説明

ラダー型フィルタ及びそれを備えるデュプレクサ

【課題】通過帯域高域側のフィルタ特性の急峻性が高く、かつVSWR特性が良好なラダー型フィルタ及びそれを備えたデュプレクサを提供する。
【解決手段】IDT電極30を有する複数の直列腕共振子と、並列腕13に設けられている並列腕共振子と、複数の直列腕共振子のうちの一部の直列腕共振子S2a、S2b、S3cに並列に接続されているキャパシタC1、C2とを備えている。キャパシタC1、C2が並列に接続されている直列腕共振子S2a、S2b、S3cのIDT電極30には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点が複数形成されるように交叉幅重み付けが施されている。キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子S1a、S1b、S2c、S3a、d3bのIDT電極40には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラダー型フィルタに関し、特に、交叉幅重み付けが施された弾性波共振子を有するラダー型フィルタ及びそれを備えたデュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1や特許文献2などにおいて、IDT電極を有する共振子に対して、交叉幅重み付けを行うことが提案されている。具体的には、特許文献1には、図12に略図的に示す構造の共振子が開示されている。図12に示すように、特許文献1に開示されている共振子100は、互いに間挿し合う一対のくし歯電極により構成されたIDT電極101と、IDT電極101の弾性表面波伝搬方向両側に設けられたグレーティング反射器102,103とを備えている。共振子100では、IDT電極101には、IDT電極101の電極指101aの交叉幅が弾性表面波伝搬方向両側から中央部に向かって大きくなるように交叉幅重み付けが施されている。特許文献1には、このような交叉幅重み付けをIDT電極101対して施すことにより、縦モード、横モード及びラブ波型弾性表面波を利用した場合のレイリー波によるスプリアスを抑圧することができると共に、Q値を高くすることができる旨が記載されている。
【0003】
一方、特許文献2では、図12に示す共振子100のように、極大点がひとつとなるように交叉幅重み付けをIDT電極に施した場合、良好な共振特性が得られるものの、耐電力性が低くなりがちであることが指摘されている。特許文献2では、この問題に鑑み、極大点が複数現れる交叉幅重み付けをIDT電極に施すことが提案されている。
【0004】
図13は、特許文献2に開示されている共振子の略図的平面図である。図13に示すように、特許文献2に開示されている共振子200では、IDT電極201には、IDT電極201の電極指201aの交叉幅が極大となる極大点が2つとなるように交叉幅重み付けが施されている。IDT電極201のように、極大点が複数となるように交叉幅重み付けをIDT電極に施すことにより、反共振周波数におけるQ値を高くすると共に、耐電力性を高めることができる。
【特許文献1】特許第2645674号公報
【特許文献2】WO2007/108269 A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、携帯電話端末のように、複数の高周波帯を使用する携帯情報端末において、データの交錯を防止するなどの目的のため、共振子を利用した高周波フィルタ等が用いられている。データの交錯を確実に防止する観点から、このような高周波フィルタに対しても、良好な周波数特性が求められている。このため、上記の特許文献1や特許文献2に開示されている交叉幅重み付けを施したIDT電極を有する共振子を用いて高周波フィルタを構成することも考えられる。
【0006】
しかしながら、例えば、極大点が1つの共振子、または極大点が複数の共振子を用いてラダー型のフィルタを構成した場合、通過帯域高域側のフィルタ特性の高い急峻性と、良好なVSWR特性とを両立させることが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、通過帯域高域側のフィルタ特性の急峻性が高く、かつVSWR特性が良好なラダー型フィルタ及びそれを備えたデュプレクサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るラダー型フィルタは、入力端と、出力端と、複数の直列腕共振子と、並列腕共振子と、キャパシタとを備えている。複数の直列腕共振子は、入力端と出力端とを接続する直列腕において互いに直列に接続されている。複数の直列腕共振子の各々は、IDT電極を有する。