説明

モールド用離型シームレスベルト

【課題】金型を用いて半導体パッケージ等を連続的に製造する際に用いる離型部材であって、連続稼動性や経済性に優れ、金型を閉じた際の密着性が高くシワの発生が抑制でき、金型を開いた際の離型性に優れる、高い耐久性を有する離型部材を提供する。
【解決手段】本発明のモールド用離型シームレスベルトは、ポリイミド樹脂を含む内層と、エラストマーを含む外層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモールド用離型シームレスベルトに関する。詳細には、半導体パッケージ等のモールド時の離型を容易にするために用い得るモールド用離型シームレスベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージは、一般に、半導体チップが搭載された基板を封止樹脂により封止して製造される。このような封止は金型内で行われるので、金型内面と封止樹脂との離型性を向上させるために、一般に金型内面には離型シートが配置される。
【0003】
半導体パッケージの小型化に伴い、QFNに代表される片面封止形態でのパッケージングが行われている。このような片面封止形態でのパッケージングにおいては、基板の被封止面と金型内面との間に離型シートを配置する。
【0004】
連続的に半導体パッケージを製造するため、最近は、注型金型の前後にリール装置を配置してロール状の離型シートが搬送できるようにし、封止工程が行われた後毎にロール状の離型シートを連続的に送り出して、毎回の封止工程において未使用の離型シートを用いる方法(リール・トゥ・リール法)が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、リール・トゥ・リール法による半導体パッケージの製造においては、毎回の封止工程において離型シートを使い捨てとする必要があり、余裕をもって次々と未使用のシートを送り出す必要があるため、シートのロスが大きいという経済性の問題がある。
【0006】
また、リール・トゥ・リール法による半導体パッケージの製造において、従来の離型シートを用いた場合、金型を閉じた際にシワが生じ易いという問題がある。また、リール・トゥ・リール法による半導体パッケージの製造において、従来の離型シートを用いた場合、金型を開いた際に、離型性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−123319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、金型を用いて半導体パッケージ等を連続的に製造する際に用いる離型部材であって、連続稼動性や経済性に優れ、金型を閉じた際の密着性が高くシワの発生が抑制でき、金型を開いた際の離型性に優れる、高い耐久性を有する離型部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のモールド用離型シームレスベルトは、ポリイミド樹脂を含む内層と、エラストマーを含む外層とを備える。
好ましい実施形態においては、上記エラストマーが、合成ゴムおよび熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種である。
好ましい実施形態においては、上記エラストマーが、シリコーンゴムである。
好ましい実施形態においては、上記内層が熱伝導性物質を含み、該熱伝導性物質の含有割合が該内層の総重量に対して80重量%以下である。
好ましい実施形態においては、上記外層のさらに外側の層として離型層を備える。
好ましい実施形態においては、上記離型層が、フッ素樹脂を含むフッ素樹脂層である。
好ましい実施形態においては、上記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、およびテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体から選ばれる少なくとも1種である。
好ましい実施形態においては、上記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である。
好ましい実施形態においては、上記シームレスベルト全体の体積抵抗率が、常用対数値4〜13(logΩ・cm)である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金型を用いて半導体パッケージ等を連続的に製造する際に用いる離型部材であって、連続稼動性や経済性に優れ、金型を閉じた際の密着性が高くシワの発生が抑制でき、金型を開いた際の離型性に優れる、高い耐久性を有する離型部材を提供することができる。
【0011】
上記のような効果は、金型を用いて半導体パッケージ等を連続的に製造する際に用いる離型部材として、従来のシート状部材とは異なるベルト状部材を採用するとともに、該ベルト状部材として、ポリイミド樹脂を含む内層とエラストマーを含む外層とを備えるモールド用離型シームレスベルトを採用することによって発現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい実施形態におけるモールド用離型シームレスベルト(離型層なし)の概略断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態におけるモールド用離型シームレスベルト(離型層あり)の概略断面図である。
