説明

モータ、このモータを用いたポンプ及びこのポンプを用いた液体循環装置

【課題】基板を本体ケースに組みつける際に、端子片をガイドし、端子片に加わる応力を緩和し、また、端子片と端子受けとの間で導通不良が生じることを防止する。
【解決手段】モータは、本体ケースと、本体ケースに取り付けられた駆動機構および基板30とを備える。外部電源および駆動機構と基板30とは、端子片28、50と基板30に固着された端子受け32とにより接続される。端子片28、50は、先端部が先細りする棒状に形成され、当該先端部に返し51が設けられた構成を有する。端子受け32は、円筒状の受け部33を備える。受け部33は、端子片28、50に当接する中央部33aと、端子片28、50を中央部33aにガイドする上端部33bと、端子片28、50に設けた返し51を係止する下端部33cとを備える。受け部33には、軸方向に沿うスリットが設けられ、径方向に弾性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動を行う駆動機構に基板を介して外部電源から電力を供給することで駆動機構を駆動させるモータ、このモータを用いたポンプ及びこのポンプを用いた液体循環装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータには、ステッピングモータなどのように回転駆動を行うのに制御回路を必要とするものがある。また、サーボモータのように回転数などを制御する制御回路を備えたものがある。
【0003】
上述のような制御回路を備えたモータには、例えば、制御回路を実現する種々の電子部品が実装された基板と、回転駆動を行う駆動機構とを本体ケースにそれぞれ取り付けて一体化するものがある。
【0004】
基板には、外部電源が電気的に接続されるとともに、駆動機構に電気的に接続され本体ケースの定位置に固定された端子に接続する端子受けが取り付けられ、基板を介して外部電源から駆動機構に電力が供給される。
【0005】
この種のモータは、例えば、液体や気体などの流体を送り出すポンプの駆動源に用いられる。また、この種のモータを用いたポンプは、液体循環装置において液体を循環させるのに用いられる。液体循環装置は、例えば、エンジンと走行用モータと走行用モータを駆動させるインバータ回路とを備えたいわゆるハイブリッド車におけるインバータ回路を冷却するための冷却装置として用いられる。
【0006】
ところで、端子と端子受けとを用いて基板と外部電源および基板と駆動機構とを電気的に接続する上述のモータには、例えば、図9に示すように端子82を板状に形成し、端子受け81を板ばねで形成する技術が用いられる。端子受け82は、断面V字状の上部81aと、断面逆V字状の下部81bと、上部81aと下部81bとを繋ぎ基板30にはんだ付けされる中央部81cとを備える。上部81aの折曲部と下部81bの折曲部とは互いに近接し、端子82は、この互いに近接する折曲部間に差し込まれる。
【0007】
端子と端子受けとを接続させる技術には、図9に示した技術の他、図10に示すように、端子82’を円錐台状に形成し、端子受け81’を筒状に形成するとともに端子受け81’の内周面を端子82’の外周面に接触するように形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−204029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図9に示した技術では、端子82を端子受け81の上部81aと下部81bとでガイドすることができ、また、端子受け81の弾性により端子82を差し込む際に端子82に作用する応力を緩和できる。
【0010】
一方、図10に示した技術では、端子受け81’の内周面により端子82’をガイドすることができ、また、端子受け81’と端子82’とが面接触するから、図9に示した技術よりも大きな接触面積を確保することができる。しかしながら、弾性を有さず、端子82’を端子受け82’に差し込む際に端子82’に作用する応力を緩和することができない。
【0011】
ところで、モータをハイブリッド車の冷却装置のポンプなど外部から強い振動や衝撃が加わることがあるような用途に使用する場合、図9に示した技術では、端子82と端子受け81との接触面積が小さく、また、端子受け81が弾性を有するので、振動や衝撃により端子82と端子受け81とが離れて導通不良を引き起こす虞がある。