並列腕共振子は、直列腕とグラウンド電位とを接続する並列腕に設けられている。直列腕共振子と並列腕共振子とのそれぞれは、弾性波共振子からなる。キャパシタは、複数の直列腕共振子のうちの一部の直列腕共振子に並列に接続されている。キャパシタが並列に接続されている直列腕共振子のIDT電極には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点が複数形成されるように交叉幅重み付けが施されている。キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子のIDT電極には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されている。
【0009】
本発明に係るラダー型フィルタのある特定の局面では、キャパシタが並列に接続されている直列腕共振子のIDT電極には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点が2つ形成されるように交叉幅重み付けが施されている。
【0010】
本発明に係るラダー型フィルタの他の特定の局面では、並列腕共振子は、IDT電極を有し、並列腕共振子のIDT電極には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されている。この構成によれば、並列腕共振子のIDT電極として、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点が複数形成されるように交叉幅重み付けが施されているIDT電極を用いた場合と比較して、受信側フィルタにおけるVSWR特性をさらに良好にすることができる。
【0011】
本発明に係るデュプレクサは、上記本発明に係るラダー型フィルタを備えている。
【0012】
本発明に係るデュプレクサのある特定の局面では、アンテナ端子と、アンテナ端子に接続されている送信側フィルタ及び受信側フィルタとをさらに備え、送信側フィルタは、ラダー型フィルタを有する。この構成によれば、送信側における通過帯域高域側のフィルタ特性の急峻性を高めつつ、受信側フィルタにおけるVSWR特性を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るラダー型フィルタでは、キャパシタが並列に接続されている直列腕共振子のIDT電極には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点が複数形成されるように交叉幅重み付けが施されている一方、キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子のIDT電極には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されているため、通過帯域高域側のフィルタ特性の急峻性を高くすると共に、VSWR特性を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0015】
図1は、本実施形態のデュプレクサの回路図である。図1に示すように、デュプレクサ1は、送信側フィルタチップ20に搭載されている送信側フィルタ11と、受信側フィルタチップ21に搭載されている受信側フィルタ12とを備えている。受信側フィルタ12は、アンテナ端子10と、第1及び第2の受信側信号端子18a、18bとの間に設けられている。一方、送信側フィルタ11は、アンテナ端子10と、送信側信号端子17との間に設けられている。
【0016】
送信側フィルタ11は、アンテナ端子10に接続されている入力端15と、送信側信号端子17に接続されている出力端16とを備えている。入力端15と出力端16とは、直列腕9によって接続されている。直列腕9には、互いに直列に接続されている複数の直列腕共振器S1〜S3が設けられている。各直列腕共振器S1〜S3は、ひとつの直列腕共振子または互いに直列に接続されている複数の直列腕共振子を備えている。すなわち、直列腕9には、互いに直列に接続されている複数の直列腕共振子が設けられている。この直列腕共振子は、弾性波共振子である。
【0017】
具体的には、本実施形態では、入力端15に直接接続されている第1の直列腕共振器S1は、互いに直列に接続されている2つの直列腕共振子S1a、S1bにより構成されている。直列腕共振子S1a、S1bには、キャパシタは並列に接続されていない。
【0018】
