又は嵩高い非配位イオンを表し、2個の基X1Aが置換又は非置換のジエン配位子、特に1,3−ジエン配位子を形成してもよく、基X1Aが互いに連結していてもよく、
18A及びR19Aは、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、SiR20A3を表し、当該有機基R18A、R19Aがハロゲン又は窒素−及び酸素−含有基で置換されていても良く、2個の基R18A、R19Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
基R20Aは、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、2個の基R20Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
nは、1、2又は3である。
【0055】
上述のCp、Y、Z、A、m及びMAの形態及び好ましい形態は、各々及び組み合わせて、これらの好ましいモノシクロペンタジエニル錯体に対して適用される。
【0056】
配位子X1Aは、例えば、モノシクロペンタジエニル錯体の合成に使用される対応する出発金属化合物を選択することにより決定されうるが、後で変更することもできる。好適な配位子X1Aは、特に、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素、特に塩素である。アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、アリル、フェニル又はベンジルも、有利な配位子X1Aである。さらに、制限的ではない例として挙げると、配位子X1Aはさらに、トリフルオロアセタート、BF4-、PF6-、及び弱配位のアニオン又は配位していないアニオン(例えば、S. Straussによる“Chem. Rev. 1993, 93, 927-942”参照)、例えばB(C654-を挙げることができる。
【0057】
アミド、アルコキシド、スルホナート、カルボキシラート及びβ−ジケトナートも特に好適な配位子X1Aである。基R18A及びR19Aを変更することにより、例えば物理的性質、例えば溶解性、の細かい調整が可能になる。使用可能な有機炭素置換基R18A及びR19Aの例として、下記のものを挙げることができる。即ち、直鎖でも分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル又はn−ドデシル、置換基としてC6〜C10アリールを有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、直鎖でも環式でも分岐でも良く、2重結合が内部又は末端に存在し得るC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル又はシクロオクタジエニル、置換基としてさらにアルキル基及び/又はN−又はO−含有基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−又は3,4,5−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、2−N,N−ジメチルアミノフェニル、及び、置換基としてさらにアルキル基を有しても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルが挙げられ、R18AはR19Aと結合して5又は6員の環を形成していても良く、及び有機基R18A及びR19Aがハロゲン、例えばフッ素、塩素又は臭素、で置換されていても良い。有機ケイ素置換基SiR20A3におけるR20Aは、R18AとR19Aに対して上で詳細に記載されたものと同じ基であっても良く、2個の基R20Aが連結して5又は6員の環を形成することが可能である。置換基SiR20A3の例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、及びジメチルフェニルシリルが挙げられる。基R18A及びR19Aとして、C1〜C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、及びビニル、アリル、ベンジル、フェニルを使用するのが好ましい。これらの置換された配位子X1Aのいくつかを使用することが極めて好ましい。なぜならこれらは安価で入手し易い出発材料から得ることができるからである。このため、特に好ましい形態は、X1Aがジメチルアミド、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、フェノキシド、ナフトキシド、トリフラート、p−トルエンスルホナート、アセタート又はアセチルアセトナートであるものである。
【0058】
配位子X1Aの数nは、遷移金属MAの酸化状態に依存して変わる。このため、数nは、一般的な数として表わすことはできない。触媒活性錯体の遷移金属MAの酸化状態は、当業者には通常知られている。クロム、モリブデン及びタングステンは、酸化状態3価で存在する確率が極めて高い。バナジウムは酸化状態3又は4価で存在する確率が極めて高い。しかしながら、酸化状態が活性触媒のそれと対応しない錯体を使用することも可能である。このような錯体は、その後適当な活性化剤で還元又は酸化することができる。酸化状態3価のクロム錯体及び酸化状態3価のチタン錯体を使用することが好ましい。
【0059】
この種類の好ましいモノシクロペンタジエニル錯体A)は、1−((2−メチルアミノ)ピリジン)ジメチルシリル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−((2−オキシ−4−メチルピリジン)ジメチルシリル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−((2−オキシキノリン)ジメチルシリル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−((2−オキシ−4−メチルピリミジン)ジメチルシリル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−((2−オキシピリジン)ジメチルシリル)−3−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−((2−オキシピリジン)ジメチルシリル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−((2−メチルアミノ)ピリジン)ジメチルシリル)インデニルクロム(III)ジクロリド、1−((2−オキシ−4−メチルピリジン)ジメチルシリル)インデニルクロム(III)ジクロリド、1−((2−オキシキノリン)ジメチルシリル)インデニルクロム(III)ジクロリド、1−((2−オキシ−4−メチルピリミジン)ジメチルシリル)インデニルクロム(III)ジクロリド、及び1−((2−オキシピリジン)ジメチルシリル)インデニルクロムジクロリドである。
【0060】
このような錯体は、公知の方法で製造することができ、好ましくは適当な置換シクロペンタジエニルアニオンとチタン、バナジウム又はクロムのハロゲン化物とを反応させることにより合成することができる。適当な製造方法の例は、特に“Journal of Organometallic Chemistry, 369(1989), 359-370”及びEP−A−1212333号公報に記載されている。
【0061】
さらに、本発明者らは、下記式(VI):
【0062】
【化4】

【0063】
{但し、E10A〜E14Aは、それぞれ炭素を表し、且つ4個の隣接するE10A〜E14Aが共役ジエンを形成し、残りの1個のE10A〜E14Aがさらに水素原子を有し、
21A〜R24Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR28A3を表し、当該有機基R21A〜R24Aが、ハロゲンで置換されていても良く、及び2個のビシナル基R21A〜R24Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、及び/又は2個のビシナル基R21A〜R24Aが連結してN、P、O及びSから成る群から選択される少なくとも1個の原子を含むヘテロ環を形成し、
25A〜R27Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR28A3を表し、2個の有機基R25A〜R27Aがハロゲンで置換されていても良く、R25AとR26A及び/又はR27AとAが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
基R28Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、2個のジェミナル基R28Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
1Aが、元素周期律表の第15族又は第16族に属する1個以上の原子を含む非電荷のドナー基またはカルベン、好ましくは、非置換、置換又は縮合ヘテロ芳香族環基を表し、
2Aが、元素周期律表の第15族又は第16族に属する原子、特に酸素、イオウ、窒素又はリンを表し、
nは、D1Aが第16族の原子である場合には0を、D1Aが第15族の原子である場合には1を表す。}で表されるシクロペンタジエンを製造する方法であって、
a)式(VII)
【0064】
【化5】

【0065】
(式中、X2Aは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、OR29AまたはSO329Aを表し、
29Aは、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR30A3を表し、基R29Aがハロゲンで置換されていても良く、
基R30Aは、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、2個の基R30Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良い。}で表されるシクロペンタジエンを、式(A1A−D2A27Anp3A
(式中、X3Aは水素、Li、Na、K、BeX4Ao、MgX4Ao、CaX4Ao、SrX4Ao、BaX4Ao、又はZnX4Aoを表し、
基X4Aは、それぞれ相互に独立してフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、OR31A、SO331Aを表し、
pは、X3Aが水素、Li、Na又はKの場合には1を、oが0の場R19Aは、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、SiR20A3を表し、当該有機基R18A、R19Aがハロゲン又は窒素−及び酸素−含有基で置換されていても良く、2個の基R18A、R19Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
合には2を表し、
oは0又は1を表し、
31Aは、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR32A3を表し、基R31Aがハロゲンで置換されていても良く、
32Aは、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、2個の基R32Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良い。)で表される化合物と反応させる工程a)を含むことを特徴とする方法を発見した。
【0066】
有機炭素置換基R21A〜R24Aとしては、例えば以下のものを挙げることができる。即ち、直鎖でも分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル又はn−ドデシル、置換基としてC6〜C10アリールを有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、直鎖でも環式でも分岐でも良く、2重結合が内部又は末端に存在し得るC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル又はシクロオクタジエニル、置換基としてさらにアルキル基及び/又はN−又はO−含有基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−又は3,4,5−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、2−N,N−ジメチルアミノフェニル、及び、置換基としてさらにアルキル基を有しても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルが挙げられ、2個のビシナル基R21A〜R24Aが連結して5又は6員の環を形成しても良く、及び/又は、2個のビシナル基R21A〜R24Aが連結してN、P、O及びSから成る群から選択される少なくとも1個の原子を含むヘテロ環を形成し、有機基R21A〜R24Aがハロゲン、例えばフッ素、塩素又は臭素で置換されていても良い。基R21A〜R24Aとしては、水素及びC1〜C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、及び、フェニル又はベンジルを使用するのが好ましい。特に好ましい置換基R21A〜R24Aは、環状の縮合環を形成するものであり、即ち、E10A〜E14Aと共に、好ましくはC5−シクロペンタジエニル骨格と共に、例えば非置換又は置換インデニル、ベンズインデニル、フェナントレニル、又はテトラヒドロインデニル環を形成するものである。
【0067】
有機炭素置換基R25A〜R27Aとしては、例えば以下のものを挙げることができる。即ち、直鎖でも分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル又はn−ドデシル、置換基としてC6〜C10アリールを有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、直鎖でも環式でも分岐でも良く、2重結合が内部又は末端に存在し得るC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル又はシクロオクタジエニル、置換基としてさらにアルキル基及び/又はN−又はO−含有基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−又は3,4,5−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、2−N,N−ジメチルアミノフェニル、及び、置換基としてさらにアルキル基を有しても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルが挙げられ、2個のビシナル基R25A〜R27Aが連結して5又は6員の環を形成しても良く、有機基R25A〜R27Aがハロゲン、例えばフッ素、塩素又は臭素で置換されていても良い。基R25A〜R26Aとしては、C1〜C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、及び、フェニル又はベンジルを使用するのが好ましい。基R27Aとしては、C1〜C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、及びフェニル、2,3−、2,4−、2,5−又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−又は3,4,5−トリメチルフェニル、又はベンジルを使用するのが好ましい。
【0068】
有機ケイ素置換基SiR28A3のR28Aとしては、基R21A〜R24Aについて上で詳細に記述した基と同じ基が使用可能であり、2個の基R28Aは連結して5又は6員の環を形成しても良い。例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル及びジメチルフェニルシリルが挙げられる。
【0069】
1Aは、元素周期律表の第15族及び/又は第16族に属する少なくとも1個の原子を含む非電荷ドナー又はカルベンを意味し、好ましくは酸素、イオウ、窒素、及びリンから成る群から選択された1個以上の原子、好ましくは窒素、リンを含む。例としては、アミン、イミン、カルボキシアミド、カルボン酸エステル、ケトン(オキソ)、エーテル、チオケトン、ホスフィン、ホスフィット、ホスフィンオキシド、スルホニル、スルホンアミド、カルベン、例えばN−置換イミダゾル−2−イリデン、または非置換、置換又は縮合ヘテロ環である。
【0070】
1Aは、R28−C(=O)−、R28−C(=NR28A)−、及び、環の炭素の他に酸素、イオウ、窒素およびリンから成る群から選択されたヘテロ原子を含むことができる非置換、置換又は縮合ヘテロ芳香族環であるのが好ましい。環の原子として、炭素原子に加えて、1〜4個の窒素原子、又は1〜3個の窒素原子及び/又は1個のイオウ原子又は酸素原子を含むことができる5員のヘテロアリール基の例としては、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、3−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾル−3−イル、1,2,4−オキサジアゾル−5−イル、1,3,4−オキサジアゾル−2−イル及び1,2,4−トリアゾル−3−イルを挙げることができる。1〜4個の窒素原子及び/又は1個のリン原子を有していても良い6員のヘテロアリール基の例として、2−ピリジニル、2−ホスファベンゾイル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル、1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル、1,2,4−トリアジン−6−イルを挙げることができる。5員及び6員のヘテロアリール基はまた、C1〜C10アルキル、C6〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、トリアルキルシリル又はハロゲン、例えばフッ素、塩素又は臭素、で置換されていても良く、或いは1個以上の芳香族環又はヘテロ芳香族環と縮合されていても良い。ベンゾ−縮合5員ヘテロアリール基の例としては、2−インドリル、7−インドリル、2−クマロニル、7−クマロニル、2−チアナフテニル、7−チアナフテニル、3−インダゾリル、7−インダゾリル、2−ベンズイミダゾリル及び7−ベンズイミダゾリルを挙げることができる。ベンゾ−縮合6員ヘテロアリール基の例としては、2−キノリル、8−キノリル、3−シンノリル、8−シンノリル、1−フタラジル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、8−キナゾリル、5−キノキサリル、4−アクリジル、1−フェナントリジル、及び1−フェナジルを挙げることができる。ヘテロ環の命名及び番号の付け方は、L. FieserとM. Fieserによる“Lehrbuch der organischen Chemie, 3rd revised edition, Verlag Chemie, Weinheim 1957”を利用した。
【0071】
ヘテロ芳香族環A1Aの中は、ヘテロ芳香族部分に1、2、3、4又は5個の窒素原子を有する非置換、置換及び/又は縮合6員へテロ芳香族環が特に好ましく、中でも置換又は非置換の2−ピリジル又は2−キノリルが好ましい。A1Aは、したがって、式(VIII)で表される基が好ましい。
【0072】
【化6】

