説明

ヨーレート検出装置

【課題】車両の走行状態にかかわらずにヨーレートセンサの較正を適切に行なう。
【解決手段】ヨーレート検出装置10は、車両の位置が所定精度以上で車両のヨーレートを算出可能なヨーレート算出範囲内に存在するか否かを判定するヨーレート算出範囲判定部23aと、車両の現在位置がヨーレート算出範囲内に存在するとヨーレート算出範囲判定部23aにより判定された場合に、車両の位置と道路データ記憶部22に記憶されている曲率情報とに基づき、車両のヨーレートを算出して算出値を出力するヨーレート算出部31と、ヨーレート算出部31から出力されたヨーレートの算出値と、ヨーレートセンサ11から出力されるヨーレート(検出値)Ysとの差に基づき、ヨーレート(検出値)Ysを補正し、該補正により得られる算出値を出力するヨーレートセンサ補正部38とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーレート検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば温度変化などによってヨーレートセンサの出力値に生じるオフセット値を車両の走行中に補正するために、左右輪の車輪径比に基づく左右輪の車輪速差から車輪速ヨーレートを算出し、この車輪速ヨーレートによりヨーレートセンサの出力値を較正する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−94874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る装置においては、左右輪の車輪径比の算出を、走行開始時の所定時間内かつ直進走行中に限定して実行している。しかしながら、このような走行条件は必ずしも満たされない場合があり、走行開始から1度もヨーレートセンサの較正を行なうことができない虞がある。
また、車両の走行路が傾斜している場合には、直進走行中であってもヨーレートセンサの出力値がゼロ以外の値となる虞があり、左右輪の車輪径比に基づく車輪速ヨーレートの算出精度を向上させることが困難であるという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車両の走行状態にかかわらずにヨーレートの検出値の較正を適切に行なうことが可能なヨーレート検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係るヨーレート検出装置は、自車両のヨーレートを検出して検出値を出力するヨーレート検出手段(例えば、実施の形態でのヨーレートセンサ11)と、前記自車両の位置を検出する位置検出手段(例えば、実施の形態での現在位置検出部21)と、少なくともカーブの曲率情報を含む道路データを記憶する道路データ記憶手段(例えば、実施の形態での道路データ記憶部22)と、前記自車両の位置が所定精度以上で前記自車両のヨーレートを算出可能なヨーレート算出範囲内に存在するか否かを判定する判定手段(例えば、実施の形態でのヨーレート算出範囲判定部23a)と、前記位置検出手段により検出された前記自車両の位置が前記ヨーレート算出範囲内に存在すると前記判定手段により判定された場合に、前記自車両の位置と前記道路データ記憶手段に記憶されている前記曲率情報とに基づき、前記自車両のヨーレートを算出して算出値を出力するヨーレート算出手段(例えば、実施の形態でのヨーレート算出部31)と、前記ヨーレート算出手段から出力された前記ヨーレートの算出値と、前記ヨーレート検出手段から出力された前記ヨーレートの検出値との差に基づき、前記ヨーレートの検出値を補正し、該補正により得られる算出値を出力する第1ヨーレート補正手段(例えば、実施の形態でのヨーレートセンサ補正部38)とを備える。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係るヨーレート検出装置では、前記道路データは前記走行路の傾斜情報を含み、前記判定手段は前記自車両の位置が傾斜している走行路上に存在するか否かを判定しており、前記自車両の位置が傾斜している走行路上に存在すると前記判定手段により判定された場合に、前記道路データ記憶手段に記憶されている前記傾斜情報に基づき、前記ヨーレート算出手段または前記第1ヨーレート補正手段から出力された前記ヨーレートの算出値を補正し、該補正により得られる算出値を出力する第2ヨーレート補正手段(例えば、実施の形態でのヨーレート算出部31またはヨーレートセンサ補正部38が兼ねる)を備え、前記第1ヨーレート補正手段は、前記ヨーレート算出手段から出力された前記ヨーレートの算出値が前記第2ヨーレート補正手段により補正された場合には、該補正により得られる算出値と、前記ヨーレート検出手段から出力された前記ヨーレートの検出値との差に基づき、前記ヨーレートの検出値を補正し、該補正により得られる算出値を出力する。