説明

モリブデンおよびバナジウムの回収方法

【課題】廃触媒の処理効率を高くでき、しかも、廃触媒からモリブデン、バナジウムを回収する回収率を向上できるモリブデンおよびバナジウムの回収方法を提供する。
【解決手段】廃触媒に含まれるモリブデンおよびバナジウムを回収する方法であって、廃触媒を、アルカリ金属化合物を含有する添加物とともに、ロータリーキルン1によって焙焼する焙焼工程と、焙焼工程で得られた焙焼物からモリブデンおよびバナジウムを回収する回収工程とからなり、添加物が造粒されている。廃触媒と添加物がともに粒状物であるので、ロータリーキルン内において、両者を均一に混合することができるし、廃触媒とともに添加物を焙焼炉内に投入しても添加物が飛散することを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデンおよびバナジウムの回収方法に関する。さらに詳しくは、石油精製所における脱硫に使用される脱硫触媒等の有価金属を有する廃触媒を処理してモリブデンおよびバナジウムを回収する回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製所における脱硫塔では、脱硫触媒によって石油が脱硫される。
かかる脱硫触媒による脱硫は、石油を高圧水素と脱硫触媒上で反応させ、硫黄化合物を硫化水素に変えて除去する水素化脱硫によって行われる。しかし、かかる水素化脱硫作業を行うにつれ、脱硫触媒はその触媒活性が低下するので、触媒活性を失った脱硫触媒(廃触媒)は新しい脱硫触媒と交換される。
【0003】
ここで、水素化脱硫の反応によって、石油中に含まれていたバナジウム等の有価金属が石油から脱硫触媒に移動する。また、脱硫触媒は、もともとモリブデン等の有価金属を含有している。つまり、廃触媒には、バナジウムやモリブデン等の有価金属が含まれているので、廃触媒から有価金属を回収して有価金属を再利用することが行われている。
【0004】
上記のごとき廃触媒から有価金属を回収する方法として、有価金属を水に溶解する可溶性塩としてから回収することが行われている(例えば、特許文献1)。
具体的には、廃触媒とアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩とを酸素が存在する雰囲気において、ロータリーキルンによって焙焼する。すると、廃触媒中のモリブデンやバナジウム等の有価金属は、酸化しかつアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩と反応(ソーダ化反応)して可溶性塩となる。この可溶性塩となった有価金属を含む焙焼物を水浸出すると、モリブデン、バナジウムの水溶液が得られるので、この水溶液に塩析・酸沈法や溶媒抽出法を適用すれば、MoO、Vを得ることができる。
【0005】
ところで、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩は通常粉体であるので、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩の粉体(以下、ソーダ灰という)を廃触媒とともに焙焼キルンに投入すると、キルンから排出される排ガスによってソーダ灰が飛散して、ソーダ灰の一部は煙道に排出される。すると、排出されたソーダ灰が煙道に堆積して煙道が閉塞されてしまう可能性があるので、焙焼キルンの操業を頻繁に停止して煙道堆積物の除去作業を行わなければならず、廃触媒の処理効率が低下してしまう。
そして、ソーダ灰の一部が煙道に排出されることを見越して、廃触媒に添加するソーダ灰の量を増やさなければならないので、廃触媒の処理コストが高くなるという問題も生じる。
【0006】
また、廃触媒中の有価金属を効果的に可溶性塩とするためには、ソーダ灰と廃触媒とが均一分散されていることが好ましいが、粉状であるソーダ灰は十分に廃触媒と混合できないので、ソーダ灰がロータリーキルンのキルン内壁近傍に偏在してしまう。すると、廃触媒中の有価金属のソーダ化反応を生じさせることができないので、焙焼物を水浸出しても、残渣に残留する有価金属が多くなり、有価金属の回収率が低下する。
【0007】
