説明

モータ駆動制御装置及び画像形成装置

【課題】安定した品質性能が得られ、部品点数も低減されたモータ駆動制御を実現する。
【解決手段】モータ1012の回転速度を制御するモータ駆動制御装置10であって、モータ1012を回転駆動するモータドライバ1011と、第2転写ローラ113の回転速度を検出するエンコーダ1014及びカウンタ711と、当該検出された第2転写ローラ113の回転速度と、予め設定されている転写ローラ回転速度との差を算出する速度差算出部71と、速度差算出部71によって算出された速度差に対応する速度制御信号を生成し、当該生成した速度制御信号をモータドライバ1011に出力する速度制御部72とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置及び画像形成装置に関し、特に、被駆動体の回転速度に応じて、その駆動源となるモータの回転速度を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばコピー機やプリンタ等の画像形成装置では、感光体ドラムの回転駆動に用いられるトラクションモータの速度には精度が要求されるため、感光体ドラムの駆動軸に取り付けられたエンコーダから出力されるパルスをフィードバックさせて、基準クロックに同期させる形で速度制御が行われている。このような回転駆動装置としては、例えば、下記特許文献1に示されるものが提案されている。
【特許文献1】特開2003−18880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の回転駆動装置では、特許文献1の図2及び図に示されるように、感光体ドラムの駆動軸に取り付けられたエンコーダから出力されるパルスを検出するフィードバック部にはアナログ回路が用いられているため、当該アナログ回路の構成部品のばらつき(ロット、周囲環境温度等を要因とする)で性能が左右されるために量産には不向きであり、また、フィードバック部を設けることにより部品点数が増加するため、その分の製造コストが増加してしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、安定した品質性能が得られ、部品点数も低減されたモータ駆動制御装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載の発明は、モータの回転速度を制御するモータ駆動制御装置であって、
前記モータを回転駆動するモータ駆動手段と、
前記モータからの回転駆動力で回転する被駆動体の回転速度を検出する被駆動体回転速度検出手段と、
前記被駆動体回転速度検出手段によって検出された前記被駆動体の回転速度と、予め設定されている被駆動体回転速度との速度差を算出する速度差算出手段と、
前記速度差算出手段によって算出された速度差に対応する速度制御信号を生成し、当該生成した速度制御信号を前記モータ駆動手段に出力する速度制御手段と
を備えたものである。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータ駆動制御装置であって、前記被駆動体回転速度検出手段は、MRセンサ又はエンコーダと、当該MRセンサ又はエンコーダから出力されるパルスのパルス幅を検出するパルス幅検出部とを有し、
前記速度差算出手段は、前記予め設定されている被駆動体の目標回転速度に対応するパルス幅の値を記憶する記憶部と、前記パルス幅検出部によるパルス幅検出値と当該記憶部に記憶されているパルス幅の値との差分を前記速度差として算出する差分算出部とを有し、
前記速度制御手段は、前記差分算出部によって算出された速度差に対応するデューティ比を算出し、当該算出したデューティ比からなるPWM制御信号を前記速度制御信号として前記モータ駆動手段に出力するものである。
【0007】
これらの構成によれば、速度差算出手段が、被駆動体回転速度検出手段によって検出された被駆動体の回転速度と、予め設定されている被駆動体回転速度との差を算出し、速度制御手段が、当該算出された速度差に対応する速度制御信号を算出し、当該算出した速度制御信号をモータ駆動手段に出力することでモータを駆動制御するので、当該速度差算出手段及び速度制御手段をCPU又はDSP(Digital Signal Processor)等で構成することが可能になる。これにより、モータ駆動制御の自由度が増し、更に、アナログ回路での構成も不要であるため、安定した品質性能が得られ、部品点数も低減される。また、アナログ回路によるPLL制御のようなクロックに同期させる制御ではないため、制御に用いるクロック出力を削減でき、不要輻射等のノイズにより他部品に弊害が及ぶことを防止できる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のモータ駆動制御装置であって、前記モータ駆動手段が複数設けられると共に、前記MRセンサ又はエンコーダは、当該各モータ駆動手段によって駆動されるモータの回転駆動力で回転する被駆動体のそれぞれについて設けられ、
