モータ製造方法、モータ
【課題】平角導線を用いた分布巻きコイルを軸心方向から容易にスロット内に挿入できるモータを提供すること。
【解決手段】平角導線20を三角形状に巻回する第1工程と、三角形状に巻回されたコイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、L字形状の平角導線20を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有し、第2工程では、三角形状の最長辺部T1を押圧成形する第1回転治具21の先端当接部21aが、最長辺部T1の同じ位置である当接点T1aに当接していること、三角形状の最短辺部T3の折り曲げ部位と、最短辺部T3を押圧成形する第2回転治具23の回転中心が、同じ位置P1にあること、を特徴とする。
【解決手段】平角導線20を三角形状に巻回する第1工程と、三角形状に巻回されたコイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、L字形状の平角導線20を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有し、第2工程では、三角形状の最長辺部T1を押圧成形する第1回転治具21の先端当接部21aが、最長辺部T1の同じ位置である当接点T1aに当接していること、三角形状の最短辺部T3の折り曲げ部位と、最短辺部T3を押圧成形する第2回転治具23の回転中心が、同じ位置P1にあること、を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平角導線を用いた分布巻きコイルとステータコアとを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、断面が約1mm×約10mmの平角導線を用いた分布巻きコイルを、ステータコアのスロット内に挿入して組み付けることは、丸細線と違って平角導線が強い剛性を持ち、変形しにくいため、困難であった。その問題を解決するために、色々な提案がなされている。
特許文献1においては、ティースの周りに形成されたスロット内に、導線を巻回したコイルを、径方向の内側から外側に向かって挿入するときに、挿入しやすくするため、導線の幅やコイル傾斜角度を工夫することが提案されている。
一方、特許文献2においては、スロット内に挿入される導線を重ね巻きしてコイルを構成し、それを挿入治具に装着し、挿入治具をステータコア内に配置し、挿入治具からステータコアのスロットに、コイルを挿入する方法が開示されている。
また、特許文献3には、分布巻きコイルにおいて、挿入する先端部を軸心側に折り曲げることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-051489号公報
【特許文献2】特開2008-167567号公報
【特許文献3】国際公開WO 92/01327
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のステータコアへコイルを挿入する方法には、次のような問題があった。
すなわち、特許文献1のように、各ティースに対して、各別にコイルを挿入する方法では、ティース数に応じた回数の挿入を行わなければならず、挿入に時間がかかる問題があった。また、挿入装置が複雑化し、大型化する問題があった。
また、特許文献2のように、挿入治具を用いた場合には、挿入はうまくいったとしても、挿入治具内で弾性変形されていたコイルをスロット内に挿入した後で、コイルがスプリングバックにより変形し、導線の一部がスロットから外に飛び出す問題があった。
【0005】
特許文献1、2の技術では、いずれも、ティース・スロットに対して、径方向の内側から外側に向かって、コイルを挿入するものであるから、上記問題が発生するのであり、コイルを軸心方向からスロット内に挿入できれば、上記問題を解決できるということに、本出願人は思い至った。
しかし、集中巻きのコイルならば、挿入する先端部を軸心側に折り曲げれば、残りの部分をスロット内に挿入することは容易であるが、分布巻きコイルでは、折り曲げる部分の形状が複雑であり、折り曲げること自体が困難であるという問題があった。
集中巻きコイルで、挿入する先端部を折り曲げる技術として、特許文献3の技術が開示されているが、特許文献3の技術では、折り曲げ箇所の異なる複数の導体を、個別に製造して、組み合わせていくため、製造に時間がかかり、コストが高い問題があった。
【0006】
本出願人らは、上記問題点を解決するために、特願2010-095759号を出願して、平角導線を巻いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法において、コイル導線を三角形状に巻回する第1工程と、三角形状に巻回された前記コイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、L字形状の前記コイル導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有するモータ製造方法を提案した。
本出願人らは、特願2010-095759号出願後も、引き続き開発を行い、第2工程において、三角形状に巻回されたコイル導線をL字形状に折り曲げる精度が、後工程(特に第3工程)の効率化に大きな影響を与えることを発見した。そのため、第2工程において、高い精度でL字形状に折り曲げる方法が必要とされていた。
また、第2工程において、成形するための治具と平角導線の間に滑りが生じると、平角導線に延びが発生したり、表面の絶縁被膜が損傷を受ける恐れがあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、平角導線を用いた分布巻
きコイルを軸心方向から容易にスロット内に挿入できる低コストのモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のモータ、及びモータ製造方法は、次のような構成を有している。
(1)平角導線を巻いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法において、コイル導線を三角形状に巻回する第1工程と、三角形状に巻回された前記コイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、L字形状の前記コイル導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有し、第2工程では工程の期間中、三角形状の最長辺部を押圧成形する第1回転治具の先端が、最長辺部の同じ位置に当接していること、三角形状の最短辺部の折り曲げ部位と、前記最短辺部を押圧成形する第2回転治具の回転中心が、同じ位置にあること、を特徴とする。
【0009】
(2)(1)に記載するモータ製造方法において、前記第2工程では、第3回転治具が、前記最長辺部の中間辺側に配置され、前記コイルの一端のコイルエンド部を、同心円状の半円に形成すること、を有することを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載するモータ製造方法において、前記分布巻きコイルを、前記ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する第4工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
(4)(1)乃至(3)に記載するいずれか1つのモータ製造方法において、最長辺部と中間辺部のなす内周円の曲率半径、中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径、及び中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径が、第2工程の前後で変化しないこと、中間辺部の長さが、第2工程の前後で変化しないこと、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)に記載するいずれか1つのモータ製造方法により製造されるモータであって、前記コイルの一端のコイルエンド部が、前記ステータコアのスロット内導線に対して、前記ロータ側に折り曲げられていること、前記一端のコイルエンド部が、前記ステータコアの内周面より前記ロータの軸心側に位置すること、前記一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明に係るモータ、及びモータ製造方法の作用及び効果について説明する。
(1)平角導線を巻いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法において、コイル導線を三角形状に巻回する第1工程と、三角形状に巻回された前記コイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、L字形状の前記コイル導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有し、第2工程では工程の期間中、三角形状の最長辺部を押圧成形する第1回転治具の先端が、最長辺部の同じ位置に当接していること、三角形状の最短辺部の折り曲げ部位と、前記最短辺部を押圧成形する第2回転治具の回転中心が、同じ位置にあること、を特徴とするので、第1回転治具・第2回転治具と平角導線との間で滑りが生じることがなく、平角導線に延びが発生したり、表面の絶縁被膜が損傷を受ける恐れがない。また、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
【0012】
さらに、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータのスロットに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【0013】
(2)(1)に記載するモータ製造方法において、前記第2工程では、第3回転治具が、前記最長辺部の中間辺側に配置され、前記コイルの一端のコイルエンド部を、同心円状の半円に形成すること、を有することを特徴とするので、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
【0014】
(3)(1)または(2)に記載するモータ製造方法において、前記分布巻きコイルを、前記ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する第4工程と、を有することを特徴とするので、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータのスロットに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。
【0015】
(4)(1)乃至(3)に記載するいずれか1つのモータ製造方法において、最長辺部と中間辺部のなす内周円の曲率半径、中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径、及び中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径が、第2工程の前後で変化しないこと、中間辺部の長さが、第2工程の前後で変化しないこと、を特徴とするので、折り曲げ成形後のL字形状の各部寸法を高い精度で成形することができる。
【0016】
(5)本発明のモータは、(1)乃至(4)に記載するいずれか1つのモータ製造方法により製造されるモータであって、前記コイルの一端のコイルエンド部が、前記ステータコアのスロット内導線に対して、前記ロータ側に折り曲げられていること、前記一端のコイルエンド部が、前記ステータコアの内周面より前記ロータの軸心側に位置すること、前記一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、を特徴とするので、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータのスロットに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】基準ユニット11の斜視図である。
