説明

ラクトフェリン内包リポソームを含有する口腔用組成物

【課題】ラクトフェリンの抗菌作用を効果的に発揮させ、歯周病の予防や治療効果に優れた口腔用組成物を提供する。
【解決手段】ラクトフェリンをリポソームに内包することにより、ラクトフェリンの歯周病原因菌に対する抗菌活性を著しく増大させる。このラクトフェリン内包リポソームを歯磨、洗口剤、口腔用ゲル剤、口腔用スプレー、トローチ、タブレット、チュアブル、チューインガム、キャンディなどの口腔用組成物に配合することにより、歯周病の予防や治療をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトフェリン内包リポソームを含有してなる口腔用組成物に関する。さらに詳しくは、ラクトフェリン内包リポソームが歯周病原因菌に対し抗菌作用を奏することにより歯周病の予防、改善用の口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトフェリンは、生体内では、涙、唾液、末梢血、乳汁等に含まれている天然の鉄結合蛋白質であり、大腸菌、カンジダ菌、クロストリジウム菌等の有害微生物に対して抗菌作用を示すことが知られている(非特許文献1)。また、ブドウ球菌および腸球菌に対して、0.5〜30mg/mlの濃度で抗菌作用を有することが知られている(非特許文献2、特許文献1)。
【0003】
一般にラクトフェリンの抗菌作用は、菌の増殖に必要な鉄とラクトフェリンとが結合して、菌が鉄を利用できなくなることによるものと考えられており、歯周病の主要原因菌であるPorphyromonas gingivalisに対してもその生育に必要な鉄源の供給を阻害することによって抗菌活性を示すことが知られている(非特許文献3)。しかしラクトフェリンの抗菌作用は、必ずしも充分に強いとは言えず、ラクトフェリンを使用する場合、特にラクトフェリンを口腔用組成物として抗菌作用を発揮させる場合には、大量のラクトフェリンが必要となるため、従来の技術ではラクトフェリンの利用には限界があった。すなわち、歯周病においては、P.gingivalis等の歯周病原因菌が歯周ポケット内の深遠部で繁殖しているため、ラクトフェリンを外用で投与してもポケットの奥の菌に到達しにくく、一層、抗菌力が発揮されにくくなっていた。さらに、繁殖した菌がバイオフィルムにより防御膜を形成しているため、ラクトフェリンが歯周ポケットに進入したとしても抗菌力は発揮され難かった。
【0004】
このラクトフェリンの抗菌性を有効に利用すべく、ラクトフェリンを含有する歯周病の予防又は改善用の口腔用組成物の技術が開発されている。例えば、グリコマクロペプチド(GMP)との組み合わせにより歯肉炎を予防する方法(特許文献2)、アミノ酸との組み合わせにより歯周病原因菌の付着を抑制する技術(特許文献3)などが開示されている。しかしながら、上述したような生体でのラクトフェリン到達の問題に対しては十分な解決に至っておらず、ラクトフェリンの抗菌活性が十分に発揮できる口腔用製剤が望まれていた。
【0005】
【非特許文献1】ジャ−ナル・オブ・ペディアトリクス(Journal of Pediatrics )、第94巻、1頁:1979年
【非特許文献2】ノネッケとスミス;ジャ−ナル・オブ・デアリ−・サイエンス(Nonnecke,B.J. & Smith,K.L.;Journal of Dairy Science )67巻、606頁:1984年
【非特許文献3】日本細菌学雑誌、第56巻、587頁:2001年
【特許文献1】特開平5−320068号公報
【特許文献2】特表2004−529950号公報
【特許文献3】特開2001−089339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ラクトフェリンの抗菌作用を効果的に発揮させ、歯周病の予防や治療効果に優れた口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ラクトフェリンをリポソームに内包することにより、ラクトフェリンの歯周病原因菌に対する抗菌活性を著しく増大することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ラクトフェリンの抗菌活性を増大させ、歯周病原因菌の発育を阻止し、安全、かつ歯周病の予防、改善および治療をすることができる。さらに、本発明の口腔用組成物はラクトフェリンを歯周ポケットに速やかに浸潤させ、バイオフィルムを形成した歯周病原因菌に対し優れた抗菌活性を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるラクトフェリンはその由来は限定されないが、例えば哺乳動物(ヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ等)から得られるラクトフェリンを使用することができる。ラクトフェリンはこれら動物の乳又は乳処理物(脱脂乳、ホエー等)から常法により分離されることにより得られる。また、それらを塩酸、クエン酸等により脱鉄したアポラクトフェリン
、それらを鉄、銅、亜鉛、マンガン等の金属でキレートさせた金属飽和ラクトフェリン
、各種飽和度で金属を飽和したラクトフェリン又はそれらの2種以上の任意の混合物などを使用できる。その他に、遺伝子操作により、微生物、動物細胞、動物等で生産した各種ラクトフェリンを使用してもよい。また、本発明においては加水分解処理したラクトフェリンを用いることもできる。この場合、ラクトフェリンは分子量1,000〜50,000程度のものを好ましく用いることができる。これらのラクトフェリン又はラクトフェリン誘導体は市販のものを用いてもよい。
【0010】