しかも、ソーダ灰がキルン内壁に近傍に偏在していると、内壁近傍のソーダ灰が溶融して炉壁に融着する可能性があるし、また、溶融したソーダ灰によってキルン内壁がアルカリ損傷する可能性がある。すると、ソーダ灰による煙道閉塞を解消するためだけでなく、融着物の除去やキルン内壁補修のためにも、焙焼キルンの操業を頻繁に停止しなければならなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−262181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、廃触媒の処理効率を高くでき、しかも、廃触媒からモリブデン、バナジウムを回収する回収率を向上できるモリブデンおよびバナジウムの回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法は、廃触媒に含まれるモリブデンおよびバナジウムを回収する方法であって、廃触媒を、アルカリ金属化合物を含有する添加物とともに焙焼炉において焙焼する焙焼工程と、該焙焼工程で得られた焙焼物からモリブデンおよびバナジウムを回収する回収工程とからなり、前記添加物が造粒されていることを特徴とする。
第2発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法は、第1発明において、前記焙焼炉がロータリーキルンであり、該ロータリーキルンは、該ロータリーキルンの内面に立設された中間ダムと、該ロータリーキルン内に酸素を含有する反応気体を供給する供給手段とを備えており、前記中間ダムは、該ロータリーキルンの内面の周方向に沿って設けられており、前記供給手段は、前記ロータリーキルン内に供給する前記反応気体が、前記廃触媒および前記添加物が供給される供給側端部と反対側に位置する排出側端部から該供給側端部に向かって流れるように配設されており、前記反応気体は、前記ロータリーキルン内において、前記供給側端部から前記排出側端部に向かって、脱油処理を行う脱油処理領域と、炭素硫黄除却処理を行う炭素硫黄除却領域と、有価金属のソーダ化反応処理を行うソーダ化反応領域と、ソーダ化反応した焙焼物を冷却する冷却領域とが、この順で形成され、前記ソーダ化反応領域と前記冷却領域との境界が、前記中間ダムが設けられた位置になるように、その酸素濃度が調整されていることを特徴とする。
第3発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法は、第2発明において、前記ロータリーキルンは、該ロータリーキルンの内面に、該ロータリーキルンの軸方向に沿うように立設されたリフタを備えており、該リフタは、該ロータリーキルンにおいて、前記炭素硫黄除却領域が形成される位置に配設されていることを特徴とする。
第4発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法は、第1、第2または第3発明において、前記ロータリーキルンから排出される排ガスと、該ロータリーキルンに供給される前記反応気体との間で熱交換する熱交換手段を備えていることを特徴とする。
第5発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法は、第1、第2、第3または第4発明において、前記回収工程が、前記焙焼物を破砕する破砕工程と、該破砕工程によって破砕された破砕物を水によって浸出する浸出工程とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、廃触媒と添加物がともに粒状物であるので、ロータリーキルン内において、両者を均一に混合することができる。すると、廃触媒中のモリブデンおよびバナジウムを効果的に水に溶解する可溶性塩とすることができるので、焙焼物を水浸出したときの回収率を向上させることができる。また、添加物が造粒されているので、廃触媒とともに添加物を焙焼炉内に投入しても添加物が飛散しない。よって、アルカリ金属化合物による煙道の閉塞を防ぐことができるので、焙焼炉を長時間連続して操業することができ、単位時間当たりの廃触媒処理能力を高めることができる。
第2発明によれば、ソーダ化反応領域と冷却領域との間に中間ダムが存在するので、廃触媒および添加物がソーダ化反応領域に滞留する期間を長くすることができる。すると、廃触媒中のモリブデンやバナジウムのソーダ化反応を促進させることができるので、安定した焙焼物を得ることができる。