【図3】本発明のモールド用離型シームレスベルトの好ましい使用形態の一例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.モールド用離型シームレスベルトの全体構成
本発明のモールド用離型シームレスベルトは、金型を用いて半導体パッケージ等を連続的に製造する際に用いる離型部材として好適である。本発明のモールド用離型シームレスベルトは、特に好ましくは、QFNに代表される片面封止形態でのパッケージングにおいて基板の被封止面と金型内面との間に配置して用いる離型部材として好適である。
【0014】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるモールド用離型シームレスベルト(離型層なし)の概略断面図である。モールド用離型シームレスベルト100は、内層1と外層2とを備える。当該内層1はポリイミド樹脂を含む。当該外層2はエラストマーを含む。この形態においては、外層2がモールド用離型シームレスベルトにおける外周を形成する層であり、例えば、半導体チップが搭載された基板等が存在する側の層となる。また、この形態においては、内層1がモールド用離型シームレスベルトにおける内周を形成する層であり、例えば、金型内面に接触する側の層となる。
【0015】
図2は、本発明の好ましい実施形態によるモールド用離型シームレスベルト(離型層あり)の概略断面図である。モールド用離型シームレスベルト100は、内層1と外層2と離型層3とを備える。当該内層1はポリイミド樹脂を含む。当該外層2はエラストマーを含む。この形態においては、離型層3がモールド用離型シームレスベルトにおける外周を形成する層であり、例えば、半導体チップが搭載された基板等が存在する側の層となる。また、この形態においては、内層1がモールド用離型シームレスベルトにおける内周を形成する層であり、例えば、金型内面に接触する側の層となる。
【0016】
本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいては、最外層の表面抵抗率を調整することにより、例えば、半導体チップが搭載された基板等への優れた密着性と優れた剥離性とを両立し得る。これにより、例えば、金型を閉じた際のシワの発生が効果的に抑制できるとともに、金型を開いた際の離型性が向上し得る。好ましい実施形態においては、本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいて、最外層の表面抵抗率が、常用対数値4〜13(logΩ/□)である。最外層の表面抵抗率は、例えば、最外層に導電性物質を含有させ、該導電性物質の種類および含有量を調整することにより制御することができる。
【0017】
本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいて、上記内層の表面抵抗率は、任意の適切な値を採用し得る。好ましい実施形態においては、本発明のシームレスベルト全体の体積抵抗率が常用対数値4〜13(logΩ・cm)となるように、上記最外層の表面抵抗率の調整値を勘案して、上記内層の表面抵抗率を制御すればよい。
【0018】
好ましい実施形態においては、本発明のモールド用離型シームレスベルト全体の体積抵抗率が、常用対数値4〜13(logΩ・cm)である。モールド用離型シームレスベルト全体の体積抵抗率がこのような範囲であれば、例えば、半導体チップが搭載された基板や金型内面等への優れた密着性と優れた剥離性とを両立し得るとともに、ベルトの速度変動が抑制でき、ベルトにおける電荷の均一性および剥離放電性に優れる。本発明のモールド用離型シームレスベルト全体の体積抵抗率は、例えば、各層に含めても良い導電性物質の種類および含有量を調整することにより制御することができる。
【0019】
本発明のモールド用離型シームレスベルトは、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記内層と上記外層との間に、さらに任意の適切な中間層を設けてもよい。また、上記内層にはスプロケットホールが設けられていても良い。
【0020】
B.内層
本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいて、上記内層は、ポリイミド樹脂を含む。内層を構成する樹脂中のポリイミド樹脂の含有割合は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%、より好ましくは100重量%である。本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいて、上記内層がポリイミド樹脂を含むことにより、高い耐久性を有する離型部材となる。また、本発明のモールド用離型シームレスベルトは、上記内層がポリイミド樹脂を含むとともに、本発明における特定の外層を有することで、金型を閉じた際の密着性が高くシワの発生が抑制でき、金型を開いた際の離型性に優れる。
【0021】
上記ポリイミド樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。上記ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン化合物との共重合体が挙げられる。