本発明の口腔用組成物中のラクトフェリン含有量は口腔用組成物の形態やリポソームの性質に応じつつ、歯周病の予防又は改善に適する量として適宜設定することができる。外用により有効に効果が発揮されるためには、好ましくは0.01〜60重量%、より好ましくは0.1〜50重量%である。
【0011】
リポソームはリン脂質を主体とした脂質を十分量の水で水和することにより形成される二分子膜を有する脂質小胞体である。現在、リポソームは脂質二重層の数に基づいて分類され、多重膜リポソーム(MLV)と一枚膜リポソームに分類されるが、本発明のリポソームは、これらのいずれであってもよい。好ましいのはMLVである。
【0012】
本発明のリポソームの大きさとしては、平均粒子径が30〜1000nm程度のものが一般的であり、好ましくは40〜500nm、より好ましくは50〜400nmである。
【0013】
リポソームは水溶性薬物をその内水層に、脂溶性薬物を脂質二重層へ取り込むことができ、薬物のターゲティング、徐放化、副作用の軽減などを目的にDDS製剤の薬物運搬体としてその応用が試みられている。また、リポソームは生体膜の成分から構成されているため安全性が高いことも知られている。
【0014】
本発明に使用するリポソームに含まれるラクトフェリンの量は、リポソームの総脂質量の50〜2000重量%であることが好ましく、100〜1000重量%であることがより好ましい。なお、リポソームの総脂質量とは、リポソームを構成する油分の総和であり、当該油分にはレシチン、ステロールだけでなく、ビタミンE等も含まれる。
【0015】
リポソームに内包されるラクトフェリンはリポソームの内水層、脂質二重層のいずれに内包されていてもよく、外層への付着であってもよい。
【0016】
リポソームのリン脂質としては通常、レシチンを使用することができる。本発明では、レシチンとして、卵黄レシチン、大豆レシチン、ナタネレシチン、コーンレシチン、ひまわりレシチン、ピーナッツレシチンなどが挙げられる。本発明では、これらの水素添加物を用いることもできる。レシチンはホスファチジルコリン又は1,2−ジアシルグリセロール
3−ホスホコリンとも称され、一般的に、グリセロールの1位及び2位に脂肪酸が結合している。本発明では、上記例示のレシチンに加えて、1位及び2位の両方又は片方に炭素数12〜24の不飽和脂肪酸が結合しているレシチンを使用することが好ましく、1位に炭素数12〜24の飽和脂肪酸、2位に炭素数12〜24の不飽和脂肪酸が結合しているレシチンを使用することが特に好ましい。ここで、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸は直鎖状及び分枝状のいずれでもよい。このようなレシチンを使用することにより、リポソームに内包されたラクトフェリンの歯周ポケットへの侵襲性が向上する。好ましい不飽和脂肪酸としては、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸を使用でき、特に2位にオレイン酸、リノール酸が多く結合したレシチンを使用することができる。
【0017】
また、本発明のレシチンとしては、これらの中でも、卵黄レシチン、大豆レシチン及びひまわりレシチンが好ましい。
【0018】
本発明のリポソームにはさらにステロールを配合させることが好ましい。ステロールとしては、コレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロールなどの動物由来のステロール;スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロールなどの植物由来のステロール(フィトステロール);チモステロール、エルゴステロールなどの微生物由来のステロール等が挙げられる。これらの中でも、コレステロール又はフィトステロールが好ましく用いられる。
【0019】
リポソームにおけるレシチンとステロールのモル比は、55:45〜95:5程度が好ましく、60:40〜90:10がより好ましく、65:35〜85:15が最も好ましい。モル比がこれらの範囲にあるとリポソーム膜の安定性が向上する。
【0020】
ラクトフェリンを内包したリポソームは、従来の方法により製造することができる。例えば、所定量のレシチン及びステロールを、例えばエタノールなどの適当な有機溶媒で可溶化し、減圧下に溶媒を除去し、膜脂質を作成後、これにラクトフェリンを含む水溶液を添加して、例えば、1000〜3000rpm程度で2〜5分間程度撹拌して、リポソーム懸濁液を調製することにより得ることができる。
【0021】
得られた懸濁液に対しては、必要に応じて、リポソーム外液中の成分を除去する操作、例えば懸濁液を濾過後、得られた濾液を透析する操作を行ってもよい。
【0022】
得られたリポソームの表面をコーティングすることができる。好ましいコーティングとしては、硫酸基を含有する多糖類でのコーティングが挙げられる。
【0023】
硫酸基含有多糖類としては、フコイダン、カラギーナン、寒天、ヘパリンなどが挙げられる。また、本発明の硫酸基含有多糖類としては、硫酸基を含まない多糖を硫酸化したものであってもよく、例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸などであってもよい。
【0024】
本発明の硫酸基含有多糖類としては、分子量が5,000〜300,000程度のものが好ましく用いられる。
【0025】
本発明においては、これらの硫酸基含有多糖類の中でもフコイダン及びカラギーナンを好ましく用いることができ、特にフコイダンが好ましい。
【0026】
硫酸基含有多糖類の使用量は、例えば、リポソームに含有されるレシチン100重量部に対して、10〜500重量部程度が好ましく、20〜200重量部程度がより好ましい。
【0027】
コーティングは、例えば、生理活性物質を内包したリポソームを含む懸濁液に、硫酸基含有多糖類を加え、1000〜3000rpm程度で2〜5分間程度撹拌することにより行うことができる。なお、1つのコーティング膜の中に複数のリポソームが含まれていてもよい。