第3発明によれば、リフタによって廃触媒と添加物の混合が促進され、かつ、廃触媒および添加物と反応気体とをより効果的に接触させることができるので、炭素および硫黄の酸化を促進することができ、廃触媒や添加物を高温化することができる。
第4発明によれば、添加物が造粒されているので、ロータリーキルンから排出される排ガスに含まれるダスト濃度を低くすることができる。すると、排ガスを熱交換器に供給しても、ダストに起因する流路エレメントの閉塞、伝熱面の汚れによる交換熱量の減少等の問題が発生することを防ぐことができるので、排ガスから廃熱回収することができる。
第5発明によれば、焙焼物を破砕しているので、浸出槽内において浸出を行う際に、破砕物が沈降することを防止することができる。しかも、破砕すれぱ、破砕物と浸出液との接触性を向上させることができるので、モリブデンやバナジウムの浸出率を向上させることができる。また、アルカリ金属化合物と廃触媒中に存在していたシリカの反応によって生成したガラス質内にモリブデン・バナジウムが封じ込められていても、破砕することによってガラス質の皮膜が破壊することができる。すると、ガラス質中に封じ込められていたモリブデン・バナジウムを直接浸出することが可能となる。よって、モリブデンやバナジウムの回収効率を、より一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法のフローチャートでである。
【図2】本発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法に使用するロータリーキルン1の概略説明図であって、(A)は概略断面図であり、(B)は(A)のB−B線断面矢視図である。
【図3】廃触媒からモリブデンおよびバナジウムの回収する従来法のフローチャートである
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法は、廃触媒をアルカリ金属化合物と混合した状態で焙焼(ソーダ焙焼)して得られる焙焼物から、廃触媒に含有されるモリブデンおよびバナジウムを回収する方法であって、粒状化したアルカリ金属化合物を使用することに特徴を有している。
なお、本明細書において、アルカリ金属化合物とは、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩を意味しており、例えば、炭酸カリウムや炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が該当する。
【0014】
また、本発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法(以下、単に本発明の方法という)において、その処理対象となる廃触媒は、石油精製所等において使用される脱硫触媒、硫酸製造用の使用済触媒等であるが、モリブデンおよびバナジウムを含み、かつ、油分、炭素分、硫黄分を含有する触媒であれば、本発明の方法によってモリブデンおよびバナジウムを回収することができる。以下では、使用済の脱硫触媒を処理してモリブデンおよびバナジウムを回収する場合を代表として説明する。
【0015】
そして、本発明の方法において、ソーダ焙焼は、処理対象を搬送しながら焙焼する焙焼炉、例えば、ロータリーキルンや流動焙焼炉等によって焙焼することができるが、以下では、ロータリーキルンによって焙焼する場合を代表として説明する。
【0016】
(基本フローの説明)
まず、本発明のモリブデンおよびバナジウムを回収する方法の特徴を説明する前に、廃触媒をソーダ焙焼してモリブデンおよびバナジウムを回収する方法の基本フローを、図3に基づいて説明する。
【0017】
廃触媒からモリブデンバナジウムを回収する場合、まず、廃触媒とアルカリ金属化合物とを混合して、例えば、ロータリーキルンにおいて焙焼(ソーダ焙焼)を行う(焙焼工程)。
すると、廃触媒に含まれるモリブデンやバナジウムは、アルカリ金属化合物と反応して(ソーダ化反応)して、水に溶解する可溶性塩となる。
【0018】
そして、可溶性塩となったモリブデンおよびバナジウムを含む焙焼物を水浸出すれば、焙焼物中のモリブデンおよびバナジウムの可溶性塩が水に溶出して、モリブデンイオンおよびバナジウムイオンを含有する浸出液が得られる。