【0073】
式中、E15A〜E18Aは、それぞれ相互に独立して、炭素または窒素を表し、
33A〜R36Aは、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR37A3を表し、当該有機基R33A〜R36Aが、ハロゲン又は窒素、さらにはC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR37A3で置換されていても良く、及び2個のビシナル基R33A〜R36A又はR33AとR35Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
基R37Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、2個の基R37Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
pが、E15A〜E18Aが窒素の場合には0を、E15A〜E18Aが炭素の場合には1を表す。
【0074】
特に、0個又は1個のE15A〜E18Aが窒素であり、他のものが炭素であるのが好ましい。A1Aは、2−ピリジル、6−メチル−2−ピリジル、4−メチル−2−ピリジル、5−メチル−2−ピリジル、5−エチル−2−ピリジル、4,6−ジメチル−2−ピリジル、3−ピリダジル、4−ピリミジル、6−メチル−4−ピリミジル、2−ピラジニル、6−メチル−2−ピラジニル、5−メチル−2−ピラジニル、3−メチル−2−ピラジニル、3−エチルピラジニル、3,5,6−トリメチル−2−ピラジニル、2−キノリル、4−メチル−2−キノリル、6−メチル−2−キノリル、7−メチル−2−キノリル、2−キノキサリル、3−メチル−2−キノキサリル又は8−キノリルが特に好ましい。
【0075】
2Aは、酸素又は窒素であるのが好ましく、酸素であるのが特に好ましい。
【0076】
有機炭素置換基R29A及びR31Aとしては、以下のものを挙げることができる。即ち、直鎖でも分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル又はn−ドデシル、置換基としてC6〜C10アリールを有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、直鎖でも環式でも分岐でも良く、2重結合が内部又は末端に存在し得るC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル又はシクロオクタジエニル、置換基としてさらにアルキル基及び/又はN−又はO−含有基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−又は3,4,5−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、2−N,N−ジメチルアミノフェニル、及び、置換基としてさらにアルキル基を有しても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルが挙げられ、有機基R29A及びR31Aがハロゲン、例えばフッ素、塩素又は臭素で置換されていても良い。基R29Aとしては、メチル、フェニル、p−メチルフェニル又はトリフルオロメチルを使用するのが好ましい。基R31Aとしては、C1〜C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、フェニル、p−メチルフェニル又はトリフルオロメチルを使用するのが特に好ましい。
【0077】
有機ケイ素置換基SiR30A3及びSiR32A3のR30A及びR32Aしては、基R29Aについて上で詳細に記述した基と同じ基が使用可能であり、2個の基R30A又は2個の基R32Aは連結して5又は6員の環を形成しても良い。例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル及びジメチルフェニルシリルが挙げられる。
【0078】
好適な配位子X2Aは、特に、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素、特に塩素である。アルコキシ基およびスルホナートも特に有用な配位子X2Aである。基X2Aが置換される容易性および速度は、基R29Aの変更によって影響を受けうる。したがって、基X2Aが塩素、トリフラート、又はp−トルエンスルホナートである形態が特に好ましい。
【0079】
好適な配位子X4Aは、特に、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素、特に塩素である。アルコキシ基およびスルホナートも特に有用な配位子X4Aである。基X4Aが塩素、臭素、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、フェノキシド、トリフラート、又はp−トルエンスルホナートであるのが特に好ましい。
【0080】
3Aは、水素又は電荷が1価のカチオンである。マグネシウムのように電荷が2価のカチオンを使用することもでき、この場合には、2番目の正電荷と他の基(A−D2A27An)又はX4Aのような対イオンとが電気的に釣り合っている。その上、ジエチルエーテル又はテトラヒドロフランのようなルイス塩基が上述のカチオンに配位しうる。
【0081】
式(VII)における置換又は非置換のシクロペンタジエンは、例えば、置換又は非置換のシクロペンタジエニルアニオンと、式SiR25A26A2A2で表される化合物、例えば(CH32SiCl2とを反応させることによって製造することができる。この種の反応は、例えばEP−659757号公報に記載されている。
【0082】
式(A1A−D2A27Anp3Aで表される化合物は、例えば、市販されており、例えば、2−(メチルアミノ)ピリジン、3−ヒドロキシイソキノリン、2−ヒドロキシ−4−メチルピリジン、2−ヒドロキシ−6−メチルピリジン、2−ヒドロキシ−4−メチルピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリンまたは4−ヒドロキシキナゾリンである。D2Aにおける水素は、塩基による脱プロトン化によってX3A(水素でない)で置換することができる。塩基としては、例えばリチウムアルキル、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、ナトリウムアルコキシド、ナトリウムアルキル、水素化カリウム、カリウムアミド、カリウムアルコキシド、カリウムアルキル、マグネシウムアルキル、アルキルマグネシウムハライド、又はこれらの混合物を用いることができる。塩基の(A1A−D2A27Anp3Aに対するモル比は、通常0.4:1〜100:1の範囲、好ましくは0.9:1〜10:1の範囲、特に好ましくは0.95:1〜1.1:1の範囲である。脱プロトン化工程での溶剤として、全ての非プロトン性溶剤、特に脂肪族及び芳香族炭化水素、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、デカリン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン又はキシレン;エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン又はジエチレングリコールジメチルエーテル;及びこれらの混合物を使用することができる。脱プロトン化反応は、−100〜+160℃、特に−80〜+100℃で行うことができる。40℃を超える温度では、溶剤として、エーテルを含まないか、少ない割合でしかエーテルを含まない芳香族又は脂肪族溶剤を使用するのが好ましい。
【0083】
化合物(A1A−D2A27AnpHが使用される場合には、ルイス塩基、例えばアミンを所望によりさらに使用することができる。3個のC1〜C20アルキル基を有するトリアルキルアミンを使用するのが好ましい。ルイス塩基の(A1A−D2A27AnpHに対する割合は、通常0.1:1〜10:1の範囲、好ましくは0.5:1〜2:1の範囲である。
【0084】
工程a)の反応の溶媒として、全ての非プロトン性溶剤、特に脂肪族及び芳香族炭化水素、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、デカリン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン又はキシレン;エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン又はジエチレングリコールジメチルエーテル;及びこれらの混合物を使用することができる。反応は、−100〜+160℃、好ましくは−80〜+100℃、特に好ましくは0〜60℃で行うことができる。40℃を超える温度では、溶剤として、エーテルを含まないか、少ない割合でしかエーテルを含まない芳香族又は脂肪族溶剤を使用するのが好ましい。
【0085】
工程a)において形成される式(VI)のシクロペンタジエンは、次の工程b)において、例えば無機副生成物をろ過する工程及び/又は溶媒を蒸留除去する工程により分離することができる。非水状態の精製が好ましい。
【0086】
このようにして得られたシクロペンタジエン(VI)を、続いて、慣用的な方法、例えば水素化カリウム又はn−ブチルリチウムによって脱プロトン化し、さらに適当な遷移金属化合物、例えば三塩化クロム・三(テトラヒドロフラン)と反応させて、対応するモノシクロペンタジエニル錯体(A)を得ることができる。特に良好な収率は、脱プロトン化をt−ブチルリチウムで行った場合に得られ、これは、架橋基が1個より多い炭素原子を含む置換基で置換されている場合に、特に有効であることがわかっている。その上、シクロペンタジエン(VI)を、例えば、EP−A−742046号公報の反応に類似した方法を使用して、直接クロムアミドと反応させてモノシクロペンタジエニル錯体(A)を得ることができる。
【0087】
シクロペンタジエン(VI)を得るためのこの方法は、簡単な出発材料を使用して良好な収率が得られるため、特に有用である。
【0088】
本発明のモノシクロペンタジエニル錯体は、オレフィン重合用触媒組成物として、単独で、或いはさらなる成分と共に使用することができる。本発明者らは、さらに、
A)少なくとも1種の、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体、
B)任意に、有機又は無機の担体、
C)任意に、1種以上の活性化化合物、
D)任意に、オレフィン重合に好適な1種以上の触媒、及び
E)任意に、元素周期律表の第1、2又は13族の金属を含有する1種以上の金属化合物
を含むオレフィン重合用触媒組成物を見いだした。
【0089】
従って、一種より多い本発明のモノシクロペンタジエニル錯体を、同時に、重合すべきオレフィン又は複数のオレフィンと接触させることができる。この方法は、広い範囲のポリマーをこのようにして製造することができるという利点を有する。例えば、二峰性生成物をこのようにして製造することができる。
【0090】
気相又は懸濁液中での重合法に使用することができる本発明のモノシクロペンタジエニル錯体については、これらを固体の形態で使用する、即ちこれらを固体担体B)に施すことがしばしば有利である。さらに、担持されたモノシクロペンタジエニル錯体は高い生産性を有する。このため、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体は、有機又は無機の担体B)に任意に固定することができ、重合において担持形態で使用することができる。これにより、例えば、反応器内の堆積物を避けることができ、及びポリマーの形態を制御することが可能となる。担持材料として、シリカゲル、塩化マグネシウム、酸化アルミニウム、メソ多孔性材料、アルミノケイ酸塩、ハイドロタルサイト、及び有機ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン又は極性官能化ポリマー、例えばエチレンとアクリル酸エステル、アクロレイン又は酢酸ビニルとの共重合体、を使用するのが好ましい。
【0091】
本発明のモノシクロペンタジエニル錯体及び少なくとも1種の活性化化合物C)を含み、さらに担体成分B)を含む触媒組成物が特に好ましい。
【0092】
このような担持触媒組成物を得るために、非担持触媒組成物を担体成分B)と反応させることができる。担体成分B)、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体A)及び活性化化合物C)を組み合わせる順序は、原則として重要でない。本発明のモノシクロペンタジエニル錯体A)及び活性化化合物C)は、それぞれ独立に、又は同時に担体に固定することができる。それぞれの工程の後に、固形物を適当な不活性溶剤、例えば脂肪族又は芳香族炭化水素、で洗浄することができる。
【0093】
担持触媒組成物の製造の好ましい方法においては、少なくとも1種の本発明のモノシクロペンタジエニル錯体を、適当な溶媒中で、好ましくは可溶性の反応生成物、付加物又は混合物を与える溶剤中で、少なくとも1種の活性化化合物C)と接触させる。その後、このようにして得られた製造物を、脱水又は不動態化した担体材料と混合し、溶剤を除去し、そして得られた担持モノシクロペンタジエニル錯体触媒組成物を全部の又はほとんどの溶剤が担体材料の孔から除去されるまで乾燥する。担持触媒は、易流動性粉末として得られる。上記方法の工業的実施の例は、WO96/00243号パンフレット、WO98/40419号パンフレット又はWO00/05277号パンフレットに記載されている。別の好ましい形態は、まず活性化成分C)を担体成分B)に施す段階、次いでこの担持化合物を本発明のモノシクロペンタジエニル錯体A)と接触させる段階を含む。
【0094】
担体成分B)として、有機又は無機の固体である微細粒子の担体を使用するのが好ましい。特に、担体成分B)は、多孔性担体、例えばタルク、板状ケイ酸塩、例えばモンモリロナイト又はマイカ、無機酸化物、或いは微細粒子のポリマー粉末(例、ポリオレフィン又は極性官能基を有するポリマー)である。
【0095】
好ましく使用される担体材料は、10〜1000m2/gの比表面積、0.1〜5mL/gの細孔容積、及び1〜500μmの平均粒径を有する。50〜700m2/gの比表面積、0.4〜3.5mL/gの細孔容積及び5〜350μmの平均粒径を有する担体が好ましい。特に、200〜550m2/gの比表面積、0.5〜3.0mL/gの細孔容積及び10〜150μmの平均粒径を有する担体が好ましい。
【0096】
無機担体は、熱処理することができる。例えば吸着水を除去するために熱処理が行われる。このような乾燥処理は、一般に、80〜300℃、好ましくは100〜200℃で行われ、その際100〜200℃の乾燥を、減圧下及び/又は不活性ガス(例、窒素)雰囲気下で行うことが好ましく、或いは無機担体を、所望の固体構造及び/又は所望の表面OH濃度に設定するために、200〜1000℃でか焼することができる。担体を、慣用の乾燥剤、例えば金属アルキル、好ましくはアルミニウムアルキル、クロロシラン又はSiCl4、或いはメチルアルミノキサン、を用いて化学的に処理することもできる。適当な処理方法は、例えばWO00/31090号パンフレットに記載されている。
【0097】
無機担体材料を化学的に変性することもできる。例えば、シリカゲルのNH4SiF6又は他のフッ素化剤による処理により、シリカゲル表面のフッ素化が行われ、またシリカゲルの窒素−、フッ素−又はイオウ−含有基を有するシランによる処理により、対応する変性されたシリカゲル表面が得られる。
【0098】
有機担体材料、例えば微細粒子ポリオレフィン粉末(例、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレン)も使用することができる。この場合も、使用前の適当な精製及び乾燥処理により、吸着水分、残留溶剤又は他の不純物を同様に除去するのが好ましい。官能基、例えばアンモニウム基又はヒドロキシル基により少なくとも1種の触媒成分を固定することができるような官能化ポリマー担体、例えばポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンを基礎とする官能化ポリマー担体を使用することも可能である。
【0099】
担体成分B)として適当な無機酸化物は、元素周期律表の2、3、4、5、13、14、15及び16族の元素の酸化物の中から見出すことができる。担体として好ましい酸化物の例としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、並びにカルシウム、アルミニウム、珪素、マグネシウム又はチタンの混合酸化物、さらに対応する酸化物の混合物が含まれる。単独で、又は上述の好ましい酸化物担体との組み合わせとして使用できる他の無機酸化物は、例えば、MgO、CaO、AlPO4、ZrO2、TiO2又はB23又はこれらの混合物である。
【0100】
オレフィンの重合用触媒に用いられる固体の担体成分B)として、シリカゲルを使用するのが好ましい。なぜなら、オレフィン重合用の担体として寸法及び構造が適当な粒子をこの材料から製造することができるからである。より小さな顆粒状の粒子、すなわち一次粒子の球形の凝集物を含む噴霧乾燥シリカゲルが特に有用であることが分かっている。シリカゲルを使用前に乾燥及び/又はか焼することができる。
【0101】
他の好ましい担体B)は、ハイドロタルサイト及びか焼されたハイドロタルサイトである。鉱物学において、ハイドロタルサイトは、以下の理想式:
【0102】
【化7】

