説明

ヨウ化ポリマー

本発明は、ヨウ化ポリマーを含む医療装置およびX線画像処理技術を用いて見ることができる医療装置を提供する。本発明はまた、医療装置に組み込まれ得る、または医療装置上にコーティングされ得る新規ヨウ化ポリマーを提供する。一局面では、本発明は、1個以上のヨウ化アリール環を含むバックボーンを有する、新規生分解性ヨウ化ポリマー(例えば、ポリ無水物、ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリアミド)を提供する。さらに、本発明は、ヨウ化ポリマーおよびヨウ化ポリマーを含む物品を調製するための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援についての声明
この発明は、National Institutes of Healthによって与えられた助成金番号DE13207の下、政府の支援によってなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
この特許書面は、2006年6月6日に出願された米国出願第60/811,261号(この出願は、参考として本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1、特許文献2および特許文献3ならびに特許文献4、特許文献5および特許文献6には、ポリマーバックボーンに組み込まれた治療薬を有す生分解性ポリマーが論じられている。ポリマーは、分解し、それによって治療薬を宿主に送達するので、医療用品(例えば、ステントなどの装置)を形成するのに、またはコーティングするのに有用な材料であると報告されている。
【0004】
このようなポリマー材料から形成される品を用いて遭遇する1つの起こり得る問題として、ポリマー製品は、金属製品とは異なり、X線画像処理技術を用いて見えないということがある。したがって、被験体への移植の間または移植後にポリマー製品の配置をモニターすることは可能ではない。このことが、これらおよびその他のポリマー材料から調製されたポリマー製品の実用化を制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第99/012990号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/009768号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/009767号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,486,214号明細書
【特許文献5】米国特許第6,613,807号明細書
【特許文献6】米国特許第6,689,350号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、目下のところ、X線画像処理技術を用いて目に見えるポリマー製品を調製するために使用できる材料が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本発明は、X線画像処理技術を用いて目に見える物品を提供するために、物品を形成またはコーティングするために使用できるヨウ化ポリマーを提供する。したがって、本発明の一実施形態は、生分解性ヨウ化ポリマーを含む物品(例えば、生分解性ヨウ化ポリマーでコーティングされた物品)(例えば、移植可能な医療装置)を提供する。X線によって見えるポリマー材料(例えば、物品、例えば、ポリマーでコーティングされた物品)が有用であり得るその他の適用として、獣医薬;食品、化粧品、医薬品、化学製品、農産物またはベティナリー(vetinary)製品の安全またはタガント同定;製品をコーティングする産業、傷または割れ目がないことを確実にするための機器または部分;化石の非破壊調査のための考古学的適用;または危険物質を検出するための安全のための適用が挙げられる。
【0008】
もう1つの実施形態では、本発明は、1個以上のヨウ化アリール環を含むバックボーンを有する、新規生分解性ヨウ化ポリマー(例えば、ポリ無水物、ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリアミド)を提供する。
【0009】
本発明はまた、ヨウ化ポリマーおよびヨウ化ポリマーを含む物品を調製するのに有用な方法を提供し、本明細書に介在し、開示される。
【0010】
ヨウ化ポリマーの機械特性および熱特性は、物品がポリマーから調製され、ならびに、ヨウ化ポリマーでコーティングされるのを可能にし得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】いくつかの実施形態に一致する、ヨウ化ポリマーを含む物品または器具のブロック図である。
【図2】図2(a)は、いくつかの実施形態に一致する、医療装置とヨウ化ポリマーコーティングとを含む物品または器具の断面図である。図2(b)は、いくつかの実施形態に一致する、ヨウ化ポリマーコーティングで部分的にコーティングされている表面を有する図2(a)に示される医療装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
X線不透過性のヨウ化サリチル酸ベースのポリ(無水物−エステル)を、2つの異なる方法、溶融縮合および溶液重合を用いて合成した。異なる重合法によって、異なる特性、X線可視性および細胞生体適合性を有するポリマーが得られた。一般に、溶融縮合法によって調製されたポリマー(4a〜c)は、低温溶液重合によって作製された対応するポリマー(5a〜c)よりも、高いガラス転移温度および高いヤング率を有する物質をもたらす。溶融縮合によって作製されたポリマー(4a〜c)はまた、より大きい分子量、広い多分散性指数およびより高いX線不透過性を有することがわかった。合成手順の選択は、最終適用および所望の特性に応じて変わる可能性が高い。例えば、これらのX線不透過性ポリマーの、熱感受性薬物との共重合体または混合物調製する場合には、溶液重合が選択される方法である可能性が最も高い。
【0013】
まず、ヨウ化サリチル酸ベースのポリマーの細胞適合性を、L929線維芽細胞を、ポリマーを含有する培地において3日間曝露することによって評価した。対照と比較して、3日間の低濃度(0.01mg/mL)の、ポリマー5bを除くポリマーで、細胞は陽性の増殖周期を示し、正常な星状形態の線維芽細胞を有していた。高いポリマー濃度で(0.1mg/mL)で、5−ヨードサリチル酸ベースのポリマー(4a、5a)を含有する培地における細胞形態および増殖は、対照と相違を示さなかったのに対し、3,5−ジヨードサリチル酸ベースのポリマー(4b、5b)の存在下では細胞は、低い適合性を示した。第2系列の研究では、細胞を、ポリマーでコーティングしたガラス表面上で培養し、細胞形態および数を検討した。L929マウス線維芽細胞は、1日目に接着し、増殖したが、2および3日目には正常な増殖周期を示さなかった。5−ヨードサリチル酸ベースのポリマー上での細胞応答は、溶融縮合(4a、4b)および溶液(5a、5b)重合法について同様であったが、4cと5c間でわずかな相違があった。ポリマーでコーティングされたカバースリップの分解に由来する、細胞培地中の遊離薬物(1a〜c)の相当に高い局所濃度が、細胞接着および増殖に負に影響を及ぼした可能性があった。全般的に、ヨウ化サリチル酸ベースのポリ(無水物−エステル)は、低濃度で好都合な細胞生体適合性を有しており、このことは、これらのX線不透過性ポリマー系を、生体材料として、または生体材料とともに使用する可能性を示唆する。
【0014】
特に断りのない限り、以下の定義を用いる:ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。アルキル、アルコキシなどは、直鎖および分岐基の両方を表すが、プロピルなどの個々の基についての言及は、直鎖基のみを包含し、イソプロピルなどの分岐鎖異性体は具体的に言及される。アリールは、フェニル基または少なくとも1個の環が芳香族である、約9〜10個の環原子を有する二環式炭素環式基(例えば、オルト縮合二環式炭素環式基)を表す。ヘテロアリールは、炭素と、各々、非過酸化物酸素、硫黄およびN(X)(ここで、Xは存在しないか、またはH、O、(C〜C)アルキル、フェニルもしくはベンジルである)からなる群から選択された1〜4個のヘテロ原子からなる5または6個の環原子を含む単環式芳香環の環炭素によって結合している基、ならびにそれに由来する約8〜10個の環原子の二環式複素環(例えば、オルト縮合二環式複素環)の基、特に、ベンズ誘導体またはそれにプロピレン、トリメチレン,またはテトラメチレンジラジカルを縮合することによって誘導されたものを包含する。
【0015】
基、置換基および範囲について以下に列挙される具体的な好ましい値は、単に例示のためのものであり、基および置換基の、その他の定義される値または定義される範囲内のその他の値を排除するものではない。
【0016】
具体的には、(C〜C)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、ペンチル、3−ペンチルまたはヘキシルであり得る;(C〜C)シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルであり得る;(C〜C)アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソーブトキシ、s−ブトキシ、ペントキシ、3−ペントキシまたはヘキシルオキシであり得る;(C〜C)アルカノイルは、アセチル、プロパノイルまたはブタノイルであり得る;ハロ(C〜C)アルキルは、ヨードメチル、ブロモメチル、クロロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、2−クロロエチル、2−フルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチルまたはペンタフルオロエチルであり得る;(C〜C)アルコキシカルボニルは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルまたはヘキシルオキシカルボニルであり得る;(C〜C)アルキルチオは、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオまたはヘキシルチオであり得る;(C〜C)アルカノイルオキシは、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、イソブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシまたはヘキサノイルオキシであり得る;アリールは、フェニル、インデニルまたはナフチルであり得る;およびヘテロアリールは、フリル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソオキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾイル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、ピリジル、(またはそのN−オキシド)、チエニル、ピリミジニル(またはそのN−オキシド)、インドリル、イソキノリル(またはそのN−オキシド)またはキノリル(またはそのN−オキシド)であり得る。
【0017】
移植可能な金属装置を、装置の位置を調べるために、移植の際または移植後にX線で見ることはよくあることである。残念ながら、多数の非金属装置をX線を用いて見ることは可能ではない。本発明は、X線不透過性ヨード基を含む物品を提供する。ヨード基は、物品が作製される材料に組み込むことができ、またはヨード基は、物品上にコーティングされている材料中に存在し得る。
【0018】
移植可能な装置
一実施形態では、本発明は、X線画像処理技術を用いて見ることができる移植可能な医療装置を提供する。これらの装置は、金属、金属合金、セラミック、ガラス、無機ポリマーおよび有機ポリマーを含めた任意の適した材料で作製され得る。例えば、移植可能な医療装置として、ステント、整形外科用装置、骨プレート、ペースメーカー、ポンプ、ネジ、ピン、カテーテル、移植片、縫合糸、手術用メッシュ、ミクロスフェア、フィルム、ファイバー、眼球内レンズ、手術用レーザー、除細動器、ペースメーカーまたは除細動器のリードまたは電極、注入ポンプ、補聴器、人工呼吸器、移植可能な薬物ポンプ、乳房インプラントまたはふくらはぎのインプラントなどの美容インプラント、、結腸鏡、胃内視鏡、気管内チューブ、気管支鏡、歯科補綴、矯正装置、子宮内器具、酸素付加器、置換関節、骨プロテーゼ、セメント、置換腱、人工喉頭、結紮クリップおよび心室補助装置が挙げられる。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、ヨード基が、ポリマーバックボーンに存在し、例えば、ヨウ化ポリマーを形成する。
【0020】
本発明の一実施形態では、装置は、ヨード基(例えば、アリールヨード基)を含む材料から作製され得る(例えば、装置は、ヨウ化ポリマーと混合された材料から形成される)。例えば、装置は、ポリマーバックボーン中に芳香族または脂肪族ヨード基を有する(例えば、ポリマーバックボーン中のアリール−ヨード基)ポリマーまたは共重合体から作製され得る。
【0021】
本発明のもう1つの実施形態では、装置は金属、ガラスまたはポリマーから作製されており、ヨード基(例えば、アリールヨード基)を含む材料でコーティングされている。本発明のもう1つの実施形態では、装置は、金属、ガラスまたはポリマーから作製されており、ヨウ化ポリマーを含む材料でコーティングされている。コーティングは、ヨウ化ポリマーを含み得る。通常、ポリマーコーティングは、約1mm〜約50mm厚(例えば、約1、2、5、10、25、50、1〜10、1〜20または1〜25mm厚)である。本発明の具体的な一実施形態では、ポリマーコーティングは、約5mm〜約25mm厚である。本発明の一実施形態では、ポリマーひまくは、約1mm未満の厚みである。本発明はまた、ヨード基を含む材料から作製されている物品およびさらに、ヨード基を含むコーティングを含む物品を提供する。
【0022】
材料
本発明の物品は、金属、金属合金、セラミック、ガラス、無機ポリマーおよび有機ポリマーを含めた任意の適した材料から作製できる。本発明のいくつかの実施形態では、ヨウ化ポリマーを、適した材料と混合して物品を作製する。当業者ならば、選択される適用に用いられるべき十分な機械的安定性および特性を有する適当なポリマー材料を容易に選択できる。有用であり得るポリマーの例として、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリホスフェート、ポリエステル、ナイロンまたはそれらの混合物が挙げられる。ポリ(ヒドロキシ酸)のポリマーの例として、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)およびポリ(カプロン酸)が挙げられる。ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリホスフェート、ポリカプロラクトンまたはこれらのポリマーの単量体から調製された共重合体(例えば、WO95/03357参照のこと)も使用できる。ポリ(オルト−エステル)、ポリオール/ジケテンアセタールおよび関連ポリマーが、Heller、ACS Symposium Series 567、292〜305頁、1994年によって提供されている。生分解性疎水性ポリ無水物の例は、例えば、米国特許第4,757,128号、同4,857,311号、同4,888,176号および同4,789,724号に開示されている。ポリヒドロキシブチレートは、米国特許第3,044,942号に開示されている。
【0023】
乳酸またはグリコール酸のポリマーまたはこれらの単量体の共重合体、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)または乳酸グリコール酸共重合体、ポリ(E−カプロラクトン)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(アルキレングリコール、)ポリ(エチレンフマルテ(fumarte))およびポリ(プロピレンフマレート)が考慮される。
【0024】
本発明の物品に使用するためのポリ無水物として、それだけには限らないが、Journal of Biomaterials Science Polymer Edition、3:315(1992)中、TamadaおよびLangerによって、およびHandbook of Biodegradable Polymers、Domb A.J.およびWiseman R.M.編、Harwood Academic Publishersの第8章中、Dombによって記載される、ポリ(セバシン酸無水物)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシ−ヘキサン)、ポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン]およびそれらの共重合体が挙げられる。また、Controlled Drug Delivery Challenges and Strategies、American Chemical Society、Washington DCの389〜403頁においてJamesおよびKohnによって記載されるものを含むポリ(アミノ酸)およびポリ(擬似アミノ酸)も考慮される。本発明において使用するためのポリホスファゼンとして、Biotechnology and Bioengineering、52、102〜108頁、1996年中、Schachtによって記載されるポリ[(ジクロロ)ホスファゼン]ポリ[(有機)ホスファゼン]ポリマーの誘導体が挙げられる。
【0025】
特定の一実施形態では、乳酸グリコール酸共重合体(「PLGA」)のポリエステルを用いる。これらのポリマーは、FDAによって非経口投与用に容認されている。PLGAは、初期段階において非酵素的加水分解によって分解するので、in vivo分解速度はin vitroデータから予測することができる。PLGAはまた、乳酸およびグリコール酸、身体において天然に見られる物質に分解するので望ましい材料である。
【0026】
さらに、アミノ酸を含む共重合体を使用できる。例えば、Barreraら、J.Am.Chem.Soc.、115:11010(1993年)およびCookら、J.Biomed.Mat.Res.、35:513(1997年)に記載されるような、グリコール酸およびグリシンまたは乳酸およびリシン。生分解性材料としてまた、コラーゲンおよび例えば、ヒアルロン酸の多糖ゲルも挙げられる。コラーゲンおよびプロテオグリカンの共重合体も使用できる。
【0027】
タンパク質ポリマーも使用でき、利用可能なタンパク質化学および分子生物学技術によって調製できる。例えば、絹またはエラスチン反復単位をベースとするポリマーを調製でき、これは、本発明における使用に適している(Hubbell JA.、Biotechnology、13:565(1995年))。
【0028】
当然のことではあるが、いくつかの生体適合性ポリマー、例えば、いくつかの上記の天然ポリマーは、細胞活性および酵素活性に応じて分解し得る、また、このような分解の速度は、関係している環境または培養条件に応じて変わり得る。特定の環境における分解速度は、当業者に公知の方法によって観察することができる。例えば、分解速度は、使用され、どの程度の期間無傷で残存するかを観察される環境にポリマー品を置くことによって観察することができる。したがって、分解は、当業者によって容易に観察し、操作することができる。さらに、コラーゲンなどの天然ポリマーを、本発明の装置に組み込むことができる。
【0029】
本発明の具体的な一実施形態では、物品は、生分解性ポリマー(例えば、より小さい分子量の成分に、加水分解で分解する(または加水分解する)ポリマー)で作製されている。
【0030】
本発明の特定の一実施形態では、生分解性ポリマーは、次式(IX):
【0031】
【化1】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールが、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
で示される単位からなるポリ無水物である。
【0032】
本発明の一実施形態では、Lは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖である。本発明の具体的な一実施形態では、Lは、8個の炭素原子を有する、二価の、非分岐、飽和炭化水素鎖である。このようなポリ無水物を調製する方法は、国際特許出願番号PCT/US01/23740に記載されている。
【0033】
ヨウ化ポリマー
本発明の物品は、ヨード基を含む(例えば、混合された)材料および/またはヨード基を含む材料(例えば、ヨウ化ポリマー)でコーティングされ得る材料から作製できる。ヨード基を含む適した材料として、ヨウ化ポリ無水物、ヨウ化ポリエステル、ヨウ化ポリカーボネートおよびヨウ化ポリアミドが挙げられる。本発明の一実施形態では、ヨウ化ポリマーは、ヨウ化アリール環を含む。本発明のもう1つの実施形態では、ヨウ化基は、「L」連結基の成分である。
【0034】
本発明の具体的な一実施形態では、ヨウ化ポリマーは、以下の残基のうち1種以上を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物である:
【0035】
【化2】