【0028】
リポソームが硫酸基含有多糖類でコーティングされたことは、例えば、リポソーム溶液のゼータ電位が、硫酸基含有多糖類を添加して撹拌することにより変化することにより確認できる。
【0029】
リポソームの懸濁液は、液状のままでも、凍結乾燥した乾燥物としても使用することもできる。リポソームを液体、固体の通常知られている口腔用組成物に配合することにより、本発明の口腔用組成物を得ることができる。
【0030】
本発明の口腔用組成物の形態は口腔内において外用で作用するものであれば特に限定されず、種々の公知成分を配合し、医薬品、医薬部外品および食品の形態として提供できる。具体的には、練歯磨、液体歯磨、洗口剤、口腔用ゲル剤、口腔用パスタ剤、口腔用スプレー、トローチ、タブレット、チュアブル、カプセル、フィルム剤、顆粒、粉末ジュース、飴、チューインガム、キャンディ、グミキャンディ等の形態として提供できる。これらの口腔用組成物の形態にあっては、通常の製造方法によって製造することができ、本発明ではそれぞれの形態に応じ、その他の成分、例えば研磨剤、湿潤剤、有機溶剤、粘結剤、香料、賦形剤、甘味剤、pH調整剤、防腐剤、乳化剤、可溶化剤、界面活性剤、結合剤、滑沢剤、油、色素等を医薬組成物、口腔用組成物又は、食品処方設計に通常用いられるその他の添加物、食品素材等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。このような素材については、具体的には下記ものが含まれる。
【0031】
研磨剤として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、酸化チタン、非晶質シリカ、結晶質シリカ、アルミノシリケート、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、レジン、ハイドロキシアパタイトなどを、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0032】
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトールなどの多価アルコールを、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0033】
有機溶剤としてはアルコールが好ましく、例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、特にエタノールが好ましい。これらアルコールは単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0034】
粘結剤としては、例えば、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム等のアルカリ金属アルギネート、キサンタンガム、トラガカントガム、アラビアガム等のガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム等の無機粘結剤などが挙げられる。
【0035】
香味剤としては、例えば、アネトール、メントール、ペパーミント油、スペアミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、カルボン、シンナミックアルデヒド、シネオール、メントン、リモネン、サリチル酸メチルなどを本発明の効果を損なわない範囲で、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は通常組成物全量に対して0.0001〜1.0重量%である。
【0036】
甘味剤としては、例えば、パラチニット、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、ρ−メトキシシンナミックアルデヒドなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全体に対して0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0037】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、パントテン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウムなどが挙げられ、これらは、組成物のpHが適切な範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全体に対して0.01〜2重量%である。
【0038】
賦形剤としては、ショ糖、乳糖、デンプン、ブドウ糖、結晶性セルロース、マンニット、ソルビット、キシリトール、エリスリトール、パラチニット、パラチノース、マルチトール、トレハロース、ラクチトール、還元澱粉糖、還元イソマルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ガムベース、アラビアガム、ゼラチン、セチルメチルセルロース、軽質無水珪酸、アルミン酸マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウムが挙げられる。
【0039】
可溶化剤としては、エステル類、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタンの脂肪酸エステル類、硫酸化脂肪アルコール類が挙げられる。
【0040】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、硬化油等が挙げられる。
【0041】