を有し、その構造がブルーサイトMg(OH)2の構造から誘導される天然鉱物である。ブルーサイトは、最密充填されたヒドロキシルイオンの二つの層間の八面体の孔隙に金属イオンが配置されており、かつこの八面体の孔隙の第二層のみが全て占められているような板状構造に結晶化する。ハイドロタルサイトにおいて、マグネシウムイオンの一部がアルミニウムイオンに置き換えられると、層のパケットに正電荷がもたらされる。この正電荷は、結晶水と共に層間に配置されたアニオンによって補償される。
【0103】
上述の板状構造は、マグネシウム−アルミニウムの水酸化物の場合ばかりでなく、一般に、下記式で表される板状構造を有する混合金属水酸化物の場合にも見出される。
【0104】
【化8】

【0105】
上式において、M(II)が2価の金属、例えばMg、Zn、Cu、Ni、Co、Mn、Ca及び/又はFeを表し、M(III)が3価の金属、例えばAl、Fe、Co、Mn、La、Ce及び/又はCrを表し、Xが0.5間隔で0.5〜10の数を表し、Aが侵入型のアニオンを表し、nが侵入型アニオンの電荷を表し、1〜8の範囲であることができ、通常1〜4の範囲であり、そして、zが1〜6の整数であり、特に2〜4を表す。侵入型アニオンとしては、有機アニオン、例えばアルコキシドアニオン、アルキルエーテルスルファートアニオン、アリールエーテルスルファートアニオン又はグリコールエーテルスルファートアニオン、無機アニオン、例えば特に炭酸アニオン、炭酸水素アニオン、硝酸アニオン、塩化物アニオン、硫酸アニオン又はB(OH)4-或いはポリオキソ金属アニオン、例えばMo7246-又はV10286-が挙げられる。しかしながら、複数のこのようなアニオンの混合物も存在する場合がある。
【0106】
従って、板状構造を有するこのような混合金属水酸化物の全ては、本発明においてはハイドロタルサイトとして見なされる。
【0107】
ハイドロタルサイトから、か焼、即ち加熱によって、か焼ハイドロタルサイトに転化することができ、加熱により、所望のヒドロキシル基含有量に設定することができる。さらに、結晶構造も変化する。本発明に従って使用されるか焼ハイドロタルサイトの製造は、通常、180℃を超える温度で行われる。250℃〜1000℃、特に400℃〜700℃の条件で3〜24時間に亘ってか焼するのが好ましい。か焼中に固体上に空気又は不活性ガスを通過させるか、或いは真空にすることができる。
【0108】
加熱時に、天然又は合成のハイドロタルサイトから最初に水が放出され、即ち乾燥が生じる。さらなる加熱時、即ち実際のか焼処理時に、金属水酸化物は、これからヒドロキシル基及び侵入型アニオンが除去されて、金属酸化物に転化され、その際に、OH基又は侵入型アニオン、例えば炭酸アニオンが依然としてか焼ハイドロタルサイト中に存在し得る。この現象の測定は、強熱減量による。強熱減量とは、2工程、即ち最初に乾燥炉中で200℃にて30分間に亘って、その後にマッフル炉中で950℃にて1時間に亘って加熱されるサンプルが受ける質量損失に該当する。
【0109】
従って、成分(B)として使用されるか焼ハイドロタルサイトは、2価及び3価の金属M(II)及びM(III)(但し、M(II)のM(III)に対するモル比は一般に0.5〜10の範囲であり、0.75〜8の範囲が好ましく、特に1〜4である。)の混合酸化物である。さらに、通常のレベルの不純物、例えばSi、Fe、Na、Ca又はTi並びに塩化物及び硫酸塩も含まれる場合がある。
【0110】
好ましいか焼ハイドロタルサイトB)は、M(II)がマグネシウムであり、M(III)がアルミニウムである混合酸化物である。このようなアルミニウム−マグネシウム混合酸化物は、ハンブルクのCondea Chemie GmbH(現在はSasol Chemie)から商標名プラロックスMg(Puralox Mg)として市販されている。
【0111】
構造的な変換が完了しているか又は実質的に完了しているか焼ハイドロタルサイトが好ましい。か焼、即ち構造の変換を、例えばX線回折パターンによって確認することができる。
【0112】
使用されるハイドロタルサイト、か焼ハイドロタルサイト又はシリカゲルは、5〜200μm、好ましくは10〜150μm、特に好ましくは15〜100μm、特に20〜70μmの平均粒径d50及び一般に0.1〜10cm3/g、好ましくは0.2〜5cm3/gの細孔容積、そして30〜1000m2/g、好ましくは50〜800m2/g、特に100〜600m2/gの比表面積を有する微細粒子状の粉末として用いられるのが一般的である。本発明のモノシクロペンタジエニル錯体は、最終触媒組成物中の遷移金属錯体濃度が担体B)1gあたり、5〜200μmol、好ましくは20〜100μmol、特に好ましくは25〜70μmolとなるような量で用いられるのが好ましい。
【0113】
本発明のモノシクロペンタジエニル錯体のいくつかは、それ自体は殆ど重合活性を有しておらず、そのため、良好な重合活性を示すことができるようにするために、錯体を活性化剤、即ち成分C)と接触させる。このような理由から、触媒組成物は必要によりさらに成分C)として1種以上の活性化化合物、好ましくは少なくとも1種のカチオン形成化合物C)を含む。
【0114】
モノシクロペンタジエニル錯体A)と反応して、これを触媒活性な、又はより活性な化合物に転化させ得る好適な化合物C)としては、例えば、アルミノキサン、非電荷の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、又はカチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物のような化合物が挙げられる。
【0115】
アルミノキサンとして、例えば、WO00/31090号パンフレットに記載されている化合物を使用することができる。特に有用なアルミノキサンは、式(X)又は(XI):
【0116】
【化9】

【0117】
[但し、基R1C〜R4Cが、相互に独立してそれぞれC1〜C6アルキル基、好ましくは、メチル、エチル、ブチル、又はイソブチルを表し、
lが1〜30、好ましくは5〜25の整数を表す。]
で表わされる開鎖状又は環状アルミノキサン化合物である。
【0118】
特に有用なアルミノキサン化合物は、メチルアルミノキサンである。
【0119】
これらのオリゴマーのアルミノキサン化合物は、通常、トリアルキルアルミニウム溶液と水との制御された反応によって製造される。一般に、このようにして得られたオリゴマーのアルミノキサン化合物は、様々な長さの鎖状分子と環状分子の混合物の形で存在する。従って、上のlの値は平均値として見なされる。アルミノキサン化合物は、他の金属アルキル、通常はアルミニウムアルキルとの混合物として存在することもできる。成分C)として好適なアルミノキサン製品は市販されている。
【0120】
さらに、成分C)として、式(X)又は(XI)のアルミノキサン化合物の代わりに、炭化水素基の一部を水素原子又はアルコキシ、アリールオキシ、シロキシ又はアミドの各基で置換した変性アルミノキサンを使用することもできる。
【0121】
モノシクロペンタジエニル錯体A)とアルミノキサン化合物を、まだ存在するアルキルアルミニウムを含むアルミノキサン化合物におけるアルミニウムの、モノシクロペンタジエニル錯体A)における遷移金属に対する原子比が1:1〜1000:1、好ましくは10:1〜500:1、特に好ましくは20:1〜400:1の範囲になるような量で使用することが有効であることが分かっている。
【0122】
別の種類の好適な活性化化合物C)は、ヒドロキシアルミノキサンである。このアルミノキサンは、例えば、アルキルアルミニウム化合物、特にトリイソブチルアルミニウムに、1当量のアルミニウムに対して0.5〜1.2当量の水、好ましくは0.8〜1.2当量の水を、低温、一般的には0℃未満の温度で添加することによって製造可能である。このような化合物及びこのような化合物のオレフィン重合での使用法は、例えば、WO00/24787号パンフレットに記載されている。ヒドロキシアルミノキサン化合物におけるアルミニウムの、モノシクロペンタジエニル錯体A)における遷移金属に対する原子比は、1:1〜100:1の範囲が一般的であり、10:1〜50:1の範囲が好ましく、特に20:1〜40:1の範囲が好ましい。この場合にモノシクロペンタジエニル金属ジアルキル化合物A)を使用するのが好ましい。
【0123】
非電荷の強ルイス酸として、式(XII):
【0124】
【化10】

【0125】
[但し、M1Cが元素周期律表の第13族の元素、好ましくはB、Al又はGa、特に好ましくはBを表わし、
1C、X2C及びX3Cが、それぞれ水素、C1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアリールアルキル、アリールアルキル、ハロアルキル又はハロアリール、又はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくはハロアリール、特に好ましくはペンタフルオロフェニルを表わす。]
で表される化合物が好ましい。
【0126】
非電荷の強ルイス酸の他の例は、WO00/31090号パンフレットに記載されている。
【0127】
この種の成分C)として特に有用な化合物は、ボラン及びボロキシン、例えばトリアルキルボラン、トリアリールボラン、又はトリメチルボロキシンである。少なくとも2個の完全にフッ素化されたアリール基を有するボランを使用するのが特に好ましい。X1C、X2C及びX3Cが同一である式(XII)で表される化合物が特に好ましく、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが極めて好ましい。
【0128】
好適な化合物C)は、式(XII)で表されるアルミニウム又はホウ素化合物を水、アルコール、フェノール誘導体、チオフェノール誘導体又はアニリン誘導体と反応させることによって製造するのが好ましく、その際に、ハロゲン化された、特に完全にフッ素化されたアルコール及びフェノールが特に重要である。特に有用な化合物の例は、ペンタフルオロフェノール、1,1−ビス(ペンタフルオロフェニル)メタノール及び4−ヒドロキシ−2,2’,3,3’,4,4’,5,5’,6,6’−ノナフルオロビフェニルである。式(XII)で表される化合物とブレンステッド酸との組み合わせ例は、特に、トリメチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール、トリメチルアルミニウム/1−ビス(ペンタフルオロフェニル)メタノール、トリメチルアルミニウム/4−ヒドロキシ−2,2’,3,3’,4,4’,5,5’,6,6’−ノナフルオロビフェニル、トリエチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール及びトリイソブチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール及びトリエチルアルミニウム/4,4’−ジヒドロキシ−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニルヒドラートである。
【0129】
式(XII)で表される他の好適なアルミニウム及びホウ素化合物では、X1CがOH基を表す。この種の化合物の例は、ボロン酸及びボリン酸、特に完全にフッ素化されたアリール基を有するボリン酸、例えば(C652BOHである。
【0130】
活性化化合物C)として適当な非電荷の強ルイス酸はまた、ボロン酸と2当量のアルミニウムトリアルキルとの反応生成物、又はアルミニウムトリアルキルと2当量の酸性のフッ素化、特に完全にフッ素化された炭化水素化合物、例えばペンタフルオロフェノール又はビス(ペンタフルオロフェニル)ボリン酸との反応生成物を含む。
【0131】
ルイス酸カチオンを有する好適なイオン性化合物には、式(XIII):
【0132】
【化11】