【図2】基準ユニット11の正面図である。
【図3】基準ユニット11の平面図である。
【図4】基準ユニット11の右側面図である。
【図5】基準ユニット11の製造工程のうち、巻取り工程を示す図である。
【図6】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程の後の平角導線20の形状を示す図である。
【図7】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程の前の平角導線20の形状を示す図である。
【図8】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第1図である。
【図9】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第2図である。
【図10】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第3図である。
【図11】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第4図である。
【図12】基準ユニット11の製造工程のうち、拡張工程を示す第1図である。
【図13】基準ユニット11の製造工程のうち、拡張工程を示す第2図である。
【図14】基準ユニット11の製造工程のうち、拡張工程を示す第3図である。
【図15】基準ユニット11をステータコア13に挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図16】コイル籠12の全体を示す図である。
【図17】コイル籠12の全体を示す平面図である。
【図18】コイル籠12の正面図である。
【図19】基準ユニット11をステータコア13に挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図20】基準ユニット11をステータコア13に挿入する挿入工程を示す第2図である。
【図21】基準ユニット11をステータコア13に挿入する挿入工程を示す第3図である。
【図22】基準ユニット11をステータコア13に挿入する挿入工程を示す第4図である。
【図23】ロータ42をステータ10に挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図24】ロータ42をステータ10に挿入する挿入工程を示す第2図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態のモータ、及びモータ製造方法について図面を参照して説明する。
図1に、5本の平角導線を同時に成形した基準ユニット11の斜視図を示す。図2に、図1の基準ユニット11の正面図を示し、図3に図1を上から見た平面図を示し、図4に図1の右側面図を示す。
基準ユニット11は、スロット内に配置されるスロット内導線部SA、スロット内導線部SBを備える。
図1に示すように、スロット内導線部SAは、5本の平角導線が長辺面(フラットワイズ面)を接触させて重ね合わされたもので、第1スロット内導線部SA1、第2スロット
内導線部SA2、第3スロット内導線部SA3、第4スロット内導線部SA4、及び第5スロット内導線部SA5の集合体を示している。また、図4に示すように、スロット内導線部SBは、5本の平角導線が長辺面(フラットワイズ面)を接触させて重ね合わされた
もので、第1スロット内導線部SB1、第2スロット内導線部SB2、第3スロット内導線部SB3、第4スロット内導線部SB4、及び第5スロット内導線部SB5の集合体を示している。
【0019】
図1の上側に位置するコイルエンド部の中央には、上側同心円部Gが形成されている。図4に示すように、上側同心円部Gは、第2同心円部G2、第3同心円部G3、第4同心円部G4、及び第5同心円部G5の4本の平角導線の集合体である。第1同心円部が含まれていないのは、後で説明する傾斜部EA1が端子Mとして、外部に突出しているためである。
スロット内導線部SAの上端には、折り曲げ部IAが形成されている。平角導線は、折り曲げ部IAで、図2に示すように、上側同心円部Gの方向に折り曲げられている。上側同心円部Gとスロット内導線部SAとの間には、傾斜部EAが形成されている。折り曲げ部IAは、図3に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部IA1、IA2、IA3、IA4、IA5の集合体を示している。傾斜部EAは、図1、図4に示すように、5本の平角導線の傾斜部EA1、EA2、EA3、EA4、EA5の集合体を示している。
傾斜部EAにおいては、5本の平角導線が、図4に示すように、スロット内導線SAと同様に、径方向(図4の左右方向)に重ね合わされている。
【0020】
スロット内導線部SBの上端には、折り曲げ部IBが形成されている。平角導線は、折り曲げ部IBで、図2に示すように、上側同心円部Gの方向に折り曲げられている。上側同心円部Gとスロット内導線部SBとの間には、傾斜部EBが形成されている。折り曲げ部IBは、図3に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部IB1、IB2、IB3、IB4、IB5の集合体を示している。傾斜部EBは、図4に示すように、5本の平角導線の傾斜部EB1、EB2、EB3、EB4、EB5の集合体を示している。
傾斜部EBにおいては、5本の平角導線が、図4に示すように、スロット内導線SBと同様に、径方向(図4の左右方向)に重ね合わされている。
【0021】
図4に示すように、傾斜部EAの最内周部に位置するEA1の端子Mは、折り曲げられて外部に突出している。また、傾斜部EBの最外周に位置するEB5の端子Nは、折り曲げられて外部に突出している。
スロット内導線部SAの下端には、折り曲げ部JAが形成されている。平角導線は、折り曲げ部JAで、図3に示すように、90度内周側(図の左方向)に折り曲げられている。折り曲げ部JAは、図4示すように、5本の平角導線の折り曲げ部JA1、JA2、JA3、JA4、JA5の集合体を示している。
また、スロット内導線部SBの下端には、折り曲げ部JBが形成されている。平角導線は、折り曲げ部JBで、図3に示すように、90度内周側(図の左方向)に折り曲げられ
ている。図4に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部JB1、JB2、JB3、JB4、JB5の集合体を示している。
【0022】
内周側先端部には、下側同心円部Hが形成されている。図2に示すように、折り曲げ部JAと下側同心円部Hとの間には、水平部FAが形成されている。折り曲げ部JBと下側同心円部Hとの間には、水平部FBが形成されている。
下側同心円部Hは、図4に示すように、5本の平角導線の下側同心円部H1、H2、H3、H4、H5の集合体を示している。
水平部FAは、図2に示すように、5本の平角導線の水平部FA1、FA2、FA3、FA4、FA5の集合体を示している。ここで、水平部FAにおいては、5本の平角導線の水平部は、図2に示すように、軸心方向(図2の上下方向)に重ね合わされている。
また、水平部FBは、図2に示すように、5本の平角導線の水平部FB1、FB2、FB3、FB4、FB5の集合体を示している。ここで、水平部FBにおいては、5本の平角導線の水平部は、図2に示すように、軸心方向(図2の上下方向)に重ね合わされている。
【0023】
次に、基準ユニット11の製造方法を説明する。基準ユニット11の製造方法は、巻取り工程、折り曲げ工程、及び拡張工程を有している。
図5に、基準ユニット11の製造工程のうち、巻取り工程を示す。
断面が平べったい三角形状の金型19が、中心軸19aを中心に回転可能に設けられている。
金型19に平角導線20の先端20aを固定し、金型19を、中心軸19aを中心に矢印Pで示す方向に回転させ、平角導線20を5周金型19に巻きつける。このとき、平角導線20は、フラットワイズ方向に巻き重ねられる。すなわち、断面が約1.8mm×約3.3mmの平角導線の約3.3mmの長辺を重ね合わせて巻き重ねている。
【0024】
次に、折り曲げ工程について説明する。
図6に基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程の後の平角導線20の形状を示す。図7に基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程の前の平角導線20の形状を示す。
図7において、三角形状に巻かれた平角導線20は、最長辺部T1、中間辺部T2、及び最短辺部T3を備えている。ここで、最長辺部T1と中間辺部T2のなす内周円T1aの曲率半径は、r3である。また、中間辺部T2と最短辺部T3のなす内周円T2aの曲率半径は、r2である。また、最短辺部T3と最長辺部T1のなす内周円T3aの曲率半径は、r1である。
中間辺部T2の長さ(直線部分の長さ)は、l1である。また、中間辺部T2と最長辺部T1とのなす外周円の半径は、l2である。
【0025】
後で説明する折り曲げ工程の後では、図6に示すように、L字形状に成形された平角導線20は、最長辺部T1が、長辺部T4と短辺部T5に分離されており、さらに中間辺部T2、及び最短辺部T3を備えている。ここで、長辺部T4と中間辺部T2のなす内周円T1aの曲率半径は、R3である。また、中間辺部T2と最短辺部T3のなす内周円T2aの曲率半径は、R2である。また、最短辺部T3と短辺部T5のなす内周円T3aの曲率半径は、R1である。
中間辺部T2の長さ(直線部分の長さ)は、L1である。また、中間辺部T2と長辺部T4とのなす外周円の半径は、L2である
ここで、本実施例では、L1=l1、L2=l2、R1=r1、R2=r2、R3=r3としている。
【0026】
次に、図8〜図11により、折り曲げ工程を説明する。図8〜図11は、順次、折り曲げ工程の時系列的な変化を示している。
巻取り工程で、5周分巻き取った平角導線20を金型19から外して、図8に示す位置にセットする。この状態で、三角形状の平角導線20の中間辺部T2が荷重受け治具24の一対の当接部24a、24bの先端面に当接している。加重受け治具24は、ベースに固定されている。三角形状の平角導線20の最短辺T3の内周面には、形状整合治具28が配置されている。形状整合治具28は、図示しないバネによりベースに取付けられており、平角導線20の変形に合わせて移動する。また、折り曲げ工程終了後は、平角導線20を搬出すると、バネにより元の位置に復帰する。
【0027】
最短辺部T3に対向して、第2回転治具22が配置されている。第2回転治具22は、従動歯車26に固設され、最短辺部T3の内周辺に位置する点P2(図中×印で示す。)を中心として回動可能に保持されている。ここで、三角形状の最短辺部T3の折り曲げ部位も、点P2である。従動歯車26は、駆動歯車122とギア連結している。第2回転治具22の最短辺部T3と対向する面は、傾斜の異なる2つの当接面22a、22bを備えている。
【0028】
また、最長辺部T1に対向して、第1回転治具21が配置されている。第1回転治具21は、従動歯車25に固設され、最長辺部T3の内周辺に位置する点P1を中心として回動可能に保持されている。従動歯車25は、駆動歯車121とギア連結している。第1回転歯車21の最長辺部T1と対向する部分は、突出した形状である当接部21aを備えている。
また、最長辺部T1と中間辺部T2のなす外周面の、最長辺部T1側に対向して、第3回転治具23が配置されている。第3回転治具23は、従動歯車27に固設され、中間辺部T2の外周辺に位置する点P3(図示せず。)を中心として回動可能に保持されている。従動歯車27は、駆動歯車123とギア連結している。第3回転歯車23の最長辺部T1と対向する面は、傾斜の異なる2つの当接面23a、23bを備えている。
【0029】
次に、駆動歯車121、122、123が、いずれも時計回りに適宜回転される。駆動歯車121、122、123には、各別にモータが接続しており、各々が個別に制御可能である。
