説明

モータ、該モータを備えたドレンポンプ、該ドレンポンプを備えた空気調和装置の室内機および該室内機を備えた空気調和装置

【課題】コイルとステータとの間の絶縁性を向上させる。
【解決手段】本発明のモータは、コイル62と、磁性材料により形成された芯材61cを含むステータ61と、ステータ61によってコイル62と所定の距離を空けて配置され、コイル62に通電することで回転する回転子63とを有する。とくに、所定の形状を呈した1枚のフィルムからなる絶縁フィルム60が、コイル62とコイル62に挿入された芯材61cとの間に設けられ、かつ、コイル62の表面であってステータ61と対向する面に折り曲げて巻き付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、該モータを備えたドレンポンプ、該ドレンポンプを備えた空気調和装置の室内機および該室内機を備えた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の温度や風量を調整することで、室内を快適な状態に維持する空気調和装置が用いられている。空気調和装置は、主に、屋内に設置される室内機、および、室内機に連絡され、屋外に設置される室外機を備えている。
【0003】
とくに、冷房運転時には、室内機の内部で、結露水が発生する。この結露水は、室内機の内部に取り込まれた空気を熱交換器で熱交換する際に、空気中の水蒸気が熱交換器の表面で凝結したものである。そして、室内機には、結露水を熱交換器の下方で受けるドレンパンと、ドレンパン内に溜まった水をドレン管へ送水し、屋外へ排水するドレンポンプとが設けられている(特許文献1参照)。
【0004】
ドレンポンプは、主に、電動式のモータと、モータによって駆動されるポンプ本体とを備えている。この電動式のモータは、コイルおよび回転子が、コイルに挿入される芯材を含むステータを介して、それぞれ所定の位置に配置されたものであり、コイルに通電することで、回転子を回転させている。
【特許文献1】特開2001−124365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術では、コイルに流れる電流が絶縁破壊などのなんらかの原因で漏れ出す漏電が危惧される。そのため、ドレンポンプに対して現状より高い絶縁性が要求されつつある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、コイルとステータとの間の絶縁性を向上させるモータ、該モータを備えたドレンポンプ、該ドレンポンプを備えた空気調和装置の室内機および該室内機を備えた空気調和装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のモータは、コイル(62)と、磁性材料により形成された芯材(61c)を含むステータ(61)と、該ステータ(61)によって前記コイル(62)と所定の距離を空けて配置され、前記コイル(62)に通電することで回転する回転子(63)とを有するモータであって、所定の形状を呈した1枚のフィルムからなる絶縁フィルム(60)が、前記コイル(62)と該コイル(62)に挿入された前記芯材(61c)との間に設けられ、かつ、前記コイル(62)の表面であって前記ステータ(61)と対向する面に折り曲げて巻き付けられることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、所定の形状を呈した1枚のフィルムからなる絶縁フィルム(60)が折り曲げられて所定の箇所に巻き付けられる。つまり、コイル(62)に流れる電流が漏れ出した場合に導体となり得る芯材(61c)の周面とコイル(62)の中空部内周面との間に絶縁フィルム(60)が挟み込まれ、さらに、コイル(62)の表面であって、ステータ(61)と対向する面に絶縁フィルム(60)が巻き付けられる。したがって、コイル(62)の構造や芯材(61c)の構造に大きな変更を加えなくても、コイル(62)と芯材(61c)との間の絶縁性およびコイル(62)の表面とステータ(61)との間の絶縁性を向上させることができる。また、絶縁フィルム(60)として、所定の形状を呈した1枚のフィルムを用いているので、絶縁フィルム(60)の管理や、巻き付け作業が容易である。
【0009】
また、前記絶縁フィルム(60)は、前記芯材(61c)の周面に巻き付けられる第1の巻き付け部(W1)と、前記コイル(62)の表面であって、前記ステータ(61)と対向する面に巻き付けられる第2の巻き付け部(W2)とを含み、平面視で、前記第2の巻き付け部(W2)と前記第1の巻き付け部(W1)とが直交するような形状を呈していることが好ましい。