【0133】
[但し、M2Cが元素周期律表の第1〜16族に属する元素を表し、
1からQzが、C1〜C28アルキル、C6〜C15アリール、炭素原子数1〜28個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアリールアルキル又はアリールアルキル又はハロアルキル又はハロアリール、置換基としてC1〜C10アルキルを有していても良いC3〜C10シクロアルキル、ハロゲン、C1〜C28アルコキシ、C6〜C15アリールオキシ、シリル、又はメルカプチル基等の1価の負電荷基を表し、
aが1〜6の整数を表し、
zが0〜5の整数を表し、
dがа−zの差を表すが、dは1以上である。]
で表されるカチオンの塩様化合物が含まれる。
【0134】
特に有用なカチオンは、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、及びスルホニウムカチオン、さらにカチオン性遷移金属錯体である。トリフェニルメチルカチオン、銀カチオン及び1,1’−ジメチルフェロセニルカチオンを特に挙げることができる。これらは、非配位の対イオンを有しているのが好ましく、特に、WO91/09882号パンフレットにも記載されているホウ素化合物、なかでもテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートが好ましい。
【0135】
非配位アニオンを有する塩は、ホウ素又はアルミニウム化合物、例えばアルミニウムアルキルを、2個以上のホウ素又はアルミニウム原子が互いに結合するように反応可能な第2の化合物、例えば水、及び上記ホウ素又はアルミニウム化合物とイオン化したイオン性化合物を形成する第3の化合物、例えばトリフェニルクロロメタン、又は必要により塩基、好ましくは有機窒素含有塩基、例えばアミン、アニリン誘導体又は窒素のヘテロ環式化合物と組み合わせることによって製造することもできる。さらに、同様にホウ素又はアルミニウム化合物と反応する第4の化合物,例えばペンタフルオロフェノールを添加することができる。
【0136】
カチオンとしてブレンステッド酸を含むイオン性化合物も同様に、非配位対イオンを有しているのが好ましい。ブレンステッド酸として、プロトン化アミン又はアニリン誘導体が特に好ましい。好ましいカチオンは、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルベンジルアンモニウムカチオン、及び後の2つの誘導体である。
【0137】
WO97/36937号パンフレットに記載されているようなアニオン性ホウ素ヘテロ環式化合物を含む化合物、特にジメチルアニリニウムボラタベンゼン又はトリチルボラタベンゼンも成分C)として適当である。
【0138】
好適なイオン性化合物C)は、少なくとも2個の完全にフッ素化されたアリール基を有するホウ酸塩を含む。N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、特にN,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート又はトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートが特に好ましい。
【0139】
ジアニオン[(C653B−C64−B(C6532-、アニオン[(C653B−CN−B(C653-におけるように、2個以上のボラートアニオン及び/又はボランが相互に結合するか、又はボラートアニオンがボランに結合することも可能である。或いはボラートアニオンを、好適な官能基を有する架橋基を介して担体表面に結合させることもできる。
【0140】
他の好適な活性化化合物C)は、WO00/31090号パンフレットに列挙されている。
【0141】
非電荷の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、又はカチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物の量は、モノシクロペンタジエニル錯体A)に対して、0.1〜20当量が好ましく、1〜10当量がより好ましい。
【0142】
好適な活性化化合物C)はまた、ジ[ビス(ペンタフルオロフェニル)ボロキシ]メチルアラン等のホウ素−アルミニウム化合物を含む。この種のホウ素−アルミニウム化合物の例は、WO99/06414号パンフレットに記載されている。
【0143】
上述の全ての活性化化合物C)の混合物を使用することもできる。好ましい混合物は、アルミノキサン、特にメチルアルミノキサンと、イオン性化合物、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートアニオンを含む化合物、及び/又は非電荷の強ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む。
【0144】
モノシクロペンタジエニル錯体A)と活性化化合物C)の両方を、溶媒、好ましくは炭素原子数6〜20個の芳香族炭化水素、特にキシレン、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン又はこれらの混合物中で使用するのが好ましい。
【0145】
さらに、担体B)として同時に使用可能な活性化化合物C)を使用することも可能である。このような組成物は、例えば、無機酸化物をジルコニウムアルコキシドで処理し、次いで例えば四塩化炭素を用いて塩素化することによって得られる。このような組成物の製造法は、例えば、WO01/41920号パンフレットに記載されている。
【0146】
本発明のモノシクロペンタジエニル錯体A)をオレフィンの重合に適当な少なくとも1種の他の触媒D)と組み合わせて用いることによって、同様に広範囲の生成物を得ることもできる。従って、触媒組成物において任意の成分D)として、オレフィンの重合に適当な1種以上の触媒を用いることができる。使用し得る触媒D)は、特に、チタンを基礎とする典型的なチーグラー−ナッタ触媒及び酸化クロムを基礎とする伝統的なフィリップス触媒である。
【0147】
原則として、使用可能な成分D)は、有機基を含んでおり、かつ好ましくは触媒A)及び必要によりB)及び/又はE)の存在下での成分C)との反応後にオレフィン重合用の活性触媒を形成する、元素周期律表の第3族〜第12族の遷移金属又はランタニドの全ての化合物である。これらは、通常、少なくとも1種の単座配位子又は多座配位子がσ結合又はπ結合を介して中心原子に結合している化合物である。使用可能な配位子には、シクロペンタジエニル基を含む配位子とシクロペンタジエニル基を含まない配位子の両方が含まれる。“Chem. Rev. 2000, vol. 100, No 4”には、オレフィンの重合に適当なこのような化合物D)の多くが記載されている。さらに、多核シクロペンタジエニル錯体もオレフィンの重合に適当である。
【0148】
特に好適な化合物D)には、少なくとも1種のシクロペンタジエニル配位子を有する化合物(メタロセン錯体と一般に呼ばれる)が含まれる。特に下記式(XIV)で表されるメタロセン錯体が有用である。
【0149】
【化12】

【0150】
上式に置いて、M1Dが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステン、又は元素周期律表の第3族及びランタニドの元素を表し、
Dが、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C6〜C15アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−OR6D又はNR6D7Dを表し、或いは2個の基XDが、置換又は非置換のジエン配位子、特に1,3−ジエン配位子を形成し、そしてXDが同一であっても異なっていても良く、相互に結合していても良く、
1D〜E5Dが、それぞれ炭素を表すか、又は1個以下のE1D〜E5Dがリン又は窒素を表し、好ましくは炭素を表し、
tが、1、2又は3を表し、M1Dの原子価に応じて式(XIV)で表されるメタロセン錯体が非電荷状態となるように選択され、
6D及びR7Dが、それぞれC1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリール、アリールアルキル、フルオロアルキル又はフルオロアリールを表し、
1D〜R5Dが、相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C22アルキル、置換基としてC1〜C10アルキルを有していても良い5〜7員のシクロアルキル若しくはシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、炭素原子数1〜16個のアルキル部分と炭素原子数6〜21個のアリール部分とを有するアリールアルキル、NR8D2、N(SiR8D32、OR8D、OSiR8D3、SiR8D3を表し、且つ有機基R1D〜R5Dはハロゲンで置換されていても良く、及び/又は2個の基R1D〜R5D、特にビシナル基が連結して5員、6員又は7員環を形成しても良く、及び/又は2個のビシナル基R1D〜R5Dが連結してN、P、O及びSから成る群から選択される少なくとも1個の原子を含む5員、6員又は7員のヘテロ環を形成しても良く、
8Dが、同一であっても異なっていても良く、それぞれC1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C15アリール、C1〜C4アルコキシ又はC6〜C10アリールオキシを表し、
1Dが、XDと同義であるか、又は下記式:
【0151】
【化13】

【0152】
{但し、R9D〜R13Dが、相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C22アルキル、置換基としてC1〜C10アルキルを有していても良い5〜7員のシクロアルキル若しくはシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、炭素原子数1〜16個のアルキル部分と炭素原子数6〜21個のアリール部分とを有するアリールアルキル、NR14D2、N(SiR14D32、OR14D、OSiR14D3、SiR14D3を表し、且つ有機基R9D〜R13Dはハロゲンで置換されていても良く、及び/又は2個の基R9D〜R13D、特にビシナル基が連結して5員、6員又は7員環を形成しても良く、及び/又は2個のビシナル基R9D〜R13Dが連結してN、P、O及びSから成る群から選択される少なくとも1個の原子を含む5員、6員又は7員のヘテロ環を形成しても良く、
14Dが、同一であっても異なっていても良く、それぞれC1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C15アリール、C1〜C4アルコキシ又はC6〜C10アリールオキシを表し、
6D〜E10Dが、それぞれ炭素を表すか、又は1個以下のE6D〜E10Dがリン又は窒素を表し、好ましくは炭素を表す。}
で表される基を表し、或いは
基R4D及びZ1Dが共同して基−R15DV−A1D
{但し、R15D
【0153】
【化14】

【0154】
(式中、R16D〜R21Dが同一であっても異なっていても良く、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル、C1〜C10アルキル、C1〜C10フルオロアルキル、C6〜C10フルオロアリール、C6〜C10アリール、C1〜C10アルコキシ、C7〜C15アルキルアリールオキシ、C2〜C10アルケニル、C7〜C40アリールアルキル、C8〜C40アリールアルケニル又はC7〜C40アルキルアリールを表し、又は2個の隣接基がこれらと結合している原子と共に炭素原子数4〜15個の飽和又は不飽和環を形成し、
2D〜M4Dが、ケイ素、ゲルマニウム又はスズを表し、好ましくはケイ素を表す。)
を表し、
1Dが、
【0155】
【化15】

又は非置換、置換又は縮合ヘテロ環基を表し、且つ
基R22Dが、相互に独立してそれぞれC1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、C3〜C10シクロアルキル、C7〜C18アリールアルキル又はSi(R23D3を表し、
23Dが、水素、C1〜C10アルキル、置換基としてC1〜C4アルキルを有していても良いC6〜C15アリール又はC3〜C10シクロアルキルを表し、
vが1を表し、又はA1Dが非置換、置換又は縮合ヘテロ環基の場合に0であっても良い。}
を形成し、又は
基R4D及びR12Dが共に基−R15D−を形成する。
【0156】
1Dは架橋基R15Dと共に、例えばアミン、エーテル、チオエーテル又はホスフィンを形成可能である。しかしながら、A1Dは、炭素環員の他に酸素、イオウ、窒素及びリンから成る群から選択されるヘテロ原子を含むことができる非置換、置換又は縮合ヘテロ芳香族環基であっても良い。炭素原子の他に環原子として1〜4個の窒素原子及び/又は1個のイオウ若しくは酸素原子を含むことができる5員環のヘテロアリール基の例としては、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、3−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾル−3−イル、1,2,4−オキサジアゾル−5−イル、1,3,4−オキサジアゾル−2−イル又は1,2,4−トリアゾル−3−イルを挙げることができる。1〜4個の窒素原子及び/又は1個のリン原子を含むことができる6員のへテロアリール基の例としては、2−ピリジニル、2−ホスファベンゾイル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル、1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル及び1,2,4−トリアジン−6−イルを挙げることができる。5及び6員環のヘテロアリール基は、C1〜C10アルキル、C6〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、トリアルキルシリル又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素で置換されていても良く、又は1個以上の芳香族環又はヘテロ芳香族環と縮合していても良い。ベンゾ−縮合5員ヘテロアリール基の例としては、2−インドリル、7−インドリル、2−クマロニル、7−クマロニル、2−チアナフテニル、7−チアナフテニル、3−インダゾリル、7−インダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル及び7−ベンゾイミダゾリルを挙げることができる。ベンゾ−縮合6員へテロアリール基の例としては、2−キノリル、8−キノリル、3−シンノリル、8−シンノリル、1−フタラジル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、8−キナゾリル、5−キノキサリル、4−アクリジル、1−フェナントリジル及び1−フェナジルを挙げることができる。ヘテロ環の命名法及び番号付けは、L. Fieser及びM. Fieserによる“Lehrbuch der organischen Chemie, 3rd revised edition, Verlag Chemie, Weinheim 1957”を利用した。
【0157】
式(XIV)における基XDが同一であり、好ましくはフッ素、塩素、臭素、C1〜C7アルキル又はアリールアルキルであり、特に塩素、メチル又はベンジルであるのが好ましい。
【0158】
このような錯体の合成は、それ自体公知の方法によって行うことができ、好ましくは適当に置換された環式の炭化水素アニオンをチタン、ジルコニウム、ハフニウム又はクロムのハロゲン化物と反応させることによって行うことができる。
【0159】
式(XIV)で表されるメタロセン錯体の中で、以下の
【0160】
【化16】

