説明

モータ

【課題】
本発明では、金属製のベース部を介して、リード線を傷つけることなく、リード線を引き出す方向を変更することを目的とする。
【解決手段】
ブラシレスDCモータであって、中心軸を中心として回転するロータ部と、ロータ部と中心軸方向に対向する金属製の略円板状のベース部と、ロータ部に対向するように配置されコイルが巻装された電機子と、ベース部に配置されコイルが接続された回路基板と、回路基板から引き出されるリード線とを備え、ベース部と回路基板との間には絶縁シートが配置され、絶縁シートの少なくとも一部には、ベース部の外周よりも径方向外方にはみ出す延伸部が形成されており、延伸部が、ベース部の回路基板との反対側の面にまで延伸するとともに、リード線が、回路基板から反対側の面に延伸部に沿って引き出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータにおけるリード線の引き出し構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブラシレスDCモータやブラシレスDCモータが搭載されたファンは、ロータ部を支持するベース部、電機子のコイルに結線される回路基板などを備えている。ベース部は、直接および間接的に回路基板を支持する役目を担う。そして、回路基板にはリード線が接続され、リード線を介して外部電源から電流の供給や制御信号の伝達などが行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2000−116098
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のファンにおいて、リード線は、回路基板からハウジングの外部へと真っ直ぐに引き出されることが多い(例えば、
【特許文献1】を参照)。しかしながら、外部電源の位置や電子機器内部に配置されるファンの位置等によっては、リード線の引き出される方向は、様々に変更される場合がある。例えば、ファンにおける中心軸方向に引き出し、その後、中心軸方向とは異なる方向(中心軸と直交する方向)に引き出すということがある。この場合、リード線を中心軸方向と直交する方向に引き出す際に、回路基板を支持するベース部で方向転換が行われることがある。このような場合、ファンに対して外部から衝撃等が加わると、リード線がベース部によって傷つき、断線する恐れがある。特に、ベース部が金属等の材料からなる場合には、ベース部のリード線との接触部位が鋭利になっており、傷がつきやすい。
【0005】
本発明では、回路基板から引き出されたリード線を傷つけることなく、ベース部において、その引き出し方向を変更することが可能な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、ブラシレスDCモータであって、中心軸と、前記中心軸を中心として回転するロータ部と、前記ロータ部と前記中心軸方向に対向する金属製の略円板状のベース部と、前記ロータ部に対向するように配置されコイルが巻装された電機子と、前記ベース部に配置され前記コイルが接続された回路基板と、前記回路基板から引き出されるリード線と、を備え、前記ベース部と前記回路基板との間には絶縁シートが配置され、前記絶縁シートの少なくとも一部には、前記ベース部の外周よりも径方向外方にはみ出す延伸部が形成されており、前記延伸部が、前記ベース部の前記回路基板との反対側の面にまで延伸するとともに、前記リード線が、前記回路基板から前記反対側の面に前記延伸部に沿って引き出されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のブラシレスDCモータであって、前記リード線が前記延伸部に固定されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のブラシレスDCモータであって、前記絶縁シートの前記ベース部と対向する面の少なくとも一部に、前記ベース部に接着される接着面を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1から請求項3のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、前記中心軸方向から見たときに、前記絶縁シートの外形が前記ベース部、または前記回路基板と相似形であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明では、請求項1から請求項4のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、前記中心軸方向から見たときに、前記絶縁シートの外周縁が前記ベース部の外周縁よりも径方向内方側に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明では、請求項1から請求項5のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、前記ベース部が略環状であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明では、請求項1から請求項6のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、前記絶縁シートが樹脂製であることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明であって、請求項1から請求項7のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、前記絶縁シートの厚みが、一定であることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明では、請求項1から請求項8のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、前記絶縁シートの少なくとも一部が、厚くまたは薄くなっていることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明では、請求項1から請求項9のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、前記絶縁シートの延伸部に、少なくとも1つの凹部または凸部が形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明では、請求項1から請求項10のいずれかに記載のブラシレスDCモータを搭載したファン装置であって、前記ブラシレスモータの前記ロータ部に取り付けられ前記中心軸側から径方向外方に向かって延伸する複数の翼を有するインペラと、前記ブラシレスDCモータおよび前記インペラを囲むように配置されるハウジングと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明では、リード線を傷つけることなく、絶縁シートを介してベース部上を這わせることができ、かつ、リード線を任意の方向に任意に引き出すことが出来る。
【0018】
請求項2に記載の発明では、外部からの衝撃等が加わった場合にも、リード線が延伸部上から外れることがなく、安定して位置決めされる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、絶縁シートがベース部に強固に固定される。そのため、外部から衝撃等が加わった場合にも、絶縁シートがベース部からずれることが防止される。
【0020】
請求項4および請求項5に記載の発明では、平面視において、絶縁シートの外周縁が、延伸部を除いて回路基板およびベース部の少なくともいずれか一方の外周縁からはみ出すことがない。そのため、ブラシレスDCモータを組み立てる際に、絶縁シートの他の部品への引っかかりや挟み込みが防止されるとともに、絶縁シートを容易に取り付けることが出来る。
【0021】
請求項6および請求項7に記載の発明では、容易、かつ、大量に絶縁シートを形成することが出来る。
【0022】
請求項8に記載の発明では、絶縁シートの厚みが一定であるために、絶縁シートを薄板上にすることが可能であるとともに、各種加工法によって絶縁シートを容易、かつ大量に生産することが可能である。また、絶縁シートの厚みが一定であるために、ベース部や回路基板への取付を容易に行うことができる。
【0023】
請求項9に記載の発明では、回路基板やベース部などの形状に応じて、任意にその厚みを変えることができ、絶縁シートの重さを最小限とすることができる。その結果、ブラシレスDCモータの重さも減少するとともに、コストを低減することができる。
【0024】
請求項10に記載の発明では、絶縁シートの延伸部上に凹部または凸部を形成して、リード線を延伸部の上に容易に沿わすことが出来るとともに、また、容易に位置決めをすることが可能となる。
【0025】
請求項11に記載の発明では、リード線を傷つけることなく任意の方向に引き出すことが可能なファンを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明に係るブラシレスDCモータを搭載した遠心ファン1の断面図である。遠心ファン1は、中心軸J1を中心として回転可能なロータ部2、回転するロータ部2に対して相対的に静止するステータ部3、および、ロータ部2およびステータ部3を内包するハウジング4を有している。遠心ファン1は、例えば、ノートパソコンなどの電子機器内部の換気や電子機器内部に配置される電子部品の冷却等に用いられる。
【0027】
ハウジング4は、底部41、側壁部42、およびハウジングカバー43を有する筐体である。底部41は金属(例えばSUSなど)製のプレートであり、例えば、プレス加工や切削加工等によって成形される。また、底部41には、ステータ部3が固定される略円盤形状のベース部411と、複数(本実施形態では3つ)の吸気口44が形成されている。吸気口44は、ベース部411を中心として略扇形になっており、周方向に略等間隔に配置されている(後述の図4を参照)。
【0028】