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係るヨーレート検出装置は、前記自車両の車輪速を検出して検出値を出力する車輪速検出手段(例えば、実施の形態での車輪速センサ13FL,13FR,13RL,13RR)と、前記車輪速検出手段から出力された前記車輪速の検出値から車輪速ヨーレートを算出する車輪速ヨーレート算出手段(例えば、実施の形態での前輪車輪速ヨーレート算出部32、後輪車輪速ヨーレート算出部33)と、前記車輪速ヨーレート算出手段により算出された前記車輪速ヨーレートと、前記ヨーレート算出手段および前記第1ヨーレート補正手段および前記第2ヨーレート補正手段のうちの何れか1つから出力された前記ヨーレートの算出値との差に基づき、前記何れか1つから出力された前記ヨーレートの算出値を補正し、該補正により得られる算出値を出力する第3ヨーレート補正手段(例えば、実施の形態でのヨーレートセンサ補正部38が兼ねる)を備える。
【0009】
さらに、本発明の第4態様に係るヨーレート検出装置は、少なくとも前記自車両の進行方向前方の走行区分線または構造物を検出可能な物体検出手段(例えば、実施の形態での外界センサ14)と、前記物体検出手段の検出結果に基づき、前記自車両の進行方向前方の前記カーブの曲率半径を検出するカーブ半径検出手段(例えば、実施の形態でのカーブ半径検出部36)と、前記カーブ半径検出手段により検出された前記カーブの曲率半径に基づき、前記自車両のヨーレートを算出して算出値を出力する前方検出ヨーレート算出手段(例えば、実施の形態での前方検出ヨーレート算出部37)と、前記前方検出ヨーレート算出手段から出力された前記ヨーレートの算出値と、前記ヨーレート算出手段および前記第1ヨーレート補正手段および前記第2ヨーレート補正手段および前記第3ヨーレート補正手段のうちの何れか1つから出力された前記ヨーレートの算出値との差に基づき、前記何れか1つから出力された前記ヨーレートの算出値を補正し、該補正により得られる算出値を出力する第4ヨーレート補正手段(例えば、実施の形態でのヨーレートセンサ補正部38が兼ねる)とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1態様に係るヨーレート検出装置によれば、ヨーレートの検出値と、カーブの曲率情報に基づくヨーレートの算出値とに基づき、車両の直進走行中に限らずに旋回走行中であってもヨーレートの検出値を補正することができる。しかも、カーブの曲率情報に基づくヨーレートの算出値は、自車両の走行路が所定精度以上でヨーレートを算出可能なヨーレート算出範囲内に存在する場合に算出されることから、ヨーレートの検出値の補正精度を向上させることができる。
【0011】
本発明の第2態様に係るヨーレート検出装置によれば、走行路の傾斜情報に基づいてヨーレートの算出値を補正することによって、ヨーレートの検出値の補正精度を、より一層向上させることができる。
【0012】
本発明の第3態様に係るヨーレート検出装置によれば、車輪速ヨーレートに基づいてヨーレートの検出値を補正することによって、ヨーレートの検出値の補正精度を、より一層向上させることができる。
【0013】
本発明の第4態様に係るヨーレート検出装置によれば、カーブ半径検出手段により検出されたカーブの曲率半径に基づき、ヨーレートの検出値を補正することによって、ヨーレートの検出値の補正精度を、より一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るヨーレート検出装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る走行路の曲率半径と、走行路が存在する位置(例えば、都市部あるいは郊外部など)と、ヨーレートの算出精度との対応関係の例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るヨーレートの補正値と車速と走行路の横断勾配(カント)との対応関係の例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るヨーレート検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態の参考実施例に係るヨーレート検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態の参考実施例に係るヨーレート検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のヨーレート検出装置の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
