説明

ラジオ・コントロール送信機

【課題】被操縦物を変更する場合に、容易に設定変更することができるラジオ・コントロール送信機を提供する。
【解決手段】ラジコン送信機1には、スティックレバー2やスイッチレバー8の操作内容と被操縦物の動作内容との関係を示す設定が予め複数記憶されている。ユーザがダイレクトボタン51、ダイレクトボタン52、またはダイレクトボタン53のいずれかを押しながら電源スイッチ3をオンする操作を行うと、各ダイレクトボタンに対応付けられている設定が読み出される。その結果、ユーザは、電源オンと同時に設定を切り替えることができ、すぐに操縦を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラジオ・コントロール(以下、ラジコンとも言う。)送信機の設定読み出し技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジコン送信機では、スティックレバーの操作に応じた信号を模型飛行機や模型ヘリコプタ(ヘリ)等の被操縦物に送信する。被操縦物では、受信した信号に応じてサーボモータを動作させて、エンジンの出力や舵(ラダー、エルロン、エレベータ)等を制御する。
【0003】
一般に、ラジコン送信機では、特許文献1に示されているように、スティックレバーの操作量とサーボモータの動作量との関係を示す設定を変更できるようになっている。また、各種レバーの役割(左側スティックレバーがエンジン出力、右側が舵等)の設定を変更することもある。
【0004】
このような設定変更は、被操縦物の種類に応じて行う必要がある。例えば、飛行機を操縦するときと、ヘリを操縦するときとで、スティックレバーの役割を変更する必要がある。ラジコン愛好者(ユーザ)は、複数の被操縦物を所有していることが多く、1台のラジコン送信機を用いて、被操縦物毎に設定を変更して操縦を行うことが多い。
【0005】
そこで、特許文献2に示されているように、被操縦物毎の設定をメモリに記憶しておき、ユーザの操作に応じて設定を切り替えるラジコン送信機が提案されている。ユーザは、被操縦物を変更する場合に、目的の設定を読み出す操作を行うことで、1台のラジコン送信機でも複数の被操縦物を短時間に切り替えて操縦することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録公報第2594808号公報
【特許文献2】実公平6−30239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のラジコン送信機では、目的の設定を読み出すために、例えば、以下のような煩雑な操作を行う必要があった。
【0008】
図1(A)は、ラジコン送信機の電源をオンした場合に表示される一般的な初期画面である。表示画面は、階層表示されるものであり、ユーザの操作によって変更される。ユーザは、被操縦物を変更する場合、同図(A)に示すような初期画面から複数のメニュー選択を行って目的の設定を読み出す操作を行う必要がある。例えば、同図(A)に表示されている初期画面から、所定のメニュー(SYSTEM)を選択し、同図(B)に示す2層目の画面(SYSTEM画面)に進む。そこで、再び所定のメニュー(MODEL SELECT)を選択する操作を行い、3層目の画面(MODEL SELECT)に進む。そこで、さらに読み出したい設定を選択して決定操作を行う必要がある。このように、ユーザは、被操縦物を変更する場合に煩雑なメニュー選択の操作を行う必要があった。
【0009】
そこで、この発明は、被操縦物を変更する場合に、容易に設定変更することができるラジオ・コントロール送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のラジコン送信機は、電源オン、オフ操作を受け付ける電源操作部と、被操縦物の操縦指示を受け付ける操縦部と、設定選択操作を受け付ける複数の選択ボタンと、を備えている。操縦部は、エンジン出力等を指示するスティックレバー等である。また、ラジコン送信機は、操縦部の操作内容と被操縦物の動作内容との関係を示す設定、および選択ボタンと設定との対応付けを複数記憶する記憶部を備えている。例えば、記憶部は、スティックレバーの操作量とサーボモータの動作量との関係や、各スティックレバーの役割等を示す設定を被操縦物の機種別に複数記憶している。ここで、ラジコン送信機の制御部は、電源操作部で電源オン操作がされた時に、設定選択操作が行われている選択ボタンに対応付けられた設定を記憶部から読み出す。つまり、ユーザは、複数の選択ボタンのうち、いずれかを押しながら電源オン操作を行うと、押した選択ボタンに対応付けられている機種別の設定が読み出された状態とすることができる。よって、電源オンと同時に設定を切り替えることができ、すぐに操縦を行うことができる。