【0012】
一方、特許文献1に記載された技術では、図9に示した技術よりも接触面積を大きくすることができるが、端子受け82’は弾性を有さず、また、端子片81’は円錐台状に形成されているから、振動や衝撃により端子82’と端子受け81’との結合が緩んで導通不良を引き起こす虞がある。
【0013】
また、車に搭載するなど埃や水の侵入が予想される環境で使用する場合には、絶縁性を有する流動性樹脂(いわゆる、ポッティング)を本体ケース内に充填することがある。ポッティングを充填する際において、図9に示した技術のように端子82と端子受け81との接触面積が小さいと、ポッティングにより端子82と端子受け81との間で導通不良を引き起こす虞がある。
【0014】
上述のように、図9に示した技術では、端子82をガイドでき、また、端子82を端子受け81に差し込む際に端子82に作用する応力を緩和できるが、外部から衝撃や振動が加わるような用途や、ポッティングを必要とするような埃や水が多い環境で使用する場合に導通不良が生じる虞があるという問題がある。
【0015】
一方、図10に示した技術では、端子82’をガイドできるが、端子82’を端子受け81’に差し込む際に端子82’に作用する応力を緩和できず、また、外部から振動や衝撃が加わるような用途に使用した場合、導通不良が生じる虞があるという問題がある。
【0016】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、端子をガイドすることができ、端子を端子受けに差し込む際に端子に加わる応力を緩和でき、また、端子と端子受けとの間で導通不良が生じることを防止できるモータ、ポンプおよび液体循環装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の発明は、本体ケースと、本体ケースの定位置に配置された駆動機構と、本体ケースに収納され且つ外部電源と電気的に接続される基板と、本体ケースに対する定位置に固定され且つ駆動機構に電気的に接続された端子片と、基板に取り付けられた端子受けとを備えたモータであって、各端子片は、それぞれ先端部に返しが設けられた棒状に形成され、各端子受けは、端子片が差し込まれる挿入孔を備え挿入孔の口軸方向に交差する方向にそれぞれ弾性を有し、挿入孔の周壁は、端子片の周面が当接する前記口軸方向における中央部と、前記口軸方向において当該中央部を挟む両端部とを備え、当該両端部の一方は、端子片の先端部を中央部にガイドするガイド面を備え、他方は、端子片に設けた返しを係止するとともに、端子片との間にはんだが溜まるはんだたまりを形成することを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明では、請求項1記載の発明において、端子片は、端子受けのガイド面に当接する根本部を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2記載の発明において、端子受けは、挿入孔の口軸方向において本体ケースと駆動機構との一方に当接する位置決め手段を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の発明において、端子受けは、係合部を備え、本体ケースと駆動機構との少なくとも一方は、係合部に係合する被係合部を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のモータと、当該モータにより回転する羽根車を収納したポンプ室とを備え、ポンプ室の壁には、流体をポンプ室内に流入させる流入管およびポンプ室に流入した流体を流出させる流出管とが突設されていることを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載のポンプと、流入管および流出管に連結された循環パイプとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1、5、6の構成によれば、端子受けの挿入孔の周壁に設けたガイド面により端子片をガイドすることができるという利点と、端子受けの弾性により端子片を端子受けに差し込む際に端子片に作用する応力を緩和できるという利点とがあり、また、端子片と端子受けとを面接触にでき、端子片の返しを挿入孔の周壁で係止して端子片の抜けを防止でき、さらにはんだ溜まりに溶融したはんだを流し込んで端子片と端子受けとを固着でき、その結果、端子片と端子受けとの間で導通不良が生じることを防止できるという利点もある。