前記パルス幅検出部は、前記各駆動体に設けられているMRセンサ又はエンコーダから出力される各パルスのパルス幅を検出し、
前記速度差算出手段の記憶部は、前記各被駆動体についての目標回転速度に対応する各パルス幅の値を記憶し、前記差分算出部は、前記パルス幅検出部による前記各被駆動体のパルス幅検出値と前記記憶部に記憶されている前記各被駆動体についての各パルス幅の値との差を前記各被駆動体についての各速度差として算出し、
前記差分算出部によって前記各被駆動体についての前記各速度差が算出された場合、前記速度制御手段は、当該算出された各速度差に基づいて前記各被駆動体についてのPWM制御信号を算出し、当該算出した各PWM制御信号を、前記各被駆動体に対応するそれぞれのモータ駆動手段に出力するものである。
【0009】
この構成によれば、同一の速度差算出手段及び速度制御手段で算出される各モータ駆動手段へのPWM制御信号によって、各モータの駆動制御を行うため、当該各モータによって駆動される被駆動体について、例えば、各モータの立ち上がり時の速度ずれを抑えたり、各被駆動体に速度差が発生しないようにして立ち上げることが可能になる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のモータ駆動制御装置を備え、前記被駆動体が転写体及び感光体ドラムである画像形成装置である。
【0011】
この構成によれば、互いの速度差が直接画像に影響を与える転写ローラ又は中間転写ベルトの駆動ローラ等の転写体、或いは感光体ドラムについて、それぞれの回転速度毎にフィードバック制御を適切に行って、互いの速度差を軽減できるので、画像品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、速度差算出手段及び速度制御手段をCPU又はDSP等で構成可能であるためにモータ駆動制御の自由度が増し、更に、アナログ回路での構成も不要であるため、安定した品質性能が得られ、部品点数も低減される。また、アナログ回路によるPLL制御のようなクロックに同期させる制御ではないため、制御に用いるクロック出力を削減でき、不要輻射等のノイズにより他部品に弊害が及ぶことを防止できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、当該各モータによって駆動される被駆動体について、例えば、各モータの立ち上がり時の速度ずれを抑え、各被駆動体に速度差が発生しないようにして立ち上げることが可能になる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、互いの速度差が直接画像に影響を与える転写ローラ又は中間転写ベルトの駆動ローラ等の転写体、或いは感光体ドラムについて、それぞれの回転速度毎にフィードバック制御を適切に行って、互いの速度差を軽減できるので、画像品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るモータ駆動制御装置及び画像形成装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る複合機の内部構造を示す正面断面視の説明図である。本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例としての複合機1は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能、ファクス機能等を兼ね備え、カラー印刷が可能な構成を備えている。胴内排紙型と称される箱形を呈した装置本体11と、この装置本体11の上部に設けられた、原稿画像を読み取る画像読取部16とを備えた基本構成を有している。
【0016】
前記装置本体11には、画像読取部16によって読み取られた原稿の画像情報に基づき画像を形成する画像形成部12と、この画像形成部12によって形成され、用紙(転写材)Pに転写された画像に定着処理を施す定着部13と、転写用の用紙を貯留する用紙貯留部14とが内装されている。
【0017】
前記画像読取部16は、装置本体11の上面に開閉可能に設けられた原稿押え161と、装置本体11の上部の筐体内でコンタクトガラス163を介して原稿押え161と対向配置された光学系ユニット162とを備えている。コンタクトガラス163は、載置された原稿の原稿面を読み取るために原稿押え161より若干小さい平面形状に寸法設定されている。前記原稿押え161は、画像読取部16の一構成要素である筐体の上面の一側辺に設けられた所定の軸回りに正逆回動することにより開閉可能になっている。