本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、以下のアミノ酸のうち1種以上を含む:
【0036】
【化3】

本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、以下の次式(I):
【0037】
【化4】

[式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1個は、ヨードであり、残りのR、R、R、R、R、R、RおよびRは独立に、Hまたはヨードであり;
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールが、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
で示される反復単位を含むヨウ化ポリ無水物である。
【0038】
本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、次式(II):
【0039】
【化5】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物である。
【0040】
本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、次式(III):
【0041】
【化6】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
で示される残基のうち1個以上を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物である。
【0042】
本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、次式(IV):
【0043】
【化7】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物である。
【0044】
本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、次式(V):
【0045】
【化8】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物である。
【0046】
本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、次式(VI):
【0047】
【化9】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物である。
【0048】
本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、次式(VII):
【0049】
【化10】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物である。
【0050】
本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、次式(VIII):
【0051】
【化11】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物である。
【0052】
Lの具体的な値は、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であって、1個以上の炭素原子が、(−O−)または(−NR−)によって場合により置換されていてもよく、この鎖は、炭素上で、1個以上のオキソ置換基で場合により置換されていてもよい。
【0053】
Lのもう1つの具体的な値は、3〜15個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であって、1個以上の炭素原子が、(−O−)または(−NR−)によって場合により置換されていてもよく、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0054】
Lのもう1つの具体的な値は、3〜15個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であって、1個以上の炭素原子が、(−O−)または(−NR−)によって場合により置換されていてもよく、この鎖は、炭素上で、1個以上のオキソ置換基で場合により置換されていてもよい。
【0055】
Lのもう1つの具体的な値は、3〜15個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、1個以上のオキソ置換基で場合により置換されていてもよい。
【0056】
Lのもう1つの具体的な値は、4〜8個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、1個以上のオキソ置換基で場合により置換されていてもよい。
【0057】
Lのもう1つの具体的な値が、−CHCHCHCH−である。
【0058】
Lのもう1つの具体的な値が、−C(=O)(CHC(=O)−であり、nが、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。
【0059】
特定の一実施形態では、本発明は、次式(X):
【0060】
【化12】