【0024】
請求項2、5、6の構成によれば、端子片は、端子受けのガイド面に当接する根本部を備えるから、請求項1に係る発明よりも端子片と端子受けとの接触面積を増やすことができ、その結果、端子片と端子受けとの間で導通不良が発生することを防止できる効果を請求項1に係る発明よりも高めることができるという利点がある。
【0025】
請求項3、5、6の構成によれば、端子受けは、挿入孔の口軸方向において本体ケースと駆動機構との一方に当接する位置決め手段を備えるから、端子片と端子受けとの結合と合わせて、本体ケースに対する基板の位置を定めることができるという利点がある。
【0026】
請求項4、5、6の構成によれば、係合部と被係合部とが係合するから、外部から振動や衝撃が加わった場合において、係合部と被係合部との係合および端子片と端子受けとの結合により基板の移動や変形を防止でき、さらに、基板の移動や変形を防止する際に、端子片に作用する応力を低減できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1の端子片と端子受けの断面図である。
【図2】同上の用途を説明する説明図である。
【図3】同上の断面図である。
【図4】同上の斜視図である。
【図5】同上の要部の断面図である。
【図6】同上の端子受けの斜視図である。
【図7】同上の別形態の断面図である。
【図8】実施形態2の要部の断面図である。
【図9】従来例の断面図である。
【図10】他の従来例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態1)
以下では、図2に示すエンジン71と走行用モータ72(例えば、ブラシレスDCモータ)とを搭載したハイブリッド車73の冷却装置である液体循環装置3のポンプ2に用いられるモータ1(図3参照)を本発明のモータの一例として説明する。
【0029】
ハイブリッド車73は、バッテリ75と、バッテリ75から供給された電力により走行用モータ72を駆動させるインバータ74とを備える。このインバータ74は、走行用モータ72を駆動させる機能に加え、エンジン71による走行時において走行用モータ72で発電された電気を整流してバッテリ75に供給しバッテリ75を充電する機能も有する。つまり、インバータ74は、走行用モータ72による走行時のみならずエンジン71による走行時においても発熱する。ハイブリッド車73は、このインバータ74の冷却用として液体循環装置3を備える。
【0030】
液体循環装置3は、冷却水が循環する循環パイプ76と、ポンプ2とを備える。このポンプ2は、図3、4に示すように、合成樹脂材料から成る本体ケース20を備えたモータ1と、合成樹脂材料から成り本体ケース20に溶着されるケーシング60とを具備する。
【0031】
ケーシング60は、下方(図3における下方)に開放された有定筒状の筒状部61と、この筒状部61の底壁(図3の上壁)の中央部から上方に突出する流入管62と、筒状部61の側壁から側方に突出する流出管63とを備える。ケーシング60の筒状部61は、側壁の下端がモータ1の本体ケース20に溶着されることで本体ケース20とともに後述のポンプ室64を形成する。流入管62および流出管63は、連結部材(図示せず)を用いて循環パイプ76の両端の一方にそれぞれ連結され、循環パイプ76の内部空間とポンプ室64の内部空間とを連通させる。
【0032】
ケーシング60とともにポンプ2を形成する本実施形態のモータ1は、回転駆動を行う駆動機構10と基板30とが本体ケース20により一体化された構成を有する。駆動機構10は、上述のポンプ室64に収納される駆動側のロータ41と、ポンプ室64の外側に配置される固定側のステータ11とを備える。すなわち、モータ1は、固定側のステータ11と駆動側のロータ41とが本体ケース20の壁により隔てられた構成を有する。ステータ11およびロータ41の構成と、上述の基板30の構成とについては後述する。
【0033】