【0010】
この発明によれば、平面視で、絶縁フィルム(60)が、その第1の巻き付け部(W1)と第2の巻き付け部(W2)とが直交するような形状を呈しているので、巻き付け方向が異なる部分を1枚の絶縁フィルム(60)で絶縁することができる。
【0011】
また、前記ステータ(61)が、ステータ本体(61a)を含み、該ステータ本体(61a)によって、前記コイル(62)に前記芯材(61c)が挿入された状態で前記芯材(61c)の両端部が支持され、前記芯材(61c)は、前記ステータ本体(61a)に対して分離可能に設けられることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、芯材(61c)が、ステータ本体(61a)に対して分離可能に設けられるので、コイル(62)の導線をステータ(61)の一部に巻き付ける作業を、ステータ本体(61a)から離れたところで行うことができ、モータの組み立て作業が容易になる。
【0013】
また、前記絶縁フィルム(60)の厚さが、前記コイル(62)のボビン(62a1)の厚さの2倍以上であることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、絶縁フィルム(60)の厚さを、コイル(62)の(ボビン62a1)の厚さの2倍以上にすることで、絶縁性を従来の2倍以上にすることもできる。
【0015】
本発明のドレンポンプ(6)は、上記のモータ(M)と、該モータ(M)の駆動力を受けて駆動するポンプ本体(65)とを備えている。
【0016】
この発明によれば、上記のモータ(M)をドレンポンプ(6)に備えることで、ドレン水に電流が漏れ出すのを防ぐことができる。
【0017】
本発明の空気調和装置の室内機(100)は、ドレンパン(5)と、該ドレンパン(5)内に溜まった水を排水する上記のドレンポンプ(6)とを備えている。
【0018】
本発明の空気調和装置は、上記の室内機(100)を備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コイルとステータとの間の絶縁性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下で、本実施の形態のモータ、ドレンポンプ、空気調和装置の室内機および空気調和装置について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
実施の形態1の空気調和装置は、主に、屋内に設置される室内機と、屋外に設置される室外機とを備えている。室内機と室外機は、熱媒体である冷媒が流通する冷媒配管によって、互いに接続されている。
【0022】
図1は、空気調和装置の室内機100を概略的に説明するための断面図である。室内機100は、図1に示されるように、天井cに形成された開口に嵌め込まれるタイプのケーシング2と、ケーシング2の内部で空気の流れを作り出す送風機4と、送風機4によってケーシング2の外部から取り込まれた空気に対して熱交換を行う熱交換器3と、熱交換器3で生じた結露水を熱交換器3の下方で受けるための、浅い皿状を呈したドレンパン5と、ドレンパン5内に溜まった結露水をドレン水としてドレン管66へ送水するためのドレンポンプ6とを備えている。ケーシング2の底面(すなわち、天井cに接している部分)には、ケーシング2内に室内の空気を取り込むための吸い込み口2aと、冷媒との間で熱交換がされた空気をケーシング2内から室内へ排出するための吹き出し口2bとが形成され、吸い込み口2aを覆うように、吸込グリル20が取り付けられている。
【0023】
室内機100の送風機4が駆動すると、室内の空気が、吸い込み口2aからケーシング2内へ吸い込まれ、熱交換器3を経て吹き出し口2bへ向かうような空気の流れが作り出される。
【0024】
図2は、ドレンポンプ6を説明するための斜視図である。図3は、ドレンポンプ6の平面図である。図4は、図3のIV−IV位置におけるドレンポンプ6の断面の一部を示す図である。図5は、図3のV−V位置におけるドレンポンプ6の断面の一部を示す図である。
【0025】
ドレンポンプ6は、ドレンパン5内に溜まった水を汲み上げ、ドレン管66へ向けて送水する。ドレンポンプ6は、図2に示されるように、モータMと、モータMの駆動力を受けて回転し、動力を伝達するシャフト64と、シャフト64の一端に設けられ、シャフト64の回転を受けて駆動するポンプ本体65とを含む。本実施の形態では、ポンプ本体65として遠心ポンプを用いている。