【0161】
【化17】

で表される錯体が好ましい。
【0162】
式(XIVa)で表される化合物の中で、
1Dが、チタン、バナジウム又はクロムを表し、
Dが、塩素、C1〜C4アルキル、フェニル、アルコキシ又はアリールオキシを表し、
tが、1又は2を表し、そして
1D〜R5Dが、それぞれ水素、C1〜C6アルキルを表すか、又は2個の隣接基R1D〜R5Dが置換又は非置換のベンゾ基を形成する化合物が特に好ましい。
【0163】
式(XIVb)で表される化合物の中で、
1Dが、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム又はクロムを表し、
Dが、フッ素、塩素、C1〜C4アルキル又はベンジルを表すか、又は2個の基XDが置換又は非置換のブタジエン配位子を形成し、
tが、M1Dがクロムの場合に0を表し、その他の場合に1又は2を表し、好ましくは2を表し、
1D〜R5Dが、それぞれ水素、C1〜C8アルキル、C6〜C8アリール、NR8D2、OSiR8D3、Si(R8D3を表し、そして
9D〜R13Dが、それぞれ水素、C1〜C8アルキル、C6〜C8アリール、NR14D2、OSiR14D3又はSi(R14D3を表し、或いは、
2個の基R1D〜R5D及び/又はR9D〜R13DがC5環と共にインデニル、フルオレニル、置換インデニル、又は置換フルオレニル環を形成する化合物が好ましい。
【0164】
シクロペンタジエニル基が同一である式(XIVb)の化合物が特に有用である。
【0165】
式(XIVb)で表される特に有用な化合物D)の例には、ビス(シクロペンタジエニル)クロム、ビス(インデニル)チタンジクロリド、ビス(フルオレニル)チタンジクロリド、ビス(テトラヒドロインデニル)チタンジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(トリメトキシシリルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(イソブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(3−ブテニルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(1,3−ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(フェニルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(N,N−ジメチルアミノメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(1−メチル−3−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、(シクロペンタジエニル)(メチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、(シクロペンタジエニル)(n−ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、(メチルシクロペンタジエニル)(n−ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、(シクロペンタジエニル)(1−メチル−3−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(イソブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(3−ブテニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3−ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(メチルシクロペンタジエニル)(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(1−メチル−3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメトキシシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、さらに対応するジメチルジルコニウム化合物が含まれる。
【0166】
式(XIVc)で表される特に有用な化合物は、
15Dが、
【0167】
【化18】

で表される基を表し、
1Dが、チタン、ジルコニウム又はハフニウム、特にジルコニウムを表し、
基XDが、同一であっても異なっていても良く、それぞれ塩素、C1〜C4アルキル、ベンジル、フェニル又はC7〜C15アルキルアリールオキシを表す化合物である。
【0168】
式(XIVc)で示される特に有用な化合物は、下記式(XIVc’)で表される化合物である。
【0169】
【化19】

【0170】
上式において、基R’が、同一であっても異なっても良く、それぞれ水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル又はシクロヘキシル、C6〜C20アリール、好ましくはフェニル、ナフチル又はメシチル、C7〜C40アリールアルキル、C7−C40アルキルアリール、好ましくは4−t−ブチルフェニル又は3,5−ジ−t−ブチルフェニル、又はC8〜C40アリールアルケニルを表し、
5D及びR13Dが、同一であっても異なっても良く、それぞれ水素、C1〜C6アルキル、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル又はt−ブチルを表し、そして
環基S及びTが、同一であっても異なっていても良く、飽和、不飽和又は部分的に飽和している環を表す。
【0171】
上記式(XIVc’)のメタロセンのインデニル又はテトラヒドロインデニル配位子は、2位、2位及び4位、4位及び7位、2位、4位及び7位、2位及び6位、2位、4位及び6位、2位、5位及び6位、2位、4位、5位及び6位、又は2位、4位、5位、6位及び7位で置換されているのが好ましく、2位及び4位で置換されているのが特に好ましい。尚、置換位置を示すために、以下の番号付けが用いられる。
【0172】
【化20】

【0173】
さらに、成分D)として、ラセミ体又は擬ラセミ体の架橋ビスインデニル錯体を使用することが好ましい。ここで、“擬ラセミ体”という語は、2個のインデニル配位子が、錯体の他の全ての置換基を考慮しない場合に、相互にラセミ配列状態にある錯体を言う。
【0174】
特に有用な触媒D)としての(XIVc)及び(XIVc’)の例としては、さらに、
メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
メチレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
メチレンビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデンビス(3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデンビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデンビス(3−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
テトラメチルエチレン−9−フルオレニルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(テトラメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−t−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジエチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジブロミド、
ジメチルシランジイルビス(3−メチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−エチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
【0175】
ジフェニルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ハフニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−i−ブチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−(9−フェナントリル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[p−トリフルオロメチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[3’,5’−ジメチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジエチルシランジイルビス(2−メチル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−イソプロピル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−n−ブチル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−へキシル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
【0176】
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)(2−エチル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[3’,5’−ビス−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[1’−ナフチル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、及び
エチレン(2−イソプロピル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[4’−t−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、及び対応するジメチルジルコニウム、モノクロロモノ(アルキルアリールオキシ)ジルコニウム及びジ(アルキルアリールオキシ)ジルコニウム化合物が含まれる。錯体は、ラセミ体で使用されるのが好ましい。
【0177】
このような錯体の合成はそれ自体公知の方法により行われるが、好ましくは適当に置換された環式炭化水素アニオンと、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル又はクロムのハロゲン化物との反応により行われる。適当な製造法の例は、特に“Journal of Organometallic Chemistry 369(1989), 359-370”に記載されている。
【0178】
式(XIVd)で表される特に有用な化合物は、
1Dが、チタン又はジルコニウム、特にチタンを表し、
Dが、塩素、C1〜C4アルキル又はフェニルを表すか、或いは2個の基XDが置換又は非置換のブタジエン配位子を形成し、
15Dが、以下の
【0179】
【化21】

で表される基を表し、
1Dが、以下の
【0180】
【化22】

で表される基を表し、
tが1又は2、好ましくは2を表し
1D〜R3D及びR5Dが、それぞれ水素、C1〜C10アルキル、好ましくはメチル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C15アリール、NR8D2、Si(R8D3を表し、又は2個の隣接基が炭素原子数4〜12個の環基を形成し、特に好ましくは全てのR1D〜R3D及びR5Dがメチルを表す化合物である。
【0181】
式(XIVd)で表される特に有用な錯体D)は、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(フェニルアミノ)チタンジクロリド、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(ベンジルアミノ)チタンジクロリド、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t−ブチルアミノ)チタンジクロリド、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(アダマンチル)チタンジクロリド、及び
ジメチルシランジイル(インデニル)(t−ブチルアミノ)チタンジクロリド、である。
【0182】
特に有用な式(XIVd)で表される化合物の別のグループは、
1Dが、チタン、バナジウム又はクロム、好ましくは酸化状態3価のこれらの元素を表し、
Dが、塩素、C1〜C4アルキル又はフェニルを表すか、又は2個のXD基が置換又は非置換のブタジエン配位子を形成し、
15Dが、
【0183】
【化23】

で表される基を表し、
1Dが、−OR22D、−NR22D2、−PR22D2で表される基を表すか、又は非置換、置換又は縮合ヘテロ環基、特にヘテロ芳香族環基を表し、
vは1であるか、又はA1Dが非置換、置換又は縮合ヘテロ環基を意味する場合に0又は1でも良く、
1D〜R3D及びR5Dが、それぞれ水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C15アリール、Si(R8D3を表し、又は2個の隣接基が炭素原子数4〜12個の環基を形成する化合物である。
【0184】
好ましい実施の形態において、A1Dは非置換、置換又は縮合ヘテロ芳香族環基であり、M1Dはクロムである。極めて好ましくは、A1Dが非置換の基又は置換された基、例えば8位若しくは2位に結合したアルキル置換のキノリル又はピリジルであり、後者の場合にはv=0であるのが特に好ましい。例えば、8−キノリル、8−(2−メチルキノリル)、8−(2,3,4−トリメチルキノリル)、8−(2,3,4,5,6,7−ヘキサメチルキノリル)であり、vが0であり、そしてM1Dがクロムである。この種の好ましい触媒D)は、
1−(8−キノリル)−2−メチル−4−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−3−イソプロピル−5−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)テトラヒドロインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)インデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−メチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−イソプロピルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−エチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−t−ブチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)ベンズインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−メチルベンズインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチル−4−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))テトラヒドロインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))インデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−イソプロピルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−エチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−t−ブチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))ベンズインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(2−ピリジルメチル)インデニルクロム(III)ジクロリド、又は
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチルベンズインデニルクロム(III)ジクロリド、である。
【0185】
さらに、R15DがCH=CH又は1,2−フェニレンを表し、A1Dが−NR22D2を表す化合物、及びR15DがCH2、C(CH32又はSi(CH32を表し、A1Dが非置換若しくは置換の8−キノリル又は非置換若しくは置換の2−ピリジルを表す化合物が、製造が容易であるので好ましい。
【0186】
このような官能化シクロペンタジエニル配位子の製造法は、以前から知られている。これらの錯体配位子の種々の合成経路は、例えばM. Endersらによって“Chem. Ber. (1996), 129, 459-463”に、又はP. Jutzi及びU. Siemelingによって“J. Orgmet. Chem. (1995), 500, 175-185”に記載されている。
【0187】
金属錯体、特にクロム錯体は、適当な金属塩、例えば金属塩化物を配位子アニオンと反応させる(例えば、DE−A−19710615号公報の実施例と類似の方法を用いる)ことによって簡易に得ることができる。
【0188】
他の好適な触媒D)には、シクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルと縮合ヘテロ環(ヘテロ環は芳香族性であり、窒素及び/又はイオウを含んでいるのが好ましい。)から形成される少なくとも1個の配位子を含むメタロセンが含まれる。このような化合物は、例えばWO98/22486号パンフレットに記載されている。これらの化合物として、特にジメチルシランジイル(2−メチル−4−フェニルインデニル)(2,5−ジメチル−N−フェニル−4−アザペンタレン)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2,5−ジメチル−N−フェニル−4−アザペンタレン)ジルコニウムジクロリド又は(インデニル)(2,5−ジメチル−N−フェニル−4−アザペンタレン)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
【0189】
他の好適な触媒D)は、メタロセン化合物を、例えばジルコニウムアルコキシドで処理して次いで例えば四塩化炭素で塩素化した無機酸化物と組み合わせた組成物である。このような組成物の製造法は、例えばWO01/41920号パンフレットに記載されている。
【0190】
他の好適な触媒D)には、構造的な特徴として、クロムが少なくとも1個のイミド基と結合したイミドクロム化合物が含まれる。これらの化合物及びその製造法は、例えばWO01/09148号パンフレットに記載されている。
【0191】
さらなる好適な成分D)としては、3座配位の大環状配位子、特に置換及び非置換の1,3,5−トリアザシクロヘキサン及び1,4,7−トリアザシクロノナン、を有する遷移金属錯体が含まれる。この種の触媒において、クロム錯体が同様に好ましい。この種の好ましい触媒としては、[1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド、[1,3,5−トリエチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド、[1,3,5−トリオクチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド、[1,3,5−トリドデシル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド及び[1,3,5−トリベンジル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリドを挙げることができる。
【0192】
別の好適な触媒D)としては、例えば、下記式XV〜XIXで表される少なくとも1種の配位子を有し、
【0193】
【化24】