【0022】
上記テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0023】
上記ジアミン化合物の具体例としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0024】
上記ポリイミド樹脂は、好ましくは、芳香族ポリイミド樹脂である。芳香族ポリイミド樹脂を用いれば、耐熱性および機械強度のより優れる搬送用ベルトを得ることができる。芳香族ポリイミド樹脂の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)との共重合体、BPDA、DDE、およびp−フェニレンジアミン(PDA)の共重合体等が挙げられる。BPDA、DDEおよびPDAの共重合体におけるPDA由来の構成単位の含有割合は、DDE由来の構成単位に対して、好ましくは25モル%以下である。
【0025】
本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいて、上記内層は、熱伝導性物質を含んでいても良い。
【0026】
上記熱伝導性物質は、任意の適切なものが採用され得る。上記熱伝導性物質の具体例としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリカ、グラファイト、などが挙げられる。熱伝導性が高く、安定かつ無害で取り扱い易いという点等から、窒化ホウ素が好ましい。
【0027】
上記内層において、上記熱伝導性物質の含有割合は、ポリイミド樹脂に対して、好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは20〜60重量%である。上記熱伝導性物質の含有割合がこのような範囲であれば、熱伝導性に優れるモールド用離型シームレスベルトを得ることができる。
【0028】
本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいて、上記内層は、導電性物質を含んでいても良い。
【0029】
上記導電性物質は、任意の適切なものが採用され得る。上記導電性物質の具体例としては、例えば、カーボンブラック等の各種カーボン;アルミニウム、ニッケル、銀、銅等の各種金属;酸化スズ、チタン酸カリウム等の各種無機化合物;ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子;等が挙げられる。表面抵抗のばらつきを抑制できるという点、低コストを実現できるという点、取り扱い易いという点から、好ましくは、カーボンブラックである。
【0030】
上記カーボンブラックは、所望の導電性に応じて任意の適切なものが採用され得る。上記カーボンブラックの具体例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。中抵抗から高抵抗域(例えば、表面抵抗率10〜1014Ω/□、体積抵抗率10〜1014Ω・cm)において制電性が必要である場合は、特にチャンネルブラックやファーネスブラックが好適に用いられる。上記カーボンブラックは、用途に応じて、酸化処理、グラフト処理等の処理を施してもよい。酸化処理を施せば、酸化劣化を防止することができ、グラフト処理を施せば、溶媒への分散性を向上させることができる。
【0031】
上記カーボンブラックは、市販品を用いてもよい。市販品のチャンネルブラックの具体例としては、デグサ・ヒュルス社製の商品名「Color Black FW200」、「Color Black FW2」、「Color Black FW2V」、「Color Black FW1」、「Color Black FW18」、「Special Black 6」、「Color Black S170」、「Color Black S160」、「Special Black 5」、「Special Black 4」、「Special Black 4A」、「Printex 150T」、「Printex U」、「Printex V」、「Printex 140U」、「Printex 140V」等が挙げられる。市販品のファーネスブラックの具体例としては、デグサ・ヒュルス社製の商品名「Special Black 550」、「Special Black 350」、「Special Black 250」、「Special Black 100」、「Printex 35」、「Printex 25」、三菱化学社製の商品名「MA 7」、「MA 77」、「MA 8」、「MA 11」、「MA 100」、「MA 100R」、「MA 220」、「MA 230」、キャボット社製、「MONARCH 1300」、「MONARCH 1100」、「MONARCH 1000」、「MONARCH 900」、「MONARCH 880」、「MONARCH 800」、「MONARCH 700」、「MOGUL L」、「REGAL 400R」、「VULCAN XC−72R」等が挙げられる。
【0032】
