説明

モータ駆動用インバータ制御回路およびそれを用いた電気掃除機

【課題】小型で安価な構成であり、かつ効率の高いインバータ制御回路を提供すること。
【解決手段】インバータ制御回路は交流電源21を入力とし、直流電力に変換する全波整流回路23と、全波整流回路23に接続され複数個のスイッチング素子を有し直流電力から交流電力に変換するインバータ25と、インバータ25により駆動されるモータ26と、全波整流回路23の交流入力側に接続される小容量のリアクトル22と、全波整流回路23とインバータ25間に接続される小容量の平滑コンデンサ24とを備え、小容量のリアクトル22と小容量の平滑コンデンサ24の共振周波数と、インバータの出力周波数との共振を回避するように矩形波駆動方式と正弦波駆動方式を切り換えてモータ26を駆動させる構成としたことにより、高速回転時での直流電圧の変動を抑制することができ、また大容量のコンデンサを使用せずに高速回転制御が行なえ回路の小型化が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷例えばモータを駆動させるために、直流を交流に変換させるインバータ制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインバータ制御回路では、単相交流電源の入力に力率改善用のリアクトルを用い、全波整流用のダイオードブリッジで直流に変換された電力を、平滑用の大容量の電解コンデンサで平滑した後、6個のスイッチング素子および、それに並列に接続されたダイオードを制御し、その出力である直流電力を所望の周波数の交流に変換し、モータの駆動を実現している。
【0003】
この回路で高調波規制をクリアするためには、非常に大きなリアクトルが必要であり、そのためコスト、重量、サイズの面で実用上の制約が大きい。リアクトルが小さいと電源電流波形は尖った波形となり多くの高調波を含むこととなる。
【0004】
一方、図4は特許文献1に記載されたモータ駆動用インバータ制御装置の図である。特許文献1に示すように、極めて小容量のリアクトル11と、インバータの直流母線間に極めて小容量のコンデンサ12を設けたモータ駆動用インバータで、PN電圧予測手段19においてインバータが、実際に電圧出力するタイミングでの直流電圧予測値を直流電圧検出値の時系列データから求め、インバータ直流電圧が上昇中に必要以上のモータ電圧が印加されないようにして、モータに適正な電流を流し、小型、軽量、低コストのモータ駆動用インバータ制御装置が提案されていた。
【0005】
また、特許文献2に記載されたモータ駆動用インバータの制御装置は、従来のインバータ制御回路のコスト、重量、サイズの点での問題を解決するために、単相交流電源を入力とする単相ダイオード全波整流回路と、これに接続される従来のダイオード全波整流回路用の平滑コンデンサの1/100程度の小容量平滑コンデンサと、制御用PWMインバータとモータで構成された制御回路とによって、ダイオード全波整流回路の入力力率と波形の改善を実現させたモータ駆動用インバータの制御装置が考案されていた。これにより、小型のシンプルな回路構成により、入力力率および効率の高いインバータ装置が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−304248号公報
【特許文献2】特開2002−51589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、小容量のリアクトルと、小容量の平滑コンデンサを用いてモータ駆動を制御する場合、リアクトルと平滑コンデンサの共振周波数に対して、インバータの出力周波数が、共振周波数の近傍になってくると、コンデンサが極めて小容量であるため、直流部の電圧が大きく変動してくる。そのため、インバータのスイッチング素子の制御が正常に行なわれず、モータを駆動できなかったり、回路の効率を低下させる要因となっていた。
【0008】
また、モータ駆動方式として、矩形波駆動方式や正弦波駆動方式などが用いられている