なお、廃触媒にニッケルコバルトが含まれている場合には、ニッケル、コンバルトは浸出液中に溶出せず、残渣中にニッケル精鉱として残留する。
【0019】
モリブデンイオン、バナジウムイオンを含有する浸出液は、例えば溶媒抽出法等によって分離され(V製品化工程,Mo製品化工程)、五酸化バナジウムの結晶(フレーク)や三酸化モリブデンの結晶(粉末)として回収される。
【0020】
(本発明の方法の特徴説明)
つぎに、本発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法の特徴を説明する。
本発明の方法では、廃触媒とアルカリ金属化合物とをロータリーキルン内で焙焼する際に、アルカリ金属化合物を造粒して粒状物としていることに特徴を有している。
【0021】
ここで、本発明における粒状物とは、ロータリーキルン内の空気の流れにより飛散しない程度の大きさ、重量に形成された塊を意味している。
例えば、ロータリーキルン内の空気の流速が1m/s程度であれば、その大きさが250μm以上、重量が0.1 mg以上に形成された粒状物が、上述した条件を満たす。
【0022】
なお、本発明における粒状物の形状はとくに限定されず、上記条件を満たすものであればとくに限定されない。例えば、ロータリーキルン内の空気の流速が1m/s程度であれば、粒状物が円筒状の場合にはその直径または軸方向の長さのいずれかが250μm以上、粒状物が板状であればその最も長い部分が250μm以上のものであればよい。
【0023】
上記のごとき粒状物に形成されたアルカリ金属化合物を使用すると、廃触媒とアルカリ金属化合物がともに粒状物であるので、ロータリーキルン内において、両者を均一に混合することができる。
すると、廃触媒中のモリブデンやバナジウムをアルカリ金属化合物と効果的に接触させることができるから、モリブデンやバナジウムを効率よく水に溶解する可溶性塩とすることができる。よって、焙焼物を水浸出したときにモリブデンやバナジウムの回収率を向上させることができる。
【0024】
しかも、アルカリ金属化合物がロータリーキルンのキルン内壁近傍に偏在することを防ぐことができる。すると、アルカリ金属化合物の炉壁への融着やロータリーキルン内壁のアルカリ損傷を防ぐことができるので、ロータリーキルンを長時間連続して操業することができ、単位時間当たりの廃触媒処理能力を高めることができる。
【0025】
また、アルカリ金属化合物が上記のごとき粒状物に造粒されているので、廃触媒とともにアルカリ金属化合物をロータリーキルン内に投入しても、アルカリ金属化合物がロータリーキルン内の気流によって飛散して、煙道に流入することを防ぐことができる。
すると、アルカリ金属化合物による煙道の閉塞を防ぐことができるので、ロータリーキルンを長時間の連続して操業することができ、単位時間当たりの廃触媒処理能力を高めることができる。
【0026】
そして、アルカリ金属化合物が造粒されているので、ロータリーキルンから排出される排ガスに含まれるダスト濃度を低くすることができる。すると、排ガスを熱交換器に供給しても、ダストに起因する流路エレメントの閉塞、伝熱面の汚れによる交換熱量の減少等の問題が発生することを防ぐことができるので、排ガスから廃熱回収することができる。
【0027】
なお、アルカリ金属化合物を造粒する方法はとくに限定されない。
例えば、造粒には、ブリケッティングやペレタイジング、平ロールを用いてフレーク状に圧縮成形する方法(コンパクティング)等を採用することができるが、コンパクティングはバインダー無添加で十分な強度の成型物が得られるので好ましい。
また、単独成形では必要強度の確保が難しい粉状原料や泥状原料をアルカリ金属化合物中に混合することで押し固めてれば、バインダーなしで成形することも可能である。
さらに、アルカリ金属化合物に焙焼炉内の付着物や煙灰などの工程中に発生するものを混合した混合物や、アルカリ金属化合物に廃触媒が砕けた粉体等を混合した混合物、を形成して、この混合物を造粒してもよい。
上記のアルカリ金属化合物や上記混合物が、特許請求の範囲にいう添加物である。
【0028】