【0026】
モータMは、コイル62と、回転子63と、ステータ61と、絶縁フィルム60とを含む。図3に示されるように、コイル62と回転子63とは、ステータ61によって、互いに所定の距離を空けて、所定の位置関係になるように配置されている。
【0027】
コイル62は、図4および図5に示されるように、1対の対向する面を貫くような中空部62aが形成された略直方体状を呈している。コイル62は、合成樹脂製のボビン62a1と、導線62a2と、充填材62a3とを含む。ボビン62a1は、横断面が略矩形状を呈し、導線62a2を巻き付ける筒部bo1と、筒部bo1の両端部に鍔状に形成された1対の突出片部bo2とから構成されている。充填材62a3は、合成樹脂などの絶縁性を有する材料であり、本実施の形態では、エポキシ樹脂を用いている。充填材62a3は、ボビン62a1の筒部bo1の外側周面に導線62a2が巻き付けられた後、導線62a2を覆うように突出片部bo2の先端部分とほぼ同じ高さになる程度に充填される(図5参照)。ボビン62a1の肉厚は、約1mm程度である。従来のコイルでは、その絶縁性が、ボビンの肉厚や充填材62a3の層厚によって定められていたが、本実施の形態では、絶縁性を向上させるために、絶縁フィルム60でコイル62の特定の箇所を被覆するので、ボビンに対してボビンの肉厚をさらに厚くするような設計変更を必要としない。
【0028】
コイル62にはその一部に、略直方体状の介装部62bがある。介装部62bは、コイル62がステータ61に組み込まれたときに、後述のステータ61のステータ本体61aと芯材61cとによって介装される部分である。
【0029】
回転子63は、略円柱状を呈し、コイル62に対して所定の位置になるように配置されている。回転子63には、複数の永久磁石が、S極とN極が回転子63の周面側に交互に表れるように、周方向に沿って配設されている。シャフト64は、この回転子63の回転中心部分に、回転子63と一体に設けられている。このため、シャフト64は回転子63とともに回転し、その動力をポンプ本体65に伝達する。
【0030】
ステータ61は、磁性材料により形成されたステータ本体61aと、磁性材料により形成された芯材61cとを含む。本実施の形態では、ステータ61の材質として鉄を用いている。
【0031】
ステータ本体61aは、ドレンポンプ6全体を、ケーシング2内の所定の位置に支持するものである。ステータ本体61aには、回転子63を回動可能に保持するための貫通孔61a2が形成されている(図14、図15参照)。また、ステータ本体61aには、コイル62を固定し、かつ、芯材61cの両端部を支持するためのコイル固定部61a1が凹状に形成されている(図14参照)。コイル固定部61a1には、芯材61cによってステータ本体61aに支持されたコイル62の介装部62bを収納する、介装部62bの表面形状に応じた空間が形成されている。すなわち、コイル62の介装部62bは略直方体状を呈しているので、コイル固定部61a1には、ステータ本体61aの上面に対して垂直な面が形成される。具体的には、コイル固定部61a2における、ステータ本体61aの上面に対して垂直な面は、コイル62がコイル固定部61a1に装着されると、コイル62の突出片部bo2およびコイル62の充填材62a3に対向する。
【0032】
芯材61cは、略四角柱状を呈し、芯材前面61c1、芯材上面61c2、芯材背面61c3、芯材底面61c4を有する(図8参照)。芯材前面61c1、芯材上面61c2、芯材背面61c3、芯材底面61c4は、いずれも平面であり、芯材前面61c1および芯材背面61c3が平行であり、芯材上面61c2および芯材底面61c4が平行である。また、芯材61cの両端には芯材端部61c5、61c6が形成されている。各芯材端部61c5、61c6は、平面視で略T字状を呈している。芯材端部61c5、61c6は、芯材61cがステータ本体61aに組み込まれると、ステータ本体61aと係合する。芯材61cは、モータMの組み立て時に、コイル62の中空部62aに挿入された状態で、ステータ本体61aに形成されたコイル固定部61a1に組み込まれる。そして、コイル62に電流が供給されると、芯材61c、ステータ本体61aおよびコイル62で電磁石として機能する。
【0033】