第1の直列腕共振器S1の後段に接続されている第2の直列腕共振器S2は、互いに直列に接続されている3つの直列腕共振子S2a〜S2cにより構成されている。第2の直列腕共振器S2を構成する3つの直列腕共振器S2a〜S2cのうちの直列腕共振子S2a、S2bには、キャパシタC1が並列に接続されている。一方、直列腕共振子S2cには、キャパシタは並列に接続されていない。
【0019】
第2の直列腕共振器S2と出力端16との間に接続されている第3の直列腕共振器S3は、互いに直列に接続されている3つの直列腕共振子S3a〜S3cにより構成されている。第3の直列腕共振器S3を構成する3つの直列腕共振子S3a〜S3cのうちの直列腕共振子S3a、S3bには、キャパシタは並列に接続されていない。一方、直列腕共振子S3cには、キャパシタC2が並列に接続されている。直列腕共振器S3cには、さらにインダクタL5が並列に接続されている。
【0020】
直列腕9とグラウンド電位との間には、少なくともひとつの並列腕が接続されている。具体的には、本実施形態では、直列腕9とグラウンド電位との間には、複数の並列腕13a〜13cが接続されている。
【0021】
複数の並列腕13a〜13cのそれぞれには、並列腕共振器P1〜P3が設けられている。各並列腕共振器P1〜P3は、ひとつの並列腕共振子または、互いに直列に接続されている複数の並列腕共振子を備えている。この並列腕共振子は、弾性波共振子である。
【0022】
具体的には、第1の並列腕13aは、第1の直列腕共振器S1と第2の直列腕共振器S2との間の接続点と、グラウンド電位との間に接続されている。第1の並列腕13aには、互いに直列に接続されている第1の並列腕共振器P1とインダクタL1とが設けられている。第1の並列腕共振器P1は、互いに直列に接続されている2つの並列腕共振子P1a、P1bにより構成されている。
【0023】
一方、第2の並列腕13bは、第2の直列腕共振器S2と第3の直列腕共振器S3との間の接続点と、グラウンド電位との間に接続されている。第2の並列腕13bには、互いに直列に接続されている第2の並列腕共振器P2とインダクタL2とが設けられている。第2の並列腕共振器P2は、互いに直列に接続されている2つの並列腕共振子P2a、P2bにより構成されている。
【0024】
第1の並列腕13aと第2の並列腕13bとは互いに接続されており、インダクタL3を介してグラウンド電位に接続されている。なお、このインダクタL3と、インダクタL1、L2、L4及びL5のそれぞれは、配線パターンまたはコイルパターンにより得られるインダクタンス分により構成されていてもよいし、別個のインダクタチップにより構成されていてもよい。
【0025】
第3の並列腕13cは、第3の直列腕共振器S3と出力端16との間の接続点と、グラウンド電位との間に接続されている。第3の並列腕13cには、互いに直列に接続されている第3の並列腕共振器P3とインダクタL4とが設けられている。第3の並列腕共振器P3は、互いに直列に接続されている2つの並列腕共振子P3a、P3bにより構成されている。
【0026】
本実施形態の特徴は、複数の直列腕共振子S1a、S1b、S2a〜S2c、S3a〜S3cのそれぞれがIDT電極を有しており、キャパシタが並列に接続されている直列腕共振子S2a、S2b、S3cにおいては、IDT電極に極大点が複数形成されるように交叉幅重み付けが施されており、キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子S1a、S1b、S2c、S3a、S3bにおいては、IDT電極に極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されている点にある。なお、以下の説明において、キャパシタC1またはC2が並列に接続されている直列腕共振子S2a、S2b、S3cを直列腕共振子Sxと総称し、キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子S1a、S1b、S2c、S3a、S3bを直列腕共振子Syと総称する。
【0027】
なお、本実施形態のキャパシタは、圧電基板上に形成されている一対のくし歯電極からなるキャパシタであってもよいし、圧電基板上に形成されている一対の容量取り出し電極からなるキャパシタであってもよいし、外付けのキャパシタであってもよい。
【0028】
図2に、キャパシタが並列に接続されている直列腕共振子Sxの略図的平面図を示し、図3に直列腕共振子Sxの一部分の弾性波伝搬方向に沿った略図的断面図を示す。図3に示すように、直列腕共振子Sxは、圧電基板35と、電極36と、中間膜37と、上層膜38とを備えている。圧電基板35は、LiNbOやLiTaOなどの適宜の圧電材料からなる基板により構成される。圧電基板35は、例えば、カット角126.0°のLiNbO基板により構成することができる。
【0029】