始めに、第1回転治具21の当接部21aが、最長辺部T1の当接点T1bに当接する。それと同時に、第2回転治具22の当接面22bが最短辺部T3の外周先端付近に当接する。第1回転治具21と第2回転治具22の協働作業により、最長辺部T1を当接部21aで折り曲げられ始める。折り曲げられた途中の状態を図9に示す。
ここで、最長辺部T1の当接点T1bは、点P1を中心にして回転移動するので、当接点T1bにおいて、常に第1回転治具21の当接部21aと当接している。そのため、最長辺部T1と第1回転治具21との間で滑りが発生することなく、平角導線20の絶縁被膜が損傷されることがない。
【0030】
次に、第1回転治具21の当接部21aが、最長辺部T1を中間辺部T2に全面に渡って押し付けた状態を図10に示す。この状態では、最短辺部T3は、折り曲げの途中である。図10の状態で、第1回転治具21は、回転を停止する。次に、第1回転治具21の側面21bを基準として、第2回転治具22が、最短辺部T3をさらに折り曲げて、図11に示すように、最短辺部T3が、側面21bに全面に渡って押し付けられた状態となる。これにより、最長辺部T1が、直交する関係にある長辺部T4と短辺部T5が形成される。
同時に、第3回転治具23の当接面が、最長辺部T1の中間辺部となす外周円の外側に当接して、同心円状の半円の形状を整える。
【0031】
以上、詳細に説明したように、折り曲げ工程では、三角形状の最長辺部T1を押圧成形する第1回転治具21の先端当接部21aが、最長辺部T1の同じ位置である当接点T1bに、折り曲げ工程中、常に当接していること、三角形状の最短辺部T3の折り曲げ部位P2(図中×印で示す。)と、最短辺部T3を押圧成形する第2回転治具22の回転中心が、同じ位置P2にあること、を特徴とするので、第1回転治具21・第2回転治具22と平角導線20との間で滑りが生じることがなく、平角導線20に延びが発生したり、表面の絶縁被膜が損傷を受ける恐れがない。また、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
【0032】
また、折り曲げ工程では、第3回転治具23が、最長辺部T1の中間辺部T2側に配置され、平角導線20の一端のコイルエンド部を、同心円状の半円に形成すること、を有することを特徴とするので、正確な半円形状を成形することができると共に、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
ここで、同心円状の半円は、コイルエンド部において、他の平角導線の同心円状の半円と重なり合わされる。そのとき、正確に半円に成形されていることにより、密に集積することができ、コイルエンドをコンパクトにすることができる。
【0033】
また、最長辺部T1と中間辺部T2のなす内周円T1aの曲率半径R3、中間辺部T2と最短辺部T3のなす内周円T2aの曲率半径R2、及び最長辺部T1と最短辺部T3のなす内周円T3aの曲率半径R1が、第2工程の前後で変化しないこと、中間辺部の長さL1が、第2工程の前後で変化しないこと、を特徴とするので、折り曲げ成形後のL字形状の各部寸法を高い精度で成形することができる。
【0034】
次に、拡張工程を説明する。
図9に、基準ユニット11の製造工程のうち、拡張工程の第1図を示す。図13に、拡張工程の第2図を示す。図14に、図9の側面図を示す。
図9及び図14に示すように、上側同心円部G(5本の平角導線)を、一対のチャック爪33(33A、33B)が把持する。下側同心円部H(5本の平角導線)は、一対のガイド爪40(40A、40B)に固定される。スロット内導線部SA(5本の平角導線)は、一対のチャック爪32(32A、32B)に把持される。スロット内導線部SB(5本の平角導線)は、一対のチャック爪31(31A、31B)に把持される。
ここで、一対のチャック爪32(32A、32B)、及び一対のチャック爪31(31A、31B)は、中心軸34を中心に各別に回転可能に保持されている。ベース板36は、2本のガイド棒38の先端に固定されている。2本のガイド棒38は、固定された固定部
39に摺動可能に保持されている。固定部39の両側には、一対のエアシリンダ37の本体が固設されている。また、ベース板36には、一対のエアシリンダ37のロッド先端が連結されており、エアシリンダ37の駆動により、ガイド棒38及びベース板36は、固定部39に対して摺動する。ベース板36には、一対のリンク機構35A、35Bが付設され、リンク機構35Aは、チャック爪32のベース板に接続され、リンク機構35Bは、チャック爪31のベース板に接続している。
【0035】
この構成により、図9に示すように、平角導線20を各々把持した状態で、エアシリンダ37を駆動する。これにより、ベース板36が摺動して、図13の位置に来ると、一対のチャック爪32(32A、32B)は、スロット内導線部SAを把持したまま、図13において、時計回りに回転し、スロット内導線部SAを、上側同心円部G及び下側同心円部Hに対して、時計回りの所定の位置まで塑性変形させる。
同時に、一対のチャック爪31(31A、31B)は、スロット内導線部SBを把持したまま、図13において、反時計回りに回転し、スロット内導線部SBを、上側同心円部G及び下側同心円部Hに対して、反時計回りの所定の位置まで塑性変形させる。
次に、端子M及び端子Nを折り曲げて塑性変形させる。これにより、基準ユニット11が完成する。
【0036】
次に、製造された基準ユニットを複数重ね合わせる。
図15に、6個の基準ユニット11であるU相第1基準ユニットU1、U相の第2基準ユニットU2、V相の第1基準ユニットV1、V相の第2基準ユニットV2、W相の第1基準ユニットW1、W相の第2基準ユニットW2を重ね合わせた状態を斜視図で示す。第1基準ユニットと第2基準ユニットのスロット内導線部が1つのティースの両側に挿入されるため、6個の基準ユニット11が1つの単位となる。
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の傾斜部U1EB、U2EB、V1EB、V2EB、W1EB、W2EBにおいては、5本の平角導線(EB1〜EB5)が、ステータコア13(ロータ)の径方向に重ね合わされている。
【0037】
U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EBは、U相の第1基準ユニットの傾斜部U1EBに対して、軸心方向で下側(ステータコア13の方向)に重ね合わされている。同様に、V相第1基準ユニットV1の傾斜部V1EBは、U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EBの軸心方向の下側に重ね合わされている。
すなわち、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、傾斜部U1EB、U2EB、V1EB、V2EB、W1EB、W2EBは、時計回りで、順次直前の傾斜部EBの軸心方向で下側に位置して重ね合わされている。
【0038】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の傾斜部U1EA、U2EA、V1EA、V2EA、W1EA、W2EAにおいては、5本の平角導線(EA1〜EA5)が、ステータコア13(ロータ)の径方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EAは、U相の第1基準ユニットの傾斜部U1EAに対して、軸心方向で4上側(ステータコア13と反対方向)に重ね合わされている。同様に、V相第1基準ユニットV1の傾斜部V1EAは、な相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EAの軸心方向の上側に重ね合わされている。
すなわち、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、傾斜部U1EA、U2EA、V1EA、V2EA、W1EA、W2EAは、時計回りで、順次直前の傾斜部EBの軸心方向で上側に位置して重ね合わされている。
【0039】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の水平部UFB1、U2FB、V1
FB、V2FB、W1FB、W2FBにおいては、5本の平角導線(FB1〜FB5)が、ステータコア13(ロータ)の軸心方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FBは、U相の第1基準ユニットU1の水平部U1FBに対して、径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。V相の基準ユニットV1の水平部V1FBは、U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FBに対して、径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。
すなわち、図15に示すように、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、水平部U1B1、U2FB、V1FB、V2FB、W1FB、W2FBは、時計回りで、順次直前の水平部FBの径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。
【0040】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAにおいては、5本の平角導線(FA1〜FA5)が、ステータコア13(ロータ)の軸心方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FAは、U相の第1基準ユニットU1の水平部U1FAに対して、径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。V相の基準ユニットV1の水平部V1FAは、U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FAに対して、径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。
すなわち、図15に示すように、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAは、時計回りで、順次直前の水平部FBの径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。
【0041】
上側同心円部U1G、U2G、V1G、V2G、W1G、W2Gは、径方向に順次整列している。
下側同心円部U1H、U2H、V1H、V2H、W1H、W2Hは、径方向に順次整列している。
【0042】
基準ユニット11を24個重ね合わせると、半円形状となる。これらを2組製造して、合体させることにより、48個の基準ユニット11を重ね合わせた円形状のコイル籠12が完成する。
基準ユニット11が、48個重ね合わされたコイル籠12の構成を、図16に斜視図で示す。コイル籠12の平面図(図16を上から見た図)を図17に示す。コイル籠12の正面図を図18に示す。本実施の形態のモータのステータのステータコアは、48個のスロット、48個のティースを有している。
各基準ユニット11は、2個のスロット内導線部SA、SBを有しており、スロット内導線部SAとスロット内導線部SBとは、図4に示すように、径方向(図4の上下方向)で5本の平角導線の厚み分ずれて位置している。
【0043】
図17に示すように、U相の第1基準ユニットU1、U相の第2基準ユニットU2、V相の第1基準ユニットV1、V相の第2基準ユニットV2、W相の第1基準ユニットW1、W相の第2基準ユニットW2が順次重ね合わされている。続いて、U相の2つの基準ユニット、V相の2つの基準ユニット、W相の2つの基準ユニットが順次重ね合わされて、最後は、U相の第15基準ユニットU15、U相の第16基準ユニット、V相の第15基準ユニットV15、V相の第16基準ユニットV16、W相の第15基準ユニットW15、W相の第16基準ユニットW16で終わる。U、V、Wの3相で各16個の基準ユニット11を有するため、合計48個の基準ユニット11を有している。
1つのスロット内には、1組5本の平角導線が、2組(計10本)挿入されている。