また、図1に示すように、モリブデンやバナジウムの回収率を向上させる上では、浸出を行う前に、焙焼物を破砕しておくことが好ましい。浸出は、水を張った浸出槽に焙焼物を投入し攪拌して行うが、破砕された焙焼物はその粒径が小さいので、焙焼物が浸出槽内で沈降して堆積することを防ぐことができる。
しかも、焙焼物を破砕すれぱ、破砕物と浸出液との接触性を向上させることができるから、焙焼物からモリブデンやバナジウムを回収する回収率を向上させることができる。
そして、アルカリ金属化合物と廃触媒中に存在していたシリカの反応によって生成したガラス質内にモリブデン・バナジウムが封じ込められていても、破砕することによってガラス質の皮膜が破壊することができる。すると、ガラス質中に封じ込められていたモリブデン・バナジウムを直接浸出することが可能となるから、モリブデンやバナジウムの回収効率をより一層向上させることができる。
【0029】
(ロータリーキルンの説明)
そして、焙焼炉にロータリーキルンを使用する場合には、以下のごとき構造を有するロータリーキルンを使用することが好ましい。
【0030】
まず、本発明の方法に適したロータリーキルン1の基本構造を説明する。
図2において、符号1は本発明の方法に適したロータリーキルンを示している。このロータリーキルン1の基本構造は、一般的な向流式ロータリーキルンと同様の構造である。つまり、ロータリーキルン1は、キルンの回転胴部2内(処理空間内)において、処理対象(廃触媒とアルカリ金属化合物の混合物)と、酸素を含有する反応気体の気流とが逆方向に移動するように構成されている。図1であれば、混合物は、左端の投入口1hから投入されて左端から右端に向かって移動するように構成されている。一方、反応気体は、右端の供給手段6から投入されて右端から左端に向かって流れるように構成されている。
【0031】
つまり、本発明の方法に適したロータリーキルン1は、反応気体の酸素濃度や気体温度を調整することによって、回転胴部2内において、投入口1hから排出側端部に向かって、脱油処理を行う脱油処理領域Z1と、炭素硫黄除却処理を行う炭素硫黄除却領域Z2と、有価金属のソーダ化反応処理を行うソーダ化反応領域Z3と、ソーダ化反応した焙焼物を冷却する冷却領域Z4とを、この順で形成でき、廃触媒を処理できる構造を有するロータリーキルンである。
【0032】
なお、符号5は、処理空間内において炭素および硫黄の燃焼によって発生する熱量が、炭素硫黄除却処理やモリブデンおよびバナジウムのソーダ化反応処理に必要な熱量を充足することができない場合に、熱量を供給するバーナーを示している。
【0033】
つぎに、本発明の方法に適したロータリーキルン1の特徴的な構造を説明する。
図2に示すように、本発明の方法に適したロータリーキルン1は、ロータリーキルン1の回転胴部2の内面に立設された中間ダム4を備えている。この中間ダム4は、回転胴部2の回転によって回転胴部2内を移動する物質の移動を制限するものであり、回転胴部2の内面の周方向に沿って環状に形成されている(図2(B))。
【0034】
そして、この中間ダム4は、ロータリーキルン1の軸方向において、各領域Z1〜Z4を形成したときに、ソーダ化反応領域Z3と冷却領域Z4との境界と一致するように配置されている。逆にいえば、中間ダム4が設けられた位置とソーダ化反応領域Z3と冷却領域Z4との境界とが一致するように反応気体の酸素濃度等を調整すると、脱油処理、炭素硫黄除却処理、ソーダ化反応処理をそれぞれ最適な状態で行うことができるような位置に中間ダム4は設けられているのである。
【0035】
かかる中間ダム4を設けると、ソーダ化反応領域Z3から冷却領域Z4に廃触媒および添加物が移動するときに中間ダム4が障害となるので、廃触媒および添加物をソーダ化反応領域Z3に滞留させる期間を長くすることができる。すると、廃触媒や添加物をソーダ化反応に必要な900℃以上に維持しておく高温滞留時間を延長することができるので、廃触媒中のモリブデンやバナジウムのソーダ化反応を促進させることができる。
【0036】
(リフタ3の説明)
また、上述した中間ダム4に加えて、炭素硫黄除却領域Z2に位置する回転胴部2の内面にリフタ3を立設してもよい。例えば、リフタ3をその軸方向が回転胴部2の軸方向に沿うように配設すれば、回転胴部2の回転に伴って廃触媒および添加物をリフタ3によって持ち上げて落下させることができるので、リフタ3によって廃触媒と添加物との混合を促進させることができる。