【0018】
かかる画像読取部16の適所には、原稿読み取りや複写処理等に関する処理条件を入力操作するための図略の操作パネルが設けられている。この操作パネルには、図略の表示パネルやテンキー、さらにはスタートボタン、モード切換えキー等が設けられている。
【0019】
前記光学系ユニット162は、図略の光源や複数のミラー、レンズユニット、さらにはCCD(charge coupled device)等を有している。そして、光源からの光が原稿面で反射され、この反射光がこれらミラーおよびレンズユニットを介して原稿情報としてCCDに入力されるようになっている。CCDに入力されたアナログ量としての原稿情報は、デジタル信号に変換されて所定の記憶装置に記憶されるようになっている。
【0020】
前記画像形成部12は、用紙貯留部14から給紙された用紙にトナー画像を形成させるものであり、本実施形態では、上流側(図1の紙面の右側)から下流側へ向けて順次配設されたマゼンタ用ユニット12Mと、シアン用ユニット12Cと、イエロー用ユニット12Yと、ブラック用ユニット12Kとが備えられている。
【0021】
各ユニット12M,12C,12Y,12Kには、感光体ドラム121および現像装置122がそれぞれ備えられている。各感光体ドラム121は、図1において反時計方向へ向けて回転しつつ対応した現像装置122からトナーの供給を受けるようになっている。各現像装置122には、装置本体11の前面側(図1の紙面の表側)に配設された図略のトナーカートリッジからトナーが補給されるようになっている。
【0022】
各感光体ドラム121の直下位置には帯電器123がそれぞれ設けられているとともに、帯電器123のさらに下方位置には露光装置124が設けられている。そして、各感光体ドラム121は、前記帯電器123によって周面が一様に帯電され、画像読取部16で入力された画像データに基づく各色に対応したレーザー光が前記各露光装置124から帯電後の感光体ドラム121の周面に照射されることにより、各感光体ドラム121の周面に静電潜像が形成されるようになっている。かかる静電潜像に現像装置122からトナーが供給されることにより、感光体ドラム121の周面にトナー像が形成される。
【0023】
感光体ドラム121の上方位置には、当該各感光体ドラム121の周面に当接するように駆動ローラ125aおよび従動ローラ125b間に張設された転写ベルト125が設けられている。この転写ベルト125は、各感光体ドラム121に対応して設けられた転写ローラ126によって感光体ドラム121の周面に押し付けられた状態で各感光体ドラム121と同期しながら、駆動ローラ125aの回転に伴って、駆動ローラ125aと従動ローラ125bとの間を周回するようになっている。
【0024】
従って、転写ベルト125が周回することによりその表面に対しマゼンタ用ユニット12Mの感光体ドラム121によるマゼンタのトナー像の転写が行なわれ、ついで転写ベルト125の同一位置にシアン用ユニット12Cの感光体ドラム121によるシアンのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、ついで転写ベルト125の同一位置にイエロー用ユニット12Yの感光体ドラム121によるイエローのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、最後のブラック用ユニット12Kの感光体ドラム121によるブラックのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、これによって転写ベルト125の表面にカラーのトナー像が形成される。この転写ベルト125の表面に形成されたカラーのトナー像が用紙貯留部14から搬送されてきた用紙Pに転写されることになる。
【0025】
そして、各感光体ドラム121の図1における左方位置には当該感光体ドラム121の周面の残留トナーを除去して清浄化するクリーニング装置127が設けられている。クリーニング装置127によって清浄化処理された感光体ドラム121の周面は、新たな帯電処理のために帯電器123へ向かうことになる。
【0026】
クリーニング装置127で感光体ドラム121の周面から取り除かれた廃トナーは、所定の経路を通って図略のトナー回収ボトルに回収され、貯留されるようになっている。
【0027】