【0044】
次に、コイル籠12をステータコア13に挿入する方法について説明する。図19に、コイル籠12の下側部をステータコア13に半分ほど挿入した状態を示す。図19では、コイル籠12の全体を記載すると、わかりにくくなるため、コイル籠12の一部である6組の基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2(図7に示すものと同じ。)のみを記載している。ここでは、コイル籠12の一部である6組の基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の挿入作用について説明するが、コイル籠12全体もここでの説明と同じ挿入作用である。また、インシュレータの記載を省略しているが、コイル籠12を挿入する前に、ステータコア13の各スロット部Sにインシュレータを装着しておくと良い。
図19に示すように、下側同心円部U1H、U2H、V1H、V2H、W1H、W2H、水平部UFB1、U2FB、V1FB、V2FB、W1FB、W2FB、及び水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAは、ステータコア13のティース13a先端の内周面13bよりも、ステータ13の中心線側に位置している。
【0045】
したがって、スロット内導線部U1SB、U2SB、V1SB、V2SB、W1SB、W2SB、及びスロット内U1SA、U2SA、V1SA、V2SA、W1SA、W2SAを、図19の上側からステータ13の中心軸の軸心方向に下向きに、第1スロットS1から第12スロットS12に挿入するときに、下側同心円部H、水平部FB、及び水平部FAがステータコア13と干渉することがないため、コイル籠12をステータコア13のスロットSに挿入することができる。
ここで、例えば、第1スロットS1の外周側(奥側)に、U相の第1基準ユニットU1の5本のスロット内導線部U1SB(SB1〜SB5)が挿入される。もう一方のスロット内導線U1SA(SA1〜SA5)は、第7スロットS7の内周側(手前側)に挿入される。
【0046】
第1スロットS1の内周側には、図示しないU相の第16基準ユニットU16の5本のスロット内導線部U16SB(SB1〜SB5)が挿入される。これにより、第1スロットには、スロット内導線部U1SAとスロット内導線部U16SBの計10本の平角導線が挿入される。
同様に、第7スロットS7の外周側には、図示しないU相の第3基準ユニットU3の5本のスロット内導線部U3SB(SB1〜SB5)が挿入される。これにより、第7スロットには、スロット内導線部U1SA(SA1〜SA5)と、スロット内導線部U3SB(SB1〜SB5)の計10本の平角導線が挿入される。
【0047】
図20に、コイル籠12がステータコア13に対して、所定の位置まで挿入された状態を示す。図21に、図20を、ステータコア13を上方向から軸心に沿って見た平面図を示す。図22に、図21の正面図を示す。
図21においては、端子Nは、端子Mの下側に位置しており、見えない。図21で、端子U1Nが見えているのは、U16Mを省略して記載しているからである。
図22に示すように、下側同心円部H、水平部FB、及び水平部FAの位置が、ステータコア13の端面から距離を設けてあるのは、ロータとの電磁気的な影響を回避するためである。
図20には、コイル籠12の一部のみを示しているが、図20の状態まで、コイル籠12が挿入されることにより、ステータコア13へのコイル籠12の組立が完了する。その後、スロットS内にスロット内導線部SA、SBが挿入されている状態における空間部に、伝熱性能に優れた樹脂をモールドする。また、端子M、NをU相、V相、W相毎に順次バスバーで接続する。これにより、ステータ10が完成する。
【0048】
次に、完成したステータ10にモータのロータ42を組み付ける方法を説明する。
図23に、ステータ10の中央断面図を示す。ステータコア13にコイル籠12が組み込まれている。この状態で、ステータ10の図23の上側では、ステータコア13のティース13aの内周面13bより内側には、コイル籠12は、存在しない。一方、ステータ10の図23の下側では、コイル籠12の折り曲げ部である下側同心円部H、水平部FA、及び水平部FBが、ステータコア13のティース13aの内周面13bより内側に位置している。
一方、モータのロータ42は、中心軸41の外周にロータ部43が形成されている。
ロータ42は、ステータ10の下側から挿入することはできないが、ステータの上側から軸心に沿って挿入することが可能である。ロータ42をステータ10に挿入した状態を図24に示す。
図24に示すように、ロータ42の中心軸41は、コイル籠12の下側同心円部Hの内周面で形成される中心孔から外に突出している。
【0049】
以上詳細に説明したように、本実施例のモータ製造方法によれば、(1)平角導線20を巻いた分布巻きコイルであるコイル籠12とステータコア13を備えるステータ10と、中心軸41を備えるロータ42とを有するモータのモータ製造方法において、平角導線20を三角形状に巻回する第1工程と、三角形状に巻回されたコイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、L字形状の平角導線20を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有し、第2工程では工程の期間中、三角形状の最長辺部T1を押圧成形する第1回転治具21の先端当接部21aが、最長辺部T1の同じ位置である当接点T1aに当接していること、三角形状の最短辺部T3の折り曲げ部位と、最短辺部T3を押圧成形する第2回転治具23の回転中心が、同じ位置P1にあること、を特徴とするので、第1回転治具21・第2回転治具22と平角導線20との間で滑りが生じることがなく、平角導線20に延びが発生したり、表面の絶縁被膜が損傷を受ける恐れがない。また、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
【0050】
さらに、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータのスロットに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【0051】
また、折り曲げ工程では、第3回転治具23が、最長辺部T1の中間辺部T2側に配置され、平角導線20の一端のコイルエンド部を、同心円状の半円に形成すること、を有することを特徴とするので、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
また、分布巻きコイルであるコイル籠12を、ステータコア13のスロットSに対して、軸心方向から挿入する第4工程と、を有することを特徴とするので、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータコア13のスロットSに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。
【0052】
また、最長辺部T1と中間辺部T2のなす内周円T1aの曲率半径R1、中間辺部T2と最短辺部T3のなす内周円T2aの曲率半径R2、及び中間辺部T2と最短辺部T3のなす内周円T3aの曲率半径R3が、折り曲げ工程の前後で変化しないこと、中間辺部T2の長さL1が、折り曲げ工程の前後で変化しないこと、を特徴とするので、折り曲げ成形後のL字形状の各部寸法を高い精度で成形することができる。
【0053】
また、本実施例のモータは、コイル籠12の一端のコイルエンド部が、ステータコア13のスロット内導線に対して、ロータ側に折り曲げられていること、一端のコイルエンド部が、ステータコア13の内周面よりロータ42の軸心側に位置すること、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の平角導線20をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、を特徴とするので、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータコア13のスロットSに対して、軸心側からコイル籠12を挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイル籠12を軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線20をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【0054】
なお、本発明のモータ、及びモータ製造方法は、上記実施例に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、本実施例では、スロットSが48個あるモータについて説明したが、スロットSの数は変更しても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 ステータ
11 基準ユニット
12 コイル籠
13 ステータコア
21 第1回転治具
21a 当接部
22 第2回転治具
23 第3回転治具
24 荷重受け治具
41 中心軸
42 ロータ
43 ロータ部
Un U相の第n基準ユニット
Vn V相の第n基準ユニット
Wn W相の第n基準ユニット
G 上側同心円部
H 下側同心円部
SA、SB スロット内導線部
EA、EB 傾斜部
FA、FB 水平部
JA、JB 折り曲げ部
T1 最長辺部
T2 中間辺部
T3 最短辺部
T4 長辺部
T5 短辺部
【技術分野】
【0001】
本発明は、平角導線を用いた分布巻きコイルとステータコアとを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、断面が約1mm×約10mmの平角導線を用いた分布巻きコイルを、ステータコアのスロット内に挿入して組み付けることは、丸細線と違って平角導線が強い剛性を持ち、変形しにくいため、困難であった。その問題を解決するために、色々な提案がなされている。
特許文献1においては、ティースの周りに形成されたスロット内に、導線を巻回したコイルを、径方向の内側から外側に向かって挿入するときに、挿入しやすくするため、導線の幅やコイル傾斜角度を工夫することが提案されている。
一方、特許文献2においては、スロット内に挿入される導線を重ね巻きしてコイルを構成し、それを挿入治具に装着し、挿入治具をステータコア内に配置し、挿入治具からステータコアのスロットに、コイルを挿入する方法が開示されている。
また、特許文献3には、分布巻きコイルにおいて、挿入する先端部を軸心側に折り曲げることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-051489号公報
【特許文献2】特開2008-167567号公報
【特許文献3】国際公開WO 92/01327
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のステータコアへコイルを挿入する方法には、次のような問題があった。
すなわち、特許文献1のように、各ティースに対して、各別にコイルを挿入する方法では、ティース数に応じた回数の挿入を行わなければならず、挿入に時間がかかる問題があった。また、挿入装置が複雑化し、大型化する問題があった。
また、特許文献2のように、挿入治具を用いた場合には、挿入はうまくいったとしても、挿入治具内で弾性変形されていたコイルをスロット内に挿入した後で、コイルがスプリングバックにより変形し、導線の一部がスロットから外に飛び出す問題があった。
【0005】
特許文献1、2の技術では、いずれも、ティース・スロットに対して、径方向の内側から外側に向かって、コイルを挿入するものであるから、上記問題が発生するのであり、コイルを軸心方向からスロット内に挿入できれば、上記問題を解決できるということに、本出願人は思い至った。
しかし、集中巻きのコイルならば、挿入する先端部を軸心側に折り曲げれば、残りの部分をスロット内に挿入することは容易であるが、分布巻きコイルでは、折り曲げる部分の形状が複雑であり、折り曲げること自体が困難であるという問題があった。