【0011】
また、ラジコン送信機は、選択ボタンの組み合わせ(例えば、単独で押す場合と複数押す場合と)で、読み出される設定が異なっていてもよい。この場合、少ないボタン数であっても、対応付けられる設定数を多くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、被操縦物を変更する場合に、容易に設定変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ラジオ・コントロール送信機の外観図である。
【図2】ラジオ・コントロール送信機の外観図である。
【図3】ラジオ・コントロール送信機の構成を示すブロック図である。
【図4】ダイレクトボタンの設定画面と設定テーブルとを示す図である。
【図5】制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るラジコン送信機の外観図である。同図(A)は正面図であり、同図(B)は背面図である。
【0015】
ラジコン送信機1の筐体正面には、左右に2本のスティックレバー2が突出して取り付けられている。各スティックレバー2は、中立位置を中心として左右方向および上下方向に揺動自在に筐体に取り付けられている。スティックレバー2の上側には、複数のスイッチレバー8が取り付けられている。スイッチレバー8は、筐体正面方向または上面方向に突出して、複数段階に切り替え可能な態様で取り付けられている。
【0016】
また、ラジコン送信機1の筐体正面中央には、電源スイッチ3が上下方向に可動するように取り付けられている。筐体正面下側の中央部分には、LCD等の表示部4が設置されている。表示部4の右側には決定キー6や複数の選択キー7が設置されている。表示部4の左側には、設定選択操作を行う複数の選択ボタンである3つのボタン(ダイレクトボタン51、ダイレクトボタン52、ダイレクトボタン53)が設置されている。また、筐体上面中央には、アンテナ9が取り付けられている。
【0017】
スティックレバー2やスイッチレバー8は、ユーザが被操縦物の操縦指示を行うための操縦部である。スティックレバー2は、被操縦物のエンジン出力や舵を変更指示するためのものである。スイッチレバー8は、車輪(ギヤ)やフラップの引き出し、格納等を指示するためのものである。
【0018】
例えば、ユーザは、一方のスティックレバー2を上下方向に動かし、被操縦物のエンジン出力の変更指示を行う。左右方向は、バンク角の指示(エルロンの操作)等に用いられる。また、ユーザは、他方のスティックレバー2を上下方向または左右方向に動かし、昇降(上下の振り角)や進行方向(左右の振り角)の変更指示を行う。
【0019】
スティックレバー2やスイッチレバー8の操作内容と被操縦物の動作内容との関係は、予めラジコン送信機1の記憶手段であるEEPROM(またはRAM)に記憶されている。
【0020】
図2は、ラジコン送信機の構成を示すブロック図である。ラジコン送信機1は、ラジコン送信機1を統括制御するCPUである制御部61を備えている。また、ラジコン送信機1は、制御部61にそれぞれ接続されるキー制御部62、ROM63、RAM64、EEPROM65、送信部66、および表示制御部67を備えている。
【0021】
電源スイッチ3は、ユーザが電源オン、オフ操作を行う電源操作部であり、制御部61に接続されている。ユーザが電源スイッチ3を用いて電源オン操作を行うと、制御部61に不図示の電池から電源供給がなされる。制御部61は、電源供給がなされると、ROM63に記憶されている動作用プログラムを読み出し、RAM64に展開することで種々の動作を行う。例えば、表示制御部67に初期画面の表示を行うように指示する。表示制御部67は、表示部4の表示を制御するLCD駆動部である。表示制御部67は、制御部61から初期画面の表示を行うように指示されると、表示部4に初期画面の表示を行う。
【0022】
キー制御部62は、スティックレバー2、決定キー6、選択キー7、スイッチレバー8、および3つのボタン(ダイレクトボタン51、ダイレクトボタン52、およびダイレクトボタン53)が接続されている。ユーザがこれらのキーやスイッチレバー等の操作を行うと、キー制御部62は、ユーザの操作に応じた操作信号を制御部61に出力する。