が、特にインバータ回路のスイッチング損失が小さい矩形波駆動方式を用いた場合、電圧変動は顕著に現れ、矩形波駆動方式を用いた場合は、平滑コンデンサの容量を大きくしないと、正常に動作できなくなり、回路効率の低下や、コスト、形状、重量増の課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、コンデンサの容量を大きくすることなく、矩形波駆動方式と、正弦波駆動方式をインバータの出力周波数に応じて選択することにより、小型化のインバータ制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明のインバータ制御回路は交流電源を入力とし、直流電力に変換する全波整流回路と、全波整流回路に接続され複数個のスイッチング素子を有し直流電力から交流電力に変換するインバータと、インバータにより駆動されるモータと、全波整流回路の交流入力側に接続される小容量のリアクトルと、全波整流回路とインバータの間に接続される小容量の平滑コンデンサとを備え、小容量のリアクトルと小容量の平滑コンデンサの共振周波数と、インバータの出力周波数との共振を回避するように、矩形波駆動方式と正弦波駆動方式を切り換えてモータを駆動させる構成とした。
【0011】
これにより、高速回転時などで、共振周波数にインバータの出力周波数が近づいていく場合でも直流電圧の変動を抑制することができ、また大容量のコンデンサを使用せずに、高速回転での制御を行なうことができるため回路の小型化が実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインバータ制御回路は、小型、低コストの回路で構成され、高効率のモータ駆動用インバータ制御回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態1におけるインバータ装置の回路構成図
【図2】本実施の形態1における矩形波駆動方式の駆動信号タイミングチャート
【図3】本実施の形態1におけるLC共振周波数の共振領域を示した図
【図4】従来の他のインバータ制御回路の構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、交流電源を入力とし、直流電力に変換する全波整流回路と、全波整流回路に接続され複数個のスイッチング素子を有し直流電力から交流電力に変換するインバータと、インバータにより駆動されるモータと、全波整流回路の交流入力側に接続される小容量のリアクトルと、全波整流回路とインバータの間に接続される小容量の平滑コンデンサとを備え、小容量のリアクトルと小容量の平滑コンデンサの共振周波数と、インバータの出力周波数との共振を回避するように、矩形波駆動方式と正弦波駆動方式を切り換えてモータを駆動することを特徴としている。これにより、平滑コンデンサの容量を大きくすることなく、小型化のインバータ制御回路でモータを駆動させることが可能となる。
【0015】
第2の発明は、インバータの出力周波数と、小容量のリアクトルと小容量の平滑コンデンサの共振周波数を比較し、インバータの出力周波数と、共振周波数の差が所定値以内になった時に、矩形波駆動方式から正弦波駆動方式に切り換えてモータを駆動することを特徴としている。これにより、インバータ出力周波数と、共振周波数との差が所定値以外のところでは、インバータのスイッチング素子のスイッチングが少ない矩形波駆動を行うことで、スイッチング損失を低減し、インバータ出力周波数と、共振周波数との差が所定値以内になった時に、正弦波駆動を行なうことで、直流部の電圧変動を抑制し、平滑コンデンサの容量を大きくすることなく、モータを駆動させることが可能となる。
【0016】
第3の発明は、電気掃除機のファンモータの駆動回路が、請求項1または2記載のインバータ制御回路により構成されたことを特徴としている。これにより、小型で効率の良い電気掃除機を提供することが可能となる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、モータ駆動用インバータ制御回路を例とした本実施の形態1の主要回路構成を示すものであり、電力変換回路、インバータ回路を示す。交流電源21より与えられる交流電力は、力率改善用のリアクトル22を通して全波整流回路23であるダイオードブリッジで直流に交換される。この直流部の両端には極めて小容量の平滑コンデンサ24が接続される。その容量は、例えば20μF程度の容量であり、寿命に課題のある電解コンデンサではなく、フィルムコンデンサを使用することができる。
また、この小容量であることにより、交流電源から流れ込む電流にコンデンサの充電電流の影響が少なくなるため、高周波成分は大幅に低減され、いわゆる高調波規制をクリアすることができる。
【0019】
また、リアクトル22も高調波電流が大幅に低減されることから、0.3mH程度の小型のものでよく、モータ駆動用インバータ制御回路全体の大きさは非常に小さくすることができる。この直流電力は、スイッチング素子25a〜25fおよび、それに並列に接続されたダイオードにより構成される上アーム側のスイッチング回路と、下アーム側のスイッチング回路による直列回路を3相分有し、これら直列回路における上アームと下アームの相互接続点が、負荷であるモータ26に接続された回路に供給される。