集中巻きコイルで、挿入する先端部を折り曲げる技術として、特許文献3の技術が開示されているが、特許文献3の技術では、折り曲げ箇所の異なる複数の導体を、個別に製造して、組み合わせていくため、製造に時間がかかり、コストが高い問題があった。
【0006】
本出願人らは、上記問題点を解決するために、特願2010-095759号を出願して、平角導線を巻いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法において、コイル導線を三角形状に巻回する第1工程と、三角形状に巻回された前記コイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、L字形状の前記コイル導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有するモータ製造方法を提案した。
本出願人らは、特願2010-095759号出願後も、引き続き開発を行い、第2工程において、三角形状に巻回されたコイル導線をL字形状に折り曲げる精度が、後工程(特に第3工程)の効率化に大きな影響を与えることを発見した。そのため、第2工程において、高い精度でL字形状に折り曲げる方法が必要とされていた。
また、第2工程において、成形するための治具と平角導線の間に滑りが生じると、平角導線に延びが発生したり、表面の絶縁被膜が損傷を受ける恐れがあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、平角導線を用いた分布巻
きコイルを軸心方向から容易にスロット内に挿入できる低コストのモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のモータ、及びモータ製造方法は、次のような構成を有している。
(1)平角導線を巻いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法において、コイル導線を三角形状に巻回する第1工程と、三角形状に巻回された前記コイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、L字形状の前記コイル導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有し、第2工程では工程の期間中、三角形状の最長辺部を押圧成形する第1回転治具の先端が、最長辺部の同じ位置に当接していること、三角形状の最短辺部の折り曲げ部位と、前記最短辺部を押圧成形する第2回転治具の回転中心が、同じ位置にあること、を特徴とする。
【0009】
(2)(1)に記載するモータ製造方法において、前記第2工程では、第3回転治具が、前記最長辺部の中間辺側に配置され、前記コイルの一端のコイルエンド部を、同心円状の半円に形成すること、を有することを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載するモータ製造方法において、前記分布巻きコイルを、前記ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する第4工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
(4)(1)乃至(3)に記載するいずれか1つのモータ製造方法において、最長辺部と中間辺部のなす内周円の曲率半径、中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径、及び中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径が、第2工程の前後で変化しないこと、中間辺部の長さが、第2工程の前後で変化しないこと、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)に記載するいずれか1つのモータ製造方法により製造されるモータであって、前記コイルの一端のコイルエンド部が、前記ステータコアのスロット内導線に対して、前記ロータ側に折り曲げられていること、前記一端のコイルエンド部が、前記ステータコアの内周面より前記ロータの軸心側に位置すること、前記一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明に係るモータ、及びモータ製造方法の作用及び効果について説明する。
(1)平角導線を巻いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法において、コイル導線を三角形状に巻回する第1工程と、三角形状に巻回された前記コイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、L字形状の前記コイル導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有し、第2工程では工程の期間中、三角形状の最長辺部を押圧成形する第1回転治具の先端が、最長辺部の同じ位置に当接していること、三角形状の最短辺部の折り曲げ部位と、前記最短辺部を押圧成形する第2回転治具の回転中心が、同じ位置にあること、を特徴とするので、第1回転治具・第2回転治具と平角導線との間で滑りが生じることがなく、平角導線に延びが発生したり、表面の絶縁被膜が損傷を受ける恐れがない。また、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
【0012】
さらに、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータのスロットに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【0013】
(2)(1)に記載するモータ製造方法において、前記第2工程では、第3回転治具が、前記最長辺部の中間辺側に配置され、前記コイルの一端のコイルエンド部を、同心円状の半円に形成すること、を有することを特徴とするので、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
【0014】
(3)(1)または(2)に記載するモータ製造方法において、前記分布巻きコイルを、前記ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する第4工程と、を有することを特徴とするので、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータのスロットに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。
【0015】
(4)(1)乃至(3)に記載するいずれか1つのモータ製造方法において、最長辺部と中間辺部のなす内周円の曲率半径、中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径、及び中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径が、第2工程の前後で変化しないこと、中間辺部の長さが、第2工程の前後で変化しないこと、を特徴とするので、折り曲げ成形後のL字形状の各部寸法を高い精度で成形することができる。
【0016】
(5)本発明のモータは、(1)乃至(4)に記載するいずれか1つのモータ製造方法により製造されるモータであって、前記コイルの一端のコイルエンド部が、前記ステータコアのスロット内導線に対して、前記ロータ側に折り曲げられていること、前記一端のコイルエンド部が、前記ステータコアの内周面より前記ロータの軸心側に位置すること、前記一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、を特徴とするので、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータのスロットに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】基準ユニット11の斜視図である。
【図2】基準ユニット11の正面図である。
【図3】基準ユニット11の平面図である。
【図4】基準ユニット11の右側面図である。
【図5】基準ユニット11の製造工程のうち、巻取り工程を示す図である。
【図6】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程の後の平角導線20の形状を示す図である。
【図7】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程の前の平角導線20の形状を示す図である。
【図8】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第1図である。
【図9】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第2図である。
【図10】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第3図である。
【図11】基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第4図である。
【図12】基準ユニット11の製造工程のうち、拡張工程を示す第1図である。
【図13】基準ユニット11の製造工程のうち、拡張工程を示す第2図である。
【図14】基準ユニット11の製造工程のうち、拡張工程を示す第3図である。
【図15】基準ユニット11をステータコア13に挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図16】コイル籠12の全体を示す図である。
【図17】コイル籠12の全体を示す平面図である。
【図18】コイル籠12の正面図である。
【図19】基準ユニット11をステータコア13に挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図20】基準ユニット11をステータコア13に挿入する挿入工程を示す第2図である。
【図21】基準ユニット11をステータコア13に挿入する挿入工程を示す第3図である。
【図22】基準ユニット11をステータコア13に挿入する挿入工程を示す第4図である。
【図23】ロータ42をステータ10に挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図24】ロータ42をステータ10に挿入する挿入工程を示す第2図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態のモータ、及びモータ製造方法について図面を参照して説明する。
図1に、5本の平角導線を同時に成形した基準ユニット11の斜視図を示す。図2に、図1の基準ユニット11の正面図を示し、図3に図1を上から見た平面図を示し、図4に図1の右側面図を示す。
基準ユニット11は、スロット内に配置されるスロット内導線部SA、スロット内導線部SBを備える。
図1に示すように、スロット内導線部SAは、5本の平角導線が長辺面(フラットワイズ面)を接触させて重ね合わされたもので、第1スロット内導線部SA1、第2スロット
内導線部SA2、第3スロット内導線部SA3、第4スロット内導線部SA4、及び第5スロット内導線部SA5の集合体を示している。また、図4に示すように、スロット内導線部SBは、5本の平角導線が長辺面(フラットワイズ面)を接触させて重ね合わされた
もので、第1スロット内導線部SB1、第2スロット内導線部SB2、第3スロット内導線部SB3、第4スロット内導線部SB4、及び第5スロット内導線部SB5の集合体を示している。
【0019】
図1の上側に位置するコイルエンド部の中央には、上側同心円部Gが形成されている。図4に示すように、上側同心円部Gは、第2同心円部G2、第3同心円部G3、第4同心円部G4、及び第5同心円部G5の4本の平角導線の集合体である。第1同心円部が含まれていないのは、後で説明する傾斜部EA1が端子Mとして、外部に突出しているためである。