の1個以上の残基を含むバックボーンを有するポリ無水物を含むポリマーから作製されている移植可能な医療装置であって、ヨウ化ポリマーでコーティングされている装置を提供する。もう1つの具体的な実施形態では、ポリ無水物のバックボーンは、以下の残基:
【0061】
【化13】

から選択される1個以上の残基をさらに含む。
【0062】
本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、2個以上の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IXおよびXの残基を含む共重合体である。
【0063】
本発明のもう1つの具体的な実施形態では、ヨウ化ポリマーは、式IXまたはXの残基と、1個以上の式I、II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIIIの残基とを含む共重合体である。
【0064】
もう1つの具体的な実施形態では、本発明は、次式(I):
【0065】
【化14】

[式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1個は、ヨードであり、残りのR、R、R、R、R、R、RおよびRは独立に、Hまたはヨードであり;
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
で示される単位を含むポリ無水物を提供する。
【0066】
もう1つの具体的な実施形態では、本発明は、バックボーンが次式(II):
【0067】
【化15】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むポリ無水物を提供する。
【0068】
もう1つの具体的な実施形態では、本発明は、バックボーンが、次式(III):
【0069】
【化16】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むポリ無水物を提供する。
【0070】
もう1つの具体的な実施形態では、本発明は、バックボーンが、次式(IV):
【0071】
【化17】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むポリ無水物を提供する。
【0072】
もう1つの具体的な実施形態では、本発明は、バックボーンが、次式(V):
【0073】
【化18】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むポリ無水物を提供する。
【0074】
もう1つの具体的な実施形態では、本発明はバックボーンが、次式(VI):
【0075】
【化19】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むポリ無水物を提供する。
【0076】
もう1つの具体的な実施形態では、本発明は、バックボーンが、次式(VII):
【0077】
【化20】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むポリ無水物を提供する。
【0078】
もう1つの具体的な実施形態では、本発明は、バックボーンが次式(VIII):
【0079】
【化21】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、この鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;鎖中の1個以上の炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含む、ポリ無水物を提供する。
【0080】
もう1つの具体的な実施形態では、本発明は、バックボーンが、2個以上の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IXおよびXの残基を含むポリ無水物共重合体を提供する。
【0081】
もう1つの具体的な実施形態では、本発明は、式IXまたはXの残基と、1個以上の式I、II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIIIの残基とを含むポリ無水物共重合体を提供する。
【0082】
本発明のもう1つの具体的な実施形態では、Lは、ヨード基(例えば、ヨード置換芳香族基)を含む。Lに組み込むことができる、あり得るヨウ化芳香族分子の一例として、5−ヨードイソフタロイルクロリドがある(Julio C.AlvarezらSynthesis and characterization of halogen−containing polyisophthalamides. Macromol.Chem.Phys.、1997年、198、3293〜3303頁参照のこと)。
【0083】
合成
本明細書に記載されるポリ無水物は、例えば、Conix、Macromol.Synth.、2、95〜99頁(1996年)に記載される方法によって、また国際特許出願公開番号WO02/009767に記載される方法によって調製できる。例えば、ジカルボン酸は、還流温度の過剰の無水酢酸中でアセチル化でき、続いて、得られたカルボン酸無水物の、160℃で2〜3時間の溶解縮合によって、ポリ無水物ポリマーが得られる。このポリマーは、適した溶媒(例えば、塩化メチレンからジエチレーテル)中に沈殿させることによって単離できる。有用なポリ無水物として、ホモポリマーと共重合体の両方が挙げられる。
【0084】
通常、ポリ無水物は、狭い分子量ポリスチレン標準に対してゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって算出された、約1500ダルトン〜最大約100,000ダルトンの間(例えば、最大、約50,000ダルトン)の範囲の平均分子量を有するが、より高い分子量の材料(例えば、少なくとも約100,000ダルトンまで)は排除されない。一部の芳香族ポリ無水物は、約1500ダルトン、最大約20,000ダルトンの平均分子量を有する。
【0085】
ヨウ化ポリマー(例えば、ヨウ化ポリ無水物)はまた、Abraham J. DombらMacromolecules、1988年、21、1925〜1929頁によって記載されるものなどの液相反応によって調製できる。
【0086】
ヨウ化ポリエステルおよびポリアミドは、国際特許出願WO2002/009768に記載されるものと同様の方法を用いて調製できる。
【0087】
図面
図1は、ヨウ化ポリマー102を含む物品または器具100のブロック図である。いくつかの実施形態では、物品または器具100は、ヨウ化ポリマーまたはヨウ化ポリマーと、ポリエステル、ポリ無水物、ポリカーボネートまたはポリアミドなどの材料との混合物を含む材料で形成される。その他の実施形態では、物品または器具100は、ヨウ化ポリマーで形成される。物品または器具100は、特定の使用分野からの選択に限定されない。いくつかの実施形態では、物品または器具100は、移植可能な医療装置である。ヨウ化ポリマーから製作、形成または製造できる例示的な移植可能な医療装置として、ステント、整形外科用装置、骨プレート、ペースメーカー、ポンプ、ネジ、ピン、カテーテル、移植片、縫合糸、手術用メッシュ、ミクロスフェア、フィルム、ファイバー、眼球内レンズ、手術用レーザー、除細動器、ペースメーカーまたは除細動器のリードまたは電極、注入ポンプ、補聴器、人工呼吸器、移植可能な薬物ポンプ、乳房インプラントまたはふくらはぎのインプラントなどの美容インプラント、、結腸鏡、胃内視鏡、気管内チューブ、気管支鏡、歯科補綴、矯正装置、子宮内器具、酸素付加器、置換関節、骨プロテーゼ、セメント、置換腱、人工喉頭、結紮クリップおよび心室補助装置が挙げられる。
【0088】
図2(a)は、医療装置202とヨウ化ポリマーコーティング204とを含む物品または器具200の断面図である。いくつかの実施形態では、ヨウ化ポリマーコーティング204は、ヨウ化ポリマーを含む材料から形成される。その他の実施形態では、ヨウ化ポリマーコーティングは、ヨウ化ポリマーから形成、製作または製造される。ヨウ化ポリマーコーティング204は、ヨウ化ポリマーコーティング厚206を有する。ヨウ化ポリマーコーティング厚206は、特定の値に限定されない。いくつかの実施形態では、ヨウ化ポリマーコーティング厚206は、約1mm〜約50mmの間である。いくつかの実施形態では、ヨウ化ポリマーコーティング厚206は、約1mm未満である。いくつかの実施形態では、約1mm未満の厚みは、例えば、適切なX線不透過性を提供するために望まれるようには医療装置202を被覆しない場合がある。約50mmを超える厚みは、所望の画像特性を提供するために望まれるものを超える場合があり、従って、医療装置202の製作費用を不必要に高める。ヨウ化ポリマーコーティングの使用は、医療装置202が完全にコーティングされる使用に限定されない。図2(b)は、ヨウ化ポリマーコーティング204で部分的にコーティングされている表面208を有する図2(a)に示される医療装置200の斜視図である。表面は、表面の一部がコーティングされていない場合、部分的にコーティングされている。図2(b)に示されるように、表面208に含まれる表面210は、ヨウ化ポリマーコーティング204によってコーティングされていない。
【0089】
物品の、X線画像処理技術によって見られる能力は、公知である種々の方法を用いて評価できる。例えば、医療用指定のためのプラスチックの放射線不透過性についてのASTM標準試験法(ASTM Standard Test Methods for Radiopacity of Plastics for Medical Use Designation):F640−79(2000年、再承認)に由来する、記載されるようなC−Armプロトコールを用いて測定できる:放射線不透過度は、医療装置またはインプラントをシミュレートするサンプルおよび標準品の画像を比較し、または特定の厚みのサンプルの画像で行われた測定値によって、プラスチックの光学密度とX線フィルムのバックグラウンドとの間の特定の相違として求めることができる。
【0090】
コーティングされた物品は、任意の適したコーティング技術を用いて、例えば、スピンコーティング、吹付塗または溶媒流延によって調製できる。
【0091】
以下、本発明を、以下の限定されない実施例によって例示する。
【実施例】
【0092】
(実施例1)
ヨウ化型のサリチル酸をベースとするポリ(無水物−エステル)を、溶融縮合および溶液重合技術の両方によって合成し、放射線不透過性を提供する生体材料を作製した。得られたヨウ化ポリマーは、サリチル酸単独からなるポリ(無水物−エステル)と比較した場合に、高度にX線不透過性であるとわかった。溶融縮合によって調製したポリマーの分子量およびヤング率は、通常、溶液法によるポリマーよりも2〜3倍高い。ポリマーのガラス転移温度は、存在するヨウ素の量に応じて変わり、より多くのヨウ素を含有するポリマーは高いガラス転移温度を有していた。0.01および0.1mg/mLの濃度のポリマー含有細胞培地について、およびポリマーでコーティングされた表面上で、L929マウス線維芽細胞を用いて細胞傷害性研究を実施した。これらの研究により、両重合法によって調製されたヨウ化サリチルレートベースのポリ(無水物−エステル)は、低濃度で細胞と生体適合性であるということが示された。
【0093】
サリチル酸からなるポリ(無水物−エステル)を合成する方法は記載されている(例えば、スキーム1)(Erdmannら、Biomaterials 2000年;20:1941〜1946頁;Schmeltzerら、Polym.Bull.(Berlin)2003年;49:441〜448頁;およびPrudencioら、Macromolecules 2005年;38:6895〜6901頁)。これらのポリマーは、加水分解時に分解して、サリチル酸と、2単位のサリチル酸を一緒に連結するの生体適合性リンカー分子とを放出する。これらの薬物は、ポリマーバックボーン中に化学的に組み込まれており、側鎖としては結合しておらず(Rivasら、J.Membr,Sci.2001年;192:187〜191頁;およびSan Romanら、J.Biomed.Mat.Res.1996年;32:19〜27頁)、これによって高い薬物負荷レベルが可能となる。これらのポリマーは、in vitroおよびin vivoで有効であると証明されており(Schmeltzerら、Biomacromolecules 2005年;6:359〜367頁;Anastasiouら、Journal of Polymer Science、Part A:Polymer Chemistry 2003年;41:3667〜3679頁;Hartenら、J.Biomed.Mat.Res.2004年;72A:354〜362頁;およびErdmannら、Biomaterials 2000年;21:2507〜2512頁)種々の生物医学的応用を有する。
【0094】
スキーム1.ポリ(無水物−エステル)の、サリチル酸への加水分解
【0095】
【化22】

