ユニオンナット継手用管離脱防止装置
【課題】再施工のためにボルト・ナット28,29を緩めたときに止輪26を接合管Kから簡単に離脱できるようにする。
【解決手段】接合管Kに外嵌装着されてボルト・ナット28,29により緊締される止輪26と、止輪26の外周側面に突出して形成された係止用耳部27,27と、ユニオンナット25に設けた環状凹部30に対して係脱自在な馬蹄形状の係止金具31と、係止金具31の外周側面に取り付けられ、先端に係止用耳部27に係合し得るフック32を備えたアーム33とを備え、止輪26は、接合管Kに外嵌する対向した二つの湾曲した外嵌部26b,26bと、二つの外嵌部26bの各々の一方端側及び他方端側から接合管Kより離れる外側へ向かって突出したボルト挿通部36,37と二股部38を備え、二つの外嵌部26b,26b、二つのボルト挿通部36,37及び二股部38をダクタイル鋳鉄で鋳造して一体に連ねたこと。
【解決手段】接合管Kに外嵌装着されてボルト・ナット28,29により緊締される止輪26と、止輪26の外周側面に突出して形成された係止用耳部27,27と、ユニオンナット25に設けた環状凹部30に対して係脱自在な馬蹄形状の係止金具31と、係止金具31の外周側面に取り付けられ、先端に係止用耳部27に係合し得るフック32を備えたアーム33とを備え、止輪26は、接合管Kに外嵌する対向した二つの湾曲した外嵌部26b,26bと、二つの外嵌部26bの各々の一方端側及び他方端側から接合管Kより離れる外側へ向かって突出したボルト挿通部36,37と二股部38を備え、二つの外嵌部26b,26b、二つのボルト挿通部36,37及び二股部38をダクタイル鋳鉄で鋳造して一体に連ねたこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管又は継手本体の受口部に、ねじの刻設されていない接合管の管端部を挿入し、ゴムパッキンを介在させてユニオンナットで締結する方式の伸縮可撓管継手に設けた管離脱防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の伸縮可撓管継手に設けた管離脱防止装置1は、図13及び図14に示すように、管又は継手本体2の受口部3の外周面に刻設した雄ねじ4に螺合緊締されるユニオンナット5と、外周面上の途中が切り欠かれたC字状の外嵌部6aを有する止輪6と、止輪6の対向する外周側面上に周方向へ沿って突出して形成された係止用耳部と7と、止輪6を接合管Pの外周面上へ締結するボルト8及びナット9と、ユニオンナット5に設けた環状凹部10と、環状凹部10に対して係脱自在な馬蹄形状の係止金具11と、係止金具11の対向する外周側面に取り付けられ、先端に止輪6の係止用耳部7に係合し得るフック12を備えたアーム13とで構成されている。
【特許文献1】特許第3858227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
管離脱防止装置1を設けた伸縮可撓管継手は、接合管Kと管又は継手本体2とを接続すると共に、管離脱防止装置1を装着した後、メンテナンスや補修のため、又は仮設配管やハウス栽培に使用する場合等のように一定期間だけ配管接続した後、解体して別な場所、時期に再組立をして再利用しようとする場合がある。このとき、止輪6は、ボルト8及びナット9の本締めを解いて拡開させ、接合管Kから外すことになる。
【0004】
前記止輪6は、ボルト8及びナット9の締め付けが進行するのに伴い、先ず外嵌部6aの奥側Bに生じる大きな曲げ応力で奥側Bに大きな塑性変形が生じ、ボルト8及びナット9の本締めを解いて緩めても塑性変形が残り、外嵌部6aの弾性復帰だけでは切離し側Aが自然に拡開せず、工具を用いて無理やり拡開させて接合管Kから取り外す必要がある。そのため、再施工の場合は、取外し工具で止輪6を拡開して接合管Kへ装着し、更に止輪6から取外し工具を取り外すという面倒な作業になる欠点があった。殊に、外径寸法が32mm(一般用HIVP管の場合には呼び25に相当)以下の小径の接合管Kに適用する大きさの止輪6にあっては、塑性変形が顕著である。
【0005】
本発明は、再施工のためにボルト及びナットを緩めたときに止輪を接合管から簡単に離脱できるようにした管離脱防止装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
再施工のためにボルト及びナットを緩めたときに止輪を接合管から簡単に離脱できるようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、外周面に雄ねじを刻設した受口部を有する管又は継手本体に、無ねじの接合管を挿入し、環状のゴムパッキンを挿嵌介在せしめてユニオンナットを前記受口部に螺合緊締する構造の管継手に設けられ、前記ユニオンナットよりも後端側の接合管に外嵌装着されてボルト及びナットにより緊締される止輪と、該止輪の外周側面に周方向へ沿って突出して形成された係止用耳部と、前記ユニオンナットに設けた環状凹部と、該環状凹部に対して係脱自在な馬蹄形状の係止金具と、該係止金具の外周側面に取り付けられ、先端に前記止輪の係止用耳部に係合し得るフックを備えたアームとを備えた管離脱防止装置であって、前記止輪は、接合管に外嵌する対向した二つの湾曲した外嵌部と、二つの外嵌部の各々の一方端側から接合管より離れる外側へ向かって突出したボルト挿通部と、二つの外嵌部の各々の他方端側から接合管より離れる外側へ向かって離隔した状態で延長して先端側を接合した弾性変形可能な二股部とを備え、二つの外嵌部、二つのボルト挿通部及び二股部をダクタイル鋳鉄で鋳造して一体に連ねたことを特徴とするユニオンナット継手用管離脱防止装置である。
【0007】
外径寸法が32mm以下の小径の対応する接合管に適用させるために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記止輪は、外径寸法が32mm以下の対応する接合管に外嵌できる大きさに二つの外嵌部が形成され、二つの外嵌部の内周面の一方端から二股部の先端の肉厚中心箇所へ至る管直径方向に沿う寸法を、接合管の外径寸法に8mm乃至18mmの範囲で選択した値を加算した合計値とした請求項1記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置である。
【0008】
止輪の対向した二つの外嵌部で接合管をバランスよく挟圧するために請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記止輪の二股部は、管直径方向に沿って大きさが同一の二つの直線域と、二つの直線域に連なる湾曲域とでU字状に形成されている請求項1又は2記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置である。
【0009】
ボルト及びナットを設定トルクで緊締する本締めを確保するために請求項4記載の本発明が採用した手段は、前記二つのボルト挿通部は、対向面側に対向する凸部をそれぞれ突出形成し、前記ボルト及びナットを緊締して本締めしたときに、凸部どうしを当接させて止輪が接合管から離脱しない状態なり、前記ボルト及びナットを緩めて緊締を解いたときに、止輪が二つの外嵌部の内径寸法を接合管の外径寸法より大きい状態とするように、これら凸部の突出寸法を決めた請求項1、2又は3記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置である。
【0010】
請求項5記載の本発明が採用した手段は、前記止輪は、二つの外嵌部に二股部の二つの直線域を接合する箇所から、各外嵌部の他方端寄り側の部分を張り出し、ボルト及びナットを緊締し又は緊締しない状態において、二股部の二つの直線域の内側面どうしの離隔寸法を二つの外嵌部の他方端どうしの離隔寸法よりも大きくし、更に、二股部の直線域の肉厚の中心を通って接合管の直径方向に延びる中心線と外嵌部の肉厚の中心を通る周方向に延びる中心線との交点から接合管の中心点へ延びる連結仮想直線を、接合管の中心点を通る二分割中心線と25°〜40゜の範囲で交差させた請求項1、2、3又は4記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置は、ボルト及びナットから離れた止輪の箇所に二股部が設けられるため、止輪が、接合管に二つの外嵌部を当接させるまでの初期段階において、二股部に塑性変形を生じさせないか、又は生じさせても塑性変形を非常に小さくでき、更に、二つの外嵌部の接合管に対する押圧が進行する段階において、接合管から二つの外嵌部へ伝達する反力で二股部の弾性変形の進行度合いが次第に小さくなり、二股部に塑性変形を生じさせないか、又は生じさせても塑性変形を非常に小さくできるので、再施工のためにボルト・ナットを緩めて本締めを解いたとき、二股部等に蓄えれている反発弾性力で二つの外嵌部を離反させて自然に拡開させることが可能となり、再施工のためにボルト・ナットを緩めたときに接合管から簡単に離脱できる。
【0012】
請求項2記載の本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置は、外径寸法が32mm以下の接合管に、当該接合管に対応した大きさの止輪の二つの外嵌部を外嵌させたとき、二つの外嵌部の一方端から二股部の先端の肉厚中心箇所へ至る管直径方向に沿う寸法を、接合管の外径寸法に8mm乃至18mmの範囲で選択した値を加算した値としたことで、二股部(殊に、二股部の先端側)に塑性変形を生じさせないか、又は塑性変形を非常に小さくすることが可能となり、本締めを解いたとき二股部等に蓄えれている反発弾性力で二つの外嵌部を離反させて自然に拡径させることができるようになる。
【0013】
請求項3記載の本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置は、止輪の二股部の二つの直線域に同一状態の曲げモーメントが生じるため、接合管を押圧するための二つの外嵌部に生じる力を等しくして二つの外嵌部でバランスよく接合管を挟んで押圧することができる。
【0014】