油としては、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、パセリ油、パセリ種子オイル、紅花油等が挙げられる。
【0042】
さらに、本発明の口腔用組成物には、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類、アスコルビン酸などのビタミンC類、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸の抗プラスミン剤、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン塩類、グリチルレチン酸、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、水溶性無機リン酸化合物、塩化セチルピリジニウム、トリクロサン、ヒノキチオール、塩酸クロルヘキシジンなどを、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。本発明の口腔用組成物は、これらの成分を混合し、通常の方法に従って製造することができる。
【0043】
本発明の口腔用組成物の使用量は、その組成物の形態、投与するヒトの年齢、体重、性別、疾患の程度等に応じて適宜決定でき、特に限定されるものではないが、通常、ラクトフェリンの総重量として、成人1日当たり0.003〜0.6g程度、好ましくは0.01〜0.2g程度が口腔内で投与されるのが好ましい。
【0044】
なお、本発明者らはラクトフェリンを内包したリポソームは経口投与により破骨細胞抑制効果を有することを確認している(本願出願人による先行特許出願)。したがって、本発明の口腔用組成物においても破骨細胞の増殖を抑制し、歯周病の予防又は改善に有用であると考えられる。すなわち、消化器官からの吸収だけでなく、歯周組織や口腔粘膜に直接適用することによっても破骨細胞の増殖抑制が図れる。したがって、本願発明はラクトフェリンを内包するリポソームを含有する破骨細胞増殖抑制用の口腔用組成物を包含するものである。
【実施例】
【0045】
以下に試験例および実施例により本発明をさらに具体的に説明するが,本発明は下記の試験例および実施例に制限されるものではない。また、特に断らない限り[%]は[重量%]である。
【0046】
[製造例1]
ラクトフェリン内包リポソームの調製
薄膜水和法により、ラクトフェリンを内包したリポソーム製剤を調製した。卵黄レシチンとフィトステロールをモル比が7:3となるように量りとり(卵黄レシチン
63.0mg、フィトステロール 14.55mg)、エタノール 6mlを加えて溶解した。この溶液からロータリーエバポレーターにて溶媒留去し、薄膜を形成させた。この薄膜にラクトフェリン192mgを溶解させたPBS(−)の6mlを加え、ボルテックスミキサーにより2000rpmにて3分間程度撹拌を行い、リポソーム懸濁液を得た。この懸濁液を0.1μmの孔径のポリカーボネート膜を用いて濾過し、ラクトフェリン内包リポソーム(LL1)を得た。なお、このリポソームを1%リンタングステン酸処理によりネガティブ染色し、乾燥後、これを電子顕微鏡で観察して、多重膜リポソームが形成されていることを確認した。
【0047】
[製造例2]
ラクトフェリン内包リポソームの調製
薄膜水和法により、ラクトフェリンを内包したリポソーム製剤を調製した。卵黄レシチン63.0mgを量りとり、エタノール
6mlを加えて溶解した。この溶液からロータリーエバポレーターにて溶媒留去し、薄膜を形成させた。この薄膜にラクトフェリン192mgを溶解させたPBS(−)の6mlを加え、ボルテックスミキサーにより2000rpmにて3分間程度撹拌を行い、リポソーム懸濁液を得た。この懸濁液を0.1μmの孔径のポリカーボネート膜を用いて濾過し、ラクトフェリン内包リポソーム(LL2)を得た。なお、このリポソームを1%リンタングステン酸処理によりネガティブ染色し、乾燥後、これを電子顕微鏡で観察して、多重膜リポソームが形成されていることを確認した。
【0048】
[製造例3]
ラクトフェリン内包リポソームの調製
薄膜水和法により、ラクトフェリンを内包したリポソーム製剤を調製した。大豆レシチン63.0mgを量りとり、エタノール
6mlを加えて溶解した。この溶液からロータリーエバポレーターにて溶媒留去し、薄膜を形成させた。この薄膜にラクトフェリン192mgを溶解させたPBS(−)の6mlを加え、ボルテックスミキサーにより2000rpmにて3分間程度撹拌を行い、リポソーム懸濁液を得た。この懸濁液を0.1μmの孔径のポリカーボネート膜を用いて濾過し、ラクトフェリン内包リポソーム(LL3)を得た。なお、このリポソームを1%リンタングステン酸処理によりネガティブ染色し、乾燥後、これを電子顕微鏡で観察して、多重膜リポソームが形成されていることを確認した。
【0049】
[試験例1]
ラクトフェリン内包リポソームの歯周病原因菌への抗菌活性
歯周病原性菌Porphyromonas gingivalis FDC 381を0.1% Yeast extract、5mg/L Hemin、1mg/L Vitamin Kを含むTrypticase Soy broth(Difco社製: TSB-Yと略す)で37℃、2日間培養した。製造例1、2、3で調製したラクトフェリン内包リポソーム(LL1、LL2、LL3)又はラクトフェリン(NL)をTSB-Y broth(pH 7.0)に一定量配合した後、P. gingivalis菌液が5%(容量)となるように添加し、37℃で8時間培養後、培養液中の細菌の増殖(濁度)を620nmの波長で測定した。各濃度においてNLを添加した試験液の濁度を100%としたときの、LL1、LL2、LL3を添加した試験液での濁度を%で示した。
結果を表1に示す。LL1、LL2、LL3はNLに対し有意に歯周病原因菌の増殖を抑制した。
【0050】
【表1】