図6は、絶縁フィルム60の展開図である。絶縁フィルム60は、図6に示されるように、略逆T字状を呈した1枚のフィルムであり、コイル62とコイル62に挿入された芯材61cとの間を絶縁するとともに、ステータ本体61aとコイル62との間を絶縁する。具体的には、絶縁フィルム60は、芯材61cの周面に巻き付けられる第1の巻き付け部W1と、コイル62の表面であって、ステータ本体61aと対向する面に巻き付けられる第2の巻き付け部W2とを含む。第1の巻き付け部W1および第2の巻き付け部W2は、平面視で、互いに直交するような形状を呈している。すなわち、第1の巻き付け部W1は、前面部60a、前面部60aの上側に隣接する上面部60b、上面部60bの上側に隣接する背面部60cおよび背面部60cの上側に隣接する底面部60dから構成されている。また、第2の巻き付け部W2は、図6において、第1の巻き付け部W1の前面部60aの左側に隣接する第1側面部60e、第1の巻き付け部W1の前面部60aの右側に隣接する第2側面部60fおよび第2側面部60fの右側に隣接する巻装部60gから構成されている。前面部60a、上面部60b、背面部60c、底面部60d、第1側面部60e、第2側面部60f、巻装部60gは、いずれも、矩形状を呈している。また、絶縁フィルム60には、組み立て作業時に、作業者に対して絶縁フィルム60の折り曲げ位置を示すための折り曲げ線L1、L2、L3、L4、L5が、各部分の境界位置に表示されている。
【0034】
そして、第1の巻き付け部W1が芯材61cの周面に巻き付けられると、第1の巻き付け部W1の前面部60aは芯材61cの芯材前面61c1に、第1の巻き付け部W1の上面部60bは芯材61cの芯材上面61c2に、第1の巻き付け部W1の背面部60cは芯材61cの芯材背面61c3に、第1の巻き付け部W1の底面部60dは芯材61cの芯材底面61c4に対応する。したがって、第1の巻き付け部W1が芯材61bの周面に巻き付けられると、第1の巻き付け部W1の前面部60aの辺Aと、第1の巻き付け部W1の底面部60dの辺A’は、重なり合う。
【0035】
また、第2の巻き付け部W2がコイル62に巻き付けられると、第2の巻き付け部W2の第1側面部60eおよび第2側面部60fは、それぞれ、コイル62のボビン62a1の突出片部bo2の表面に、第2の巻き付け部W2の巻装部60gは、コイル62の充填材62a3の表面に対応する。したがって、第2の巻き付け部W2がコイル62に巻き付けられると、第2の巻き付け部W2の第1側面部60eの辺B’と、第2の巻き付け部W2の巻装部60gの辺Bは、重なり合う。
【0036】
絶縁フィルム60の厚さは、ボビン62a1の肉厚の2倍以上であることが好ましい。絶縁フィルム60の厚さが、極端に薄い場合には、絶縁フィルムの巻き付けや折り曲げ作業時にフィルムが破損する傾向がある。また、絶縁フィルム60の厚さが、極端に厚い場合には、絶縁フィルムの巻き付けや折り曲げ、芯材61cに絶縁フィルム60を巻き付けた状態での中空部62aへの挿入が困難になる傾向がある。
【0037】
絶縁フィルム60の素材は、とくに限定されない。たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。本実施の形態では、絶縁フィルム60の素材として、ポリプロピレンを用いている。
【0038】
図4に示されるように、絶縁フィルム60がコイル62とステータ61との間に挟み込まれると、導線62a2とステータ61との間には、充填材62a3に加えて絶縁フィルム60、あるいは、ボビン62a1に加えて絶縁フィルム60が存在することになる。すなわち、ステータ61と導線62a2との間が、コイル62を構成する絶縁物と挟み込まれた絶縁フィルム60とによって、2重に絶縁される。具体的には、芯材61cの周面とコイル62の導線62a2との間には、コイル62のボビン62a1の筒部bo1および絶縁フィルム60の第1の巻き付け部W1が介在している。また、ステータ本体61aとコイル62の導線62a2との間には、コイル62の充填材62a3および絶縁フィルム60の第2の巻き付け部W2が介在している。
【0039】
このようなモータMの動作について説明する。コイル62に所定の電流が供給されると、コイル62、コイル62に挿入された芯材61cおよびステータ本体61aが電磁石として機能し、コイル62に対して所定の位置に配置された回転子63が回転を始める。これにより、回転子63に一体に取り付けられたシャフト64が、シャフト64の軸心を回転の中心として回転し、シャフト64の端部に取り付けられたポンプ本体65に動力を伝達する。