スロット内導線部SAの上端には、折り曲げ部IAが形成されている。平角導線は、折り曲げ部IAで、図2に示すように、上側同心円部Gの方向に折り曲げられている。上側同心円部Gとスロット内導線部SAとの間には、傾斜部EAが形成されている。折り曲げ部IAは、図3に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部IA1、IA2、IA3、IA4、IA5の集合体を示している。傾斜部EAは、図1、図4に示すように、5本の平角導線の傾斜部EA1、EA2、EA3、EA4、EA5の集合体を示している。
傾斜部EAにおいては、5本の平角導線が、図4に示すように、スロット内導線SAと同様に、径方向(図4の左右方向)に重ね合わされている。
【0020】
スロット内導線部SBの上端には、折り曲げ部IBが形成されている。平角導線は、折り曲げ部IBで、図2に示すように、上側同心円部Gの方向に折り曲げられている。上側同心円部Gとスロット内導線部SBとの間には、傾斜部EBが形成されている。折り曲げ部IBは、図3に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部IB1、IB2、IB3、IB4、IB5の集合体を示している。傾斜部EBは、図4に示すように、5本の平角導線の傾斜部EB1、EB2、EB3、EB4、EB5の集合体を示している。
傾斜部EBにおいては、5本の平角導線が、図4に示すように、スロット内導線SBと同様に、径方向(図4の左右方向)に重ね合わされている。
【0021】
図4に示すように、傾斜部EAの最内周部に位置するEA1の端子Mは、折り曲げられて外部に突出している。また、傾斜部EBの最外周に位置するEB5の端子Nは、折り曲げられて外部に突出している。
スロット内導線部SAの下端には、折り曲げ部JAが形成されている。平角導線は、折り曲げ部JAで、図3に示すように、90度内周側(図の左方向)に折り曲げられている。折り曲げ部JAは、図4示すように、5本の平角導線の折り曲げ部JA1、JA2、JA3、JA4、JA5の集合体を示している。
また、スロット内導線部SBの下端には、折り曲げ部JBが形成されている。平角導線は、折り曲げ部JBで、図3に示すように、90度内周側(図の左方向)に折り曲げられ
ている。図4に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部JB1、JB2、JB3、JB4、JB5の集合体を示している。
【0022】
内周側先端部には、下側同心円部Hが形成されている。図2に示すように、折り曲げ部JAと下側同心円部Hとの間には、水平部FAが形成されている。折り曲げ部JBと下側同心円部Hとの間には、水平部FBが形成されている。
下側同心円部Hは、図4に示すように、5本の平角導線の下側同心円部H1、H2、H3、H4、H5の集合体を示している。
水平部FAは、図2に示すように、5本の平角導線の水平部FA1、FA2、FA3、FA4、FA5の集合体を示している。ここで、水平部FAにおいては、5本の平角導線の水平部は、図2に示すように、軸心方向(図2の上下方向)に重ね合わされている。
また、水平部FBは、図2に示すように、5本の平角導線の水平部FB1、FB2、FB3、FB4、FB5の集合体を示している。ここで、水平部FBにおいては、5本の平角導線の水平部は、図2に示すように、軸心方向(図2の上下方向)に重ね合わされている。
【0023】
次に、基準ユニット11の製造方法を説明する。基準ユニット11の製造方法は、巻取り工程、折り曲げ工程、及び拡張工程を有している。
図5に、基準ユニット11の製造工程のうち、巻取り工程を示す。
断面が平べったい三角形状の金型19が、中心軸19aを中心に回転可能に設けられている。
金型19に平角導線20の先端20aを固定し、金型19を、中心軸19aを中心に矢印Pで示す方向に回転させ、平角導線20を5周金型19に巻きつける。このとき、平角導線20は、フラットワイズ方向に巻き重ねられる。すなわち、断面が約1.8mm×約3.3mmの平角導線の約3.3mmの長辺を重ね合わせて巻き重ねている。
【0024】
次に、折り曲げ工程について説明する。
図6に基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程の後の平角導線20の形状を示す。図7に基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程の前の平角導線20の形状を示す。
図7において、三角形状に巻かれた平角導線20は、最長辺部T1、中間辺部T2、及び最短辺部T3を備えている。ここで、最長辺部T1と中間辺部T2のなす内周円T1aの曲率半径は、r3である。また、中間辺部T2と最短辺部T3のなす内周円T2aの曲率半径は、r2である。また、最短辺部T3と最長辺部T1のなす内周円T3aの曲率半径は、r1である。
中間辺部T2の長さ(直線部分の長さ)は、l1である。また、中間辺部T2と最長辺部T1とのなす外周円の半径は、l2である。
【0025】
後で説明する折り曲げ工程の後では、図6に示すように、L字形状に成形された平角導線20は、最長辺部T1が、長辺部T4と短辺部T5に分離されており、さらに中間辺部T2、及び最短辺部T3を備えている。ここで、長辺部T4と中間辺部T2のなす内周円T1aの曲率半径は、R3である。また、中間辺部T2と最短辺部T3のなす内周円T2aの曲率半径は、R2である。また、最短辺部T3と短辺部T5のなす内周円T3aの曲率半径は、R1である。
中間辺部T2の長さ(直線部分の長さ)は、L1である。また、中間辺部T2と長辺部T4とのなす外周円の半径は、L2である
ここで、本実施例では、L1=l1、L2=l2、R1=r1、R2=r2、R3=r3としている。
【0026】
次に、図8〜図11により、折り曲げ工程を説明する。図8〜図11は、順次、折り曲げ工程の時系列的な変化を示している。
巻取り工程で、5周分巻き取った平角導線20を金型19から外して、図8に示す位置にセットする。この状態で、三角形状の平角導線20の中間辺部T2が荷重受け治具24の一対の当接部24a、24bの先端面に当接している。加重受け治具24は、ベースに固定されている。三角形状の平角導線20の最短辺T3の内周面には、形状整合治具28が配置されている。形状整合治具28は、図示しないバネによりベースに取付けられており、平角導線20の変形に合わせて移動する。また、折り曲げ工程終了後は、平角導線20を搬出すると、バネにより元の位置に復帰する。
【0027】
最短辺部T3に対向して、第2回転治具22が配置されている。第2回転治具22は、従動歯車26に固設され、最短辺部T3の内周辺に位置する点P2(図中×印で示す。)を中心として回動可能に保持されている。ここで、三角形状の最短辺部T3の折り曲げ部位も、点P2である。従動歯車26は、駆動歯車122とギア連結している。第2回転治具22の最短辺部T3と対向する面は、傾斜の異なる2つの当接面22a、22bを備えている。
【0028】
また、最長辺部T1に対向して、第1回転治具21が配置されている。第1回転治具21は、従動歯車25に固設され、最長辺部T3の内周辺に位置する点P1を中心として回動可能に保持されている。従動歯車25は、駆動歯車121とギア連結している。第1回転歯車21の最長辺部T1と対向する部分は、突出した形状である当接部21aを備えている。
また、最長辺部T1と中間辺部T2のなす外周面の、最長辺部T1側に対向して、第3回転治具23が配置されている。第3回転治具23は、従動歯車27に固設され、中間辺部T2の外周辺に位置する点P3(図示せず。)を中心として回動可能に保持されている。従動歯車27は、駆動歯車123とギア連結している。第3回転歯車23の最長辺部T1と対向する面は、傾斜の異なる2つの当接面23a、23bを備えている。
【0029】
次に、駆動歯車121、122、123が、いずれも時計回りに適宜回転される。駆動歯車121、122、123には、各別にモータが接続しており、各々が個別に制御可能である。
始めに、第1回転治具21の当接部21aが、最長辺部T1の当接点T1bに当接する。それと同時に、第2回転治具22の当接面22bが最短辺部T3の外周先端付近に当接する。第1回転治具21と第2回転治具22の協働作業により、最長辺部T1を当接部21aで折り曲げられ始める。折り曲げられた途中の状態を図9に示す。
ここで、最長辺部T1の当接点T1bは、点P1を中心にして回転移動するので、当接点T1bにおいて、常に第1回転治具21の当接部21aと当接している。そのため、最長辺部T1と第1回転治具21との間で滑りが発生することなく、平角導線20の絶縁被膜が損傷されることがない。
【0030】
次に、第1回転治具21の当接部21aが、最長辺部T1を中間辺部T2に全面に渡って押し付けた状態を図10に示す。この状態では、最短辺部T3は、折り曲げの途中である。図10の状態で、第1回転治具21は、回転を停止する。次に、第1回転治具21の側面21bを基準として、第2回転治具22が、最短辺部T3をさらに折り曲げて、図11に示すように、最短辺部T3が、側面21bに全面に渡って押し付けられた状態となる。これにより、最長辺部T1が、直交する関係にある長辺部T4と短辺部T5が形成される。
同時に、第3回転治具23の当接面が、最長辺部T1の中間辺部となす外周円の外側に当接して、同心円状の半円の形状を整える。
【0031】
以上、詳細に説明したように、折り曲げ工程では、三角形状の最長辺部T1を押圧成形する第1回転治具21の先端当接部21aが、最長辺部T1の同じ位置である当接点T1bに、折り曲げ工程中、常に当接していること、三角形状の最短辺部T3の折り曲げ部位P2(図中×印で示す。)と、最短辺部T3を押圧成形する第2回転治具22の回転中心が、同じ位置P2にあること、を特徴とするので、第1回転治具21・第2回転治具22と平角導線20との間で滑りが生じることがなく、平角導線20に延びが発生したり、表面の絶縁被膜が損傷を受ける恐れがない。また、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
【0032】
また、折り曲げ工程では、第3回転治具23が、最長辺部T1の中間辺部T2側に配置され、平角導線20の一端のコイルエンド部を、同心円状の半円に形成すること、を有することを特徴とするので、正確な半円形状を成形することができると共に、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
ここで、同心円状の半円は、コイルエンド部において、他の平角導線の同心円状の半円と重なり合わされる。そのとき、正確に半円に成形されていることにより、密に集積することができ、コイルエンドをコンパクトにすることができる。
【0033】
また、最長辺部T1と中間辺部T2のなす内周円T1aの曲率半径R3、中間辺部T2と最短辺部T3のなす内周円T2aの曲率半径R2、及び最長辺部T1と最短辺部T3のなす内周円T3aの曲率半径R1が、第2工程の前後で変化しないこと、中間辺部の長さL1が、第2工程の前後で変化しないこと、を特徴とするので、折り曲げ成形後のL字形状の各部寸法を高い精度で成形することができる。
【0034】
次に、拡張工程を説明する。
図9に、基準ユニット11の製造工程のうち、拡張工程の第1図を示す。図13に、拡張工程の第2図を示す。図14に、図9の側面図を示す。
図9及び図14に示すように、上側同心円部G(5本の平角導線)を、一対のチャック爪33(33A、33B)が把持する。下側同心円部H(5本の平角導線)は、一対のガイド爪40(40A、40B)に固定される。スロット内導線部SA(5本の平角導線)は、一対のチャック爪32(32A、32B)に把持される。スロット内導線部SB(5本の平角導線)は、一対のチャック爪31(31A、31B)に把持される。
ここで、一対のチャック爪32(32A、32B)、及び一対のチャック爪31(31A、31B)は、中心軸34を中心に各別に回転可能に保持されている。ベース板36は、2本のガイド棒38の先端に固定されている。2本のガイド棒38は、固定された固定部