本体ケース20は、上下方向(図3における上下方向)の厚みの薄い箱状に形成されるとともに下方に開放された基板収納部21と、基板収納部21の底壁(図3における上壁)から上方に突出し且つ下方に開放された有底筒状のステータ収納部22と、ステータ収納部22の内底面(図3における上壁の下面)から下方に突出し且つ上方に開放された有底筒状のロータ収納部23とを備える。円筒状のステータ収納部22の中心軸と円筒状のロータ収納部23の中心軸とは互いに略一致する。また、基板収納部21の開口面には、基板収納部21およびステータ収納部22への水や埃の侵入を防止する板状の裏カバー24が取着される。
【0034】
上述のケーシング60は、ロータ収納部23の上方に配置され、筒状部61の側壁の下端がステータ収納部22の底壁(図における上壁)の上面にレーザー溶着や超音波溶着により全周に亘って溶着されることで本体ケース20に固定される。すなわち、上方に開放されたロータ収納部23と下方に開放された筒状部61とでポンプ室64が形成される。なお、筒状部61とステータ収納部22とを溶着する代わりに、リング状に形成したパッキンなどのシール部材と取付ねじなどの固着部材とを用いて筒状部61とステータ収納部22とを結合することもできる。つまり、リング状のシール部材をステータ収納部22の底壁と筒状部61の下端との間に挿入し、筒状部61とステータ収納部22とを固着部材で結合する。
【0035】
ポンプ室64の下部を形成するロータ収納部23の内底面の中央部には、円筒状の嵌合リブ23aが突設される。また、ロータ収納部23の側壁の外周面とステータ収納部22の側壁の内周面との少なくとも一方には、上述のステータ11を固定するための固定部(図示せず)が設けられる。嵌合リブ23aの機能と固定部の構成とについては後述する。
【0036】
本体ケース20の基板収納部21の側壁の外側面の下端部には、ハイブリッド車73(図2参照)の車体に取り付けられたベース部材(図示せず)に本体ケース20を取り付けるための複数個(図示例では、3個)の取付板25が突設される。各取付板25には、車体からの振動の伝達を防止する防振ゴム26がそれぞれ取着される。本体ケース20は、裏カバー24を上述のベース部材側(下側)として車体に取り付けられる。
【0037】
ベース部材とは反対側となる基板収納部21の底壁(図の上壁)には、外部電源(例えば、バッテリ75)との接続用のコネクタ27が設けられる。コネクタ27は、基板収納部21の底壁を貫通する棒状の複数個(図示例では4個)の端子片28と、この4個の端子片28の上部を囲むように基板収納部21の底壁から上方に向けて突出し外部電源側コネクタ(図示せず)と嵌合する嵌合リブ29とを備える。端子片28は、金属材料から成り、後述する端子受け32を用いて基板30と電気的に接続される。
【0038】
次に駆動機構10のステータ11とロータ41とについて説明する。ポンプ室64に収納されるロータ41は、セラミック材料で棒状に形成され下端部がロータ収納部23に設けた上述の嵌合リブ23aに嵌入されて固定されるシャフト42と、筒状に形成されシャフト42に貫かれる軸受け43と、軸受け43に取り付けられた羽根車44とを備える。すなわち、羽根車44はシャフト42の周方向に回動自在である。軸受け43の下端は嵌合リブ23aの上端に当接し、軸受け43の上端はシャフト42に貫設されたリング状の軸受け板45に当接し、軸受け43(すなわち、羽根車44)は上下方向の移動が規制される。
【0039】
軸受け43に取り付けられた羽根車44の羽根には、固定側のステータ11と後述するように磁気的に結合するマグネット(図示せず)が連続一体に形成される。
【0040】
ステータ11は、ロータ収納部23を囲むように円筒状のロータ収納部23の周方向に沿ってステータ収納部22内に配置された固定子鉄心12と、固定子鉄心12を上下方向に挟む上下一対のインシュレータ13とを備える。
【0041】
上側のインシュレータ13の上面と下側のインシュレータ13の下面とには、巻線14を収納する収納凹所13aの開口がそれぞれ開設され、巻線14が各インシュレータ13にそれぞれ巻装される。インシュレータ13は、合成樹脂材料などの絶縁性の材料から成り、固定子鉄心12と巻線14とを絶縁する。
【0042】
固定子鉄心12は、強い磁界を形成できるように、複数枚の電磁鋼板(鉄に珪素を添加した鋼板)を積層して形成される。また、固定子鉄心12には、ステータ収納部22への固定用として複数の歯部およびスロット(図示せず)が設けられる。ステータ収納部22に設ける上述の固定部は、歯部に噛合し、スロットに挿入するように形成される。
【0043】