この実施の形態によるヨーレート検出装置10は、例えば図1に示すように車両(自車両)に搭載され、ヨーレートセンサ11と、車速センサ12と、4輪の車輪速センサ13FL,13FR,13RL,13RRと、外界センサ14と、ナビゲーション装置15と、制御部16とを備えて構成されている。
【0016】
ヨーレートセンサ11は、ヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)を検出して、検出値の信号を出力する。
車速センサ12は、車両の速度(車速)を検出して、検出値の信号を出力する。
各車輪速センサ13FL,13FR,13RL,13RRは、順次、左前輪と、右前輪と、左後輪と、右後輪との車輪速を検出して、検出値を出力する。
【0017】
外界センサ14は、例えば電磁波によるレーダ装置や撮像装置などにより構成されている。
例えばレーダ装置は、車両の外界に設定された検出対象領域(例えば、進行方向の前方領域と後方領域となど)を走査するようにして電磁波の発信信号を発信する。そして、発信信号が車両の外部の物体(例えば、他車両や構造物など)や歩行者によって反射されることで生じた反射信号を受信し、レーダ装置から外部の物体や歩行者までの距離に係る検知信号と外部の物体や歩行者の角度(方位角と高低角など)に係る検知信号とを生成し、制御部16に出力する。
また、例えば撮像装置は、車両の外界に設定された撮像領域(例えば、進行方向の前方領域と後方領域となど)をカメラにより撮像して得た画像に画像処理を行なって画像データを生成し、制御部16に出力する。
【0018】
ナビゲーション装置15は、例えば、現在位置検出部21と、道路データ記憶部22と、ナビゲーション処理部23と、入力部24と、出力部25とを備えて構成されている。
【0019】
現在位置検出部21は、例えばGPS信号などの測位信号によって、あるいは、各センサ11,12から出力されるヨーレートおよび車速の検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を検出する。
【0020】
道路データ記憶部22は、例えばノード(つまり、道路形状を把握するための座標点)および各ノード間を結ぶ線であるリンクと、各リンクの距離と、道路の種別および幅員および交差角度および形状などの道路データを記憶している。さらに、道路データは、曲率情報(例えば、カーブの曲率半径に関する情報)と傾斜情報(例えば、道路の横断勾配に関する情報)とを備えている。
【0021】
ナビゲーション処理部23は、現在位置検出部21から出力される車両の現在位置と、道路データ記憶部22から取得する道路データとに基づき、例えば入力部24に対する操作者の入力操作などに応じて、マップマッチングの処理と経路探索や経路誘導などの処理となどを行なう。そして、各種の処理の結果を出力部25に出力する。
【0022】
さらに、ナビゲーション処理部23はヨーレート算出範囲判定部23aを備えている。
ヨーレート算出範囲判定部23aは、現在位置検出部21から出力される車両の現在位置が、所定の精度(例えば、図2に示す下限精度Aなど)以上で車両のヨーレートを算出可能なヨーレート算出範囲内に存在するか否かを、道路データ記憶部22に記憶されている各データに基づき判定し、判定結果の信号を出力する。この判定は、例えば、走行路の曲率半径と、走行路が存在する位置(例えば、都市部あるいは郊外部など)と、走行路に対する走行履歴となどに基づいて行なわれる。
【0023】
例えば図2に示すように、曲率半径が小さく、カーブがきつい走行路(例えば、都市部での曲率半径R2以下あるいは郊外部での曲率半径R1以下の走行路)では、ノード(つまり、道路形状を把握するための座標点)が多く設けられていることから、走行路の曲率情報の精度および信頼度が高く、この曲率情報に基づいて算出されるヨーレートの算出精度が高くなる。
これに対して、曲率半径が中程度であって、カーブが緩い走行路(例えば、都市部での曲率半径R2からR3の間あるいは郊外部での曲率半径R1からR4の間の走行路)では、ノードの数が減ることで、走行路の曲率情報の精度および信頼度が低下し、この曲率情報に基づいて算出されるヨーレートの算出精度が低下する。
また、曲率半径が大きく、直線路に近い走行路(例えば、都市部での曲率半径R3以上あるいは郊外部での曲率半径R4以上の走行路)では、ヨーレートがゼロに近い値となり、ノードが少ない場合であっても、曲率情報に基づいて算出されるヨーレートの算出精度が高くなる。
【0024】
また、都市部では、ノード(つまり、道路形状を把握するための座標点)が多く設けられていることから、走行路の曲率情報の精度および信頼度が高く、この曲率情報に基づいて算出されるヨーレートの算出精度が高くなる。
これに対して、郊外部では、ノードの数が減ることで、走行路の曲率情報の精度および信頼度が低下し、この曲率情報に基づいて算出されるヨーレートの算出精度が低下する。
また、車両の走行履歴に応じてノードの配置が学習される場合には、走行路に対する走行履歴に応じて、走行路の曲率情報の精度および信頼度が高くなることから、曲率情報に基づいて算出されるヨーレートの算出精度が高くなる。
【0025】
また、ヨーレート算出範囲判定部23aは、走行路の傾斜情報に基づき、現在位置検出部21から出力される車両の現在位置が傾斜している走行路上に存在するか否かを判定し、この判定結果の信号を出力する。
【0026】
制御部16は、例えば、ヨーレート算出部31と、前輪車輪速ヨーレート算出部32と、後輪車輪速ヨーレート算出部33と、前輪車輪速ヨーレート補正部34と、後輪車輪速ヨーレート補正部35と、カーブ半径検出部36と、前方検出ヨーレート算出部37と、ヨーレートセンサ補正部38とを備えて構成されている。
【0027】
ヨーレート算出部31は、ナビゲーション装置15のヨーレート算出範囲判定部23aにより車両の現在位置が所定の精度以上でヨーレートを算出可能なヨーレート算出範囲内に存在すると判定された場合に、車両の現在位置と、道路データ記憶部22に記憶されている走行路の曲率情報と、車速センサ12から出力される車速の検出値とに基づき、車両のヨーレートYnvを算出する。
そして、ヨーレート算出部31は、ヨーレート算出範囲判定部23aにより車両の現在位置が傾斜している走行路上に存在すると判定された場合には、道路データ記憶部22に記憶されている走行路の傾斜情報に基づき、ヨーレートYnvを補正して、補正後のヨーレートYnvaを出力する。この補正では、例えば図3に示すように、走行路の横断勾配(カント)と車速とに基づきヨーレートYnvの補正値を設定しており、例えば横断勾配(カント)の絶対値が増大することに伴い、あるいは、車速が増大することに伴い、ヨーレートYnvの補正値の絶対値が増大傾向に変化するように設定されている。
【0028】
前輪車輪速ヨーレート算出部32は、前輪の各車輪速センサ22FL,22FRから出力される左前輪および右前輪の車輪速の検出値に基づき、予め記憶している所定の車輪速ヨーレートマップなどを参照して前輪車輪速ヨーレートYfを算出し、算出値を出力する。
後輪車輪速ヨーレート算出部33は、後輪の各車輪速センサ22RL,22RRから出力される左後輪および右後輪の車輪速の検出値に基づき、予め記憶している所定の車輪速ヨーレートマップなどを参照して後輪車輪速ヨーレートYrを算出し、算出値を出力する。
なお、所定の車輪速ヨーレートマップは、例えば、左右の車輪速の差(つまり、左前輪と右前輪との車輪速の差、または、左後輪と右後輪との車輪速の差)と、ヨーレートつまり各車輪速ヨーレートYf,Yrとの所定の対応関係を示すマップである。
【0029】
前輪車輪速ヨーレート補正部34は、ヨーレート算出範囲判定部23aにより車両の現在位置が傾斜している走行路上に存在すると判定された場合には、前輪車輪速ヨーレート算出部32から出力された前輪車輪速ヨーレートYfを、道路データ記憶部22に記憶されている走行路の傾斜情報に基づき補正して、補正後の前輪車輪速ヨーレートYfaを出力する。
後輪車輪速ヨーレート補正部35は、ヨーレート算出範囲判定部23aにより車両の現在位置が傾斜している走行路上に存在すると判定された場合には、後輪車輪速ヨーレート算出部33から出力された後輪車輪速ヨーレートYrを、道路データ記憶部22に記憶されている走行路の傾斜情報に基づき補正して、補正後の後輪車輪速ヨーレートYraを出力する。
なお、これらの補正では、例えば図3に示すように、走行路の横断勾配(カント)と車速とに基づき各車輪速ヨーレートYfa,Yraの補正値を設定しており、例えば横断勾配(カント)の絶対値が増大することに伴い、あるいは、車速が増大することに伴い、各車輪速ヨーレートYfa,Yraの補正値の絶対値が増大傾向に変化するように設定されている。
【0030】
カーブ半径検出部36は、外界センサ14の検出結果に基づき、車両の進行方向前方のカーブの曲率半径を検出する。
例えば、カーブ半径検出部36は、外界センサ14のレーダ装置により検知される構造物(例えば、路面上のガードレールや建築物など)に基づき、あるいは、外界センサ14の撮像装置により撮像される路面や路面上の走行区分線などに基づき、車両の進行方向前方のカーブの曲率半径を検出する。
【0031】
前方検出ヨーレート算出部37は、カーブ半径検出部36により検出されたカーブの曲率半径と、車速センサ12から出力される車速の検出値とに基づき、車両の進行方向前方のカーブでの車両のヨーレートYnvdを算出する。