画像形成部12の図1における左方位置には、上下方向に延びる用紙搬送路111が形成されている。この用紙搬送路111には、適所に搬送ローラ対112が設けられ、用紙貯留部14からの用紙がこの搬送ローラ対112の駆動で駆動ローラ125aに掛け回されている転写ベルト125へ向けて搬送されるようになっている。かかる用紙搬送路111には、駆動ローラ125aと対向した位置に転写ベルト125の表面と当接した第2転写ローラ113が設けられ、用紙搬送路111を搬送されつつある用紙Pが転写ベルト125と第2転写ローラ113とに押圧挟持されることによって転写ベルト125上のトナー像が当該用紙Pに転写されるようになっている。
【0028】
前記定着部13は、画像形成部12で転写された用紙上のトナー像に対し定着処理を施すものであり、定着装置20を備えて構成されている。前記定着装置20は、内部に加熱源である通電発熱体としてのハロゲンランプ33を備えた加熱ローラ30と、この加熱ローラ30と対向配置された定着ローラ(対向部材)40と、この定着ローラ40および前記加熱ローラ30間に張設された定着ベルト50と、この定着ベルト50と前記定着ローラ40を介して対向配置された加圧ローラ60とを備えている。
【0029】
定着処理の完了したカラー画像付の用紙Pは、定着部13の上部から延設された排紙搬送路114を通って装置本体11に設けられた胴内排紙トレイ115へ向けて排出されることになる。
【0030】
前記用紙貯留部14は、装置本体11における露光装置124の下方位置に挿脱自在に装着された用紙トレイ141を有している。用紙トレイ141には用紙束が貯留されるようになっている。そして、用紙トレイ141に貯留された用紙束からピックアップローラ142の駆動で用紙Pが1枚ずつ繰り出され、用紙搬送路111を通って画像形成部12の第2転写ローラ113と転写ベルト125との間のニップ部へ向けて送り込まれるよう
になっている。
【0031】
本発明の一実施形態に係るモータ駆動制御装置は、各ユニット12M,12C,12Y,12Kのそれぞれの感光体ドラム121に回転駆動力を付与するモータと、転写ベルト125を周回させる駆動ローラ125aに回転駆動力を付与するモータと、第2転写ローラ113に回転駆動力を付与するモータのそれぞれを駆動制御するために、複合機1に備えられている。
【0032】
図2は、複合機1に備えられるモータ駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。図3は、エンコーダ1014の一例であるロータリエンコーダのセンサホイール1014a及びセンサ1014bと、モータ1012と、第2転写ローラ113との構成を示す側面図である。図4は、ロータリエンコーダのセンサホイール1014aの形態を示した正面図である。
【0033】
モータ駆動制御装置10は、上述したように各ユニット12M,12C,12Y,12Kのそれぞれの感光体ドラム121、駆動ローラ125a、及び第2転写ローラ113の回転駆動源となるそれぞれのモータの各駆動制御のために設けられる。
【0034】
複合機1には、制御部100と、転写ローラ駆動ユニット101と、転写ベルト駆動ユニット102と、感光体ドラム駆動ユニット103とが備えられている。
【0035】
転写ローラ駆動ユニット101は、モータドライバ1011と、モータ1012と、ギア1013と、エンコーダ1014と、第2転写ローラ113とを備えている。
【0036】
また、転写ベルト駆動ユニット102は、モータドライバ(モータ駆動手段)1021と、モータ1022と、ギア1023と、エンコーダ1024と、駆動ローラ125aとを備える。感光体ドラム駆動ユニット103は、モータドライバ(モータ駆動手段)1031と、モータ1032と、トラクション減速器1033と、エンコーダ1034と、感光体ドラム121とを備えている。
【0037】
転写ローラ駆動ユニット101の各部と、転写ベルト駆動ユニット102及び感光体ドラム駆動ユニット103の各部の詳細は、感光体ドラム121の駆動に適用される仕様がトラクションモータ、トラクション減速器であってもよいこと以外は同様であるため、以下には、転写ローラ駆動ユニット101の構成を説明する。
【0038】
モータドライバ(モータ駆動手段)1011は、モータ1012を回転駆動する駆動機構である。モータ1012は、例えばブラシレスDCモータ又はステッピングモータ等からなり、第2転写ローラ113に回転駆動力を付与する。ギア1013は、モータ1012の出力軸に設けられたギアと噛合して、モータ1012の出力を減速させるギアであり、モータ1012の駆動力伝達先である第2転写ローラ113の駆動軸に取り付けられている。ギア1013は、モータ1012の出力軸に設けられたギアの歯数よりも多い歯数を有する。ギア1013の歯数は、減速させる速度に応じて適宜設定される。
【0039】