上記内層において、上記導電性物質の含有割合は、ポリイミド樹脂に対して、好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは3〜30重量%である。上記導電性物質の含有割合がこのような範囲であれば、本発明のモールド用離型シームレスベルト全体について所望の体積抵抗率を得ることができる。また、上記内層に半導電性を付与することで、剥離帯電を抑制することが可能となる。
【0033】
上記内層の厚みは、強度や柔軟性などの機械的特性に優れたものとする点で、好ましくは5〜500μm、より好ましくは10〜300μm、さらに好ましくは20〜200μm、特に好ましくは50〜100μmである。
【0034】
上記内層は、例えば、(1)有機溶媒、または、有機溶媒中に上記熱伝導性物質や上記導電性物質を分散させて分散液を調製し、(2)有機溶媒、または、分散液に、上記テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体と上記ジアミン化合物を溶解させた後、重合反応させて、ポリアミド酸溶液を調製し、(3)ポリアミド酸溶液を円筒金型内に展開させた後に閉環イミド化反応を進行させて、ポリイミド樹脂を管状に形成することにより得ることができる。
【0035】
上記有機溶媒は、任意の適切な溶媒を採用し得る。上記有機溶媒の具体例としては、アセトン、クロロホルム、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。なかでも、極性のアミド系溶媒である、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらの極性のアミド系溶媒であれば、熱伝導性物質や導電性物質を用いる場合、熱伝導性物質や導電性物質の分散溶媒と後工程の重合反応溶媒とを兼用することができる。また、低分子量のN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドであれば、蒸発、置換又は拡散によりポリアミド酸及びポリアミド酸成形品から容易に除去することができる。上記有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記有機溶媒には、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を単独または組み合わせて混合してもよい。
【0037】
上記分散液には、さらに分散剤が添加されていてもよい。上記分散液が分散剤を含んでいれば、上記熱伝導性物質や上記導電性物質と上記有機溶媒との親和性を高めることができる。
【0038】
上記分散剤は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な分散剤が採用され得る。上記分散剤の具体例としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピぺリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等の高分子分散剤;界面活性剤;無機塩;等が挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記熱伝導性物質や上記導電性物質を用いる場合、上記熱伝導性物質や上記導電性物質の分散方法としては、任意の適切な分散方法を適用できる。当該分散方法として、例えば、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、超音波分散等の方法が挙げられる。上記熱伝導性物質や上記導電性物質の分散状態を調べる方法としては、任意の適切な方法を適用できる。例えば、光学顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。
【0040】
上記内層を得るにあたって、上記テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン化合物とを重合反応させる際、好ましくは、触媒を添加する。当該触媒は、任意の適切な触媒が採用され得る。当該触媒の具体例としては、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミン等が挙げられる。なかでも、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、キノリン、ジエチルピリジン、β−ピコリン等の含窒素複素環化合物が好ましい。
【0041】
上記触媒の使用量は、ポリアミド酸前駆体溶液のアミド酸1モル当量に対して、好ましくは0.04〜0.4モル当量、より好ましくは0.05〜0.4モル当量である。触媒の添加量が0.04当量モル以下では触媒の効果が十分ではないおそれがある。また、触媒の添加量が0.4当量以上添加しても、触媒添加効果の向上が見られないおそれがある。
【0042】
上記重合反応時のモノマー濃度(溶媒中におけるテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の濃度)は、好ましくは5〜30重量%である。
【0043】
上記重合反応時の反応温度は、好ましくは80℃以下であり、さらに好ましくは5〜50℃である。また、反応時間は、好ましくは5〜10時間である。
【0044】