そして、前方検出ヨーレート算出部37は、ヨーレート算出範囲判定部23aにより車両の現在位置が傾斜している走行路上に存在すると判定された場合には、道路データ記憶部22に記憶されている走行路の傾斜情報に基づき、ヨーレートYnvdを補正して、補正後のヨーレートYnveを出力する。この補正では、例えば図3に示すように、走行路の横断勾配(カント)と車速とに基づきヨーレートYnvdの補正値を設定しており、例えば横断勾配(カント)の絶対値が増大することに伴い、あるいは、車速が増大することに伴い、ヨーレートYnvdの補正値の絶対値が増大傾向に変化するように設定されている。
【0032】
ヨーレートセンサ補正部38は、ヨーレート算出部31から出力されるヨーレートYnvaと、各車輪速ヨーレート補正部34,35から出力される各車輪速ヨーレートYfa,Yraと、前方検出ヨーレート算出部37から出力されるヨーレートYnveとに基づき、ヨーレートセンサ11から出力されるヨーレート(検出値)Ysを補正する。
【0033】
例えば、ヨーレートセンサ補正部38は、ヨーレート算出部31から出力されるヨーレートYnvaとヨーレート(検出値)Ysとの差ΔYnva(=Ynva−Ys)に基づき、差ΔYnvaに対して所定の低域通過処理および変化量の制限処理などを行なった後に、補正後のヨーレートYnvb(=Ys+ΔYnva)を出力する。
そして、各車輪速ヨーレート補正部34,35から出力される各車輪速ヨーレートYfa,Yraの何れか、あるいは、各車輪速ヨーレートYfa,Yraに関連する車輪速ヨーレートYwa(例えば、前輪車輪速ヨーレートYfaと後輪車輪速ヨーレートYraとの平均値など)と、ヨーレートYnvbとの差ΔYnvb(=Ywa−Ynvb)に基づき、差ΔYnvbに対して所定の低域通過処理および変化量の制限処理などを行なった後に、補正後のヨーレートYnvc(=Ynvb+ΔYnvb)を出力する。
そして、前方検出ヨーレート算出部37から出力されるヨーレートYnveと、ヨーレートYnvcとの差ΔYnvc(=Ynve−Ynvc)に基づき、差ΔYnvcに対して所定の低域通過処理および変化量の制限処理などを行なった後に、補正後のヨーレートYnvf(=Ynvc+ΔYnvc)を出力する。
【0034】
この実施形態によるヨーレート検出装置10は上記構成を備えており、次に、このヨーレート検出装置10の動作の一例について説明する。
【0035】
先ず、例えば図4に示すステップS01においては、ヨーレートセンサ11から出力されるヨーレート(検出値)Ysを取得する。
次に、ステップS02においては、車速センサ12から出力される車速の検出値を取得する。
次に、ステップS03においては、例えばGPS信号などの測位信号によって、さらに、各センサ11,12から出力されるヨーレートおよび車速の検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を検出する。
【0036】
次に、ステップS04においては、道路データ記憶部22に記憶されている道路データを取得する。
次に、ステップS05においては、例えば、道路データから得られる走行路の曲率半径と、走行路が存在する位置(例えば、都市部あるいは郊外部など)と、走行路に対する走行履歴となどに基づいて、所定の精度以上で車両のヨーレートを算出可能なヨーレート算出範囲を取得する。
次に、ステップS06においては、車両の現在の走行路はヨーレート算出範囲内に含まれるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進む。
【0037】
次に、ステップS07においては、道路データの曲率情報と車速とに基づき、車両のヨーレートYnvを算出する。
次に、ステップS08においては、道路データの傾斜情報に基づき、ヨーレートYnvを補正して、補正後のヨーレートYnvaを出力する。
次に、ステップS09においては、ヨーレート(検出値)YsとヨーレートYnvaとの差ΔYnva(=Ynva−Ys)を算出する。
次に、ステップS10においては、差ΔYnvaに対して所定の低域通過処理および変化量の制限処理などを実行する。
次に、ステップS11においては、差ΔYnvaによりヨーレート(検出値)Ysを補正して、補正後の第1ヨーレートYnvb(=Ys+ΔYnva)を出力する。
【0038】
次に、ステップS12においては、前輪の各車輪速センサ22FL,22FRから出力される左前輪および右前輪の車輪速の検出値に基づき、前輪車輪速ヨーレートYfを算出し、後輪の各車輪速センサ22RL,22RRから出力される左後輪および右後輪の車輪速の検出値に基づき、後輪車輪速ヨーレートYrを算出する。なお、図4に示す車輪速ヨーレートYwは、前輪車輪速ヨーレートYfまたは後輪車輪速ヨーレートYrである。