請求項4記載の本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置は、ボルト及びナットを緊締して本締めしたときに、二つのボルト挿通部の凸部が当接することで、それ以上の緊締をしないように作業者に注意を促してボルト及びナットを適切トルクで緊締した本締めを確保でき、また、ボルト及びナットを緩めて緊締を解いたときに、止輪が二つの外嵌部の内径寸法を接合管の外径寸法より大きくするので、接合管から止輪を離脱させることができる。
【0015】
請求項5記載の本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置は、止輪26に関する前記離隔寸法及び交差角度について前記関係及び値を採用することで、外嵌部の他方端側に、接合管の中心点へ向かう押圧力を生じさせて接合管を確実に押圧させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図9は本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置の実施の形態を示すものである。図1〜図3は接合管を挿着する前の管離脱防止装置21を示すものであって、図1は側面図、図2は正面図、図3は横断面した平面図である。図4は仮締めした状態の止輪26の正面図である。図5の図(A)〜図(C)はアーム33,33付き係止金具31を示すものであり、図(A)は側面図、図(B)は正面図、図(C)は底面図である。図6及び図7は接合管Kを挿入しユニオンナット25を緊締した管離脱防止装置21を示すものであって、図6は左半分を示す横断面した平面図、図7は正面図である。図8の(A)は図7に中心線等を付加して得た正面図、同図の(B)は二股部38の直線域38a,38aの離隔寸法f及び外嵌部34,35の下端の離隔寸法gの採り得る寸法の範囲を示す表である。図9は、止輪26、係止金具31及びユニオンナット25との関係を示すものであり、図(A)は止輪26に係止金具31を装着する前の状態を示す側面図、図(B)は止輪26に係止金具31を装着した場合を示す側面図、図(C)は係止金具31及び止輪26をユニオンナット25へ装着する場合を示す側面図、図(D)は装着後の状態(仮組立の状態)を示す側面図である。
【0017】
本実施の形態に係る管離脱防止装置21は、図1及び図2に示すように、管又は継手本体22の受口部23の外周面に刻設した雄ねじ24に螺合緊締されるユニオンナット25と、ユニオンナット25よりも後端側で接合管Kに外嵌装着してボルト28及びナット29により緊締される止輪26と、止輪26の対向する外周側面上に周方向へ沿って突出して形成された係止用耳部27,27と、ユニオンナット25に設けた環状凹部30と、該環状凹部30に対して係脱自在な馬蹄形状の係止金具31と、係止金具31の対向する外周側面に取り付けられ、先端に止輪26の係止用耳部27に係合し得るフック32を備えたアーム33,33とで構成され、硬質塩化ビニール管、ポリエチレン管等のプラスチック管、内外周面を被覆した鋼管又は被覆のない鋼管の管継手部分に用いられる。
【0018】
前記止輪26は、図4に示すように、左右対向して左右対称に湾曲して形成され接合管Kに外嵌する外嵌部34,35と、二つの外嵌部34,35の各々の一方端側A(図中の上端側)から接合管Kより離れる外側(図中の上方)へ向かって延設したボルト挿通部36,37と、二つの外嵌部34,35の各々の他方端側B(図中の下端側)から接合管Kより離れる外側(図中の下方)へ向かって離隔した状態で延長して先端側(図中の下端側)を接合した弾性変形可能な二股部38とを備え、これら二つの外嵌部34,35、二つのボルト挿通部36,37及び一つの二股部38をダクタイル鋳鉄で鋳造して一体に連ねて形成してある。上記止輪26の左右の係止用耳部27,27は、図9の図(A)及び図4に示すように、側面から見たときに、左右の湾曲した外嵌部34,35の周方向に沿って延びる筋状を成しており、外嵌部34,35と鋳造により一体に形成されている。
【0019】
前記止輪26の二つのボルト挿通部36,37は、図4に示す如く、二つの外嵌部34,35に連なる本体部36a,37aと、本体部36a,37aの対向面側にそれぞれ対向するように突出形成した凸部36b,37bとを備え、図7に示す如く、ボルト及びナット28,29を設定トルクで緊締して本締めしたときに、これらの凸部36b,37bを当接させることで、それ以上の緊締をしないようにし(もし、凸部36b,37bが当接した後にボルト及びナット28,29を緊締したき、締付けトルクが急激に上昇することなる)、作業者に注意を促してボルト及びナット28,29を適切トルクで緊締した本締めを確保できるようにしてある。これら凸部36b,37bの突出寸法は、ボルト・ナット28,29を緊締して本締めしたときに凸部どうしを当接させて、接合管Kに鋸歯26aを食い込まして離脱できない状態とし、また、凸部どうしを当接させた後にボルト・ナット28,29を緩めて緊締を解いたときに、止輪26が二つの外嵌部34,35の内径寸法を接合管Kの外径寸法より大きくするように決められる。
【0020】
前記止輪26は、図4に示すように、ボルト挿通部36,37へ通したボルト28にナット29が螺合され、ボルト・ナット28,29を仮締めした状態の場合に、二つの外嵌部34,35の間に遊合状態で接合管Kを挿通させることができ、その後に、図7示すように、ボルト・ナット28,29を本締めした状態の場合に、二つの外嵌部34,35を近づけさせて接合管Kを二つの外嵌部34,35で挟圧保持して、外嵌部34,35の内周面に刻設した多数の鋸歯26a(図6参照)を接合管Kの外周面へ食い込ませて滑り止め機能を発揮させることができる。
【0021】
前記止輪26は、ボルト・ナット28,29の締め付けにより、二つの外嵌部34,35の内周面を接合管Kの外周面に当接させるに至るまで、二股部38の先端側に曲げモーメントが生じる。この曲げモーメントにより二股部38の先端側に生じる曲げ応力は、二つの外嵌部34,35の内周面の一方端34a,35a(図4参照)から二股部38の先端の肉厚中心箇所Cへ至る管直径方向に沿う寸法Lが二股部38を設けた分だけ長くなるため、従来の止輪6(図13及び図14参照)の外嵌部6aの奥側(他端側B)に生じる曲げ応力よりも小さくできる。そのため、止輪26は、接合管Kに二つの外嵌部34,35を当接させるまでの初期段階において、二股部38に塑性変形を生じさせないか、又は生じさせても塑性変形を非常に小さくできることになる。
【0022】
前記止輪26は、接合管Kに二つの外嵌部34,35を当接させた後にボルト・ナット28,29の本締めが進行するのに伴い、ボルト・ナット28,29の締付力及び接合管Kからの反力を受けて二つの外嵌部34,35及び二股部38が弾性変形しつつ、外嵌部34と二股部38の境界部おける両者34,38の内力及び外嵌部35と二股部38の境界部における両者35,38の内力がつり合う状態となる。そして、二つの外嵌部34,35は、ボルト・ナット28,29の締付力をボルト挿通部36,37を介して一端側Aから受けると共に、弾性変形する二股部38の力を他端側Bから受けて、接合管Kの外周面を押圧する。止輪26は、二つの外嵌部34,35の接合管Kに対する押圧が進行すると、接合管Kから二つの外嵌部34,35へ伝達する反力で二股部38の弾性変形の進行度合いが次第に小さくなり、二つの外嵌部34,35が接合管Kを次第に強く押圧して本締めすることになる。
【0023】
二つの外嵌部34,35は、このように両端側A,Bから力を受けて接合管Kの外周面を押圧するため(図8に押圧力P1,P2,P3で示す)、両端側A,Bの接合管Kに対する押圧力P1と押圧力P3の差を小さくして、接合管Kに対する押圧力を管周囲方向で均一に近づけることができるようになる。これに対して、従来の止輪6(図13及び図14参照)は、他端側に二股部が無いため、両端側A,Bの接合管Kに対する押圧力に大きな差異が生じ、接合管Kに対する押圧力を管周囲方向で不均一となる。
【0024】
前述の如く、止輪26は、接合管Kに二つの外嵌部34,35を当接させるまでの初期段階において、二股部38に塑性変形を生じさせないか、又は生じさせても塑性変形を非常に小さくでき、更に、二つの外嵌部34,35の接合管Kに対する押圧が進行する段階において、接合管Kから二つの外嵌部34,35へ伝達する反力で二股部38の弾性変形の進行度合いが次第に小さくなるため、二股部38に塑性変形を生じさせないか、又は生じさせても塑性変形を非常に小さくできるので、再施工のためにボルト・ナット28,29を緩めて本締めを解いたとき、二股部38等に蓄えれている反発弾性力で二つの外嵌部34,35を離反させて自然に拡開させることが可能となり、再施工のためにボルト・ナット28,29を緩めたときに接合管Kから簡単に離脱できる。
【0025】
前記止輪26は、図4及び図9の図(A)に示すように、管外径寸法が32mm(一般用HIVP管の場合には呼び25に相当)、管外径寸法が26mm(同呼び20に相当)、管外径寸法が22mm(同呼び16に相当)及び管外径寸法が18mm(同呼び13に相当)の小径の接合管Kに適用させるために、外径寸法の32mm以下の選択した接合管Kに外嵌できる大きさに二つの外嵌部34,35を湾曲形成して、二つの外嵌部34,35の一方端34a,35a(図4参照)から二股部38の先端の肉厚中心箇所Cへ至る管直径方向に沿う寸法Lを、接合管Kの外径寸法に8mm乃至18mmの範囲で選択した値を加算した値(具体的には、管外径寸法が32mmの場合には寸法Lを40mm乃至50mm、管外径寸法が26mmの場合には寸法Lを34mm乃至44mm、管外径寸法が22mmの場合には寸法Lを30mm乃至40mm、管外径寸法が18mmの場合には寸法Lを26mm乃至36mm)を選択すると共に、二つの外嵌部34,35及び二股部38について、厚み寸法t(但し、鋸歯26aを除く)を3.0mm乃至5.0mmの範囲で、且つ前後奥行き寸法n(図9の図(A)参照)を15mm乃至10mmの範囲で選択することで、止輪26の中で大きな曲げモーメントの生じる箇所である二股部38の先端側の曲げモーメントを押さえて塑性変形を生じさせないか、又は塑性変形を非常に小さくなるようにして、本締めを解いたとき二股部38等に蓄えれている反発弾性力で自然に拡開して、接合管Kに対して開放可能または開放容易な状態とすることができるようにしてある。