【0020】
制御手段27は、モータ26が所望の回転数で回転するような交流電力を回路が出力するように、スイッチング素子25a〜25fのスイッチングを制御する。スイッチングの方法としては、素子の駆動パルスの時間幅により出力電圧を制御する、一般的なパルス幅変調(PWM正弦波駆動方式)や、PWM駆動方式に比べるとスイッチング素子のスイッチング損失が少ない、矩形波駆動方式を用いており、本実施の形態1では、スイッチング素子25a〜25fの駆動信号を図2で示すようにU相巻線、V相巻線、W相巻線の内、2相の巻線に順次通電を行ない120度毎に通電の切り換えを行なう矩形波駆動方式を使用している。また、磁極検知用の位置センサ28を設置し、位置センサ28からの信号を基に、制御手段27から駆動信号を発生させている。
【0021】
図3は、リアクトル22と平滑コンデンサ24のLC共振周波数fを算出し、インバータの出力周波数とLC共振周波数fの差の所定値を±50%とし、所定値以内を共振領域としたものである。本実施の形態1では、0.3mHのリアクトルと、20μFのコンデンサを使用しており、LC共振周波数は2kH程度となり、共振領域としては1kHz〜3kHz程度としている。モータ26を駆動し回転数を上げていく段階で、インバータの出力周波数が1kHzになった場合に、矩形波駆動方式を行なっていると、通電の切り換えが120度毎となり、直流部の電圧変動は非常に大きくなる。
【0022】
そこで、インバータの出力周波数が共振領域に入った場合に、矩形波駆動方式から正弦波駆動方式に切り換えることにより、スイッチング素子25a〜25fのスイッチング周波数を20kHzなどの高周波でスイッチングすることで、直流部の電圧変動を抑制することが可能となる。
【0023】
これにより、共振領域に入らない場合は、スイッチング損失の少ない矩形波駆動方式を
行なうことにより、回路の効率を向上させることができ、また共振領域に入った場合は、直流部の電圧変動を矩形波駆動方式に比べて抑制することができる正弦波駆動方式を用いることで、コンデンサの容量を大きくしなくても、モータを駆動することができるため、小型化の回路が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明にかかるモータ駆動用インバータ制御回路は、特にインバータ制御回路の直流部に極めて小容量のコンデンサが設けられ、電源高調波を抑えながら小型、低コストの回路を実現するインバータ制御回路に用いられ、低コスト化、小型化、高効率の特徴が必要なインバータ制御回路について有用である。
【符号の説明】
【0025】
21 交流電源
22 リアクトル
23 全波整流回路
24 平滑コンデンサ
25 インバータ
25a〜25f スイッチング素子
26 モータ
27 制御手段
28 位置センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を入力とし、直流電力に変換する全波整流回路と、前記全波整流回路に接続され複数個のスイッチング素子を有し直流電力から交流電力に変換するインバータと、前記インバータにより駆動されるモータと、前記全波整流回路の交流入力側に接続される小容量のリアクトルと、前記全波整流回路と前記インバータの間に接続される小容量の平滑コンデンサとを備え、前記小容量のリアクトルと前記小容量の平滑コンデンサの共振周波数と、前記インバータの出力周波数との共振を回避するように、矩形波駆動方式と正弦波駆動方式を切り換えて前記モータを駆動することを特徴とするモータ駆動用インバータ制御回路。
【請求項2】
前記インバータの出力周波数と、前記小容量のリアクトルと前記小容量の平滑コンデンサの共振周波数を比較し、前記インバータの出力周波数と、前記共振周波数の差が、所定値以内になった時に、矩形波駆動方式から正弦波駆動方式に切り換えて前記モータを駆動するインバータ制御手段を備えた請求項1に記載のモータ駆動用インバータ制御回路。
【請求項3】
ファンモータを駆動する制御回路が請求項1または2に記載のインバータ制御回路により構成されたことを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−27149(P2013−27149A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159655(P2011−159655)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】