本明細書に記載されるポリマーは、ヨウ化サリチレートから誘導できる(スキーム2)。高い有効温度(T)を有するサリチレート誘導体からは、対応する高いガラス転移温度(T)を有するポリマーが得られた。ヨウ化サリチレートから誘導されたポリ(無水物−エステル)は、放射線不透過性を実証するだけではなく、ヨウ化誘導体の高い融点のために機械特性の増強された可能性があるという仮説を立てた。ヨウ化サリチル酸ベースのポリ(無水物−エステル)を、先に記載された方法(Schmeltzerら、Polym.Bull.(Berlin)2003年;49:441〜448頁;Prudencioら、Macromolecules 2005年;38:6895〜6901頁;およびDombら、Macromolecules 1988年;21:1925〜1929頁)を用い、X線不透過性および機械特性の増強の両方を有するポリマーを作製することを目的に合成した。
【0096】
2種の重合法を比較した:溶融縮合(Schmeltzerら、Polym.Bull.(Berlin)2003年;49:441〜448頁)および低温溶液重合(Dombら、Macromolecules 1988年;21:1925〜1929頁)(スキーム2)。ジカルボン酸前駆体の溶融縮合重合は、比較的高い分子量(例えば、10,000〜30,000Da)のポリ無水物を提供するのに対し、溶液重合は、通常、5,000〜10,000Daの範囲の低分子量のポリマーをもたらす(DombらPolym.Sci、Part A:Polym.Chem.1987年;25:3373〜3386頁;およびLeongら、Macromolecules 1987年;20:705〜712頁)。ポリマー特性(T、T、ヤング率)も、ポリマー合成経路によって変わり得る。さらに、重合技術の選択は、ポリマー前駆体に応じて変わり得る。例えば、低温溶液重合は、熱感受性ペプチドベースの単量体にとってより好都合であり得る。得られるポリマー特性における相違の可能性を調べるために、同一の単量体から両合成法を用いてポリマーを調製した。
【0097】
最後に、L929マウス線維芽細胞での細胞傷害性研究を実施してポリマーの生体適合性を評価した。ポリマーのX線画像を、身体中の骨および組織と比較した。熱および機械特性を詳細に研究し、あるとすれば、ポリマー特性と重合技術の間の関係を、解明した。
【0098】
ポリ(無水物−エステル)前駆体:二酸合成(2)。ポリ[l,6−ビス(o−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン酸塩を、先に記載された方法を用いて調製した。(Prudencioら、Macromolecules 2005年;38:6895〜6901頁)。すべてのその他の二酸は、以下の手順(スキーム2)を用いて調製した。手短には、サリチレート(1;1.4g、10mmol)を、テトラヒドロフラン(40mL)およびピリジン(1.7mL、20mmol)の溶液に溶解した。シリンジを用いて、室温で反応混合物に、テトラヒドロフラン(10mL)に溶解した塩化アジポイル(0.80mL、5.0mmol)を滴下した。反応物を2〜4時間撹拌し、水上に注ぐことによってクエンチし、濃塩酸を用いてpH2に酸性化した。二酸(2)を濾過し、脱イオン水(3×200mL)で洗浄し、真空下、室温で24時間乾燥させた。二酸を、アセトン/へキサンまたはジエチルエーテル/へキサンのいずれかから再結晶化した。
【0099】
スキーム2.ヨウ化サリチレートベースのポリ(無水物−エステル)の合成
【0100】
【化23】

1,6−ビス(5−ヨード−1,2−カルボキシフェノキシ)−ヘキサノエート(2a)。収率:97%(白色粉末)。
【0101】
【化24】

1,6−ビス(3,5−ジヨード−1,2−カルボキシフェノキシ)−ヘキサノエート(2b)。収率:98%(白色粉末)。
【0102】
【化25】

アセチル化化合物合成(3)。先に概説されるようなアセチル化によって二酸を活性化した(Prudencioら、Macromolecules2005年;38:6895〜6901頁;Schmeltzerら、Biomacromolecules2005年;6:359〜367頁;およびCampoら、Polym.Bull.1999年;42:61〜68頁)。手短には、過剰の無水酢酸(100mL)に二酸(2;2g)を加え、室温(2c用)または還流温度(2a〜b用)に加熱してのいずれかで、透明で、均一な溶液が観察されるまで(約2〜12時間)撹拌した。過剰の無水酢酸を、ロータリーエバポレーター(V−800真空コントローラー、B−490加熱浴およびV−500真空ポンプを備えた、BuchiモデルR−205)を用いて除去すると、アセチル化化合物(3)が得られ、これをジエチルエーテル(3×10mL)で洗浄した。
【0103】
1,6−ビス(5−ヨード−1,2−カルボキシフェノキシ)−ヘキサノエート単量体(3a)。
【0104】
収率:定量的(淡黄色のオイル)。
【0105】
【化26】

1,6−ビス(3,5−ジヨード−1,2−カルボキシフェノキシ)−ヘキサノエート単量体(3b)。収率:定量的(淡橙色のオイル)。
【0106】
【化27】

溶融縮合ポリマーの合成(4)。溶融縮合重合(Schmeltzerら、Polym.Bull.(Berlin)2003年;49:441〜448頁)(スキーム2)には、アセチル化化合物(3a〜c;2g)を、オーバーヘッドスターラー(T−line Laboratory Stirrer、モデル104、Talboys Engineering、Thorofare、NJ)を備えた二口丸底フラスコに入れ、溶解物の粘度が一定のままとなるか、固化するまで(約2〜6時間)、真空下(<2mm Hg)シリコンオイル浴中、温度コントローラー(Cole−Parmer、Vernon Hills、Illinois)を用いて160℃に加熱した。単量体は、重合の間、オーバーヘッドスターラーを用いて、約100rpm/分で激しく撹拌した。完了した時点で、ポリマーを室温に冷却し、塩化メチレンから20倍過剰のジエチルエーテルに沈殿させることによって単離した。
【0107】
溶融縮合ポリ[1,6−ビス(5−ヨード−1,2−カルボキシフェノキシ)−ヘキサノエート](4a)。
【0108】
収率:定量的(ベージュ色の粉末)。
【0109】
【化28】

溶融縮合ポリ[1,6−ビス(3,5−ジヨード−1,2−カルボキシフェノキシ)−ヘキサノエート](4b)。
【0110】
収率:定量的(淡褐色の粉末)。
【0111】
【化29】

溶液重合ポリマー合成(5)。溶液重合(Dombら、Macromolecules 1988年;21:1925〜1929頁)には、二酸を直接用いた。重合を、無水条件下で窒素ガスを用いて実施した。無水塩化メチレン(16mL)に二酸(2;4g、10mmol)を溶解した。室温で、反応混合物に、新たに蒸留したトリエチルアミン(6.0mL、50mmol)を滴下した。次いで、反応物を、氷浴を用いて15分間0℃に冷却した。0℃で、反応混合物に、無水塩化メチレン(15mL)に溶解したトリホスゲン(3.4g、11mmol)をシリンジを用いて1時間かけて滴下した。1.5時間撹拌した後、反応混合物をジエチルエーテル(300mL)上に注ぎ、固体を濾過し、酸性化水(1L、濃HClを用いてpH2)を用いて洗浄した。生成物を真空下、室温で乾燥させた。
【0112】
溶液重合ポリ[1,6−ビス(5−ヨード−1,2−カルボキシフェノキシ)−ヘキサノエート](5a)。
【0113】
収率:定量的(桃色粉末)。
【0114】
【化30】