【0051】
[実施例1] 徐放性タブレット
(A)から製造例1と同様の方法にてラクトフェリン内包リポソームを調製した。(A)と(B)成分を均一に混合した後、打錠することによりタプレットを製造した。
(A)
ラクトフェリン 15.0
卵黄レシチン 4.0
フィトステロール 1.0
(B)
マルチトール 残部
キシリトール 20.0
ツェイン 10.0
ゼラチン 5.0
ショ糖脂肪酸エステル 3.5
合計 100.0

【0052】
[試験例2]
ラクトフェリンリポソームを含有するトローチによる歯周病の改善
実施例1のタブレットを歯周病罹患者に1日3回、口腔内にタブレットの溶解した成分が行き渡るようにゆっくり摂取してもらい、7日後に歯周病の改善度をアンケートにより評価してもらったところ、「改善した」との回答を得た。一方、リポソーム化していないラクトフェリンを同様に歯周病罹患者に7日間摂取してもらったところ、歯周病の改善度は「変わらない」との回答を得た。ラクトフェリンは抗菌活性があることが知られているが、リポソームに内包することにより抗菌活性が向上し、歯周病が改善することが確認された。
【0053】
[処方例]
以下に処方例を示す。なお、それぞれの処方において(A)成分はラクトフェリンが内包されたリポソームであり、上記リポソーム懸濁液と同様の方法で調製したものである。これを(B)に示す成分と適宜混合し、常法によりそれぞれの処方に示す口腔用組成物を調製した。
【0054】
処方例1 歯磨剤(練歯磨)
成分 配合量(重量%)
(A)
ラクトフェリン 0.5
大豆レシチン 0.15
フィトステロール 0.03
(B)
無水ケイ酸 20.0
グリセリン 28.0
二酸化チタン 0.3
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.3
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
キシリトール 9.0
酢酸dl−トコフェロール 0.05
ペパーミント香料 0.6
精製水 残部
合計 100.0