【0026】
前記止輪26の二股部38は、図4に示すように、管直径方向に沿って離隔して大きさが同一の二つの直線域38a,38aと、二つの直線域38a,38aに連なる湾曲域38bとでU字状に形成され、ボルト28及びナット29の緊締に伴い、二つの直線域38a,38aに同一状態の曲げモーメントが生じることで、接合管Kを押圧するための二つの外嵌部34,35に生じる力を等しくして二つの外嵌部34,35で接合管Kをバランスよく挟圧するようにしてある。また、二股部38は、U字状にすることで、鋳造に際し、湯廻りの不良を起こしにくい肉厚にすることが可能になった。
【0027】
前記止輪26は、図8(A)に示す如く、外嵌部34(35)に二股部38の直線域38a(38a)を接合する箇所から、外嵌部34(35)の他方端34c(35c)寄り側の部分を張り出してある。前記止輪26は、ボルト及びナット28,29を緊締して前記ボルト挿通部36,37の凸部36b,37bを当接した直後の状態において、二股部38の二つの直線域38a,38aを離反させて離隔寸法f(選択する接合管Kに対して具体的に採る値の範囲は同図(B)の表を参照)とすると共に、二つの外嵌部34,35の他方端34c,35cを離反させて離隔寸法g(選択する接合管Kに対して具体的に採る値の範囲は同図(B)の表を参照)とし、また、離隔寸法fと離隔寸法gとの関係をf>g(好ましくは、f>2.5g)とし、更に、二股部38の直線域38aの肉厚の中心を通る上下方向(接合管Kの直径方向)に延びる中心線vと外嵌部34,35の肉厚の中心を通る周方向に延びる中心線sとの交点uから接合管Kの中心点Kaへ延びる連結仮想直線yを、接合管Kの中心点Kaを通り離隔寸法fを二分割する二分割中心線wと交差角度θ(具体的に採る値はθ=30°(+10°〜−5°)であるθ=25°〜40゜の範囲である。)で交差させてある。二股部38の二つの直線域38a,38aの離隔寸法fは、接合管Kの半径寸法程度にするのが好ましい。
【0028】
前記止輪26の離隔寸法fと離隔寸法gとの関係及び交差角度θについては、上述の如くボルト挿通部36,37の凸部36b,37bを当接させた直後の状態について説明したが、凸部36b,37bを当接させる前のボルト及びナットを緊締し又は緊締しない状態においも、離隔寸法fと離隔寸法gとの関係をf>gとし、また、交差角度θを25°〜40゜の範囲とすることもある。
【0029】
前記止輪26は、離隔寸法f,g及び交差角度θについて上記関係及び値を採用することで、外嵌部34(35)の他方端34c(35c)側に、接合管Kの中心点Kaへ向かう押圧力P3を生じさせて接合管Kを確実に押圧させることができる。
【0030】
前記ユニオンナット25の環状凹部30に係脱自在に嵌合装着される係止金具31は、図5の図(B)に示すように、馬蹄形状を成し、その開口部の間口寸法Eは、ユニオンナット25の環状凹部30の溝底30aの外径寸法d4(図3参照)よりも小さく設定されている。また、溝底30aの外径寸法d4は、係止金具31の内周面の直径D1よりも小さく設定されている。すなわち、D1>d4>Eという寸法関係に設定されている。そして、係止金具31の対向する外周側面には、止輪26の係止用耳部27に係止し得るフック32を備えたアーム33,33が取り付けられていることは前述した通りである。各アーム33は、アーム本体33aの下方に回転止め用凸状33bが突設され、ダクタイル鋳鉄の鋳造により係止金具31と一体に形成されている。
【0031】
このように構成された止輪26、アーム33,33付き係止金具31及びユニオンナット25は、管継手を構成でき、管継手を構成したときに可撓性及び伸縮性を発揮する関係に設定されている。アーム33,33は、図2に示すように、フック32の内周面32bを湾曲凹状に形成すると共に、図9に示すように、係止用金具31の後端面31aからフック32の内側面32aまでの寸法hを止輪26の前後奥行き寸法nより大きくすることで、アーム間に仮締め状態の止輪26を挿入させ(同図の図(B)参照)、フック32を止輪26の外側から管軸方向(前後方向)に沿って外嵌部34(35)の外周面34a(35a)上へ外嵌した状態で移動でき(同図の図(C)参照)、この外嵌した状態で移動したフック32を止輪26の外嵌部34(35)の湾曲した外周面34a(35a)の接線方向(上下方向)で係合させて、止輪26との間で上下方向へ分離するのを阻止するようにしてある。また、係止金具31は、各フック32の回転止め用凸状33bを止輪26の係止用耳部27に当接可能とすることで、止輪26との間での回転方向のズレを防止して、止輪26の係止用耳部27にフック32を確実に係止できるようにしてある。更に、アーム33,33は、図9の図(C)に示すように、根元側の切欠き溝33cの溝幅寸法iをユニオンナット25の環状凹部30を形成するフランジ部39の厚み寸法mよりも大きくして、ユニオンナット25の環状凹部30へ係止金具31を外嵌できるようにしてある。止輪26は、上記前後奥行き寸法nを、係止用金具31における上記寸法hからフランジ部39における上記寸法mを引いた値(h−m)より大きい値の寸法にすることで、係止金具31と共にユニオンナット25に装着後に係止金具31から外れないようにしてある。止輪26は、係止用耳部27の厚み寸法j(管軸方向(前後方向)に沿った寸法)とユニオンナット25のフランジ部39の厚み寸法mとの和を、アーム33の切欠き溝33cの溝幅寸法iよりも大きくする(j+m>i)ことで、アーム33の回転止め用凸状33bを係止耳部27に当接可能となるようにしてある。
【0032】
このように構成されたユニオンナット継手用管離脱防止装置21は、工場で鋳造成形された後、必要に応じて仮組み立てられ、この状態で出荷される。仮組み立ては、先ず、図3に示すように、ユニオンナット25の内周面側へパッキン40を装入し、これらの全体を継手本体22の受口部23の外周面に刻設した雄ねじ部24へ螺着する。続いて、図3及び図2に示すように、ボルト28及びナット29を仮締めした状態の止輪26の外嵌部34,35の外周面34a,35a上に係止金具31のフック32,32を外嵌させ、係止用耳部27,27に対してフック32,32を係合できるようにする。フック32の係合は、図9の図(A)及び図(B)に示すように、止輪26の前端面26bと係止金具31の後端面31aとを接合させる状態で、係止金具31のアーム33が止輪26の係止用耳部27に重なるように止輪26と係止金具31を相対的に移動させる。そして、アーム33先端のフック32を係止用耳27へ向かって係止金具31の全体を前側へスライドさせ、同図の図(C)に示すように、係止金具31と止輪26との間隔を拡げる。
【0033】
次に、ユニオンナット25を係止金具31の下方から上方へ移動させるか又は係止金具31をユニオンナット25に対して下降させ、同図の図(D)に示すように、係止金具31をユニオンナット25の環状凹部30に外嵌装着する。このとき、馬蹄形状を成す係止金具31の開口部の間口寸法E(図5参照)は、環状凹部30の溝底12Aの外径寸法d4(図3参照)よりも小さくなるように設定されているので、間口寸法Eを拡大させながら無理嵌めすることになる。同図の図(D)に示すように、無理嵌めした後は、前記d4>Eの寸法関係により、係止金具31がユニオンナット25から脱落することはない。また、止輪26の外嵌部34,35に外嵌して係合しているアーム33,33の先端のフック32,32が止輪26から脱落することもない。つまり、止輪26と係止金具31とユニオンナット25とが仮組立られた状態で一つのセットとして連携して存在することになる。
【0034】
施工現場では、前記仮組立状態の管離脱防止装置21に対して接合管Kを挿入する。挿入は、仮組立の状態で止輪26と、ユニオンナット25と、パッキン40と、継手本体22の中心軸線が一致しているため、接合管Kの先端側の挿口を、止輪26側からユニオンナット25、パッキン40へ挿通させて継手本体22内へ到達させるだけでよく、極めて容易である。然る後は、ユニオンナット25を手で回転させて接合管Kを仮止めした後、スパナ又はパイプレンチ等で水密性に必要な最低締付トルクまで締め付けて増し締めする。ユニオンナット25の増し締めが完了したことを確認した後、止輪26のボルト28及びナット29による締結部が締め易い位置(前記締結部が上方になる位置)に来るように、これを回動させる。そして、最後に止輪26を締結する。止輪26の締結は、接合管Kに対する軸方向の位置決めと、ボルト締結部の向き(図1及び図2並びに図7に示すように上方へ位置させる)とを決定した後、ボルト・ナット28,29とを本締めし、止輪26の内周面に刻設した鋸歯26aを接合管Kの外周面へ食い込ませて滑り止め機能を発揮するように行えばよい。
【0035】
これにより、接合管Kは、図6に示すように、フック32が止輪26上の移動できる範囲内で可撓伸縮することができる。また、施工後において、接合管Kと継手本体22との間に管離脱方向の力が作用した場合であっても、係止金具31のアーム先端のフック32が止輪26の係止用耳部27と接触し、係止金具31がユニオンナット25の環状凹部30に外嵌装着されているので、接合管Kは離脱が防止される。
【0036】
発明者は、本発明の効果を確認するために、図10の図(A)及び図(B)に示す本発明に用いるダクタイル鋳鉄製の止輪の試験品と、図(C)及び図(D)に示す従来のダクタイル鋳鉄製の止輪の試験品を行いて、接合管である外径寸法が22mm(一般用HIVP管の呼び16)に対する締め付け試験を行い、図11及び図12の表に示す結果を得た。各試験品のボルト・ナットは、いずれもM5を用い、試験品の寸法をa=8.00mm、b=22.45mm、c=11.50mm、e=25.50mm、t=4.00mm、n=14.0mmとしてある。止輪の素材であるダクタイル鋳鉄は、種類がFCD420、引張強さが460N/mm2 、伸びが15%のものを使用した。ナットを締め付けるトルクレンチには、前田金属工業株式会社製の測定範囲が1〜6N・mのプリセット形トルクレンチ(型式:T2LN6)を使用した。ボルト・ナットには、焼き付き防止剤を塗布して試験を行った。
【0037】