側壁部42は、底部41と同じく金属(例えばSUSなど)製である。底部41とともにプレス加工や切削加工等によって一体に形成される。また、側壁部42は、底部41から中心軸J1方向一方側(図1中の上側)に延伸するように形成されている。そして、側壁部42の一部には、径方向外方からみたときに略矩形となっている排気口45と、後述するハウジングカバー43を係止するための係止部(図示省略)が形成されている。
【0029】
ハウジングカバー43は、樹脂または金属からなる部材である。そして、ハウジングカバー43は、底部41と中心軸J1方向に対向するように配置されており、その外周縁に係止部(図示省略)が形成されている。ハウジングカバー43が側壁部42に取り付けられる際に、ハウジングカバー43の係止部と側壁部42に形成される係止部により構成される係止構造よって、ハウジングカバー43は側壁部42に係止される。また、ハウジングカバー43には、軸方向から見たときに略円形となる吸気口46が形成されている。
【0030】
次に、ロータ部2について説明する。ロータ部2は、ハウジング4の内部に配置されており、インペラ21、ロータホルダ22、ロータマグネット23、およびシャフト24を有している。
【0031】
インペラ21は、インペラカップ211と複数の動翼212を備えている。インペラカップ211は、有蓋略円筒形状となっており、その外周面には複数の動翼212が周方向に等ピッチに配列されて形成されている。インペラカップ211および動翼212は、樹脂を用いた射出成型によって一体に形成されている。
【0032】
ロータホルダ22は、磁性材料(例えば、SUSなどの金属材料など)からなる有蓋略円筒形状の部材である。ロータホルダ22の外周面は、圧入や接着剤の塗布等の手段によって、インペラカップ211の内部に固定・保持されている。
【0033】
ロータマグネット23は、略環状の形状をしており、周方向に複数の極(例えば、4極)が配列されるように着磁されている。ロータマグネット22の外周面は、圧入や接着剤の塗布などの手段によって、ロータホルダ22の内側面に固定される。
【0034】
シャフト24は、略円柱形状をしており、磁性材料(例えば、SUSなどの金属材料)からなる。シャフト24の軸方向の一端(図1中における上側の端部)は、インペラカップ211およびロータホルダ22に圧入などの手段によって固定されている。また、シャフト24の軸方向における他方側の端部(図1中における下側に端部)には、その外周面に略環状の溝が形成されている。その溝には、SUSなどの金属部材などからなるとともに、その外径が、後述するスリーブ312の内径よりも大きい略環状のリング状部材241がはめ込まれて固定されている。
【0035】
次に、ステータ部3について説明する。ステータ部3は、軸受ユニット31、軸受ユニット31に固定される電機子32、および電機子32と電気的に接続される回路基板33を有している。
【0036】
軸受ユニット31は、軸受ハウジング311、スリーブ312、吸引マグネット313、潤滑油、およびシールワッシャ314を備える。
【0037】
軸受ハウジング311は、SUS等の金属材料からなる有底略円筒形状の部材である。軸受ハウジング311の円筒部3111と底部3112との間には、段差3113が形成されている。軸受ハウジング311の内部では、円筒部3111の内周にスリーブ312が、底部3112に吸引マグネット313がそれぞれ収容されている。また、軸受ハウジング311の軸方向ハウジングカバー43側にある開口は、シールワッシャ314によって覆われている。
【0038】
スリーブ312は、多孔質の焼結金属からなる略円筒形状の部材であり、その内部には潤滑油が含浸されている。スリーブ312の貫通孔の内周面は、シャフト24の外周面と径方向に対向しており、スリーブ312は潤滑油を介してシャフト24を回転可能に支持している。他方、スリーブ312の外周面は、軸受ハウジング311の円筒部3111と対向している。また、スリーブ312の軸方向ベース部411側の端面は、軸受ハウジング311の段差部3113と当接している。これにより、スリーブ312の軸方向における位置決めが行われる。
上述のように、シャフト24の先端には、リング状部材241が取り付けられている。リング状部材241の外径は、スリーブ312の内径よりも大きくなっている。そのため、外部からの衝撃等によって、シャフト24が軸方向ハウジングカバー43側へ移動した場合に、リング状部材241が、スリーブ312の軸方向ベース部411側の端面と当接するようになっている。これにより、外部からの衝撃等によるシャフト24の軸方向における動きを規制することができ、シャフト24を安定して回転させることが可能になっている。
【0039】