エンコーダ1014は、例えば、ロータリエンコーダ又はMR(磁気)センサからなる。図3に示すように、ギア1013は、第2転写ローラ113の駆動軸113aに取り付けられており、上記のように設定されるギア減速比によってモータ1012の出力の回転速度を減速して第2転写ローラ113に伝達する。モータ1012は、ギア1013を介して駆動軸113aを回転駆動すると、第2転写ローラ113が、減速されたモータ速度により回転する。例えば、モータ1012の出力軸1012aのギア1012bのギア数が10、ギア1013のギア数が100である場合、減速比は1/10であるので、モータ速度が1000rpmの場合、第2転写ローラ113の回転数は100rpmとなる。
【0040】
エンコーダ1014の一例であるロータリエンコーダのセンサホイール1014aは、第2転写ローラ113の駆動軸113aに取り付けられ、駆動軸113aと同心で回転するようになっている。このセンサホイール1014a周縁の一部には、光検出器からなるセンサ1014bが設けられている。図4に示すように、センサホイール1014aの周縁であって、上記センサ1014bによるセンシング対象領域には、センサホイール1014aの周方向に沿って多数のスリットSが一定間隔で形成されている。センサ1014bは、当該スリットSの列を挟む位置に設けられた光源及び受光部を有し、スリットSの列で断続された光を受光部が受光すると、検出パルスをCPU100のカウンタ711に出力するようになっている。
【0041】
当該駆動力伝達機構では、ギア1013又はモータ1012の側のギア1012bの精度や、ギア1013とモータ1012の出力軸1012aのギアとの噛合時における滑り等により、モータ1012の回転駆動力の第2転写ローラ113への伝達ロスが生じ、第2転写ローラ113の駆動軸113aの周速は、モータ1012の出力軸1012aの周速に比べて遅くなるおそれがある。
【0042】
なお、転写ベルト駆動ユニット102におけるエンコーダ1024、モータ1022及び転写ベルト125の構成、感光体ドラム駆動ユニット103におけるエンコーダ1034、モータ1032及び感光体ドラム121の構成は、上記転写ローラ駆動ユニット101におけるエンコーダ1014、モータ1012及び第2転写ローラ113の構成と同様である。
【0043】
制御部100は、CPU又はDSP(Digital Signal Processor)等からなり、複合機1の全体的な動作制御を司るものである。制御部100は、速度差算出部71と、速度制御部72と、カウンタ711とを備えている。
【0044】
カウンタ(パルス幅検出部)711は、エンコーダ1014から出力されてくるパルスのパルス幅(第2転写ローラ113の回転速度情報を示す)を検出する。なお、エンコーダ1014(エンコーダ1024、エンコーダ1034)及びカウンタ711が特許請求の範囲の被駆動体回転速度検出手段の一例である。
【0045】
速度差算出部(速度差算出手段)71は、エンコーダ1014及びカウンタ711によって検出された第2転写ローラ113の回転速度と、予め設定されている第2転写ローラ113の目標速度との差を算出するものである。速度差算出部71は、レジスタ712と、差分算出部713とを備えている。レジスタ712は、予め設定されている第2転写ローラ113の目標速度に対応するパルス幅の値を記憶している。差分算出部713は、カウンタ711によってカウントされた上記パルス幅を示すカウント値と、レジスタ712に記憶されている目標速度に対応するパルス幅の値との差を算出する。差分算出部713は、算出した差分値を速度制御部72に出力する。
【0046】
速度制御部(速度制御手段)72は、差分算出部713によって算出される各差分値に対応するデューティ比が記憶されたテーブルを記憶している。或いは、速度制御部72は、差分算出部713によって算出される各差分値に対応するデューティ比を予め定められた算出式に基づいて算出する。速度制御部72は、差分算出部713によって算出された差分値に対応するデューティ比を上記テーブル又は算出式に基づいて算出し、当該算出したデューティ比からなるPWM制御信号を基準クロック信号に基づいて生成する。速度制御部72は、当該生成したPWM制御信号を速度制御信号としてモータドライバ1011に出力する。これにより、モータドライバ1011は、第2転写ローラ113の駆動源であるモータ1012の出力の回転速度が上記目標速度となるようにモータ1012を駆動制御することになる。また、レジスタ712に設定されている上記目標速度を変更することで、この目標速度変更に伴って第2転写ローラ113の回転速度が追従するため、当該レジスタ712の目標速度を変更することによって第2転写ローラ113の回転速度を変化させることができる。
【0047】