締め付け試験は、図11に示す一回目の試験と、図12に示す二回目の試験とを行った。一回目の試験は、図11の図(A)に示す如く、本発明及び従来の何れの止輪の場合も、T2=1.50mmとなるまでナットを締め付け、その後にナットの締め付けを緩めて開放し、接合管に対する状態及びナットの締め付けトルク値と、間隙T1,T2,T3の測定寸法値との関係を得た。なお、鋸歯(図6の符号26aで示すもの)が接合管に接触するときのナットの締め付けトルクは、読み取り不能な小さい値であった。図(B)は、試験前(締付前)と試験後(締付後に開放)の状態における各箇所の鋸歯の内径寸法値を示すものである。一回目の試験は、ナットの締め付けトルクが小さく、本発明及び従来の何れの止輪の場合も、試験後は接合管から離脱できるまで自然に拡径している。
【0038】
二回目の試験は、図12の図(A)に示す如く、本発明及び従来の何れの止輪の場合も、T2=1.00mmの近辺となるまでナットを締め付け、その後にナットの締め付けを緩めて開放して、接合管に対する状態及びナットの締め付けトルク値と、間隙T1,T2,T3の測定寸法値との関係を得た。ナットの締め付けを緩めて開放すると、本発明の場合は試験後に接合管から離脱できるまで自然に拡径するのに対して、従来の場合は試験後に接合管から離脱することができず、接合管に締め付けた状態のままであった。
【0039】
二回目の試験における本発明の場合は、図12の図(A)に示すT3について、ナットの締め付けが進行するのに伴い減少するが、ナットの締め付けを開放したときの値が締め付け前の値である3.96mmと同一であることから、二股部38(図4参照)に塑性変形が生じることなく弾性変形のみが生じていることが判る。また、間隙T1,T2については、ナットの締め付けを開放したときの値が締め付け前の値より若干小さくなっていることから、外嵌部34,35(図4参照)に塑性変形を若干の生じているが、締付後に開放したたときの鋸歯の内径寸法d1,d2,d3の値が近似しており、真円に近い状態に塑性変形したことが判る。
【0040】
これに対して、二回目の試験における従来の場合は、試験後に接合管から離脱することがでないことから、C字状の外嵌部6a(図14参照)に大きな塑性変形が生じていることが判る。
【0041】
二回目の試験において、ナットの締め付けを緩めて開放したときに自然に拡径して接合管から離脱できるT2の最大値(以下、「管離脱限界値」と言う。)を求めてはいないが推定可能である。接合管に止輪の鋸歯を接触させてから管離脱可能に締め付けできるT2の許容範囲は、鋸歯が接合管に接触を開始したときの値(以下、「管接触開始値」と言う。)から管離脱限界値を減算したΔT2の値で評価できることから、管離脱限界値について本発明の場合をT2=0.90mmと推定すると共に従来の場合をT2=1.30mmと推定したとき、本発明の場合はΔT2=4.80−0.90=3.90mmであるのに対して、従来の場合はΔT2=3.74−1.30=2.44mmであり、本発明の場合の方が大きい。
【0042】
また、接合管Kに止輪26の鋸歯26aを接触させてから接合管Kに鋸歯26aを食い込ませて滑り止め機能を発揮させるのに最低必要な締め付け量は、T2で評価するとT2を2.00mm減少させたことに相当する。接合管Kに鋸歯26aを食い込ませて滑り止め機能を発揮させるT2の値からT2の管離脱限界値までの範囲は、本締め時の余裕範囲Sとして評価でき、本発明の場合の余裕範囲S=4.80−2.00−0.90=1.90mmであるのに対して、従来の場合の余裕範囲S=3.74−2.00−1.30=0.44mmであり、本発明の場合の方が4倍程度大きい。
【0043】
ところで、止輪26の素材となるダクタイル鋳鉄は、引張強さ等の機械的性質のバラツキが大きく、また鋳造時の公差も大きくなる。更に、接合管Kにも外径公差がある。止輪を接合管に滑り止め機能を発揮させるように締め付けるには、これら大きなバラツキや公差を吸収できるようにする必要がある。本発明の場合は、本締め時の余裕範囲Sが大きいことから、これら大きなバラツキや公差を吸収することが可能となり、接合管Kに対する止輪26の滑り止め機能を確実に発揮させることができるようになる。これに対して、従来の場合は、本締め時の余裕範囲Sが小さいことから、これら大きなバラツキや公差を吸収することが非常に困難となり、接合管Kに対する止輪6の滑り止め機能を確実に発揮させることができないことがある。
【0044】
本発明の場合は、本締め時の余裕範囲Sが大きいことから、二つのボルト挿通部36,37の凸部36b,37bを当接した後にボルト・ナット28,29の締め付けを緩めて開放したときに自然に拡径して接合管Kから離脱できる状態を得られるように、二つの凸部36b,37bの突出寸法を鋳物型に設定しておけば、本締め時の余裕範囲Sに収まる鋳物み成形した止輪26を得ることが可能であり、誰がボルト・ナット28,29を締め付けても接合管Kに止輪26を確実に緊締させることができ、また、ボルト・ナット28,29を緩めると接合管Kから止輪26を確実に離脱させることができる。これに対して、従来の止輪6は、本締め時の余裕範囲Sが小さいため、二つのボルト挿通部の凸部の突出寸法を鋳物型に設定することが難しく、本締め時の余裕範囲Sに収まる鋳物み成形した止輪を得ることが困難である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態に係る管離脱防止装置において接合管を挿着する前を示す側面図である。
【図2】同実施の形態に係る管離脱防止装置において接合管を挿着する前を示す正面図である。
【図3】同実施の形態に係る管離脱防止装置において接合管を挿着する前を示す横断面した平面図である。
【図4】同実施の形態に係る管離脱防止装置の仮締めした状態の止輪の正面図である。
【図5】同実施の形態に係る管離脱防止装置のアーム付き係止金具を示すものであり、図(A)は側面図、図(B)は正面図、図(C)は底面図である。
【図6】同実施の形態に係る管離脱防止装置において、接合管を挿入しユニオンナットを緊締した状態の左半分を示す横断面した平面図である。
【図7】同実施の形態に係る管離脱防止装置において、接合管を挿入しユニオンナットを緊締した状態を示す正面図である。
【図8】(A)は図7に中心線等を付加して得た正面図、同図の(B)は二股部の直線域の離隔寸法及び外嵌部の下端の離隔寸法の採り得る寸法の範囲を示す表である。
【図9】同実施の形態に係る管離脱防止装置を示すものであり、図(A)は止輪に係止金具を装着する前の状態を示す側面図、図(B)は止輪に係止金具を装着した場合を示す側面図、図(C)は係止金具及び止輪をユニオンナットへ装着する場合を示す側面図、図(D)は装着後の状態(仮組立の状態)を示す側面図である。
【図10】図(A)及び図(B)は確認試験に用いる本発明の場合の止輪の正面図及び側面図、図(C)及び図(D)は確認試験に用いる従来の試験品の止輪を示す正面図及び側面図である。
【図11】図(A)及び図(B)は一回目の試験の結果を示す表である。
【図12】図(A)及び図(B)は二回目の試験の結果を示す表である。
【図13】従来の管離脱防止装置の全体を示すものであって、一部を破断して示す側面図である。
【図14】従来の管離脱防止装置の正面図である。
【符号の説明】
【0046】
21…離脱防止装置、22…継手本体、23…受口部、24…雄ねじ、25…ユニオンナット、26…止輪、27…係止用耳部、28…ボルト、29…ナット、30…環状凹部、31…係止金具、32…フック、33…アーム、34…外嵌部、35…外嵌部、36…ボルト挿通部、37…ボルト挿通部、38…二股部、40…パッキン
【技術分野】
【0001】
本発明は、管又は継手本体の受口部に、ねじの刻設されていない接合管の管端部を挿入し、ゴムパッキンを介在させてユニオンナットで締結する方式の伸縮可撓管継手に設けた管離脱防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の伸縮可撓管継手に設けた管離脱防止装置1は、図13及び図14に示すように、管又は継手本体2の受口部3の外周面に刻設した雄ねじ4に螺合緊締されるユニオンナット5と、外周面上の途中が切り欠かれたC字状の外嵌部6aを有する止輪6と、止輪6の対向する外周側面上に周方向へ沿って突出して形成された係止用耳部と7と、止輪6を接合管Pの外周面上へ締結するボルト8及びナット9と、ユニオンナット5に設けた環状凹部10と、環状凹部10に対して係脱自在な馬蹄形状の係止金具11と、係止金具11の対向する外周側面に取り付けられ、先端に止輪6の係止用耳部7に係合し得るフック12を備えたアーム13とで構成されている。
【特許文献1】特許第3858227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
管離脱防止装置1を設けた伸縮可撓管継手は、接合管Kと管又は継手本体2とを接続すると共に、管離脱防止装置1を装着した後、メンテナンスや補修のため、又は仮設配管やハウス栽培に使用する場合等のように一定期間だけ配管接続した後、解体して別な場所、時期に再組立をして再利用しようとする場合がある。このとき、止輪6は、ボルト8及びナット9の本締めを解いて拡開させ、接合管Kから外すことになる。
【0004】
前記止輪6は、ボルト8及びナット9の締め付けが進行するのに伴い、先ず外嵌部6aの奥側Bに生じる大きな曲げ応力で奥側Bに大きな塑性変形が生じ、ボルト8及びナット9の本締めを解いて緩めても塑性変形が残り、外嵌部6aの弾性復帰だけでは切離し側Aが自然に拡開せず、工具を用いて無理やり拡開させて接合管Kから取り外す必要がある。そのため、再施工の場合は、取外し工具で止輪6を拡開して接合管Kへ装着し、更に止輪6から取外し工具を取り外すという面倒な作業になる欠点があった。殊に、外径寸法が32mm(一般用HIVP管の場合には呼び25に相当)以下の小径の接合管Kに適用する大きさの止輪6にあっては、塑性変形が顕著である。
【0005】
本発明は、再施工のためにボルト及びナットを緩めたときに止輪を接合管から簡単に離脱できるようにした管離脱防止装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