次に、ステップS13においては、道路データの傾斜情報に基づき、各車輪速ヨーレートYf,Yrを補正して、補正後の各車輪速ヨーレートYfa,Yraを出力する。なお、図4に示す車輪速ヨーレートYwaは、前輪車輪速ヨーレートYfaまたは後輪車輪速ヨーレートYraである。
【0039】
次に、ステップS14においては、ヨーレートYnvbと車輪速ヨーレートYwaとの差ΔYnvb(=Ywa−Ynvb)を算出する。
次に、ステップS15においては、差ΔYnvbに対して所定の低域通過処理および変化量の制限処理などを実行する。
次に、ステップS16においては、差ΔYnvbによりヨーレートYnvbを補正して、補正後のヨーレートYnvc(=Ynvb+ΔYnvb)を出力する。
【0040】
次に、ステップS17においては、外界センサ14の検出結果に基づき、車両の進行方向前方のカーブの曲率半径を検出する。
次に、ステップS18においては、外界センサ14の検出結果に基づくカーブの曲率半径と、車速とに基づき、車両の進行方向前方のカーブでの車両のヨーレートYnvdを算出する。
次に、ステップS19においては、道路データの傾斜情報に基づき、ヨーレートYnvdを補正して、補正後のヨーレートYnveを出力する。
【0041】
次に、ステップS20においては、ヨーレートYnvcとヨーレートYnveとの差ΔYnvc(=Ynve−Ynvc)を算出する。
次に、ステップS21においては、差ΔYnvcに対して所定の低域通過処理および変化量の制限処理などを実行する。
次に、ステップS22においては、差ΔYnvcによりヨーレートYnvcを補正して、補正後のヨーレートYnvf(=Ynvc+ΔYnvc)を出力し、リターンに進む。
【0042】
上述したように、本発明の実施形態によるヨーレート検出装置10によれば、ヨーレート(検出値)Ysと、道路データ記憶部22に記憶されているカーブの曲率情報に基づき算出されるヨーレートYnvとに基づき、車両の直進走行中に限らずに旋回走行中であってもヨーレート(検出値)Ysを補正することができる。しかも、カーブの曲率情報に基づくヨーレートYnvは、車両の走行路が所定精度以上でヨーレートを算出可能なヨーレート算出範囲内に存在する場合に算出されることから、ヨーレート(検出値)Ysの補正精度を向上させることができる。
【0043】
さらに、各車輪速ヨーレートYf,Yrおよび前方検出ヨーレート算出部37により算出されたヨーレートYnvdに基づいてヨーレート(検出値)Ysを補正することによって、ヨーレート(検出値)Ysの補正精度を、より一層向上させることができる。
さらに、走行路の傾斜情報に基づいて各ヨーレートYnv,Yf,Yr,Ynvdを補正することから、ヨーレート(検出値)Ysの補正精度を、より一層向上させることができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態において、ヨーレートセンサ補正部38は、走行路の傾斜情報に基づく補正が行われた各ヨーレートYnva,Yfa,Yra,Ynveの代わりに、ヨーレート算出部31により算出されたヨーレートYnvと、各車輪速ヨーレート算出部32,33により算出された各車輪速ヨーレートYf,Yrと、前方検出ヨーレート算出部37により算出されたヨーレートYnvdとに基づき、ヨーレートセンサ11から出力されるヨーレート(検出値)Ysを補正してもよい。この場合には、さらに、各ヨーレートYnv,Yf,Yr,Ynvの少なくとも何れかに基づきヨーレート(検出値)Ysを補正し、該補正により得られた算出値に対して、走行路の傾斜情報に基づく補正を行なってもよい。
【0045】
なお、上述した実施の形態において、ヨーレートセンサ補正部38は、ヨーレート算出部31により算出されたヨーレートYnvとヨーレート(検出値)Ysとの差に基づき、ヨーレート(検出値)Ysを補正し、該補正(第1の補正)により得られる算出値(第1のヨーレート)を出力してもよい。
【0046】
さらに、ヨーレートセンサ補正部38は、ヨーレート算出部31により算出されたヨーレートYnvまたは第1のヨーレートを、走行路の傾斜情報に基づき補正し、該補正(第2の補正)により得られる算出値(第2のヨーレート)を出力してもよい。このとき、ヨーレート算出部31により算出されたヨーレートYnvが走行路の傾斜情報に基づき補正された場合には、該補正により得られる算出値と、ヨーレート(検出値)Ysとの差に基づき、ヨーレート(検出値)Ysを補正してもよい。
【0047】
さらに、ヨーレートセンサ補正部38は、車輪速ヨーレートYwと、ヨーレート算出部31により算出されたヨーレートYnvと第1のヨーレートと第2のヨーレートとのうちの何れか1つとの差に基づき、該何れか1つを補正し、該補正(第3の補正)により得られる算出値(第3のヨーレート)を出力してもよい。なお、車輪速ヨーレートYwは、各車輪速ヨーレート算出部32,33から出力される各車輪速ヨーレートYf,Yrの何れか、あるいは、各車輪速ヨーレートYf,Yrに関連する車輪速ヨーレート(例えば、前輪車輪速ヨーレートYfと後輪車輪速ヨーレートYrとの平均値など)である。