また、下側のインシュレータ13には、それぞれ金属材料で棒状に形成された複数個の端子片50の1つがそれぞれ圧入される複数個の圧入孔(図示せず)が設けられる。各端子片50は、下方に突出するようにそれぞれインシュレータ13または本体ケース20に固定される。
【0044】
端子片50には、巻線14の一端が、からげ処理され、はんだにより巻線14が固着される。各端子片50は、後述する端子受け32を用いて基板30とそれぞれ電気的に接続される。すなわち、駆動機構10には、基板30を介して外部電源から電力が供給される。
【0045】
基板30には、端子受け32を取り付けるための複数個の取付孔30aが貫設される。また、基板30は、後述する端子片28、50と端子受け32とを用いて、基板収納部21の底壁(図における上壁)と、基板収納部21の開口を閉塞する裏カバー24との中間に固定される。
【0046】
基板30には、巻線14への通電制御を行う制御回路(図示せず)を実現する種々の電子部品(図示せず)が実装される。制御回路は、巻線14への通電制御を行ってシャフト42を中心に回転するような磁界(いわゆる回転磁界)を形成する。回転磁界が形成されると、羽根車44の各マグネットと固定子鉄心12とが吸引または反発し、羽根車44が回転する。
【0047】
ここに、基板30の上面には、上述の羽根車44のマグネットの位置を検出する位置検出器31が実装される。位置検出器31には、例えば、非接触で対象物(マグネット)の位置を検出する非接触型のポジションセンサや近接センサを用いる。
【0048】
制御回路は、位置検出器31により検出したマグネットの位置に応じて巻線14への通電制御を行い、羽根車44の回転の維持や回転数の制御などを行う。羽根車44が回転すると流入管62からポンプ室64に冷却水が吸い込まれ、ポンプ室64に吸い込まれた冷却水は流出管63から送り出される。
【0049】
また、ポンプ室64に吸い込まれた冷却水は、シャフト42と軸受け43との間に入り込み、シャフト42に対して軸受け43が回転する際の潤滑材になる。つまり、ポンプ2は、循環させる冷却水をシャフト42と軸受け43との間の摩擦を低減する潤滑材に利用した、いわゆる水中すべり軸受ポンプである。
【0050】
次に、端子片28、50の構成と、端子受け32の構成との詳細について説明する。なお、端子片28と端子片50とにおける端子受け32と接続する部分(下部)は同形状であり、以下では端子片50についてのみ説明する。
【0051】
端子片50は、図1に示すように、先端部(図における下端部)が先細りする丸棒状に形成され、径方向に突出する返し51が当該先端部に設けられた構成を有する。
【0052】
一方、端子受け32は、円筒状に形成された受け部33と、中心軸が受け部33の中心軸に一致する円筒状に形成され受け部33を囲む固定部34と、受け部33の一端部(図における上端部)と固定部34の一端部(図における上端部)とを繋ぐ位置決め部35とを備えた構成を有する。位置決め部35は、基板収納部21の内底面または下側のインシュレータ13の下面に当接する上面を備える。端子受け32は、例えば、金属板を絞ることにより形成する。
【0053】
固定部34の外周面の一端部(図における下端部)からは、基板30への固定用の固定片34aが全周に亘って突出する。端子受け32が基板30の下面側から基板30に設けた上述の取付孔30aに挿通されると、固定片62aの上面が基板30の下面に当接する。端子受け32は、固定片62aが基板30に固着されることで基板30に固定されるとともに、基板30に設けた導体パターン(図示せず)と電気的に接続する。
【0054】
固定部34の軸方向(上下方向)の長さ寸法は、図5に示すように、位置決め部35の上面が基板収納部21の内底面に当接して基板30が基板収納部21の底壁と裏カバー24との中間に位置するように設定される。すなわち、位置決め部35は、基板収納部21に対する基板30の上下方向の位置を決める位置決め手段であり、固定部34は、基板30と基板収納部21の底壁との間に隙間を形成するスペーサの機能を有する。なお、端子片50は、位置決め部35が基板収納部21の内底面に当接するように、ステータ収納部22の側壁に近接させて配置することが望ましい。また、位置決め部35は、基板収納部21と広い面積で当接するように、上面の面積が大きい形状に形成することが望ましい。さらに、位置決め部35を下側のインシュレータ13の下面に当接させることで基板30の上下位置を決めることもできる。