【0194】
遷移金属がTi、Zr、Hf、Sc、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、Pt及び希土類金属の元素から成る群から選択される、遷移金属錯体を挙げることができる。中心金属としてニッケル、鉄、コバルト又はパラジウムを有する化合物が好ましい。
【0195】
尚、EFは、元素周期律表第15族の元素、好ましくはN又はPを表し、Nが特に好ましい。分子中の2個又は3個の原子EFは同一であっても異なっていても良い。
【0196】
配位子XV〜XIXにおいて同一であっても異なっていても良い基R1F〜R25Fは、下記の意味を表す。すなわち、
1F及びR4Fが、相互に独立して、それぞれ炭化水素基又は置換炭化水素基、好ましくはEFに隣接する炭素原子が少なくとも2個の炭素原子に結合している炭化水素基を表し、
2F及びR3Fが、相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、R2F及びR3Fが連結して1個以上のヘテロ原子が存在していても良い環基を形成しても良く、
6F及びR8Fが、相互に独立して、それぞれ炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
5F及びR9Fが、相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、且つ
6FとR5F、又はR8FとR9Fが連結して環基を形成しても良く、
基R7Fが、相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、2個のR7Fが連結して環基を形成しても良く、
10F及びR14Fが、相互に独立して、それぞれ炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
11F、R12F、R12F'及びR13Fが、相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、2個以上のジェミナル又はビシナル基R11F、R12F、R12F'及びR13Fが連結して環基を形成しても良く、
15F及びR18Fが、相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
16F及びR17Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
19F及びR25Fが、相互に独立して、それぞれC2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分及び炭素原子数6〜20個のアリール部分を有するアリールアルキルを表し、且つ有機基R19F及びR25Fがハロゲンで置換されていても良く、
20F〜R24Fが、相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分及び炭素原子数6〜20個のアリール部分を有するアリールアルキル、又はSiR26F3を表し、且つ有機基R20F〜R24Fがハロゲンで置換されていても良く、そして2個のビシナル基R20F〜R24Fが連結して5又は6員環を形成しても良く、
26Fが、相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分及び炭素原子数6〜20個のアリール部分を有するアリールアルキルを表し、そして2個の基R26Fが連結して5又は6員環を形成しても良く、
xが0又は1を表し、且つxが0である場合に式(XVI)の錯体が負電荷を有しており、
yが1〜4までの整数を表し、2又は3が好ましい。
【0197】
中心金属としてFe、Co、Ni、Pd又はPtを有し、式(XV)で表される配位子を含む遷移金属錯体が特に有用である。Ni又はPdのジイミン錯体、例えば
ジ(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジ(ジ−i−プロピルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジ(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジ(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンパラジウムジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンニッケルジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンジメチルパラジウム、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンジメチルニッケル、
1,1’−ビピリジルパラジウムジクロリド、
1,1’−ビピリジルニッケルジクロリド、
1,1’−ビピリジルジメチルパラジウム、
1,1’−ビピリジルジメチルニッケル、が特に好ましい。
【0198】
特に有用な化合物(XIX)には、“J. Am. Chem. Soc. 120, p.4049ff (1998)”、“J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1998, 849”及びWO98/27124号パンフレットに記載されている化合物も含まれる。EFは窒素であるのが好ましく、(XIX)のR19F及びR25Fは、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−若しくは2,6−ジメチルフェニル、−ジクロロフェニル若しくはジブロモフェニル、2−クロロ−6−メチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−若しくは3,4,5−トリメチルフェニルを表すのが好ましく、特に2,3−若しくは2,6−ジメチルフェニル、−ジイソプロピルフェニル、−ジクロロフェニル若しくはジブロモフェニル及び2,4,6−トリメチルフェニルが好ましい。同時に、R20F及びR24Fが、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ベンジル又はフェニルであるのが好ましく、水素又はメチルであるのが特に好ましい。R21F及びR23Fが水素であるのが好ましく、R22Fが水素、メチル、エチル又はフェニル、特に水素であるのが好ましい。遷移金属Fe、Co又はNi、特にFeを有する配位子XIXの錯体が好ましい。特に好ましいのは、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4−ジメチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4,6−トリメチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2−クロロ−6−メチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジクロロフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ピリジンジカルボキシアルデヒドビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4−ジメチルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4,6−トリメチルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2−クロロ−6−メチルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジクロロフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ピリジンジカルボキシアルデヒドビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)コバルトジクロリド、である。
【0199】
イミノフェノキシド錯体も、触媒D)として使用することができる。これらの錯体の配位子は、例えば、置換又は非置換のサリチルアルデヒド及び第一級アミン、特に置換又は非置換のアリールアミンから製造することができる。π環に1個以上のヘテロ原子を有するπ配位子、例えばボラタベンゼン配位子、ピロリルアニオン又はホスホリルアニオンを有する遷移金属錯体も、触媒D)として使用することができる。
【0200】
触媒D)として好適な他の錯体には、2座配位又は3座配位のキレート配位子を有する錯体が含まれる。このような配位子では、例えば、エーテル官能基がアミン又はアミド官能基に結合し、アミドがピリジン等のヘテロ芳香族環に結合している。
【0201】
このような成分A)及びD)の組み合わせにより、例えば、二峰性生成物を製造することが可能となり、又はコモノマーをその場で生成することが可能となる。オレフィンの重合に慣用される少なくとも1種の触媒D)、必要により1種以上の活性化化合物C)の存在下に、少なくとも1種のモノシクロペンタジエニル錯体A)を使用するのが好ましい。ここでは、触媒の組み合わせA)及びD)に応じて、1種以上の活性化化合物C)が有効な場合もありうる。重合触媒D)も同様に担持されていても良く、そして本発明の錯体A)と同時に又は所望の順序で用いることができる。例えば、モノシクロペンタジエニル錯体A)及び重合触媒D)を同じ担体B)に担持することができ、又は異なる担体B)に担持することもできる。種々の触媒の混合物を成分D)として使用することもできる。遷移金属錯体A)の重合触媒D)に対するモル比は、通常、1:100〜100:1の範囲であり、1:10〜20:1の範囲が好ましく、1:1〜10:1の範囲が特に好ましい。
【0202】
触媒組成物は、さらに、追加の成分E)として、下記式(XX)で表される金属化合物を含むことができる。
【0203】
【化25】