溶液重合ポリ[1,6−ビス(3,5−ジヨード−1,2−カルボキシフェノキシ)−ヘキサノエート](5b)。収率:定量的(淡桃色粉末)。
【0115】
【化31】

ポリマーでコーティングされたカバースリップの分解
顕微鏡ガラスカバースリップを、ポリマーでコーティングし(約10mg/カバースリップ)、上記のようにUV滅菌し、12ウェルプレート(Fisher Scientific、Fair Lawn、NJ)に、細胞培地(2mL)とともに播種し、37℃で3日間インキュベートした。所定の時点(24時間、48時間および72時間)、培地のアリコートを回収し、UV/vis分光光度法を用いて分析して、培地中の遊離薬物(1a〜c)の量を調べた。量は、各化合物(1a〜c)の標準溶液の較正曲線に対して算出した。
【0116】
ポリマー合成および生理化学的特性決定
溶融縮合および低温溶液重合法の両方によるヨウ化サリチル酸ベースのポリ(無水物−エステル)の調製に成功した。ポリマーの合成における第1のステップは、二酸を調製することであった(2;スキーム2)。この化合物は、室温で、適当な溶媒(THF)および塩基(ピリジン)中、ヨウ化サリチル酸誘導体(1)を塩化アジポイルと直接カップリングすることによって作製した。(Schmeltzerら、Polym.Bull.(Berlin)2003年;49:441〜448頁;およびPrudencioら、Macromolecules 2005年;38:6895〜6901頁)。ピリジンは、まず、ヨウ化サリチレート(1)を脱プロトン化し、第2に、触媒として作用してアシルピリジニウムイオンを形成し(Fershtら、Am.Chem.Soc.1970年;92(18):5442〜5452頁)、これがヨウ化サリチレートの遊離フェノラートと反応して二酸(2)を形成する。ヨウ化サリチル酸(1)上のカルボン酸基は、アシルピリジニウムイオンのように保護されている必要はなく、アシルクロリドよりも迅速にアルコールと反応する。(Fershtら、Am.Chem.Soc.1970年;92(18):5442〜5452頁;Hoefleら、Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1978年;17:569〜583頁)。この方法を用いて得られた生成物(2a〜c)は極めて純粋であることがNMRおよび元素分析によって調べられ、反応副産物/出発材料および形成された二酸(2)の間の大きな溶解度の差に基づいて、さらなる精製は必要ではない。(Schmeltzerら、Polym.Bull.(Berlin)2003年;49:441〜448頁)。5−ヨードサリチル酸ベースの二酸(2a)および3,5−ジヨードサリチル酸ベースの二酸(2b)両方の収率パーセントは、定量的であった。5−ヨードサリチル酸ベースの二酸(2a)の融点は、210〜212℃であったのに対し、3,5−ジヨードサリチル酸ベースの二酸(2b)の融点は、202〜205℃であった。
【0117】
二酸合成が完了した後、二酸を用い、溶融縮合および溶液重合によって(スキーム2)ポリ(無水物−エステル)を調製した。溶融縮合重合手順に共通するように、(Schmeltzerら、Polym.Bull.(Berlin)2003年;49:441〜448頁;Prudencioら、Macromolecules 2005年;38:6895〜6901頁;Schmeltzerら、Biomacromolecules 2005年;6:359〜367頁;Campoら、Polym.Bull.1999年;42:61〜68頁;およびGopferich、Biomaterials 1996年;17:103〜114頁)、二酸(2a〜c)を、過剰の無水酢酸を用いて活性化してポリマー前駆体または単量体(3a〜c)を形成し、次いで、これを、溶融縮合副産物、無水酢酸を除去することによって、真空下、高温(すなわち、160℃)で重合した。
【0118】
溶液重合には、(Dombら、Macromolecules 1988年;21:1925〜1929頁;およびLeongら、Macromolecules 1987年;20:705〜712頁)、適当な溶媒(例えば、塩化メチレン)およびカップリング試薬(トリホスゲン)中、塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下、二酸(2a〜c)を直接用い(Dombら、Macromolecules 1988年;21:1925〜1929頁;Leongら、Macromolecules 1987年;20:705〜712頁;Eckertら、Angew.Chem.1987年;99(9):922〜923頁;およびLe Nestら、Electrochim.Acta1992年;37:1585頁)(2a〜c)、結果として生じたポリマー(5a〜c)を得た。この重合方法を用いて、熱感受性であるポリマー前駆体からポリマーを調製できた。
【0119】
すべてのポリマーを合成した後、材料を、H NMR、FTIR、GPC、TGA、DSCおよびDMAによって特性決定した。これらの特徴のうち一部が表1に提供されている。溶液によって作製されたポリ(無水物−エステル)に対し、溶融縮合について、いくつかの傾向が観察される。第1に、溶融縮合重合生成物(4a〜c)の分子量は、通常、溶液重合のもの(5a〜c)よりも高かった。溶液重合は、通常、重合が効率的であるために必要とされる厳密な化学量論的制御のために、溶解縮合重合生成物のものよりも低い分子量のポリマーをもたらす。(Leongら、Macromolecules 1987;20:705〜712頁;Dombら、Advances in Polymer Sciences:Springer−Verlag;1993年)。溶液(5a〜c)ポリマーに対して、溶融縮合(4a〜c)について、高い多分散性指数が観察された。多分散性はまた、H NMRスペクトルに反映される:溶融縮合ポリマー(4a〜c)は、NMRスペクトルにおいて、かなり鋭いピークを有していた溶液重合ポリマー(5a〜c)に対して、かなり幅広いピークを有していた。
【0120】
ガラス転移温度(T)は、サリチル酸分子あたりのヨウ素原子の数に応じて変化した;T値は、ヨウ素原子の数が増大するにつれ高まった。例えば、ポリマー4cは、ヨウ素を含まず、46℃というガラス転移温度を示すのに対し、5−ヨードサリチル酸(4a)(すなわち、サリチレートあたり1個のヨウ素)および3,5−ジヨードサリチル酸(4b)(すなわち、サリチレートあたり2個のヨウ素原子)に基づくポリマーは、より高いガラス転移温度(それぞれ、52℃および78℃)を有していた。同様の傾向が、溶融縮合重合法から得られたポリマー(4a〜c)を比較した場合にヤング率について観察され:ヨウ素原子数が増大すると、ヤング率が高まった。一般に、溶融縮合重合生成物(4a〜c)のヤング率は、対応する溶液重合生成物(5a〜c)よりも高い。
【0121】
顕微鏡ガラスカバースリップ上にコーティングされた薄いポリマーフィルムの走査電子顕微鏡(SEM)画像を得た。全般的に、溶解縮合ポリマー(4a〜c)は、対応する溶液ポリマー(5a〜c)と比較して、より平滑な表面を有していた。
【0122】
生理化学的特性決定の後、ポリマーを円板(直径13mm×厚み1mm)に圧縮し、X線によって分析した。ヨウ化サリチル酸ベースのポリ(無水物−エステル)ディスク4a〜bおよび5a〜bは、標準的な臨床X線技術を用いて容易に観察できる。可能性あるインプラントコーティングとして、または生体材料の製造において、これらのヨウ化サリチレートベースのポリマーのホモポリマーまたは共重合体を、その他のポリマー、例えば、治療能力を有するもの(例えば、4cおよび5c)とともに用いることは、医師にとって高度に有利であると期待される。
【0123】
放射線不透過性のさらなる説明が、表1に概説されている。ポリマー4a〜cおよび5a〜bは、臨床X線機器(C−Arm)のもとで調べ、1〜6のランクを付けた(WWWASTMF640−79.医学的用途のためのプラスチックの放射線不透過性についての標準試験法(Standard Test Methods for Radiopacity of Plastics for Medical Use.)ASTM International:West Conshohocken、PA)、6が最も見え、1が見えない。ヨウ素を含んでいないポリマーディスク(4c)は見えなかったのに対し、溶融縮合によって作製した3,5−ジヨードサリチル酸ベースのポリマー(4b)は、最も見えた。概して、溶液重合生成物(5a〜b)は、対応する溶融縮合ポリマー(4a〜b)と比較して、あまりX線で見えない。この差は、ポリマーの多分散性指数の差によるものであり得(表1参照)、これは、ポリマーの充填効率に影響を及ぼす。多分散性が広いほど、充填効率が良好であり;(Antoniettiら、Langmuir 2000年;16:7634〜7639頁)、より密度が高い材料はより多くのX線を吸収し、臨床X線機器の下で、より放射不透過性であると思われる。さらに、ヨウ化サリチル酸ベースのポリ(無水物−エステル)4a〜bおよび5a〜bは、手中の骨または組織よりも、かなりX線不透過性であることがわかった。
【0124】
表1.溶融縮合(4a〜c)および溶液重合(5a〜c)によって調製した、サリチル酸ベースのポリ(無水物−エステル)およびヨウ化サリチル酸ベースのポリ(無水物−エステル)の特性決定。X線不透過性は、1(見えない)から6(良好に見える)にランク付けされている。
【0125】
【化32】