吸引マグネット313は、略円柱状のマグネットであり、軸受ハウジング311の底部3112に配置されている。吸引マグネット313は、軸受ハウジング311の底部3112およびシャフト24と、それぞれ軸方向に対向している。また、上述のように、軸受ハウジング311およびシャフト24は、それぞれ磁性材料からなる部材である。ゆえに、吸引マグネット313は、その磁力によって底部3112とシャフト24を引き付けている。これにより、軸受ユニット31に対して外部からの衝撃等が加わった場合においても、吸引マグネット313の軸方向の位置が安定するとともに、シャフト24の軸方向における動きが規制され、シャフト24を安定して回転させることが可能になっている。なお、軸受ハウジング311およびシャフト24は、同じ磁性材料であっても、異なる磁性材料であってもよい。
【0040】
シールワッシャ314は、軸受ハウジング311の開口側に取り付けられている。シールワッシャ24は、スリーブ312と軸方向に対向する略環状の蓋部3141と、軸受ハウジング311の外周面と径方向対向する環状部3142からなる。シールワッシャ314の蓋部3141の中央には、シャフト24が貫通する貫通孔31411が形成されている。シャフト24の外周面において、蓋部3141の貫通孔の内周面と対向する部分には、中心軸J1に対して傾きを有するテーパー面が形成されている。そのテーパー面と蓋部3141の貫通孔31411の内周面によって、軸受ハウジング311の内部に保持される潤滑油が漏れ出ることを防止するテーパシールが形成される。
【0041】
電機子32は、シールワッシャ314に取り付けられ、ロータマグネット23と径方向に隙間を介して対向するように配置されている。電機子32は、ステータコア34、インシュレータ35およびコイル36を有している。
【0042】
ステータコア34は、珪素鋼板をプレス加工等によって打ち抜いたものを、複数積層することによって形成される。ステータコア34には、中心軸J1から径方向外方に向かって延伸する複数(例えば、4つ)のティースが形成されている。ステータコア34のティースの外側面は、ロータマグネット22の内側面と径方向に対向する。ステータコア34の軸方向ハウジングカバー43側および軸方向ベース部411側には、樹脂などの絶縁材料からなるインシュレータ35が、それぞれ取り付けられている。そして、インシュレータ35を介して、ステータコア34のティースに導電線が巻き回され、コイル36が形成されている。
【0043】
回路基板33は、略円環形状をした基板であり、電機子32の軸方向ベース部411側に配置されている。回路基板33には、ロータ部2の回転位置を検知するホールICなどの電子部品が実装され、電機子32に流れる電流を制御するための駆動回路等が形成されている。また、回路基板33は、導電ピンなどを介して電機子32のコイル36と電気的に接続され、かつ、電源用のリード線5を介して、外部電源(図示省略)とも接続されている。外部電源からは、電流だけでなくロータ部2の回転を制御するための制御信号も制御用のリード線5を介して回路基板33へと送られてくる。
【0044】
リード線5および回路基板33を介して、外部電源から電機子32に電流が供給されると、電機子32には磁界が生じる。電機子32から生じる磁界とロータマグネット22から生じる磁界との相互作用によって、電機子32とロータ部2との間には、中心軸J1を中心とする回転トルクが発生する。この回転トルクによって、ロータ部2が、インペラ21とともに中心軸J1を中心として周方向に回転駆動される。その結果、ハウジングカバー43の吸気口46およびハウジング4の底部41の吸気口44から、外部空気がハウジング4内へと取り入れられ、ハウジング4の側壁部42の排気口45から排気される。
【0045】
また、回路基板33とベース部411との間には、樹脂などの絶縁材料からなる絶縁シート6が配置されている。絶縁シート6は、金属製のハウジング4と回路基板33とを電気的に絶縁するために組み入れられる。図2および図3に、絶縁シート6の平面図および側面図を示す。
【0046】
図2に示すように、絶縁シート6は、薄板状の略円環状の部材であり、略円形の基部61および基部61の外周縁から離れる方向に延伸する延伸部62を有する。基部61は、略円形であるとともに、その中央部に貫通孔610を有している。図1に示すように、基部61の貫通孔610の内周面は、ベース部411の円筒部の外周面と当接するようになっている。また、基部61は、ハウジング4のベース部411とほぼ同じ形状をしている相似形であり、かつ、軸方向から見たときに、ベース部411と基部61はほぼ重なって見える。なお、望ましくは、基部61の外周縁が、ベース部411の外周縁よりも径方向内方側に位置するほうがよい。そして、図3に示すように、基部61におけるベース部411の対向する面には、粘着テープ7が貼られている。これにより、絶縁シート6は、図1に示すように、遠心ファン1の組立の際にベース部411に密着固定される。なお、絶縁シート6とベース部411の固定(または係止)には、必ずしも粘着テープを用いる必要はない。絶縁シート6とベース部411の固定(または係止)は、接着剤などの接着性物質の塗布やピン止めなどによる機械的な固定手段や係止構造などによって行われてもよく、特に限定されるものではない。
【0047】