再施工のためにボルト及びナットを緩めたときに止輪を接合管から簡単に離脱できるようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、外周面に雄ねじを刻設した受口部を有する管又は継手本体に、無ねじの接合管を挿入し、環状のゴムパッキンを挿嵌介在せしめてユニオンナットを前記受口部に螺合緊締する構造の管継手に設けられ、前記ユニオンナットよりも後端側の接合管に外嵌装着されてボルト及びナットにより緊締される止輪と、該止輪の外周側面に周方向へ沿って突出して形成された係止用耳部と、前記ユニオンナットに設けた環状凹部と、該環状凹部に対して係脱自在な馬蹄形状の係止金具と、該係止金具の外周側面に取り付けられ、先端に前記止輪の係止用耳部に係合し得るフックを備えたアームとを備えた管離脱防止装置であって、前記止輪は、接合管に外嵌する対向した二つの湾曲した外嵌部と、二つの外嵌部の各々の一方端側から接合管より離れる外側へ向かって突出したボルト挿通部と、二つの外嵌部の各々の他方端側から接合管より離れる外側へ向かって離隔した状態で延長して先端側を接合した弾性変形可能な二股部とを備え、二つの外嵌部、二つのボルト挿通部及び二股部をダクタイル鋳鉄で鋳造して一体に連ねたことを特徴とするユニオンナット継手用管離脱防止装置である。
【0007】
外径寸法が32mm以下の小径の対応する接合管に適用させるために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記止輪は、外径寸法が32mm以下の対応する接合管に外嵌できる大きさに二つの外嵌部が形成され、二つの外嵌部の内周面の一方端から二股部の先端の肉厚中心箇所へ至る管直径方向に沿う寸法を、接合管の外径寸法に8mm乃至18mmの範囲で選択した値を加算した合計値とした請求項1記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置である。
【0008】
止輪の対向した二つの外嵌部で接合管をバランスよく挟圧するために請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記止輪の二股部は、管直径方向に沿って大きさが同一の二つの直線域と、二つの直線域に連なる湾曲域とでU字状に形成されている請求項1又は2記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置である。
【0009】
ボルト及びナットを設定トルクで緊締する本締めを確保するために請求項4記載の本発明が採用した手段は、前記二つのボルト挿通部は、対向面側に対向する凸部をそれぞれ突出形成し、前記ボルト及びナットを緊締して本締めしたときに、凸部どうしを当接させて止輪が接合管から離脱しない状態なり、前記ボルト及びナットを緩めて緊締を解いたときに、止輪が二つの外嵌部の内径寸法を接合管の外径寸法より大きい状態とするように、これら凸部の突出寸法を決めた請求項1、2又は3記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置である。
【0010】
請求項5記載の本発明が採用した手段は、前記止輪は、二つの外嵌部に二股部の二つの直線域を接合する箇所から、各外嵌部の他方端寄り側の部分を張り出し、ボルト及びナットを緊締し又は緊締しない状態において、二股部の二つの直線域の内側面どうしの離隔寸法を二つの外嵌部の他方端どうしの離隔寸法よりも大きくし、更に、二股部の直線域の肉厚の中心を通って接合管の直径方向に延びる中心線と外嵌部の肉厚の中心を通る周方向に延びる中心線との交点から接合管の中心点へ延びる連結仮想直線を、接合管の中心点を通る二分割中心線と25°〜40゜の範囲で交差させた請求項1、2、3又は4記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置は、ボルト及びナットから離れた止輪の箇所に二股部が設けられるため、止輪が、接合管に二つの外嵌部を当接させるまでの初期段階において、二股部に塑性変形を生じさせないか、又は生じさせても塑性変形を非常に小さくでき、更に、二つの外嵌部の接合管に対する押圧が進行する段階において、接合管から二つの外嵌部へ伝達する反力で二股部の弾性変形の進行度合いが次第に小さくなり、二股部に塑性変形を生じさせないか、又は生じさせても塑性変形を非常に小さくできるので、再施工のためにボルト・ナットを緩めて本締めを解いたとき、二股部等に蓄えれている反発弾性力で二つの外嵌部を離反させて自然に拡開させることが可能となり、再施工のためにボルト・ナットを緩めたときに接合管から簡単に離脱できる。
【0012】
請求項2記載の本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置は、外径寸法が32mm以下の接合管に、当該接合管に対応した大きさの止輪の二つの外嵌部を外嵌させたとき、二つの外嵌部の一方端から二股部の先端の肉厚中心箇所へ至る管直径方向に沿う寸法を、接合管の外径寸法に8mm乃至18mmの範囲で選択した値を加算した値としたことで、二股部(殊に、二股部の先端側)に塑性変形を生じさせないか、又は塑性変形を非常に小さくすることが可能となり、本締めを解いたとき二股部等に蓄えれている反発弾性力で二つの外嵌部を離反させて自然に拡径させることができるようになる。
【0013】
請求項3記載の本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置は、止輪の二股部の二つの直線域に同一状態の曲げモーメントが生じるため、接合管を押圧するための二つの外嵌部に生じる力を等しくして二つの外嵌部でバランスよく接合管を挟んで押圧することができる。
【0014】
請求項4記載の本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置は、ボルト及びナットを緊締して本締めしたときに、二つのボルト挿通部の凸部が当接することで、それ以上の緊締をしないように作業者に注意を促してボルト及びナットを適切トルクで緊締した本締めを確保でき、また、ボルト及びナットを緩めて緊締を解いたときに、止輪が二つの外嵌部の内径寸法を接合管の外径寸法より大きくするので、接合管から止輪を離脱させることができる。
【0015】
請求項5記載の本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置は、止輪26に関する前記離隔寸法及び交差角度について前記関係及び値を採用することで、外嵌部の他方端側に、接合管の中心点へ向かう押圧力を生じさせて接合管を確実に押圧させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図9は本発明に係るユニオンナット継手用管離脱防止装置の実施の形態を示すものである。図1〜図3は接合管を挿着する前の管離脱防止装置21を示すものであって、図1は側面図、図2は正面図、図3は横断面した平面図である。図4は仮締めした状態の止輪26の正面図である。図5の図(A)〜図(C)はアーム33,33付き係止金具31を示すものであり、図(A)は側面図、図(B)は正面図、図(C)は底面図である。図6及び図7は接合管Kを挿入しユニオンナット25を緊締した管離脱防止装置21を示すものであって、図6は左半分を示す横断面した平面図、図7は正面図である。図8の(A)は図7に中心線等を付加して得た正面図、同図の(B)は二股部38の直線域38a,38aの離隔寸法f及び外嵌部34,35の下端の離隔寸法gの採り得る寸法の範囲を示す表である。図9は、止輪26、係止金具31及びユニオンナット25との関係を示すものであり、図(A)は止輪26に係止金具31を装着する前の状態を示す側面図、図(B)は止輪26に係止金具31を装着した場合を示す側面図、図(C)は係止金具31及び止輪26をユニオンナット25へ装着する場合を示す側面図、図(D)は装着後の状態(仮組立の状態)を示す側面図である。
【0017】
本実施の形態に係る管離脱防止装置21は、図1及び図2に示すように、管又は継手本体22の受口部23の外周面に刻設した雄ねじ24に螺合緊締されるユニオンナット25と、ユニオンナット25よりも後端側で接合管Kに外嵌装着してボルト28及びナット29により緊締される止輪26と、止輪26の対向する外周側面上に周方向へ沿って突出して形成された係止用耳部27,27と、ユニオンナット25に設けた環状凹部30と、該環状凹部30に対して係脱自在な馬蹄形状の係止金具31と、係止金具31の対向する外周側面に取り付けられ、先端に止輪26の係止用耳部27に係合し得るフック32を備えたアーム33,33とで構成され、硬質塩化ビニール管、ポリエチレン管等のプラスチック管、内外周面を被覆した鋼管又は被覆のない鋼管の管継手部分に用いられる。
【0018】
前記止輪26は、図4に示すように、左右対向して左右対称に湾曲して形成され接合管Kに外嵌する外嵌部34,35と、二つの外嵌部34,35の各々の一方端側A(図中の上端側)から接合管Kより離れる外側(図中の上方)へ向かって延設したボルト挿通部36,37と、二つの外嵌部34,35の各々の他方端側B(図中の下端側)から接合管Kより離れる外側(図中の下方)へ向かって離隔した状態で延長して先端側(図中の下端側)を接合した弾性変形可能な二股部38とを備え、これら二つの外嵌部34,35、二つのボルト挿通部36,37及び一つの二股部38をダクタイル鋳鉄で鋳造して一体に連ねて形成してある。上記止輪26の左右の係止用耳部27,27は、図9の図(A)及び図4に示すように、側面から見たときに、左右の湾曲した外嵌部34,35の周方向に沿って延びる筋状を成しており、外嵌部34,35と鋳造により一体に形成されている。
【0019】