電極36は、圧電基板35の上に形成されている。この電極36によって、後述するIDT電極30や第1及び第2のグレーティング反射器31,32が構成されている。電極36は、Al、Pt、Au、Cuなどの適宜の電極材料により構成することができる。電極36は、複数の導電膜が積層された導電膜積層体によっても構成することができる。例えば、電極36は、NiCr膜、Pt膜、Ti膜、Al膜、Ti膜が圧電基板35側からこの順番で積層された積層膜によって構成することができる。
【0030】
圧電基板35の上面の電極36が形成されていない部分には、中間膜37が形成されている。中間膜37の上面と電極36の上面とはほぼ面一とされている。この中間膜37によって、電極36が形成された圧電基板35の上面が平坦とされている。なお、中間膜37は、SiOやSiNなどの適宜の絶縁材料により形成することができる。
【0031】
電極36と中間膜37とは、上層膜38によって被覆されている。上層膜38は、SiOやSiNなどの適宜の絶縁材料により形成することができる。また、上層膜38は、複数の絶縁膜の積層体により構成してもよい。上層膜38は、例えば、SiO膜とSiN膜とが圧電基板35側からこの順番で積層された絶縁膜の積層体により構成することができる。なお、上層膜38は、圧電基板35の周波数温度特性と逆の周波数温度特性を有する材料により形成されていることが好ましい。この構成によれば、直列腕共振子Sxの周波数温度特性を改善することができる。
【0032】
図2に示すように、直列腕共振子Sxは、それぞれ電極36によって構成されているIDT電極30と、第1及び第2のグレーティング反射器31,32とを備えている。第1及び第2のグレーティング反射器31,32は、IDT電極30の弾性波伝搬方向の両側に配置されている。本実施形態では、直列腕共振子Sxは、IDT電極30により励振される弾性表面波を利用する共振子である。もっとも、直列腕共振子Sxは、弾性表面波以外の弾性波、例えば、弾性境界波を利用する共振子であってもよい。
【0033】
IDT電極30は、第1及び第2のくし歯電極33,34を備えている。第1及び第2のくし歯電極33,34のそれぞれは、相互に平行に延びる複数の電極指33a、34aを備えている。複数の電極指33aと、複数の電極指34aとは、互いに間挿し合っている。
【0034】
本実施形態では、IDT電極30には、弾性表面波伝搬方向において、電極指33aと電極指34aとの交叉幅が極大となる極大点が複数形成されるように交叉幅重み付けが施されている。具体的には、IDT電極30には、弾性表面波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点が2つ形成されるように交叉幅重み付けが施されている。このため、複数の電極指34aの先端を結ぶことにより形成される仮想線である第1の包絡線Aと、複数の電極指33aの先端を結ぶことにより形成される仮想線である第2の包絡線Bとのそれぞれは、電極指の先端側に向かって突出する第1の山部A1,B1と、第2の山部A2,B2とを備えている。そして、第1及び第2の包絡線A、Bにより囲まれた交叉領域H1は、2つの略菱形状の領域が連ねられた形状となっている。なお、第1及び第2の包絡線A、Bは、互いに接していてもよいし、図2に示すように互いに隔離していてもよい。
【0035】
図4は、キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子Syの略図的平面図を示す。直列腕共振子Syは、施されている交叉幅重み付けの態様を除いては、上記直列腕共振子Sxと実質的に同様の構成を有する。従って、上記直列腕共振子Sxの構成部材と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符合で参照し、説明を省略する。また、直列腕共振子Syの説明においても図3を共通に参照するものとする。
【0036】
キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子Syも、キャパシタが並列に接続されている直列腕共振子Sxと同様に、圧電基板35と、電極36と、中間膜37と、上層膜38とを備えている。
【0037】
図4に示すように、直列腕共振子Syは、それぞれ図3に示す電極36によって構成されているIDT電極40と、IDT電極40の弾性表面波伝搬方向における両側に設けられた第1及び第2のグレーティング反射器41,42とを備えている。本実施形態では、直列腕共振子Syは、IDT電極40により励振される弾性表面波を利用する共振子である。もっとも、直列腕共振子Syは、弾性表面波以外の弾性波、例えば、弾性境界波を利用する共振子であってもよい。