また、図2に示すように、絶縁シート6の外周縁には、基部61の外周縁から離れる方向(図2では左側)に延伸している延伸部62が、形成されている。延伸部62は、図2において略矩形となっており、図1および図3中における上下方向(すなわち、軸方向ハウジングカバー43側および軸方向ベース部411側)に自在に折り曲げが可能な弾性を有している。また、図1に示すように、平面視において、絶縁シート6の延伸部62は、ベース部411の外周縁から径方向外方に向かってはみ出すようになっている。
【0048】
そして、図1に示すように、絶縁シート6の延伸部62は、軸方向ベース部411側に向かって折り曲げられ、ベース部411の外周縁の一部を覆うようにして、ベース部411における回路基板33が位置する側とは逆側の面(図1中におけるベース部411の軸方向下側の面)と当接するようになっている。
【0049】
図1に示すように、リード線5は、回路基板33から径方向外方(図1中では右側)に向かって引き出されるとともに、ベース部411の外周縁よりも径方向外側の位置にて軸方向ベース部411側に折り曲げられて、ベース部411の回路基板33が位置する側とは反対側の面に引き出される。その後、リード線5は、絶縁シート6の延伸部62に沿うようにして、径方向内方側(図1中では左側)に折り曲げられている。言い換えると、リード線5は、延伸部62とともに、ベース部411の外周縁を基点として、略U字状に折り曲げられている。そして、図1中の左側に引き出されたリード線5の端部は、外部電源等へと接続される。
【0050】
図4は、本発明に係る第1の実施形態における遠心ファン1の底面図である。図4に示すように、絶縁シート6の延伸部62に沿って引き出されたリード線5は、延伸部62の少なくとも一部とともにテープ8によってベース部411に固定されている。なお、リード線5および絶縁シート6の延伸部62のベース部411への固定手段は、テープ8に限られるものではなく、例えば、接着剤やピンによって固定しても良い。また、テープ8は、リード線5のみをベース部411に固定することも可能である。しかしながら、延伸部62とリード線5は、ともにテープ8などの手段によってベース部411に固定されるほうが、より強固に固定される。
【0051】
また、絶縁シート6に形成される延伸部62の数は、必ずしも1つだけでなくてもよく、複数形成されてもよい。図5は、本発明に係る第1の実施形態における絶縁シート6の変形例を示す平面図である。図5に示すように、絶縁シート6の基部61の外周縁には、延伸部62、62Aがそれぞれ形成されている。この場合、回路基板33から引き出された複数のリード線5を延伸部62に沿わせ、かつ、延伸部62Aを延伸部62上に配置されるリード線5の上側(図5中における手前側)に重ねることができる。言い換えると、延伸部62と延伸部62Aによって、延伸部62に沿って引き出されているリード線5を挟み込むことができる。そして、延伸部62A上に、延伸部62および延伸部62Aによって挟み込まれたリード線5とは、別のリード線5を這わせる。それにより、回路基板33上において、延伸部62上を這うリード線5の引き出し方向と、延伸部62A上を這うリード線5の引き出し方向が異なって延伸部62を這うリード縁5と延伸部62を這うリード線5が、ベース部411上において交差することがあっても、各リード線5を傷つけることなく、かつ、各延伸部62、62Aの延伸方向に向かって、各リード線5を引き出すことが出来る。また、回路基板33に実装される電子部品の数が増加した際や回路基板33が複数個配置される場合などには、回路基板33に接続されるリード線5の本数を増やす必要が生じることもある。このようなときにも、複数の延伸部を形成することにより、各延伸部にリード線5をそれぞれ這わせつつ、各延伸部の延伸方向に沿って、各リード線5を引き出すことが可能となる。しかしながら、ベース部411上において、延伸部62および延伸部62Aは、必ずしも重なるように配置されなくてもよい。この場合においても、延伸部62および延伸部62Aを形成することにより、回路基板33上の異なる位置から引き出される各リード線5が、ベース部411と直接接触することは防止される。
【0052】
なお、図5に示すように、絶縁シート6に形成される延伸部62、62Aは、その形状がそれぞれ異なっている。延伸部62Aでは、貫通孔610から最も離れている外周縁の一部が面取りされて丸みを帯びている。延伸部62、62Aの形状は特に限定されるものではないが、絶縁シート6に複数の延伸部が形成される場合には、各延伸部の形状が異なるものであっても同じものであってもよい。
【0053】
そして、図5に示すように、絶縁シート6の延伸部62、62Aの形状に関しても、特に限定されるものではない。延伸部62の形状としては、例えば、軸方向から見たときに半円状、楕円形状、多角形などであってもよい。また、延伸部62Aのように、一部が面取りされている形状や切り欠きが形成されている形状であってもよい。
【0054】