前記止輪26の二つのボルト挿通部36,37は、図4に示す如く、二つの外嵌部34,35に連なる本体部36a,37aと、本体部36a,37aの対向面側にそれぞれ対向するように突出形成した凸部36b,37bとを備え、図7に示す如く、ボルト及びナット28,29を設定トルクで緊締して本締めしたときに、これらの凸部36b,37bを当接させることで、それ以上の緊締をしないようにし(もし、凸部36b,37bが当接した後にボルト及びナット28,29を緊締したき、締付けトルクが急激に上昇することなる)、作業者に注意を促してボルト及びナット28,29を適切トルクで緊締した本締めを確保できるようにしてある。これら凸部36b,37bの突出寸法は、ボルト・ナット28,29を緊締して本締めしたときに凸部どうしを当接させて、接合管Kに鋸歯26aを食い込まして離脱できない状態とし、また、凸部どうしを当接させた後にボルト・ナット28,29を緩めて緊締を解いたときに、止輪26が二つの外嵌部34,35の内径寸法を接合管Kの外径寸法より大きくするように決められる。
【0020】
前記止輪26は、図4に示すように、ボルト挿通部36,37へ通したボルト28にナット29が螺合され、ボルト・ナット28,29を仮締めした状態の場合に、二つの外嵌部34,35の間に遊合状態で接合管Kを挿通させることができ、その後に、図7示すように、ボルト・ナット28,29を本締めした状態の場合に、二つの外嵌部34,35を近づけさせて接合管Kを二つの外嵌部34,35で挟圧保持して、外嵌部34,35の内周面に刻設した多数の鋸歯26a(図6参照)を接合管Kの外周面へ食い込ませて滑り止め機能を発揮させることができる。
【0021】
前記止輪26は、ボルト・ナット28,29の締め付けにより、二つの外嵌部34,35の内周面を接合管Kの外周面に当接させるに至るまで、二股部38の先端側に曲げモーメントが生じる。この曲げモーメントにより二股部38の先端側に生じる曲げ応力は、二つの外嵌部34,35の内周面の一方端34a,35a(図4参照)から二股部38の先端の肉厚中心箇所Cへ至る管直径方向に沿う寸法Lが二股部38を設けた分だけ長くなるため、従来の止輪6(図13及び図14参照)の外嵌部6aの奥側(他端側B)に生じる曲げ応力よりも小さくできる。そのため、止輪26は、接合管Kに二つの外嵌部34,35を当接させるまでの初期段階において、二股部38に塑性変形を生じさせないか、又は生じさせても塑性変形を非常に小さくできることになる。
【0022】
前記止輪26は、接合管Kに二つの外嵌部34,35を当接させた後にボルト・ナット28,29の本締めが進行するのに伴い、ボルト・ナット28,29の締付力及び接合管Kからの反力を受けて二つの外嵌部34,35及び二股部38が弾性変形しつつ、外嵌部34と二股部38の境界部おける両者34,38の内力及び外嵌部35と二股部38の境界部における両者35,38の内力がつり合う状態となる。そして、二つの外嵌部34,35は、ボルト・ナット28,29の締付力をボルト挿通部36,37を介して一端側Aから受けると共に、弾性変形する二股部38の力を他端側Bから受けて、接合管Kの外周面を押圧する。止輪26は、二つの外嵌部34,35の接合管Kに対する押圧が進行すると、接合管Kから二つの外嵌部34,35へ伝達する反力で二股部38の弾性変形の進行度合いが次第に小さくなり、二つの外嵌部34,35が接合管Kを次第に強く押圧して本締めすることになる。
【0023】
二つの外嵌部34,35は、このように両端側A,Bから力を受けて接合管Kの外周面を押圧するため(図8に押圧力P1,P2,P3で示す)、両端側A,Bの接合管Kに対する押圧力P1と押圧力P3の差を小さくして、接合管Kに対する押圧力を管周囲方向で均一に近づけることができるようになる。これに対して、従来の止輪6(図13及び図14参照)は、他端側に二股部が無いため、両端側A,Bの接合管Kに対する押圧力に大きな差異が生じ、接合管Kに対する押圧力を管周囲方向で不均一となる。
【0024】
前述の如く、止輪26は、接合管Kに二つの外嵌部34,35を当接させるまでの初期段階において、二股部38に塑性変形を生じさせないか、又は生じさせても塑性変形を非常に小さくでき、更に、二つの外嵌部34,35の接合管Kに対する押圧が進行する段階において、接合管Kから二つの外嵌部34,35へ伝達する反力で二股部38の弾性変形の進行度合いが次第に小さくなるため、二股部38に塑性変形を生じさせないか、又は生じさせても塑性変形を非常に小さくできるので、再施工のためにボルト・ナット28,29を緩めて本締めを解いたとき、二股部38等に蓄えれている反発弾性力で二つの外嵌部34,35を離反させて自然に拡開させることが可能となり、再施工のためにボルト・ナット28,29を緩めたときに接合管Kから簡単に離脱できる。
【0025】
前記止輪26は、図4及び図9の図(A)に示すように、管外径寸法が32mm(一般用HIVP管の場合には呼び25に相当)、管外径寸法が26mm(同呼び20に相当)、管外径寸法が22mm(同呼び16に相当)及び管外径寸法が18mm(同呼び13に相当)の小径の接合管Kに適用させるために、外径寸法の32mm以下の選択した接合管Kに外嵌できる大きさに二つの外嵌部34,35を湾曲形成して、二つの外嵌部34,35の一方端34a,35a(図4参照)から二股部38の先端の肉厚中心箇所Cへ至る管直径方向に沿う寸法Lを、接合管Kの外径寸法に8mm乃至18mmの範囲で選択した値を加算した値(具体的には、管外径寸法が32mmの場合には寸法Lを40mm乃至50mm、管外径寸法が26mmの場合には寸法Lを34mm乃至44mm、管外径寸法が22mmの場合には寸法Lを30mm乃至40mm、管外径寸法が18mmの場合には寸法Lを26mm乃至36mm)を選択すると共に、二つの外嵌部34,35及び二股部38について、厚み寸法t(但し、鋸歯26aを除く)を3.0mm乃至5.0mmの範囲で、且つ前後奥行き寸法n(図9の図(A)参照)を15mm乃至10mmの範囲で選択することで、止輪26の中で大きな曲げモーメントの生じる箇所である二股部38の先端側の曲げモーメントを押さえて塑性変形を生じさせないか、又は塑性変形を非常に小さくなるようにして、本締めを解いたとき二股部38等に蓄えれている反発弾性力で自然に拡開して、接合管Kに対して開放可能または開放容易な状態とすることができるようにしてある。
【0026】
前記止輪26の二股部38は、図4に示すように、管直径方向に沿って離隔して大きさが同一の二つの直線域38a,38aと、二つの直線域38a,38aに連なる湾曲域38bとでU字状に形成され、ボルト28及びナット29の緊締に伴い、二つの直線域38a,38aに同一状態の曲げモーメントが生じることで、接合管Kを押圧するための二つの外嵌部34,35に生じる力を等しくして二つの外嵌部34,35で接合管Kをバランスよく挟圧するようにしてある。また、二股部38は、U字状にすることで、鋳造に際し、湯廻りの不良を起こしにくい肉厚にすることが可能になった。
【0027】
前記止輪26は、図8(A)に示す如く、外嵌部34(35)に二股部38の直線域38a(38a)を接合する箇所から、外嵌部34(35)の他方端34c(35c)寄り側の部分を張り出してある。前記止輪26は、ボルト及びナット28,29を緊締して前記ボルト挿通部36,37の凸部36b,37bを当接した直後の状態において、二股部38の二つの直線域38a,38aを離反させて離隔寸法f(選択する接合管Kに対して具体的に採る値の範囲は同図(B)の表を参照)とすると共に、二つの外嵌部34,35の他方端34c,35cを離反させて離隔寸法g(選択する接合管Kに対して具体的に採る値の範囲は同図(B)の表を参照)とし、また、離隔寸法fと離隔寸法gとの関係をf>g(好ましくは、f>2.5g)とし、更に、二股部38の直線域38aの肉厚の中心を通る上下方向(接合管Kの直径方向)に延びる中心線vと外嵌部34,35の肉厚の中心を通る周方向に延びる中心線sとの交点uから接合管Kの中心点Kaへ延びる連結仮想直線yを、接合管Kの中心点Kaを通り離隔寸法fを二分割する二分割中心線wと交差角度θ(具体的に採る値はθ=30°(+10°〜−5°)であるθ=25°〜40゜の範囲である。)で交差させてある。二股部38の二つの直線域38a,38aの離隔寸法fは、接合管Kの半径寸法程度にするのが好ましい。
【0028】
前記止輪26の離隔寸法fと離隔寸法gとの関係及び交差角度θについては、上述の如くボルト挿通部36,37の凸部36b,37bを当接させた直後の状態について説明したが、凸部36b,37bを当接させる前のボルト及びナットを緊締し又は緊締しない状態においも、離隔寸法fと離隔寸法gとの関係をf>gとし、また、交差角度θを25°〜40゜の範囲とすることもある。
【0029】
前記止輪26は、離隔寸法f,g及び交差角度θについて上記関係及び値を採用することで、外嵌部34(35)の他方端34c(35c)側に、接合管Kの中心点Kaへ向かう押圧力P3を生じさせて接合管Kを確実に押圧させることができる。
【0030】
前記ユニオンナット25の環状凹部30に係脱自在に嵌合装着される係止金具31は、図5の図(B)に示すように、馬蹄形状を成し、その開口部の間口寸法Eは、ユニオンナット25の環状凹部30の溝底30aの外径寸法d4(図3参照)よりも小さく設定されている。また、溝底30aの外径寸法d4は、係止金具31の内周面の直径D1よりも小さく設定されている。すなわち、D1>d4>Eという寸法関係に設定されている。そして、係止金具31の対向する外周側面には、止輪26の係止用耳部27に係止し得るフック32を備えたアーム33,33が取り付けられていることは前述した通りである。各アーム33は、アーム本体33aの下方に回転止め用凸状33bが突設され、ダクタイル鋳鉄の鋳造により係止金具31と一体に形成されている。
【0031】