【0038】
IDT電極40は、第1及び第2のくし歯電極43,44を備えている。第1及び第2のくし歯電極43,44のそれぞれは、相互に平行に延びる複数の電極指43a、44aを備えている。複数の電極指43aと、複数の電極指44aとは、互いに間挿し合っている。
【0039】
本実施形態では、IDT電極40には、弾性表面波伝搬方向において、電極指43aと電極指44aとの交叉幅が極大となる極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されている。このため、複数の電極指44aの先端を結ぶことにより形成される仮想線である第3の包絡線Cと、複数の電極指43aの先端を結ぶことにより形成される仮想線である第4の包絡線Dとのそれぞれは、電極指の先端側に向かって突出するひとつの山部のみを備えている。そして、第3及び第4の包絡線C、Dにより囲まれた交叉領域H2は、略菱形形状の領域となっている。なお、第3及び第4の包絡線C、Dは、互いに接していてもよいし、図4に示すように互いに離間していてもよい。
【0040】
本実施形態において、並列腕共振子の構成は特に限定されない。例えば、並列腕共振子は、IDT電極を有する適宜の共振子により構成することができる。但し、図5に模式的に示すように、並列腕共振子は、キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子Syと同様に、極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されているIDT電極50と、IDT電極50の弾性表面波伝搬方向における両側に配置された第1及び第2のグレーティング反射器51,52とを有するものであることが好ましい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、キャパシタC1またはC2が並列に接続されている直列腕共振子SxのIDT電極30には、弾性表面波伝搬方向において、電極指33aと電極指34aとの交叉幅が極大となる極大点が複数形成されるように交叉幅重み付けが施されている一方、キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子SyのIDT電極40には、弾性表面波伝搬方向において、電極指43aと電極指44aとの交叉幅が極大となる極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されている。このため、下記の実施例においても裏付けられるように、通過帯域高域側のフィルタ特性の急峻性を高めると共に、VSWR特性を良好にすることができる。
【0042】
また、本実施形態では、並列腕共振子のIDT電極にも、直列腕共振子SyのIDT電極40と同様に、交叉幅が極大となる極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されている。このため、並列腕共振子のIDT電極として、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点が複数形成されるように交叉幅重み付けが施されているIDT電極を用いた場合と比較して、受信側フィルタ12におけるVSWR特性をさらに良好にすることができる。
【0043】
以下、本実施形態における効果について、具体的な実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0044】
(実施例)
図1〜図5に示す構成のデュプレクサ1を、下記の設計パラメータで作製し、送信側フィルタ11における挿入損失と、アンテナ端子10側のVSWR特性と、送信側信号端子17側のVSWR特性とのそれぞれを測定した。
【0045】
圧電基板:カット角が126.0°のLiNbO基板
中間膜:厚さ170nmのSiO
電極36:圧電基板側から、NiCr膜(厚さ:10nm)/Pt膜(厚さ:40nm)/Ti膜(厚さ:10nm)/Al膜(厚さ:80nm)/Ti膜(厚さ10nm)
上層膜38:圧電基板側から、SiO膜(厚さ500nm)/SiN膜(厚さ:30nm)
キャパシタC1の容量:0.75pF
キャパシタC2の容量:2.90pF
インダクタL5のインダクタンス値:1.15nH
【0046】
送信側フィルタ11の各共振子の設計パラメータは、下記の表1に示すように設定した。また、送信側フィルタ11の全ての共振子に対して、最小交叉幅/最大交叉幅=0.2となるように交叉幅重み付けを施した。交叉幅の極大点がひとつの共振子は、交叉幅がIDT電極の弾性表面波伝搬方向における中央において最大となり、両端において最小となるようにした。また、交叉幅は、弾性表面波伝搬方向において、直線的に変化するようにした。