【0204】
上式において、MGは、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、亜鉛を表し、Li、Na、K、Mg、ホウ素、アルミニウム又は亜鉛が好ましく、
1Gは、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアリールアルキル又はアルキルアリールを表わし、
2G及びR3Gは、それぞれ、水素、ハロゲン、C1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、炭素原子数1〜20個のアルキル部分及び炭素原子数6〜20個のアリール部分を有するアリールアルキル又はアルキルアリール又はアルコキシを表し、又はC1〜C10アルキル若しくはC6〜C15アリールを有するアルコキシを表し、
Gは1〜3の整数を表し、
G及びtGは、0〜2の範囲の整数を表し、且つrG+sG+tGの合計はMGの価数に対応する。尚、上式において、成分E)は成分C)と同一でない。式(XX)で表される種々の金属化合物の混合物も使用することもできる。
【0205】
式(XX)で表される金属化合物のうち、MGがリチウム、マグネシウム、ホウ素又はアルミニウムでかつR1GがC1〜C20アルキルである金属化合物が好ましい。
【0206】
式(XX)で表される特に好ましい金属化合物として、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、n−ブチル−n−ヘプチルマグネシウム、特にn−ブチル−n−オクチルマグネシウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムフロリド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド及びトリメチルアルミニウム、及びこれらの混合物を挙げることができる。アルミニウムアルキルとアルコールとの部分加水分解生成物も使用することができる。
【0207】
金属化合物E)を使用する場合、この化合物は、モノシクロペンタジエニル錯体A)の遷移金属に対する式(XX)の化合物のMGのモル比が2000:1〜0.1:1、好ましくは800:1〜0.2:1、特に好ましくは100:1〜1:1になるような量で、触媒組成物中に存在しているのが好ましい。
【0208】
一般に、固体触媒は、式(XX)で表される他の金属化合物E)(固体触媒の調製で使用される金属化合物E)と異なっていても良い。)と一緒に、オレフィンの重合又は共重合用触媒組成物の成分として使用される。特に固体触媒が所定の活性化化合物C)を含んでいない場合には、触媒組成物は固体触媒に加えて固体触媒に含まれる活性化化合物C)と同一であっても異なっていても良い1種以上の活性化化合物C)をさらに含むことができる。
【0209】
本発明の触媒組成物を製造するためには、少なくとも1種の成分A)及び/又は成分C)を担体B)上に物理吸着又は化学反応、即ち各成分の担体表面の反応基との共有結合、により固定するのが好ましい。担体成分B)、成分A)及び成分C)を組み合わせる順序は、重要ではない。成分A)とC)は、相互に独立して、又は同時に、又は成分B)と予め混合した形で添加することができる。各処理工程の後に、固体を適当な不活性溶媒、例えば脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素で洗浄することができる。
【0210】
好ましい形態において、モノシクロペンタジエニル錯体A)と活性化化合物C)とを好適な溶媒、通常溶解性の反応生成物、付加物、又は混合物が得られる溶媒中で接触させる。次いで、このようにして得られた調製物を、前処理されていても良い担体B)と接触させ、そして溶媒を完全に又は部分的に除去する。これにより、易流動性粉末の形態の固体が好ましく得られる。上述の処理の工業的実施の例は、WO96/00243号パンフレット、WO98/40419号パンフレット又はWO00/05277号パンフレットに記載されている。別の好ましい形態は、まず活性化化合物C)を担体B)に施す段階、及び、次いでこの担持された活性化化合物をモノシクロペンタジエニル錯体A)と接触させる段階を含む。
【0211】
成分D)も同様に、成分A)及び必要によりB)、C)及びE)と任意の順序で反応させることができる。最初に、D)を成分C)と接触させ、その後、上述のように、成分A)及びB)、別のC)で処理するのが好ましい。別の好ましい形態において、固体触媒を上述したように成分A)、B)及びC)から調製して、これを重合中、重合の開始時又は重合の直前に成分E)と接触させる。最初にE)を重合すべきα−オレフィンと接触させ、次いで上述したように成分A)、B)及びC)を含む触媒固体を添加するのが好ましい。
【0212】
モノシクロペンタジエニル錯体A)を、重合すべきオレフィンと接触させる前又は接触させた後に、成分C)及び/又は成分D)と接触させることができる。オレフィンとの混合前に1種以上の成分C)を用いて予備活性化し、この混合物をオレフィンと接触させた後、同一又は異種の成分C)及び/又はD)をさらに添加することも可能である。予備活性化は、10〜100℃の範囲で行われるのが一般的であり、20〜80℃の範囲が好ましい。
【0213】
まず触媒組成物をα−オレフィン、好ましくは直鎖状C2〜C10−1−アルケン、特にエチレン又はプロピレンと予備重合させ、次いで得られた予備重合固体触媒を実際の重合で使用することもできる。予備重合において、使用された固体触媒のこの固体上に重合されたモノマーに対する質量比は、一般的には1:0.1〜1:1000、好ましくは1:1〜1:200の範囲である。
【0214】
さらに、変性成分としての少量のオレフィン、好ましくはα−オレフィン、例えばビニルシクロヘキサン、スチレン又はフェニルジメチルビニルシラン、帯電防止化合物又は好適な不活性化合物、例えばワックス又はオイルを添加剤として触媒組成物の製造中又は製造後に添加することができる。遷移金属化合物B)に対する添加剤のモル比は、通常、1:1000〜1000:1の範囲であり、1:5〜20:1の範囲が好ましい。
【0215】
本発明の触媒組成物は、オレフィンの重合、特にα−オレフィン、すなわち末端二重結合を有する炭化水素の重合に好適である。好適なモノマーには、官能化オレフィン性不飽和化合物、例えばアクロレイン、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミド誘導体、例えばアクリラート、メタクリルラート、又はアクリロニトリル、又はビニルエステル、例えば酢酸ビニルも含まれる。アリール置換α−オレフィンを含む非極性オレフィン化合物を使用するのが好ましい。特に好ましいα−オレフィンとしては、直鎖又は分枝のC2〜C12−1−アルケン、特に直鎖のC2〜C10−1−アルケン、例えばエテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、又は分枝のC2〜C10−1−アルケン、例えば4−メチル−1−ペンテン、共役又は非共役のジエン、例えば1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、又は芳香族ビニル化合物、例えばスチレン又は置換スチレンを挙げることができる。種々のα−オレフィンの混合物を重合することもできる。エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン及び1−デセンから成る群から選択された少なくとも1種のオレフィンを重合するのが好ましい。
【0216】
好適なオレフィンには、二重結合が1個以上の環を含むことができる環構造の一部になっているようなオレフィンも含まれる。例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及びメチルノルボルネン、並びにジエン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、又はエチルノルボルナジエンを挙げることができる。
【0217】
2種以上のオレフィンの混合物を重合させることもできる。公知の一部の鉄及びコバルトの錯体と対照的に、本発明の遷移金属錯体は、高級α−オレフィンの場合であっても良好な重合活性を示すので、その共重合への適性は特に強調すべきことである。特に、本発明の遷移金属錯体は、エテン又はプロペンの重合又は共重合に用いることができる。エテンの重合におけるコモノマーとして、C3−C8−α−オレフィン又はノルボルネン、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び/又は1−オクテンを使用するのが好ましい。少なくとも50モル%のエテンを含むモノマー混合物を使用するのが好ましい。プロピレンの重合におけるコモノマーとしては、エテン及び/又はブテンが好ましい。
【0218】
重合は、オレフィンの重合に使用される通常の反応器内で、公知の塊状重合、懸濁重合、気相重合、又は超臨界媒体中での重合の方法で行うことができる。重合は、回分法により行うことができ、又は、好適には連続的に1段階以上の工程で行うことができる。管型反応器又はオートクレーブでの高圧重合法、溶液法、懸濁法、撹拌気相法又は気相流動床法が全て可能である。
【0219】
重合は、通常、−60〜350℃の温度及び0.5〜4000barの圧力下で0.5〜5時間、好適には0.5〜3時間の平均滞留時間の条件で行なわれる。重合を行うための有利な圧力及び温度範囲は、一般に、重合法に大きく依存して変化する。通常、1000〜4000bar、特に2000〜3500barの圧力下で行なわれる高圧重合法の場合、一般に、重合温度も高く設定される。これらの高圧重合法における有利な温度範囲は、200〜320℃、特に220〜290℃である。低圧重合法の場合、一般にポリマーの軟化温度より少なくとも数℃低い温度に設定される。これらの重合法は、50〜180℃、好ましくは70〜120℃の温度で行うのが好ましい。懸濁重合の場合、重合は、通常、懸濁媒中で、好ましくはイソブタン等の不活性炭化水素又は炭化水素の混合物中で、或いはその他にモノマーそれ自体の中で行なわれる。重合温度は、一般に−20〜115℃の範囲であり、圧力は、一般に1〜100barの範囲である。懸濁液の固体含有量は、一般的には10〜80%の範囲である。重合は、例えば、撹拌式オートクレーブ中での回分法により、又は例えば管状反応器、好ましくはループ反応器中での連続法により行うことができる。重合は、US−A−3242150号公報及びUS−A−3248179号公報に記載されているフィリップスPF法により行うのが特に好ましい。気相重合は、一般に、30〜125℃の範囲で行なわれる。
【0220】
上述の重合法の中で、気相重合、特に気相流動床反応器内での気相重合、溶液重合、及び懸濁重合、特にループ式反応器及び撹拌式タンク反応器内での懸濁重合が特に好ましい。気相重合は凝縮相又は過凝縮相の状態で行うこともでき、この場合は循環ガスの一部を露点未満に冷却して2相混合物として反応器に循環させる。2つの重合領域を相互に連結し、そしてポリマーをこの2つの領域に交互に何度も通過させる多領域反応器を用いることも可能である。2つの領域は、異なる重合条件を有していても良い。このような反応器は、例えば、WO97/04015号パンフレットに記載されている。異なる又は同一の重合工程を所望により直列に接続し、例えばホスタレン(Hostalen)法における重合カスケードを形成することもできる。2種以上の同一又は異なる工程を用いる反応器を平行に配置することも可能である。さらに、モル質量調整剤、例えば水素、又は帯電防止剤等の一般的な添加物を重合に使用することができる。
【0221】
本発明のモノシクロペンタジエニル錯体及びこの錯体を含む触媒組成物は、コンビナトリアル法によって製造することもでき、又はその重合活性を、ハイスループットスクリーニングとも言われるコンビナトリアル法を用いて試験することができる。
【0222】
本発明の方法により、オレフィンのポリマーを製造することができる。本発明の説明において使用される“重合”という語は、ポリマー化とオリゴマー化の両方を意味し、すなわち、本発明の方法により、約56〜10000000g/モルの範囲のモル質量Mwを有するオリゴマー及びポリマーを製造することができる。
【0223】
本発明の触媒組成物を使用して製造されたオレフィンポリマーは、良好な機械的特性を示すため、フィルム、ファイバー及び成形体の製造に特に有用である。
【0224】
本発明の触媒組成物により、C2架橋基を有する触媒組成物を使用して得られたポリマーより小さなモル質量を有するポリマーが得られる。エチレンを他のコモノマーを使用せずに重合させた場合でさえ、本発明の触媒を使用すると、分岐度が大きいエチレンポリマーが得られる。さらに、本発明の触媒組成物は、簡単に且つ高収率で製造することができる。
【実施例】
【0225】
全ての製造及び重合は、窒素保護雰囲気下で行った。
【0226】
密度[g/cm3]は、ISO1183に従い測定した。
【0227】
シュタンジンガーインデックス(η)(dL/g)は、自動ウベローデ粘度計(Lauda社製PVS1)によりデカリンを溶媒として130℃で測定した(ISO1628、130℃、0.001g/デカリン1mL)。
【0228】
NMRスペクトルは、Bruker社製DRX200(1H:200.13MHz)により測定した。使用した溶媒における不完全に重水素化されている部分のシグナルを、1H−NMRスペクトルにおける内部標準とした。全てのシグナルが対応する文献値に帰属された。
【0229】
マススペクトルはFinnigan MAT社製8230により記録し、高分解能マススペクトルはMicromass社製CTD ZAB−2F VH分光計で測定した。
【0230】
また、以下の表1中の略語は下記の意味を表わす。
【0231】
cat.: 触媒
t(poly): 重合時間
ポリマー: 形成されたポリマーの量
密度: ポリマーの密度
生産性: 1時間あたりの使用触媒(クロム錯体)1mmolに対する形成されたポリマーの量(g)によって評価した触媒の生産性
ヘキセン: 重合の間のヘキセンの有無。
【0232】
例1:
1.1 1−クロロジメチルシリル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエンの製造
2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニルリチウム16mmolをテトラヒドロフラン100mLに溶解させた溶液を−40℃に冷却し、次いで、ジメチルシリルジクロリド3.16g(24mmol)をテトラヒドロフラン50mLに溶解させた溶液に攪拌しながら添加した。混合物を攪拌しながら室温まで加熱し、さらに2時間攪拌した。次いで、揮発性成分を蒸留除去し、このようにして得られた残渣をヘキサンに抽出して濾過した。溶媒を得られた濾液から蒸留除去した。このことにより、2.2g(10.2mmol、43%)の1−クロロジメチルシリル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエンが得られた。
【0233】
NMR1H(200.13MHz、CDCl3):0.72(6H、s、CH3−Si);1.84(9H、s、CH3−CP);2.01(3H、s、CH3−CP);3.1(1H、s、−Cp)。
【0234】
1.2 1−(ジメチル(2−オキシピリジン)シリル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエンの製造
2−ヒドロキシピリジン0.97g(10.2mmol)とトリエチルアミン1.07g(10.5mmol)をトルエン50mLに溶解させた溶液を−50℃に冷却し、次いで、1−クロロジメチルシリル−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン2.2g(10.2mmol)をトルエン25mLに溶解させた溶液に攪拌しながら添加した。混合物を攪拌しながら室温まで加熱し、さらに12時間攪拌した。次いで、溶媒を蒸留除去し、このようにして得られた残渣を25mbar/100℃で蒸留した。このことにより、1.84g(6.7mmol、66%)の1−(ジメチル(2−オキシピリジン)シリル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエンが得られた。
【0235】
NMR1H(200.13MHz、CDCl3):0.14(6H、s、CH3−Si);1.69−1.93(12H、m、CH3−CP);2.66(1H、s、−Cp);6.26(1H、t、Py−H);6.58(1H、d、Py−H);7.23−7.79(2H、m、Py−H)。
【0236】
1.3 (1−(ジメチル(2−オキシピリジン)シリル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)クロムジクロリドの製造
【0237】
【化26】

【0238】
1−(ジメチル(2−オキシピリジン)シリル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン0.58g(2.12mmol)をテトラヒドロフラン20mLに溶解させた溶液を−80℃に冷却し、次いで、n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、2.12mmol)に添加した。この温度で20分攪拌した後、反応混合物を、三塩化クロム・三(テトラヒドロフラン)0.335g(2.12mmol)をテトラヒドロフラン30mLに溶解した溶液に攪拌しながら添加した。混合物を室温でさらに12時間攪拌し、次いで、溶媒を蒸留除去し、残渣をヘキサンで洗浄した。トルエン中にこのようにして得られた残渣の可溶部分を採集し、濾過した。濾液から溶媒を除去し、減圧下で乾燥した。このことにより、(1−(ジメチル(2−オキシピリジン)シリル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)クロムジクロリドが得られた。
【0239】
MS(El)、m/e(%):359.2(M+−HCl、100)。
【0240】
例2
2.1 1−クロロジメチルシリルシクロペンタジエンの製造
シクロペンタジエニルリチウム30mmolをテトラヒドロフラン50mLに溶解させた溶液を−40℃に冷却し、次いで、ジメチルシリルジクロリド3.9g(30mmol)をテトラヒドロフラン50mLに溶解させた溶液に攪拌しながら添加した。混合物を攪拌しながら室温まで加熱し、さらに2時間攪拌した。次いで、揮発性成分を蒸留除去し、このようにして得られた残渣をヘキサンに抽出して濾過した。溶媒を得られた濾液から蒸留除去し、残渣を60℃/27mbarで蒸留した。このことにより、2.17g(13.7mmol、46%)の1−クロロジメチルシリルシクロペンタジエンが得られた。
【0241】
NMR1H(200.13MHz、CDCl3):0.26(6H、s、CH3−Si);3.13(1H、s、−Cp);6.53−6.7(4H、m、−Cp)。
【0242】
2.2 1−(ジメチル(2−オキシピリジン)シリル)シクロペンタジエンの製造
2−ヒドロキシピリジン1.23g(13.7mmol)とトリエチルアミン2.52g(25mmol)をトルエン50mLに溶解させた溶液を−50℃に冷却し、次いで、1−クロロジメチルシリルシクロペンタジエン2.17g(13.7mmol)をトルエン25mLに溶解させた溶液に攪拌しながら添加した。混合物を攪拌しながら室温まで加熱し、さらに12時間攪拌した。次いで、溶媒を蒸留除去し、このようにして得られた残渣を26mbar/50℃で蒸留した。このことにより、0.97g(4.4mmol、34%)の1−(ジメチル(2−オキシピリジン)シリル)シクロペンタジエンが得られた。
【0243】
NMR1H(200.13MHz、CDCl3):−0.08−0.51(6H、s、CH3−Si);3.18(1H、t、−Cp);6.26−6.88(4H、m、−Cp);7.23−8.09(4H、m、Py−H)。
【0244】
2.3 (1−(ジメチル(2−オキシピリジン)シリル)シクロペンタジエニル)クロムジクロリドの製造
【0245】
【化27】

【0246】
1−(ジメチル(2−オキシピリジン)シリル)シクロペンタジエン0.97g(4.4mmol)をテトラヒドロフラン20mLに溶解させた溶液に、水素化カリウム0.19g(4.4mmol)を添加した。室温で2時間攪拌した後、反応混合物を、三塩化クロム・三(テトラヒドロフラン)0.689g(4.4mmol)をテトラヒドロフラン50mLに溶解した溶液に攪拌しながら添加した。混合物を室温でさらに12時間攪拌し、次いで、溶媒を蒸留除去し、残渣をヘキサンで洗浄した。トルエン中にこのようにして得られた残渣の可溶部分を採集し、濾過した。濾液から溶媒を除去し、減圧下で乾燥した。このことにより、(1−(ジメチル(2−オキシピリジン)シリル)シクロペンタジエニル)クロムジクロリド0.385gが得られた。
【0247】
MS(El)、m/e(%):338.1(M+、49)。
【0248】
例3
3.1 1−クロロジイソプロピルシリルシクロペンタジエンの製造
シクロペンタジエンナトリウム4.32g(49.05mmol)をテトラヒドロフラン200mLに溶解させた溶液を−50℃に冷却し、次いで、ジイソプロピルシリルジクロリド9.13g(49.05mmol)に攪拌しながら添加した。混合物を攪拌しながら室温まで加熱し、さらに12時間攪拌した。次いで、溶媒を蒸留除去し、このようにして得られた残渣をヘキサンに抽出して濾過した。溶媒を得られた濾液から蒸留除去した。このことにより、9.2g(42.95mmol、88%)の1−クロロジイソプロピルシリルシクロペンタジエンが得られた。
【0249】
NMR1H(200.13MHz、CDCl3):0.69−1.27(m、C3,C−iPr);2.9(s、C2−CP);6.37−7.01(−Cp)
MS(El)、m/e(%):214(M+、70);171(M+−iPr、100);143(M+−Cl2、98)。
【0250】
3.2 1−(ジイソプロピル(2−オキシピリジン)シリル)シクロペンタジエンの製造
2−ヒドロキシピリジン2g(21.02mmol)とトリエチルアミン2.4g(23.74mmol)をトルエン100mLに溶解させた溶液を−60℃に冷却し、次いで、1−クロロジイソプロピルシリルシクロペンタジエン4.5g(21.02mmol)をトルエン50mLに溶解させた溶液に攪拌しながら添加した。混合物を攪拌しながら室温まで加熱し、さらに12時間攪拌した。次いで、溶媒を蒸留除去し、このようにして得られた残渣をヘキサンに抽出し、濾過した。得られた濾液から溶媒を蒸留除去した。このことにより、5.2g(18.95mmol、90%)の1−(ジイソプロピル(2−オキシピリジン)シリル)シクロペンタジエンが得られた。
【0251】
NMR1H(200.13MHz、CDCl3):0.95−1.32(m、C3,C−iPr);3.19(s、C2−CP);6.27−8.10(−Cp、−Py)
MS(El)、m/e(%):273(M+、20);230(M+−iPr、100)。
【0252】
3.3 (1−(ジイソプロピル(2−オキシピリジン)シリル)シクロペンタジエニル)クロムジクロリドの製造
【0253】
【化28】