このように構成された止輪26、アーム33,33付き係止金具31及びユニオンナット25は、管継手を構成でき、管継手を構成したときに可撓性及び伸縮性を発揮する関係に設定されている。アーム33,33は、図2に示すように、フック32の内周面32bを湾曲凹状に形成すると共に、図9に示すように、係止用金具31の後端面31aからフック32の内側面32aまでの寸法hを止輪26の前後奥行き寸法nより大きくすることで、アーム間に仮締め状態の止輪26を挿入させ(同図の図(B)参照)、フック32を止輪26の外側から管軸方向(前後方向)に沿って外嵌部34(35)の外周面34a(35a)上へ外嵌した状態で移動でき(同図の図(C)参照)、この外嵌した状態で移動したフック32を止輪26の外嵌部34(35)の湾曲した外周面34a(35a)の接線方向(上下方向)で係合させて、止輪26との間で上下方向へ分離するのを阻止するようにしてある。また、係止金具31は、各フック32の回転止め用凸状33bを止輪26の係止用耳部27に当接可能とすることで、止輪26との間での回転方向のズレを防止して、止輪26の係止用耳部27にフック32を確実に係止できるようにしてある。更に、アーム33,33は、図9の図(C)に示すように、根元側の切欠き溝33cの溝幅寸法iをユニオンナット25の環状凹部30を形成するフランジ部39の厚み寸法mよりも大きくして、ユニオンナット25の環状凹部30へ係止金具31を外嵌できるようにしてある。止輪26は、上記前後奥行き寸法nを、係止用金具31における上記寸法hからフランジ部39における上記寸法mを引いた値(h−m)より大きい値の寸法にすることで、係止金具31と共にユニオンナット25に装着後に係止金具31から外れないようにしてある。止輪26は、係止用耳部27の厚み寸法j(管軸方向(前後方向)に沿った寸法)とユニオンナット25のフランジ部39の厚み寸法mとの和を、アーム33の切欠き溝33cの溝幅寸法iよりも大きくする(j+m>i)ことで、アーム33の回転止め用凸状33bを係止耳部27に当接可能となるようにしてある。
【0032】
このように構成されたユニオンナット継手用管離脱防止装置21は、工場で鋳造成形された後、必要に応じて仮組み立てられ、この状態で出荷される。仮組み立ては、先ず、図3に示すように、ユニオンナット25の内周面側へパッキン40を装入し、これらの全体を継手本体22の受口部23の外周面に刻設した雄ねじ部24へ螺着する。続いて、図3及び図2に示すように、ボルト28及びナット29を仮締めした状態の止輪26の外嵌部34,35の外周面34a,35a上に係止金具31のフック32,32を外嵌させ、係止用耳部27,27に対してフック32,32を係合できるようにする。フック32の係合は、図9の図(A)及び図(B)に示すように、止輪26の前端面26bと係止金具31の後端面31aとを接合させる状態で、係止金具31のアーム33が止輪26の係止用耳部27に重なるように止輪26と係止金具31を相対的に移動させる。そして、アーム33先端のフック32を係止用耳27へ向かって係止金具31の全体を前側へスライドさせ、同図の図(C)に示すように、係止金具31と止輪26との間隔を拡げる。
【0033】
次に、ユニオンナット25を係止金具31の下方から上方へ移動させるか又は係止金具31をユニオンナット25に対して下降させ、同図の図(D)に示すように、係止金具31をユニオンナット25の環状凹部30に外嵌装着する。このとき、馬蹄形状を成す係止金具31の開口部の間口寸法E(図5参照)は、環状凹部30の溝底12Aの外径寸法d4(図3参照)よりも小さくなるように設定されているので、間口寸法Eを拡大させながら無理嵌めすることになる。同図の図(D)に示すように、無理嵌めした後は、前記d4>Eの寸法関係により、係止金具31がユニオンナット25から脱落することはない。また、止輪26の外嵌部34,35に外嵌して係合しているアーム33,33の先端のフック32,32が止輪26から脱落することもない。つまり、止輪26と係止金具31とユニオンナット25とが仮組立られた状態で一つのセットとして連携して存在することになる。
【0034】
施工現場では、前記仮組立状態の管離脱防止装置21に対して接合管Kを挿入する。挿入は、仮組立の状態で止輪26と、ユニオンナット25と、パッキン40と、継手本体22の中心軸線が一致しているため、接合管Kの先端側の挿口を、止輪26側からユニオンナット25、パッキン40へ挿通させて継手本体22内へ到達させるだけでよく、極めて容易である。然る後は、ユニオンナット25を手で回転させて接合管Kを仮止めした後、スパナ又はパイプレンチ等で水密性に必要な最低締付トルクまで締め付けて増し締めする。ユニオンナット25の増し締めが完了したことを確認した後、止輪26のボルト28及びナット29による締結部が締め易い位置(前記締結部が上方になる位置)に来るように、これを回動させる。そして、最後に止輪26を締結する。止輪26の締結は、接合管Kに対する軸方向の位置決めと、ボルト締結部の向き(図1及び図2並びに図7に示すように上方へ位置させる)とを決定した後、ボルト・ナット28,29とを本締めし、止輪26の内周面に刻設した鋸歯26aを接合管Kの外周面へ食い込ませて滑り止め機能を発揮するように行えばよい。
【0035】
これにより、接合管Kは、図6に示すように、フック32が止輪26上の移動できる範囲内で可撓伸縮することができる。また、施工後において、接合管Kと継手本体22との間に管離脱方向の力が作用した場合であっても、係止金具31のアーム先端のフック32が止輪26の係止用耳部27と接触し、係止金具31がユニオンナット25の環状凹部30に外嵌装着されているので、接合管Kは離脱が防止される。
【0036】
発明者は、本発明の効果を確認するために、図10の図(A)及び図(B)に示す本発明に用いるダクタイル鋳鉄製の止輪の試験品と、図(C)及び図(D)に示す従来のダクタイル鋳鉄製の止輪の試験品を行いて、接合管である外径寸法が22mm(一般用HIVP管の呼び16)に対する締め付け試験を行い、図11及び図12の表に示す結果を得た。各試験品のボルト・ナットは、いずれもM5を用い、試験品の寸法をa=8.00mm、b=22.45mm、c=11.50mm、e=25.50mm、t=4.00mm、n=14.0mmとしてある。止輪の素材であるダクタイル鋳鉄は、種類がFCD420、引張強さが460N/mm2 、伸びが15%のものを使用した。ナットを締め付けるトルクレンチには、前田金属工業株式会社製の測定範囲が1〜6N・mのプリセット形トルクレンチ(型式:T2LN6)を使用した。ボルト・ナットには、焼き付き防止剤を塗布して試験を行った。
【0037】
締め付け試験は、図11に示す一回目の試験と、図12に示す二回目の試験とを行った。一回目の試験は、図11の図(A)に示す如く、本発明及び従来の何れの止輪の場合も、T2=1.50mmとなるまでナットを締め付け、その後にナットの締め付けを緩めて開放し、接合管に対する状態及びナットの締め付けトルク値と、間隙T1,T2,T3の測定寸法値との関係を得た。なお、鋸歯(図6の符号26aで示すもの)が接合管に接触するときのナットの締め付けトルクは、読み取り不能な小さい値であった。図(B)は、試験前(締付前)と試験後(締付後に開放)の状態における各箇所の鋸歯の内径寸法値を示すものである。一回目の試験は、ナットの締め付けトルクが小さく、本発明及び従来の何れの止輪の場合も、試験後は接合管から離脱できるまで自然に拡径している。
【0038】
二回目の試験は、図12の図(A)に示す如く、本発明及び従来の何れの止輪の場合も、T2=1.00mmの近辺となるまでナットを締め付け、その後にナットの締め付けを緩めて開放して、接合管に対する状態及びナットの締め付けトルク値と、間隙T1,T2,T3の測定寸法値との関係を得た。ナットの締め付けを緩めて開放すると、本発明の場合は試験後に接合管から離脱できるまで自然に拡径するのに対して、従来の場合は試験後に接合管から離脱することができず、接合管に締め付けた状態のままであった。
【0039】
二回目の試験における本発明の場合は、図12の図(A)に示すT3について、ナットの締め付けが進行するのに伴い減少するが、ナットの締め付けを開放したときの値が締め付け前の値である3.96mmと同一であることから、二股部38(図4参照)に塑性変形が生じることなく弾性変形のみが生じていることが判る。また、間隙T1,T2については、ナットの締め付けを開放したときの値が締め付け前の値より若干小さくなっていることから、外嵌部34,35(図4参照)に塑性変形を若干の生じているが、締付後に開放したたときの鋸歯の内径寸法d1,d2,d3の値が近似しており、真円に近い状態に塑性変形したことが判る。
【0040】
これに対して、二回目の試験における従来の場合は、試験後に接合管から離脱することがでないことから、C字状の外嵌部6a(図14参照)に大きな塑性変形が生じていることが判る。
【0041】
二回目の試験において、ナットの締め付けを緩めて開放したときに自然に拡径して接合管から離脱できるT2の最大値(以下、「管離脱限界値」と言う。)を求めてはいないが推定可能である。接合管に止輪の鋸歯を接触させてから管離脱可能に締め付けできるT2の許容範囲は、鋸歯が接合管に接触を開始したときの値(以下、「管接触開始値」と言う。)から管離脱限界値を減算したΔT2の値で評価できることから、管離脱限界値について本発明の場合をT2=0.90mmと推定すると共に従来の場合をT2=1.30mmと推定したとき、本発明の場合はΔT2=4.80−0.90=3.90mmであるのに対して、従来の場合はΔT2=3.74−1.30=2.44mmであり、本発明の場合の方が大きい。
【0042】
また、接合管Kに止輪26の鋸歯26aを接触させてから接合管Kに鋸歯26aを食い込ませて滑り止め機能を発揮させるのに最低必要な締め付け量は、T2で評価するとT2を2.00mm減少させたことに相当する。接合管Kに鋸歯26aを食い込ませて滑り止め機能を発揮させるT2の値からT2の管離脱限界値までの範囲は、本締め時の余裕範囲Sとして評価でき、本発明の場合の余裕範囲S=4.80−2.00−0.90=1.90mmであるのに対して、従来の場合の余裕範囲S=3.74−2.00−1.30=0.44mmであり、本発明の場合の方が4倍程度大きい。
【0043】
ところで、止輪26の素材となるダクタイル鋳鉄は、引張強さ等の機械的性質のバラツキが大きく、また鋳造時の公差も大きくなる。更に、接合管Kにも外径公差がある。止輪を接合管に滑り止め機能を発揮させるように締め付けるには、これら大きなバラツキや公差を吸収できるようにする必要がある。本発明の場合は、本締め時の余裕範囲Sが大きいことから、これら大きなバラツキや公差を吸収することが可能となり、接合管Kに対する止輪26の滑り止め機能を確実に発揮させることができるようになる。これに対して、従来の場合は、本締め時の余裕範囲Sが小さいことから、これら大きなバラツキや公差を吸収することが非常に困難となり、接合管Kに対する止輪6の滑り止め機能を確実に発揮させることができないことがある。
【0044】