【0040】
つぎに、このドレンポンプ6の組み立て方法について、詳細に説明する。図7〜図13は、絶縁フィルム60の巻き付け方法を説明するための図である。
【0041】
まず、作業者は、コイル62の中空部62a内に、芯材61cを挿入する。このとき、芯材61cの周面に、予め絶縁フィルム60の第1の巻き付け部W1を巻き付けておく。
【0042】
図7は、絶縁フィルム60を折り曲げる前の状態の斜視図である。具体的には、作業者が、第1の巻き付け部W1の前面部60aと上面部60bとの境界を示す折り曲げ線L1、上面部60bと背面部60cとの境界を示す折り曲げ線L2、背面部60cと底面部60dとの境界を示す折り曲げ線L3をそれぞれ折り曲げる。図8は、芯材61cの周面を一周するように第1の巻き付け部W1を折り曲げた状態の斜視図である。作業者は、絶縁フィルム60の第1の巻き付け部W1を、図8のように折り曲げて、ステータ本体61aから分離された芯材61cを、略環状に折り曲げられた第1の巻き付け部W1内に挿入する。図9は、折り曲げた絶縁フィルム60に芯材61cを挿入した状態の斜視図である。
【0043】
つぎに、作業者は、第1の巻き付け部W1が周面に巻き付けられた芯材61cをコイル62の中空部62aに挿入する。このとき、作業者は、絶縁フィルム60の前面部60aがコイル62の介装部62bと対向するように、芯材61cを中空部62aに挿入する。これにより、絶縁フィルム60の前面部60aは、介装部62bと芯材61cとの間に位置することになる。図10は、絶縁フィルム60が巻き付けられた芯材61cをコイル62の中空部62aに挿入する状態の斜視図である。図10に示されるように、第2の巻き付け部W2は未だ折り曲げられていないので、作業者は、芯材61cをスムーズに中空部62a内へ挿入することができる。図11は、絶縁フィルム60が巻き付けられた芯材61cをコイル62の中空部62aに装着した状態の斜視図である。図11に示されるように、絶縁フィルム60が巻き付けられた芯材61cがコイル62の中空部62aに挿入されると、芯材61cの両端部はコイル62の中空部62aから突出する。そして、芯材61cに巻き付けられた絶縁フィルム60のうち、第2の巻き付け部W2もまた、コイル62の中空部62aから突出している。
【0044】
つぎに、作業者は、コイル62の中空部62aから突出した絶縁フィルム60、すなわち、第2の巻き付け部W2をコイル62の外側、つまり介装部62bに巻き付ける。図12は、絶縁フィルム60が巻き付けられた芯材61cをコイル62の中空部62aに装着した状態で、コイル62の表面に第2の巻き付け部W2を巻き付ける状態の斜視図である。作業者は、図12に示されるように、第2の巻き付け部W2の第1側面部60eおよび第2の巻き付け部W2の第2側面部60fを、ボビン62a1の突出片部bo2に接するように折り曲げる。具体的には、作業者は、それぞれが突出片部bo2に接するように、第1側面部60eを折り曲げ線L4に沿って折り曲げ、第2側面部60fを折り曲げ線L5に沿って折り曲げる。作業者は、第1側面部60eおよび第2側面部60fを、それぞれ折り曲げ線L4および折り曲げ線L5に沿って折り曲げる際に、前面部60aに対して上面部60bを折り曲げ線L1に沿って折り曲げた方向と逆の向きに折り曲げる。
【0045】
さらに、作業者は、図12の状態から、第2の巻き付け部W2の巻装部60gがコイル62の充填材62a3に接するように、第2の巻き付け部W2の巻装部60gを折り曲げ線L6に沿って折り曲げる(図13参照)。このように、第1の巻き付け部W1、第2の巻き付け部W2が所定の形状に折り曲げられると、それぞれ、横断面が四角い筒状体になる。そして、第1の巻き付け部W1によって得られた筒状体の軸心方向と、第2の巻き付け部W2によって得られた筒状体の軸心方向とは直交する。つまり、絶縁フィルム60の第1の巻き付け部W1および第2の巻き付け部W2は、前面部60aを挟んで、互いに巻き付け対象および巻き付け方向が異なる部分へ巻き付けられる。
【0046】
つぎに、作業者は、ステータ本体61aに、芯材61cが内部に挿入され、かつ、絶縁フィルム60が巻き付けられたコイル62を装着する。図14は、絶縁フィルム60が巻き付けられたコイル62および芯材61cを、ステータ本体61aに装着する状態を説明する図である。図14に示されるように、作業者は、ステータ本体61aに形成されたコイル固定部61a1に、コイル62、芯材61cおよび絶縁フィルム60を、第2の巻き付け部W2が巻き付けられた側をステータ本体61aに向けて組み入れる(図15参照)。