【0254】
1−(ジイソプロピル(2−オキシピリジン)シリル)シクロペンタジエン1.49g(5.45mmol)をテトラヒドロフラン40mLに溶解させた溶液を−60℃に冷却し、次いで、t−ブチルリチウム3.6mL(ヘキサン中1.5M、5.45mmol)に添加した。この温度で30分間攪拌した後、反応混合物を攪拌しながら室温まで加熱し、さらに4時間攪拌した。次いで、この反応溶液を、三塩化クロム・三(テトラヒドロフラン)2.52g(6.73mmol)をテトラヒドロフラン50mLに溶解した溶液に攪拌しながら添加した。混合物を室温でさらに12時間攪拌し、溶媒を蒸留除去し、残渣をヘキサンで洗浄した。トルエン中にこのようにして得られた残渣の可溶部分を採集し、濾過した。濾液から溶媒を除去し、減圧下で乾燥した。このことにより、(1−(ジイソプロピル(2−オキシピリジン)シリル)シクロペンタジエニル)クロムジクロリド1.8g(4.55mmol,83%)が得られた。
【0255】
NMR1H(200.13MHz、CDCl3):−31(−Py);34(−Py);2(C3−iPr)。
【0256】
例4
4.1 1−クロロジイソプロピルシリル−3−メチルシクロペンタジエンの製造
メチルシクロペンタジエニルリチウム0.8g(9.34mmol)をテトラヒドロフラン100mLに溶解させた溶液を−50℃に冷却し、次いで、ジイソプロピルシリルジクロリド1.7mL(9.34mmol)に攪拌しながら添加した。混合物を攪拌しながら室温まで加熱し、さらに12時間攪拌した。次いで、溶媒を蒸留除去し、このようにして得られた残渣をヘキサンに抽出して濾過した。溶媒を得られた濾液から蒸留除去した。このことにより、1.87g(8.18mmol、88%)の1−クロロジイソプロピルシリル−3−メチルシクロペンタジエンが得られた。
【0257】
NMR1H(200.13MHz、CDCl3):0.80−1.2(m、C3,C−iPr);1.69(s、C3−CP);2.99(s、C2−CP);6.10−6.94(−Cp)
MS(El)、m/e(%):228(M+、70);185(M+−iPr、100);157(M+−Cl2、98)。
【0258】
4.2 1−(ジイソプロピル(2−オキシピリジン)シリル)−3−メチルシクロペンタジエンの製造
2−ヒドロキシピリジン0.8g(8.36mmol)とトリエチルアミン1.2g(11.86mmol)をトルエン100mLに溶解させた溶液を−60℃に冷却し、次いで、1−クロロジイソプロピルシリル−3−メチルシクロペンタジエン1.87g(8.18mmol)をテトラヒドロフラン50mLに溶解させた溶液に攪拌しながら添加した。混合物を攪拌しながら室温まで加熱し、さらに12時間攪拌した。次いで、溶媒を蒸留除去し、このようにして得られた残渣をヘキサンに抽出し、濾過した。得られた濾液から溶媒を蒸留除去した。このことにより、2.25g(7.81mmol、95%)の1−(ジイソプロピル(2−オキシピリジン)シリル)−3−メチルシクロペンタジエンが得られた。
【0259】
NMR1H(200.13MHz、CDCl3):1.00−1.40(m、C3,C−iPr);2.10(s、C3−CP);3.09(s、C2−CP);6.11−8.05(−Py)
4.3 (1−(ジイソプロピル(2−オキシピリジン)シリル)−3−メチルシクロペンタジエニル)クロムジクロリドの製造
【0260】
【化29】

【0261】
1−(ジイソプロピル(2−オキシピリジン)シリル)−3−メチルシクロペンタジエン0.94g(3.3mmol)をテトラヒドロフラン40mLに溶解させた溶液を−60℃に冷却し、次いで、t−ブチルリチウム2.2mL(ヘキサン中1.5M、3.3mmol)に添加した。この温度で30分間攪拌した後、反応混合物を攪拌しながら室温まで加熱し、さらに4時間攪拌した。次いで、この反応溶液を、三塩化クロム・三(テトラヒドロフラン)1.08g(2.89mmol)をテトラヒドロフラン50mLに溶解した溶液に攪拌しながら添加した。混合物を室温でさらに12時間攪拌し、溶媒を蒸留除去し、残渣をヘキサンで洗浄した。トルエン中にこのようにして得られた残渣の可溶部分を採集し、濾過した。濾液から溶媒を除去し、減圧下で乾燥した。このことにより、(1−(ジイソプロピル(2−オキシピリジン)シリル)−3−メチルシクロペンタジエニル)クロムジクロリド0.73g(1.77mmol、61%)が得られた。
【0262】
NMR1H(200.13MHz、CDCl3):−66(C3−CP);−32(−Py);33(−Py);2(C3−iPr)。
【0263】
例5(比較例)
1−(8−キノリル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニルクロムジクロリドを、US6437161号公報に記載されている方法に従って製造した。
【0264】
例6−9
重合
接触温度計、テフロン(登録商標)羽根を備えた攪拌器、マントルヒーターおよび気体導入管を備えた容量1Lの4口フラスコ中で、アルゴン雰囲気下で40℃で重合を行った。MAO(トルエン中10%濃度、Cr:Alの割合については表1参照)の所定量を、トルエン250mLに所定の錯体の所定量(表1参照)を溶解した溶液に添加し、混合物を湯浴上で40℃に加熱した。
【0265】
エチレンの単独重合では、エチレンを上記溶液中に常圧で約20〜40L/hの流速で通した。エチレン/1−ヘキセン共重合の場合には、3mLのヘキセンをエチレンを添加する直前に上記フラスコに導入し、次いでエチレンを上記混合物中に常圧で約20〜40L/hの流速で通した。ヘキセンの残り(10mL)を、15分間で滴下ロトを介して添加した。表1に示した時間一定のエチレン流量を維持した後、HClのメタノール溶液(メタノール50mLに濃塩酸15mLを溶解)を添加して重合を停止させた。次いで、250mLのメタノールを添加し、形成された白色のポリマーをろ過し、メタノールで洗浄し、70℃で乾燥させた。
【0266】
エチレンの単独重合の場合でさえ、本発明の触媒により、分岐度が大きくη値の小さいエチレンポリマーが得られる。
【0267】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
Cp−(Z−A)mA (I)
{但し、Cpがシクロペンタジエニル基を表し、
Aが元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子を含む非電荷ドナーを表し、
Zが、元素周期律表の第14族に属する少なくとも1個の原子と元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子とを含む、AとCpとの間の架橋基を表し、
Aがチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステン、又は元素周期律表の第3族及びランタニドに属する元素を表し、
mが1、2又は3を表す。}
で表される構造的特徴を含むモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項2】
式(V):
Cp−(Z−A)mA1An (V)
{但し、Cpがシクロペンタジエニル基を表し、
Aが元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子を含む非電荷ドナーを表し、
Zが、元素周期律表の第14族に属する少なくとも1個の原子と元素周期律表の第15族又は第16族に属する少なくとも1個の原子とを含む、AとCpとの間の架橋基を表し、
Aがチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステン、又は元素周期律表の第3族及びランタニドに属する元素を表し、
mが1、2又は3を表し、
1Aが、それぞれ相互に独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR18A19A、OR18A、SR18A、SO318A、OC(O)R18A、CN、SCN、β−ジケトナート、CO、BF4-、PF6-、又は嵩高い非配位アニオンを表し、又は、2個の基X1Aが置換又は非置換のジエン配位子、特に1,3−ジエン配位子を形成しても良く、基X1Aが互いに連結していても良く、
1B、R19Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR20A3を表し、当該有機基R1B、R19Aがハロゲン又は窒素含有基又は酸素含有基で置換されていても良く、2個の基R1B、R19Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
20Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、2個の基R20Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
nが1、2又は3を表す。}
で表される請求項1に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項3】
式(II):
Cp−Z−A−MA (II)
[但し、Cp−Z−Aが
【化1】

{式中、E1A〜E5Aが、それぞれ炭素を表すか、1個以下のE1A〜E5Aがリンを表し、
1A〜R4Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C22アルキル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR5A2、N(SiR5A32、OR5A、OSiR5A3、SiR5A3、BR5A2を表し、当該有機基R1A〜R4Aがハロゲンで置換されていても良く、2個のビシナル基R1A〜R4Aが連結して5員、6員又は7員の環を形成しても良く、及び/又は、2個のビシナル基R1A〜R4Aが連結してN、P、O及びSから成る群から選択される少なくとも1個の原子を有する5員、6員又は7員のヘテロ環を形成し、
基R5Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、2個のジェミナル基R5Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
Zが、下記式:
【化2】

(但し、L1Aが炭素、ケイ素又はゲルマニウム、特にケイ素を表し、
1Aが元素周期律表の第15族又は第16族に属する原子、特に酸素、イオウ、窒素、又はリンを表し、
nが、D1Aが元素周期律表の第16族に属する原子である場合には0を、D1Aが元素周期律表の第15族に属する原子である場合には1を表し、
6A〜R8Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR9A3を表し、当該有機基R6A〜R8Aがハロゲンで置換されていても良く、2個のジェミナル基又はビシナル基R6A〜R8Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
9Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、C1〜C10アルコキシ、又はC6〜C10アルールオキシを表し、2個の基R9Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良い。)、
で表される、AとCpとの間の2価の架橋基を表し、
Aが元素周期律表の第15族及び/又は第16族に属する少なくとも1個の原子を含む非電荷ドナー又はカルベン、好ましくは非置換、置換又は縮合ヘテロ芳香族環を表す。}で表される基を表し、
Aが酸化状態3価のチタン、バナジウム、クロム、モリブデン及びタングステンから成る群から選択された金属を表す。]、
で表される構造部分を含む請求項1又は2に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項4】
Aが、下記式(IV):
【化3】

{但し、E6A〜E9Aが、それぞれ相互に独立して、炭素又は窒素を表し、
13A〜R16Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR17A3を表し、当該有機基R13A〜R16Aがハロゲン又は窒素で置換されていても良く、或いはさらにC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル又はSiR17A3で置換されていても良く、2個のビシナル基R13A〜R16A又はR13AとZとが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
17Aが、それぞれ相互に独立して、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、2個の基R17Aが連結して5員又は6員の環を形成しても良く、
pが、E6A〜E9Aが窒素の場合は0を表し、E6A〜E9Aが炭素の場合は1を表す。}、
で表される請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項5】
−Z−が−SiR6A7A−O−を表す請求項3又は4に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項6】
A)少なくとも1種の、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノシクロペンタジエニル錯体、
B)任意に、有機又は無機の担体、
C)任意に、1種以上の活性化化合物、
D)任意に、オレフィン重合に好適な他の触媒、及び、
E)任意に、元素周期律表の第1、2又は13族に属する金属を含有する1種以上の金属化合物、
を含むオレフィン重合用触媒組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の触媒組成物、及び該触媒組成物に対して1:0.1〜1:1000の質量比でこの触媒組成物上に重合した1種以上の直鎖のC2〜C10−1−アルケンを含む予備重合触媒組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の触媒組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の触媒組成物の存在下にオレフィンを重合又は共重合することによりポリオレフィンを製造する方法。


【公表番号】特表2007−514685(P2007−514685A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544322(P2006−544322)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014253
【国際公開番号】WO2005/058983
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)
【Fターム(参考)】