39に摺動可能に保持されている。固定部39の両側には、一対のエアシリンダ37の本体が固設されている。また、ベース板36には、一対のエアシリンダ37のロッド先端が連結されており、エアシリンダ37の駆動により、ガイド棒38及びベース板36は、固定部39に対して摺動する。ベース板36には、一対のリンク機構35A、35Bが付設され、リンク機構35Aは、チャック爪32のベース板に接続され、リンク機構35Bは、チャック爪31のベース板に接続している。
【0035】
この構成により、図9に示すように、平角導線20を各々把持した状態で、エアシリンダ37を駆動する。これにより、ベース板36が摺動して、図13の位置に来ると、一対のチャック爪32(32A、32B)は、スロット内導線部SAを把持したまま、図13において、時計回りに回転し、スロット内導線部SAを、上側同心円部G及び下側同心円部Hに対して、時計回りの所定の位置まで塑性変形させる。
同時に、一対のチャック爪31(31A、31B)は、スロット内導線部SBを把持したまま、図13において、反時計回りに回転し、スロット内導線部SBを、上側同心円部G及び下側同心円部Hに対して、反時計回りの所定の位置まで塑性変形させる。
次に、端子M及び端子Nを折り曲げて塑性変形させる。これにより、基準ユニット11が完成する。
【0036】
次に、製造された基準ユニットを複数重ね合わせる。
図15に、6個の基準ユニット11であるU相第1基準ユニットU1、U相の第2基準ユニットU2、V相の第1基準ユニットV1、V相の第2基準ユニットV2、W相の第1基準ユニットW1、W相の第2基準ユニットW2を重ね合わせた状態を斜視図で示す。第1基準ユニットと第2基準ユニットのスロット内導線部が1つのティースの両側に挿入されるため、6個の基準ユニット11が1つの単位となる。
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の傾斜部U1EB、U2EB、V1EB、V2EB、W1EB、W2EBにおいては、5本の平角導線(EB1〜EB5)が、ステータコア13(ロータ)の径方向に重ね合わされている。
【0037】
U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EBは、U相の第1基準ユニットの傾斜部U1EBに対して、軸心方向で下側(ステータコア13の方向)に重ね合わされている。同様に、V相第1基準ユニットV1の傾斜部V1EBは、U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EBの軸心方向の下側に重ね合わされている。
すなわち、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、傾斜部U1EB、U2EB、V1EB、V2EB、W1EB、W2EBは、時計回りで、順次直前の傾斜部EBの軸心方向で下側に位置して重ね合わされている。
【0038】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の傾斜部U1EA、U2EA、V1EA、V2EA、W1EA、W2EAにおいては、5本の平角導線(EA1〜EA5)が、ステータコア13(ロータ)の径方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EAは、U相の第1基準ユニットの傾斜部U1EAに対して、軸心方向で4上側(ステータコア13と反対方向)に重ね合わされている。同様に、V相第1基準ユニットV1の傾斜部V1EAは、な相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EAの軸心方向の上側に重ね合わされている。
すなわち、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、傾斜部U1EA、U2EA、V1EA、V2EA、W1EA、W2EAは、時計回りで、順次直前の傾斜部EBの軸心方向で上側に位置して重ね合わされている。
【0039】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の水平部UFB1、U2FB、V1
FB、V2FB、W1FB、W2FBにおいては、5本の平角導線(FB1〜FB5)が、ステータコア13(ロータ)の軸心方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FBは、U相の第1基準ユニットU1の水平部U1FBに対して、径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。V相の基準ユニットV1の水平部V1FBは、U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FBに対して、径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。
すなわち、図15に示すように、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、水平部U1B1、U2FB、V1FB、V2FB、W1FB、W2FBは、時計回りで、順次直前の水平部FBの径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。
【0040】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAにおいては、5本の平角導線(FA1〜FA5)が、ステータコア13(ロータ)の軸心方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FAは、U相の第1基準ユニットU1の水平部U1FAに対して、径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。V相の基準ユニットV1の水平部V1FAは、U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FAに対して、径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。
すなわち、図15に示すように、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAは、時計回りで、順次直前の水平部FBの径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。
【0041】
上側同心円部U1G、U2G、V1G、V2G、W1G、W2Gは、径方向に順次整列している。
下側同心円部U1H、U2H、V1H、V2H、W1H、W2Hは、径方向に順次整列している。
【0042】
基準ユニット11を24個重ね合わせると、半円形状となる。これらを2組製造して、合体させることにより、48個の基準ユニット11を重ね合わせた円形状のコイル籠12が完成する。
基準ユニット11が、48個重ね合わされたコイル籠12の構成を、図16に斜視図で示す。コイル籠12の平面図(図16を上から見た図)を図17に示す。コイル籠12の正面図を図18に示す。本実施の形態のモータのステータのステータコアは、48個のスロット、48個のティースを有している。
各基準ユニット11は、2個のスロット内導線部SA、SBを有しており、スロット内導線部SAとスロット内導線部SBとは、図4に示すように、径方向(図4の上下方向)で5本の平角導線の厚み分ずれて位置している。
【0043】
図17に示すように、U相の第1基準ユニットU1、U相の第2基準ユニットU2、V相の第1基準ユニットV1、V相の第2基準ユニットV2、W相の第1基準ユニットW1、W相の第2基準ユニットW2が順次重ね合わされている。続いて、U相の2つの基準ユニット、V相の2つの基準ユニット、W相の2つの基準ユニットが順次重ね合わされて、最後は、U相の第15基準ユニットU15、U相の第16基準ユニット、V相の第15基準ユニットV15、V相の第16基準ユニットV16、W相の第15基準ユニットW15、W相の第16基準ユニットW16で終わる。U、V、Wの3相で各16個の基準ユニット11を有するため、合計48個の基準ユニット11を有している。
1つのスロット内には、1組5本の平角導線が、2組(計10本)挿入されている。
【0044】
次に、コイル籠12をステータコア13に挿入する方法について説明する。図19に、コイル籠12の下側部をステータコア13に半分ほど挿入した状態を示す。図19では、コイル籠12の全体を記載すると、わかりにくくなるため、コイル籠12の一部である6組の基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2(図7に示すものと同じ。)のみを記載している。ここでは、コイル籠12の一部である6組の基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の挿入作用について説明するが、コイル籠12全体もここでの説明と同じ挿入作用である。また、インシュレータの記載を省略しているが、コイル籠12を挿入する前に、ステータコア13の各スロット部Sにインシュレータを装着しておくと良い。
図19に示すように、下側同心円部U1H、U2H、V1H、V2H、W1H、W2H、水平部UFB1、U2FB、V1FB、V2FB、W1FB、W2FB、及び水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAは、ステータコア13のティース13a先端の内周面13bよりも、ステータ13の中心線側に位置している。
【0045】
したがって、スロット内導線部U1SB、U2SB、V1SB、V2SB、W1SB、W2SB、及びスロット内U1SA、U2SA、V1SA、V2SA、W1SA、W2SAを、図19の上側からステータ13の中心軸の軸心方向に下向きに、第1スロットS1から第12スロットS12に挿入するときに、下側同心円部H、水平部FB、及び水平部FAがステータコア13と干渉することがないため、コイル籠12をステータコア13のスロットSに挿入することができる。
ここで、例えば、第1スロットS1の外周側(奥側)に、U相の第1基準ユニットU1の5本のスロット内導線部U1SB(SB1〜SB5)が挿入される。もう一方のスロット内導線U1SA(SA1〜SA5)は、第7スロットS7の内周側(手前側)に挿入される。
【0046】
第1スロットS1の内周側には、図示しないU相の第16基準ユニットU16の5本のスロット内導線部U16SB(SB1〜SB5)が挿入される。これにより、第1スロットには、スロット内導線部U1SAとスロット内導線部U16SBの計10本の平角導線が挿入される。
同様に、第7スロットS7の外周側には、図示しないU相の第3基準ユニットU3の5本のスロット内導線部U3SB(SB1〜SB5)が挿入される。これにより、第7スロットには、スロット内導線部U1SA(SA1〜SA5)と、スロット内導線部U3SB(SB1〜SB5)の計10本の平角導線が挿入される。
【0047】
図20に、コイル籠12がステータコア13に対して、所定の位置まで挿入された状態を示す。図21に、図20を、ステータコア13を上方向から軸心に沿って見た平面図を示す。図22に、図21の正面図を示す。
図21においては、端子Nは、端子Mの下側に位置しており、見えない。図21で、端子U1Nが見えているのは、U16Mを省略して記載しているからである。
図22に示すように、下側同心円部H、水平部FB、及び水平部FAの位置が、ステータコア13の端面から距離を設けてあるのは、ロータとの電磁気的な影響を回避するためである。
図20には、コイル籠12の一部のみを示しているが、図20の状態まで、コイル籠12が挿入されることにより、ステータコア13へのコイル籠12の組立が完了する。その後、スロットS内にスロット内導線部SA、SBが挿入されている状態における空間部に、伝熱性能に優れた樹脂をモールドする。また、端子M、NをU相、V相、W相毎に順次バスバーで接続する。これにより、ステータ10が完成する。
【0048】
次に、完成したステータ10にモータのロータ42を組み付ける方法を説明する。
図23に、ステータ10の中央断面図を示す。ステータコア13にコイル籠12が組み込まれている。この状態で、ステータ10の図23の上側では、ステータコア13のティース13aの内周面13bより内側には、コイル籠12は、存在しない。一方、ステータ10の図23の下側では、コイル籠12の折り曲げ部である下側同心円部H、水平部FA、及び水平部FBが、ステータコア13のティース13aの内周面13bより内側に位置している。