上記ポリアミド酸溶液の溶液粘度は、好ましくは、B型粘度計で1〜1000Pa・s(25℃)である。溶液粘度がこのような範囲にあれば、次工程の遠心成形時に均一に溶液を展開することができ、厚みの均一なシームレスベルトを得ることができる。上記ポリアミド酸溶液の溶液粘度は、上記重合反応後に得られたポリアミド酸溶液をさらに加熱、撹拌することにより、所望の粘度とすることができる。当該加熱温度は、好ましくは、50〜90℃である。
【0045】
上記内層を得る際には、好ましくは、上記ポリアミド酸溶液を円筒金型内に展開させた後に閉環イミド化反応を進行させて、ポリイミド樹脂を管状に形成する。ポリイミド樹脂を管状に成形することにより、接合部(フィルムを管状とした際に生じる接合部)を有さないシームレスベルトの内層を得ることができる。その結果、耐久性および周長精度に優れるシームレスベルトを得ることができる。円筒金型内に展開させる方法としては、ディスペンサー塗布方式、浸漬方式、遠心方式、注形型に充填する方式などが挙げられる。好ましくは、回転遠心成形法により金型内周面に遠心力により展開させる遠心方法が挙げられる。このような方法によれば、ポリアミド酸溶液を均一に展開させることができる。上記閉環イミド化反応は、展開したポリアミド酸溶液を加熱することにより進行させることができる。このときの加熱温度は、好ましくは300〜400℃である。このときの加熱時間は、好ましくは0.5〜1時間である。また、加熱方法は、好ましくは、金型を回転させながら加熱する方法、高精度の熱風循環を用いる方法、低温で投入し昇温速度を小さくする方法およびこれらの方法の組み合わせが挙げられる。このような加熱方法によれば、ポリアミド酸溶液およびその乾燥物への加熱を均等に行うことができる。その結果、本発明のモールド用離型シームレスベルト全体の体積抵抗率を均一にすることができる。
【0046】
C.中間層
本発明のモールド用離型シームレスベルトは、必要に応じて、上記内層と上記外層との間に、任意の適切な中間層を有していてもよい。当該中間層としては、例えば、導電性プライマー層が挙げられる。中間層として導電性プライマー層を有すれば、外層と内層との密着性を向上させることができる。導電性プライマーとしては、例えば、導電性フッ素系プライマー、導電性ポリイミド系プライマー等が挙げられる。
【0047】
上記中間層の厚みは、好ましくは0.3〜5μmであり、さらに好ましくは0.5〜2μmである。
【0048】
上記中間層は、任意の適切な方法により形成され得る。例えば、上記中間層が導電性プライマー層である場合、上記内層の外周面にプライマー溶液を塗布することにより得られる。当該塗布方法としては、ロールコート、刷毛塗り、スプレーコート等が挙げられる。
【0049】
D.外層
本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいて、上記外層は、エラストマーを含む。外層を構成する樹脂中のエラストマーの含有割合は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%、より好ましくは100重量%である。本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいて、上記外層がエラストマーを含むことにより、金型を閉じた際の密着性が高くシワの発生が抑制でき、金型を開いた際の離型性に優れる。また、本発明のモールド用離型シームレスベルトは、上記外層がエラストマーを含むとともに、本発明における特定の内層を有することで、高い耐久性を有する離型部材となる。
【0050】
上記エラストマーとしては、任意の適切なエラストマーが採用され得る。エラストマーとは、一般に知られているように、弾性を示す高分子物質であり、外力により容易に変化するが、それを除くと直ちに原型にほぼ回復する力学的性質(ゴム弾性)を有する。
【0051】
上記エラストマーとしては、例えば、天然ゴムや合成ゴムなどの加硫ゴム;熱可塑性エラストマー;スパンデックスやポリカーボネート弾性繊維などの弾性繊維;スポンジゴムやフォームラバーなどの弾性発泡体;などが挙げられる。本発明においては、上記エラストマーとして、合成ゴムおよび熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種を採用することが好ましい。
【0052】
上記合成ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO、GECO、GPCO)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM、FEPM、FFKM)、シリコーンゴム(MQ、PMQ)、多硫化ゴム(OT、EOT)、ホスファゼンゴム(FZ、PZ)などが挙げられる。
【0053】
上記熱可塑性エラストマーは、常温では加硫ゴムの性質を示し、高温では可塑化されて、プラスチック加工機で成形できる高分子材料であり、TPEと称される。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン系TPE、ポリオレフィン系TPE、ポリエステル系TPE、ポリウレタン系TPE、1,2−ポリブタジエン系TPE、ポリ塩化ビニル系TPE、ポリアミド系TPEなどが挙げられる。
【0054】
本発明においては、上記エラストマーがタック性を有するエラストマーであることがより好ましい。タック性を有するエラストマーとしては、例えば、フッ素ゴムやシリコーンゴムが挙げられる。