さらに、本実施形態では、絶縁シート6の厚みは一定になっているが、絶縁シート6の厚みは、特に一定である必要はない。図6は、本発明に係る第1の実施形態における絶縁シートの変形例を示す断面図である。図6では、ベース部411と密着する基部61は、ベース部411と回路基板33との絶縁に必要なだけの厚さとなっている。他方、大きな負荷が加わるベース部411の外周縁と接触して折り曲げられる延伸部62、および基部62と延伸部62の境界部分では、基部61と比較して、その厚みが大きくなっている。また、図6に示すように、延伸部62の厚みと、基部61の厚みおよび粘着テープ7の厚みを足し合わせた厚みは、同じになっている。これにより、図6に示す絶縁シート6を、図1に示す遠心ファン1に組み込んだ際に、粘着テープ7の分の厚みの分だけ、遠心ファン1の軸方向の高さを低く抑えることができる。その結果、遠心ファン1を薄型化することが可能である。なお、図6に示す以外にも、絶縁シート6の厚みを部分的に変化させるようにしてもよい。
【0055】
そして、絶縁シート6は、必ずしも薄板状である必要はない。例えば、延伸部62の表面に凹部や凸部が形成されていてもよい。図7、図8および図9に、本発明に係る第1の実施形態における絶縁シート6の変形例を示す。以下の説明においては、上述の説明と同じ構造のものについては、同じ参照符号を付すものとする。
【0056】
図7は、本発明に係る第1の実施形態における絶縁シート6の変形例を示す平面図である。そして、図8は、本発明に係る第1の実施形態における絶縁シート6の変形例を示す側面図であり、図7に示す絶縁シート6の側面図である。
図7および図8に示すように、絶縁シート6の延伸部62には、延伸部62の延伸方向(図7中では左側)に沿って伸びる凹部621が形成されている。この凹部621は、延伸部62がベース部411の下側に折り曲げられた際に、凹部621の開口が下側に向くように形成されている。これにより、リード線5が延伸部62に這わされたときに、リード線5は凹部621内に少なくとも一部が納められ、外部へと引き出される。その結果、凹部621によって、延伸部62におけるリード線5の位置決めがなされ、リード線5が延伸部62上からずれることが防止される。
【0057】
また、凹部621の数はひとつだけでなく、複数形成されてもよい。例えば、延伸部62上において、リード線5の1本分の直径と同じ幅または数本分の直径の幅の凹部621が複数形成され、各凹部621にリード線5がそれぞれ1本ずつまたは複数本ずつ配置されるようにしてもよい。
【0058】
さらに、凹部621の形状は、特に限定されるものではなく、かつ、その延伸方向は必ずしも延伸部62の延伸方向に沿うものでなくともよい。
【0059】
図9は、本発明に係る第1の実施形態における絶縁シート6の別の変形例を示す平面図である。図9に示すように、絶縁シート6の延伸部62には、複数(本変形例では2つ)の凸部622が、互いに対向するように配置されている。この凸部622は、延伸部62がベース部411の下側に折り曲げられた際に、下側に突出するように設けられている。また、本変形例においては、凸部622間の幅は、少なくとも1つのリード線5の直径以上とされている。これにより、延伸部62にリード線5が這わされたときに、リード線5が凸部622と凸部622の間に配置されて、延伸部62上におけるリード線5の位置決めがなされる。その結果、凸部622によって、リード線5の延伸部62上における移動が制限され、リード線5が延伸部62からずれることが防止される。
【0060】
また、凸部622の形状や数は、特に限定されるものではない。複数個の凸部622の列が、互いに平行となるように配置されていてもよい。また、凸部622同士が必ずしも互いに対向した位置に配置されなくてもよい。
【0061】
そして、絶縁シート6の基部61の形状は、特に限定されるものではない。例えば、絶縁シート6をベース部411に取り付けた際に、絶縁シート6の形状が、軸方向から見たときにベース部411内に収まるような多角形状や楕円形状、一部に切り欠きが形成されたような略C字状であってもよい。また、基部61に形成される貫通孔610の形状も、特に限定されるものではない。貫通孔610の形状は、例えば、平面視において必ずしも円形でなくともよく、多角形形状や楕円形状などであってもよい。さらには、平面視において、絶縁シート6は、ベース部411と相似形でなくてもよい。平面視における絶縁シート6の形状は、例えば、回路基板33と相似形であっても良く、ベース部411と回路基板33のいずれにも相似形でなくてもよい。
【0062】
また、本発明に係る第1の実施形態では、本発明に係るブラシレスDCモータにインペラが取り付けられた遠心ファンについて説明した。しかし、本発明は、軸流ファンに適用されてもよい。本発明のブラシレスDCモータに必ずしもインペラが取り付けられなくてもよく、本発明のブラシレスDCモータの用途は特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る第1の実施形態におけるブラシレスDCモータを用いた遠心ファンの断面図である。
【図2】本発明に係る第1の実施形態における絶縁シートの平面図である。
【図3】本発明に係る第1の実施形態における絶縁シートの断面図である。
【図4】本発明に係る第1の実施形態におけるブラシレスDCモータを用いた遠心ファンの底面図である。