一方、モータのロータ42は、中心軸41の外周にロータ部43が形成されている。
ロータ42は、ステータ10の下側から挿入することはできないが、ステータの上側から軸心に沿って挿入することが可能である。ロータ42をステータ10に挿入した状態を図24に示す。
図24に示すように、ロータ42の中心軸41は、コイル籠12の下側同心円部Hの内周面で形成される中心孔から外に突出している。
【0049】
以上詳細に説明したように、本実施例のモータ製造方法によれば、(1)平角導線20を巻いた分布巻きコイルであるコイル籠12とステータコア13を備えるステータ10と、中心軸41を備えるロータ42とを有するモータのモータ製造方法において、平角導線20を三角形状に巻回する第1工程と、三角形状に巻回されたコイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、L字形状の平角導線20を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有し、第2工程では工程の期間中、三角形状の最長辺部T1を押圧成形する第1回転治具21の先端当接部21aが、最長辺部T1の同じ位置である当接点T1aに当接していること、三角形状の最短辺部T3の折り曲げ部位と、最短辺部T3を押圧成形する第2回転治具23の回転中心が、同じ位置P1にあること、を特徴とするので、第1回転治具21・第2回転治具22と平角導線20との間で滑りが生じることがなく、平角導線20に延びが発生したり、表面の絶縁被膜が損傷を受ける恐れがない。また、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
【0050】
さらに、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータのスロットに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【0051】
また、折り曲げ工程では、第3回転治具23が、最長辺部T1の中間辺部T2側に配置され、平角導線20の一端のコイルエンド部を、同心円状の半円に形成すること、を有することを特徴とするので、高い精度でL字形状に折り曲げることができ、後工程(特に第3工程)の効率化に貢献できる。
また、分布巻きコイルであるコイル籠12を、ステータコア13のスロットSに対して、軸心方向から挿入する第4工程と、を有することを特徴とするので、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータコア13のスロットSに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。
【0052】
また、最長辺部T1と中間辺部T2のなす内周円T1aの曲率半径R1、中間辺部T2と最短辺部T3のなす内周円T2aの曲率半径R2、及び中間辺部T2と最短辺部T3のなす内周円T3aの曲率半径R3が、折り曲げ工程の前後で変化しないこと、中間辺部T2の長さL1が、折り曲げ工程の前後で変化しないこと、を特徴とするので、折り曲げ成形後のL字形状の各部寸法を高い精度で成形することができる。
【0053】
また、本実施例のモータは、コイル籠12の一端のコイルエンド部が、ステータコア13のスロット内導線に対して、ロータ側に折り曲げられていること、一端のコイルエンド部が、ステータコア13の内周面よりロータ42の軸心側に位置すること、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の平角導線20をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、を特徴とするので、一端のコイルエンド部A側を先頭として、ステータコア13のスロットSに対して、軸心側からコイル籠12を挿入しようとするときに、一端のコイルエンドAは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイル籠12を軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線20をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【0054】
なお、本発明のモータ、及びモータ製造方法は、上記実施例に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、本実施例では、スロットSが48個あるモータについて説明したが、スロットSの数は変更しても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 ステータ
11 基準ユニット
12 コイル籠
13 ステータコア
21 第1回転治具
21a 当接部
22 第2回転治具
23 第3回転治具
24 荷重受け治具
41 中心軸
42 ロータ
43 ロータ部
Un U相の第n基準ユニット
Vn V相の第n基準ユニット
Wn W相の第n基準ユニット
G 上側同心円部
H 下側同心円部
SA、SB スロット内導線部
EA、EB 傾斜部
FA、FB 水平部
JA、JB 折り曲げ部
T1 最長辺部
T2 中間辺部
T3 最短辺部
T4 長辺部
T5 短辺部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角導線を巻いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法において、
コイル導線を三角形状に巻回する第1工程と、
三角形状に巻回された前記コイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、
L字形状の前記コイル導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有し、
前記第2工程では工程の期間中、
三角形状の最長辺部を押圧成形する第1回転治具の先端が、前記最長辺部の同じ位置に当接していること、
三角形状の最短辺部の折り曲げ部位と、前記最短辺部を押圧成形する第2回転治具の回転中心が、同じ位置にあること、
を特徴とするモータ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載するモータ製造方法において、
前記第2工程では、第3回転治具が、前記最長辺部の中間辺側に配置され、前記コイルの一端のコイルエンド部を、同心円状の半円に形成すること、
を有することを特徴とするモータ製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するモータ製造方法において、
前記分布巻きコイルを、前記ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する第4工程と、
を有することを特徴とするモータ製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載するいずれか1つのモータ製造方法において、
最長辺部と中間辺部のなす内周円の曲率半径、中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径、及び中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径が、第2工程の前後で変化しないこと、
中間辺部の長さが、第2工程の前後で変化しないこと、
を特徴とするモータ製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載するいずれか1つのモータ製造方法により製造されるモータであって、
前記コイルの一端のコイルエンド部が、前記ステータコアのスロット内導線に対して、前記ロータ側に折り曲げられていること、
前記一端のコイルエンド部が、前記ステータコアの内周面より前記ロータの軸心側に位置すること、
前記一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、
前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、
前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、
を特徴とするモータ。
【請求項1】
平角導線を巻いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法において、
コイル導線を三角形状に巻回する第1工程と、
三角形状に巻回された前記コイル導線をL字形状に折り曲げる第2工程と、
L字形状の前記コイル導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる第3工程と、を有し、
前記第2工程では工程の期間中、
三角形状の最長辺部を押圧成形する第1回転治具の先端が、前記最長辺部の同じ位置に当接していること、
三角形状の最短辺部の折り曲げ部位と、前記最短辺部を押圧成形する第2回転治具の回転中心が、同じ位置にあること、
を特徴とするモータ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載するモータ製造方法において、
前記第2工程では、第3回転治具が、前記最長辺部の中間辺側に配置され、前記コイルの一端のコイルエンド部を、同心円状の半円に形成すること、
を有することを特徴とするモータ製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するモータ製造方法において、
前記分布巻きコイルを、前記ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する第4工程と、
を有することを特徴とするモータ製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載するいずれか1つのモータ製造方法において、
最長辺部と中間辺部のなす内周円の曲率半径、中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径、及び中間辺部と最短辺部のなす内周円の曲率半径が、第2工程の前後で変化しないこと、
中間辺部の長さが、第2工程の前後で変化しないこと、
を特徴とするモータ製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載するいずれか1つのモータ製造方法により製造されるモータであって、
前記コイルの一端のコイルエンド部が、前記ステータコアのスロット内導線に対して、前記ロータ側に折り曲げられていること、
前記一端のコイルエンド部が、前記ステータコアの内周面より前記ロータの軸心側に位置すること、
前記一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、
前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、
前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、
を特徴とするモータ。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図21】
【図1】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図21】
【図1】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−235544(P2012−235544A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100300(P2011−100300)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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