【0055】
本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいて、上記外層がエラストマーを含むことによって、優れた金型密着性と優れた離型性を発現することができる。
【0056】
本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいて、上記外層は、導電性物質を含むことが好ましい。上記導電性物質は、任意の適切なものが採用され得る。上記導電性物質の具体例としては、前述した内層に用い得るものが挙げられる。表面抵抗のばらつきを抑制できるという点、低コストを実現できるという点、取り扱い易いという点から、好ましくは、カーボンブラックである。
【0057】
上記外層において、上記導電性物質の含有割合は、該外層の総重量に対して、好ましくは30重量%以下、より好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは5〜25重量%である。上記導電性物質の含有割合がこのような範囲であれば、上記外層および本発明のモールド用離型シームレスベルト全体について所望の表面抵抗率および体積抵抗率を得ることができる。
【0058】
上記外層の厚みは、強度や柔軟性などの機械的特性に優れたものとする点で、好ましくは5〜700μm、より好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは20〜400μm、特に好ましくは50〜300μmである。
【0059】
上記外層を得る際には、好ましくは、上記内層の外表面に上記エラストマーの溶液(エラストマー溶液)を展開することによって外層を形成する。エラストマー溶液は、エラストマーそのものが溶液状態であるものであっても良いし、上記の有機溶媒に溶解したものでも良い。上記内層の外表面にエラストマー溶液を展開することによって、接合部(フィルムを管状とした際に生じる接合部)を有さないシームレスベルトの外層を得ることができる。その結果、耐久性および周長精度に優れるシームレスベルトを得ることができる。展開させる方法としては、ディスペンサー塗布方式、浸漬方式、スプレー方式などが挙げられる。
【0060】
上記エラストマー溶液を内層の外表面に展開する方法は、好ましくは、上記エラストマー溶液を内層の外表面に塗布する工程と、塗布後に乾燥および加熱する工程を含む。
【0061】
上記エラストマー溶液を塗布する方法としては、例えば、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、刷毛塗り等の方法が挙げられる。
【0062】
上記スプレーコートに用いるガンとしては、均一な塗布が可能であることから、ノズル径の小さいガンが好ましい。当該ノズル径は、好ましくは、0.1〜2.0mmである。また、上記スプレーコート時のスプレー圧は、好ましくは、1.0〜5.0kg/cmである。
【0063】
上記エラストマー溶液を塗布する際、上記内層の内側に、形状保持のためのシリンダを嵌挿してもよい。また、上記エラストマー溶液の塗布された上記内層に円筒体を外挿配置させ、その状態から、上記円筒体または内層を円筒体の軸方向に走行させるか、もしくは上記両者を互いに反対方向に走行させて塗布厚みを均一にしてもよい。
【0064】
上記エラストマー溶液を塗布した後の加熱温度は、好ましくは20〜200℃であり、さらに好ましくは80〜150℃である。また、当該加熱時の加熱時間は、好ましくは、1分〜24時間である。
【0065】
E.離型層
本発明のモールド用離型シームレスベルトにおいては、上記外層のさらに外側の層として離型層を備えていても良い。
【0066】
上記離型層は、離型性を有する層であれば、任意の適切な層を採用し得る。上記離型層は、高い離型性を有して本発明の効果を十分に発現させることが可能である点で、フッ素樹脂を含むフッ素樹脂層が好ましい。
【0067】
上記フッ素樹脂は、任意の適切なフッ素樹脂を採用し得る。より高い離型性を有して本発明の効果をより十分に発現させることが可能である点で、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、およびテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体がより好ましい。
【0068】
上記外層と上記離型層との間には、これら二層を結合するためにプライマー層を設けることが好ましい。該プライマー層の形成材料としては、PR−990CL(三井デュポンフロロケミカル社製)等の、任意の適切なプライマーが挙げられる。PR−990CL等のフッ素化シリコーンのプライマーは、例えば、シリコーンゴムとフッ素樹脂をより強固に接着できるため、これらの材料を用いている場合には特に好ましい。
【0069】
F.本発明のモールド用離型シームレスベルトの使用形態
本発明のモールド用離型シームレスベルトは、任意の適切な形態で使用し得る。好ましくは、半導体パッケージ等のモールド時の離型を容易にするために用い得る。より具体的には、金型を用いて半導体パッケージ等を連続的に製造する際に用いる離型部材として好適であり、QFNに代表される片面封止形態でのパッケージングにおいて基板の被封止面と金型内面との間に配置して用いる離型部材として特に好適である。