【0047】
交叉幅の極大点が2つの共振子は、交叉幅がIDT電極の弾性表面波伝搬方向における中央と両端とにおいて最小となり、両端から1/4の箇所で最大となるようにした。また、交叉幅は、弾性表面波伝搬方向において、直線的に変化するようにした。
【0048】
【表1】

【0049】
(比較例1)
送信側フィルタ11の全ての共振子に対して、弾性表面波伝搬方向において、電極指43aと電極指44aとの交叉幅が極大となる極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けを施したこと、キャパシタC1、C2の容量及びインダクタL5のインダクタンス値以外は上記実施例と同様の構成を有するデュプレクサを比較例1として作製し、送信側フィルタ11における挿入損失と、アンテナ端子10側のVSWR特性と、送信側信号端子17側のVSWR特性とのそれぞれを測定した。測定結果を、実施例の測定結果と共に図6〜図8に示す。
【0050】
(比較例2)
送信側フィルタ11の全ての共振子に対して、弾性表面波伝搬方向において、電極指43aと電極指44aとの交叉幅が極大となる極大点が2つ形成されるように交叉幅重み付けを施したこと以外は上記実施例と同様の構成を有するデュプレクサを比較例2として作製し、送信側フィルタ11における挿入損失と、アンテナ端子10側のVSWR特性と、送信側信号端子17側のVSWR特性とのそれぞれを測定した。測定結果を、実施例の測定結果と共に図9〜図11に示す。
【0051】
なお、比較例1におけるキャパシタC1、C2の容量及びインダクタL5のインダクタンス値は以下の通りである。
【0052】
キャパシタC1の容量:0.85pF
キャパシタC2の容量:3.00pF
インダクタL5のインダクタンス値:1.15nH
【0053】
比較例2におけるキャパシタC1、C2の容量及びインダクタL5のインダクタンス値は、実施例におけるキャパシタC1,C2の容量及びインダクタL5のインダクタンス値と同じとした。
【0054】
図6に示す結果からわかるように、キャパシタが並列に接続されている共振子に極大点が2つの交叉幅重み付けが施されている一方、キャパシタが並列に接続されていない共振子に極大点がひとつの交叉幅重み付けが施されている実施例の方が、全ての共振子に極大点がひとつの交叉幅重み付けが施されている比較例1よりも通過帯域高域側のフィルタ特性の急峻性が高かった。具体的には、1.91GHzHz〜1.94GHzの周波数帯域において、フィルタ特性のスルーレベルに対して、挿入損失が3.5dBから45dBに至る周波数間隔は、比較例1では11.6MHzであったのに対して、実施例では、10.6MHzと1MHz小さかった。Tx帯域(1.85GHz〜1.91GHz)内におけるVSWR特性に関しては、図7及び図8に示す結果からわかるように、実施例と比較例1とでほぼ同等であった。
【0055】
また、図9に示す結果からわかるように、実施例と比較例2とでは、通過帯域高域側のフィルタ特性の急峻性はほぼ同等であった。具体的には、1.91GHzHz〜1.94GHzの周波数帯域において、フィルタ特性のスルーレベルに対して、挿入損失が3.5dBから45dBに至る周波数間隔は、実施例では、10.6MHzであり、比較例2では、10.8MHzであった。Tx帯域(1.85GHz〜1.91GHz)内におけるVSWR特性に関しては、図10及び図11に示す結果からわかるように、比較例2に対して実施例の方が、格段にVSWR特性が高いことがわかる。
【0056】
これらの結果から、キャパシタが並列に接続されている共振子に極大点が2つの交叉幅重み付けを施す一方、キャパシタが並列に接続されていない共振子に極大点がひとつの交叉幅重み付けを施すことにより、VSWR特性を低下させることなく、通過帯域高域側のフィルタ特性の急峻性を高められることがわかる。
【0057】
また、上記実施形態では、直列腕共振子SxのIDT電極30に対して極大点が2つの交叉幅重み付けを施す例について説明した。但し、本発明において、IDT電極30に施す交叉幅重み付けは、極大点が複数形成される重み付けである限りにおいて特に限定されない。例えば、直列腕共振子SxのIDT電極30に対して極大点が3つ以上の交叉幅重み付けを施してもよい。
【0058】
また、各包絡線は、1または複数の曲線部及び1または複数の直線部との少なくとも一方により構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態に係るデュプレクサの等価回路図である。
【図2】キャパシタが並列に接続されている直列腕共振子の略図的平面図である。