速度差算出部71及び速度制御部72は、同様に、転写ベルト駆動ユニット102のエンコーダ1024とカウンタ711とで検出される駆動ローラ125aの回転速度情報と、感光体ドラム駆動ユニット103のエンコーダ1034とカウンタ711とで検出される感光体ドラム121の回転速度情報とに基づいて、転写ベルト駆動ユニット102のモータドライバ1021用のPWM制御信号と、感光体ドラム駆動ユニット103のモータドライバ1031用のPWM制御信号とを生成し、モータドライバ1021及びモータドライバ1031にそれぞれのPWM制御信号を速度制御信号として出力する。
【0048】
なお、上記予め設定されている第2転写ローラ113、転写ベルト125の駆動ローラ125a及び感光体ドラム121の目標速度(例えば、第2転写ローラ113、駆動ローラ125a及び感光体ドラム121のそれぞれの周面速度)は、画像転写の必要上、全て同じ速度とされる。そのため、速度差算出部71及び速度制御部72が、上述したように、目標速度に対応するパルス幅との差に基づいて各モータドライバ1011,1021,1031用のそれぞれのPWM制御信号を生成すれば、生成された各PWM制御信号で各モータドライバ1011,1021,1031がモータ1012,1022,1032を駆動することにより、モータ1012,1022,1032の出力の回転速度が全て同速度となる。
【0049】
なお、本発明の一実施形態に係るモータ駆動制御装置は、モータドライバ1011,1021,1031と、エンコーダ1014、エンコーダ1024及びエンコーダ1034と、速度差算出部71と、速度制御部72とを備えてなる。
【0050】
このように、同一のCPU等からなる制御部100によって、第2転写ローラ113、転写ベルト125の駆動ローラ125a及び感光体ドラム121の各駆動源となるモータ1012,1022,1032を駆動制御することによって、第2転写ローラ113、転写ベルト125の駆動ローラ125a及び感光体ドラム121についての各モータ1012,1022,1032の立ち上がり時の速度ずれを抑え、第2転写ローラ113、転写ベルト125の駆動ローラ125a及び感光体ドラム121を、その回転速度に速度差が発生しないようにして立ち上げることが可能になるため、転写ベルト125と感光体ドラム121、転写ベルト125と第2転写ローラ113のように、互いに接触している部材同士の速度を精度よく揃えることができ、トナー画像転写時の画像ずれ等を無くして、画像品質を向上させることが可能になる。
【0051】
また、このような同一のCPU等からなる制御部100での制御によれば、アナログ回路によるPLL制御のようなクロックに同期させるモータ駆動制御ではないため、制御に用いるクロック出力を削減でき、不要輻射等のノイズにより他部品に弊害が及ぶことを防止できる。
【0052】
また、このような同一のCPU等からなる制御部100での制御によれば、転写ベルト
125と感光体ドラム121、転写ベルト125と第2転写ローラ113の各部における転写動作において、これらの各ニップ部への記録紙の接触時及び解除時に発生する負荷の変動に基づく第2転写ローラ113、転写ベルト125の駆動ローラ125a及び感光体ドラム121の回転速度変化を抑制する形での制御が可能になる。
【0053】
さらに、複数の感光体ドラム121と転写ベルト125との各ニップ部に記録紙が次々に接触及び解除することで生じる転写ベルト125と各感光体ドラム121の回転速度変化も、上記同一のCPU等からなる制御部100での制御によれば、当該回転速度変化を抑制する形での制御が可能になる。
【0054】
また、転写ベルト125に関しては、材質上トルクによって伸縮が発生し、上記負荷変動時や速度変動時に引張りが生じた場合、当該引張りの解消後に転写ベルト125の走行速度が安定するまでには時間を有するが、上記同一のCPU等からなる制御部100での制御によれば、上記引張りで生じた振動を打ち消す形で感光体ドラム121及び転写ベルト125(駆動ローラ121a)の速度を任意に制御可能であるため、転写ベルト125の走行速度が安定するまでの時間の短縮化を図ることも可能になる。
【0055】
さらには、転写ベルト125に関しては、負荷応答性の面でステッピングモータが用いられる場合は、上記同一のCPU等からなる制御部100での制御によれば、スルーアップ時及びスルーダウン時にモータにかかる負荷トルクを軽減するように制御可能であるため、消費電力の削減及び脱調の回避等を図ることができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、エンコーダ1014から出力されてくるパルスのパルス幅と、エンコーダ1024から出力されてくるパルスのパルス幅と、エンコーダ1034から出力されてくるパルスのパルス幅とを検出するパルス幅検出部として、カウンタ711を適用する例を示しているが、当該パルス幅検出部は、カウンタに限られず、パルス幅を時間で計測するタイマ等の他の機構であってもよい。パルス幅検出部としてタイマが適用される場合、レジスタ712は、予め設定されている第2転写ローラ113、駆動ローラ125a及び感光体ドラム121の目標速度に対応するパルス幅の値を時間で記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機の内部構造を示す正面断面視の説明図である。