【0070】
本発明のモールド用離型シームレスベルトは、従来のリール・トゥ・リール法で用いるロール状の離型シートとは異なり、毎回の封止工程において離型部材として使用した部分を使い捨てとする必要がない。このため、本発明のモールド用離型シームレスベルトは、使用におけるロスが小さく、高い経済性を発現できる。さらに、本発明のモールド用離型シームレスベルトは、上記で述べた特定の構成を有することにより、金型を閉じた際の密着性が高くシワの発生が抑制でき、金型を開いた際の離型性に優れ、高い耐久性を有する。
【0071】
本発明のモールド用離型シームレスベルトは、毎回の封止工程において離型部材として使用した部分を使い捨てとせずに連続的に稼動させるために、好ましくは、連続稼動時に、離型部材として使用した部分(使用済み部分)をクリーニングすることが好ましい。該クリーニングの方法としては、任意の適切な方法が採用し得る。該クリーニングの方法としては、例えば、上記使用済み部分をクリーニングするクリーニング機構を、該モールド装置(本発明のモールド用離型シームレスベルトや注型金型を備える連続稼動装置)中に設けることが挙げられる。このようなクリーニング機構としては、例えば、粘着ロールによる転写でクリーニングする機構や、逆帯電による静電吸着でクリーニングする機構が挙げられる。
【0072】
本発明のモールド用離型シームレスベルトは、半導体パッケージを製造するための注型金型における上金型と下金型の間に通す場合、上金型側に通しても良いし、下金型側に通しても良いし、上金型側と下金型側の両側に通しても良い。
【0073】
本発明のモールド用離型シームレスベルトは、内層にポリイミド樹脂を含んでいるので、耐久性に優れ、屈曲疲労に強く、耐熱性や寸法安定性に優れる。すなわち、本発明のモールド用離型シームレスベルトは、高温条件での連続使用に耐えることができ、鋭角に曲げても疲労しない。このため、本発明のモールド用離型シームレスベルトは、半導体パッケージングに好適に使用でき、QFNに代表される片面封止形態でのパッケージングに特に好適に使用できる。
【0074】
本発明のモールド用離型シームレスベルトの好ましい使用形態の一例を図3に示す。図3において、半導体チップが搭載された基板10は上金型21と下金型22の間に配置され、モールド用離型シームレスベルト100は上金型21と半導体チップが搭載された基板10との間を通るように配置されている。モールド用離型シームレスベルト100には、上金型21の外部の領域において、クリーニング機構30が接触しており、モールド用離型シームレスベルト100における離型部材として使用した部分(使用済み部分)をクリーニングする。図3の状態から、上金型21と下金型22が閉じて型締めされ、封止樹脂が下金型22の封止樹脂注入口40から注入されて成形され、上金型21と下金型22が開いてパッケージングされた成形品が取り出されるとともにモールド用離型シームレスベルト100が送り出されて続く同様の成形に備える。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量(質量)基準である。
【0076】
≪体積抵抗率≫
ハイレスタにUP MCP−HT450(三菱化学社製、プローブ:UR)を用い、印加電圧500V、(なお、常用対数値で8.0以下は測定不可のため電圧を低下させ印加電圧10Vで測定)、10秒間の測定条件にて、25℃、60%RHでの体積抵抗率を測定した。測定は、シームレスベルト表面の12箇所を測定し、平均値を常用対数値にて示した。
【0077】
〔実施例1〕
N−メチルピロリドン(NMP)にポリアミド酸溶液の固形分に対して40重量%になるよう窒化ホウ素を添加し、ボールミルで12時間分散させたNMP溶液中に、酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を準備するとともに、アミン成分としてp−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの混合物(モル比7:3)を準備し、両者の略等モルをフラスコ中のNMP溶液に溶解(モノマー濃度20重量%)した後、温度20℃で1時間反応させ、その後、75℃で10時間加温して回転粘度220Pa・s(B型粘度計にて測定:測定温度25℃)のポリアミド酸溶液(カーボンブラック含有)を調製した。その後、#800ステンレスメッシュを用いて濾過し、管状内層形成用のポリアミド酸溶液とした。
【0078】
次に、前記のポリアミド酸溶液を内径200mm、長さ500mmのドラム金型の内周面にディスペンサーを介して厚さ400μmに塗布し、1500r pmで10分間回転させて均一厚の展開層とした後、250r pmで回転させながらドラム金型の外側より60℃の熱風を30分間吹き付け、ついで150℃で60分間加熱した後、2℃/分の速度で350℃に昇温し、その温度で30分間加熱して、溶媒の除去、脱水閉環水の除去およびイミド転化を行い、それを室温に冷却して金型より剥離し、窒化ホウ素を含有する厚さ80μmのポリイミド樹脂製管状体を得た。
【0079】
このようにして得られたポリイミド樹脂製管状体の外周面に、導電性液状シリコーンゴム(GE東芝シリコーン社製、XE16−B6430)をスプレー塗布し、150℃の熱風循環式炉で、30分加熱硬化させて、均一な厚さ200μmの弾性体層を形成した。