しかも、廃触媒および添加物がリフタ3から落下するときに、廃触媒および添加物と反応気体とより効果的に接触させることができるから、廃触媒中の炭素および硫黄の酸化を促進することができる。すると、酸化が促進されることによってその際に発生する熱量も多くなり、廃触媒や添加物を高温化することができるから、ソーダ化反応領域Z3における廃触媒や添加物をソーダ化に必要な900℃以上に維持しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のモリブデンおよびバナジウムの回収方法は、製油所等において原油中の硫黄を除去するために使用された使用済脱硫触媒からモリブデンやバナジウムを回収する処理、硫酸製造用触媒等の廃触媒、重油ボイラー灰からバナジウムを回収する処理に適している。
【符号の説明】
【0038】
1 ロータリーキルン
2 回転胴部
3 リフタ
4 中間ダム
6 供給手段
Z1 脱油処理領域
Z2 炭素硫黄除却領域
Z3 ソーダ化反応領域
Z4 冷却領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃触媒に含まれるモリブデンおよびバナジウムを回収する方法であって、
廃触媒を、アルカリ金属化合物を含有する添加物とともに、ロータリーキルンによって焙焼する焙焼工程と、
該焙焼工程で得られた焙焼物からモリブデンおよびバナジウムを回収する回収工程とからなり、
前記添加物が造粒されている
ことを特徴とするモリブデンおよびバナジウムの回収方法。
【請求項2】
前記ロータリーキルンは、
該ロータリーキルンの内面に立設された中間ダムと、
該ロータリーキルン内に酸素を含有する反応気体を供給する供給手段とを備えており、
前記中間ダムは、
該ロータリーキルンの内面の周方向に沿って設けられており、
前記供給手段は、
前記ロータリーキルン内に供給する前記反応気体が、前記廃触媒および前記添加物が供給される供給側端部と反対側に位置する排出側端部から該供給側端部に向かって流れるように配設されており、
前記反応気体は、
前記ロータリーキルン内において、前記供給側端部から前記排出側端部に向かって、脱油処理を行う脱油処理領域と、炭素硫黄除却処理を行う炭素硫黄除却領域と、有価金属のソーダ化反応処理を行うソーダ化反応領域と、ソーダ化反応した焙焼物を冷却する冷却領域とが、この順で形成され、
前記ソーダ化反応領域と前記冷却領域との境界が、前記中間ダムが設けられた位置になるように、その酸素濃度が調整されている
ことを特徴とする請求項1記載のモリブデンおよびバナジウムの回収方法。
【請求項3】
前記ロータリーキルンは、
該ロータリーキルンの内面に、該ロータリーキルンの軸方向に沿うように立設されたリフタを備えており、
該リフタは、
該ロータリーキルンにおいて、前記炭素硫黄除却領域が形成される位置に配設されている
ことを特徴とする請求項2記載のモリブデンおよびバナジウムの回収方法。
【請求項4】
前記ロータリーキルンから排出される排ガスと、該ロータリーキルンに供給される前記反応気体との間で熱交換する熱交換手段とを備えている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のモリブデンおよびバナジウムの回収方法。
【請求項5】
前記回収工程が、
前記焙焼物を破砕する破砕工程と、
該破砕工程によって破砕された破砕物を水によって浸出する浸出工程とを有している
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のモリブデンおよびバナジウムの回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−168835(P2011−168835A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33563(P2010−33563)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(502109164)日本キャタリストサイクル株式会社 (7)
【Fターム(参考)】