【0055】
位置決め部35を介して固定部34と繋がる受け部33は、内径が端子片50の軸方向の中央部の直径と略同一寸法に設定された軸方向(上下方向)の中央部33aと、この中央部33aを上下に挟む上端部33b、下端部33cとを備える。すなわち、受け部33は、端子片28、50が差し込まれる挿入孔を備える。
【0056】
また、上端部33bはラッパ状に形成される。すなわち、端子受け32は、端子片28、50をガイドするガイド面を上端部33bの内周面として備える。
【0057】
一方、受け部33の下端部33cもラッパ状に形成され、端子片28、50の先端部に設けた返し51に当接して返し51を係止する。また、受け部33の下端部33cは、端子片50の先細りする先端部との間に、はんだが溜まる、はんだ溜まり36を形成する。
【0058】
さらに、受け部33の中央部33aおよび上端部33bと固定部34とには、図6に示すように、軸方向(上下方向)に沿ってスリット37が設けられる。受け部33は、スリット37により直径が大きくなるように撓むことができ、その結果、径方向に弾性を有する。受け部33が径方向に弾性を有することにより、返し51を備えた端子片28、50を受け部33に差し込むことができる。
【0059】
基板30を本体ケース20に組み付けるに当っては、基板収納部21の開口側を上にして本体ケース20を配置し、上方より基板30を本体ケース20の基板収納部21内に進入させ、端子片28、50の先端を端子受け32の受け部33のラッパ状の上端部33bの内周面(ガイド面)に当接させる。その後、基板30を基板収納部21の底部側に(下方に)押し込んで端子片28、50を端子受け32の受け部33に差し込み、返し51を受け部33の下端部33cに係止させる。次に、はんだ溜まり36に溶融したはんだを流し込んで端子片28、50を受け部33に固着する。
【0060】
なお、端子片28、50を端子受け32に接続する際において、返し51が受け部33の下端部33cに嵌まると、撓むことにより変形していた受け部33が元の形状に戻るから、作業者は、返し51が受け部33の下端部33cに嵌まったことを手に受ける感触により知ることができる。従って、端子片28、50における端子受け32の挿入深さが足りないなどの作業不良の発生を低減できる。
【0061】
端子片28、50を端子受け32にはんだで固着した後は、裏カバー24を基板収納部21の開口面に取り付け、絶縁性を有する流動性樹脂(いわゆる、ポッティング)を基板収納部21およびステータ収納部22に流し込み、当該樹脂を固化させる。ポッティングにより、基板30に実装された電子部品、端子片28、50や端子受け32に水や埃が付着することを防止する。ポンプ2を車体に取り付ける際は、上述したように裏カバー24側を下にする。
【0062】
本実施形態では、端子受け32の受け部33の上端部33bにガイド面を設けることで端子片28、50をガイドすることができ、基板30を本体ケース20に組み付ける作業を容易にすることができる。
【0063】
また、スリット37により受け部33に付与した径方向の弾性により、端子片28、50を端子受け32に差し込む際に端子片28、50に作用する応力を緩和することができる。
【0064】
さらに、端子片28、50を丸棒状に形成し端子受け32の受け部33を筒状に形成することで端子片28、50と端子受け32とを面で接触させて大きな接触面積を確保することができ、また、返し51を受け部33の下端部33cで係止し且つはんだにより端子片28、50を端子受け32に固着することで接続強度を高めることができ、その結果、上述のポッティングが端子片28、50と端子受け32との間に入り込むことを防止できるとともに、ポンプ2に車体から振動や衝撃が加わったとしても端子片28、50と端子受け32との間で導通不良が生じることを防止できる。
【0065】
さらにまた、端子片28、50と端子受け32とが接続し、端子受け32の位置決め部35が本体ケース20に当接することで、本体ケース20に対する基板30の位置が定まり、その結果、位置検出器31の位置ずれによるマグネットの位置の検出誤差を低減することができる。
【0066】
上述では、端子片28、50を丸棒状に形成した構成を説明したが、長手方向(上下方向)に直交する断面が楕円状や矩形状の棒状に端子片28、50を形成した構成を採用することもできる。この構成を採用した場合、端子受け32の受け部33の断面形状を、端子受け32の断面形状に合わせて外形楕円状や矩形状に形成する。