【0047】
最後に、作業者は、ステータ本体61aに形成された貫通孔61a2に回転子63、回転子63に固定されたシャフト64およびシャフト64に固定されたポンプ本体65を挿入し、貫通孔61a2内で回転子63が回転可能に組み入れる。
【0048】
以上の実施の形態によれば、絶縁フィルム60が、コイル62と芯材61cとの間を絶縁するように設けられている。つまり、コイル62に流れる電流が漏れ出した場合に導体となり得る芯材61cの周面と、コイル62の中空部62aの内周面との間に絶縁フィルム60が挟み込まれる。したがって、コイル62の構造や芯材61cの構造に大きな変更を加えなくても、コイル62と芯材61cとの間の絶縁性を向上させることができる。
【0049】
また、絶縁フィルム60が、ステータ本体61aとコイル62との間を絶縁するように、コイル62の表面であって、ステータ本体61aと対向する面に巻き付けられているので、コイル62とステータ本体61aとの間の絶縁性をも向上させることができる。
【0050】
また、絶縁フィルム60として、所定の形状を呈した1枚のフィルムを用いているので、絶縁フィルム60の管理や、巻き付け作業が容易である。
【0051】
また、平面視で、絶縁フィルム60が、その第1の巻き付け部W1と第2の巻き付け部W2とが直交するような形状を呈しているので、巻き付け方向が異なる部分を1枚の絶縁フィルム60で絶縁することができる。
【0052】
また、芯材61cが、ステータ本体61aに対して分離可能に設けられるので、コイル62の導線をステータ61の一部に巻き付ける作業を、ステータ本体61aから離れたところで行うことができ、モータの組み立て作業が容易になる。
【0053】
また、絶縁フィルム60の厚さを、コイル62のボビン62a1の厚さの2倍以上にすることで、絶縁性を従来の2倍以上にすることもできる。
【0054】
また、本実施の形態のモータMをドレンポンプ6に備えることで、ドレン水に電流が漏れ出すのを防ぐことができる。
【0055】
なお、上記実施の形態では、所定の形状の1枚の絶縁フィルム60を用いて、コイル62と芯材61cとの間およびステータ61とコイル62との間を絶縁する形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の絶縁フィルムを用いて、当該位置を絶縁する形態であってもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、コイル62と芯材61cとの間に加えてステータ本体61aとコイル62との間をも絶縁する形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ステータ本体61aとコイル62の間を絶縁する絶縁フィルムは省略してもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、絶縁フィルム60が平面視で略T字状を呈している形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図16(a)および図16(b)は、絶縁フィルムの形状の他の例を説明するための展開図である。たとえば、図16(a)に示されるように、絶縁フィルム60が平面視で略十字状を呈している形態であってもよい。具体的には、前面部60aの四辺から、上面部60b、第1側面部60e、第2側面部60f、底面部60dを延出させる。また、図16(b)に示されるように、絶縁フィルム60が平面視で略L字状を呈している形態であってもよい。具体的には、前面部60aの隣り合う2辺から、上面部60b、第2側面部60fを延出させる。すなわち、第1の巻き付け部W1の前面部60aからの延出方向と第2の巻き付け部W2の前面部60aからの延出方向とが直交するように設けられていれば、巻き付け方向が異なる場合にも、1枚のフィルムで対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】空気調和装置の室内機を概略的に説明するための断面図である。
【図2】ドレンポンプを説明するための斜視図である。
【図3】ドレンポンプの展開図である。
【図4】図3のIV−IV位置におけるドレンポンプの断面の一部である。
【図5】図3のV−V位置におけるドレンポンプの断面の一部である。
【図6】絶縁フィルムの平面図である。