【0023】
制御部61は、入力された操作信号に応じて、表示制御部67に表示指示を行ったり、被操縦物を操縦するための信号(操縦信号)を送信部66に出力したりする。送信部66は、操縦信号を所定の周波数に変調して、アンテナ9を介して被操縦物に無線送信する。被操縦物では、受信した操縦信号に応じてサーボモータの動作を制御する。なお、各種信号の送受信方式はデジタルであってもアナログであってもよく、本実施形態においてはA/D変換やD/A変換の構成は省略している。
【0024】
制御部61は、電源供給が開始された時、スティックレバー2の操作量とサーボモータの動作量との関係や各種レバーの役割等を示す設定をEEPROM65から読み出し、以後は読み出した設定に応じた操縦信号を送信部66に出力する。すなわち、制御部61は、電源スイッチ3で電源オン操作が行われたとき、ダイレクトボタン51〜ダイレクトボタン53が押されているか否かをキー制御部62に確認し、これらのボタンのいずれかが押されていれば、押されているダイレクトボタンに割り当てられている設定を読み出す。なお、初回起動時には、ROM63に記憶されているデフォルトの設定が読み出され、電源オンのときに何も押されていなければ、前回の設定を保持(再度読み出し)して起動する。
【0025】
本実施形態では、3つのダイレクトボタン51、ダイレクトボタン52、およびダイレクトボタン53が設けられているため、制御部61は、起動時にこれら3つのダイレクトボタンに割り当てられている3種類の設定のうちいずれか1つを読み出すことができる。
【0026】
図4(A)は、ダイレクトボタンの設定画面であり、同図(B)は、EEPROM65に記憶される設定テーブルを示す図である。ユーザは、表示部4に表示される初期画面から、決定キー6や選択キー7を操作して、同図(A)に示すダイレクトボタン設定画面を表示させる。同図(A)に示す画面には、3つのダイレクトボタン51(DirectI)、ダイレクトボタン52(DirectII)、およびダイレクトボタン53(DirectIII)の表示と、それぞれの表示ボタンに割り当てられている設定が表示される。
【0027】
各設定は、同図(B)に示すようなテーブルとしてEEPROM65に記憶されている。同図(A)の各ダイレクトボタン表示(I、II、III)右側には、同図(B)に示すテーブルの番号(No.)、設定名称(Name)、被操縦物の種類名(Type)が表示される。また、テーブルには、それぞれ設定(Set.)、および割当フラグ(Direct)が記載されている。
【0028】
テーブルに記載されている設定は、各種レバーの役割(STICK8→EL)や、レバーの操作量とサーボモータの動作量(EL−SENT0%,EPA150%)等である。Directの欄に記載されている記号(I、II、III)がそれぞれのダイレクトボタンに対応付けられていることを示すフラグとなる。制御部61は、電源オン操作がされたときに、押されているダイレクトボタンが記載されている設定を検索し、設定(Set.)欄に記載されている設定をRAM64に読み出して設定変更を行う。
【0029】
本実施形態では、20種類の設定を記憶することができる例を示しており、ユーザは、同図(A)の設定画面で20種類の設定からいずれかを選択し、ダイレクトボタンと各種設定の対応付けを予め決定する。ユーザがダイレクトボタン5と設定の対応付けを変更すると、テーブルのフラグ記載が変更される。
【0030】
これにより、電源オン操作を行ったとき、押されているダイレクトボタンに対応付けられた設定が読み出される。なお、外部メモリにもテーブルを記憶することができ、同図(C)に示すように、さらに多種類(M21〜M40の20個)の設定を記憶することもできる。外部メモリに記憶されるテーブルについても、割当フラグが記載されており、ダイレクトボタンに対応付けすることができるようになっている。例えば、本実施形態の例では、外部メモリのM21の番号に当たる設定がダイレクトボタン53(III)に対応付けられており、ユーザがダイレクトボタン53を押しながら電源スイッチ3をオンする操作を行うと、飛行機を操縦するためのM21の設定が読み出される。
【0031】