本発明の場合は、本締め時の余裕範囲Sが大きいことから、二つのボルト挿通部36,37の凸部36b,37bを当接した後にボルト・ナット28,29の締め付けを緩めて開放したときに自然に拡径して接合管Kから離脱できる状態を得られるように、二つの凸部36b,37bの突出寸法を鋳物型に設定しておけば、本締め時の余裕範囲Sに収まる鋳物み成形した止輪26を得ることが可能であり、誰がボルト・ナット28,29を締め付けても接合管Kに止輪26を確実に緊締させることができ、また、ボルト・ナット28,29を緩めると接合管Kから止輪26を確実に離脱させることができる。これに対して、従来の止輪6は、本締め時の余裕範囲Sが小さいため、二つのボルト挿通部の凸部の突出寸法を鋳物型に設定することが難しく、本締め時の余裕範囲Sに収まる鋳物み成形した止輪を得ることが困難である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態に係る管離脱防止装置において接合管を挿着する前を示す側面図である。
【図2】同実施の形態に係る管離脱防止装置において接合管を挿着する前を示す正面図である。
【図3】同実施の形態に係る管離脱防止装置において接合管を挿着する前を示す横断面した平面図である。
【図4】同実施の形態に係る管離脱防止装置の仮締めした状態の止輪の正面図である。
【図5】同実施の形態に係る管離脱防止装置のアーム付き係止金具を示すものであり、図(A)は側面図、図(B)は正面図、図(C)は底面図である。
【図6】同実施の形態に係る管離脱防止装置において、接合管を挿入しユニオンナットを緊締した状態の左半分を示す横断面した平面図である。
【図7】同実施の形態に係る管離脱防止装置において、接合管を挿入しユニオンナットを緊締した状態を示す正面図である。
【図8】(A)は図7に中心線等を付加して得た正面図、同図の(B)は二股部の直線域の離隔寸法及び外嵌部の下端の離隔寸法の採り得る寸法の範囲を示す表である。
【図9】同実施の形態に係る管離脱防止装置を示すものであり、図(A)は止輪に係止金具を装着する前の状態を示す側面図、図(B)は止輪に係止金具を装着した場合を示す側面図、図(C)は係止金具及び止輪をユニオンナットへ装着する場合を示す側面図、図(D)は装着後の状態(仮組立の状態)を示す側面図である。
【図10】図(A)及び図(B)は確認試験に用いる本発明の場合の止輪の正面図及び側面図、図(C)及び図(D)は確認試験に用いる従来の試験品の止輪を示す正面図及び側面図である。
【図11】図(A)及び図(B)は一回目の試験の結果を示す表である。
【図12】図(A)及び図(B)は二回目の試験の結果を示す表である。
【図13】従来の管離脱防止装置の全体を示すものであって、一部を破断して示す側面図である。
【図14】従来の管離脱防止装置の正面図である。
【符号の説明】
【0046】
21…離脱防止装置、22…継手本体、23…受口部、24…雄ねじ、25…ユニオンナット、26…止輪、27…係止用耳部、28…ボルト、29…ナット、30…環状凹部、31…係止金具、32…フック、33…アーム、34…外嵌部、35…外嵌部、36…ボルト挿通部、37…ボルト挿通部、38…二股部、40…パッキン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に雄ねじを刻設した受口部を有する管又は継手本体に、無ねじの接合管を挿入し、環状のゴムパッキンを挿嵌介在せしめてユニオンナットを前記受口部に螺合緊締する構造の管継手に設けられ、前記ユニオンナットよりも後端側の接合管に外嵌装着されてボルト及びナットにより緊締される止輪と、該止輪の外周側面に周方向へ沿って突出して形成された係止用耳部と、前記ユニオンナットに設けた環状凹部と、該環状凹部に対して係脱自在な馬蹄形状の係止金具と、該係止金具の外周側面に取り付けられ、先端に前記止輪の係止用耳部に係合し得るフックを備えたアームとを備えた管離脱防止装置であって、前記止輪は、接合管に外嵌する対向した二つの湾曲した外嵌部と、二つの外嵌部の各々の一方端側から接合管より離れる外側へ向かって突出したボルト挿通部と、二つの外嵌部の各々の他方端側から接合管より離れる外側へ向かって離隔した状態で延長して先端側を接合した弾性変形可能な二股部とを備え、二つの外嵌部、二つのボルト挿通部及び二股部をダクタイル鋳鉄で鋳造して一体に連ねたことを特徴とするユニオンナット継手用管離脱防止装置。
【請求項2】
前記止輪は、外径寸法が32mm以下の対応する接合管に外嵌できる大きさに二つの外嵌部が形成され、二つの外嵌部の内周面の一方端から二股部の先端の肉厚中心箇所へ至る管直径方向に沿う寸法を、接合管の外径寸法に8mm乃至18mmの範囲で選択した値を加算した合計値とした請求項1記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置。
【請求項3】
前記止輪の二股部は、管直径方向に沿って大きさが同一の二つの直線域と、二つの直線域に連なる湾曲域とでU字状に形成されている請求項1又は2記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置。
【請求項4】
前記二つのボルト挿通部は、対向面側に対向する凸部をそれぞれ突出形成し、前記ボルト及びナットを緊締して本締めしたときに、凸部どうしを当接させて止輪が接合管から離脱しない状態なり、前記ボルト及びナットを緩めて緊締を解いたときに、止輪が二つの外嵌部の内径寸法を接合管の外径寸法より大きい状態とするように、これら凸部の突出寸法を決めた請求項1、2又は3記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置。
【請求項5】
前記止輪は、二つの外嵌部に二股部の二つの直線域を接合する箇所から、各外嵌部の他方端寄り側の部分を張り出し、ボルト及びナットを緊締し又は緊締しない状態において、二股部の二つの直線域の内側面どうしの離隔寸法を二つの外嵌部の他方端どうしの離隔寸法よりも大きくし、更に、二股部の直線域の肉厚の中心を通って接合管の直径方向に延びる中心線と外嵌部の肉厚の中心を通る周方向に延びる中心線との交点から接合管の中心点へ延びる連結仮想直線を、接合管の中心点を通る二分割中心線と25°〜40゜の範囲で交差させた請求項1、2、3又は4記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置。
【請求項1】
外周面に雄ねじを刻設した受口部を有する管又は継手本体に、無ねじの接合管を挿入し、環状のゴムパッキンを挿嵌介在せしめてユニオンナットを前記受口部に螺合緊締する構造の管継手に設けられ、前記ユニオンナットよりも後端側の接合管に外嵌装着されてボルト及びナットにより緊締される止輪と、該止輪の外周側面に周方向へ沿って突出して形成された係止用耳部と、前記ユニオンナットに設けた環状凹部と、該環状凹部に対して係脱自在な馬蹄形状の係止金具と、該係止金具の外周側面に取り付けられ、先端に前記止輪の係止用耳部に係合し得るフックを備えたアームとを備えた管離脱防止装置であって、前記止輪は、接合管に外嵌する対向した二つの湾曲した外嵌部と、二つの外嵌部の各々の一方端側から接合管より離れる外側へ向かって突出したボルト挿通部と、二つの外嵌部の各々の他方端側から接合管より離れる外側へ向かって離隔した状態で延長して先端側を接合した弾性変形可能な二股部とを備え、二つの外嵌部、二つのボルト挿通部及び二股部をダクタイル鋳鉄で鋳造して一体に連ねたことを特徴とするユニオンナット継手用管離脱防止装置。
【請求項2】
前記止輪は、外径寸法が32mm以下の対応する接合管に外嵌できる大きさに二つの外嵌部が形成され、二つの外嵌部の内周面の一方端から二股部の先端の肉厚中心箇所へ至る管直径方向に沿う寸法を、接合管の外径寸法に8mm乃至18mmの範囲で選択した値を加算した合計値とした請求項1記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置。
【請求項3】
前記止輪の二股部は、管直径方向に沿って大きさが同一の二つの直線域と、二つの直線域に連なる湾曲域とでU字状に形成されている請求項1又は2記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置。
【請求項4】
前記二つのボルト挿通部は、対向面側に対向する凸部をそれぞれ突出形成し、前記ボルト及びナットを緊締して本締めしたときに、凸部どうしを当接させて止輪が接合管から離脱しない状態なり、前記ボルト及びナットを緩めて緊締を解いたときに、止輪が二つの外嵌部の内径寸法を接合管の外径寸法より大きい状態とするように、これら凸部の突出寸法を決めた請求項1、2又は3記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置。
【請求項5】
前記止輪は、二つの外嵌部に二股部の二つの直線域を接合する箇所から、各外嵌部の他方端寄り側の部分を張り出し、ボルト及びナットを緊締し又は緊締しない状態において、二股部の二つの直線域の内側面どうしの離隔寸法を二つの外嵌部の他方端どうしの離隔寸法よりも大きくし、更に、二股部の直線域の肉厚の中心を通って接合管の直径方向に延びる中心線と外嵌部の肉厚の中心を通る周方向に延びる中心線との交点から接合管の中心点へ延びる連結仮想直線を、接合管の中心点を通る二分割中心線と25°〜40゜の範囲で交差させた請求項1、2、3又は4記載のユニオンナット継手用管離脱防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−30761(P2009−30761A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197387(P2007−197387)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000148139)株式会社川西水道機器 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000148139)株式会社川西水道機器 (3)
【Fターム(参考)】
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