【図2】複合機に備えられるモータ駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】エンコーダの一例であるロータリエンコーダのセンサホイール及びセンサと、モータと、転写ローラとの構成を示す側面図である。
【図4】ロータリエンコーダのセンサホイールの形態を示した正面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 複合機
10 モータ駆動制御装置
11 装置本体
12 画像形成部
71 速度差算出部
72 速度制御部
711 カウンタ
712 レジスタ
713 差分算出部
100 制御部
101 転写ローラ駆動ユニット
102 転写ベルト駆動ユニット
103 感光体ドラム駆動ユニット
113 第2転写ローラ
113a 駆動軸
121 感光体ドラム
121a 駆動ローラ
125 転写ベルト
125a 駆動ローラ
1011,1021,1031 モータドライバ
1012,1022,1032 モータ
1012a 出力軸
1014,1024,1034 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転速度を制御するモータ駆動制御装置であって、
前記モータを回転駆動するモータ駆動手段と、
前記モータからの回転駆動力で回転する被駆動体の回転速度を検出する被駆動体回転速度検出手段と、
前記被駆動体回転速度検出手段によって検出された前記被駆動体の回転速度と、予め設定されている被駆動体回転速度との速度差を算出する速度差算出手段と、
前記速度差算出手段によって算出された速度差に対応する速度制御信号を生成し、当該生成した速度制御信号を前記モータ駆動手段に出力する速度制御手段と
を備えたモータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記被駆動体回転速度検出手段は、MRセンサ又はエンコーダと、当該MRセンサ又はエンコーダから出力されるパルスのパルス幅を検出するパルス幅検出部とを有し、
前記速度差算出手段は、前記予め設定されている被駆動体の目標回転速度に対応するパルス幅の値を記憶する記憶部と、前記パルス幅検出部によるパルス幅検出値と当該記憶部に記憶されているパルス幅の値との差分を前記速度差として算出する差分算出部とを有し、
前記速度制御手段は、前記差分算出部によって算出された速度差に対応するデューティ比を算出し、当該算出したデューティ比からなるPWM制御信号を前記速度制御信号として前記モータ駆動手段に出力する請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記モータ駆動手段が複数設けられると共に、前記MRセンサ又はエンコーダは、当該各モータ駆動手段によって駆動されるモータの回転駆動力で回転する被駆動体のそれぞれについて設けられ、
前記パルス幅検出部は、前記各駆動体に設けられているMRセンサ又はエンコーダから出力される各パルスのパルス幅を検出し、
前記速度差算出手段の記憶部は、前記各被駆動体についての目標回転速度に対応する各パルス幅の値を記憶し、前記差分算出部は、前記パルス幅検出部による前記各被駆動体のパルス幅検出値と、前記記憶部に記憶されている前記各被駆動体についての各パルス幅の値との差を前記各被駆動体についての各速度差として算出し、
前記差分算出部によって前記各被駆動体についての前記各速度差が算出された場合、前記速度制御手段は、当該算出された各速度差に基づいて前記各被駆動体についてのPWM制御信号を算出し、当該算出した各PWM制御信号を、前記各被駆動体に対応するそれぞれのモータ駆動手段に出力する請求項2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ駆動制御装置を備え、
前記被駆動体が転写体及び感光体ドラムである画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−5575(P2009−5575A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279060(P2007−279060)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】