細胞適合性:ポリマー含有培地
ポリマーの生体適合性を試験するために、L929マウス線維芽細胞を用いて細胞傷害性実験を実施し、2つの方法:ポリマー含有培地(0.1および0.01mg/mL)において細胞を培養することおよび細胞をポリマーでコーティングしたガラスカバースリップ上で直接培養することを用いて細胞応答を調べた。両研究とも3日間かけて実施し、細胞増殖および形態を測定した。培地中のポリマーの選択した濃度(0.01および0.1mg/mL)は、標準細胞傷害性プロトコールに基づいていた(Schmeltzerら、Biomacromolecules 2005年;6:359〜367頁)。
【0126】
ヨウ化サリチル酸ベースのポリマー(4a〜bおよび5a〜b)およびサリチル酸ベースのポリマー(4cおよび5c)の細胞適合性を、細胞増殖および形態をモニタリングすることによって試験した。L929マウス線維芽細胞を、0.01および0.1mg/mLポリマー濃度のポリマー4a〜bおよび5a〜bを含有する培地に播種した。L929線維芽細胞は、ASTMによって推奨される細胞適合性試験のための標準的な細胞種であり(Duncanら、New Products and Standards In Biomaterials Science. New York:Elsevier Academic Press;2004)、少なくとも1回の細胞周期の完了を考慮するインキュベーション期間として、3日を選択した。
【0127】
低い(0.01mg/mL)ポリマー濃度の存在下での、3日間の細胞増殖プロフィールを調べた。1日目の、ポリマーを含有する培地における細胞数は、培養プレートへの接着の成功を示すものであって、ポリマー5bを含有する培地を除いて、いずれの時点でも対照の細胞と有意な差異を示さなかった。2および3日目には、すべてのサンプルの細胞が正常な増殖周期を示し、細胞数は2倍を超えて増大し、このことは1日あたり少なくとも1回の増殖周期の出現を示した。ポリマー5bを含有する培地中の細胞については、より少ない数の細胞しか接着しなかったが、細胞数は増大し、このことは正常な増殖周期を示した。
【0128】
培地中、高いポリマー濃度(0.1mg/mL)での細胞接着および増殖も調べた。サリチル酸ベースのポリマー(4c)および5−ヨードサリチル酸ベースのポリマー(4a、5a)を含有する培地中の細胞は、3日間にわたって陽性の増殖プロフィールを示し、細胞数は、1および3日目のDMSO対照の標準偏差の範囲内であった。溶液重合された5−ヨードサリチル酸ベースのポリマー、(5a)においてわずかに高い細胞数が見られた。3,5−ジヨードサリチル酸ベースのポリマー(4b、5b)の存在下の細胞は、3日間かなり低い細胞数を示し、陽性の増殖プロフィールを示さなかった(p<0.05)。
【0129】
3日目の、ポリマー4a〜bおよび5a〜bを高いポリマー濃度(0.1mg/mL)で含有する培地および対照(DMSOおよび培地のみ)における細胞形態も調べた。概して、すべてのサンプルについて、細胞はうまく接着され、伸展しており、正常な星状の形態を有している。培地単独における細胞画像は、DMSOを含有する培地のものと同様の形態を示した。ポリマー5cにおける細胞画像は、ポリマー4cのものと同様の形態を示した。5bにおける細胞は、細胞接着をあまり示さなかったが、細胞は、正常な方法で伸展し、増殖した。全体的に、細胞培地中、低濃度のポリマーで、ヨウ化サリチル酸ベースの良好な生体適合性が観察された。
【0130】
各サンプルの3日目の細胞を調べたところ、ポリマー4a、4c、5aについて正常な星状の形態が見られ、対照と差はなかったが、ポリマー4bおよび5bでは、円形の形態を有する少量の細胞が見られた。この研究の結果に基づいて、5−ヨードサリチル酸ベースのポリマー(4aおよび5a)での細胞は、生体適合性と思われるが、3,5−ジヨードサリチル酸ベースのポリマー(4bおよび5b)は、この特定の濃度についてはあまり生体適合性ではなかった。
【0131】
細胞適合性:ポリマーでコーティングされた表面
ポリマー含有培地における生体適合性研究については、結果は、溶融縮合および溶液重合法に応じた異なる細胞増殖を示した。さらなる分析のために、ポリマーでコーティングされた表面上で線維芽細胞を3日間インキュベートし、形態および細胞数を評価した。カバースリップをポリマー溶液(100mg/mL)でコーティングする間、湿度を、大気中20%未満として制御し、均質な表面を作製した。
【0132】
1日目、すべてのポリマー表面上の細胞数は、統計学的には対照と同様であった。1日目の観察により、細胞は上手く接着し、少なくとも24時間増殖したことが示された。サリチル酸ベースのポリマー(4cおよび5c)および対照表面上での細胞増殖は、正常な増殖プロフィールを示すが、その他のポリマー(4a〜c、5a〜b)上の細胞は、2および3日目に負の増殖プロフィールを有する。5−ヨードサリチル酸ベースのポリマー4aおよび5aは、3,5−ジヨードサリチル酸ベースのポリマー、4bおよび5bと比較して、比較的高い細胞数を示す。ヨウ化ポリマー(4a〜b、5a〜b)の中では、重合法と相関している差異は観察されなかった。興味深いことに、サリチル酸ベースのポリマー5c(溶液重合)上の細胞は、統計上、ポリマー4c(溶融縮合法)上の細胞よりも高い増殖を示した。
【0133】
ポリマー表面上の細胞形態も観察した。細胞増殖プロフィールと一致して、5cおよび対照表面上の細胞のみが、正常な星状形態を示し、そうでない細胞は円形の外観を有し、かなり少量の細胞しか存在しなかった。ヨウ化ポリマーは、高濃度では、より低い生体適合性しか示さなかった。2および3日目の適合性低下の可能性ある理由は、細胞培養系での高いポリマー濃度(100mg/mL)に起因するものであり得る。ポリマー表面を分解して、細胞傷害性アッセイの期間の間に培地中に放出された遊離薬物(1a〜c)の濃度を調べることによって、これをさらに分析した。ポリマー5bの表面上の細胞は、5aと同様の形態、円形の細胞形態を示す。
【0134】
ポリマーでコーティングされたカバースリップの分解
表2では、最大量の、各ポリマーから放出され得る遊離薬物、1a〜cが列挙されている。対応するポリマー4a〜cまたは5a〜cから放出され得る1a〜cの最大量は、ポリマーでコーティングされたカバースリップについて、ポリマー含有培地においてよりもかなり高い。培地中の遊離薬物(1a〜c)のかなり高い局所濃度が、コーティングされたカバースリップに関してはあり得、このことによって、この試験系における細胞傷害性について得られた結果を説明できる。
【0135】
表2.ポリマーバックボーンの完全加水分解時の、遊離薬物(1a〜c)の最大のあり得る放出
【0136】
【化33】

コーティングされたカバースリップからの1a〜cの最大放出(mg)
0.1mg/mLポリマー含有培地からの1a〜cの最大放出(mg)
0.01mg/mLポリマー含有培地からの1a〜cの最大放出(mg)。
【0137】
培地中の遊離薬物(1a〜c)の量を、UV/vis分光光度法によって分析した。結果は表3に見ることができる。ポリマー4cおよび5cでコーティングされたカバースリップからのサリチル酸(1c)の累積放出は、それぞれ、7.8および4.2mg/mLであった。サリチル酸のヨウ化誘導体(1a〜b)の累積放出は、かなり高く、3日後に、各ポリマー、4a〜bおよび5a〜bから約35%が放出された。培地中のポリマー(4a−c、5a−c)および遊離薬物(1a−c)の濃度は、ポリマーでコーティングされたガラスカバースリップの存在下で、0.1および0.01mg/mL濃度のポリマー含有培地のものよりもかなり高い。この結果は、ポリマー含有培地における細胞適合性の結果と一致する。ポリマーでコーティングされたガラスカバースリップの細胞数は、ポリマー含有培地について算出されたものよりもかなり低かった。この効果は、ポリマーでコーティングされたガラスカバースリップの培地中の高濃度の遊離薬物(1a−c)によるものであり、これは、細胞接着および増殖に影響を及ぼし得る。
【0138】
表3.37℃で、1、2および3日後の、細胞培地におけるインキュベーション後の遊離薬物(1a−c)の累積放出
【0139】
【化34】