【0048】
さらに、ヨーレートセンサ補正部38は、前方検出ヨーレート算出部37により算出されたヨーレートYnvdと、ヨーレート算出部31により算出されたヨーレートYnvと第1のヨーレートと第2のヨーレートと第3のヨーレートとのうちの何れか1つとの差に基づき、該何れか1つを補正し、該補正(第4の補正)により得られる算出値(第4のヨーレート)を出力してもよい。
【0049】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図5および図6に示す参考実施例のように、車輪速ヨーレートYwaに基づいてヨーレート(検出値)Ysを補正する処理と、前方検出ヨーレート算出部37から出力されるヨーレートYnveに基づいてヨーレート(検出値)Ysを補正する処理とを、独立に実行してもよい。
【0050】
例えば図5に示すステップS31においては、ヨーレートセンサ11から出力されるヨーレート(検出値)Ysを取得する。
次に、ステップS32においては、車速センサ12から出力される車速の検出値を取得する。
次に、ステップS33においては、例えばGPS信号などの測位信号によって、さらに、各センサ11,12から出力されるヨーレートおよび車速の検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を検出する。
【0051】
次に、ステップS34においては、道路データ記憶部22に記憶されている道路データを取得する。
次に、ステップS35においては、前輪の各車輪速センサ22FL,22FRから出力される左前輪および右前輪の車輪速の検出値に基づき、前輪車輪速ヨーレートYfを算出し、後輪の各車輪速センサ22RL,22RRから出力される左後輪および右後輪の車輪速の検出値に基づき、後輪車輪速ヨーレートYrを算出する。なお、図5に示す車輪速ヨーレートYwは、前輪車輪速ヨーレートYfまたは後輪車輪速ヨーレートYrである。
次に、ステップS36においては、道路データの傾斜情報に基づき、各車輪速ヨーレートYf,Yrを補正して、補正後の各車輪速ヨーレートYfa,Yraを出力する。なお、図5に示す車輪速ヨーレートYwaは、前輪車輪速ヨーレートYfaまたは後輪車輪速ヨーレートYraである。
【0052】
次に、ステップS37においては、ヨーレート(検出値)Ysと車輪速ヨーレートYwaとの差ΔYsa(=Ywa−Ys)を算出する。
次に、ステップS38においては、差ΔYsaに対して所定の低域通過処理および変化量の制限処理などを実行する。
次に、ステップS39においては、差ΔYsaによりヨーレートYsを補正して、補正後のヨーレートYsa(=Ys+ΔYsa)を出力し、リターンに進む。
【0053】
また、例えば図6に示すステップS41においては、ヨーレートセンサ11から出力されるヨーレート(検出値)Ysを取得する。
次に、ステップS42においては、車速センサ12から出力される車速の検出値を取得する。
次に、ステップS43においては、例えばGPS信号などの測位信号によって、さらに、各センサ11,12から出力されるヨーレートおよび車速の検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を検出する。
【0054】
次に、ステップS44においては、道路データ記憶部22に記憶されている道路データを取得する。
次に、ステップS45においては、外界センサ14の検出結果に基づき、車両の進行方向前方のカーブの曲率半径を検出する。
次に、ステップS46においては、外界センサ14の検出結果に基づくカーブの曲率半径と、車速とに基づき、車両の進行方向前方のカーブでの車両のヨーレートYnvdを算出する。
次に、ステップS47においては、道路データの傾斜情報に基づき、ヨーレートYnvdを補正して、補正後のヨーレートYnveを出力する。
【0055】
次に、ステップS48においては、ヨーレート(検出値)YsとヨーレートYnveとの差ΔYsb(=Ynve−Ys)を算出する。
次に、ステップS49においては、差ΔYsbに対して所定の低域通過処理および変化量の制限処理などを実行する。
次に、ステップS50においては、差ΔYsbによりヨーレート(検出値)Ysを補正して、補正後のヨーレートYsb(=Ys+ΔYsb)を出力し、リターンに進む。
【符号の説明】
【0056】
10 ヨーレート検出装置
11 ヨーレートセンサ(ヨーレート検出手段)
13FL,13FR,13RL,13RR 車輪速センサ(車輪速検出手段)
14 外界センサ(物体検出手段)
21 現在位置検出部(位置検出手段)