【0067】
また、図7に示すように、端子片28、50の根本部50aを先端から離れるに従って直径が大きくなるような末広がりの形状に形成し、当該根本部50aと端子受け32の受け部33の上端部33bとを当接させて端子片28、50と受け部33との接触面積を増やすことができる。はんだ溜まり36に流し込んだはんだは、スリット37などを通って端子片28、50の根本部50aと受け部33の上端部33bとの間の隙間に入り込んで端子受け32の上端部33bと根本部50aとを固着する。したがって、さらに大きな接触面積を確保できるとともに、端子片28、50と端子受け32との接続強度をさらに高めることができる。
【0068】
本実施形態では、冷却装置である液体循環装置3のポンプ2に使用するモータ1に本発明の技術を用いた例を説明したが、例えば、アイドリング停止時において車内を暖房するための温水循環装置に使用されるポンプのモータに本発明の技術を用いることもできる。また、給湯を行う給湯装置に使用されるポンプのモータなど車に搭載するモータ以外のモータにも本発明の技術を用いることができる。さらに言えば、基板を介して駆動回路に電力を供給する種々のモータに本発明の技術を用いることができる。
【0069】
(実施形態2)
本実施形態では、端子受け32に係合部を設け、本体ケース20と下側のインシュレータ13とに係合部に係合する被係合部をそれぞれ設けた構成を説明する。本実施形態の他の構成は、実施形態1の構成と同様である。
【0070】
図8に示すように、端子受け32の固定部34の外周面の上端部には、係合部として係合凸部38が周方向の全周に亘って突設される。係合凸部38は、上面が位置決め部35の上面と面一であるリング状に形成される。
【0071】
一方、本体ケース20の基板収納部21の内底面と下側のインシュレータ13の下面とには、被係合部として係合突起39がそれぞれ突設される。係合突起39は、端子片28、50を囲むように設けられる。具体的には、間に端子片28、50が位置するように配置された2個の係合突起39を一対の係合突起39として、複数対の係合突起39を端子片28、50の周囲に設ける。各係合突起39は、基板収納部21の内底面または下側のインシュレータ13の下面に突設される基部39aと、基部39aの先端部(図における下端部)から端子片28、50に向けて突出する係合爪39bとをそれぞれ備える。
【0072】
係合突起39は、本体ケース20または下側のインシュレータ13と一体に形成される。すなわち、係合突起39の係合爪39bは、合成樹脂材料から成り、厚み方向(上下方向)に可撓性を有する。
【0073】
ここに、上記一対の係合突起39の2つの係合爪39bの先端間の離間寸法は、係合凸部38の直径よりも小さく設定される。また、係合爪39bの上面と基板収納部21の内底面または下側のインシュレータ13の下面との間の寸法は、係合凸部38の上下方向の厚み寸法よりも大きく設定される。さらに、一対の係合突起39の基部39aの互いに対向する面間の寸法は、係合凸部38の直径よりも大きく設定される。
【0074】
したがって、端子片28、50を端子受け32に差し込んで係合凸部38を係合突起39の係合爪39bに当接させると、係合爪39bが上方に撓んで係合凸部38が係合突起39間に嵌入する。すなわち、端子片28、50を端子受け32に接続させると係合凸部38が係合突起39に係止され、端子片28、50に設けた返し51とともに、端子片28、50の抜け止めを行うことができる。
【0075】
ところで、本体ケース20に充填された上述のポッティングは、周囲温度の変化により膨張したり収縮したりすることが知られている。ポッティングが膨張したり収縮したりすることで基板30が上下方向や表面に沿う方向(図の左右方向など)に移動したり変形したりしようとする。また、車体からの振動や衝撃によっても基板30が移動したり変形したりしようとする。
【0076】
本実施形態では、端子片28、50と端子受け32との結合に加え、係合突起39と係合凸部38とが係合するから、基板30の移動や変形を防止できる。また、基板30の移動や変形を防止するに際して、係合部と被係合部との係合により端子片28、50に作用する応力を低減できる。
【0077】