材料
すべての溶媒および試薬は、Fisher Scientific(Pittsburgh、PA)から購入し、すべてのその他の精製化学製品はSigma−Aldrich(Milwaukee、WI)から購入した。
【0140】
分光法
生成物のプロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトルは、Varian 200MHz、300MHzまたは400MHz分光光度計を用いて実施した。選択した重水素化溶媒は、ジメチルスルホキシド−dとし、これをまた、内部参照として用いた。塩化ナトリウムプレート上へアセトンまたは塩化メチレンを用いる溶媒流延サンプルによって、生成物のフーリエ変換赤外(FTIR)吸収スペクトルを、Thermo Nicolet/Avata360FT−IR分光計を用いて記録した。融点は、モデル1002D Manual Mel−temp器具(Barnstead/Thermolyne、Dubuque、Iowa)を用いて調べた。元素分析は、QTI(Whitehouse、NJ)によって提供された。静的接触角は、DROPimage Advancedソフトウェアを用いるDell Dimension 3000コンピュータが装備されたRame−Hart Instrument Company(Mountain Lakes、NJ)Standard Goniometer モデル番号250−00を用い、加圧ポリマーディスク上に脱イオン水を滴下することによって測定した。
【0141】
分子量分析
分子量(M)および多分散性指数(PDI)を、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン標準(Polymer Source Inc.、Dorval、Canada)に対して調べた。Perkin−Elmer LCシステムには、Series200屈折率検出器、Series200ポンプおよびISS200オートサンプラーが装備されていた。データの収集および加工のために、またPerkin−Elmer Nelson 900 Series InterfaceおよびPerkin−Elmer Nelson 600 Series Linkを用いるGPC分析の自動化のために、Perkin−Elmer TurboChrom4ソフトウェアを用いるDell OptiPlex GX110コンピュータを用いた。塩化メチレンにサンプル(約5mg/mL)を溶解し、0.45μmの孔径のポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)シリンジフィルター(Nalge Nunc International、Rochester、NY)を用いて濾過し、システムに注入されるサンプルバイアルに入れた。分子量は、Jordi DVB混床式GPCカラム(7.8×300mm、Alltech、Deerfield、IL)を用いて調べた。
【0142】
熱/機械分析
熱分析および機械特性を、TAC 7/DX機器制御装置を備えた、Pyris 1示差走査熱量計(DSC)、熱重量分析器(TGA)および動的機械分析器(DMA)からなるPerkin−Elmerシステムまたは示差走査熱量計(DSC)Q200および熱重量分析器(TGA)Q50からなるThermal Advantageシステムを用いて測定した。データ収集および加工のために、Perkin−Elmer Pyrisソフトウェアを装備したDell Optiplex GX110コンピュータまたはThermal Advantage Universal Analysisソフトウェアを装備したIBM ThinkCentreコンピュータを用いた。ガラス転移温度(T)は、加熱速度10℃/分で−10℃から200℃の窒素ガス加熱および10℃/分の速度での−10℃への冷却、最小2サイクル下で、サンプル(5〜10mg)を用いて調べた。Tは、外挿された1/2Cとして算出した。熱重量分析には、サンプル(5〜10mg)を、速度10℃/分で25℃から400℃の窒素ガス下で加熱し、熱分解温度(T)を、熱分解の開始として算出した。ヤング率は、静的応力対ひずみ曲線の直線部分の傾斜から動的機械分析によって加圧ディスクで求めた。DMA法は、22℃で500mN/分の速度の0mNから8000mNの定圧をかけることを含む。
【0143】
ディスク形成
ポリマーディスクは、Carver モデル #3853卓上液圧プレス(Carver Inc.、Wabash、IN)を用い、室温で5分間、10,000psiの圧力をかけて、粉末サンプル(約160mg)から調製し、ステンレス鋼金型を用いて直系13mmおよび厚み1mmの寸法のディスクが得られた。
【0144】
放射線不透過性の測定
ポリマーディスクの放射線不透過性を、医学的用途のためのプラスチックの放射線不透過性についてのASTMF640−79標準試験法(Standard Test Methods for Radiopacity of Plastics for Medical Use)の方法Bにしたがって、臨床X線機器を用いて測定した。(ASTMF640−79,医学的用途のためのプラスチックの放射線不透過性についての標準試験法:West Conshohocken、PA)。手短には、ポリマーディスクを、C−armのステージ上に置き、1から6に盲検的にランク付けし(ここで、6は最も暗い(例えば、最もX線不透過性))、標準アルミニウムステップウェッジに対して比較する。C−arm設備は、10〜20mA電流で15msの70kVでの2.5mmのアルミニウム濾過セットを装備したX線機器からなるものであった。
【0145】
電子顕微鏡
Badgerモデル350−3エアブラシシステム(Badger Air−Brush Co.、Franklin Park、IL)を用いる走査電子顕微鏡(SEM)研究のために、顕微鏡ガラスカバースリップ(Fisher Scientific、Fair Lawn、NJ)を、ポリマー(塩化メチレン中、10wt%)を用いてコーティングした。カバースリップを、視覚的に均一なコーティングが観察されるまで(約30秒)ポリマー溶液を用いて吹付塗した。コーティングを室温で12時間、次いで、真空下25℃で12時間乾燥させて、溶媒を確実に完全に除去した。吹き付けの前および乾燥後の両方で基材を秤量することによってコーティングされたポリマーの量を評価した。コーティングの厚みは、デジタルマイクロメータ/カリパス(Fowler ProMax、Newton、MA)を用いて測定した。SEMは、まずサンプル(顕微鏡ガラスカバースリップ上の吹付塗されたポリマー)を、非導電接着タブ(Electron Microscopy Sciences、Fort Washington、PA)を用いて適当なホルダー上に取り付けることによって実施した。次いで、このサンプルを、スパッターコーターを用いAu−Pdのアマルガムで室温で60秒間コーティングした(Balzers SCD 004スパッターコーター(BAL−TEC、Tuscon、AZ)。FlashBus FBG 4.2ソフトウェアを用いるDell Workstationコンピュータを装備したAmray 1830 I走査電子顕微鏡(Amray、Inc.、Bedford、MA)を用いて、画像を得た。
【0146】
細胞適合性:ポリマー含有培地
ポリマー生体適合性を試験するために、ヨウ化サリチル酸ベースのポリマー(4a〜bおよび5a〜b)およびサリチレートベースのポリマー(4cおよび5c)の細胞傷害性研究を、2つの異なる方法:細胞を、ポリマーを含有する培地で培養することおよびポリマーでコーティングされた表面上で培養することで試験した。両方法を用いて細胞の形態および増殖を調べた。
【0147】
ポリマーを含有する培地において細胞適合性を評価するために、各ポリマー(4a〜cおよび5a〜c)を、保存溶液としてジメチルスルホキシド(10mg/mL;DMSO、Sigma、St.Louis、MO)に溶解し、次いで、細胞培養培地で2種の濃度(0.01mg/mLおよび0.1mg/mL)に希釈した。細胞培地は、10%ウシ胎児血清(Atlanta Biologicals、Lawrenceville、GA)、1% v/vグルタミン酸塩(Sigma)および50U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma)を補給したダルベッコ改変イーグル培地(Sigma)からなるものであった。ポリマーを含有する培地を、24ウェルプレート(Fisher、Fair Lawn、NJ)に加え、ポリマーを含まない培地およびDMSOを含有する培地を、対照として用いた。
【0148】
L929マウス線維芽細胞は、Dr.K.E.Schmalenberg(Rutgers University、NJ)から入手した。液体窒素中に保存された細胞を、37℃の水浴(Precision 180 Series、Thermo、Waltham、MA)中で5分間解凍し、95%加湿大気および5%COを用いる加湿インキュベーター(ThermoForma、Steri−Cycle COインキュベーター、Franklin、MA)中、25cmのフラスコ(Fisher)中で培養した。フラスコ中で細胞が、80%コンフルエンシーを示した時点で、真空によって培地を除去し、トリプシン(0.02mg/mL、Sigma)溶液を加えた。トリプシンインキュベーションは、インキュベーターにおいて37℃で5分間行い、細胞を、フラスコ表面から剥離させた。細胞ペレットは、2000RPMで2分間の遠心分離によって得た(General Purposes遠心機;5682 3L GP、Thermo、Franklin、MA)。L929線維芽細胞を、ウェルあたり5×10個細胞として、ポリマー4a〜cおよび5a〜cを含有する培地に播種し、3日間培養した。すべての実験は、3連で実施した。
【0149】
ポリマーを含有する培地における細胞の形態を観察し、光学顕微鏡(Olympus、IX81、Center Valley、PA)を用いて、期間にわたって20×原倍率でランダム画像で記録した。各時点(1、2および3日目)で、カルセインAMで生細胞を染色することによって細胞数を測定した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4;MP Biomedical、Aurora、OH)で2回洗浄し、8μMのカルセインAM(Molecular Probe、Carsbad、CA)溶液とともに、4℃で40分間インキュベートした。カルセインAMは、生細胞が485nmで蛍光を発するのを可能にする。40分インキュベーションした後、Cytofluor(登録商標)(Applied Biosystems、Series 4000、Woodinville、CA)を用いて蛍光強度を測定し、標準曲線に基づいて細胞数を算出した。
【0150】
細胞適合性:ポリマーでコーティングされた表面
細胞を、ポリマーでコーティングされたガラスカバースリップ上で培養することによって、ヨウ化ポリマー(4a〜bおよび5a〜b)のさらなる生体適合性試験を実施した。塩化メチレンに、ヨウ化サリチル酸(salicylic)ベースのポリマー(4a〜b、5a〜b)およびサリチル酸ベースのポリマー(4cおよび5c)を、100mg/mLの濃度で溶解した。2〜3滴のポリマー溶液を、ガラスカバースリップ(直径18mm、厚さ0.15mm;Fisher Scientific、Pittsburgh、PA)上に加え、20%未満の湿度において2000rpmで30秒間のスピンコータを用いて均一にコーティングした(Headway Research、Inc.、Garland、TX)。ポリマーでコーティングされたカバースリップを、Spectrolinker XL−1500 UV架橋剤(Spectronics Corp.、Westbury、NY)を用いて254nmのUV光下で900秒間滅菌し、12ウェルの組織培養プレート(Fisher Scientific、Fair Lawn、NJ)上に置いた。ブランクカバースリップ(コーティングされていない)を対照として用いた。線維芽細胞は、上記の同様の方法で維持し、細胞をポリマーでコーティングされた表面に、1×10個細胞/ウェルで加えた。
【0151】
ポリマーでコーティングされた表面上での細胞の形態および増殖は、光学顕微鏡下で調べた。特定の時点(1、2および3日目)で、複数のランダム画像をとり、MicroSuite(商標)画像処理ソフトウェア(Olympus、Soft Imaging Program、Center Valley、PA)中のカウント/サイズメニューを用いて細胞数をカウントした。
【0152】
ポリマーを含有する培地およびポリマーでコーティングされた表面の両方の細胞増殖を、対照と比較し、Microsoft EXCELプログラム(Microsoft Office 2003、Microsoft、Redmond、WA)を用い、スチューデントのt−検定を95%の信頼水準で用いて統計分析した。
【0153】
すべての刊行物、特許および特許文書は、まるで参照により個々に組み込まれるように、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、種々の特定の好ましい実施形態および技術を参照して記載されている。しかし、本発明の趣旨および範囲内にとどまりながら、多数の変法および改変を行うことができるということは理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ヨウ化ポリマーを含む移植可能な装置。
【請求項2】
ステント、整形外科用装置、骨プレート、ペースメーカー、ポンプ、ネジ、ピン、カテーテル、移植片、縫合糸、手術用メッシュ、ミクロスフェア、フィルム、ファイバー、眼球内レンズ、手術用レーザー、除細動器、ペースメーカーまたは除細動器のリードまたは電極、注入ポンプ、補聴器、人工呼吸器、移植可能な薬物ポンプ、乳房インプラントまたはふくらはぎのインプラントなどの美容インプラント、、結腸鏡、胃内視鏡、気管内チューブ、気管支鏡、歯科補綴、矯正装置、子宮内器具、酸素付加器、置換関節、骨プロテーゼ、セメント、置換腱、人工咽頭、結紮クリップまたは心室補助装置である、請求項1に記載の移植可能な装置。
【請求項3】
前記ヨウ化ポリマーを含む材料から形成される、請求項1または2に記載の移植可能な装置。
【請求項4】
前記ヨウ化ポリマーから形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の移植可能な装置
【請求項5】
約1mm〜約50mm厚である前記ヨウ化ポリマーの層でコーティングされている、請求項1から4のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項6】
最大約1mm厚である前記ヨウ化ポリマーの層でコーティングされている、請求項1から4のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項7】
前記ヨウ化ポリマーを含むポリマーステントである、請求項1に記載の移植可能な装置。
【請求項8】
ヨウ化ポリマーを含むコーティングを含む、請求項7に記載のステント。
【請求項9】
ポリエステル、ポリ無水物、ポリカーボネートもしくはポリアミドまたはそれらの混合物を含む、請求項7に記載のステント。
【請求項10】
前記ヨウ化ポリ無水物、ヨウ化ポリエステル、ヨウ化ポリカーボネートまたはヨウ化ポリアミドを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項11】
前記ヨウ化ポリ無水物、ヨウ化ポリエステル、ヨウ化ポリカーボネートまたはヨウ化ポリアミドが、ヨウ化アリール環を含む、請求項10に記載の移植可能な装置。
【請求項12】
以下の残基:
【化35】