22 道路データ記憶部(道路データ記憶手段)
23 ナビゲーション処理部
23a ヨーレート算出範囲判定部(判定手段)
31 ヨーレート算出部(ヨーレート算出手段、第2ヨーレート補正手段)
32 前輪車輪速ヨーレート算出部(車輪速ヨーレート算出手段)
33 後輪車輪速ヨーレート算出部(車輪速ヨーレート算出手段)
36 カーブ半径検出部(カーブ半径検出手段)
37 前方検出ヨーレート算出部(前方検出ヨーレート算出手段)
38 ヨーレートセンサ補正部(第1ヨーレート補正手段、第2ヨーレート補正手段、第3ヨーレート補正手段、第4ヨーレート補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両のヨーレートを検出して検出値を出力するヨーレート検出手段と、
前記自車両の位置を検出する位置検出手段と、
少なくともカーブの曲率情報を含む道路データを記憶する道路データ記憶手段と、
前記自車両の位置が所定精度以上で前記自車両のヨーレートを算出可能なヨーレート算出範囲内に存在するか否かを判定する判定手段と、
前記位置検出手段により検出された前記自車両の位置が前記ヨーレート算出範囲内に存在すると前記判定手段により判定された場合に、前記自車両の位置と前記道路データ記憶手段に記憶されている前記曲率情報とに基づき、前記自車両のヨーレートを算出して算出値を出力するヨーレート算出手段と、
前記ヨーレート算出手段から出力された前記ヨーレートの算出値と、前記ヨーレート検出手段から出力された前記ヨーレートの検出値との差に基づき、前記ヨーレートの検出値を補正し、該補正により得られる算出値を出力する第1ヨーレート補正手段と
を備えることを特徴とするヨーレート検出装置。
【請求項2】
前記道路データは前記走行路の傾斜情報を含み、
前記判定手段は前記自車両の位置が傾斜している走行路上に存在するか否かを判定しており、
前記自車両の位置が傾斜している走行路上に存在すると前記判定手段により判定された場合に、前記道路データ記憶手段に記憶されている前記傾斜情報に基づき、前記ヨーレート算出手段または前記第1ヨーレート補正手段から出力された前記ヨーレートの算出値を補正し、該補正により得られる算出値を出力する第2ヨーレート補正手段を備え、
前記第1ヨーレート補正手段は、前記ヨーレート算出手段から出力された前記ヨーレートの算出値が前記第2ヨーレート補正手段により補正された場合には、該補正により得られる算出値と、前記ヨーレート検出手段から出力された前記ヨーレートの検出値との差に基づき、前記ヨーレートの検出値を補正し、該補正により得られる算出値を出力することを特徴とする請求項1に記載のヨーレート検出装置。
【請求項3】
前記自車両の車輪速を検出して検出値を出力する車輪速検出手段と、
前記車輪速検出手段から出力された前記車輪速の検出値から車輪速ヨーレートを算出する車輪速ヨーレート算出手段と、
前記車輪速ヨーレート算出手段により算出された前記車輪速ヨーレートと、前記ヨーレート算出手段および前記第1ヨーレート補正手段および前記第2ヨーレート補正手段のうちの何れか1つから出力された前記ヨーレートの算出値との差に基づき、前記何れか1つから出力された前記ヨーレートの算出値を補正し、該補正により得られる算出値を出力する第3ヨーレート補正手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のヨーレート検出装置。
【請求項4】
少なくとも前記自車両の進行方向前方の走行区分線または構造物を検出可能な物体検出手段と、
前記物体検出手段の検出結果に基づき、前記自車両の進行方向前方の前記カーブの曲率半径を検出するカーブ半径検出手段と、
前記カーブ半径検出手段により検出された前記カーブの曲率半径に基づき、前記自車両のヨーレートを算出して算出値を出力する前方検出ヨーレート算出手段と、
前記前方検出ヨーレート算出手段から出力された前記ヨーレートの算出値と、前記ヨーレート算出手段および前記第1ヨーレート補正手段および前記第2ヨーレート補正手段および前記第3ヨーレート補正手段のうちの何れか1つから出力された前記ヨーレートの算出値との差に基づき、前記何れか1つから出力された前記ヨーレートの算出値を補正し、該補正により得られる算出値を出力する第4ヨーレート補正手段とを備えることを特徴とする請求項3に記載のヨーレート検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−252760(P2011−252760A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125948(P2010−125948)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】