【図7】絶縁フィルムの巻き付け方法を説明するための図であり、絶縁フィルムを折り曲げる前の状態の斜視図である。
【図8】絶縁フィルムの巻き付け方法を説明するための図であり、芯材の表面を一周するように絶縁フィルムを折り曲げた状態の斜視図である。
【図9】絶縁フィルムの巻き付け方法を説明するための図であり、折り曲げた絶縁フィルムに芯材を挿入した状態の斜視図である。
【図10】絶縁フィルムの巻き付け方法を説明するための図であり、絶縁フィルムが巻き付けられた芯材をコイルの中空部に挿入する状態の斜視図である。
【図11】絶縁フィルムの巻き付け方法を説明するための図であり、絶縁フィルムが巻き付けられた芯材をコイルの中空部に装着した状態の斜視図である。
【図12】絶縁フィルムの巻き付け方法を説明するための図であり、絶縁フィルムが巻き付けられた芯材をコイルの中空部に装着した状態で、コイルの表面に絶縁フィルムを巻き付ける状態の斜視図である。
【図13】絶縁フィルムの巻き付け方法を説明するための図であり、絶縁フィルムが巻き付けられた芯材をコイルの中空部に装着した状態で、コイルの表面に絶縁フィルムを巻き付ける状態の斜視図である。
【図14】絶縁フィルムが巻き付けられたコイルおよび芯材をステータ本体に装着する状態を説明する斜視図である。
【図15】絶縁フィルムが巻き付けられたコイルおよび芯材をステータ本体に装着した状態を説明する斜視図である。
【図16】絶縁フィルムの形状の他の例を説明するための展開図であり、(a)は略十字状を呈した絶縁フィルム、(b)は略L字状を呈した絶縁フィルムを示す。
【符号の説明】
【0059】
6 ドレンポンプ
60 絶縁フィルム
61 ステータ
61a ステータ本体
61c 芯材
62 コイル
62a1 ボビン
63 回転子
100 空気調和装置の室内機
M モータ
W1 第1の巻き付け部
W2 第2の巻き付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル(62)と、
磁性材料により形成された芯材(61c)を含むステータ(61)と、
該ステータ(61)によって前記コイル(62)と所定の距離を空けて配置され、前記コイル(62)に通電することで回転する回転子(63)とを有するモータであって、
所定の形状を呈した1枚のフィルムからなる絶縁フィルム(60)が、前記コイル(62)と該コイル(62)に挿入された前記芯材(61c)との間に設けられ、かつ、前記コイル(62)の表面であって前記ステータ(61)と対向する面に折り曲げて巻き付けられることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記絶縁フィルム(60)は、前記芯材(61c)の周面に巻き付けられる第1の巻き付け部(W1)と、前記コイル(62)の表面であって、前記ステータ(61)と対向する面に巻き付けられる第2の巻き付け部(W2)とを含み、平面視で、前記第1の巻き付け部(W1)と前記第2の巻き付け部(W2)とが直交するような形状を呈している請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記ステータ(61)が、ステータ本体(61a)を含み、該ステータ本体(61a)によって、前記コイル(62)に前記芯材(61c)が挿入された状態で前記芯材(61c)の両端部が支持され、前記芯材(61c)は、前記ステータ本体(61a)に対して分離可能に設けられる請求項1または2記載のモータ。
【請求項4】
前記絶縁フィルム(60)の厚さが、前記コイル(62)のボビン(62a1)の厚さの2倍以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータ(M)と、
該モータ(M)の駆動力を受けて駆動するポンプ本体(65)とを備えたドレンポンプ。
【請求項6】
ドレンパン(5)と、
該ドレンパン(5)内に溜まった水を排水する請求項5記載のドレンポンプ(6)とを備えた空気調和装置の室内機。
【請求項7】
請求項6記載の室内機(100)を備えた空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−268260(P2009−268260A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114878(P2008−114878)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】