【図5】本発明に係る第1の実施形態における絶縁シートの変形例を示す平面図である。
【図6】本発明に係る第1の実施形態における絶縁シートの変形例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る第1の実施形態における絶縁シートの変形例を示す平面図である。
【図8】本発明に係る第1の実施形態における絶縁シートの変形例を示す側面図である。
【図9】本発明に係る第1の実施形態における絶縁シートの変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 遠心ファン
2 ロータ部
3 ステータ部
4 ハウジング
5 リード線
6 絶縁シート
21 インペラ
22 ロータホルダ
23 ロータマグネット
24 シャフト
31 軸受ユニット
32 電機子
33 回路基板
41 底部
42 側壁部
43 ハウジングカバー
45 排気口
46 吸気口
61 基部
62 延伸部
211 インペラカップ
212 動翼
241 リング状部材
311 軸受ハウジング
312 スリーブ
313 吸引マグネット
314 シールワッシャ
411 ベース部
621 凹部
622 凸部
3111 円筒部
3112 底部
3113 段差
3141 蓋部
3142 環状部
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスDCモータであって、
中心軸と、
前記中心軸を中心として回転するロータ部と、
前記ロータ部と前記中心軸方向に対向する金属製の略円板状のベース部と、
前記ロータ部に対向するように配置されコイルが巻装された電機子と、
前記ベース部に配置され前記コイルが接続された回路基板と、
前記回路基板から引き出されるリード線と、
を備え、
前記ベース部と前記回路基板との間には絶縁シートが配置され、
前記絶縁シートの少なくとも一部には、前記ベース部の外周よりも径方向外方にはみ出す延伸部が形成されており、
前記延伸部が、前記ベース部の前記回路基板との反対側の面にまで延伸するとともに、
前記リード線が、前記回路基板から前記反対側の面に前記延伸部に沿って引き出されることを特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレスDCモータであって、
前記リード線が前記延伸部に固定されることを特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、
前記絶縁シートの前記ベース部と対向する面の少なくとも一部に、前記ベース部に接着される接着面を有することを特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、
前記中心軸方向から見たときに、前記絶縁シートの外形が前記ベース部、または前記回路基板と相似形であることを特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、
前記中心軸方向から見たときに、
前記絶縁シートの外周縁が前記ベース部の外周縁よりも径方向内方側に位置することを特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、
前記ベース部が略環状であることを特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、
前記絶縁シートが樹脂製であることを特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、
前記絶縁シートの厚みが、一定であることを特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、
前記絶縁シートの少なくとも一部が、厚くまたは薄くなっていることを特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載のブラシレスDCモータであって、
前記絶縁シートの延伸部に、少なくとも1つの凹部または凸部が形成されることを特徴とするブラシレスDCモータ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載のブラシレスDCモータを搭載したファン装置であって、
前記ブラシレスDCモータの前記ロータ部に取り付けられ前記中心軸側から径方向外方に向かって延伸する複数の翼を有するインペラと、
前記ブラシレスDCモータおよび前記インペラを囲むように配置されるハウジングと、
を備えることを特徴とするファン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−74999(P2010−74999A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241944(P2008−241944)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】