また、端子片28、50を端子受け32に差し込む際に係合凸部38と係合突起39とが係合するから、作業者は、基板30の取付位置が正しことを係合凸部38と係合突起39とが係合する際に手に受ける感触により確認することができ、基板30の組み付け不良を無くすことができる。
【0078】
上述した構成では、端子片28、50を囲む複数個の係合突起39の基部39a同士が離間する例を説明したが、端子片28、50の周囲に設ける複数対の係合突起39の全てを基板収納部21と下側のインシュレータ13との一方のみに設ける場合は、基部39a同士を繋げた構成を採用することが望ましい。この構成を採用した場合、はんだが端子片28、50を伝って基板収納部21の内底面または下側のインシュレータ13の下面に流れ込んでも、基部39aにより、はんだの広がりを防止することができる。
【0079】
また、係合突起39は、複数個の端子片28、50のうちから選択した端子片(端子片28または端子片50)の周囲に設けることができる。ただし、少なくとも2個の端子片(端子片28または端子片50)の周囲に係合突起39を設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0080】
1 モータ
2 ポンプ
3 液体循環装置
10 駆動機構
20 本体ケース
28 端子片
30 基板
32 端子受け
33 受け部
33a 中央部
33b 上端部
33c 下端部
35 位置決め部(位置決め手段)
36 はんだ溜まり
37 スリット
38 係合凸部(係合部)
39 係合突起(被係合部)
50 端子片
50a 根本部
51 返し
62 流入管
63 流出管
64 ポンプ室
76 循環パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、本体ケースの定位置に配置された駆動機構と、本体ケースに収納され且つ外部電源と電気的に接続される基板と、本体ケースに対する定位置に固定され且つ駆動機構に電気的に接続された端子片と、基板に取り付けられた端子受けとを備えたモータであって、各端子片は、それぞれ先端部に返しが設けられた棒状に形成され、各端子受けは、端子片が差し込まれる挿入孔を備え挿入孔の口軸方向に交差する方向にそれぞれ弾性を有し、挿入孔の周壁は、端子片の周面が当接する前記口軸方向における中央部と、前記口軸方向において当該中央部を挟む両端部とを備え、当該両端部の一方は、端子片の先端部を中央部にガイドするガイド面を備え、他方は、端子片に設けた返しを係止するとともに、端子片との間にはんだが溜まるはんだたまりを形成することを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記端子片は、前記端子受けのガイド面に当接する根本部を備えることを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記端子受けは、前記挿入孔の口軸方向において前記本体ケースと前記駆動機構との一方に当接する位置決め手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載のモータ。
【請求項4】
前記端子受けは、係合部を備え、前記本体ケースと前記駆動機構との少なくとも一方は、係合部に係合する被係合部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のモータ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のモータと、当該モータにより回転する羽根車を収納したポンプ室とを備え、ポンプ室の壁には、流体をポンプ室内に流入させる流入管およびポンプ室に流入した流体を流出させる流出管とが突設されていることを特徴とするポンプ。
【請求項6】
請求項5に記載のポンプと、前記流入管および前記流出管に連結された循環パイプとを備えることを特徴とする液体循環装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−114979(P2011−114979A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270391(P2009−270391)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】