【0055】
処方例2 洗口剤
成分 配合量(重量%)
(A)
ラクトフェリン 1.0
卵黄レシチン 0.5
フィトステロール 0.08
(B)
エタノール 10.0
トラネキサム酸 0.05
グリセリン 5.0
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
ミント香料 適量
精製水 残部
合計 100.0

【0056】
処方例3 口腔用ゲル
成分 配合量(重量%)
(A)
ラクトフェリン 1.0
卵黄レシチン 0.3
(B)
カルボキシメチルセルロース 0.2
グリセリン 40.0
精製水 残部
合計 100.0

【0057】
処方例4 タブレット
(A)
ラクトフェリン 15.0
卵黄レシチン 4.0
フィトステロール 1.0
(B)
マルチトール 42.0
乳糖 20.0
ラクチュロース 15.0
ショ糖脂肪酸エステル 3.0
合計 100.0

【0058】
処方例5 キャンディ
(A)
ラクトフェリン 5.0
大豆レシチン 1.0
フィトステロール 0.2
(B)
ビタミンC 5.0
キシリトール 8.0
マルチトール 10.0
アスパルテーム 0.1
香料 0.2
パラチニット 残部
合計 100.0

【0059】
処方例6 チュアブル
(A)
ラクトフェリン 40.0
卵黄レシチン 4.0
フィトステロール 0.8
フコイダン 1.4
(B)
マルチトール 30.0
キシリトール 20.0
ショ糖脂肪酸エステル 3.0
香料 0.8
合計 100.0

【0060】
処方例7 チューインガム
(A)
ラクトフェリン 10.0
大豆レシチン 3.0
フィトステロール 0.5
(B)
炭酸カルシウム 5.0
ビタミンE 0.1
ガムベース 27.0
エリスリトール 10.0
キシリトール 残部
マルチトール 12.0
香料 0.5
合計 100.0

【0061】
処方例8 トローチ
(A)
ラクトフェリン 12.0
大豆レシチン 4.0
フィトステロール 0.6
(B)
マルチトール 21.0
アラビアガム 1.5
ショ糖脂肪酸エステル 2.5
粉末香料 1.0
クエン酸 4.0
ビタミンC 10.0
キシリトール 残部
合計 100.0



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトフェリンを内包したリポソームを含有する口腔用組成物。
【請求項2】
歯周病の予防又は改善剤である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
歯周病原因菌に対する抗菌効果を特徴とする請求項1又は2に記載の口腔用組成物。



【公開番号】特開2007−223975(P2007−223975A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49032(P2006−49032)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】