【図3】キャパシタが並列に接続されている直列腕共振子の略図的断面図である。
【図4】キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子の略図的平面図である。
【図5】並列腕共振子の略図的平面図である。
【図6】実施例及び比較例1における送信側フィルタの挿入損失を表すグラフである。
【図7】実施例及び比較例1におけるアンテナ端子側のVSWR特性を表すグラフである。
【図8】実施例及び比較例1における送信側信号端子側のVSWR特性を表すグラフである。
【図9】実施例及び比較例2における送信側フィルタの挿入損失を表すグラフである。
【図10】実施例及び比較例2におけるアンテナ端子側のVSWR特性を表すグラフである。
【図11】実施例及び比較例2における送信側信号端子側のVSWR特性を表すグラフである。
【図12】特許文献1に開示されている共振子の略図的平面図である。
【図13】特許文献2に開示されている共振子の略図的平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1…デュプレクサ
9…直列腕
10…アンテナ端子
11…送信側フィルタ
12…受信側フィルタ
13a…第1の並列腕
13b…第2の並列腕
13c…第3の並列腕
15…入力端
16…出力端
17…送信側信号端子
18a、18b…受信側信号端子
S1〜S3…直列腕共振器
P1〜P3…並列腕共振器
S1a、S1b、S2a、S2b、S2c、S3a、S3b、S3c…直列腕共振子
P1a、P1b、P2a、P2b、P3a、P3b…並列腕共振子
C1,C2…キャパシタ
P1〜P5…インダクタ
H1,H2…交叉領域
A〜D…包絡線
20…送信側フィルタチップ
21…受信側フィルタチップ
30…IDT電極
31,32…グレーティング反射器
33,34…くし歯電極
33a、34a…電極指
35…圧電基板
36…電極
37…中間膜
38…上層膜
40…IDT電極
41,42…グレーティング反射器
43,44…くし歯電極
43a、44a…電極指
50…IDT電極
51,52…グレーティング反射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端と、
出力端と、
前記入力端と前記出力端とを接続する直列腕において互いに直列に接続されており、各々、IDT電極を有する複数の直列腕共振子と、
前記直列腕とグラウンド電位とを接続する並列腕に設けられている並列腕共振子と、
前記複数の直列腕共振子のうちの一部の直列腕共振子に並列に接続されているキャパシタとを備え、
前記直列腕共振子と前記並列腕共振子とのそれぞれは、弾性波共振子からなり、
前記キャパシタが並列に接続されている直列腕共振子のIDT電極には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点が複数形成されるように交叉幅重み付けが施されており、
前記キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子のIDT電極には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されている、ラダー型フィルタ。
【請求項2】
前記キャパシタが並列に接続されている直列腕共振子のIDT電極には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点が2つ形成されるように交叉幅重み付けが施されている、請求項1に記載のラダー型フィルタ。
【請求項3】
前記並列腕共振子は、IDT電極を有し、前記並列腕共振子のIDT電極には、弾性波伝搬方向において、交叉幅が極大となる極大点がひとつのみ形成されるように交叉幅重み付けが施されている、請求項1または2に記載のラダー型フィルタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のラダー型フィルタを備える、デュプレクサ。
【請求項5】
アンテナ端子と、前記アンテナ端子に接続されている送信側フィルタ及び受信側フィルタとをさらに備え、前記送信側フィルタは、前記ラダー型フィルタを有する、請求項4に記載のデュプレクサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−109417(P2010−109417A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276502(P2008−276502)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】