以上の動作(電源オンされた時の動作)をフローチャートで説明する。図5は、制御部61の動作を示すフローチャートである。ユーザが電源スイッチ3を操作して電源オン操作を行うと、制御部61はこの動作を開始する。まず、制御部61は、初回起動であるか否かを判断する(s11)。初回起動とは、EEPROM65や外部メモリに記憶されているテーブルがない場合である。初回起動であれば、ROM63に記憶されているデフォルト設定が読み出される(s12)。
【0032】
次に、制御部61は、初回起動でないと判断した場合、ダイレクトボタンが押下されているか否かを判断する(s13)。つまり、制御部61は、ダイレクトボタン51〜ダイレクトボタン53が押されているか否かをキー制御部62に確認する。制御部61は、これらのボタンのいずれかが押されていると判断した場合、EEPROM65に記憶されているテーブルから、押されているダイレクトボタンに対応付けられている設定を検索して読み出す(s14)。制御部61は、ダイレクトボタンが押されていなければ、前回読み出していた設定を再度読み出す(s15)。
【0033】
以上のように、本実施形態のラジコン送信機では、複数のダイレクトボタンのうち、いずれかを押しながら電源オン操作を行うと、押したダイレクトボタンに対応付けられている機種別の設定が読み出された状態とすることができる。ユーザは、電源オンと同時に設定を切り替えることができ、すぐに操縦を行うことができる。よって、本実施形態のラジコン送信機は、操縦物を変更する場合において、従来よりも容易に設定変更することができる。
【0034】
また、従来のように、メニュー選択操作を行うことで設定を切り替える場合は、電源がオンされている時に切り替えることとなり、被操縦物が飛行中であっても設定が切り替わることになる。そのため、エンジン出力や舵が急に変更され、墜落等するおそれもあった。しかし、本実施形態のラジコン送信機によれば、電源オフの状態から電源オンの状態に変更される時に設定が切り替えられるものであり、電源がオンされている状態で、ダイレクトボタンが押されても設定が切り替えられることがないため、安全性も向上する。
【0035】
なお、本実施形態では、3つのダイレクトボタンを設け、それぞれのボタンに対応付けられている3種類の設定のうちいずれか1つを読み出す例について説明したが、ボタンの数を増減することで、読み出す設定の種類を増減させることができる。また、本発明のラジコン送信機によれば、同時に複数のボタン(例えばダイレクトボタン51とダイレクトボタン52)が押されていた場合に、異なる設定を読み出すことも可能である。ダイレクトボタン51およびダイレクトボタン52を同時に押した場合についても、いずれかの設定に対応付けられるようにテーブルを記載しておき、電源オン操作がされたときに、制御部61が対応する設定を読み出すようにする。このように、ダイレクトボタンが押されている組み合わせにより、異なる設定を読み出すように構成することも可能である。この場合、少ないボタン数であっても、対応付けられる設定数を多くすることができる。
【符号の説明】
【0036】
1−ラジオ・コントロール送信機
2−スティックレバー
3−電源スイッチ
4−表示部
6−決定キー
7−選択キー
8−スイッチレバー
9−アンテナ
51,52,53−ダイレクトボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源オンまたはオフ操作を受け付ける電源操作部と、
被操縦物の操縦指示を受け付ける操縦部と、
設定選択操作を受け付ける複数の選択ボタンと、
前記操縦部の操作内容と前記被操縦物の動作内容との関係を示す設定、および前記複数の選択ボタンと前記設定との対応付けを複数記憶する記憶部と、
前記電源操作部で電源オン操作がされた時に、設定選択操作が行われている選択ボタンに対応付けられた設定を前記記憶部から読み出し、読み出した設定で前記操縦部の操作内容に応じた動作内容の指示を前記被操縦物に出力する制御部と、
を備えたラジオ・コントロール送信機。
【請求項2】
前記制御部は、設定選択操作が行われている選択ボタンの組み合わせにより、異なる設定を前記記憶部から読み出す請求項1に記載のラジオ・コントロール送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−233725(P2010−233725A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83514(P2009−83514)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(390004374)三和電子機器株式会社 (4)
【Fターム(参考)】