のうち1個以上を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項13】
以下のアミノ酸:
【化36】

のうち1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項14】
次式(I):
【化37】

[式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1個が、ヨードであり、残りのR、R、R、R、R、R、RおよびRが独立に、Hまたはヨードであり;
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;該鎖中の1個以上の該炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むヨウ化ポリ無水物を含む、請求項13に記載の移植可能な装置。
【請求項15】
およびRが各々ヨードである、請求項14に記載の移植可能な装置。
【請求項16】
、R、RおよびRが、各々ヨードである、請求項14に記載の移植可能な装置。
【請求項17】
次式(II):
【化38】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;該鎖中の1個以上の該炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物を含む、請求項13に記載の移植可能な装置。
【請求項18】
次式(III):
【化39】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;該鎖中の1個以上の該炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物を含む、請求項13に記載の移植可能な装置。
【請求項19】
次式(IV):
【化40】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;該鎖中の1個以上の該炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物を含む、請求項13に記載の移植可能な装置。
【請求項20】
次式(V):
【化41】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;該鎖中の1個以上の該炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物を含む、請求項13に記載の移植可能な装置。
【請求項21】
次式(VI):
【化42】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;該鎖中の1個以上の該炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物を含む、請求項13に記載の移植可能な装置。
【請求項22】
次式(VII):
【化43】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;該鎖中の1個以上の該炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物を含む、請求項13に記載の移植可能な装置。
【請求項23】
次式(VIII):
【化44】

[式中、
Lは、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該鎖は、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく;該鎖中の1個以上の該炭素原子は、−O−、−アリール−または−N(R)−で場合により置換されていてもよく;各Rは独立に、Hまたは(C〜C)アルキルであり;任意のアリールは、1個以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、シアノ、ニトロ、ハロまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するヨウ化ポリ無水物を含む、請求項13に記載の移植可能な装置。
【請求項24】
Lが、1〜20個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、1個以上の該炭素原子が、(−O−)または(−NR−)によって場合により置換されていてもよく、該鎖が、炭素上で、1個以上のオキソ置換基で場合により置換されていてもよい、請求項14から23のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項25】
Lが、3〜15個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、1個以上の該炭素原子が、(−O−)または(−NR−)によって場合により置換されていてもよく、該鎖が、炭素上で、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、(C〜C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択される1個以上の置換基で場合により置換されていてもよい、請求項14から23のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項26】
Lが、3〜15個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、1個以上の該炭素原子が、(−O−)または(−NR−)によって場合により置換されていてもよく、該鎖が、炭素上で、1個以上のオキソ置換基で場合により置換されていてもよい、請求項14から23のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項27】
Lが、3〜15個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該鎖が、炭素上で、1個以上のオキソ置換基で場合により置換されていてもよい、請求項14から23のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項28】
Lが、4〜8個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐の炭化水素鎖であり、該鎖が、炭素上で、1個以上のオキソ置換基で場合により置換されていてもよい、請求項14から23のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項29】
Lが−CHCHCHCH−である、請求項28に記載の移植可能な装置。
【請求項30】
Lが、−C(=O)(CHC(=O)−であり、nが、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である、請求項14から23のいずれか一項に記載の移植可能な装置。
【請求項31】
次式(X):
【化45】

の1個以上の残基を含むバックボーンを有するポリ無水物を含む移植可能な医療装置。
【請求項32】
ステント、整形外科用装置、骨プレート、ペースメーカー、ポンプ、ネジ、ピン、カテーテル、移植片、縫合糸、手術用メッシュ、ミクロスフェア、フィルム、ファイバー、眼球内レンズ、手術用レーザー、除細動器、ペースメーカーまたは除細動器のリードまたは電極、注入ポンプ、補聴器、人工呼吸器、移植可能な薬物ポンプ、乳房インプラントまたはふくらはぎのインプラントなどの美容インプラント、結腸鏡、胃内視鏡、気管内チューブ、気管支鏡、歯科補綴、矯正装置、子宮内器具、酸素付加器、置換関節、骨プロテーゼ、セメント、置換腱、人工喉頭、結紮クリップまたは心室補助装置である、請求項31に記載の移植可能な医療装置。
【請求項33】
次式(IX):
【化46】

[式中
Lは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有する、二価の、分岐または非分岐、飽和または不飽和の炭化水素鎖である]
の1個以上の残基を含むバックボーンを有するポリ無水物を含む移植可能な医療装置。
【請求項34】
Lが、8個の炭素原子を有する、二価の、非分岐、飽和炭化水素鎖である、請求項33に記載の移植可能な医療装置。
【請求項35】
請求項31〜34に記載される式(IX)または(X)の1個以上の残基を含むバックボーンを有するポリ無水物を含む本体と、生分解性ヨウ化ポリマーを含む該本体上のコーティングとを含む移植可能な医療装置。
【請求項36】
ステント、整形外科用装置、骨プレート、ペースメーカー、ポンプ、ネジ、ピン、カテーテル、移植片、縫合糸、手術用メッシュ、ミクロスフェア、フィルム、ファイバー、眼球内レンズ、手術用レーザー、除細動器、ペースメーカーまたは除細動器のリードまたは電極、注入ポンプ、補聴器、人工呼吸器、移植可能な薬物ポンプ、乳房インプラントまたはふくらはぎのインプラントなどの美容インプラント、、結腸鏡、胃内視鏡、気管内チューブ、気管支鏡、歯科補綴、矯正装置、子宮内器具、酸素付加器、置換関節、骨プロテーゼ、セメント、置換腱、人工咽頭、結紮クリップまたは心室補助装置である、請求項35に記載の移植可能な医療装置。
【請求項37】
前記生分解性ヨウ化ポリマーが、請求項12〜13のいずれか一項に記載のヨウ化ポリ無水物である、請求項35に記載の移植可能な医療装置。
【請求項38】
請求項12〜30のいずれか一項に記載のヨウ化ポリ無水物。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【公表番号】特表2009−539501(P2009−539501A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514515(P2009−514515)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/070531
【国際公開番号】WO2007/143698
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(502155611)ラトガーズ, ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニュー ジャージー (8)
【Fターム(参考)】