【0080】
次に、弾性体層の上にプライマー(三井デュポンフロロケミカル社製、PR−990CL)をスプレー塗布し、120℃の熱風循環式炉で10分加熱乾燥させて、厚さ2μmのプライマー層を形成した。
【0081】
さらに、プライマー層の上にPFA分散塗料(三井デュポンフロロケミカル製、ENA−129−1)をスプレー塗布し、320℃の熱風循環式炉で、30分加熱乾燥させて、厚さ10μmのフッ素樹脂層を形成した。
【0082】
以上のようにして、総厚が292μmのモールド用離型シームレスベルト(1)を得た。モールド用離型シームレスベルト(1)の体積抵抗率は、常用対数値で10(logΩ・cm)であった。
【0083】
得られたモールド用離型シームレスベルト(1)を、図3に示すように、該ベルトの内層が上金型の内面側に擦れるように配置した。一方、該ベルトの外層側には、一辺が16PinタイプのQFNが4個×4個に配列された銅製のリードフレームに半導体チップを搭載し、金線によってワイヤボンディングを施したものを配置した。次いで、下金型により、半導体チップが下金型のキャビティ内に配置されるように型閉した。
【0084】
次いで、封止樹脂により、半導体チップを搭載した基板を以下の条件でモールドした。エポキシ系封止樹脂(日東電工社製:HC−300Bタイプ)により、モールドマシン(TOWA製Model−Y−series)を用いて、175℃で、プレヒート設定3秒間、インジェクション時間12秒間、キュア時間90秒間にてモールドした後、金型を開けて、成形品(封止されたパッケージ)を取り出した。さらに、モールド用離型シームレスベルト(1)を使用分だけ送り出した。モールド用離型シームレスベルト(1)の一部には、図3に示すように、クリーニング機構を接触配置した。
【0085】
以上のようにして、連続的に100ショットの封止樹脂を行った。
【0086】
得られた成形品の成形面はいずれも滑らかであった。このことから、金型を閉じた際の金型内面とモールド用離型シームレスベルト(1)との密着性が高くシワの発生が抑制できていること、および、金型を開いた際のモールド用離型シームレスベルト(1)の離型性が優れていることが判る。
【0087】
また、得られた成形品においては、樹脂漏れの発生は認められず、100%の注型成功率であった。
【0088】
さらに、連続的に100ショットの封止樹脂を行った後のモールド用離型シームレスベルト(1)を目視で観察したところ、表面の劣化や寸法変化は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のモールド用離型シームレスベルトは、半導体パッケージングに好適に使用でき、QFNに代表される片面封止形態でのパッケージングに特に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0090】
1 内層
2 外層
3 離型層
10 半導体チップが搭載された基板
21 上金型
22 下金型
30 クリーニング機構
40 樹脂注入口
100 モールド用離型シームレスベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂を含む内層と、エラストマーを含む外層とを備える、モールド用離型シームレスベルト。
【請求項2】
前記エラストマーが、合成ゴムおよび熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のモールド用離型シームレスベルト。
【請求項3】
前記エラストマーが、シリコーンゴムである、請求項2に記載のモールド用離型シームレスベルト。
【請求項4】
前記内層が熱伝導性物質を含み、該熱伝導性物質の含有割合が該内層の総重量に対して80重量%以下である、請求項1から3までのいずれかに記載のモールド用離型シームレスベルト。
【請求項5】
前記外層のさらに外側の層として離型層を備える、請求項1から4までのいずれかに記載のモールド用離型シームレスベルト。
【請求項6】
前記離型層が、フッ素樹脂を含むフッ素樹脂層である、請求項5に記載のモールド用離型シームレスベルト。
【請求項7】
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、およびテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載のモールド用離型シームレスベルト。
【請求項8】
前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である、請求項7に記載のモールド用離型シームレスベルト。
【請求項9】
前記シームレスベルト全体の体積抵抗率が、常用対数値4〜13(logΩ・cm)である、請求項1から8までのいずれかに記載のモールド用離型シームレスベルト。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−803(P2011−803A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145988(P2009−145988)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】